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Title
Psychological Status in Inherited Metabolic Diseases 1)
Psychological Status of Patients with Mucopolysaccharidosis
Type II and their Parents 2) Parents of Childhood X-linked
Adrenoleukodystrophy : High Risk for Depression and Neurosis(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
倉坪, 和泉
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第754号
Issue Date
2008-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/23121
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
【37]
氏名(本籍)
倉
坪
学位の種類
博
士(医学)
学位授与番号
甲第
学位授与日付
学位授与要件
25
平成20年3月
日
学位規則第4条第1項該当
学位論文題目
PsychoJogicalStatus
和
754
泉(岐阜県)
号
jnlnherited
MetaboJic
Diseases
l)Psycho[ogicaIStatusofPatientswithMucopoJysaccharidosjsTypelJ
and
their
Parents
X-1inked
of Childhood
Depression
and Neurosis
2)Parents
審
査
委 員
(主査)教授
近
藤
直
実
(副査)教授
鈴
木
康
之
Adrenoleukodystrophy:High
教授
大
Risk
for
貴
塚
論文内容の要旨
先天代謝異常症には膨大な種類の疾患が含まれ,従来,病因・病態・診断・治療法の精力的な研究が
行われてきたが,根治する疾患は一部に限られ,多くの患者・家族は長期にわたって障害を受容・克服
しなければならない。これら疾患の患者・家族のメンタルヘルスに関する研究は乏しく,患者家族のQOL
改善のためには,これらの研究が重要である。本研究では,先天代謝異常症患者とその家族の精神心理
状態を明らかにし,医療マネージメントと心理社会的サポートの改善に役立てる目的で,ムコ多糖症
II型(Hunter病)と副腎白質ジストロフィーを対象として,精神心理学的検査と質問紙を用いて分析を
行った。
1.研究方法
1)Hunter病については,軽症型患者10名とその両親(父6名,母5名)を対象とした。患者は、
式
Wechsler
知
能 検
(FIM),Yatabe-Guilford
査(WAISTR,WISC-ⅠII),FunctionalIndependence
Personality
test(Y-G
test),TreeTdrawing
て分析した。また患者と両親に対してGeneralHealth
Trait
Measure
test(Baum
Questionnaire60(GHQ60),State
AnxietyInventory(STAI)を施行し評価した。
2)副腎白質ジストロフィーについては,小児大脳型の患児21名の両親(父16名,母21名)を対
象として,患児の状態,両親の心身の健康状態,生活状況についてアンケート調査を行うととも
に,The
Beck
DepressionInventory2nd
edition(BDI-2),GHQ60,STAIを施行した。
上記2疾患に対し,統計学的処理としてSpearman'scorrelationcoefficient,theStudent's
T-teStを用いて解析した。
2.研究結果と考察
1)Hunter病患者と両親の精神心理学的検討
患者10名のWAIS-R,WISC-IIIの平均値は,全IQ74.7,言語性IQ76.1,動作性IQ79.3で,YTG
testでは患者10名中9名は標準的性格と考えられたが,学童患者1名が神経症傾向を示した。Baum
testでは多くの患者が地面のない木を描き,周囲の人々や社会との関係を作ることが困難である
ことが示唆され,上記学童患者の描画は異常所見が顕著であった。
GHQ60の平均値は患者12.9,父10.0,母11.6で,健常者(8.08±5.3)と比較して高値であり,患
者3名,父1名,母3名が神経症水準と考えられた。STAI(状態不安,特性不安)は,患者41.6,50.1,
父42.8,41.7,母37.8,39.8であり,健常者(36.6±8.98、38.8±9.68)より高値であった。患
ー73-
test)を用い
and
者の日常生活動作を示すFIMのスコアとGHQ60には有意な負の相関(rs=-0.77)が認められ,身体
障害の程度が強いほど,精神的健康度が低いことが判明した。
2)小児大脳型副腎白質ジストロフィーの患者家族の精神心理学的検討
アンケートでは,患児の平均年齢16.8歳,発症後の経過年数8.7年で,21名中20名が寝たきり
で全介助の状態であった。在宅看護,デイケアセンターの利用はそれぞれ2名,3名と,福祉サー
ビスの利用が少ないことが判明した。身体的疲労,精神的疲労を自覚していると回答したのは父3
名,9名,母9名,15名で,家族内の人間関係が難しい(父4名,母13名),仕事に影響(父5
名,母9名),経済的影響(父6名,母9名),治療等のための転居(母3名),心理カウンセリ
ング受診(父2名,母4名),などの問題点が明らかとなった。
BDI-2の平均値は父8.9,母18.7であり(日本人成人男性8.21±6.46,女性9.61±6.31),父
3名と母11名が抑鬱状態で,母はより重症である(p=0.01)と推測された。GHQ60は父12.9,母
19.7で,父6名と母11名が神経症水準であると示唆された。STAI(状態不安,特性不安)は父
45.0,43.7,母53.0,51.6で,父4名と母8名は高不安状態であった。父1名と母6名はBD卜ⅠⅠ,
GHQ60,STAI全て高値を示し,鬱病や神経症などの精神疾患の発症リスクが高いと考えられた。
アンケート結果をスコア化したところ,心身の健康状態は父0.88±0.34点,母1.48±0.51点,
生活状況は父0.94±0.25点,母1.70±0.47点で,いずれも母に問題点が多いことが判明した。両
親共に心身の健康問題とBDI-2,GHQ60,STAIに有意な正の相関(rs=0.42-0.69)が認められた。
また,発病後の経過年数が少ないほど母の鬱傾向が強いことも明らかとなった。
3.結論
Hunter病軽症型患者と両親は,精神心理的問題を持つリスクが高い事が示唆された。一方,小児
大脳型副腎白質ジストロフィーの両親は,鬱病や神経症などの精神疾患発症のリスクが高いことが
示唆され,健康面や生活面で多様な問題を抱えていることが明らかとなった。先天代謝異常症の患
者とその家族が心身共に健康的な生活を送るためには,医療のみならず心理,社会的サポートの充
実が必要であり,遺伝カウンセリングや治療介入の際,患者とその家族の精神心理状態を理解し,
家族のトータルな精神的ケアをすることが重要であると考えられた。
論文審査の結果の要旨
申請者
倉坪和泉は,ムコ多糖症II型(Hunter病)と副腎白質ジストロフィーを対象として,精神心
理学的分析を行った。先天代謝異常症の患者及びその家族は,健常者に比べて精神心理的問題を持ち
やすく,鬱病や神経症など精神疾患の発症リスクが高いことを示唆し,家族のトータルな精神的ケア
をすることが重要であることを示した。本研究の成果は,小児科学並びに先天代謝異常症の研究の進
歩及び発展に少なからず寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
PsychologicalStatusofPatientswithMucopolysaccharidosisTypeIIandtheirParents
PediatrInt(inpress).
ParentsofChildhoodX・1inkedAdrenoleukodystrophy:HighRisk董brDepressionandNeurosis
BrainDev(inpress).
-74-
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