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Ⅱ 土地改良区をめぐる情勢と課題

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Ⅱ 土地改良区をめぐる情勢と課題
Ⅱ 土地改良区をめぐる情勢と課題
1 土 地 改 良 区 の組 織
(1) 土 地 改 良 区 数
(地区)
平成6年から土地改良
区の統合整備を積極的に
推進してきた結果、平成
7 年 に 最 大 386 地 区
(全国第2位)あった土
400
土地改良区数の推移
386
土
300
地
改
良 200
区
数 100
地 改 良 区 は 、 こ の 20 年
120
0
間 で 120 地 区 ( 全 国 第
H7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
(農 地 整 備 課 調 べ)
11 位 ) ま で 減 少 し ま し た 。
近年は合併や解散が進まず、土地改良区数は横ばいで推移しています。
(2) 地 区 面 積
面積規模別土地改良区の割合
土地改良区の地区面積は、
平 均 で 573ha で あ り 、 全
国 平 均 538ha と ほ ぼ 変 わ
全国
平均
40.0%
らない状況です。
規 模 別 で は 、 500ha 以
上 1,000ha 未 満 の 土 地 改
23.8%
10.1%
11.8% 14.3%
5.8%
栃木
県
良 区 が 、 全 国 平 均 11.8%
27.5%
100ha未満
に 対 し 、 本 県 は 24.1% と 高 い 割 合 を 占 め
26.7%
300ha未満
500ha未満
24.1%
1,000ha未満
15.9%
1,000ha以上
(H25 農 水 省 土 地 改 良 区 運 営 実 態 等 統 計 調 査 )
ています。
し か し 、 500ha 未 満 の 土 地 改 良 区 が 全 体 の 6 割 を 占 め る な ど 、 依 然 と し て 小 規
模な土地改良区が多い状況です。
-3-
(3) 職 員 の 雇 用
国 は 、 専 任 職 員 ※ 不 在 の 土 地 改 良 区 を 今 後 10 年 ( 平 成 37 年 度 ま で ) で 解 消 す
る方針を示しています。
本 県 で は 、 全 体 の 8 割 に あ た る 96 土 地 改 良 区 が 専 任 職 員 を 雇 用 し て い ま す 。 こ
の う ち 、 地 区 面 積 500ha 以 上 の 土 地 改 良 区 は 、 す べ て 専 任 職 員 を 雇 用 し て い ま す 。
一 方 、 500ha 未 満 の 土 地 改 良 区 で は 雇 用 率 が 67%に と ど ま っ て お り 、 地 区 面 積
が小規模であるほど専任職員の雇用率が低い状況です。
※専 任 職 員 …土 地 改 良 区 が雇 用 している職 員 。複 数 の土 地 改 良 区 で雇 用 している場 合 は、兼 任 職 員 となる。
24地区
20%
専任職員の雇用
面積規模別専任職員雇用率
100%
500ha以上
96地区
80%
専任職員雇用
67%
500ha未満
専任職員非雇用
(農 地 整 備 課 調 べ)
( 農 地 整 備 課 調 べ)
(4) 職 員 の 給 与
専 任 職 員 の 給 与 は 、 全 国 平 均 305
専任職員の給与
万 円 / 年 に 対 し て 、 県 平 均 は 272 万
310
円/年と低い状況にあります。
一 方 で 、 地 区 面 積 500ha 以 上 の 土
/年となっています。
272
万 270
円
)
職員の経験は土地改良区の大きな資
(
地 改 良 区 に つ い て は 、 平 均 303 万 円
平 300
均
290
年
収 280
305
303
産であることから、専任職員を安定的
260
250
に雇用できる体制整備を進めていく必
県平均
500ha以上
全国平均
(H25 農 水 省 土 地 改 良 区 運 営 実 態 等 統 計 調 査 )
要があります。
2 土 地 改 良 区 の運 営
(1) 役 員 の 年 齢
土地改良区役員の年齢構成
理 事 の 年 齢 構 成 は 、 70 歳 以 上 が 全
2.9%
体 の 25% 以 上 を 占 め て い ま す が 、 全
国平均よりも低い状況です。
し か し 、 50 歳 以 上 が 97 % 以 上 を
占めており、今後さらに高齢化が進む
63.0%
全国平均
34.2%
2.9%
71.3%
栃木県
25.7%
ことが予想されます。
50歳未満
土地改良区の運営を継続的に発展さ
50~69歳
70歳以上
(H25 農 水 省 土 地 改 良 区 運 営 実 態 等 統 計 調 査 )
せるためには、若年層も含めさまざま
な世代の組合員が運営に携われる環境を醸成する必要があります。
-4-
(2) 理 事 の 定 数
理 事 の 定 数
本 県 の 理 事 の 定 数 は 、 1 土 地 改 25 (人 )
県平均
全国平均
良 区 あ た り 平 均 13.3 人 で あ り 、 20
全 国 平 均 11.5 人 よ り や や 多 い 状 15
10
況です。
5
土地改良区の適正な運営のため
0
には、規模や運営の実情に応じ
た最適な理事の定数を検討する
100ha 300ha 500ha 1000h 2000h 3000h 4000h 5000h 10000 10000
平均
未満 未満 未満 a未満 a未満 a未満 a未満 a未満 ha未満 ha以上
県平均
9.7
12.4
15
13.1
20.6
20.6
18
0
19
0
13.3
全国平均
9.4
11.4
12.6
13.5
14.3
14.8
15.6
16.1
19.2
18.1
11.5
などの対策が必要です。
(H25 農 水 省 土 地 改 良 区 運 営 実 態 等 統 計 調 査 )
(3) 情 報 発 信
広報誌などによって、事業内容や取組に関する情報
組合員への情報発信
47地区,
39%
を発信している土地改良区は、全体の半数以下であり、
組合員への情報提供が十分とはいえない状況です。
さらに、ホームページによって広く活動をPRして
あ り
いる土地改良区は3地区(連合含む)です。
な し
土地改良区の取組は、農村地域の活性化や多面的機
能 の 発 揮 に も つ な が る も の で あ る こ と か ら 、 組 合 員 に 73地区,
限らず、広く地域住民へも積極的に情報発信する必要
61%
があります。
(農 地 整 備 課 調 べ)
(4) 土 地 改 良 施 設 の 老 朽 化 と 維 持 管 理
本 県 の 基 幹 的 農 業 水 利 施 設 ※ は 、 平 成 27 年 度 現 在 で そ の 約 6 割 が 耐 用 年 数 に 達
し て お り 、 さ ら に 10 年 後 に は 約 8 割 が 耐 用 年 数 を 迎 え ま す 。
土地改良区が管理している用排水路などの土地改良施設も老朽化が避けられない
状況です。
今後も効果的な保全管理を進め、土地改良施設の長寿命化に向けた計画的な補修
や更新整備などが必要です。
耐用年数を迎える基幹的農業水利施設の推移
25
施設数
20
100%
90%
割合
80%
70%
施 15
設
数
10
60%
50%
40%
割
合
30%
5
20%
10%
0
0%
S55
S60
H2
H7
H12
H17
H22
H27
H32
H37
H42
H47
(農 地 整 備 課 調 べ)
※基 幹 的 農 業 水 利 施 設 …受 益 面 積 100ha 以 上 の頭 首 工 、用 排 水 機 場 等 の水 利 施 設 と水 路
-5-
(5) 維 持 管 理 計 画
土地改良区は、管理すべき土地改良施設の種類や管理方法などが適正に記載され
た維持管理計画を定める必要があります。
維持管理計画の策定状況
しかし、維持管理計画を策定し
適正, 62地区,
49%
て い る 土 地 改 良 区 は 104 地 区 で
維持管理計画あり,
104地区, 83%
あ り 、 全 体 の 83 % に と ど ま っ て
います。
さらに、土地改良施設の更新や
補修等を反映し、現状に即した維
維持管理計画なし,
22地区, 17%
持管理計画を策定している土地改
要修正, 42地区,
33%
良 区 は 62 地 区 で 、 全 体 の 半 数 に
満たない状況です。
(6) 財
(農 地 整 備 課 調 べ)
政
土地改良施設の維持管理費について取水形態別にみると、機械揚水の地区は自然
取 水 の 地 区 の 約 2.7 倍 で あ り 、 支 出 合 計 に 占 め る 割 合 も 自 然 取 水 の 9 % に 比 べ 、 機
械 揚 水 の 地 区 は 14% と 土 地 改 良 区 の 財 政 を 圧 迫 し て い ま す 。
土地改良区の財政を安定的なものとし、維持管理費の負担割合を軽減するために
は、再生可能エネルギーの導入や水管理の省力化などに取り組んでいく必要があり
ます。
取水形態別、項目(科目)別、10aあたり支出額(全国平均) (円 )
自然取水+
項 目
自然取水 ポンプ揚水
ポンプ揚水
経常的経費
3,014
6,251
2,337
運営費
1,735
2,766
2,128
運営事務費
523
847
570
役員報酬
188
312
185
職員人件費
1,236
1,830
1,464
維持管理費
1,374
3,637
2,285
整備補修費
699
1,370
1,023
電力料
179
1,105
504
油脂料
28
43
33
人件費
343
653
405
助成金
226
305
270
適正化拠出金
127
262
176
その他
295
557
378
工事費
1,814
3,022
1,969
国県営負担金・分担金
1,572
1,904
1,488
国庫資金等借入金償還金
3,619
5,348
3,513
各種積立金
2,180
2,553
2,224
その他支出
1,424
1,750
1,524
繰越金
5,161
10,222
6,225
支出合計
15,380
25,831
18,752
(H25 農 水 省 土 地 改 良 区 運 営 実 態 等 統 計 調 査 )
-6-
(7) 会
計
国 で は 、 会 計 の 透 明 性 を 高 め る た め 、 平 成 32 年 度 ま で に 全 土 地 改 良 区 で 複 式 簿
記会計の導入又は導入に向けての検討が開始されるよう推進する方針です。
本県の土地改良区の会計は、全て単式簿記により処理されており、複式簿記会計
の導入に消極的な土地改良区が9割以上を占めています。
複式簿記会計の導入について
複式簿記会計の検討状況
導入の意向あり,
8地区
導入の意向なし,
62地区
検討なし, 110地区
現時点では未定,
57地区
回答なし, 3地区
検討あり, 6地区
(農 地 整 備 課 調 べ)
(農 地 整 備 課 調 べ)
(8) 防 災 ・ 減 災 体 制
土地改良施設の老朽化の進行や異常気象による集中豪雨の増加など、災害のリス
ク は 年 々 高 ま っ て い る 状 況 で す 。 特 に 、 時 間 雨 量 50mm を 超 え る 豪 雨 の 発 生 は 、
過 去 30 年 間 で 約 1.4 倍 に 増 加 し て
います。
時 間 雨 量 50㎜以 上 の年 間 発 生 回 数 (全 国 )
400
ま た 、 本 県 の 土 地 改 良 区 で は 、350
S51~ S6 0
平均
174 回 / 年
緊 急 時 の 連 絡 体 制 が 整 備 さ れ て 300
い る の は 48 地 区 と 全 体 の 半 数
にも満たず、迅速で的確な応急
活動が懸念される状況です。
このため、緊急時の連絡体制
250
H8~ H17
平均
223 回 / 年
S61~ H7
平均
184 回 / 年
H18~ H2 6
平均
233 回 / 年
200
150
100
50
など、防災・減災に対応できる
体制の整備を進めていく必要が
S51
S56
S61
H3
H8
H13
H18
H23
50mm/hr以上の降水量があった発生回数/1000地点
(気 象 庁 調 べ)
あります。
3 農 業 ・農 村 振 興 への取 組
(1) 保 全 管 理
本県の土地改良区の組合員数は年々減少し、草刈や土砂ざらいなど日常的な管理
も困難な状況になってきています。
土地改良区の組合員数の推移
(人)
農地や土地改良施設の保全管理にあたっ
ては、農業活動が健全に営まれていること
86,000
83,651
82,375
82,000
が必要であることから、土地改良区が有す
る農家や農地の情報や関係性を十分に活用
81,526
80,276
79,412
78,000
し 、 基 盤 整 備 や 農 地 集 積 な ど 積 極 的 に 取 り 74,000
組みながら、効果的な保全管理に向けた体
70,000
H22
制を構築していくことが必要です。
-7-
H23
H24
H25
H26
(農 地 整 備 課 調 べ)
(2) 農 村 地 域 へ の 共 同 活 動
農 業 ・ 農 村 が 有 す る 多 面 的 機 能 ※ 1 の 発 揮 に 向 け て 、「 多 面 的 機 能 直 接 支 払 」 の 活
用 に よ り 、 県 内 の 農 振 農 用 地 約 34,800ha に お い て 農 地 や 水 路 等 の 保 全 管 理 な ど
地域ぐるみの共同活動が実施されています。
ま た 、 中 山 間 地 域 に お い て も 、「 中 山 間 地 域 等 直 接 支 払 」 の 活 用 に よ り 約
2,200ha で 共 同 活 動 が 行 わ れ て い ま す 。
一 方 で 、 共 同 活 動 に 参 画 し て い る 土 地 改 良 区 は 81 地 区 で 、 全 体 の 64% に と ど
まっています。
土地改良区は、多面的機能を十分に発揮できるよう、農地や土地改良施設などの
地域資源の保全に向けて、共同活動へ積極的に参画していく必要があります。
(ha)
50,000
多 面 的 機 能 支 払 制 度 及 び中 山 間 地 域 等 直 接 支 払 制 度 によるカバー率 ※ 2
36%
45,000
40,000
35,000
29%
2,079
2,079
24%
30,000
25,000
29%
29%
2,175
29%
2,207
35%
28%
27%
2,210
2,213
2,214
20%
20,000
10,000
30%
25%
2,081
34,822
15,000
40%
28,012
28,327
28,447
28,414
26,727
20,392
26,029
15%
10%
5%
5,000
0
0%
H19
H20
H21
多面的機能支払
H22
H23
H24
中山間直接支払
H25
H26
カバ-率
(農 村 振 興 課 調 べ)
※1多 面 的 機 能 … 農 業 ・ 農 村 の 多 面 的 機 能 とは、「 国 土 の 保 全 、 水 源 の 涵 養 、 自 然 環 境 の 保 全 、 良 好 な 景 観
の 形 成 、 文 化 の 伝 承 等 、 農 村 で 農 業 生 産 活 動 が 行 わ れ る こと に よ り 生 ず る 、 食 料 そ の 他 の 農 産 物 の 供 給 の
機 能 以 外 の多 面 にわたる機 能 」のことをいいます。
※2カバー率 …農 振 農 用 地 面 積 に占 める活 動 の取 組 面 積 の割 合
-8-
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