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公開特許公報 特開2015
〔実 53 頁〕 公開特許公報(A) (19)日本国特許庁(JP) (12) (11)特許出願公開番号 特開2015-186480 (P2015−186480A) (43)公開日 平成27年10月29日(2015.10.29) (51)Int.Cl. A23L FI 1/30 テーマコード(参考) (2006.01) A23L 1/30 Z A61K 31/047 (2006.01) A61K 31/047 A61P 43/00 (2006.01) A61P 43/00 A61P 39/00 (2006.01) A61P 39/00 A23L (2006.01) 1/305 A23L 審査請求 1/305 有 請求項の数2 OL 外国語出願 (全72頁) 最終頁に続く (21)出願番号 特願2015-105690(P2015-105690) (22)出願日 平成27年5月25日(2015.5.25) ユニバーシティー (62)分割の表示 特願2011-506488(P2011-506488) フォルニア,ユーエスシー の分割 ズ 平成21年4月24日(2009.4.24) UNIVERSITY (31)優先権主張番号 61/047,680 ERN (32)優先日 平成20年4月24日(2008.4.24) STEVENS (33)優先権主張国 米国(US) アメリカ合衆国 原出願日 (71)出願人 510282239 オブ サウザン カリ スティーブン OF SOUTH CALIFORNIA,USC カリフォルニア州 90 089−2561,ロサンゼルス,マクリ ントックアベニュー イーイービー 3740,スィート 131,ヒューズセンタ ー (74)代理人 100096024 弁理士 柏原 三枝子 最終頁に続く (54)【発明の名称】化学療法、放射線療法、酸化ストレス、および加齢を防御するための食事組成物ならびに方法 (57)【 要 約 】 (修正有) 【課題】化学療法、放射線療法、酸化ストレス、および加齢を防御するための有用な新規 食事組成物並びに方法の提示。 【解決手段】単糖、二糖、及び多糖の置換物としてのグリセロールを含む食事組成物であ って、化学療法又は酸化ストレスに暴露した動物又はヒトへの前記食事組成物の投与が前 記化学療法若しくは酸化ストレスの前3−10連日、前記化学療法若しくは酸化ストレス の後24時間、又はそれらの組み合せで行われる食事組成物。当該食事組成物が前記化学 療法又は酸化ストレスに対して前記動物又はヒトを防御するために用いられる食事組成物 。0−0.2重量%のL−メチオニン、及び各々少なくとも0.05重量%の量のL−ト リプトファン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン、 L−スレオニン、並びにL−バリンを含み、タンパク質を含まない食事組成物。 【選択図】なし ( 2 ) JP 1 2015-186480 A 2015.10.29 2 【特許請求の範囲】 チンの使用は多くの悪性腫瘍を有効的に治療することが 【請求項1】 できるが、薬物誘発性のそれぞれ心毒性と腎毒性によっ 単糖、二糖、および多糖の置換物としてのグリセロール て薬物の全潜在能力は制限される。したがって、癌標的 を含む食事組成物であって、化学療法または酸化ストレ 性を損なわずに正常細胞を選択的に防御し、望ましくな スに暴露した動物またはヒトへの前記食事組成物の投与 い毒性を軽減することによって、化学慮法の有益性が立 が前記化学療法もしくは酸化ストレスの前3−10連日 証され、そして臨床転帰を良くするであろう。 、前記化学療法もしくは酸化ストレスの後24時間、ま 【発明の概要】 たはそれらの組み合せで行われることを特徴とする食事 【0005】 組成物。 本発明は、化学療法、放射線療法、酸化ストレス、およ 【請求項2】 10 び加齢を防御するために有用な新規食事組成物ならびに 請求項1に記載の食事組成物において、当該食事組成物 方法に関する。 が前記化学療法または酸化ストレスに対して前記動物ま 【0006】 たはヒトを防御するために用いられることを特徴とする したがって、一つの形態では、本発明は、0−0.2重 食事組成物。 量%のL−メチオニン、およびそれぞれ少なくとも0. 【発明の詳細な説明】 05重量%の量のL−トリプトファン、L−イソロイシ 【技術分野】 ン、L−ロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン 【0001】 、L−スレオニン、およびL−バリンを含み、タンパク [関連出願] 質を含まない食事組成物を特徴とする。本組成物は、さ 本出願は、2007年3月28日に出願された米国仮出 らに、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラ 願第60/908,636号、および2007年6月7 20 ギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グル 日に出願された米国仮出願第60/942,561号の タミン、L−グリシン、L−プロリン、L−セリン、L 優先権を主張する2008年3月28日に出願された米 −チロシン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンか 国特許出願第12/058,600号の一部継続出願で ら成る群から選択される1つまたは複数のアミノ酸を含 ある。本出願は、また、2008年4月24日に出願さ むことができる。 れた米国仮出願第61/047,680号の優先権を主 【0007】 張する。米国特許出願第12/058,600ならびに もうひとつの形態では、本発明は、0−0.2重量%の 米国仮出願第60/908,636号、第60/942 L−トリプトファン、および少なくともそれぞれ0.0 ,561号、および第61/047,680号の内容は 5重量%の量のL−メチオニン、L−イソロイシン、L 、これらのすべての参照により本明細書中に組み入れら −ロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L− れる。 30 スレオニン、L−バリンを含み、タンパク質を含まない 【0002】 食事組成物を特徴とする。本組成物は、L−アラニン、 [財政的支援] L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイ 本発明は、一部、米国国立衛生研究所の助成、AG20 ン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシン 642、AG025135、GM075308、および 、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、L−アル 神経科学計画(Neurosciences Blue ギニン、およびL−ヒスチジンからなる群から選択され print)の支援を受けてなされたものである。した る1つまたは複数のアミノ酸をさらに含むことができる がって、米国政府は特定の権利を有する。 。 【0003】 【0008】 [技術分野] さらにもう一つの形態では、本発明は、それぞれ0−0 本発明は、概して、疾患の治療に関する。より具体的に 40 .2重量%の量のL−メチオニン、L−トリプトファン は、本発明は、化学療法、放射線療法、酸化ストレスお 、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L− よび加齢を防御するための食事組成物ならびに方法を提 フェニルアラニン、L−スレオニン、L−バリン、L− 供する。 アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L 【背景技術】 −システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L 【0004】 −グリシン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン 現代の化学療法は、癌関連症状の緩和によって癌患者の 、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンを含み、タン 生活の質を改善することができ、多くの悪性腫瘍の生存 パク質を含まない食事組成物を特徴とする。 も顕著に延長することができる。しかし、不可避の中毒 【0009】 性副作用により薬物投与の用量強度と投与頻度がしばし さらにもう一つの形態では、本発明は、単糖、二糖、お ば制限される。例えば、ドキソルビシンまたはシスプラ 50 よび多糖の代替物としてグリセロールを含む食事組成物 ( 3 ) JP 2015-186480 3 A 2015.10.29 4 を特徴とする。 【0014】 【0010】 本発明における上述した特徴および本発明の他の特徴な また、本発明の範囲には、化学療法、放射線療法、酸化 らびに入手法とそれらの使用法は以下の記述と同時に付 ストレス、または加齢から動物またはヒトを防御する方 随する図面を参照することによってより明白となり、最 法も含まれる。本発明の方法は、本発明の組成物を動物 上の理解が得られるであろう。本図面は、本発明の典型 またはヒトに投与し、それによって、化学療法、放射線 的な実施態様のみを描写するものであり、その範囲に限 療法、酸化ストレス、または加齢から動物またはヒトを 定されるものではない。 防御することを含む。本発明の方法は、さらに、動物ま 【図面の簡単な説明】 たはヒトを化学療法、放射線療法、または酸化ストレス 【0015】 に暴露することを含むことができる。幾つかの実施態様 10 【図1】グラフ(A)生存率%、(B)メチオニン食体 では、本組成物は、暴露過程前に連日3−10日間、暴 重%、(C)メチオニン摂餌量、(D)治療後体重%、 露過程後24時間、またはそれらの併用によって動物ま および(E)日付関数としての治療後の摂餌量。マウス たはヒトに投与される。幾つかの実施態様では、本組成 はドキソルビシン治療前に低メチオニンアミノ酸混合物 物は、加齢から動物またはヒトを防御するため、3回目 (LMA1)で処理した。 の食事毎または3−10日毎に投与される。 【図2】グラフ(A)生存率%、(B)治療後体重%、 【0011】 および(C)日付関数としてのトリプトファン食体重% 加えて、本発明は、813−957キロカロリー以下の 。マウスはドキソルビシン治療前に低トリプトファンア 総エネルギーを供給し、もし炭水化物が食材に存在する ミノ酸混合物(LTA1)で処理した。 場合は該炭水化物の割合は該総エネルギーの半分以下で 【図3】グラフ(A)日付関数としての摂餌、(B)血 あり、30−36グラム以下のタンパク質を含有する該 20 液グルコース濃度、(C)時間関数としての生存率%、 食材を供給しながら、対象者に栄養を供給し得る該食材 および(D)日付関数としての体重%。マウスはパラコ を含む低カロリー食事またはノンカロリー食事を特徴と ート処理前にグリセロール食を与えた。 する。幾つかの実施態様では、食材は総エネルギー70 【図4】ストレス耐性と寿命の調節におけるSch9, 0キロカロリー以下を供給しうる食材である。 Tor1,およびRas2間の遺伝子相互作用。(A− 【0012】 D)3日目の野生株(DBY746)およびTor1, さらに、本発明は、1日に動物またはヒト体重当たり1 Sch9またはRas2欠損細胞に熱ショック(55℃ 1キロカロリー以下のエネルギー、および1日に該動物 :A,105分;B,75分;C,150分;およびD またはヒト体重当たり0.4グラム以下のタンパク質を ,120分)または酸化ストレス(100mM過酸化水 供給し、食事中に炭水化物が存在する場合は、該炭水化 素60分;または250μMメナジオン30分)を暴露 物の割合は該総エネルギーの半分以下である該食事を供 30 させた。(E)100万個細胞当たりcan 給しながら、栄養を供給しうる該食事を動物またはヒト 測定した突然変異頻度の時間経過。4回の実験の平均を に投与することによって、化学療法、放射線療法、酸化 示す。エラーバーはSEMを表す。(F)最少完全培地 ストレス、または加齢から動物またはヒトを防御する方 中(SDC)の野生株(DBY746)、tor1Δ、 法を供給する。幾つかの実施態様では、食事は1日当た およびSCH9または構造的活性型Ras2(ras2 り総エネルギー700キロカロリー以下を供給すること V ができる。本方法は、さらに、動物またはヒトを化学療 時的生存率。(G)野生株(DBY746)およびTo 法、放射線療法、または酸化ストレスに暴露することを r1,Sch9,Ras2またはこれらを同時に欠損す 含むことができる。幾つかの実施態様では、食事を暴露 る突然変異株の経時的生存率をグラフに示す。データは 過程前の3−10日間、暴露過程を24時間、またはそ 少なくとも4回の実験の平均を表す。エラーバーはSE れらの併用によって動物またはヒトに投与する。幾つか 40 Mを示す。非線形曲線適合により計算された平均寿命に の実施態様では、加齢から動物またはヒトを防御するた ついては表2を参照のこと。(H)酵母の長寿命調節経 めに、食事を3食毎または3−10日毎に投与する。 路。Sch9,Tor,およびRasによって制御され 【0013】 る栄養センサー経路はプロテインキナーゼRim15に 本発明は、さらに、化学療法から動物またはヒトを防御 収斂する。一方、ストレス応答性転写因子Msn2、M する方法を供給する。本方法は、1サイクルの化学療法 sn4,およびGis1はストレス応答性遺伝子をトラ の48−140時間前、化学療法後4−56時間、また ンス活性化し、寿命延長につながる細胞防御を増強する はそれらの併用によって担癌動物または癌患者を絶食さ 。CRの前長寿命効果は部分的にSch9,Tor,お せ、該動物またはヒトを化学療法に暴露することを含む よびRasによって介在され、多くはまだ確認されてい 。幾つかの実施態様では、1サイクルの化学療法前後1 ないさらなる機序も必要とするかもしれない。 80時間以下の間、該動物またはヒトを絶食させる。 50 a l 1 9 R 変異株で )のいずれかを過剰発現する突然変異株の経 【図5】長寿命変異株の遺伝子発現特性。(A)野生型 ( 4 ) JP 2015-186480 A 2015.10.29 5 6 細胞に比較して2.5日目におけるtor1Δ,sch 9を欠損する変異株の寿命。データは3実験の平均とS 9Δ,およびras2Δ変異株の2倍超上方制御または EMを表す。(E)グリセロール生合成遺伝子を欠損す 下方制御された遺伝子の数のベン図。マイクロアレイ解 る培養3日目の変異株の熱ショック(55℃)および酸 析を三重で実施した。データは上方/下方制御遺伝子を 化ストレス(500mMの過酸化水素、60分)耐性。 表す。(B)sch9Δバックグラウンドを持つ長寿命 【図9】グリセロールのストレス耐性と寿命に対する効 の変異株において最も上方制御された遺伝子の欠損変異 果。(A)細菌の熱感受性ルシフェラーゼを発現する3 体の寿命。各株につき独立して3回から4回の実験を実 日目の野生型(DBY746)とsch9Δ変異株に熱 施した。データはペアを組み合わせてプールした実験の ストレス(42℃、60分)を加えた。データは平均と 平均およびSEMを表す。 SEM,n=3。 【図6】(A)グリセロール代謝の模式図。図示の目的 10 定、両側を表す。(B)グリセロール(図に示された濃 のために、3種すべての長寿命変異体の中で野生株と比 度)で30分前処理した野生型細胞における熱ストレス 較して20%超上方制御された遺伝子を赤く表示し、下 (42℃、60分)後のルシフェラーゼ活性の回復。デ 方制御された遺伝子を緑色に表示した。(B)2.5日 ータは平均とSEM、n=3を表す。(C)SDC中で 目の野生株(DBY746)と比較したsch9Δ,t 増殖する3日目の野生型細胞を水で3回洗浄し、グリセ or1Δ,およびras2Δ変異株のグリセロール生合 ロール存在下または非存在下で24時間高濃度のNaC 成遺伝の発現レベルを倍数変化で表す。(C)3日目の l(2M)に暴露した。その後細胞を3回洗浄して、塩 野生株(DBY746)およびsch9Δ細胞における を除き、連続的に希釈し、YPDプレートに播種した。 GPD1mRNAレベルのリアルタイム定量PCR解析 (D)3日目の野生型とsch9Δ変異株を高濃度(2 。データは、平均とSEM、n=4を表す。 05,t検定、両側、sch9Δ * p<0. vs.WT。 * p<0.05、独立t検 および4M)のNaClに24時間暴露した。(E)図 20 のようにグリセロールを補充したSDC中で増殖する野 【図7】Sch9欠損変異株はエタノールを代謝し、グ 生型細胞の経時的生存率。データは平均とSEM,n= リセロールを蓄積する。(A)1日目と3日目に野生株 3を表す。(F)in (DBY746)とSch9欠損細胞の細胞内グリセロ 野生型培養1日目に希釈し、SC−Trpプレート上( ール量を測定した。データは、解析した5培養の平均と 炭素源なし)または炭素源としてグルコース(2%グル SEMを表す。(B)野生型およびsch9Δ培養液中 コース)、エタノール(0.8%EtOH)またはグリ のグリセロール濃度。データは解析した5−7培養の平 セロール(3%グリセロール)を補充したプレート上に 均およびSEMを表す。 、両側、sch9Δ * * situ生存アッセイ。SDC p<0.01、独立t検定 播種した。2日毎にトリプトファン(または追加のグル vs.WT。(C−D)野生型( コースとともに)をプレートに添加した。トリプトファ C)およびsch9Δ(D)培養液中のグリセルールお ン添加2日後にコロニー形成をモニターした。データは よびエタノール濃度。データは解析した3−5培養の平 30 平均とSEM、n=3を表す。(G)正常(SC+2% 均とSEMを表す。(E)1日目の野生型とsch9Δ グルコース)、カロリー制限(SC+1%グルコース) 変異株の中性脂肪のナイルレッド染色。ナイルレッド染 、またはグルコース/グリセロール(SC+1%+1% 色は右側に、位相顕微鏡は左側に示す。バー、10μm )培地中で増殖した野生型(DBY746)およびms 。 n2Δ 【図8】グリセロール生合成遺伝子の欠損は、Sch9 。データは解析した4培養の平均とSEMを表す。(H の欠損に関連して寿命の伸長とストレス耐性を逆転させ )SDC培地中で増殖した3日目の野生型細胞を水で3 た。(A)培養液中のグリセロール濃度。データは解析 回洗浄し、グリセロール(0.1%または1%)添加ま した4培養の平均とSEMを表す。 * * p<0.05、 p<0.01、独立t検定、両側、sch9Δ .rhr2Δ * vs sch9Δ。(B)野生型(DBY74 40 msn4Δ gis1Δ変異株の経時的生存率 たは非添加水(CR/極度の飢餓)中でインキュベート した。プロットは同様な結果が得られた3回の反復実験 の代表的な実験(重複の平均)を示す。(I)SDC中 6)、sch9Δ、rhr2ΔおよびRhr2を欠損す で増殖する酵母を図に示した時点で試料採取(1ml) るSch9欠損変異株の寿命。グリセロール(最終濃度 した。[1,2,3− 1%)を培養1日目のrhr2Δ sch9Δ培養に添 nc.)を一定量加え、撹拌下、30℃で24時間イン 加した。データは解析した4−5培養の平均とSEMを キュベートした。その後、細胞を水で3回洗浄した。細 表す。(C)3日目の細胞を熱ショック(55℃、10 胞[ 5分)または過酸化水素(150mM,60分)で暴露 1410,ファルマシア社)し、細胞数(CFUによる した。提示した細胞株は、野生型(DBY746),r 生存率)で標準化した。データは解析した4培養の平均 hr2Δ、sch9Δ、rhr2Δ とSEMを表す。 sch9Δである 3 3 H]グリセロール(ARC I H]量をシンチレーション測定(Wallac 。(D)野生型(BY4741)、sch9Δ、および 【図10】糖質をグリセロールで置換した食事はパラコ Gpd1,Gpd2,またはRhr2を欠損し、Sch 50 ート毒性からマウスを防御した。 ( 5 ) JP 2015-186480 A 2015.10.29 7 8 1群5匹からなる2群はそれぞれ対照食またはグリセロ びGH/IGF−I軸に対する効果。30週齢のCD− ール食を6日間自由に与えられた。(A)体重100g 1マウスを72時間絶食させ、屠殺した。深麻酔下に心 当たりの摂餌量はグリセロール食摂餌群がやや多かった 穿刺により血液を採取し、直ちに血糖を測定した。血漿 。(B)パラコート注入前に血糖値を測定した(摂餌開 のGH濃度およびIGF−I濃度(Cohen)を解析 始6日後。 * p=0.05、独立t検定、両 した。GHは拍動性のホルモンであり、ゆえに、有意な 側)。(C)50mg/kgパラコート(PBS中7. 結果を得るためには大きなサンプルサイズを要する。マ 5mg/ml)腹腔内注入後の生存曲線。(D)パラコ ンホイットニーのU検定により計算したIGFBP−1 ート処理後のマウス体重。 以外は全てのP値はスチューデントのt検定により計算 【図11】症例1の血球数臨床検査値。(A)好中球; した。 (B)リンパ球;(C)白血球WBC;(D)赤血球、 10 【図24】絶食/カロリー制限に応答するストレス耐性 RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb; の保存された調節経路。酵母では、Sch9,Tor, (G)ヘマトクリット、Hct;(H)体重。 およびRasによって制御される栄養感知シグナル伝達 【図12】症例1、化学療法後の自己申告による副作用 経路はプロテインキナーゼRim15に収斂する。続い 。 て、ストレス応答性転写因子Msn2,Msn4,およ 【図13】症例2、化学療法後の自己申告による副作用 びGis1がストレス応答性遺伝子をトランス活性化し 。 、細胞防御を増強して寿命が延長する。マウスとヒトで 【図14】症例3、血球数臨床検査値。(A)好中球; は、短期間の絶食により循環IGF−I濃度が有意に低 (B)リンパ球;(C)白血球、WBC;(D)赤血球 下する。部分的に保存されるIGF−Iシグナル伝達経 、RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb 路はAktによってFoxO転写因子ファミリーが負に ;(G)ヘマトクリット、Hct;(H)。前立腺特異 20 調節される。RasとTorはIGF−Iの下流領域に 抗原(PSA)濃度。 も機能するが、ストレス耐性と加齢の調節における役割 【図15】症例3、化学療法後の自己申告による副作用 は十分に解明されていない。5型アデニルシクラーゼ( 。 AC)を欠損するマウスはストレス耐性であり、アデニ 【図16】症例4、血球数臨床検査値。(A)好中球; ルシクラーゼ欠損酵母と似ている。特に、IGF−I, (B)リンパ球;(C)白血球、WBC;(D)赤血球 Akt,Ras,TorおよびPKAの過剰な活性化を 、RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb もたらす発癌遺伝子の突然変異はヒト癌の中で最も一般 ;(G)ヘマトクリット、Hct。 的である[20]。 【図17】症例4、化学療法後の自己申告による副作用 【図25】IGF−I減少によるCP処理に対するin 。 vitroDSR。初代ラットグリア細胞とラットグ 【図18】症例5、血球数臨床検査値。(A)好中球; 30 リオーマ細胞株(C6,9LおよびA10−85)を試 (B)リンパ球;(C)白血球、WBC;(D)赤血球 験した。(A)細胞を1%血清加DMEM/F12中で 、RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb プレインキュベートし、抗IGF−IRモノクローナル ;(G)ヘマトクリット、Hct;(H)前立腺特異抗 抗体α−IR3(1μg/ml)で24時間中和した。 原(PSA)濃度。 CP処理(15mg/ml;n=12)後、細胞毒性( 【図19】症例6、血球数臨床検査値。(A)好中球; LDH法)を調べた。(B)細胞を1%(STS)また (B)リンパ球;(C)白血球、WBC;(D)赤血球 は10%FBSのいずれかを添加した培地中で24時間 、RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb プレインキュベートした。CP処理(15mg/ml; ;(G)ヘマトクリット、Hct。 n=12)後、細胞毒性(LDH法)を調べた。(C) 【図20】症例9、血球数臨床検査値。(A)好中球; 細胞をrhIGF−I(100ng/ml)添加または (B)リンパ球;(C)白血球、WBC;(D)赤血球 40 非添加1%血清加培地中で48時間プレインキュベート 、RBC;(E)血小板;(F)ヘモグロビン、Hgb した。CP処理(12mg/ml;n=21)後、細胞 ;(G)ヘマトクリット、Hct。 毒性(LDH法)を調べた。スチューデントt検定によ 【図21】症例10、化学療法後の自己申告による副作 る 用。 【図26】R 【図22】絶食または非絶食での化学療法後の自己申告 まで増殖させ、10%FBS補充DMEM/F12中で による副作用。(A)データは本実験のすべての患者に (A)24時間または(B)48時間DXR(0−50 よって報告されたすべてのサイクル後のCTC評価の平 0μM)処理した。生存率は、非処理に比べた相対的な 均を表す;(B)データは絶食および非絶食サイクルの MTT還元度により決定した;平均±SD、スチューデ 整合によるCTC評価の平均を表す。 ントのt検定による 【図23】72時間絶食の体重、グルコース濃度、およ 50 * , * * * * * P<0.0001。 + およびR * − 細胞をコンフルエントになる P<0.05, * * P<0.01 P<0.001;同一DXR濃度におけるR + ( 6 ) JP 2015-186480 9 細胞vs.R − A 2015.10.29 10 細胞。(C)コメット解析。IGF−I ラノーマ担癌LIDマウスと対照マウス間の生存率比較 Rを過剰発現する細胞またはIGF−IRを欠損する細 。(D)(C)のデータは、全ての死亡が転移およびD + 胞(R およびR − )を50μMのDXRで1時間処理 XR毒性の両方に起因することを表す。ゆえに、本デー + 細胞に有意なDNA障害が観察さ タはDXR毒性関連の死亡のみを表すために解析された 細胞はDXR誘発DNA障害を防御した。 。(E)LIDマウスおよび対照マウスの体重。(F) した。DXR処理R れたが、R − スチューデントのt検定による * P<0.0001;R − 対照 R * − vs.R + * * 対照 DXR;R + P<0.01, * * vs.R + DXR vs.R 対照マウスおよびLIDマウスにおけるDXR誘発心筋 DXR; 症。心不全は、急性DXR毒性の主要な結果である[7 − 6]。DXR処理対照マウスからの心臓の組織標本スラ DXR。2つの独立した実験から同様の結果が得られた 。代表的な実験を示す。 イドは、筋原線維の欠損と免疫細胞の浸潤を示したが、 10 一方、DXR依存性の心筋症はLIDマウスには観察さ 【図27】S.セレビシエにおけるDXRに対するSc れなかった。ヘマトキシリン h9/Ras2欠損のによるDSRの効果。(A)野生 スライドを示す。バー、100μm。 型(DBY746)、sch9Δ,sch9Δras2 【図30】短期間絶食(STS)と低IGF−Iに対す Δ,RAS2 a l 1 9 v a l 1 9 株をOD6 ,およびsch9ΔRAS2 v エオジン染色。代表的な る応答における分別的なストレス耐性(DSR)のモデ =0.1で播種し、グルコース ル。正常細胞は、絶食または増殖シグナルの欠如に対し 培地中で別々に増殖させ、播種開始24時間後にDXR 、細胞周期停止の実行およびエネルギー維持へのシフト (200μM)で処理した。生存率を適切な選択培地上 によって対応する。癌細胞の特徴の一つは、外部の調節 でのコロニー形成ユニット(CFU)として測定した。 シグナル(IGF−IR,Ras,およびAktを含む 3つの独立した実験からのデータを平均±SEとして示 )にかかわらず増殖する、または増殖モードを維持する 0 0 す。スチューデントのt検定による ch9Δras2Δ 1 9 * P<0.05,s 20 vs.sch9ΔRAS2 。(B)突然変異頻度の時間経過、10 たりのCan r 6 v a l 個細胞当 能力であることから、癌細胞は、絶食および低IGF− Iに対する応答において防御維持モードに入ることがで きず、または一部のみ入ることが予想される。 突然変異体として測定。示す株は、野生 【図31】絶食による分別的なストレス耐性。正常細胞 型(WT)、Sch9および/またはRas2を欠損す では、Akt,Rasおよび他の癌原遺伝子を含むIG る細胞、ならびに構造的に活性なRas2 v a l 1 9 を F−Iの下流エフェクターおよび他の増殖因子経路が絶 過剰発現する細胞。データは平均±SEM(n=3−5 食に起因する増殖因子の減少に応答して下方制御される 実験)を表す。細胞を1日目にDXR(200μM)で 。この下方制御は増殖を阻止/減少し、化学療法に対す 処理した。野生型無処理細胞の突然変異頻度を対象とし る防御を促進する。対照的に、発癌突然変異は、増殖シ て報告した。スチューデントのt検定による 05,sch9Δras2Δ 2 v a l 1 9 * P<0. vs.sch9ΔRAS 30 。 グナルから独立性により、腫瘍細胞のSTSに対する応 答を低下させる。それゆえ、癌細胞は、絶食状態に対す る応答ができず、または一部の応答のみに留まり、酸化 【図28】種々の高用量化学療法剤で処理したLIDマ ストレスおよび高用量化学療法に対して防御する代わり ウスにおけるストレス耐性試験。 に、増殖促進を続ける。 LIDおよび対照マウスは(A)100mg/kgエト 【図32】絶食哺乳類細胞における分別的ストレス耐性 ポシド(Eto,P=0.064)の単回注入、(B) 。初代ラットグリア細胞、ラットグリオーマ細胞株(C 500mg/kgCP(P=0.001)単回注入、( 6,A10−85,およびRG2)、ヒトグリオーマ細 C)400mg/kg5−フルオロウラシル(5−FU 胞株(LN229)およびヒト神経芽細胞腫細胞株(S ,P=0.148)単回注入、(D)ドキソルビシン( H−SY5Y)を試験した( DXR)2回注入、を受けた。最初の20mg/kgは 0.01)。 0日目に、2回目の28mg/kgは22日目(P=0 40 【図33−1】短期間絶食(STS)はマウスを化学毒 .022)に注入された。生存率%で評価された毒性を 性から防御する。3種の異なる遺伝的背景(A:A/J 示す。Petoのログランク検定によるP値。 B:CD−1 * p<0.05, * * p< C:ヌード)のマウスを48−60時 【図29】メラノーマ担癌LIDマウスにおける2サイ 間絶食させ、高用量エトポシド(100−110mg/ クルの高用量DXRに対する分別的ストレス耐性(DS kg)でチャレンジした( R)。(A)実験手順のスケジュール。(B)2サイク <0.005)。 ルの高用量DXRで処理したB16Flucメラノーマ 【図33−2】短期間絶食(STS)はマウスを化学毒 担癌LIDマウスおよび対照マウスの生物発光画像。5 性から防御する。(E)8週齢のCD−1雌性マウスを 匹のマウスを無作為に選択し、実験の間中腫瘍の進行ま 12mg/kgのシスプラチン投与前48時間と投与後 たは退縮のモニターを続けた。(C)2サイクルの高用 24時間絶食させた(p<0.05)。(F)15週齢 量DXR(P<0.05)で処理したB16Flucメ 50 のA/J雌性マウスを48時間絶食させ、16mg/k * * p<0.01, * * * p ( 7 ) JP 11 2015-186480 A 2015.10.29 12 gのドキソルビシンでチャレンジした(p<0.05) ミン酸、L−グルタミン、L−グリシン、L−プロリン 。 、L−セリン、L−チロシン、L−アルギニン、および 【図34A】神経芽細胞腫を有する絶食マウスにおける L−ヒスチジンを含有する。 分別的ストレス耐性。(A)NXS2(神経芽細胞腫) 【0018】 担癌マウスを高用量のエトポシド(80mg/kg)に 本発明の2番目の食事組成物は、0−0.2重量%(例 よる化学療法前に48時間絶食(STS)させた。 えば、0.02%、0.05%、0.1%、または0. 【図34B】神経芽細胞腫を有する絶食マウスにおける 15%)のL−トリプトファンおよび少なくとも0.0 分別的ストレス耐性。(B)実験手順。 5重量%(例えば、0.1%,0.5%,1%,または 【図34C】神経芽細胞腫を有する絶食マウスにおける 2%)のL−メチオニン、L−イソロイシン、L−ロイ 分別的ストレス耐性。(C)STSはNXS2細胞をド 10 シン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−スレオ キソルビシンとシスプラチンに対する感受性を増強する ニン、L−バリンを含有するが、タンパク質は含有しな かもしれない。 い。幾つかの実施態様では、本組成物は、また、L−ア 【図35】B16メラノーマ細胞を有する絶食マウスに ラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L− おける分別的ストレス応答性。STSはDXRに対する システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L− B16メラノーマ細胞の感受性を増強する。:化学療法 グリシン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、 48時間前の絶食によりマウスはより高い腫瘍奏効を示 L−アルギニン、およびL−ヒスチジンから成る群から し、この応答はバイオルミネッセンス技術の使用により 選択される1つまたは複数のアミノ酸を、例えば、それ さらに定量化された。 ぞれ少なくとも0.05重量%量(例えば、0.1%、 【発明を実施するための形態】 0.5%、1%、または2%)含有する。幾つかの実施 【0016】 20 態様では、本組成物は、正常量のそれぞれL−メチオニ 本発明は、少なくとも部分的に、減少レベルのメチオニ ン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L ン、トリプトファン、すべてのアミノ酸、またはタンパ −フェニルアラニン、L−スレオニン、L−バリン、L ク質を含む食事組成物、単糖、二糖、および多糖の代替 −アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、 物としてのグリセロールを含む食事組成物、ならびに減 L―システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、 少レベルのエネルギー、炭水化物、またはタンパク質の L−グリシン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシ 低カロリーまたはノンカロリー食事、および絶食が、化 ン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジンを含有する 学療法、放射線療法、酸化ストレス、または加齢から対 。 象を防御するために使用できるという予想外の発見に基 【0019】 づいている。 本発明の3番目の食事組成物は、L−メチオニン、L− 【0017】 30 トリプトファン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L より具体的には、本発明の一の食事組成物は、0−0. −リジン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L 2重量%(例えば、0.02%、0.05%、0.1% −バリン、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アス 、または0.15%)のL−メチオニンおよび少なくと パラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L− も0.05重量%(例えば、0.1%、0.5%、1% グルタミン、L−グリシン、L−プロリン、L−セリン 、または2%)のそれぞれL−トリプトファン、L−イ 、L−チロシン、L−アルギニン、およびL−ヒスチジ ソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−フェニル ンを、それぞれ0−0.2重量%量(例えば、0.02 アラニン、L−スレオニン、およびL−バリンを含有す %、0.05%、0.1%、または0.15%)を含有 るが、タンパク質は含有しない。幾つかの実施態様では するが、タンパク質は含有しない。 、本組成物は、また、L−アラニン、L−アスパラギン 【0020】 、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミ 40 本発明の第4番目の食事組成物は、単糖(例えばグルコ ン酸、L−グルタミン、L−グリシン、L−プロリン、 ース)、二糖、および多糖の代替物としてグリセロール L−セリン、L−チロシン、L−アルギニン、およびL を含有する。 −ヒスチジンから成る群から選択される1つまたは複数 【0021】 のアミノ酸を、例えば、それぞれを少なくとも0.05 本発明の食事組成物は、化学療法、放射線療法、酸化ス 重量%(例えば、0.1%、0.5%、または2%)含 トレス、または加齢から動物またはヒトを防御するため 有する。幾つかの実施態様では、本組成物は、正常量の に使用することができる。より具体的には、動物または それぞれL−トリプトファン、L−イソロイシン、L− ヒトは本発明の食事組成物を摂食することができる。動 ロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−ス 物またはヒトが化学療法、放射線療法、または酸化スト レオニン、L−バリン、L−アラニン、L−アスパラギ レスに暴露される場合、動物またはヒトの正常細胞は防 ン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタ 50 御されるが、癌細胞等の異常細胞は防御されない。例え ( 8 ) JP 13 2015-186480 A 2015.10.29 14 ば、動物またはヒトが化学療法、放射線療法、または酸 法、放射線療法、酸化ストレス、または加齢から動物ま 化ストレスに暴露される前に連日3−10日間本組成物 たはヒトを防御する方法を供給する。もし、炭水化物が を動物またはヒトに投与することができる。本組成物は 食事中に存在する場合、炭水化物の割合は該エネルギー 、また、暴露後24時間動物またはヒトに投与すること の半分以下である。幾つかの実施態様では、本食事は、 ができる。好ましくは、本組成物は、動物またはヒトを 1日当たり700キロカロリー未満(例えば、600、 化学療法、放射線療法、または酸化ストレスの暴露する 400、または200キロカロリーまたは0キロカロリ 前に連日3−10日間、および暴露後24時間の両方を ー)の総エネルギーを供給することができる。該動物ま 動物またはヒトに投与することができる。動物またはヒ たはヒトが化学療法、放射線療法、または酸化ストレス トを加齢から防御するために、組成物は3回目の食事毎 または3−10日毎に投与することができる。 に暴露される場合、該動物またはヒトの正常細胞は防御 10 されるが、癌細胞等の異常な細胞は防御されない。例え 【0022】 ば、本食事は該動物またはヒトが化学療法、放射線療法 化学療法の実施例として、エトポシド、ドキソルビシン 、または酸化ストレスに暴露する前に3―10連日該動 、シスプラチン、5−FU、ゲムシタビン、シクロホス 物またはヒトに投与することができる。本食事は、該暴 ファミド、ドセタキセル、シクロホスファミド、カルボ 露後24時間該動物またはヒトに投与することもできる プラチン、GMZ、およびパクリタキセルが挙げられる 。好ましくは、本食事は、該動物またはヒトを化学療法 が、これらに限定されるものではない。これらの薬物は 、放射線療法、または酸化ストレスに暴露する前3−1 個別にまたは併用で使用することができる。 0連日および該暴露後24時間の両方を該動物またはヒ 【0023】 トに投与することができる。加齢から動物またはヒトを 本発明は、また、低カロリー食事またはノンカロリー食 防御するために、本食事を3回目の食事毎または3−1 事を供給する。該食事は813−957キロカロリー以 20 0日毎に投与することができる。 下(例えば、700、500、300、100キロカロ 【0026】 リー以下、または0キロカロリー)の総エネルギーと、 さらに、本発明は、化学療法の前後に担癌動物または癌 30−36g以下(例えば、20、10、または5g以 患者を絶食させることによって、化学療法から動物また 下、または0g)のタンパク質を供給しながら、対象者 はヒトを防御する方法を供給する。例えば、担癌動物ま に栄養を供給することが可能な食材を含有する。もし、 たは癌患者を1サイクルの化学療法前48−140時間 炭水化物が本食材中に存在する場合は、炭水化物の割合 または化学療法後4−56時間絶食させることができる は総エネルギーの半分以下である。 。好ましくは、担癌動物または癌患者を1サイクルの化 【0024】 学療法前48−140時間および化学療法後4−56時 本発明の食事は、化学療法、放射線療法、酸化ストレス 間絶食させる。動物またはヒトが化学療法に暴露される 、または加齢を防御するために、動物またはヒトに(例 30 場合、該動物またはヒトの正常細胞は防御されるが、癌 えば、1日1回、または3回に分けて)投与することが 細胞は防御されない。幾つかの実施態様では、該動物ま できる。 たはヒトを1サイクルの化学療法の前後180時間以下 例えば、本食事を動物またはヒトに化学療法、放射線療 絶食させられる。 法、または酸化ストレスに暴露する前に連日3−10日 【0027】 間動物またはヒトに投与することができる。本食事は、 化学療法前48−60時間、化学療法後±24時間の絶 該暴露後、24時間動物またはヒトに投与することもが 食はマウスを防御し、癌細胞の化学療法に対する感受性 できる。好ましくは、本食事を、動物またはヒトに化学 を増強することが動物で観察された。さらに、以下に示 療法、放射線療法、または酸化ストレスに暴露する前に すように、癌患者においては、絶食または極めて低カロ 連日3−10日間、および該暴露後24時間の両方を動 リーの食事は化学療法から患者を防御したが、癌細胞は 物またはヒトに投与することができる。加齢から動物ま 40 防御しなかった。極めて低カロリーの該食事/絶食は、 たはヒトを防御するためには、3回目の食事毎にまたは また、癌細胞の化学療法に対する感受性を増強すると思 3−10日毎に投与することができる。 われた。絶食は種々の癌細胞の種々のタイプの化学療法 【0025】 に対する感受性を増強したことも動物実験で観察された 本発明は、さらに、動物またはヒト体重kg当たり1日 。加えて、動物実験では、絶食によりIGF−Iの75 11キロカロリー以下(例えば、8、5、または2キロ %の低下がもたらされ、IGF−Iの75−90%の低 カロリー以下、または0キロカロリー)のエネルギーと 下は動物を防御し、化学療法に対する癌細胞の感受性を 、動物またはヒトの体重当たり1日0.4g以下(例え 増強するのに十分であった。さらに、ヒト臨床試験では ば、0.3、0.2または0.1g、または0g)のタ 5日の絶食および/または低カロリー/低タンパク質/ ンパク質を供給しながら、栄養を供給することができる 低糖質のいずれかにより75%以上のIGF−Iの低下 食事を動物またはヒトに投与することによって、化学療 50 がもたらされたことが観察された(Thissen e ( 9 ) JP 15 t ew al.(1994)Endocrine 2015-186480 A 2015.10.29 16 Revi えに、タンパク質欠乏食における低メチオニンアミノ酸 15(l):80−101)。ゆえに、極めて低 混合物(LMA1)の実験用げっ歯類における化学療法 カロリー/低糖質だけでなく極めて低タンパク質の食事 毒性からの防御に対する効果を調べた。化学療法前の5 が化学療法から動物およびヒトを防御し、多くの種類の 日間、8匹のマウスにLMA1混合物をタンパク質フリ 癌細胞の化学療法に対する感受性を増強するであろう。 ー食と併用で投与した(ハーラン社,TD.07789 【0028】 )。LMA1混合物中のメチオニンレベルは対照食のレ 以下の実施例は本発明の範囲を説明することを意図する ベルの20%であった(TD.07788)。5日のL が、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。か MA1食の後、マウスに高用量のドキソルビシン(DX かる実施例は使用することが可能な典型的な実施例であ R,広く使用される化学療法剤)を静脈内注射した。毒 るが、当業者に公知の他の手順も代わりに使用すること 10 性の程度を調べるため、毎日マウスの体重減少と異常な が可能である。事実、通常の当業者は、本発明の教示に 行動をモニターした。体重と摂餌を毎日記録した。LM 基づき、必要以上の実験無しに、容易にさらなる実施態 A1処理マウスは対照群に比較してより迅速に体重減少 様を想像し、実行することができる。 から回復した(図1)。さらに、LMA1処理マウスは 【実施例1】 、高用量化学療法後、対照マウスに比べ有意に高い生存 【0029】 率を示した(それぞれ63% 癌を治療するための戦略は、主に腫瘍細胞に対する毒性 。 を増強することに集中してきた。本発明者は、腫瘍を殺 【0031】 すことに集中する古典的な腫瘍中心の薬物開発から離れ LTA1混合物 、正常細胞の防御を増強することに集中してきた。最近 メチオニン制限と同様に、低濃度のトリプトファン食も 、本発明者は短期間絶食(STS;40−60時間)に 20 寿命の延長と癌を含む若干の加齢関連疾患の減少を示し より化学療法に対する宿主抵抗性が増強する一方、同時 ている(4−7)。長寿とストレス耐性の間に強い関連 に化学療法誘発アポトーシスに対する腫瘍の感受性が増 性があるという事実に基づいて、本発明者らは、他のト 強することを報告した(分別的ストレス耐性、DSR) リプトファン源欠乏下において低トリプトファンアミノ (1)。STSの根拠は、増殖因子抑制とカロリー制限 酸混合物でのマウスの処理も寿命延長に加えてストレス (CR)が種々の生物の寿命を延ばし、ストレス耐性を 耐性の増強も提供することができると考えた。化学療法 増強するという加齢の分野におけるDr.Longoの 前10日間、8匹のマウスにタンパク質欠乏食(ハーラ 仕事に由来する。しかし、STSは宿主を分別的に防御 ン社,TD.07790)と併用でLTA1混合物の処 するための強力な方法ではあるが、臨床設定における応 理を行った。LTA1混合物中のトリプトファンレベル 用は制限してきた。ゆえに、本発明者は、化学療法に対 は対照食のレベルの20%であった(TD.07788 する宿主抵抗性を増強することもできる代替的な薬剤介 30 )。毒性をLMA1混合物実験で実施された場合と同様 入を調べた。研究を通じて、本発明者は、化学療法剤に に調べた。LTA1混合物は化学療法後の体重管理を改 対する宿主の防御の増強を提供する3つの有望な薬剤を 善し、対照に比べ体重減少のより迅速な回復をもたらし 決定した。化学療法に対する耐性増強に有効であった本 た(図2)。また、LTA1混合物処理マウスは、対象 薬剤は1)メチオニン制限アミノ酸混合物(LAM1) と比べて4倍高い生存率であった(50% 、2)トリプトファン制限アミノ酸混合物(LTA1) .5%)(図2)。 、および3)グリセロール(G1)であった。LMA1 【0032】 は、本食事が他のメチオニン源を欠乏する場合のみ有効 G1混合物 であり、LTA1は本食事が他のトリプトファン源を欠 カロリー制限は、酵母から哺乳類までの範囲のモデル生 乏する場合のみ有効である。最後に、G1はグルコース 物においてストレス耐性を増強し、寿命を延長する(L 制限食との併用時に有効である。興味深いことに、LM 40 ongo,2003)(8,9)。絶食が複数の化学療 A1とLTA1は等カロリーで、摂食も同等であるにも 法に対する防御効果を示し、炭素源のグリセロール置換 かかわらず、LMA1/LTA1処理により動物は体重 が酵母の寿命の延長とストレス耐性に好ましい効果を示 低下特性を示した。これは、LMA1/LTA1が該動 すという我々の最近の結果を考慮して、マウスにおける 物を「増殖/再生」から「維持」へとエネルギーをシフ グリセロール摂餌のトキシンに対する防御効果を調べた トさせ、ゆえに、化学療法毒性に対する耐性を増強して 。1群5匹のマウスから成る2群のそれぞれに2種類の いることを示唆する。 等カロリー食、対照食(40%デンプン/砂糖/マルト 【0030】 ースデキストリンを補充したTeklad LMA1混合物 形飼料)またはグリセロール含有G1食(40%グリセ メチオニン制限は、実験用げっ歯類の寿命を延ばし、ス ロール補充)を6日間自由に摂餌させた。グリセロール トレス耐性を高めることが示されている(2,3)。ゆ 50 食のマウスは対照食のマウスよりやや多く摂餌したが、 vs.13%)(図1) vs.12 8604固 ( 10 ) JP 2015-186480 17 A 2015.10.29 18 6日目には両群とも血糖値の18%の減少を示した(図 マウスにおけるドキソルビシン実験 3)。その後、両群のマウスに50mg/kgのパラコ マウスをLMA1またはLTA1で処理した後、24− ートを腹腔内に1回投与し、正常食(8604固形飼料 26mg/kgのドキソルビシン(ベッドフォード )に戻した。パラコートは肝細胞と肺細胞のS期停止を ボラトリーズ社)を30ゲージのインスリン用注射器( もたらし(10)、死に至ることが知られている(11 ベクトンディッキンソン社)で静脈内注射した。ドキソ )。対照群のマウスは3日目までにすべて死亡したが、 ルビシンは精製水中に溶解し、生理食塩水で最終濃度5 グリセロール食マウスの5匹中3匹はパラコート毒性を mg/mlに希釈した。全てのドキソルビシン注射の後 完全に防御し(図3C,p<0.05)、パラコート処 、生理食塩水/ヘパリンで洗浄して、血管内皮細胞の損 理5日後に正常な体重に回復した(図3D)。これらの 傷を最少にした。毒性と有効性を調べるため、マウスの 結果は、炭素源をグリセロールで置換した食事はインビ 10 体重減少と一般的行動を常時モニターした。体重は実験 ボの酸化ストレス耐性を増強し、より高等な真核生物の 期間中毎日1回記録した。瀕死状態と判断したマウスは カロリー制限を模倣する可能性を有していることを示す 二酸化炭素麻酔により屠殺し、剖検を実施した。心毒性 。 は、急性のドキソルビシン毒性による死亡の主要な原因 【0033】 であるので、組織レベルで障害の程度を調べるため組織 材料と方法 標本スライドを作成した。 LMA1およびLTA1 【0038】 LMA1およびLTA1は純粋な合成アミノ酸混合物に マウスにおけるグリセロール食 基づいており(1)、ハーランテクラッド社で我々のた 体重18−24gのA/Jマウスに40%グリセロール めに1/2インチのペレット状に注文生産された。対照 食(W/W)を6日間与えた。 (TD.07788)、LMA1(TD.07790) 20 本食は60重量%のペレット(ハーランテクラッド社, 、およびLTA1(TD.07789)を含むすべての Diet8604)と40重量%のグリセロール(バイ 群は等カロリー食(3.9Kcal/g)を摂餌した。 オサーブ社,米国ニュージャージー州)から成っていた 【0034】 。簡潔には、ペレットをフードプロセッサーで細かく粉 LMA1混合物:体重25−30gのCD−1マウスに 砕し、USPグレードのグリセロールと混合した。ペレ 化学療法前5日間正常(0.86%)または低(0.1 ット粉末と混合する時には、グリセロールの密度(1. 7%)レベルのメチオニンを含有する純粋合成アミノ酸 26g/ml)を考慮した。食物は4日間乾燥した。グ 混合物を予め摂餌させた。 リセロールは吸湿性であることから、大気中の湿気を吸 【0035】 い取り、乾燥過程の最初の3日間でペレット重量を3% LTA1混合物:体重25−30gのCD−1マウスに 増加させ、その後安定な重量を維持した。血糖値は6日 化学療法前5日間正常(0.86%)または低(0.1 30 目に測定した。無菌の31ゲージ針を用いて尾静脈を最 7%)レベルのトリプトファンを含有する純粋合成アミ 少に穿刺し、短時間出血させた。血糖値は、Preci ノ酸混合物を予め摂餌させた。 sion 【0036】 ト ラボラトリーズ社)により測定した。グリセロール ラ Xtra血糖モニタリングシステム(アボッ は主に肝と腎で代謝されるので、これらの臓器を剖検時 に組織学的検査用に採取した。 【0039】 マウスにおけるパラコート試験 6日間のグリセロール食の後、マウスにパラコート(シ グマ社)を注入した。パラコートはリン酸緩衝食塩水中 40 に溶解して7.5mg/mlに調製し、31ゲージ注射 器(ベクトン ディッキンソン社)を用いて50mg/ kgを腹腔内に注入した。パラコート投与後、速やかに 動物を正常食(ハーランテクラッド社,Diet 86 04)に戻した。マウスは4日間2時間毎にモニターし 、体重を実験期間中毎日1回記録した。体重測定は、グ リセロール食期およびパラコート後期の2期に分けて解 析した。マウスがストレスの徴候または痛みを示し、ま た、高度に訓練され、経験を積んだ研究者が回復の可能 性が無いと判断した時には、マウスを屠殺した。肺は主 【0037】 50 要な標的臓器であるので、屠殺したマウスを剖検し、組 ( 11 ) JP 19 2015-186480 A 2015.10.29 20 織学的検査用に肺を採取した。簡潔には、肺のスライス 命延長に対するカロリー制限(CR)の効果は、Tor を4%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋し ,Akt,およびRasを含む経路の下方制御が関わる 、4μm厚に薄切し、H&E染色した。 かもしれない。ここで、我々は、酵母Sch9(Akt 【0040】 およびS6Kの両哺乳類キナーゼのホモローグ)が、T 文献 CAサイクルと呼吸から解糖とグリセロール生合成への 1.Raffaghello die FM,Wei chi G,& c Natl Acad ing 代謝スイッチに関連する遺伝子の共通セットを制御する F,Bian ネットワークの中心成分であることを示唆する遺伝的な VD(2008)Pro データおよび遺伝子発現データを提供する。経時的な生 Sci USA. RA,Buehner Y,Harper Smith− C,Saf M,Madia Longo 2.Miller ng L,Lee JM,Sigler Wheelock Cell DeFelice R,& 成し、遊離した。長寿命のsch9Δ、tor1Δ、お よびras2Δ変異株で最も上方制御されたもののうち 、グリセロール生合成遺伝子GPD1、GPD2または N,Matias JR, RHR2の欠損は、sch9Δ変異株における経時的寿 A,&Zimmerman JA( 命延長とストレス耐性を逆転させるのに十分であった。 1993)J Nutr 4.Ooka 123,269−274. H,Segall 炭素源としてのグリセロールをグルコースまたはエタノ PE,&Timir PS(1988)MechAgeing Dev 43,79−98. 5.Segall 76)Mech PE&Timiras Ageing Segall Aging Dev PS(19 20 5,109− PS,Hudson スに対する耐性が増強された。これらの結果は、“炭素 【0043】 Masoro Dev VN(2001)Exp Ge EJ(2005)Mech BK,Steffen Life Ag KK,& 30 )。Akt/PKBは高度に保存されたセリン−スレオ ニンキナーゼであり、線虫Caenorhabditi M,Yamagami Y,Kawamoto T(1996)Arch K K,& ことが示されている(Paradis Toxico E,Giorgio M S,PelicciG,Reboldi PP,Lanfrancone L,&Pelicci PG(1999)Natur 40 402,309−313. 12.Rogers 1965)J QR Nutr s elegansのDaf−2長寿命経路で機能する et al., 1999)。類似する長寿命調節経路もショウジョウバ エとマウスで同定されている(Kenyon,2001 11.Migliaccio P,Pandolfi and Finch,2003 M 70,514−518. ,Mele 2001;Longo 64,1323−1328. 10.Matsubara ,Kitazawa し、長寿命を調節する潜在的な機序が多くの真核生物に おいて保存されていることを示唆する(Kenyon, M(2007)Cell Sci Akt/PKB,Tor,およびRas経路の活性を減 少させる突然変異は、幾つかのモデル生物の寿命を延長 126,913−922. Kaeberlein Tanaka 序論 36,1101−1136. 9.Kennedy e することにより、グルコース濃度が減少し、酸化ストレ 防ぐための新しい戦略を提供することを示唆する。 PE(1984)Neurobiol rontol l DB,& 5,235−242. 7.Anisimov oI らされる寿命延長と同様な延長がもたらされた。マウス 源置換”(CSS)が、加齢を遅らせ、細胞を障害から 6.Timiras eing ールで置換すると、カロリー制限または絶食によりもた 食をグルコース中心の炭水化物からグリセロールに置換 124. 8. 欠乏させ、蓄積脂肪を減少させるが、グリセロールを合 M(2005)Ag 4,119−125. 3.Orentreich as 存期間中、SCH9欠損変異株は細胞外のエタノールを G,Cha 10 & Harper )。酵母では、哺乳類キナーゼAkt/PKBおよびS 6Kとの高度な配列同一性を共有するSch9は、栄養 感知経路の一部であり、その下方制御は経時的寿命(C LS,非分裂酵母集団の生存時間)を3倍にまで延長す る(Fabrizio AE( 87,267−273. Ras et al.,2001)。 Gタンパク質も進化上保存され、グルコース/ 増殖因子に応答して細胞分裂に関係する。RAS2の欠 【実施例2】 損は酵母のCLSを2倍にする(Fabrizio 【0041】 t al.,2003)。哺乳類では、Rasの寿命制 e SCH9調節炭素源置換はカロリー制限と同様な寿命延 御における役割は確定的に証明されてはいないが、Ak 長効果がある tとともに、RasはIGF−Iシグナル伝達の主要な 【0042】 メディエーターの一つであり、加齢を促進することが示 要約 されている(Holzenberger,2004;L 酵母からマウスまでの範囲の生物において証明された寿 50 ongo,2004)。細胞増殖と細胞周期進行を調節 ( 12 ) JP 2015-186480 21 A 2015.10.29 22 するもう一つの保存されている栄養応答性経路は、線虫 ポスト C.elegansとショウジョウバエの寿命調節と関 使用される(Gray 連するとされてきたラパマイシン標的プロテインキナー llieand ゼTORを含む。LET−363/CeTORのノック グルコース/エタノール培地中での増殖から水への転換 ダウンは、成中寿命の第1日目にスタートして、線虫の は、非分裂細胞の極度のCR/絶食状態に似る。CRの 寿命を2倍以上にした(Vallai この極度の態様は野生型の酵母の経時的な生存率を二倍 et al., ダイオーキシックシフト期の間の炭素源として et al.,2004;Li Pringle,1980)。酵母の 2003)。同様に、哺乳類mTOR相互作用タンパク にする(Fabrizio 質raptorの線虫相同分子種であるDaf−15の 03)。RLSとは対照的に、CR誘発性のCLSの増 活性低下は、寿命延長を促進する(Jia 加はSch9によって部分的にのみ介在される(Fab .,2004)。ハエでは、ドミナント et al ネガティブd 10 rizio Longo,20 et al.,2005;Wei TORまたはTOR阻害dTsc1/2タンパク質の過 al.,2008)。 剰発現も寿命延長につながる(Kapahiet 【0046】 al and et .,2004)。さらに、CeTORのノックダウンは 異なる生物における栄養感知経路と寿命調節との間の連 食事制限(DR)の対象である線虫の寿命をさらに延長 鎖を示す広範な一連の成果にもかかわらず、加齢の過程 はせず、TOR阻害は栄養豊富な食物の有害な効果から を遅らせる原因となる重要な機序はいまだに分かりにく ハエを防御するので、少なくとも一部分はTORによっ い。異なるモデル生物に見られてきた寿命延長と異なる て介在されるDRの有益な効果が示唆される(Hans ストレスチャレンジに耐える能力との間の直接的な相関 en 性は、細胞防御の活性化が重要な生存戦略を意味するこ et al.,2007;Kapahi et al.,2004)。 とを示す(Longo 【0044】 20 and Fabrizio,2 002)。我々の以前の研究は、スーパーオキサイドが 2種のTOR相同分子種TOR1とTOR2が酵母で確 加齢と加齢依存性の死亡に重要な役割を果たしているこ 認されている。Tor1とTor2のいずれもラパマイ とを示唆するが、スーパーオキサイドに対する防御は、 シン感受性様式における増殖関連シグナル伝達を介在す SCH9とRAS2における突然変異の寿命に対する潜 る一方、Tor2は加えてアクチン細胞骨格の細胞周期 在的な効果の一部を説明するのみである(Fabriz 依存的な構築の制御においてラパマイシン非感受性の機 io 能を有する(Loewith al,2002) h9,Tor,およびRas2の経路との間の関係、お 。TOR経路活性の低下は酵母の複製寿命(RLS)の よび寿命に対するCR依存性効果の機序との間の関係は 延長をもたらし、個々の母細胞によって作製される娘細 良く理解されていない。ここで、我々は、Sch9は言 胞の数(Kennedy et al.,1994;M うに及ばずTorとRasによって制御される遺伝子の ortimer Johnson,1959) 30 セットの発現変化がグリセロール生産への代謝スイッチ and et et al.,2003)。カロリー制限とSc は、Sch9不活性化の時に得られる数に匹敵する(K につながり、それは細胞防御と寿命延長の増強をもたら aeberlein eberlein et al.,2005a;Ka すという証拠を提供する。炭素源としてグルコースまた and Kennedy,2005 はエタノールをグリセロールで置換することは、細胞防 )。さらに、ハイスループット法で個々の酵母の欠損変 御と寿命延長の促進におけるカロリー制限と同様に効果 異株のCLSを測定した結果、Tor経路に関連する遺 的である。糖類をグリセロールで置換した食事は、また 伝子欠損を保有する幾つかの長寿命株を同定した(Po 、酸化ストレスからマウスを防御したことから、炭素源 wers et al.,2006)。Tor1活性と 置換(CSS)は、高等真核生物におけるカロリー制限 CLSの間の逆相関を指示するさらなる事実が最近提供 または絶食の防御効果の一部の引き金を引く可能性があ されている(Bonawitz et al.,200 7)。 ることを示唆する。 40 【0047】 【0045】 結果 Tor1とSch9の両酵母の加齢調節機能は、カロリ SCH9とRAS2およびTOR1との間の遺伝的相互 ー制限(CR)依存性RLS延長を介在する。いずれか 作用 の経路の下方制御は、培地のグルコース含有量を低下す 遺伝的アプローチを使用して、我々は、ストレスと寿命 る効果に良く似ており、sch9Δまたはtor1Δ変 に対する細胞防御の調節におけるSch9,Tor1, 異株がカロリー制限された時にはRLSの更なる延長は およびRas2の間の関係を調べた。Tor1活性の欠 観察されない al. 損に起因する寿命とストレス耐性に対する効果は、Sc ,2005b)。発酵性の増殖中に生産されるエタノー h9またはRas2欠損株に見られる活性ほど強固では ルは、酵母細胞が迅速な増殖から遅い出芽へと転換し、 ない。我々は、sch9Δノックアウト株とtor1Δ (Keaberlein et 実質的に増殖を止めるダイオーキシックシフト期および 50 sch9Δ二重ノックアウト株との間の平均寿命また ( 13 ) JP 23 2015-186480 A 2015.10.29 24 はストレス耐性の何らかの有意差を見出さなかった(図 伝子を活性化するストレス応答性転写因子(TFs)M 4Aおよび4G)。対照的に、SCH9プロモーター域 sn2/4およびGis1を正に調節する。興味深いこ にトランソポゾン挿入を有する変異株におけるTOR1 とに、Ras2欠損に関連するストレス耐性と寿命延長 の欠損は、SCH9発現のみを減少させる(Fabri の増強は、STRE結合TFsMsn2/4とPDS結 zio al.,2001)が、この欠損は、熱 合Gis1の両方を必要とする一方、sch9Δ介在性 およびスーパーオキサイド産生剤メナジオンに対する耐 の長寿命調節は、主に後者に依存する(Fabrizi 性の更なる増強をもたらしたが、過酸化水素に対する耐 o et 性の増強はもたらされなかった(図4B)。このことは 2008)。これらの結果は、共通の下流エフェクター 、TOR1がSch9経路の更なる不活化に寄与するこ がSch9とRas2によって異なって調節されること とを示唆する。この結果は、Sch9がラパマイシン感 10 を示す。事実、ras2Δsch9Δ二重ノックアウト 受性Tor複合体I(TORC1)の直接標的であるこ 細胞は、それぞれ単独の欠損変異株に比べてより高いス とを示す最近の研究と一致する(Urban a トレス耐性を示した(図4D)。該二重ノックアウト細 l.,2007)。事実、TORC1成分をコードする 胞は、また、野生型細胞に比べ平均寿命における5倍の TCO89の欠損、またはラパマイシン処理のいずれか 増加を示した(図5G)。しかし、sch9Δras2 によってTORC1の活性を減少させると、熱および過 Δtor1Δ三重欠損変異株は、寿命とストレス耐性に 酸化水素に対する細胞耐性が増強される。Sch9活性 つき何らの更なる増強も示さなかった(図4Dおよび4 は、突然変異頻度の加齢依存性の増加と関連するので( G)。これらの結果は、Tor/Sch9とRasによ Fabrizio al.,2005)、我々は って制御されるシグナル伝達系に平行して、しかし一部 経時的変化の間のゲノム不安定性調節におけるSch9 は連結して構成される寿命調節ネットワークを表す(図 とTor1との間の相互作用を調べた。tor1Δ変異 20 4H)。 株は1日目と7日目の間のゲノム不安定性(CAN1遺 【0050】 伝子の加齢依存性突然変異頻度で測定した)に対する感 長寿命変異株の遺伝子発現特性 受性が野生株よりやや低い一方、tor1Δsch9Δ Tor/Sch9経路とRas経路の下流にある寿命延 二重変異株における突然変異頻度の変化はsch9Δ変 長のメディエーターを調べるため、我々は、3つの主要 異株の該変化に比べ有意ではなかった(図4E)。TO な長寿命変異株:sch9Δ,tor1Δおよびras R1の過剰発現は、sch9Δのストレス耐性形質をや 2ΔのすべてにつきDNAマイクロアレイ解析を実施し や減少させたのみであった。しかし、tor1Δのスト た。2.5日培養の長寿命変異株と野生型細胞から全R レス耐性と寿命延長はSCH9の過剰発現によって消滅 NAを抽出した。この日数は、未だ分裂しているより若 した(図5F)。まとめると、これらのデータは寿命調 い日数(1−2日目)の細胞の小さなフラクションから 節におけるTorとSch9との間の共有のシグナル伝 30 生ずる可能性があるノイズならびにより遅い日数(4− 達経路と一致し、Sch9シグナル伝達におけるTor 5日目)において正常に生ずる全般的な代謝低下とその 1の上流の役割を示唆する(図4H)。 結果としての遺伝子発現の低下のいずれも避けるために 【0048】 選択された(Fabrizio TorとRas/cAMP−PKAシグナル伝達のいず 2003)。全RNAから得られたcRNAをS.セレ れもストレス応答性(STRE)遺伝子を調節すること ビシエに存在する5845遺伝子の内5841遺伝子の が知られている(Zurita−Martinez a 検出を許容する遺伝子チップとハイブリダイズした。各 Cardenas,2005)。構造的に活性な 遺伝子型の3つの独立集団を解析した。計800遺伝子 nd et Ras2(ras2 et v a l 1 9 et al.,2001;Wei and et al., Longo, )を異所性に発現するこ は、野生型細胞に対して2倍を超える発現の変化を示し とによってRas活性を増強させると、tor1Δ変異 た。これらの中で、63遺伝子は、3つの変異株のすべ 株の寿命延長とストレス耐性が逆転された(図4F)。 40 てにおいて2倍を超えて上方制御され、25遺伝子は一 反対に、RAS2の欠損は、ストレス耐性に関してto 貫して下方制御されていた(図5A)。最も上方制御さ r1Δに対する相加効果をもたらすが、寿命については れた7種のmRNAレベルおよびtor1Δおよびsc 相加効果をもたらさなかった(図4Cおよび4G)こと h9Δ変異株のいずれにおいても最も下方制御された遺 から、Tor1とRas2による寿命調節の重複が示唆 伝子の1種を定量的RT−PCRおよび/またはノーザ された。 ンブロットにより確認した。長寿命変異株の対比較に基 【0049】 づき、長寿命変異株では上方および下方制御遺伝子は有 我々は、以前にTor1,Sch9,およびRas2に 意に重複しており、このことから、Ras,Tor,お よって調節される寿命の調節が、プロテインキナーゼR よびSch9を中心とする寿命調節ネットワークが下方 im15に収斂することを示した(Wei 制御遺伝子の共通のセットを制御していることが示唆さ et al .,2008)。Rim15は、細胞防御に関与する遺 50 れた(表1)。これら3つの長寿命変異株に共通する特 ( 14 ) JP 25 2015-186480 A 2015.10.29 26 徴を調べるため、我々は、ウィルコキソンランクテスト 変異株がグルコース取り込みが最大化される絶食様モー によるマイクロアレイデータの遺伝子オントロジー(G ドに入っている可能性が示された。変異株および野生型 O)解析を行った。 細胞では1−2日目には細胞外グルコースが枯渇してい データは、3つの長寿命変異株すべてに共通の変化を示 ることを考慮すると、2.5日目に発酵用に使用可能な しているが、GOカテゴリー解析は、ras2Δ変異株 主要な基質は、おそらく後期指数増殖期にある酵母によ および他の2変異株との間の発現パターンの相違を示し って正常に蓄積されているグリコーゲンであろう(We た。この結果は、我々のSch9およびRas2によっ rner−Washburneet て制御される2つのパラレルシグナル伝達経路の遺伝的 )。 解析と一致し、同一の寿命調節経路におけるSch9と 【0054】 Torの役割と合致する(表1および図4H)(Wei 10 静止期生存率、胞子形成、減数分裂およびストレス応答 ,2008)。 に関わる遺伝子(FMP45,GRE1,IME1,R 【0051】 PI1,SPS100,およびTAH1)は3つの長寿 al.,1993 命変異株すべてにおいて最も上方制御された遺伝子の中 にあった。長寿命変異株における寿命延長およびストレ ス耐性へのこれらの寄与を調べるため、われわれは、最 も上方制御された遺伝子の一つと組み合わせて、SCH 9,RAS2,またはTOR1の欠損を保有する二重変 異株のセットを創出した。FMP45またはYDL21 8Wのいずれかの欠損はsch9Δ変異株の平均寿命を 20 やや減じた(図5B)一方、ras2Δ変異株には効果 はなかった。IME1またはRPI1の欠損は、Sch 9の欠損に起因するストレス耐性または寿命延長のいず れにも影響しなかった(図5B)。最も下方制御された 遺伝子YLR012C欠損は、該細胞の寿命またはスト レス耐性に有意に影響しなかった。 【0055】 エルゴステロール生合成において機能するタンパク質を コードする幾つかの遺伝子は長寿命変異株では上方制御 されていた。エルゴステロールは酵母では優勢なステロ 30 ールであり、構造的にコレステロールと密接に関連する 。細胞膜の構造成分であることに加え、エルゴステロー ルはリン脂質合成、脂質ラフト形成、シグナル伝達、お 【0052】 よび好気的なエネルギー代謝に影響する(Parks 長寿命変異株の発現特性の遺伝子オントロジー解析(G et O)。有意な上方または下方制御カテゴリーを示す(p のいずれかの欠損はsch9Δ変異株の熱および酸化ス <0.01)。多試験エラーを修正するためq値も算定 トレス耐性のいずれにも有意な減少の原因となる。しか した。 し、われわれのマイクロアレイ解析で最も上方制御され 【0053】 たエルゴステロール生合成遺伝子ERG5の欠損は、s 寿命延長に関連する代謝変化 ch9Δ変異株と関連する寿命延長または低ストレス耐 長寿命変異株と野生型細胞との間の遺伝子発現特性の比 40 性を逆転させなかった。特に3つの長寿命変異株すべて 較により、TCAサイクル、酸化的リン酸化、ミトコン で上方制御されたエルゴステロール生合成遺伝子は、ス ドリアリボソームタンパク質、およびミトコンドリア標 クワレンからエルゴステロールへの変換に関わる遺伝子 的タンパク質の機能を含むミトコンドリアタンパク質を であり、分子状酸素を要求し、しばしばNADPHから コードする遺伝子の一貫した下方制御が示された。解糖 NADP 系/発酵系遺伝子発現は代わりに上方制御されたが、糖 この上方制御は、これらの長寿命変異株のポスト・ダイ 新生遺伝子は上方制御されなかった。興味深いことに、 オーキシック期生存期間中の低酸素環境を反映し、そし 高グルコース濃度で阻害されることが知られる(Ozc て、細胞の酸化還元状態と生存との関連を示唆している an and al.,1995)。HMG1またはERG28 + への酸化に関わる。 Johnston,1999)高親和性 のかもしれない。まとめると、これらの結果は、長寿命 グルコース輸送体または仮想のグルコース輸送体をコー 変異株中で最も上方制御された遺伝子の中で、多くの単 ドする幾つかの遺伝子は、上方制御されており、長寿命 50 一遺伝子の欠損は寿命には殆ど効果がないことを示して ( 15 ) JP 2015-186480 27 A 2015.10.29 28 いる。 長に必要である 【0056】 グリセロール生合成の寿命制御における役割をさらに調 長寿命変異株におけるグリセロール生合成遺伝子の高発 べるため、我々は、sch9Δの背景における酵母DL 現 −グリセロール−3−ホスファターゼRhr2を欠損す TCAサイクル遺伝子および呼吸遺伝子の低発現と解糖 る株を作製した。このrhr2Δsch9Δ二重変異株 系/発酵系遺伝子の高発現に加えて、我々は、解糖流量 は、グリセロールを細胞外に蓄積することができなかっ と限定された呼吸能の増強がある場合に、オーバーフロ た(図8A)。RHR2の欠損は、DBY746遺伝的 ーした代謝の副産物であるグリセロールの代謝に関与す 背景におけるSCH9の欠損と関連する寿命延長ならび る遺伝子が上方制御されることも観察した(図6Aおよ にDBY746遺伝的背景におけるSCH9の欠損に関 び6B)。グルセロール代謝に関与する遺伝子(21遺 10 連する熱および酸化ストレス耐性を破壊した(図8Bお 伝子)の有意な上方制御がsch9Δおよびras2Δ よび8C)。酵母KOコレクション(BY4741の遺 変異株に観察された(それぞれp値0.0058および 伝的背景)を用いて、我々は、グリセロール生合成鍵遺 0.0142,ウィルコキソンランクテスト、片側)。 伝子欠損株においてSCH9を欠損させた。NAD依存 酵母では、グリセロールは解糖中間物であるトリアシル 性グリセロール−3−リン酸脱水素酵素遺伝子のGPD グリセロールまたはジヒドロキシアセトンリン酸(DH 1またはGPD2のいずれかの欠損は野生型BY474 AP)のいずれかから生産される(図6A)。トリアシ 1細胞における有意な寿命の変化をもたらさなかった。 ルグリセロールの加水分解を担うリパーゼをコードする しかし、GPD1またはGPD2のいずれかの欠損は、 遺伝子は、やや上方制御される一方、DHAPからのグ Sch9欠損と関連する寿命延長の逆転につながった( リセロール生産に要求される鍵酵素をコードしているG 図8D)。同様に、RHR2の欠損はsch9Δ変異株 PD1およびGPD2は、長寿命変異株の全てにおいて 20 の寿命延長を破壊した(図8D)。対照的に、DL−グ より高い発現レベルを示し(図6Bおよび6C)、これ リセロール−3−ホスファターゼの重複性イソザイムの らの変異株によって利用されるグルコースの一部はグリ Hor2欠損は、sch9Δ変異株の寿命には影響しな セロール生合成に向けられることが示唆された。 かった。これら2つのイソザイムの相違は、Rhr2は 【0057】 細胞における優勢なイソザイムであるという事実で説明 事実、3日目に野生型細胞と比較してsch9Δ変異株 できよう(Norbeck では高レベルの細胞内グリセロールが観察された(図7 )。Rhr2の主要な役割と一致して、Rhr2のイン A)。野生型細胞では、細胞外グリセロールレベルは2 ヒビターをコードするYIG1のmRNAレベル(Gr 日目にはピークに達したが、3日目までには大部分が枯 anath 渇していた。しかし、sch9Δ培養では、9日目まで すべてにおいて下方制御されていた(図6B)。特に、 の培養液中ではるかに高いレベルのグリセロールが測定 30 一部のrhr2Δ培養は再増殖/ギャスピングgasp された(図7B)。 ingを示したが、BY4741の遺伝的背景にあるr 対照的に、指数増殖中(たいがいはポスト ダイオーキ et al., 1996 et al.,2005)は長寿命変異株 hr2Δ変異株の寿命は、野生型細胞と同様であった( シック期であるが)に生産されたエタノールは、sch Fabrizio 9Δ変異株では初期には枯渇していたが、野生型細胞で 【0059】 et は枯渇せず(図7Cおよび7D)(Fabrizio Rhr2およびHor2のいずれも欠損する細胞は、ス et al.,2005)、野生型細胞におけるエタノ ーパーオキシドアニオン生成剤パラコートに高感受性で ールの生合成と遊離からsch9Δ変異株におけるグリ あることが示されており、浸透ストレスを超えた細胞防 セロールの生合成と遊離への代謝スイッチが示唆された 御におけるグリセロール生合成の役割が示唆される(P 。グリセロール蓄積は、他の炭素源の枯渇によっても同 ahlman 時に起こり得た。脂肪体のナイルレッド染色により、s 40 ch9Δ変異株のストレス耐性におけるグリセロール生 ch9Δ変異株ではトリアシルグリセロールおよび他の 合成遺伝子の役割を試験した。熱およびペルオキシド誘 中性脂肪のレベルが野生型細胞に比べすべての日数で一 発酸化ストレスに対する高感受性はRHR2ヌル株に観 貫して低いことが示された(図7E)。このことは、脂 察されたが、BY4741を背景とするgpd1Δ,g 質をグリセロールに変換する脂肪分解性酵素のmRNA pd2Δ,またはhor2Δ変異株では観察されなかっ レベルが、わずかではあるが一貫して増加していたこと た(図8E)。さらに、Rhr2インヒビターYig1 と一致する。細胞外グリセロールの蓄積は、また、to を欠損する細胞は、野生型細胞を少し上回るストレス耐 r1Δおよびras2Δ変異株でも生じたが、sch9 性であった(図8E)。sch9Δ変異株のストレス耐 Δ変異株で観察されたものに比べてより低かった。 性形質は、GPD1,GPD2,またはRHR2の欠損 【0058】 によって部分的に逆転した(図8E)。グリセロール生 グリセロール生合成遺伝子はsch9Δにおける寿命延 50 合成経路における一つの酵素の欠損が他の酵素の活性化 et al.,2004)。 al.,2001)。我々は、s ( 16 ) JP 29 2015-186480 A 2015.10.29 30 によって代償され得るようなストレスに対するグリセロ 般的なストレス応答の一部である可能性が示唆された。 ール介在性の応答の重複性があるように思われる。SC これらのデータは、高浸透圧増殖条件が酵母におけるR H9の欠損は、おそらくHor2レベルの上方制御によ LSとCLSを延長するという報告とも一致する(Ka るrhr2Δの熱および過酸化水素に対するストレス耐 eberlein 性を大いに増強した。グリセロールホスファターゼ(R kami hr2およびHor2)はグリセロール生産の律速酵素 関して、長寿命sch9Δ変異株でグリセロール濃度が ではない(Pahlman et et al.,2002;Mura et al.,2008)。しかし、寿命に al.,2001) 高い培養3日目(図7B)に野生型酵母に細胞外グリセ ので、Gpd1およびGpd2の上方制御は、SCH9 ロールを添加したが(0.1%および1%)、何らの有 欠損細胞におけるrhr2Δストレス感受性形質の救援 益な効果も示されなかった(図9E)。 に寄与する可能性もある。同様な重複はGpd1および 10 【0062】 Gpd2間にも存在する。どちらかの単一欠損変異株で グリセロールはカロリー制限の加齢効果に影響せずに炭 は、有るか無しかの効果であるが、gpd1/2Δ二重 素源を供給する ノックアウト株は熱および過酸化水素処理に高感受性で エタノールは炭素源としてプロエイジングシグナル伝達 ある。sch9Δgpd1Δgpd2Δ三重変異株は液 を誘発し、細胞死を促進する。 体培養において厳しい増殖欠損と低い飽和密度を示し、 蒸発させる、または酵母を使い古された培地から水に切 上位研究のためのこの変異株の使用中止を余儀なくされ り替えることのいずれかによってエタノールを除去する た。まとめると、これらの結果は、SCH9欠損変異株 という極度のカロリー制限/絶食条件を提供することに における細胞防御と寿命延長の促進にグリセロール生合 よって、酵母の経時的寿命が延長される(Fabriz 成が重要性であることを強調する。 io 【0060】 20 グリセロール依存性寿命延長の機序 et al.,2005)。このエタノール利用 とグリセロール生合成の代謝的切り換えは、プロエイジ ング炭素源(グルコースとエタノール)の有害な効果を グリセロールは、部分的にその化学シャペロンとしての 除去し、sch9Δ変異株の培養におけるカロリー制限 機能の故に、ストレスを防御できる(Meng に似た環境を作成する(図7D)。酵母の生存における et al.,2001;Deocaris,2006;Wo 異なる炭素源の役割を解明するため、我々は、プレート jda,2003)。グリセロールの熱誘導タンパク質 上で細胞の生存をモニターするインサイツアッセイを使 ミスフォールディングに対する防御の役割を調べるため 用した。この方法は、われわれが、a)他のすべての栄 、我々は野生型細胞とsch9Δ細胞における熱感受性 養の存在下で異なる炭素源の効果を調べること、b)カ の細菌ルシフェラーゼ(Parsell al. ロリー制限のRLS研究に使用される実験条件と同様な ,1994)の活性喪失と回復を調べた。野生型細胞を et 、全実験にわたり細胞が暴露される炭素源の量を正確に 熱ストレス(55℃、1時間)に暴露させた結果、∼8 30 制御することを可能にした。 0%のルシフェラーゼ活性の低下があったが、sch9 【0063】 Δ変異株では20−40%の活性喪失のみが観察された 1日齢のトリプトファン栄養要求性細胞をトリプトファ (図9A)。この結果は、sch9Δ変異株のストレス ン欠損SCプレート(SC−Trp)に播種した。2日 耐性形質の増強と一致する(図4)。しかし、野生型細 毎に、同じ日に作成した一連のプレートの一つにトリプ 胞を低濃度のグリセロールで前処理したが、ルシフェラ トファンを加えて増殖させ、生存をモニターした。我々 ーゼ活性の熱誘導による喪失と回復に対する効果はなく は、コロニー形成をモニターして細胞の生存率を決定し (図9B)、sch9Δの熱耐性形質は細胞外グリセロ た。2%グルコース添加SCプレートに播種した約20 ールに依存しないことが示された。BY4741の遺伝 0個の野生型DBY746細胞の生存曲線は、標準液体 的背景において同様な結果が得られた。 培地例の該曲線と良く似ている(図9F)。SC−Tr 【0061】 40 pプレートから炭素源を除去すると、平均寿命の70% グリセロールの細胞内蓄積は浸透ストレスに対する防御 増加がもたらされたが、この増加は低濃度のエタノール にも寄与する(Albertyn の存在により部分的に逆転され(図9F)、我々の以前 94;Wojda et et al.,19 al.,2003)。培地に の知見と一致した(Fabrizio et al., 0.1%のグリセロールを添加した結果、野生型酵母の 2005)。グルコースの高レベルグリセロール(3% 浸透ストレス耐性がわずかに増強された(図9C)。高 )による置換はグルコースまたはエタノールで見られた 濃度のNaClに暴露された場合、sch9Δ変異株と ようなプロエイジングの引き金を引くことはなかった( ras2Δ変異株は、tor1Δ変異株に比べ高浸透圧 図9F)。従って、長寿命sch9Δ変異株におけるグ に対する耐性の増強を示し、同様に野生型細胞よりも優 リセロール生合成への代謝スイッチは遺伝的に誘発され れた防御であったことから(図9D)、高浸透圧に対す る「炭素源置換」を表し、カロリー制限の場合と同様に る耐性の増強は、すべての長寿命変異株に共有される一 50 効果的であり得るといえよう。 ( 17 ) JP 31 2015-186480 A 2015.10.29 32 【0064】 の後50mg/kgのパラコートを腹腔内に1回投与さ グリセロール培地にスイッチ後の寿命延長はCR転写因 れ、正常食(8604固形飼料)に戻された。パラコー 子に依存する トは肝細胞と肺細胞のS期停止をもたらし(Matsu カロリー制限により誘発される酵母の細胞防御と寿命延 bara 長は、プロテインキナーゼRim15およびその下流の が知られている(Migliaccio ストレス応答性転写因子Msn2/4とGis1に依存 ,1999)http://www.nature.c し、これらのすべてはSch9,Tor,およびRas om/nature/journal/v402/n6 により負に調節されている(Wei etal.,20 759/full/402309a0.html−a1 08)。酵母をグルコース(2%)またはグルコース/ 。対照群のすべてのマウスは3日までに死亡したが、グ グリセロール(各1%)のいずれかを含有する等カロリ 10 リセロール食のマウス5匹の内3匹はパラコート毒性を ー培地で増殖させると、グルコース/グリセロール培地 完全に防御し(図10C,p<0.05)、パラコート 中で培養した酵母において平均寿命の1.5倍の増加が 処理5日後には正常な体重に回復した(図10D)。こ 観察された(図9G)。このグルコース/グリセロール れらの結果は、炭素源をグリセロールで置換した食事は 食の長寿命効果はカロリー制限の場合と同様、大部分が 、インビボの酸化ストレス耐性を増強し、高等真核生物 ストレス応答性転写因子に依存していた(図9G)。 におけるカロリー制限に似た可能性を有することを示し 【0065】 ている。 グリセロールはsch9Δ変異株によって取り込まれる 【0067】 sch9Δ変異株における代謝スイッチは、グルコース 考察 /エタノールまたは他の炭素源からプロエイジング/死 酵母、虫、ハエ等のモデル生物は、共通の進化起源を有 シグナル伝達を除去するだけでなく、長期間生存のため 20 する寿命調節経路の発見のための道具である。これらの の炭素源も生産する。我々は、野生型細胞をエタノール 内、インスリン/IGF−I様経路は、酵母とマウスの 含有培地から0.1%グリセロールを含有する水に切り ように系統発生学的に遠い生物の長寿命を制御している 換えた。極度のカロリー制限によるものに加えて寿命の 。Akt,Tor,およびRasは哺乳類のIGF−I わずかな延長が観察され(図9H)、グリセロールが飢 シグナル伝達経路で機能し、異なるモデル生物で寿命調 餓条件下で栄養補給またはさらなる防御を提供する可能 節に関連している(Kennedy 性が示唆された。事実、我々は、大部分の細胞外グルコ 007;Longo ースが欠乏した後にポスト・ダイオーキシック期に入っ 。本研究では、我々は、長寿命調節経路が呼吸から解糖 たS.セレビシエが外部の[1,2,3− 3 et al.,1996)、死亡に至ること et al. et al.,2 and Finch,2003) H]グリセ およびグリセロール生合成へのシフトを制御しているこ ロールを活発に取り込むことを示す(図9I)。グリセ とを示す。プロエイジングの炭素源とグリセロール蓄積 ロールのかかる利用は、また、野生型細胞においてグリ 30 の除去につながるこの代謝切り換えは、炭素源を除去す セロールの異化に関与する遺伝子が極度のカロリー制限 ることなしにカロリー制限に似るsch9Δ培養の環境 /絶食(水)条件下で上方制御されることを示す我々の を作る。 マイクロアレイ解析により支持される。 【0068】 【0066】 遺伝的データとゲノムデータは、我々の以前の仕事に一 食事性の炭素源としてのグリセロールの置換はマウスに 致する、Sch9とRasによって制御される2つの平 おけるストレス耐性を増強する 行する長寿命シグナル伝達経路を示した(Fabriz カロリー制限は、酵母から哺乳類の範囲のモデル生物に io おいてストレス耐性を増強し、寿命を延長する(Lon 性の有益な効果は相加的であり(図4Dおよび4G)、 go,2003; sch9Δras2Δ二重変異株は、最も長寿命な遺伝 Kennedy et al.,2 et al.,2001)。両経路の低下した活 007;Masoro,2005)。グリセロールを炭 40 的変異株の一つである(Partridge and 素源として置換すると酵母の寿命とストレス耐性に有益 Gems,2002)。遺伝的データと一致して、2. な効果が見られるという観点から、我々はマウスにおけ 5日齢のras2Δ変異株の遺伝子発現特性は、分別的 るCSCの効果を調べた。1群5匹、2群のマウスにそ に発現する遺伝子の約67%が他の二つの変異株では有 れぞれ対照食(40%デンプン/ショ糖/マルトースデ 意に変化しないことを示す(図5A)。我々のTor経 キストリン添加固形飼料Teklad 8604)また 路と他の2つの寿命調節経路との間の相互作用について はグリセロール食(40%グリセロール添加)の等カロ の遺伝的解析により、ストレス耐性、長寿命、および加 リー食のいずれかを6日間自由に与えた。グリセロール 齢に依存するゲノム不安定性の調節におけるTor1経 食のマウスは、対照食のマウスよりわずかに多く摂餌し 路とSch9経路の間の強い重複が示された。他の研究 たが、6日目までには両群のマウスは18%の血糖低下 者が提供してきたもの(Jorgensen を示した(図10Aおよび10B)。両群のマウスはそ 50 l.,2004)、およびTORC1によるSch9の et a ( 18 ) JP 2015-186480 33 直接リン酸化の証明(Urban A 2015.10.29 34 al.,20 いる。増殖に必要なエネルギーは主に発酵から得られる 07)と一致して、TORC1はSch9の上流でこれ 。対照的に、我々の経時的長寿命研究は、発酵が最小化 らの読み出しの調節に機能することも示唆する。我々の される非分裂期における集団の生存率をモニターするこ マイクロアレイ解析は、TorとRasによって制御さ とによって実施されている(Fabrizio れる一連の遺伝子間の類似点だけでなく相違点も示して Longo,2003)。 いる。一方、TOR1欠損は、ras2Δ変異株の熱シ 【0070】 ョック耐性をさらに増強し、他方では、さらなる寿命延 長寿命変異株の遺伝子発現特性は、鍵遺伝子の発現誘導 長は見られなかった。さらに、構造的な活発なRas2 にはグリセロール生合成を必要とすること示した。sc の過剰発現は、TOR1の欠損に関連してCLS延長を h9Δ培養において高レベルの細胞外および細胞内グリ 破壊し、2つの経路とおそらくTORC1上流の役割と 10 セロールが検出され、トリクリセリドの異化がグリセロ の重複が示唆された。 ール産生に寄与すると思われた(図7)。 【0069】 このグリセロール産生へのシフトは、長寿命変異株の生 ras2Δ変異株に見られた高度の異なる発現特性にも 理機能における基礎的な代謝変化を表す。興味深いこと かかわらず、3つの長寿命変異株のすべてにおいて重要 に、Sir2ならびにもう一つのCRに依存し、および な代謝経路に関わる遺伝子の発現パターンに有意な同一 依存しない寿命調節関連の遺伝子を欠損する変異株(K 性がある。ゲノム規模の関連性(転写因子結合モチーフ aeberlein 濃縮試験)と遺伝的解析により、Tor/Sch9およ eberlein びRasシグナル伝達による長寿命の調節は、プロテイ et ンキナーゼRim15とその下流のストレス応答性転写 タノールも枯渇している(Fabrizio 因子Msn2/4およびGis1に依存することが示さ 20 l,2005)。sch9Δ変異株の様なsir2Δ変 れた(Cheng 異株の発現特性解析は、グリセロール生合成遺伝子の上 et et et al.,2007;Wei and et al.,2005a;Ka et al.,1999;Lin al.,2000)は、プロエイジング炭素源エ et a al,2008)。最も顕著な結果は、3つの長 方制御を示し、Sir2依存性の寿命調節におけるグリ 寿命変異株すべてで解糖/発酵に関与する遺伝子が一貫 セロール生合成の役割が示唆された(Fabrizio して上方制御される一方、ミトコンドリアに関与する遺 et al.,2005)。 伝子は3つの長寿命変異株のすべてで下方制御されたこ 【0071】 とであり、解糖ならびにTCAサイクルと酸化的リン酸 sch9Δ変異株におけるグリセロール生合成に必要な 化を含むミトコンドリア機能の減少を支持する細胞状態 遺伝子を欠損させることによってなされる遺伝的解析は が示唆された。我々の結果の一部は、tor1Δ変異株 、グリセロールの生産が寿命の調節とストレス耐性に必 では呼吸が上方制御されていることを示す最近の結果( 要であることを示している(図8)。グリセロール生合 Bonawitz 成の増加は、幾つかの明瞭な機序による寿命調節に寄与 et al,2007)と矛盾する 30 と思われる。この矛盾は、観察の時点が異なることによ する可能性がある。第一に、Sch9を欠損する細胞は って説明が可能であろう。Bonawitzと共同研究 、グルコースとエタノールを利用し、非プロエイジング 者らは、野生型酵母に関連して指数増殖期または培養1 炭素源であるグリセロールを蓄積し、蓄積されたグリセ 日目のtor1Δにおいてより高い呼吸率を測定した。 ロールは効率的に“自ら課した”CSSをもたらし、増 2日目までにはこの違いはもはや観察されなかった(B 殖培地中のグルコースを低下させ、またはエタノールを onawitz 除去することによって得られるCRは、酵母のCLSを et al.,2007)。複製寿命 における呼吸の役割はいまだ明らかではない。一方では 延長する(Fabrizio 、増加した呼吸はCR(0.5%グルコース)の有益な ;Smith 効果を介在することが示されており(Lin l., et a 2002)、もう一方で、低グルコース含有培 40 地(0.05%グルコース)上での増殖は、呼吸欠損酵 母の複製寿命を延長することができる(Kaeberl ein et al.,2005 al.,2007;Wei et al.,2008)。反対に、低濃度のエタノールを 添加することにより、CRまたはSCH9欠損により誘 発された寿命延長は逆転させられる(Fabrizio et al.,2005)。ここに、我々は、Sch al.,2005a)。さらに、Jaz 9を欠損する細胞はプロエイジング炭素源を枯渇し、グ winskiのグループによる研究では呼吸が複製寿命 リセロール生合成を活性化することを示す。グルコース に直接影響はしないことが示された(Kirchman およびエタノールのようには加齢を促進しない“ファン et et et al.,1999)。 トム炭素源”として活動することに加え、グリセロール この寿命に関する呼吸の異なる効果には、寿命研究に使 はマイナーではあるが更に絶食状態下にある細胞の生存 用された実験系も寄与している可能性がある。複製寿命 を増強する原因となったことから、グリセロールは栄養 の解析は、細胞がグルコースと他の栄養に常時暴露され 的な支援を与えることが示唆され、このことは非分裂細 ている実質的で豊富なYPD培地で大部分が実施されて 50 胞によるグリセロールの取り込みから確認された(図9 ( 19 ) JP 35 2015-186480 A 2015.10.29 36 Hおよび9I)。二番目に、グリセロールが浸透ストレ れ形質転換して作製した。熱感受性細菌ルシフェラーゼ ス耐性を増強し、新規合成または熱不活化タンパク質を を発現する株(Parsell,1994)は酵母をプ 安定化し/復元する分子シャペロンとして機能すること ラスミドpGPD−luxAB(Addgene.co から、グリセロールの生産と蓄積は、細胞の防御に寄与 m)を保有する形質転換酵母により作製した。酵母の経 する可能性がある。三番目に、グリセロールの生産は、 時的寿命は、前述の如く測定した(Fabrizio NAD:NADH比率の維持に寄与することから、本生 and 産は細胞の酸化還元平衡調節によって加齢に影響する可 %グルコース含有SDCで増殖させ、前述の如くアミノ 能性がある(Ansell 酸、アデニン、およびウラシルを添加した(Fabri Bakker et et et et al.,1997; al.,2001;Rigoul al.,2004)。Easlonらは、 10 Longo,2003)。簡潔には、酵母を2 zio and Longo,2003)。酵母の生存 率は48時間毎にコロニー形成ユニット(CFU)をモ 最近、マレイン酸−アスパラギン酸NADHシャトル構 ニターして測定した。3日目のCFU数は、最初の生存 成成分の過剰発現が酵母の複製寿命を延長すること示し 率(100%)と考えられ、日齢依存性の致死率を決定 ている(Easlon al.,2008)。し するために使用した。プレート上の生存率アッセイ用に かし、後者の2つの機序は長寿の増強に有意に寄与する 、トリプトファン栄養要求性株の1日目のSDC培養液 可能性は低い。何故なら、培養物への外部グリセロール を希釈し、炭素源のない、またはグルコース(2%)ま の添加は熱誘導タンパク質不活化(図9B)または野生 たはグリセロール(3%)を添加したSC−Trpプレ 型細胞の経時的生存率(図9E)に対する効果が少ない ート(約200細胞/プレート)に播種した。実験期間 か、何らの効果もないのである。加えて、我々は、野生 中プレートを30℃でインキュベートした。2日毎に2 型細胞に細菌NADHオキシダーゼ(NOX)または代 mg/mlのトリプトファン0.5mlをプレートに加 替性オキシダーゼ(AOX)を過剰発現させたが、酵母 20 えた。グルコースを含有しないプレートにはトリプトフ における両方のNADH酸化の増加(Vemuri e ァンに加えて1mlの5%グルコースを加えた。30℃ al.,2007)は該細胞の寿命を有意に変えな でのインキュベーション2−3日後にコロニー形成をモ t et かった。 ニターした。 【0072】 【0074】 我々のマウスにおける結果は、食事におけるグルコース DNAマイクロアレイ解析とデータ処理 を中心とする炭水化物の一部のグリセロール置換は、血 2.5日目の野生型酵母および変異株の培養液(n=3 糖濃度の低下と致死量のパラコート投与に対するマウス )を回収し、酸フェノール法により全RNAを抽出した の耐性の増加に十分であることを示す。ゆえに、酵母に 。該cRNAをAffymetrix おいて観察される自己生産CSSは、食事中のグルコー p Yeast スの他の炭素源による置換が哺乳動物へ応用可能である 30 して、遺伝子発現測定値を得た。Bioconduct ことを示唆する。加齢経路の保存と広範な種の寿命延長 or におけるカロリー制限の役割の観点から、高等真核生物 タ(Bioconductor)の処理に採用した。“ においてグリセロールが抗加齢の役割を果たす可能性を 不変集合”アプローチをプローブレベルでの正規化に使 さらに調べることが重要であろう。 用し、“モデルベース”法を用いて要約し、各プローブ 【0073】 セットについての発現を得た(Li 実験手順 ,2001)。遺伝子レベルでピアソン相関係数0.9 酵母株と増殖条件 6を超える高い一致が同一株からのレプリケート間で得 DNAマイクロアレイ解析に使用されたすべての株は、 られた。 前述の一段階遺伝子置換によるDBY746に由来する 【0075】 (MATα,leu2−3,112,his3Δ,tr 40 GO解析 p1−289,ura3−52,GAL hmann et + )(Brac al.,1998)。 2.0 GeneChi arrayにハイブリダイズ Affy Packageをマイクロアレイデー and Hong 遺伝子オントロジーGO(ウェブサイトgenome− ftp.stanford,edu/pub/go/o 二重欠損変異株をDBY746およびBY4741に作 ntology/を参照)データは各ノードが特異的な 製した(MATα,his3Δ1,leu2Δ0,me アノテーションを持つ遺伝子の集合に対応した有向非巡 t15Δ0,ura3Δ0)。SCH9,またはras 回グラフ(DAG)として構築された。我々の解析では 2 v a l 1 9 を過剰発現する株はDBY746をプラス 、良くアノテートされ、統計解析に十分な数の遺伝子( ミドpHA−SCH9(テキサス大学医学部Moran 30遺伝子以上)を含むGOカテゴリーのみが含まれて o博士から寄贈)またはpMW101(pMF100の おり、末端の有益なGO(TIGO)カテゴリーとして Cla I−ras2 v a l 1 9 −Hind IIIフ ラグメントを保有するプラスミドRS416)でそれぞ 50 定義された:44の細胞成分、53の分子機能、および 109の生物学的過程。TIGOカテゴリーが有意に上 ( 20 ) JP 2015-186480 37 A 2015.10.29 38 方または下方制御されているかどうかを調べるため、ウ Parsell, ィルコキソンランクテストを実施した。最終的に、“q 菌ルシフェラーゼを発現する酵母を熱ショック(42℃ 値”パッケージを用いて複数の試験誤差を訂正するため 、60分)にかけた。熱ショック終了10分前にシクロ に各試験のq値を計算した(Storney ヘキシミド(最終20μM)を培養液に加えた。この培 and 1994)。簡潔には、熱感受性細 Tibshirani,2003)。 養液をサンプル採取し、ルシフェラーゼ基質デカノール 【0076】 (シグマ社)と混合し、シグナルをルミノメーター(L ストレス耐性アッセイ uminoskan 熱ショック耐性は、3日目のポストオーキシック培養か ィフィック社)中で迅速に測定した。 ら取り出した細胞の段階希釈液をYPDプレート上に播 【0080】 種し、55℃(熱ショック)および30℃(対照)で6 10 マウスにおけるパラコート毒性 0−150分インキュベートして測定した。熱ショック 体重18−24gの6週齢A/Jマウスに2種の食事、 後、プレートを30℃に戻し、2−3日インキュベート 対照食(40%デンプン/ショ糖/マルトースデキスト した。酸化ストレスアッセイについては、3日目の細胞 リンを添加したTeklad をpH6のリン酸カリウム緩衝液でOD6 はグリセロール食(40%グリセロールを添加したTe 0 0 =1に希 Ascent,サーモサイエンテ 8604固型試料)また 釈し、100−200mMの過酸化水素で60分処理し klad た。もう一つの方法として、細胞をpH7.4のリン酸 ision カリウム緩衝液中250μMのメナジオンで30分処理 ズ社)を用いて血糖レベルを測定した。パラコート(リ した。対照細胞または処理細胞を段階希釈して、YPD ン酸緩衝食塩水中7.5mg/ml)を腹腔内に1回注 プレート上に播種し、30℃で2−3日インキュベート 入した(50mg/kg)。パラコート投与後速やかに した。浸透ストレス耐性については、3日目の細胞を水 20 マウスを正常食(Diet で2回洗浄し、塩緩衝液(2または4MのNaCl)中 ラッド社)で維持した。4日間、2時間毎にマウスをモ に再懸濁した。30℃、24時間振とうしながらインキ ニターし、実験期間中1日1回体重を記録した。ストレ ュベート後、細胞を水で洗浄して塩を除去し、段階的に スまたは痛みの徴候を示した場合および回復のチャンス 希釈してから、YPDプレート上に播種した。プレート がないと判断した場合にはマウスを屠殺した。 を30℃で2−3日インキュベートした。 【0081】 【0077】 文献 ナイルレッド染色 Albertyn, 細胞(1mlSDC培養)をPBSで1回洗浄し、1m , and lPBS中に再懸濁した。10μlのナイルレッド(ア 8604固型試料)を6日与えた。Prec Xtra 試験紙(アボットラボラトリー 8604, ハーランテク J., Hohmann, Prior, B.A. Characterization (1994). of the セトン中0.1mg/ml)を細胞懸濁液に加え、室温 30 osmotic−stress 、暗闇で5分インキュベートした。細胞をPBSで1回 n Saccharomyces 洗浄し、ライカ蛍光顕微鏡でイメージングした。 e: 【0078】 cose グリセロール測定 glycerol−3−phosphate 細胞内グリセロール量用に、細胞を水で3回洗浄した。 drogenase 1ml培養物からの細胞ペレットを0.5mlのトリス Curr 緩衝液(0.1M,pH7.4)に再懸濁し、細胞片を Ansell, 除去するためにその後5分煮沸し、次いで30秒スピン Hohmann, した。細胞抽出液または細胞を取り除いた培地からの上 .M., 澄みをそれぞれ細胞内または細胞外グリセロール濃度の 40 . Thetwo 測定に用いた。グリセロール濃度は、UVベースのグリ east セロールアッセイキット(ベーリンガー・マンハイム社 ol /R−バイオファーム社)を用いて測定した。該アッセ nase encoded イを96穴プレートフォーマットに導入するために、該 GPD2 have 製造業者が推奨するプロトコルを修飾した。各サンプル in osmoadaptation は二つの組でアッセイし、データをストックグリセロー ox regulation. ルの段階希釈により作成した標準曲線に適合させた。 osmotic S. response cerevisia stress repression i and glu regulate dehy independently. Genet 25, 12−18. R., Granath, S., K., Thevelein, and Adler, L. J (1997) isoenzymes for y NAD+−dependentglycer 3− phosphate dehydroge by GPDl distinct and roles and red Embo J 16, 2179−2187. 【0079】 Bakker, ルシフェラーゼアッセイ .M., ルシフェラーゼの熱不活性化を前述のように測定した( 50 er, B.M., Overkamp, van Maris,A.J., P., Luttik, M.A., K Kott van ( 21 ) JP 2015-186480 39 Dijken, J.T. ry f NADH S and Pronk, Stoichiomet compartmentation metabolism haromyces in Rev 25, o la, E. B., . (2004). aging FEM omyces 15−37 . Superoxide Biol N.D,, Lapointe, M., d G.S. 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Paraquat arrest hou, rin an 30 ds Ca bit e. cerevisiae Jacinto, S., J.L., P., and during muscle W., creatine he which sensitive, istinct roles control. is ra have d Mele, other ay. Sci S., Pelicci, p66shc L., and P. G. (1999). adaptor stress response and life spanin mammals. Nature 402, 309 −313. R.K., and ton, (1959). Mol Cell 10, an J.R. of individual Nature Ras: 2. pathw Murakami, E 50 T protein Mortimer, Knowledge G. P., Pandolfi, gro (2004). Aging E., Giorgio, cell pro−aging Biol controlsoxidative lls. V.D. the rab kinas Cell in 457−468. ai 701−709. Pelicci, 40 Z pr and hepa P.P.,Lanfrancone, Bone of refoldingof M., E., and folding Int JBiochem a vivo. Ar glycerol, 3 TOR complexes of S−ph liver Park, Y., as protein 33, Hall,M.N. pamycin Longo, F., Migliaccio, Lorber Jenoe, Two T. (19 causes of rat r 418, Oppliger, one Kawamot H. (2001).Role oline, Cul extends D., only Y., Tanaka, 514−518. nfant, (2002). M., Yamagami, , Reboldi, Crespo, Ageing in Nature R., Mech 913−922. 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Proc Natl Aca それは、一つにはかなりの部分の患者が以前の化学療法 d 104, 2402−240 サイクルにより体重を減少させ、または、弱っていると Sci U S A 7. いう理由で、絶食が化学療法を受ける患者に有害である Wei, , M., J., i, Fabrizio, Ge, L., H., and 008).Life by pends on ription m of h9. span and Stationary east 10例の誰も空腹以外に絶食そのものに起因する重大な 副作用を報告しなかった。絶食または非絶食で化学療法 Tor, 4, R.A. phase Microbiol 種々の悪性腫瘍を診断された患者の10症例を記述する transc and Sc を受けた5例の患者における通常の毒性基準(CTC) el3. に基づく自己申告による副作用は、絶食が疲労、脱力、 M., Br G.C., および胃腸の副作用を防ぐ可能性を示している。癌の進 40 (1993). in Saccharomyces siae. 時間)および後(24−56時間)に自発的に絶食した downstrea Johnston, Singer, ここで、われわれは、化学療法治療の前(48−140 。絶食とともに平均4サイクルの化学療法を受けたこの Washburne, E., L de and Genet Rev R., , y の減少を阻止しなかった。治療係数の増強における絶食 cerevi the の役割を決定するには対照臨床試験が要求されるが、こ 57, 3 こに提供されたこの10症例は、化学療法との組み合わ せにおける絶食が安全であり、高度に有益である可能性 I., Alonso−Monge, Bebelman, W.H., 行をモニターすることができたすべての患者において、 絶食が化学療法依存性の腫瘍マーカーまたは腫瘤サイズ 83−401. Wojda, 可能性があると多くの人に考えられているからである。 (2 extension Rim15 Ras/PKA, aun, C, V.D. restriction factors PLoS Werner− Cheng, Longo, calorie P., Hu 30 and J.P., Mager Siderius, (2003). Response to osmotic conditions M. high and el 50 を示している。 【0083】 序論 化学療法は、広範な悪性腫瘍を診断された患者の生存を 延長することができるが、その正常な細胞および組織に ( 26 ) JP 49 2015-186480 A 2015.10.29 50 対する毒性は用量強度、頻度、および有効性を制限する く完了し、7ポンド低下したが、絶食を止めて数日以内 。例えば、ドキソルビシンまたはシスプラチンの使用は に回復させた(図11H)。最初の化学療法薬投与後3 多くの悪性腫瘍を有効に治療することができるが、薬物 日間患者は軽度の疲労、口渇としゃっくりを経験したが 誘発性のそれぞれ心毒性および腎毒性がこれら薬剤の最 、それにもかかわらず彼女は毎日の活動を保持すること 大能力を制限する。 ができた(1日に12時間の就労)。対照的に、その後 ゆえに、悪性細胞に対する毒性を損なわずに正常細胞を の化学療法サイクル(2または3回目)において、彼女 選択的に防御することによって不要な毒性を軽減するこ は非絶食で化学療法を受け、中等度のひどい吐き気、嘔 とは、癌治療を増強するための望ましい戦略である。 吐、腹部仙痛、下痢および疲労を訴えた(図12)。こ 【0084】 れらの重い副作用により彼女は通常の仕事のスケジュー 最近、細胞培養において、および神経芽細胞担癌マウス 10 ルを止めざるを得なかった。4回目および最後のサイク において、癌細胞ではなく、正常細胞を分別的に高用量 ルの間、異なる療法ではあったが、彼女は再び絶食を選 化学療法から防御する可能性のある絶食に基づく治療介 択した。この療法は化学療法前120時間、化学療法後 入が報告された(Raffaghello 24時間の絶食から成っていた。注目すべきことに、予 2008 PNAS)。神経芽細胞腫異種移植マウスモデルにおい 測された以前の治療による蓄積されたダメージにもかか て、高用量エトポシド治療前48時間に水のみをマウス わらず彼女の自己申告による副作用はより少なかった。 に消費させた。絶食は高用量エトポシドで治療したマウ 患者の毒性に関する自己申告と一致して、血液分析の結 スの防御に極めて有効であり、自由に摂餌したマウスは 果は、絶食が血液細胞を防御する有益な効果を持つ可能 高用量エトポシドにより50%死亡したが、該絶食は神 性を支持している。4日目の化学療法サイクルとその後 経芽細胞腫の転移依存性の死亡を大幅に遅延させた の計140時間の絶食の後、好中球、wbc,および血 Raffaghello 2008 ( PNAS)。 20 小板数は、80日前の化学療法開始以来最高のレベルに 【0085】 到達した(図11A,CおよびE)。特に、予想された ここに我々は、種々のタイプの癌を診断された10症例 ナディアおける数は入手不能であった。全体的に見て、 を提示する。これらの症例は、化学療法前後に自発的に 血球数と自己申告調査は、絶食が安全であり、この患者 絶食した。正常細胞と癌細胞の分別的防御における絶食 に対しては化学療法の毒性的副作用に対する防御を絶食 の有効性を決定するには適切に制御された臨床試験が必 が与えた可能性が示唆された。 要であるが、患者の自己申告による健康アウトカムと血 【0088】 液データ読み出しに基づいてここに提示された結果は、 症例2: 絶食が安全であり、癌細胞死を阻害せずに化学療法に起 68歳の白人男性で、2008年2月に食道癌と診断さ 因する複数の副作用を軽減した可能性を示唆する。 れた。診断時までにはステージIVと一致する左の副腎 【0086】 30 への転移がCT−PETスキャンで発見された。最初の 結果 化学療法剤は5−フルオロウラシル(5−FU)とシス 化学療法を受けている10例の癌患者がこの症例シリー プラチン(CDDP)であった。化学療法レジメンと同 ズで提示される。その内女性は7例、男性は3例で、年 時に彼は最初の2サイクルの化学療法の間、局所照射も 齢中央値は61歳(44−78歳の範囲)である。4例 受けた。この期間中、患者は極度の脱力、顕著な疲労、 は乳癌、2例は前立腺癌、4例は卵巣癌、子宮癌、非小 下痢、嘔吐および末梢神経障害を含むひどい副作用を経 細胞肺癌、または食道腺癌であった。これらすべての患 験した(図13)。さらに、患者は、大部分は放射線治 者は、彼らを治療する癌専門医の監視のもとで化学療法 療に起因すると思われる極度の口内炎に続き激しい嚥下 前計48−140時間および化学療法後24−40時間 障害を訴え、それゆえ経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PE 自発的に絶食した。全ての患者は絶食に良好に耐えた。 G)を実施し、7日後、除去された。3回目のサイクル 空腹、および血圧の低下は長い絶食期間後に患者が訴え 40 の間に、5−FU投与は重度の悪心と治療抵抗性の嘔吐 た共通の症状であった。 により中断を余儀なくされた(図13)。化学療法と放 【0087】 射線の積極的なアプローチにもかかわらず、彼の病気は 症例1: 進行した。右副腎、右肺下葉、左仙骨および烏口突起へ 51歳女性、ステージIIAの乳癌で、ドセタキセル( の新規な転移の発生が2008年8月に実施されたCT DTX)とシクロホスファミド(CP)によるアジュバ −PETにより発見された。これらの進行により、ドセ ント化学療法が推奨されていた。彼女は最初に化学療法 タキセルと5−FU(5−FUは96時間投与された) サイクルの前に絶食した。絶食療法は、化学療法前12 の併用でカルボプラチン(CBDCA)を含む彼の化学 0時間と化学療法後60時間(計180時間)の完全な 療法レジメン(4サイクル目)の増強が促進された。患 カロリー欠乏から成り、その間、彼女は水とビタミンの 者は、化学療法前72時間と化学療法後51時間の絶食 みを摂取した。患者はこの長い絶食を主要な不都合もな 50 を4回目のサイクルの間取り入れた。化学療法後51時 ( 27 ) JP 51 2015-186480 A 2015.10.29 52 間の絶食の根拠は5−FUの持続投与に対する防御のた 者は、非生殖線のアンドロゲン生合成に重要な一連の反 めである。患者は約7ポンド減ったが、その内4ポンド 応を触媒するミクロゾーム酵素CYP17を選択的に阻 は正常食への復帰後最初の2∼3日間に回復した。この 害することができる薬物アビラテロンのフェーズIII サイクルの間3種類の化学療法剤が併用で使用されたが 臨床試験に登録された。この臨床試験中、患者のPSA 、自己申告による副作用は中等度の疲労が含まれるのみ レベルは20.9ng/mlまで上昇した(図14H) であった。5回目のサイクルの前に彼は再び絶食を選択 。その結果、化学療法を再開したが、今回は絶食と分別 した。以前に受けたような96時間の5−FUの注入を 的ストレス耐性に関する動物モデルの研究に基づき(R 受ける代わりに、同用量の5−FUを48時間以内に投 affaghello 与し、絶食療法も薬物投与前48時間と薬物投与後56 化学療法前の絶食を選択した。彼の絶食スケジュールは 時間に修正した。興味深いことに、自己申告による副作 10 薬物投与前60時間、薬物投与後24時間であった。 用が非常に低かっただけでなく、CT−PETにおいて 更新された絶食/化学療法によりPSAレベルは速やか 主要な食道の腫瘤、副腎、および右肺下葉の結節の縮小 に低下し、特に、患者は無視できる副作用を報告した( が表示され、臨床的な奏効の増強もあった。6、7、8 図15)。最後の3サイクルの間、絶食以外に患者はテ 回目のサイクルの間、患者は化学療法治療(上記参照) ストステロン(1%クリーム)を化学療法前に5日間適 の前後に絶食し、軽度の副作用のみが報告された。この 用された。テストステロンとともにPSAレベルは劇的 癌は非常に悪性な癌であり、化学療法が良好に耐容され に上昇した。それにもかかわらず、絶食を併用した3サ たにもかかわらず、患者の病は進行し、2009年2月 イクルの化学療法によりPSAは34.2から6.43 に死亡した。 ng/mlに低下した(図14H)。 【0089】 【0090】 症例3: 20 2008 PNAS)、患者は 症例4: この患者は74歳白人男性で、2000年7月に両側性 61歳白人女性で、2008年6月に未分化非小細胞癌 の前立腺癌、グリーソンスコア7、PSAレベル5.8 と診断された。左肺下葉に限局した腫瘤は、生検結果と ng/mlと診断された。2000年9月に前立腺摘除 相関してPETスキャンにより代謝亢進状態にあること 術を実施し、PSAが1.4ng/mlに上昇した20 が明らかになった(2008年6月)。同スキャンにお 03年1月までPSAレベルが検出不能となった。ビカ いて、広範な転移性疾患が複数の縦隔および左門部周囲 ルタミドおよびフィナステリドと一緒に酢酸ロイプロリ のリンパ節に示された。骨、肝、脾、および膵臓への転 ドを疾患制御のために処方した。しかし、これらの薬剤 移も観察された。ドセタキセル75mg/m 2 2 およびカ の投与はテストステロン欠乏に関連する重度の副作用に ルボプラチン540mg/m より2004年4月に休薬を余儀なくされた。その結果 れた。彼女は通常食を取っていたが、最初の5サイクル による初期治療が計画さ 、疾患制御のため、トリプトレリン、パモ酸、ニルタミ 30 の間各治療後に平均4ポンドを失った。これは化学療法 ド、サリドマイド、シクロホスファミドおよびケトコナ による毒性である可能性が最も高い。患者はもとの体重 ゾールを含む異なる薬剤が投与された。しかし、200 に戻るのに約3週間を要したと報告した。経験した副作 7年1月には患者のPSAレベルが9に達し、2007 用の内、彼女は重度の筋痙縮、下肢神経障害、顕著な疲 年3月には新規な転移が骨スキャンにより表示され、ス 労、口と舌の痛み、できやすいあざ、腸不快感、下痢便 テージD2と一致する疾患が確認された。2007年6 秘交代症を訴えた(図17)。同一薬物と用量から成る 月にドセタキセル治療が週1回の頻度で開始されたが、 6回目のサイクルの間、患者は化学療法前48時間、化 患者のPSAレベルは40.6ng/mlに達した(図 学療法後24時間絶食した。この間患者は約6ポンド失 14H)。同年8月にアバスチンが薬物療法に加味され ったが、10日以内に回復した。2日以内に回復した軽 た。これらのサイクルの間患者は、金属味、めまい、も 度の疲労と便秘以外には、彼女が以前の5サイクル中に の忘れ、短期記憶障害および末梢神経障害を含む化学療 40 経験したいずれの副作用も訴えなかった。さらに、彼女 法による顕著な副作用を経験した(図15)。それにも は6回目と最後のサイクル後、彼女のエネルギーが急速 かかわらず、臨床的奏効は陽性であり、PSA値は正常 に回復し、該薬物投与後3日のみで3マイル歩くことが 化された(図14H)。2007年12月には骨スキャ できたと報告した。 ンは全体的な改善を示した。2008年に化学療法治療 2009年2月に実施された最後のレントゲン検査によ を止めた後、彼のPSAは急速に上昇した。もう1度ド り、ベースラインPETスキャンと比べた場合、肺病変 セタキセルが処方された。2008年1月から同年5月 (主要な腫瘤)および脾臓、膵臓、および脊椎等の陽性 まで患者は21日毎にドセタキセルを受けた。これらの 病巣を有する他の臓器の改善が示された。 治療サイクルの間、彼は以前2007年に経験したと同 【0091】 様の副作用を経験したが、疲労と脱力が重症化した(図 症例5: 15)。2008年6月には、化学療法は中止され、患 50 66歳白人男性で、1998年7月に前立腺癌、グリー ( 28 ) JP 53 2015-186480 A 2015.10.29 54 ソンスコア8と診断された。同年に実施された陽性前立 この発見はCTスキャンで確認され、20を超える新規 腺シンチ試験により、右腸骨リンパ節に放射性トレーサ 結節が同一領域で視覚化された。また、この試験では幾 ーの取り込み増加が示された。これらの所見は、ステー つかの異常(低密度画像MTS)が脾領域に、および脊 ジD1疾患と一致する。1998年に最初は、患者は酢 椎に退行性変化が見られた。これらの結果に基づき、タ 酸ロイプロリドとビカルタミドを受けた。1999年9 キソール、カルボプラチン、およびアバスチンを含む新 月にはこれらの薬物を止め、フィナステリド治療が開始 規治療レジメンが選出された。2008年8月に注入が された。2000年12月には、CTスキャンにより限 開始され、3週毎に実施された。同時に、患者は高用量 局性の疾患の進行が疑われた。PSAベースライン1. ビタミンC(50mg/day)を補充した。2008 1で彼は酢酸ロイプロリドによる2回目のサイクルを開 年9月、CTスキャンを用いた再評価により、サイズと 始したが、今回は高線量(HDR)小線源療法と強度変 10 複数のびまん性、両側性の肺結節数の低下が示された。 調放射線療法(IMRT)の追加による外照射も右閉鎖 しかし、11月にはCTスキャンにより主要な結節の一 神経リンパ節に受けた。この後、2002年迄週100 つが.5から.8cmに増大し、疾患の進行が確認され mgのナンドロロンによる治療が続けられた。翌年には た。1日目にゲムシタビン、8日目にゲムシタビンとド 、ビカルタミド、トリプトレリンパモ酸塩等の異なる薬 セタキセルから成る新規療法が処方された。しかし、総 剤が処方され、ナンドロロンが疾患制御のために使用さ 量(900mg/m れた。しかし、彼のPSAレベルは治療が中断される毎 、患者は持続性の好中球減少(図19A)と血小板減少 に急速に上昇した。2008年4月、コンビデックスス (図19D)を経験し、追加治療が断念させられた。2 キャンにより3×5cmの骨盤の腫瘤と左水腎症が示さ 回目のサイクルの間、患者は減量したゲムシタビン(7 れた。それゆえ、腎摘除とステントの左尿管への装着が 20mg/m 行われた。同年6月、PSAレベルの上昇と新規CTス 20 と血小板減少を発症し、最初のスケジュールの完了は困 キャンによる左腸骨域の更なる腫瘤の確認により、ドセ 難となった。その結果、患者は化学療法前62時間と化 タキセル(21日スケジュールの1回目サイクル、60 学療法後24時間の絶食を始めることを決定した。彼女 mg/m 2 2 2 2 )のゲムシタビンの最初の投与後 )を受けたが、再び持続性の好中球減少 、および2−8回目サイクル、75mg/m は副作用の全体的な減少と血球数の改善を報告した。我 )による治療が促された。動物実験に基づき、患者は 々は、ナディアが僅かで、あまりはっきりせず、好中球 化学療法前60−66時間の絶食と化学療法後8−24 数、リンパ球数、および白血球数のピークが著しく高い 時間の絶食を決定した(表A)。絶食中、患者は意識朦 ことに注目した(それぞれ図19A,B,およびC)。 朧と有意な血圧低下を経験したが、自己申告による副作 さらに、ゲムシタビン単独は急速かつ急激な血小板数の 用は、絶食−ドセタキセルの7回の連続サイクル後に発 低下をきたし、回復に11−12日を要した。しかし、 生した足の軽度な振動感覚以外は殆ど存在しなかった。 最初の絶食/ゲムシタビン併用治療後は血小板数が減少 しかし、彼はしびれ、知覚異常、または痛みを報告しな 30 せず、むしろ増加した(図19D)。血小板ナディアは かった。これらの結果は、大部分の患者がこの薬剤のま 以前の化学療法単独に比較してより低レベルに達したが さに2−4サイクル後に一種の神経障害を発症するとの 、今回は化学療法剤3剤を1剤の代わりに投与しており 考えを強くする。一方、血球数は1回目のサイクル以外 、相加効果がこれらの深いナディアの説明になり得る。 は治療を通して定常値を示し(図18A)、血球数も絶 それにもかかわらず、血小板数のリバウンドが化学療法 食依存性の防御の利益得ている可能性が示唆される。最 単独に比べ絶食/化学療法治療中でははるかに明確であ 後に、PSAレベルは化学療法サイクルの間、一貫して った(図19A,BおよびC)。この複数の絶食/化学 低下し、絶食は前立腺癌細胞を殺すことを阻害はしない 療法サイクル後の血小板の顕著な回復およびより急速な ことが示唆された(図18H)。 回復は、この戦略が巨核芽球に対して防御効果を有し、 【0092】 症例6: 血小板、好中球およびリンパ球をより速やかに再増殖さ 40 せる可能性を示唆する。 44歳白人女性で、2007年7月に10×12cmの 【0093】 右卵巣腫瘤が発見された。患者は複数(30+)のバイ 症例7: オプシーをしたが、すべて癌は陰性であり、卵巣嚢の関 ここに、我々は、ステージIIA乳癌(HER2+)と 与は示されなかった。これらのことに基づいて、最終診 診断された53歳白人女性を紹介する。2008年に乳 断はステージIA卵巣癌肉腫となった。最初に実施され 腺腫瘍摘出手術後、患者は3週毎の化学療法を4サイク た治療は、イホスファミドとシスプラチンによる6サイ ル受けた。その療法はドセタキセル(75mg/m クルコースで、患者はこのコースを2007年7月から とシクロホスファミド(600mg/m 11月まで受けた。2008年1月に実施された彼女の った。4サイクルを通して患者は化学療法投与前64時 最初のCTスキャンは卵巣外の疾患を示さなかった。7 間、および化学療法投与後24時間絶食した。報告され ヶ月後、MRIにより複数の新規結節が肺に示された。 50 た副作用は軽度の脱力と軽度の短期記憶障害であり、他 2 2 ) )の併用であ ( 29 ) JP 55 2015-186480 A 2015.10.29 56 の副作用は報告されなかった。 が、患者は以前に経験した大部分の副作用が一貫して軽 【0094】 減したと報告した。このことは他の患者が経験したこと 症例8: および我々の前臨床データと一致する。 この患者は48歳白人女性で、乳癌と診断され、アジュ 【0097】 バント化学療法を推奨された。 我々は、モニターした10例の患者すべてにつき、通常 彼女の化学療法レジメンは、ドキソルビシン(110m の毒性基準尺度に基づく副作用の重症度に関する自己申 g)とシクロホスファミド(1100mg)の併用を3 告評価を得た。我々は10例全ての患者の自己申告によ 週毎を4サイクル、その後、パクリタキセルとハーセプ る副作用の評価を示す(図22A)。化学療法のすべて チンを週1回、12週間から成っていた。最初の化学療 のサイクルと組み合わせて絶食した5例の患者は大部分 法治療(AC)前に患者は48時間絶食し、なんらの副 10 の副作用につき極めて低い重症度を報告した。軽度の脱 作用も言及されなかった。2回目のサイクルの間、患者 力と脱毛のみが複数の患者から報告された。絶食または は化学療法前60時間の絶食を組み込み、薬物投与後5 自由食の両方とともに化学療法を受けた5例の患者につ 時間まで継続した。興味深いことに、絶食後には彼女は いては、自己申告による多くの副作用の重症度の一般的 何らの苦痛も表現しなかった。彼女は化学療法による脱 かつ大きな軽減が絶食との組み合わせに存在した。悪心 毛を経験したが、他には疲労、脱力、悪心、嘔吐、およ 、嘔吐、下痢、腹部仙痛、および口内炎は、絶食した1 び下痢等の通常報告される化学療法による副作用に苦し 0例の全ての患者の報告からは実質的になかったが、こ められることはなかった。 れらの症状の内少なくとも1つは自由に摂食した5例の 【0095】 内4例の患者により報告された。 症例9: 【0098】 この患者は78歳の老婦人で、HER2陽性乳癌と診断 20 絶食または非絶食で少なくとも1サイクルの化学療法を された。診断により乳腺腫瘍摘出手術を実施し、彼女の 受けた5例の患者につき、患者が絶食または非絶食した 乳房から3個の腫瘤を摘出した。術後患者は感染症を発 化学療法の最も近接する2サイクルのみを考慮すること 症し、ドレナージ設置のため2回目の手術実施を強いら によって我々は自己申告された副作用の重症度を決定し れた。種々の試みがなされたが、全乳房切除は避けられ た(図22B)。疲労および脱力等の症状は有意に軽減 なかった。6サイクルのカルボプラチン(400mgA されていた(それぞれp<0.001およびp<0.0 UC6)とドセタキセル(75mg/m 2 )、その後6 0193)が、悪心と嘔吐は絶食と組み合わせた場合ま カ月のトラスツズマブによる補完的アジュバント化学療 ったく経験されなかった(図22B)。特に、CTCベ 法が癌専門医によって指示された。化学療法治療を通し ースの調査に含まれる副作用はなくその平均重症度は絶 て患者は薬物投与前後に絶食した。患者によって採用さ 食によって上昇した(図22AおよびB)。 れる絶食療法は異なった(表A参照)が、軽度の疲労と 30 【0099】 脱毛のみが報告された。さらに、好中球、リンパ球、白 化学療法の毒性副作用の多くは蓄積性であるので、我々 血球および血小板レベルを含む全白血球数は正常範囲内 は絶食および非絶食と関連付けた化学療法の副作用のす であった(図20)。このことから、絶食は化学療法毒 べての調査データを比較した。勇気づけられることに、 性から血液細胞を防御し得ることが示唆される。 絶食サイクルの大部分が治療の後半部分に実施されたに 【0096】 もかかわらず、より良い自己申告による健康結果が全て 症例10: の患者によって報告された。少数の異質な癌患者群から この患者は74歳老婦人で、2008年にステージIV の調査結果は、癌患者において絶食が安全かつ良く忍容 の子宮体部漿液性腺癌と診断された。その結果、手術と され、また、複数の化学療法依存性の副作用を改善する アジュバント化学療法が指示された。手術法は、腹式子 可能性も示唆する。バイアスが患者による副作用の評価 宮全摘術プラス両側卵管卵巣摘除術から成っていた(T 40 に影響するが、化学療法後に減少する複数の血球タイプ AH−BSO)。加えて、骨盤リンパ節、大動脈周囲リ 数を改善する傾向は、絶食が実際に異なる化学療法薬に ンパ節および上大静脈リンパ節を切除した。最後に、右 対して防御する可能性を示唆する。特に、絶食は、酵母 尿管の顕著な肥大により、右腎摘除も実施した。それに からマウスまでの範囲の生物を種々の毒とストレスから 加え、カルボプラチン(480mg)およびパクリタキ 防御することが知られており、ゆえに、ヒトにおける複 セル(280mg)の6サイクルを3週毎に適用した。 数の化学療法薬に対する防御効果は驚くにはあたらない 最初の治療前に患者は通常の食事を摂った。彼女は疲労 。 、脱力、脱毛、頭痛を経験し、また、胃腸不快感も訴え 【0100】 た(図21)。対照的に、2回目のサイクル前と残りの 飲水に加え化学療法の前後に絶食した患者の一部は、本 治療の間、患者は薬物投与前後に絶食した(表A参照) 出願に記載されたカロリーレベルまたはタンパク質レベ 。化学療法薬は中毒性副作用の蓄積が良く知られている 50 ルを超えない極めて低カロリーの範囲の食事を消費した ( 30 ) JP 57 2015-186480 A 2015.10.29 58 が、本防御効果を経験し続けた。 【0101】 考察 癌治療の間の一般的に推奨される食事は、栄養不足を防 ぎまたは逆転させること、やせた体重を維持すること、 および栄養関連の副作用(食欲の減退、悪心、味覚変化 または腸の変化)を最少化するという全体的なゴールに 基づいている(Doyle, nd Physical ng and ment, Nutrition Activity After Cancer a Duri Treat 10 2006)。標準的な化学療法後の食事に 反して、本シリーズの大部分の患者は、絶食が実行可能 で、疲労、脱力、悪心、嘔吐および腹部仙痛等の副作用 を軽減することによる利益を報告した。絶食中にめまい 、空腹、または頭痛を含む軽微な愁訴があったが、仕事 中に正常な活動を妨げないようなレベルであった。 【0102】 体重減少は癌患者の主要な関心である。これは、癌自体 、化学療法または胃腸障害後の食欲減退によるかもしれ ない。特にこの症例では、絶食中の体重減少は大部分の 20 患者で速やかに回復し、事実これらの治療完了後患者ら は元の体重に到達した。絶食とともにおよび非絶食で化 学療法を受けた患者にとって、化学毒性の副作用は絶食 サイクル中減弱されると思われた。この介入によって軽 減されると思われる症状は主に胃腸および全身性であっ た。 【0103】 非悪性細胞では、絶食等の環境的に困難な条件は、生物 が増殖/再増殖を抑制することを刺激し、そのエネルギ ーを維持/修復に転換させ、およびその生存のチャンス 30 【実施例4】 を最大化する(Longo, 【0105】 , Cell review 2005)。ゆえに、IGF−I等の増殖因子は減 IGF−Iは正常細胞および悪性細胞において化学療法 少し、絶食応答における異常タンパク質応答(UPR) に対する分別的耐性を調節する の増加等のストレス耐性機序は増加する。癌の6つの特 【0106】 徴において記載の通り、正常細胞はこれらの変化に応答 要約 し、悪性細胞は増殖シグナルの自給自足により非応答性 骨髄抑制、胃腸障害、および疲労を含む化学療法毒性副 であろう(Hanahan, o 作用は癌治療の用量と期間を制限する。幾つかの化学療 2000)。ゆえに、絶食は癌細 法防御物質は薬物依存性および組織特異的な防御を供給 f cancer, Hallmarks 胞に対する薬物活性を減じることなく、化学療法毒性か ら正常細胞を選択的に防御するであろう。 しているが、これらの化合物が正常細胞と癌細胞の分別 40 【0104】 的な防御において広い役割を有することができるかどう かは知られていない。最近、我々は短期絶食(STS) が癌細胞ではなく正常細胞およびマウスを化学療法から 選択的に防御する(分別的ストレス耐性、DSR)こと を報告した。ここに、我々はSTS依存性防御の機序を 調べた。マウスでは、72時間絶食はIGF−Iを70 %まで低下させ、IGF−I阻害物質IGFBP−1の レベルを11倍増加させた。IGF−I/IGF−Iシ グナル伝達の低下は、グリオーマ細胞ではなく、初代グ リア細胞をシクロホスファミドから防御し、マウス胎児 50 線維芽細胞(MEF)をドキソルビシン依存性のDNA ( 31 ) JP 59 2015-186480 A 2015.10.29 60 障害から防御した。循環IGF−Iレベルが70−80 資を支持する。 %低下しているLIDマウスは、試験した化学療法薬4 【0110】 薬の内3薬を防御し、ドキソルビシン処理したメラノー 正常細胞と癌細胞は多くの様式で異なるが、すべての癌 マ担癌LIDマウスの60%が長期生存を伸ばしたのに 細胞を正常細胞から差別する特徴はほとんどない。癌の 対し、すべての対照マウスは癌転移または化学療法毒性 特質のレビューで記載したように、正常細胞が癌化する のいずれかで死亡した。これらの結果はIGF−Iが癌 のに必要とされる多くの条件の内増殖シグナルにおける 細胞ではなく、正常細胞における防御の潜在的な阻害物 自給自足および増殖抑制シグナルに対する非感受性は特 質であることを示唆する。 に重要である[20]。増殖シグナルにおける自給自足 【0107】 序論 は、条件に関係なく増殖経路を構造的に活性化する原因 10 となる癌遺伝子における機能獲得型の突然変異によって 殆どの化学療法剤は、正常細胞に用量を制限する毒性に しばしば可能となる(例えばIGF−IRまたは下流の つながる著明な障害をもたらして、患者に対する短期お Ras,Akt,mTor,など)。特に、RAS/R よび長期副作用のいずれも有する。薬物開発は、癌特異 AF/MAPKおよびPTEN/PI3K/AKT経路 抗原を標的とする抗体[1]または狭い治療指数を有す は、CRと絶食[21]、おそらくIGF−Iシグナル る薬剤[2,3]等の一連の選択的抗腫瘍剤によりこれ 伝達の減少により下方制御され得る。一方、増殖抑制シ らの副作用を減らしてきたが、毒性は癌治療を制限し続 グナルに対する非感受性は、腫瘍抑制遺伝子(例えば、 けている。ゆえに、不要な毒性副作用を減じる介入は多 Rb,p53,PTENなど)の機能喪失突然変異によ くの化学療法薬の有効性を増強することができよう。 るものであり、癌細胞が抗増殖シグナルを無視すること アミホスチン、グルタチオン、メスナ、およびデクスラ を可能にする[20,22]。S.セレビシエについて ゾキサン等の化学防御化合物が研究され、特定の組織の 20 の我々の研究では、我々は、Ras,AktおよびS6 薬物依存性防御を供給することを示してきたが、これら Kの相同体はカロリー制限依存性ストレス耐性の主要な の化合物の使用は無病生存期間または全生存期間を増加 メディエーターであることを示した。我々は、IGF− することを示してはいない[4,5]。最近、我々は短 I/Rasシグナル伝達が酸化障害に対してラット神経 期絶食(STS)が広範囲の正常細胞に防御を提供する を増感し[23]、RAS癌遺伝とAKT癌遺伝子の相 が、悪性細胞には提供しないか、またははるかに少なく 同体が酵母を種々のストレス暴露と化学療法薬に対し増 、生存率の改善につながっていることを報告した[6] 感させることも報告した[6,24](図24)。増殖 。 と維持の調節シグナルに対する正常細胞と癌細胞の異な 【0108】 る応答は、我々の分別的ストレス耐性戦略の基礎である 正常な条件下では、生物の有限なエネルギー源は増殖と 。 維持の間で精巧に平衡が保たれている[7]。しかし、 30 【0111】 絶食条件等の困難な環境下では、エネルギーを成長から 患者にとって治療期間中の長期かつ極端な食事制限の実 維持へ転換することによって、増殖を犠牲にして防御と 施は不可能または不本意であるという理由により、絶食 生存を増強する[8]。種々のモデル動物における加齢 の臨床適用は制限されてきたであろうことから、我々は 研究は、カロリー制限と増殖促進GH/IGF−I軸の 絶食のDSRに対する有益な効果を介在する可能性のあ 欠乏が多くの生理学的特徴を共有し、寿命とストレス耐 る経路を調べた(図24)。 性を増加させることができることを示している[9]。 【0112】 【0109】 結果 増殖ホルモン(GH)はその増殖効果の主要なメディエ 短期絶食は増殖促進GH/IGF−I軸の成分を調節す ーターであるIGF−Iの産生を直接調節する[10] る 。絶食中、新しい環境に対する生理学的適応の結果とし 40 分別的ストレス耐性(DSR)に対する絶食の有益な効 てGH/IGF−I軸における幾つかの変化が起きる。 果におけるGH,IGF−Iの役割を調べるため、ST ヒトでは、短期絶食(36−72時間)に応答してGH S実施マウスにおけるGH/IGF−Iおよびにその結 分泌が増加するにもかかわらずIGF−Iレベルは劇的 合タンパク質IGFBP−1と−3の循環レベルを測定 に減少する[11−14]。マウスでは短期絶食(24 することからスタートした。CD−1マウスを72時間 −72時間)によりGHとIGF−Iのいずれも減少す 絶食させ、血液を採取してグルコースレベルと血漿GH る[15,16]。IGF−Iシグナル伝達が欠乏する 、IGF−I、およびIGFBP−1と−3のレベルを 長寿命生物は複数のタイプのストレスに耐性であること 測定した。STS72時間後、マウスは約20%の体重 も示されている[17−19]。我々の仮説は、絶食に を減らし、糖レベルは41%まで減少し、GHレベルは 応答するIGF−Iの低下は増殖促進経路を多くの細胞 わずかに増加し、IGF−Iレベルは70%減少した( で抑制するというものであり、エネルギーの維持への投 50 図23A−D)。IGF−I受容体(IGF−IR)を ( 32 ) JP 2015-186480 61 A 2015.10.29 62 活性化し得るIGF−Iのバイオアベイラビリティは、 減少、結果としてIGF−Iを含む増殖因子の減少は、 IGF結合タンパク質によって調節されている。絶食マ 15mg/mlCPの初代グリアに対する毒性を軽減し ウスでは、通常IGF−Iのシグナル伝達を減らすIG たが、C6グリオーマ細胞は軽減しなかった(図25B FBP−1のレベルが11.4倍増加していた(図23 )。我々は、また、IGF−Iを培養液に添加すること E)。これらの結果は、ヒトおよびラットでは絶食に応 によって高用量CP毒性に対するIGF−I上昇の効果 答してIGFBP−Iが増加することを示す報告[16 を試験した。100ng/mlIGF−I(成人ヒト血 ,25,26]と一致し、マウスにおけるその過剰発現 清の低い正常範囲)[32]でのプレインキュベーショ はIGF−Iの捕捉によって効果的に増殖を遅らせるこ ンにより初代混合グリアに対するCP毒性の3倍の増強 と示す報告とも一致する。他方、72時間絶食は、短期 がもたらされたが、C6グリオーマ細胞に対してはCP 絶食ヒトおよびラットの報告[16,27]と一致して 10 毒性を増強しなかった(図25C)。同様な結果がIG IGFBP−3レベルを42%まで減らした(図23F F−Iと酸化ストレス剤パラコートで併用処理した初代 )。IGFBP−3の減少についての機序の説明は明白 ニューロンおよびニューロン様褐色細胞腫細胞(PC1 ではないが、IGFBP−3のIGF−I非依存性効果 2)について得られた。これらの結果は、我々の絶食お [28]、またはIGF−Iへの親和性の増加による可 よびDSRについての以前の研究[6]と一致し、IG 能性がある[27]。 F−Iシグナル伝達の下方制御が化学療法毒性から正常 【0113】 細胞を防御し得るが、癌細胞では防御しないという仮説 以前に我々は、低グルコース(正常な100mg/dl を支持する。 に対して50mg/dl)および低血清(1%ウシ胎児 【0115】 血清;結果的にIGF−Iを含む幾つかの増殖因子が減 マウス胚線維芽細胞におけるIGF−IR欠損またはス 少)でプレインキュベートした初代グリア細胞がアルキ 20 トレス耐性における過剰発現の効果 ル化化学療法剤であるシクロホスファミドに対する防御 分別的なストレス耐性に関与する機序の検討を開始する を増強したが、グリオーマ細胞ではかかる増強は見られ ため、我々はigf1r欠損(R なかったことを示した[6]。絶食マウスのグルコース −IR過剰発現(R レベルはIGF−Iレベルの劇的な減少とともに同様な 胞(MEF)をDXRで処理した[33]。全ての細胞 レベルに低下した(図23BおよびD)。ゆえに、主要 は増殖の差を最少化するためコンフルエントになるまで な増殖促進因子IGF−Iの低下はDSRに対する絶食 増殖させ、DXRで24時間または48時間処理した。 の効果の一部を介在する可能性がある(図23Dおよび DXR処理24時間後、R E;図24)。 より高い生存率を示した。この効果は25μMで最も顕 【0114】 著であり、80%を超すR 低下したIGF−Iシグナル伝達は高用量シクロホスフ 30 胞は30%のみの生存であった(図26A,P<0.0 ァミドからグリオーマ細胞ではなく初代グリア細胞を防 005)。細胞を48時間処理した場合同様な結果が観 御する 察され、R IGF−I様シグナル伝達は、単純な酵母から虫、ハエ れぞれ50% 、およびマウスまでの範囲の生物において寿命とストレ 0.02)。 ス耐性の調節に関わっている[9,29−31]。イン 【0116】 ビトロでの化学療法薬に対するDSRにおけるIGF− IGF−Iが如何にして化学療法毒性を防御するかを調 Iシグナル伝達の役割を調べるため、我々は、正常細胞 べるため、我々はコメット解析を用いてDNA障害を測 およびそれに相当する癌細胞株をアルキル化細胞障害性 定した。DXR誘発DNA障害はR 薬剤であるシクロホスファミド(CP)で処理する前に + IGF−I受容体(IGF−IR)阻止抗体、異なる血 40 を超える差があった(図26CおよびD、P<0.00 清濃度、または過剰なIGF−Iのいずれかとともにイ 1)。特に、R ンキュベートした。初代混合ラットグリア(アストロサ 質転換に耐性を示した。このことは線維芽細胞が培養中 イト+5−10%ミクログリア)および3種のラットグ にしばしば自発的に形質転換することを考慮すると注目 リオーマ細胞株(C6,A10−85および9L)を試 に値する[34]。これらの結果は、低下したIGF− 験した。全ての細胞は増殖率の違いを最少にするために Iシグナル伝達が酸化依存性のDNA障害を軽減するこ コンフルエントになるまで増殖させた。最初に、拮抗す とによって正常細胞を防御するという我々の仮説を支持 るIGF−IR抗体(αIR3)とのプレインキュベー する[35]。 ションによりCP毒性に対して初代グリアが防御された 【0117】 が、3種のグリオーマ細胞株は防御されなかった(図2 S.セレビシエにおけるIGF−IR下流エレメント相 5A)。血清レベルにおける通常の10%から1%への 50 同体の役割 − + およびR − 細胞)またはIGF 細胞)を有するマウス胚線維芽細 + − − 細胞はR + 細胞に比較して 細胞が生存したが、R + 細 細胞の25μMでの生存率はそ vs.12%であった(図26B,P< − 細胞と比較してR 細胞で有意に高く、コメット解析で評価した場合3倍 − 細胞はSV40ラージT抗原による形 ( 33 ) JP 63 2015-186480 A 2015.10.29 64 IGF−IRの下方制御が化学毒性とそのDNA障害へ H分泌およびIGF−I産生を減らすために使用される の効果を防御する機序を理解するため、我々はS.セレ 。また、オクトレオチドは絶食に応答してソマトスタチ ビシエ単純モデル系に取り掛かった。酵母を使用する理 ンが上昇することから選択された[38]。以前の報告 論的根拠は、我々の以前の研究で示した酸化ストレス、 で、我々は短期絶食(STS)が、トポイソメラーゼI DNAアルキル化、および熱ストレスに対する細胞防衛 Iを阻害し、広範に使用される化学療法薬である高用量 の調節における哺乳類のRasとAktまたはS6Kの エトポシドに対してDSRを供給することを示した[6 相同体のRas2およびSch9、およびIGF−IR ]。ここで、我々はこのエトポシドに対する防御がオク の下流にあるSCH9およびRAS2相同体の中心的シ トレオチドによるGH/IGF−I軸阻害によって獲得 グナル伝達の役割に基づいている[6,24,36]。 、または増強され得るかどうかを試験した。興味深いこ 我々は、DXR耐性に対するRAS2およびSCH9欠 10 とに、オクトレオチドおよび他のソマトスタチン類似体 損の効果を試験した。DSRをさらに調べるため、我々 は2つの異なる効果:ソマトスタチン受容体によって介 はヒト発癌性のRas突然変異のモデルとなる構造的に 在される腫瘍に対する直接作用[40,41]および増 活性なRAS2(RAS2 v a l 1 9 )を発現する遺伝 殖ホルモン遊離の阻害およびIGF−Iの低下による間 子で形質転換した細胞も調べた。SCH9(sch9Δ 接的な効果[40−42]によって、多数の癌に治療効 )またはSCH9およびRAS2(sch9Δras2 果を有することが知られている[39]。我々は、とり Δ)の欠損は、その野生型(WT)株と比較してDXR わけ悪性度が高く、神経芽細胞腫(NB)のモデルであ に対する有意な防御を供給した(図27A)。しかし、 る腫瘍株(NXS2)を選択した[43]。NXS2細 我々の哺乳類研究に類似して、癌遺伝子様RAS2 l 1 9 v a の発現はRAS2およびSCH9欠損によって供 給される防御を逆転させた。DXR処理48時間後、W 20 TおよびRAS2 v a l 1 9 胞の静脈内注入によって肝、腎、副腎、および卵巣を含 む複数の臓器に一貫した転移形成が生じた[43]。 高用量のエトポシド(80mg/kg)の単回注入によ 発現細胞の50%は生存し って、治療しなければ40日以内に転移して死亡してい たが、sch9Δの70%およびsch9Δras2Δ たであろう担癌マウスの寿命が延長された。我々の以前 の90%超が生存した(図27A)。この効果は、DX の研究では、STSは急性の化学毒性関連の死亡を顕著 R処理72時間後はさらに明白であり、sch9Δra に減少させたが、癌細胞に対する部分的な防御も供給し s2Δおよびsch9Δは高度に防御された(それぞれ た[6]。我々の今回の結果は、オクトレオチドが化学 88%および70%の生存)が、この防御はRAS2 v 療法から動物を防御するには十分ではないが、STSと a l 1 9 の発現により逆転された(sch9ΔRAS2 の併用によりNXS2のエトポシドに対する感受性が高 v a l 1 9 ;27%生存)。分別的なDXR耐性の分子 められていることを示している。しかし、通常はヒトの 機序を調べるため、我々は、DNA突然変異頻度をモニ GH産生を減じるために使用されるオクトレオチドはマ ターし、Can r コロニー/10 6 細胞として測定した 30 ウスではIGF−Iレベル低下作用はマイナーであり、 [37]。DXR処理は全ての株で突然変異頻度を増加 ゆえにオクトレオチドによる宿主防御の欠乏はIGF− させた。生存解析に一致して、sch9Δおよびsch Iレベルについてのマイナーな効果によって説明可能で 9Δras2Δは最も低い突然変異頻度を示したが、R あろう。恒常的な機序がソマトスタチンの効果に拮抗し AS2 v a l 1 9 発現は突然変異頻度を増加させた(図 27B)。sch9ΔにおけるRAS2 (sch9ΔRAS2 v a l 1 9 v a l 1 9 発現 )は、Sch9欠損に 、オクトレオチド治療に対する急速な耐性につながり、 ゆえにIGF−Iレベルの有意な減少に失敗した可能性 がある。 よって供給される防御を完全に逆転させ、突然変異頻度 【0119】 の3倍の増加をもたらした(図27)。これらのデータ オクトレオチドが直接または間接にNXS2細胞に対す は、低下したRas2およびSch9シグナル伝達の有 る増感効果を示すかどうかを調べるため、我々はNXS 益な効果が少なくとも部分的には細胞におけるDNA障 40 2細胞をオクトレオチドとエトポシドでインビトロ処理 害に対する防御の増強によること、および癌遺伝子の発 した。オクトレオチドはエトポシドの細胞培養における 現によって逆転されることを示唆する。 NXS2細胞に対する毒性を変化させず、マウスにおけ 【0118】 るオクトレオチドの増感効果は間接的であることが示唆 オクトレオチドがNXS2神経芽細胞腫細胞を増感させ された。同時にこのことは、オクトレオチド単独では絶 るが、高用量エトポシドに対してマウスを防御しない 食様の宿主防御を供給しないが、癌細胞を増感させるこ IGF−Iの低下が哺乳類培養細胞において分別的な化 とによってSTSにより供給される癌細胞に対する部分 学療法防御を供給することから、我々はGH/IGF− 的な防御を逆転させる可能性があることを暗示する。オ I軸の薬理学的な操作がインビボにおいてDSRを誘導 クトレオチドが化学療法に対する他の腫瘍の感受性を増 し得るかどうかを調べた。ソマトスタチン類似体オクト 感させる可能性を調べるさらなる研究が必要である。 レオチドは臨床において主に先端巨大症患者におけるG 50 【0120】 ( 34 ) JP 65 2015-186480 A 2015.10.29 66 LIDマウスにおける高用量化学療法に対するストレス 。DXR注入後5日間に体重減少はLIDマウスでより 耐性の増強 明白であったが、体重を減少し続け、毒性のサインを示 IGF−IRまたはその下流のエレメントが遺伝的に破 した対照とは異なり、LIDマウスはその後3週後の間 壊されたマウスは、酸化ストレスに対しより耐性である にはそれらの体重を回復させた。2番目のDXR注入( ことが知られている[17,44]。IGF−Iシグナ 28mg/kg)は対照マウスにかなりの量のDXR関 ル伝達の減少が化学療法に対して防御するかどうかを決 連死(25%生存)をもたらしたが、LIDマウスは1 定するため、我々は、アルブミン駆動Cre/loxP 00%の生存であった(図28D,n=5/LID, 組み換え系[45]を用いて、絶食72時間後のマウス n=4/対照,P=0.022)。 に似た循環IGF−I[46]の70−80%減少を出 【0121】 生後に来たす条件付き肝igf1遺伝子欠損(LID) 10 メラノーマ担癌LIDマウスにおける高用量ドキソルビ トランスジェニックマウスモデルを試験した(図23D シンに対する分別的なストレス耐性 )。このLIDマウスは化学療法耐性におけるIGF− 次に、我々は、主に肺に転移する悪性度の高いメラノー Iと絶食の機序の関連性を調べるためのモデルを供給す マ細胞株(B16Fluc)を移植したLIDマウスを る[47]。最初に、エトポシドとSTS/オクトレオ モニターすることによってインビボDSR試験を実施し チドについての我々の有望な結果に基づき、我々は高用 た[53]。B16FlucはB16マウスメラノーマ 量エトポシドでLIDマウスを検証した。驚いたことに 細胞株の発光性の誘導細胞である。ゆえに、腫瘍の進行 、100mg/kgのエトポシド単回投与に対してLI と縮小を可視化でき、生物発光画像技術(BLI)を用 Dマウスは対照マウス(マウスはloxP−隣接igf いてインビボで定量することができる[53]。LID 1遺伝子はホモ接合性であるが、creリコンビナーゼ マウスとその対照マウスにB16Fluc(2x10 を欠損する)に比べ防御されず[45]、生存率はLI 20 細胞/マウス)メラノーマ細胞を静脈内に注入し、高用 Dマウスと対照マウスそれぞれ50% vs.88%で 量のDXRで2サイクル治療した(図7A,n=4/L あった(図28A、n=10/LID,n=9/対照、 ID−B16,n=5/LID−B16−DXR,n= P=0.064)。その後、我々のインビトロ結果に基 8/対照−B16,n=7/対照−B16−DXR)。 づきLIDマウスでCPを試験した。500mg/kg IGF−Iは形質転換、抗アポトーシス、腫瘍増殖、お のCPで処理したLIDマウスは有意により高い耐性を よび転移において主な役割を果たす[54]が、LID 示し、LIDマウスと対照マウスの生存率はそれぞれ7 マウスとその対照マウスのいずれも癌移植後早くも25 0% vs.30%であった(図28B,n=20/群 日目には転移に屈し始めた。2サイクルの高用量DXR ,P=0.001)。さらに、LIDマウスがそれらの はすべてのマウスで転移を遅延させ生存時間を延長した 平均体重を10%のみ失ったのに対し、対照マウスは2 (図29BおよびC)。DXR治療した対照マウスのか 0%失った。生存LIDマウスは何らの毒性サインも示 30 なりの数が心筋症のサインがあって毒性で死亡(43% さなかった。低下したIGF−Iによる防御の範囲を決 )したが、LIDマウスはDXR毒性では一匹も死なな 定するため、我々は化学療法薬の異なるクラスを表す2 かった(図29DおよびF)。加えて、LIDマウスは つの追加薬5−フルオロウラシル(5−FU)とドキソ 体重維持で軽度の有意性を示した(図29E)。癌移植 ルビシン(DXR)を試験した。シクロホスファミドは 90日後には化学療法を受けたすべての対照マウスは癌 DNAアルキル化剤[48]、5−FUは代謝拮抗剤[ 転移またはドキソルビシン毒性で死亡していたが、2サ 49]、DXRは挿入剤およびトポイソメラーゼII阻 イクルの高用量DXR治療を受けたLIDマウスの60 害剤[50,51]、およびエトポシドはトポイソメラ %は癌がなく、明らかな毒性副作用もなかった(図29 ーゼII阻害剤[52]である。高用量の5−FUで処 B,P<0.05)。すべてのLIDマウスの死亡は癌 理後、LIDおよび対照における生存率は改善され、そ 転移によるものであった。DXRで治療されたB16F れぞれ55% luc注入対照およびLIDマウスにおける癌の進行と vs.10%であったが、その差は有意 40 5 ではなかった(図28C,n=11/LID,n=10 死亡は同様であり、循環IGF−Iの低下は高用量化学 /対照、P=0.148)。同様であるが、より明白な 療法から癌細胞ではなく宿主を防御することが示唆され 効果がDXRにつき得られた。高用量の単回注入後げっ た。 歯類の尾静脈に不可逆性の障害を引き起こし得るエトポ 【0122】 シドおよび他の薬物と異なり、DXRは2−3サイクル 考察 注入ができる。ゆえに、化学療法の複数のサイクルの効 以前の報告において、我々は、短期絶食(STS)に基 果を試験するため、我々は2サイクルの高用量DXRで づくDSR法が高用量化学療法に対して癌細胞ではなく LIDマウスを検証した。最初のDXR注入(20mg 、宿主を防御することを記述した。この記述の基礎には /kg)は何らの毒性関連死ももたらさなかったが、全 、細胞が種々の侵襲に対して細胞を防御するために残存 てのマウスで著しい体重減少につながった(図28D) 50 するエネルギー源を使う目的で絶食に応答して侵入する ( 35 ) JP 2015-186480 67 A 2015.10.29 68 非分裂または低分裂「維持モード」の存在があると思わ Dマウスに起因する我々の結果に基づき、循環IGF− れる(図30)。ここに我々は、哺乳類のDSR調節に Iを減らす戦略が特定の化学療法薬の毒性を増強する可 おけるIGF−IおよびIGF−IRの役割を調べ、循 能性もある。それゆえ、各薬物とIGF−I低下/遮断 環IGF−Iの大きな低下は化学療法に対して癌細胞で 療法の間の適合性は、候補として考慮される前に前臨床 はなく宿主を防御することができることを見出した。低 試験で注意深く試験されるべきである。 レベルのIGF−Iは、IGF−IRの下流の2つの主 【0124】 要な経路の成分であるRasおよびAktを含む細胞内 要約すれば、我々のマウスにおける研究は、循環IGF の分裂促進シグナル伝達経路を縮小させることができる −Iの大きな低下は癌細胞ではなく、宿主に耐性の増強 。この細胞分裂刺激の低下は正常細胞に細胞周期を停止 を供給することができ、ゆえに、絶食を必要とすること させ[55,56]、Akt,Ras/ERK,FOX 10 なく癌治療を増強するための方法の基礎を供給する。し O,SirT1,およびERストレス応答[6,18, かし、絶食とIGF−I低下の組み合わせはさらに明確 23,35]を含むタンパク質によって制御される機序 な効果を供給し得る。循環IGF−Iの低下が種々の癌 によってエネルギーを修復へ転換させる、それによって に利用される可能性があることに注目することは重要で 高度な防御“維持モード”[6,56]に進入させると ある。 我々は信ずる。一方、癌細胞は増殖シグナルにおいて自 【0125】 給自足であり、生理学的な抗増殖シグナルに低応答また 方法 は応答しない[6,20,35]。これは、完全なコン 細胞株 フルエント下で処理された我々のR + − 細胞に 初代混合グリア細胞は、前述のように1−3日齢のスプ 観察されたDXRに対する分別的な防御を説明できるで ラーグドーリーラット新生児(チャールスリバー社)の あろう。加えて、我々の酵母実験は、RASおよび/ま 20 大脳皮質から取得した[58]。10%ウシ胎児血清( たはAKT/S6Kの相同体の欠損がDXRに対する防 FBS)を添加したDMEM/F12培地で10−14 御を促進するが、発癌性のRAS2 およびR v a l 1 9 の発現が 日間培養した細胞をアッセイに使用した。 細胞分裂と独立して防御を逆転させることを示している C6,A10−85、および9Lラットグリオーマ細胞 。これらの結果は、RasからPTEN/AKT から 株はChen博士(南カリフォルニア大学)のご厚意に PKA経路の範囲の経路を活性化する発癌性の突然変異 より提供され、R が癌細胞におけるIGF−Iシグナル伝達下方制御の防 士(トーマスジェファーソン大学)のご厚意により提供 御効果を逆転させるのに十分である可能性があり、ゆえ され、10%FBS添加DMEM/F12培地、5%炭 に宿主および種々の癌の分別的防御を許容するという可 酸ガス、37℃で維持された。R 能性を高める。特に、IGF−IRは正常細胞において れぞれヒトIGF−IRを過剰発現するまたはIGF− Ras、Aktなどを活性化することができる多くの受 30 IRを欠損するマウス胚線維芽細胞(MEF)であり、 容体の内に単なる一つであり、それゆえ、分別的なスト 前述のように作製された[33]。R レス耐性を供給するために下方制御することができる受 r遺伝子を標的破壊されたマウス胚に由来3T3様細胞 容体の内のただ一つであると説明することができよう。 である[33]。R 【0123】 サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下 前臨床試験は、IGF−IR標的戦略が、多発性骨髄腫 にヒトigf1r 、前立腺癌、乳癌、結腸癌に加えて他の癌の治療に有効 18日のスプラーグドーリーラット大脳皮質からの初代 であり得ることを示している[42,57]。かかる薬 ニューロンを0.5mMのL−グルタミン、25μMの 剤に見られる抗腫瘍効果は、IGF−IR不活化に起因 L−グルタミン酸および2%B−27を添加した神経培 するアポトーシスに依存すると考えられる[57]。し 養用基礎培地(インビトロジェン社)中に分離し、ホウ かし、IGF−IR遮断は正常細胞においてアポトーシ 40 酸塩緩衝液(0.15M,pH8.4)に溶解した10 スを開始させることもでき、血液細胞の増殖/回復に介 μg/mlポリ−D−リジンでプレコートした96穴プ 入することによって高用量化学療法に対して防御しない レートに640細胞/mm 可能性があることに注目しなければならない。我々のL B−27および0.5mMのL−グルタミンを添加した IDマウスで観察されたように、低下したIGF−Iは 神経培養用基礎培地中、5%炭酸ガス、37℃で4日間 IGF−IR遮断とは異なり、癌細胞死をもたらすこと 維持した。PC12ラット褐色細胞腫細胞株(ATCC はないが、化学毒性に対する正常細胞の耐性を選択的に )を15%ウマ血清および2.5%ウシ胎児血清を添加 増強することができ、かつ、癌細胞の化学療法に対する したF12K培地中、5%炭酸ガス、37℃で維持した 感受性を高める可能性がある。これは、LID−TRA 。 MPモデルにおける前立腺癌の正常な進展に関する我々 【0126】 の最近の観察と一致する[46]。エトポシド処理LI 50 インビトロIGF−I調節 + およびR + − 細胞はBaserga博 + およびR − 細胞株は、R − − 細胞はそ 細胞はigf1 細胞から得られ、 cDNAを発現する[33]。胎生 2 で播種した。ニューロンは ( 36 ) JP 2015-186480 69 A 2015.10.29 70 すべての細胞は処理前にコンフルエントまで増殖させた 必須培地(インビトロジェン社)で24時間処理した。 。IGF−IR活性化の阻害は1%FBS加DMEM/ PC12細胞はポリ−D−リシン被覆96穴プレート上 F12中24時間の抗IGF−IRモノクローナル抗体 に5x10 (αIR3,1μg/ml;カルビオケム社)で達成し 24時間増殖させた。両タイプの細胞のいずれもその後 た。血清制限は、細胞を10%または1%FBSのいず 適切な培地で100μMのパラコート単独、またはその れかを添加したDMEM/F12中24時間のインキュ 30分後IGF−I(100ng/ml)またはIGF ベートにより実施した。IGF−I処理は、細胞を1% −I(100ng/ml)単独で処理した。生存はMT FBSおよびrhIGF−I(100ng/ml、Pr T還元アッセイにより決定し、対照に対する処理のパー oSpec−Tany セントで表した。 TechnoGene,レホヴ 4 細胞/穴で播種し、1%HS加F12Kで ォト、イスラエル)加DMEM/F12中で48時間の 10 【0128】 インキュベートにより実施し、中年ヒトのIGF−Iレ インビトロ生存アッセイ ベル範囲内であることが示された[32]。 細胞毒性は、CytoTox 【0127】 oactive インビトロ薬物処理 y キット(プロメガ株式会社)を用いて遊離した乳酸 初代グリアおよびC6,A10−85,および9Lラッ トグリオーマ細胞を2x10 4 細胞/穴で播種し、96 96 Non−Radi Cytotoxicity Assa 脱水素酵素(LDH)またはメチルチアゾリルジフェニ ル−テトラゾリウム ブロミド(MTT)還元能のいず 穴プレートで48時間インキュベートして増殖の差が最 れかで測定した。MTTはミトコンドリア(代謝的に活 小化する処理前にコンフルエントに達した。種々のIG 性名細胞)の中でミトコンドリア還元酵素により還元さ F−I調節前処理後、シクロホスファミド(CP,シグ れて、不溶な紫ホルマザン結晶が生成し、この結晶は界 マ社)で処理した。グリア細胞はチトクロムP450を 20 面活性剤の添加により溶解した[1]。簡潔には、MT 発現することが報告されており、ゆえに、プロドラッグ TをPBS中に5mg/mlに調製し、1%FBS加D CPを代謝することができる[59,60]。CPは1 MEM/F12培地中に希釈して最終濃度0.5mg/ %FBS加DMEM/F12中で40mg/mlに調製 mlとし、アッセイ用とした。実験処理後、培地を10 し、ろ過滅菌した。原液は4℃で2週間以内貯蔵した。 0μlのMTTで置換し、細胞を37℃で3−4時間イ 細胞は1%FBS加DMEM/F12中で種々の濃度の ンキュベートした。ホルマザン結晶を100μl溶解緩 シクロホスファミド(0−15mg/ml)で10時間 衝液((w/v)15%SDS,(v/v)50%ジメ インキュベートした。R + − およびR 細胞は2x10 4 チルホルムアミド、pH4.7)で37℃一晩(16時 細胞/穴に播種し、96穴プレート中でインキュベート 間)溶解した。生存は処理細胞の対照細胞に対するMT し、また、ドキソルビシン(DXR)処理前にコンフル T還元レベルの割合で表した。 エント(2日間)に増殖した。DXRは無菌生理食塩水 30 マイクロプレートリーダーSpectraMax 中で5mg/mlに調製した。細胞をDXRで24時間 0(モレキュラーデバイス社)およびSoftMax およびMTT還元による生存解析前48時間処理した。 Pro オクトレオチド存在または非存在下で(10および50 )を用いて570nmで吸収を読み取った。 μM)、異なる濃度のエトポシド(1−3μM)で72 【0129】 時間処理したNXS2神経芽細胞腫細胞をスクレイピン コメット解析手順 グにより回収し、完全培地で洗浄し、トリパンブルー( 細胞を培地(10%FBS加DMEM/F12)で10 0.04%;シグマ社;セントルイス市、ミズーリ州) 5 で37℃1分インキュベートした。その後、細胞をビル 処理した。その後、細胞を冷PBSで1回洗浄し、製造 ケル計算盤(Tecnovetro、モンザ 業者の推奨する手順に従ってコメット解析(トレビジェ ミラノ、 25 3.0ソフトウェア(モレキュラーデバイス社 /mlに希釈し、50μMのDXRで37℃、1時間 イタリア)中に設置し、位相差顕微鏡(オリンパス光学 40 ン社、ガイザーズバーグ、メリーランド州)にかけた。 工業株式会社、東京、日本)にてカウントした。顕微視 コメット画像はNikon 野(各処理につき4視野カウントした)あたりのトリパ 0蛍光顕微鏡により獲得し、Comet ンブルー陽性細胞(すなわち死細胞)、トリパンブルー フトウェア(TriTek 陰性細胞(すなわち生細胞)、および全細胞をカウント )で解析した。各遺伝子型/処理群毎に100−300 した。死(または生)細胞の割合は、死(または生)細 細胞をスコア化した。 胞数を視野当たりの全細胞数で割って算出した。酸化ス 【0130】 トレスに対するIGF−Iの効果を決定するため、初代 血漿mGH,mIGF−I、およびIGFBP−1およ ラットニューロンおよびPC12細胞をIGF−Iおよ び−3の測定 びパラコートで処理した。皮質ニューロンは21mMグ 前述のように、R&Dシステム(ミネアポリス、ミネソ ルコースおよび1%ウマ血清を添加したイーグルの最少 50 タ州)からの組み換えマウスIGF―Iタンパク質およ Eclipse TE30 Scoreソ Corp.,ver1.5 ( 37 ) JP 71 2015-186480 A 2015.10.29 72 びモノクローナル抗体を用いて学内のELISA法によ 脱水、または下半身不随等で健康障害のサインを示した って血漿mIGF−I、およびmIGFBP−1および 場合、キシリジン(2%キシロール, −3のアッセイを実施した[61]。mGHレベルはラ rl, ット/マウスGH 屠殺した。 ELISAキット(アルプコダイア Bio98 S ミラノ、イタリア)で麻酔後、頸椎脱臼により グノスティックス社)により測定した。 【0135】 【0131】 LIDマウスにおける化学療法治療に対するストレス耐 血糖測定 性 72時間絶食後、2%吸入イソフルレンによりマウスを 75−100週齢のLIDマウスをヒト発癌モデルのた 麻酔し、左室心穿刺により血液を採取した。血糖はPr めに使用した[63]。肝がIGF−I産生の主要な供 ecision 給源なので、条件付き肝igf1遺伝子ノックアウトマ Xtra血糖モニタリングシステム( 10 アボットラボラトリーズ社、米国)を用いて測定した。 ウスは循環IGF−Iレベルを80%まで低下させてい 【0132】 る[46]。アルブミンは生後10日に肝で発現される マウスにおけるSTS/オクトレオチド処理 が、igf1遺伝子欠損に起因して、LIDマウスは、 マウスNX3IT28細胞株は前述の通りGD2−陰性 igf1遺伝子ノックアウト(igf1−/−)マウス C1300マウス神経芽細胞腫細胞株(A/J背景)を のように早期死亡、増殖遅延、または発育障害を経験し C57BL/6Jマウスからのマウス後根神経節細胞と ない[45,64,65]。LIDマウスおよび対照マ ハイブリダイズして作製した[62]。NXS2亜系統 ウスに100mg/kgのエトポシドを静脈内に投与し は、その後、GD2を高発現するNX3IT28細胞の た。CPは500mg/kgを投与した。CPは生理食 選択によって創製した[43]。体重15−18gの雌 塩水に40mg/mlで溶解し、腹腔内に注入した。5 性A/JマウスはHarlan −フルオロウラシル(5−FU,シグマ社)は400m es(Harlan l Laboratori 20 Italy,S.Pietroa g/kgを腹腔内に注入した。ドキソルビシン(DXR Natisone,イタリア)より購入し、特定の ,シグマ社)は生理食塩水中で5mg/mlに調製し、 ウイルスおよび抗原フリー条件下無菌ケージ内で飼育し 最初20mg/kg、22日後に28mg/kgで静脈 た。すべての手順はlicensing and et 内に注入した。全ての薬物は異なるカテゴリーから選択 hical the Na した。CPはDNAアルキル化剤[48]、5−FUは committee tional Cancer of In 代謝拮抗剤[49]、DXRは挿入剤およびトポイソメ stitute,ジェノア、イタリア、およびイタリア Research ラーゼII阻害剤[50,51]、およびエトポシドは 保健省によってレビューおよび承認された。A/Jマウ トポイソメラーゼII阻害剤である[52]。エトポシ スは1mg/kg/日量のオクトレオチド(OCT, ド、CP、5−フルオロウラシル、およびDXRは活性 ProSpec−Tany 酸素種(ROS)を増やし、酸化ストレスをもたらすこ TechnoGene,レ 30 ホボト、イスラエル)を4日間100μlの液量で尾静 とを示した[66−69]。すべてのマウスは毎日体重 脈より緩徐に投与して4日間前処理した。オクトレオチ 減少と疼痛およびストレス症状をモニターした。末期の ド処理4日後、マウスに前述の通りNXS2細胞(20 瀕死にあると決定されたマウスはCO2 麻酔下に安楽死 0,000細胞/マウス)を静脈内に注入した[43] させ、剖検を実施した。実験はInstitution 。腫瘍細胞を注入後、一部の動物を48時間絶食させ、 al その後、80mg/kgのエトポシド(Teva Ph mmittee(南カリフォルニア大学、ロサンゼルス B.V.,Mijdrecht,オランダ) 、カリフォルニア州)および国立衛生研究所ガイドライ arma を静脈内に単回投与した。化学療法後OCTをさらに4 Care and Use Co ンに従って実施した。 日間連日投与した。非食事介入対照群とOCT処理群も 調べた。 Animal 【0136】 40 LIDマウスにおけるDXRに対する分別的ストレス耐 【0133】 性 オクトレオチド前処理:1mg/kg/日、1−4日目 分別的ストレス耐性を調べるため、マウスに高転移性メ 、4日間 ラノーマ細胞を注入した。75−100週齢のLIDマ NXS2:4日目に200,000/マウス ウスおよび対照マウスを使用した。B16Flucメラ STS:4日目から6日目(腫瘍細胞注入後) ノーマ細胞はUCLAのノア エトポシド:7日目に80mg/kg なる贈呈であった。B16Fluc細胞はB16細胞の オクトレオチド後処理:8−11日目 類縁体であるが、CMVプロモーターの駆動によるホタ 【0134】 ルルシフェラーゼ遺伝子の安定な形質転換により光を生 毒性と有効性を決定するため、体重減少と一般行動につ 産する[53]。注入前に、細胞を洗浄し、無菌生理食 き定期的にマウスをモニターした。動物は、腹部膨張、 50 塩水に懸濁した。各マウスに100μl中の2x10 クラフト博士からの寛大 5 ( 38 ) JP 2015-186480 73 A 2015.10.29 74 細胞を注入し、その後、別の100μl無菌生理食塩水 増殖条件 を尾に残存する細胞の洗浄のために注入した。腫瘍接種 酵母の経時的寿命を使い古されたSDC培地で48時間 3日後、最初のDXR(ベッドフォード研究所)注入は 毎にコロニー形成ユニット(CFUs)を測定すること 16mg/kgの投与量であった。最初のDXR投与2 によってモニターした。1日目のCFU数は最初の生存 週後に2回目のDXRを12mg/kg投与した。マウ (100%)と考えられ、加齢依存性の致死率の決定用 スのストレス症状または疼痛を毎日観察し、体重を記録 に使用した[73]。培養物は1日目に200μMのD した。末期の瀕死状態にあるマウスはCO2 麻酔下に屠 XRで1回処理した。 殺し、剖検を実施した。更なる組織学的検査用に心臓を 【0141】 採取した。 突然変異頻度の測定 【0137】 10 野生型株および変異株に発生する突然変異のタイプを特 生物発光画像法 徴づけるために、我々は、CAN1(YEL063)遺 生物発光画像法(BLI)用にLIDマウス群および対 伝子の突然変異頻度を測定した[74,75]。Can 照マウス群から5匹のマウスを無作為に選択し、実験期 r 間中追跡した。すべてのBLI画像の手順は南カリフォ 、複雑な現象および全体の染色体再配置を含む他のDN ルニア大学(USC)Small Animal 突然変異は大部分点突然変異および小さな挿入/欠失 Im A突然変異に起因する[35]。経時的な加齢培養から agingコア施設で実施した。イメージングの前に、 細胞を2日毎に選択培地上に播種した。突然変異頻度は 吸入イソフルレン(2%)を用いてマウスを麻酔し、6 前述したように生細胞数に基づき計数した[36,37 0μl、50mg/kgのルシフェラーゼ基質ルシフェ ]。 リン(ゼノジェン・コーポレーション)を注入した。 【0142】 10分後、マウスを仰臥位にてイメージ化し、IVIS 20 文献 200光学的画像システム(ゼノジェン コーポレー 1. Collins ション)を用いて2分スキャンした。シグナル強度は検 2006) 出器によりフォトン計数率/単位体面積/対立体角単位 olecular として数量化した(フォトン/s/cm ン単位)。イメージはIVIS NG IMAGE 2 /ステリジア ics. 200およびLIVI 3D(ゼノジェン New コーポレーショ 2. Mini E, 【0138】 T (2006) 組織学的研究 ology 2サイクルの高用量DXR後、メラノーマ担癌LIDマ 30 ウスおよび対照マウスの組織学的検査用に心臓を採取し Biol 2: 689 S, khson braxane, 、10%中性緩衝ホルマリン(VWR)に貯蔵した。試 r−free, 料をパラフィン包埋し、5μmに薄切し、H&E染色し ticle た。USC for Medi 、解析した。 AM, pharmac v7−12. novel albumin−bound par of adva non−small−cell lung Ann Oncol 17: 126 Links M, Lewis C (1999 3−1268. ) Chemoprotectants: ジ、マサチューセッツ州)のD.ボットシュタインによ iew り提供されたDBY746(MATα,leu2−3, rmacology of their a rev clinical pha and therapeutic efficacy. Drugs 57:293−3 08. 株は前述の通りである[71]。すべての変異株は、一 5. 段階遺伝子置換によるDBY746背景に由来する[7 , Kewalramani 2]。 , Meropol 【0140】 A of paclitaxel すべての実験はマサチューセッツ工科大学(ケンブリッ )株につき実施された。sch9Δ変異 Ma Cremopho 4. 52,GAL GM, B, (2006) 酵母株 112,his3Δ1,trp1−289,ura3− Ann Manikhas et al. a form cancer. 40 Mazzei Afanasyev the treatment nced S, Caci Suppl 5: Green MR, Orlov cineの病理学教授ダオー博士とともに試料を観察し Nobili Cellular 17 調べた[70]。本臓器を採取し、氷冷PBSで洗浄し + m of gemcitabine. て記述されていることから、我々は組織レベルで心臓を 【0139】 to therapeut B, LandiniI, Oncol 3. た。心不全がDXR投与後の急性毒性の主要な原因とし of cancer Nat Chem agli School ( approaches P −700. ン)ソフトウェアにより解析した。 Keck I, Workman 50 9) Hensley ML, Hagerty KL T, Green DM NJ, et al. (200 American Society of Cl ( 39 ) JP 2015-186480 75 inical cal and useof : 2008clini guideline G, up chemotherapy radiation tectants. J therapy Clin pro Oncol , et FM, al. Wei s Madia F Starvatio but not against protect cancer high−dose c ch Proc Natl d 105: 8215−822 U S A Aca 0. 36 hour GH/IGF−I Kirkwood P (2005) , evolution ech TB, Shanley Food Ageing D restriction and ageing. Dev 126: M 1011− 20 1016. 8. Shanley (2000) ion and tory 54: 9. DP, Kirkwood Calorie aging: a analysis. with normal bjects hypopituitary and withsevere ficiency. t Metab 14. Disord Merimee roesch like ER 03) Evolutionary : from s to . Science 10. Dwarf Healthy eview: A role 1342−1346. (2005) of the hormone/insulin− owth factor malian LE1 9) 3718− Thissen growth of JM factor−I hormone particular asting. es 13. 15: humans reference Growth 95− of Horm s Nut H (2005) role in in injury. Norrelund h (199 insulin− 40 167−176. metabolic Th Brazeau of prolonged privation R M, on the hormone tissue J Rorsta Eff food de ultradia rhythm a somatos levels in Endocrinology th 104: 1733−1738. 16. 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The 33−40 : 94−104. pro crinol (1998) enzymes. during longed f Kenned binding (IGFBP)−1 LE, Rakocz MA, hepatocyte Holly ulation HM, Romanick IGF−I 20 P, Hu 4: Brown−Borg growth downstr AM, 3 175: like and growth protein− Endocrinol SirT1 Tor, Genet Cotterill binding hormone extensio factors P (2002 insulin−like (2002) restriction Rim scription Cohen s of owth Neurons. span 88: 329 action y MA et Metab unexpe y SG, 38−48. ChengC, bycalorie a cont Signali Fabrizio H, (2008) n 8: syst J Clin effects: . J McBurney /IRS−2/Ras/ERKl/2 Lee KW, factor 789−799. Longo factor fasting. intracellular 29. MW, growth cted genes W, J, insuli ) Nuclear J Bi they Xu Inhibition o an 10 . Y, 24. of gro on the during 28. Kinzler Li Cell effect 2−3298. 28025−28035. 23. ng The hormone Endocrinol pathways pathways Nat PI3K of mice. 282: em a restriction skin the rol. et al. n−like Ouyan H, Vogelstein nd of Doan on wth 57−70. Y, signaling in R Effects calorie exercise 100: Jiang Chen r 22. hallmarks Cell (2007) ary D, Weinberg The cancer. 21. JS, (2003) Hanahan 2015.10.29 78 Aging 13−22. 20. A Drakas R, Tu ga R (2004) ll size through X, Baser Control of ce phosphory ( 41 ) JP 2015-186480 79 lation g of 1 by bindin nuclear 41. pho Zalatnai V (1989) 3−kinas itrosobis(2− e. Proc Natl Sci ine−induced A 101: 9272−9276. Baserga IGF−I R Cell VD, Lieber J (2008) ncer.Nat Rev 9: Madia Wei M, WC, ity F, et al. in Madia genomic J F, Gattazzo S MechAgein M, vivo of Bando H, Mele S, E, Giorgio Pelicci as measured variation prolonged G, Re al. (1999) Th Hejna Brain M, linical M role b D, and e he d ulin−like 749 agents: nothing? The 46. somatosta as antineop much Ann Susini 2006) C, 1 ic 17: L ( ot 1733−1742. g t ins Sci U I S LJ, Hwan JW, Targeted hepatic mice Igfl leads to in factor Cancer e del in T dramat the cir insulin−like reduce on. Ann in factor H, Said alterations wth analogs agents. Cobb (2008) etionof the us Acad t al. Oncol Buscail somatostatin antitumor Oncol Natl Mehta RAMP Normal of hepatic growth Anzo M, a Accili 7324−7329. culating Rationalefor i JL, Stan A, (1999) g DL, ado 653−668. span 402: 309 S, Liu absence . Proc c 40 stress development food Res (2002) analogues lastic et al. rowthand Schmidinger of protein and life B, Butler A 96: Raderer P, et Yakar nard microdialysis: m Inst −313. 45. Somatosta bone 1586−1594. Migliaccio response 226−231. of to Cancer n mammals.Nature Mizobuchi 30 H, (1997) eprivation. as J Natl oxidative ffect e metastases adaptor circadian 40. toma controls release 3: neuroblas e p66shc Takahashi bout spontaneous M, 45−49. Target therapy DNA cancer. R, Var (1997) system Saito tin et al. model 128: R interleukin−2 boldi dam Nat Gillies simple Ishikawa M, CS, VD and 39. Xiang Longo Dev in C, fac 4: 505−518. Lode HN, 89: (200 SE (2004 growth P, age tin MN, Schernhamm and neoplasia. arrow. Bi C 49: 1810−1815. NM, Dolman for in 20 Cell Res Cancer 44. age−dependent M, errors Werner/Bloo for 38. ed analogue ES, Hankinson SD, prev 67−81. Fabrizio A a ki Longev SCH9 D−Trp−6−LH−RH Pollak 43. ham 160 microcapsules. tors C, ca golden ) Insulin−like Burhans (2008) system. 180: 7) er ca Bio Gattazzo premature model 42. ev recombination and 37. 10 ant Cell FabrizioP, stabilityin ol MR, against Mol mutation ents with of N−n pancreatic somatostatin RC− 903−910. 36. : and Res 25 Turning genes y sters A oxopropyl)am in Syrian ancer i−ageing g The cancer Exp Longo Vijg m S 1−6. 35. l in U ncer (1999) receptor research. 3: Acad A, Schally Treatment sphatidylinositol 34. 2015.10.29 80 upstream factor A axis but gro doesn tumor progressi Res 68: 3342−3 349. 50 47. Patel AC, Nunez NP, P ( 42 ) JP 2015-186480 81 erkins SN, rsting SD of energy er in J (2004) JC, Hu B (2003) Effects balance Nutr on tion canc ing altered 134: ic 3394S− de Rodenhuis JH Jonge (2005) amide. 49. , ME, Huitema 56. S, Beijnen ee Clinical cokinetics 44: of Clin pharma Pharmacokinet Longley uorouracil: (2003) DP mechanisms and clinical tegies. Nat Rev Cancer , Crothers is of (1998) of adriamycin−DNA roc 5: Natl ng Tewey 3: L, Char 20 DNAdamage U S A II. side: four elopment se KR Tao Y, 34: 53. Craft factor therapeutic ectives in Pract Oncol McCarthy s J (1980) m 59. Geng J, 998) al. (2005) live rmatol 54. mice. 125: Samani eRoith he D, role in J Can es cancer astasis: lz De Yakar the BJ, VoIk ytes P450 ion (2007) T 576−588. 61. Hwang and met en and rec ontogeny insights. 20−47. 55. Keyomarsi Endocr Rev Pardee n−like A 50 in rat and Knoth R 3 and of astroc localizat by phen Res 39: PD, Coh Quantitative murine growth insuli factor IGF−binding the Cyto in vitro DL, Lee P (2008) )−I, K, R PJ, Sto J Neurosci growth 28: Brain B (1994) and induction ytoin. overview ent c rat gli G, : intracellular L system (1 of the line. in vivo S, IGF HW inductio in the Kempermann chrome 40 159−165. AA, t 85: 89 Strobel , Gebicke−Haerter LM J Invest BrodtP of KW, Ng melanoma and 784: 276−283. 60. Biolumine of of P450 monooxygen C6 cell Liau Biol regulation ytochrome system R, de Velli cell cul Expression, oma Bruhn 591−602 rat cerebral ase , in KD, J Cell dev Prins Nat Cl astroglial topoisomera BD, et 4: p persp 0−902. Etopo Eur g Preparation from issue. 1514−1521. scentimaging cancer. 58. 466−46 30 of signa 1 receptor athway− in Mec insulin−like tures by V, Bourh disease: Liu LF uyen Res 61: E(2007) BD, (1998) N, of the separate IIinhibitor. cer Pinzi oligodendroglial 226: a Cancer TC, Ya decades of of nor J, Deutsch n and Hande for se 9 8. 52. c cycling P topoisomeras Science MV, Pard Exploiting Rowe mediated DNA 527−532. . Adriamycin−induce ammalian e DR adducts. Halligan (1984) Cell protection cells. rowth covalent Sci KM, cell lingof 11561−11565. 51. d Acad Res5: hanisms stra Phillips DM acterization mothera Prog Blagosklonny 57. 330−338. SM, of che AB (2001) mal 5−fl action Zeman the tox 4301−4305. DB, Harkin PG proliferat agents. lective protec against effects ancer cyclophosph 10 1135−1164. Johnston 50. of normal Cycle AD, Selective cells peutic 3398S. 48. 2015.10.29 82 Barrett genetically mice. A (IGF protein− IGF−related aci ( 43 ) JP 2015-186480 83 subunit. Horm Res IGF Greene X, ) Minna 2: apoptosis 65−74. Shain lymphoma A, Breakfield cogene 22: et al. (1975 properties ganglion NatlAcad rd Jemal E, Sci U 5−fluorouracil ein 7 (2008) XuJ, Cancer 2008. 8: Siegel CA gh al. J Clin ways. 5 70. Liu JP, ins AS, Robertson tratiadis arrying the A Igf−1) ptor J, Perk EJ, (1993) null genes in−like Baker mutations encoding growth andtype (Igflr). 1 IGF Cell 1988) c free of the insul 20 factor I ( rece rtson EJ, (1993) ke h. and Cell Liu JP, 71. Robe in postnatal 75: 66. Tsai−Turton BT, Tan Y, M, embr ast. 72. Cost GJ, et al. (200 Cyclophosphamide−induc deletion ed apoptosis hu from invol isiae cells stress glutathione xicol 67. Manda 003) of Sci and depletion. 98: K, Bhatia melatonin of To AL (2 tions. 40 73. ophosphamide−induced oxid life l Biol Toxicol mice. 19: Cel 367−37 2: 74. Kurosu iki T, 6 T, Miura Fukuda O (2003) overexpression increase gen in species T, M C, BCL oxy and inhibits 50 E, Li Designer derived other Yeast 14: The cerev a useful and span set gene dis applica 115−132. P, Longo VD chronological of Saccharomyce Aging Cell 73−81. Fabrizio P, Gattazzo Battistella Cheng prevents reactive ye and plasmids s cerevisiae. 2. 68. in Davies strains Fabrizio (2003) in CM, 288−290 CB, PCR−mediated cycl stress F, stress Caputo S288C: against ative and Saccharomyces ruption action 48: 47 Regulatio (1998) strains for 216−230. Prophylactic cardioto Res 292: Brachmann J, oxidative in heart: by Sch9 Science A, granulosa ( . U ves CE Gendron longevity Luong man Politi P, Pozza SD, resistance growt COV434 for VD (2001) 7) in rat Cancer Fabrizio n of 30 Luderer Res formation perfused Longo A 73−82. S, BK, Myers implications of insulin−li factors Biophys 66−4769. 75: 59 Efstratiadis Role growth yonic J, path Adriamycin−induced Pletcher Baker of AMPK 433−440. radical xicity. −72. 65. 332: Sinha syn throu signaling Rajagopalan PM1 Efs Mice cells Biochem Commun 71−96. 64. COX−2 genist in chemo−res cancer the modulation and statistics, Cancer and of apoptosis ergistically R, Wa et J, Park Combination induces istant On 4459−4468. sym S A (2005) in cells. JT, Ha OJ 10 Y, Hwang of cells. A, Hao 69. by chem reagents B−cell 4923−4927. 63. induced otherapeutic W, neuroblastomaX pathetic Proc Growth C J, Neuronal hybrid 18: LA, halazonitis 2015.10.29 84 d−labile 62. A C, et r2 blocks an extension. 55−667. L, Wei M, al. (2005) extreme Cell Si life−sp 123: 6 ( 44 ) JP 85 75. la Fabrizio o L, C, Battistel R, et al. 4) Superoxide is a or of program エトポシドに対し選択的に正常細胞とマウスを防御する mediat が、神経芽細胞腫細胞に対してはインビトロおよびイン aging ビボにおいてそれぞれまったく防御しないか、またはマ Saccharomyces イナーな防御を供給したことを報告した(分別的ストレ cerevisiae. 166: 76. M, zza 的経路が示された。最近、我々は短期絶食(STS)が (200 altruistic in J Cell Biol ス耐性,DSR)。我々のDSR仮説は、ストレス耐性 1055−1067. Villani Zunino 2015.10.29 対する細胞および生物の防御における絶食調節性の遺伝 Gattazz LL, an A 86 P, Vardavas Liou 2015-186480 が発癌経路によって阻止されること、また、それゆえ癌 F, Galimberti F, Monti 細胞ではストレス耐性が活性化され得ないという事実に E, Ro 10 A, et al. Prev スを防御するかどうかを調べ、かつ、異なる悪性細胞の ention of doxorubicin−ind 化学療法耐性に対するSTSの効果を調べてきた。報告 uced (1991) 基づいている。我々は、他の薬剤に対してSTSがマウ cardiomyopathy duced glutathione. ChemotherPharmacol by re されたSTS療法は化学療法投与前の48−60時間の Cancer 絶食から成っている。ここに我々は、シスプラチンに対 28: 3 する防御には化学療法前48時間、化学療法後24時間 65−369. の絶食を要することを示す。ルシフェラーゼを発現する 【実施例5】 メラノーマ細胞および神経芽細胞腫細胞を用いて、我々 【0143】 はインビボ化学療法の効果をモニターした。我々の結果 骨髄抑制、胃腸障害、および疲労を含む化学療法の毒性 は、STSは化学療法毒性から宿主を防御するが、神経 副作用は用量と癌治療期間を制限する。幾つかの化学防 20 芽細胞腫細胞は防御せず、複数のサイクルのドキソルビ 御剤が特定組織の防御を供給することが示されてきたが シン治療に対してメラノーマ細胞を増感させる可能性が 、正常細胞と癌細胞に対する分別的効果は制限されてい 示唆されることを確認した。これらの結果は、短期絶食 る。最近、我々は、短期絶食(STS)が化学療法に対 が広範囲の化学療法に対する正常細胞および癌細胞の分 して癌細胞ではなく、正常細胞を選択的に防御する(分 別的な防御に効果がある可能性を有し、化学療法の有効 別的ストレス耐性、DSR)ことを報告した。ここに我 性と健康アウトカムを増強する可能性を示している。 々はSTS依存性防御の機序を調べた。マウスでは、7 【0146】 2時間絶食はIGF−Iを70%まで減らし、IGF− 材料と方法 I阻害物質IGFBP1のレベルを10倍増加させた。 細胞培養 IGF−I/IGF−Iシグナル伝達の低下はシクロホ 初代混合グリア細胞は1−3日齢のスプラーグドーリー スファミドから初代グリアを防御したが、グリオーマ細 30 ラット新生児(チャールスリバー社)の大脳皮質から取 胞は防御せず、かつ、ドキソルビシン依存性DNA障害 得した。10%ウシ胎児血清(FBS)加DMEM/F に対してマウス胚線維芽細胞(MEFs)を防御した。 12培地(インビトロジェン社)で10−14日培養し 循環IGF−Iレベルが70−80%低下しているLI た細胞を使用した。C6,A10−85,9LおよびR Dマウスは試験した4つの化学療法薬の内3つに対して G2ラットグリオーマ細胞株ならびにLN229ヒトグ 防御を示し、ドキソルビシンで治療したメラノーマ担癌 リオーマ細胞株はチェン博士(南カリフォルニア大学) LIDマウスは低化学毒性で長期生存率を有意に改善( のご厚意により提供され、SH−SY5Yヒト神経芽細 LIDマウスおよび対照マウスそれぞれ60% 胞腫細胞株は10%FBS加DMEM/F12培地中、 vs. 0%)していた。これらの結果は、IGF−Iが癌細胞 5%CO2 下、37℃で維持された。 ではなく正常細胞における潜在的な防御阻止剤であるこ とを示唆する。 【0147】 40 哺乳類細胞のSTS処理 【実施例6】 初代グリア、グリオーマまたは神経芽細胞腫細胞を96 【0144】 穴マイクロタイタープレートに20,000−30,0 複数の化学療法剤に対する分別的防御のための短期絶食 00細胞/穴で播種し、2日間インキュベートした。処 に基づく戦略 理前に細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し 【0145】 た。すべての処理は5%CO2 下、37℃で実施された 要約 。グルコース制限は、細胞を低グルコース(0.5g/ 化学療法の副作用は癌治療の主要な制限因子である。化 L)または正常グルコース(1.0g/L)のいずれか 学防御剤の開発が進められてきたが、これらは薬物およ を添加したグルコースフリーDMEM(インビトロジェ び組織特異性により広範には使用されていない。我々の ン社)、1%血清で24時間インキュベートして実施し 以前の研究により、絶食の役割および種々のトキシンに 50 た。血清制限は、10%または1%FBSのいずれかを ( 45 ) JP 87 2015-186480 A 2015.10.29 88 添加したDMEM/F12で細胞を24時間インキュベ ウス神経芽細胞腫NXS2細胞株(200,000/マ ートして実施した。 ウス)を静脈内に注入した。腫瘍細胞注入後、一部の動 【0148】 物群を48時間絶食させ、その後、80mg/kgのエ インビトロ薬物処理 トポシドを1投与量で静脈内に投与した。非絶食の対照 シクロホスファミド(CP,シグマ社)をインビトロ化 群(NXS2群)のマウスも調べた。分別的ストレス耐 学療法研究に使用した。STS処理後、細胞を1%FB 性をさらに調べるため、C57BL/B6マウスにB1 S加DMEM/F12中種々の濃度のシクロホスファミ 6Flucメラノーマ細胞を注入した。注入前に細胞を ド(6−15mg/ml)で10時間インキュベートし 洗浄し、無菌生理食塩水に再懸濁した。各マウスは10 た。生存はMTT/LDHアッセイにより決定し、対照 0μl中の2×10 に対する処理の%比で表した。 10 5 個の細胞を受け、その後、別の1 00μlの無菌生理食塩水を尾に残存する細胞の洗浄の 【0149】 ために受けた。マウスは無作為に選択し、実験中追跡し マウスにおけるストレス耐性 た。生物発光画像法をUSC小動物イメージングセンタ A/Jマウス、CD−1マウスおよび胸腺欠損ヌード/ ーで実施した。シグナル強度を定量した(フォトン/S nuマウスを使用した。体重15−18gの6週齢雌性 /cm A/Jマウス(ハーラン社、イタリア)および体重20 【0151】 −22gの4週齢雌性胸腺欠損(Nude−nu)マウ 結果 ス(ハーラン社)を48時間絶食させ、その後、それぞ 図31−35参照。 れ80mg/kgおよび100mg/kgのエトポシド 【0152】 (テバファーマ、オランダ)を静脈内に注入した。体重 結論 18−20gの4週齢雌性CD−1マウスを60時間絶 20 短期絶食(STS)はインビトロおよびインビボで化学 食させ、その後、110mg/kgのエトポシドを静脈 毒性に対するストレス耐性を誘導することができる。S 内に注入した。すべてのマウスに化学療法後食事を提供 TS誘導ストレス耐性は種々の通常の化学療法に適用可 し、体重減少と一般行動を毎日モニターした。また、異 能である。STSは哺乳類細胞および担癌マウスにおい なる化学療法剤シスプラチンの実験をCD−1マウスで て化学療法薬に対する分別的ストレス耐性(DSR)を 、ドキソルビシンをA/Jマウスで実施した。 与えた。STSは化学療法に対する癌細胞の感受性を増 【0150】 感させる。 マウスにおける分別的ストレス耐性(DSR) 【0153】 体重15−18gの6−7週齢雌性A/Jマウス(ハー 本明細書で引用される全ての出版物はこれらのすべての ラン社、イタリア)を特定のウイルスと抗原がフリーな 参照により本明細書中に組み入れられたものとする。 2 条件下で無菌封入体の中で飼育した。A/Jマウスにマ 30 【図1】 【図2】 /ステリジアン単位)。 ( 46 ) 【図3】 JP 【図6】 【図4】 【図7】 【図5】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 47 ) 【図8】 JP 【図10】 【図11】 【図9】 【図12】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 48 ) 【図13】 JP 【図16】 【図14】 【図17】 【図15】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 49 ) 【図18】 JP 【図20】 【図21】 【図19】 【図22】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 50 ) 【図23】 JP 【図25】 【図24】 【図26】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 51 ) 【図27】 JP 【図29】 【図28】 【図30】 【図31】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 52 ) 【図32】 JP 【図33−2】 【図34A】 【図33−1】 【図34B】 【図34C】 2015-186480 A 2015.10.29 ( 53 ) JP 2015-186480 A 2015.10.29 【図35】 ──────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. A23L (72)発明者 FI 1/307 (2006.01) テーマコード(参考) A23L 1/307 ロンゴ,ヴァルトル アメリカ合衆国 ニュー カリフォルニア州 シティー 3740,スィート オブ サウザン 90089−2561,ロサンゼルス,マクリントックアベ イーイービー 131,ヒューズセンター,シー/オー カリフォルニア,ユーエスシー スティーブンズ ユニバー