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ナイジェリア - 日本貿易振興機構
■ ナイジェリア ■ ナイジェリア Federal Republic of Nigeria 2012 年 2013 年 2014 年 ①人口:1 億 7,394 万人(2014 年) ④実質 GDP 成長率(%) 6.7 5.5 6.2 ②面積:92 万 3,769km2 ⑤消費者物価上昇率(%) 12.2 8.5 8.1 ③ 1 人当たり GDP:3,298 米ドル ⑥失業率(%) n.a. n.a. n.a. ⑦貿易収支(100 万米ドル) 42,949 43,767 26,790 ⑧経常収支(100 万米ドル) 23,411 20,711 6,187 ⑨外貨準備高(100 万米ドル) 46,405 45,427 36,669 6,527 8,822 9,711 157.5 157.3 158.6 (2014 年) ⑩対外債務残高(グロス) (100 万米ドル) ⑪為替レート(1 米ドルにつき、 ナイラ、期中平均) 〔注〕①③:推計値、⑦:通関ベース 、②④:ナイジェリア連邦統計局、⑦⑧⑩:ナイジェリア中央銀行、⑨⑪:IMF(IFS) 〔出所〕①③⑤⑥:IMF(WEO) ■ボコ・ハラムやエボラ出血熱の影響にもか かわらず 2014 年は 6.2%の成長を達成 計画を発表し、その多くが商業生産開始に向けた準備を 進めている。電気製品や鉄鋼製品も政府の国内産業保護 ナイジェリア連邦統計局によると、2014 年の実質 GDP 政策により、完成品の輸入から国内生産へのシフトが進 成長率は、前年を上回る 6.2%(暫定値)だった。2014 年 んでいる。一方、GDP の 10.8%を占める原油・天然ガス 上半期はイスラム過激派組織ボコ・ハラムによるテロが は、ナイジェリア国営石油公社によれば、2014 年の平均 北部地域で活発化し、地域経済には影響を与えたが、総 原油生産量は日量 219 万バレルと前年(日量 218 万バレ 体としてはマクロ経済の安定が海外から多くの投資を引 ル)に比べ微増したものの、原油価格の下落などが影響 き付け、第 1 四半期には 6.2%、第 2 四半期には 6.5%の成 し 1.3%減となった。 長を達成した。第 3 四半期は、7 月下旬にエボラ出血熱が 発生し、航空業界やホテル業界などが影響を受けたもの の、その影響は最小限にとどまり、6.2%の成長を達成し ■輸出入ともに増加、アジアとの貿易は一層 拡大 た。エボラ出血熱は 10 月 20 日に世界保健機関(WHO) ナイジェリア連邦統計局によると、2014 年の輸出(通 による終息宣言を受け、本格的な成長再開が見込まれて 関ベース)は前年比 14.5%増の 16 兆 3,040 億ナイラ、輸入 いたが、 第4四半期には国際的な原油価格の下落が始まっ は 5.1%増の 7 兆 3,744 億ナイラとなった。 輸出では、90.9%を占める鉱物性生産品が 18.6%の増加 たことによって、成長率は 5.9%に鈍化した。 産業別では、名目 GDP の 20.2%を占める農業(前年比 となった。このうち原油はナイジェリア産原油の最大の 4.3%増) 、17.6%を占める卸・小売業(5.9%増)、10.8% 買い手であるインドが2014年末にかけて中南米など他地 を 占 め る 情 報 通 信(7.0% 増 ) 、9.8% を 占 め る 製 造 業 域からの調達を増やしたものの、通年ではナイジェリア (14.7%増)が好調であった。政府の積極的な農業振興策 表 2 ナイジェリアの産業別 GDP 構成比および 成長率(2014 年) (単位:%) を受け、国内外の投資家が大規模な精米所建設や稲作の プロジェクトを立ち上げた。また、製造業も政府が 2013 年 10 月に発表した自動車産業育成政策を受け、 約 30 社が ナイジェリア国内で乗用車やトラックの組み立て生産の 表 1 ナイジェリアの需要項目別実質 GDP 成長率 (単位:%) 2013 年 2014 年 実質 GDP 成長率 民間最終消費支出 政府最終消費支出 国内総固定資本形成 財貨・サービスの輸出 財貨・サービスの輸入 5.5 21.1 △ 10.3 7.9 △ 21.7 12.2 〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 6.2 2.0 5.6 13.4 15.6 6.7 Q1 6.2 △ 0.3 △ 7.5 20.1 18.1 0.3 2014 年 2015 年 Q2 Q3 Q4 Q1 6.5 6.2 5.9 4.0 △ 0.2 △ 2.6 10.6 7.1 12.7 △ 1.9 16.6 42.8 13.3 8.4 12.5 9.7 27.2 30.8 △ 14.5 △ 18.3 25.5 △ 8.0 12.0 6.0 農業 卸・小売業 原油・天然ガス 情報通信 製造業 不動産 建設 金融・保険 教育 運輸 ホテル・飲食 その他 構成比 20.2 17.6 10.8 10.8 9.8 8.4 3.6 3.1 2.0 1.3 0.9 11.5 成長率 4.3 5.9 △ 1.3 7.0 14.7 5.1 13 8.1 8.9 4.4 18.3 - 〔注〕構成比は名目 GDP 値、成長率は実質 GDP 値 から算出。 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 ■ ナイジェリア ■ からの調達は前年を上回った。他方、米国向け原油輸出 輸送機器・同関連品の輸出が前年比約 3.8 倍に増加したほ は近年、減少を続けており、7 月に一時的に輸出がゼロ か、液化ガス燃料を中心とした化学工業生産品も約 7.7 倍 になるなど、低水準で推移した。天然ガスは最大の買い に輸出が増加した。 手である日本の輸入増(前年比 35.9%増)などに支えら れ、輸出額は約 4.8 倍となった。鉱物性生産品以外では、 輸入では、石油製品価格の下落を受けて鉱物性生産品 が 14.2%減となったが、機械・電気機器・同部品(28.5% しゅんせつ 浚渫船や貨物船、海上油田に係るプラットホームなどの 増)や輸送機器・同関連品(14.5%増)、ベースメタル・ 同関連品(22.1%増)などは軒並み増加した。 表 3 ナイジェリアの主要品目別輸出入<通関ベース> (単位:100 万ナイラ、%) 輸出(FOB) 2013 年 金額 鉱物性生産品 12,493,781 原油 11,808,741 石油および歴青油(原油を除く) 381,649 天然ガス 290,629 プロパン 6,497 輸送機器・同関連品 95,091 化学工業生産品 41,192 加工食品・飲料品 394,214 テキスタイル 51,636 植物性生産品 275,199 合計(その他含む) 14,245,272 輸入(CIF) 2013 年 金額 機械・電気機器・同部品 1,329,288 鉱物性生産品 1,449,264 輸送機器・同関連品 765,567 ベースメタル・同関連品 554,685 化学工業生産品 502,009 植物性生産品 308,373 プラスチック・ゴム生産品 631,139 加工食品・飲料品 662,185 動物性生産品 260,313 合計(その他含む) 7,015,815 国・地域別にみると、輸出では前年に続きイ ンドが最大の相手国(構成比 16.1%、前年比 2014 年 金額 構成比 伸び率 14,818,120 90.9 18.6 11,891,192 72.9 0.7 991,612 6.1 159.8 1,386,878 8.5 377.2 335,418 2.1 5,062.3 357,757 2.2 276.2 315,554 1.9 666.1 176,875 1.1 △ 55.1 145,413 0.9 181.6 118,489 0.7 △ 56.9 16,304,041 100.0 14.5 2014 年 金額 構成比 伸び率 1,708,466 23.2 28.5 1,243,578 16.9 △ 14.2 876,532 11.9 14.5 677,520 9.2 22.1 583,534 7.9 16.2 452,248 6.1 46.7 444,831 6.0 △ 29.5 404,896 5.5 △ 38.9 341,266 4.6 31.1 7,374,371 100.0 5.1 45.4%増)、次いでオランダ(10.2%、11.4%増) 、 ブラジル(8.1%、2.3%減)、英国(5.1%、13.0% 増)の順となった。米国は同国の原油輸入減少 の影響から前年 4 位から 5 位に後退した。イン ド、中国、日本向けの輸出が軒並み増加したこ とから、対アジア輸出は前年比 60.6%増加し、構 成比でも 28.5%となるなど、輸出先のアジア・ シフトが進んでいる。輸入では、中国(21.9%、 9.5%増)が前年に続き最大の相手国で、次いで 米 国(10.2%、22.6% 増 ) 、 オ ラ ン ダ(6.1%、 19.2%増)、インド(6.0%、33.2%増)の順となっ た。輸入でも対アジアが前年比19.9%増加し、構 成比は 42.6%となるなど、アジア諸国との関係 が拡大している。 また、貿易自由化に向けた動きの一環として、 15 カ国が加盟する西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS)が、2015 年 1 月から対外共通関税 を導入し、関税同盟を発足させた。域外からの 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 輸入に対して35%を上限 に 5 段階の共通関税を課 表 4 ナイジェリアの主要国・地域別輸出入<通関ベース> 2013 年 金額 2,894,483 72,172 170,736 1,801,122 6,079,151 1,493,323 729,939 308,886 2,917,283 1,203,834 1,348,918 1,792,867 756,876 輸出(FOB) 2014 年 金額 構成比 伸び率 4,649,232 28.5 60.6 516,403 3.2 615.5 264,610 1.6 55.0 2,618,594 16.1 45.4 6,881,170 42.2 13.2 1,662,858 10.2 11.4 824,919 5.1 13.0 275,462 1.7 △ 10.8 2,238,112 13.7 △ 23.3 616,443 3.8 △ 48.8 1,317,850 8.1 △ 2.3 1,925,853 11.8 7.4 824,739 5.1 9.0 アジア 日本 中国 インド 欧州 オランダ 英国 ドイツ 米州 米国 ブラジル アフリカ 西アフリカ諸国経済 共同体(ECOWAS) オセアニア 561,489 609,674 合計(その他含む) 14,245,272 16,304,041 3.7 100.0 8.6 14.5 (単位:100 万ナイラ、%) す。加盟国間では1990年 輸入(CIF) 2014 年 金額 構成比 伸び率 3,138,453 42.6 19.9 126,581 1.7 37.2 1,616,791 21.9 9.5 439,543 6.0 33.2 2,560,928 34.7 7.8 450,431 6.1 19.2 289,290 3.9 △ 21.2 282,503 3.8 20.8 1,038,785 14.1 13.7 750,881 10.2 22.6 187,677 2.5 △ 6.1 521,885 7.1 △ 22.5 46,072 0.6 △ 62.2 以降、域内産品に対する 2013 年 金額 2,617,974 92,245 1,475,928 329,947 2,376,232 377,852 367,066 233,953 913,465 612,661 199,916 673,256 121,781 434,888 7,015,815 86,209 7,374,371 1.2 100.0 △ 80.2 5.1 〔注〕西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、ベナン、ギニア、ニジェール、ブルキナファソ、ギニ アビサウ、ナイジェリア、カボベルデ、コートジボワール、セネガル、ガンビア、リベリア、シエラ レオネ、ガーナ、マリ、トーゴの 15 カ国が加盟。上記値ではナイジェリア除く。 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 関税を撤廃する自由貿易 協定(FTA)が発効して おり、関税同盟の発足を 経て、地域共通市場の形 成に向けた市場統合に弾 みがつくことが期待され る。 ■中東・北アフリカ 諸 国 からの 投 資 が流入 2014年の対内直接投資 額(ネット、フロー)は、 国 際 収 支 ベ ー スで 46 億 9,383 万ドルと前年比で ■ ナイジェリア ■ 表 5 ナイジェリアの業種別資本輸入<金額ベース、フロー> (単位:1,000 ドル、%) 2013 年 金額 株式投資 15,665,236 ファイナンス 2,375,771 通信 913,602 金融 671,801 製造業 391,333 サービス 630,969 卸・小売り・貿易 280,057 石油・ガス 129,621 建設 47,716 掘削 6,553 コンサルティング 15,304 農業 82,370 電力 10,937 ホテル 20,170 IT サービス 30,381 運輸・交通 675 漁業 5,079 マーケティング 3,437 醸造 37,362 合計(その他含む) 21,318,375 金額 13,806,794 2,708,309 994,325 964,188 943,978 551,308 385,605 208,172 55,689 41,262 26,432 24,321 16,021 11,268 9,971 2,468 550 97 0 20,750,761 2014 年 構成比 66.5 13.1 4.8 4.6 4.5 2.7 1.9 1.0 0.3 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 伸び率 △ 11.9 14.0 8.8 43.5 141.2 △ 12.6 37.7 60.6 16.7 529.7 72.7 △ 70.5 46.5 △ 44.1 △ 67.2 265.6 △ 89.2 △ 97.2 △ 100.0 △ 2.7 〔注〕直接投資、ポートフォリオ投資、その他投資含む。 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 (70.5%減) 、IT サービス(67.2%減)などに対する投資 は減少した。 国別では、前年に続き英国(構成比 52.7%、前年比 2.8% 増)が最大の投資国であったが、続く米国(18.0%、9.9% 減)、ベルギー(4.6%、26.2%減)は減少し、南アフリカ 共和国(1.3%、39.8%減)も大幅に減少した。一方で、 これらの減少幅を、サウジアラビア(3.9%、51.9 倍)や カタール(2.8%、全増)、エジプト(1.6%、110.7 倍)、ア ラブ首長国連邦(1.5%、8.7 倍)など、中東・北アフリカ 諸国からの投資が流入し補った。 ■ 原油価格の下落が財政を直撃、通貨ナイ ラを切り下げ オコンジョ・イウェアラ財務相は「ウォールストリー ト・ジャーナル」紙(2014 年 12 月 10 日)のインタビュー に対し、国際的な原油価格の下落を受け「2015 年は間違 いなく厳しい年になる」とコメントした。鉱物性生産品 が政府歳入の 7 割以上、輸出の 9 割を占めるナイジェリア では、原油価格の下落は財政を直撃する。ナイジェリア 表 6 ナイジェリアの国・地域別資本輸入<金額ベース、フロー> (単位:1,000 ドル、%) 2013 年 金額 英国 10,635,375 米国 4,146,540 ベルギー 1,293,297 サウジアラビア 15,638 カタール − オランダ 217,462 モーリシャス 673,743 エジプト 3,026 アラブ首長国連邦 36,745 南アフリカ共和国 462,330 フランス 6,735 ピトケアン諸島 70,000 ドイツ 314,500 スイス 2,541,402 香港 76,459 マン島 254,380 中国 85,798 シンガポール 158,807 パナマ 1,618 日本 357 合計(その他含む) 21,318,375 金額 10,937,960 3,737,416 954,084 811,900 587,087 553,579 492,074 335,087 321,106 278,236 242,847 200,000 188,884 155,410 155,288 143,858 116,886 114,073 101,248 650 20,750,761 2014 年 構成比 52.7 18.0 4.6 3.9 2.8 2.7 2.4 1.6 1.5 1.3 1.2 1.0 0.9 0.7 0.7 0.7 0.6 0.5 0.5 0.0 100.0 伸び率 2.8 △ 9.9 △ 26.2 5,091.8 全増 154.6 △ 27.0 10,973.6 773.9 △ 39.8 3,505.7 185.7 △ 39.9 △ 93.9 103.1 △ 43.4 36.2 △ 28.2 6,157.6 82.1 △ 2.7 〔注〕直接投資、ポートフォリオ投資、その他投資含む。 〔出所〕ナイジェリア連邦統計局 政府は2015年予算案における原油価格のベンチマークを、 当初の 1 バレル= 78 ドルから、2014 年 12 月末までに 2 度 見直した。さらに 2015 年に入り議会での見直しを経て、 最終的に大統領が 5 月に署名した予算ではベンチマーク は 53 ドルで設定された。結果、当初予算は前年比 3.2% 減となる 4 兆 4,934 億ナイラとなった。この財政的困難を 政府は非石油部門からの徴税強化や国際機関からの借り 入れで乗り切る意向を示しているが、北部でのボコ・ハ ラム掃討など治安対策に予算を集中する必要があること から、インフラなどその他多くのプロジェクトが停滞す る可能性もある。 また、通貨ナイラの下落も進行し、徐々に物価が上昇 している。中央銀行は2014年11月25日に変動相場のター ゲットの1ドル=155ナイラから168ナイラへの切り下げ を決定した。2015 年 2 月 18 日には、さらに強まる切り下 げ圧力に対応すべく、中央銀行は外貨オークションを廃 止し、銀行間取引レートに一本化する政策を発表した。 加えて、4 月 17 日に国内経済のドル化を防ぐべく、国内 取引におけるドルでの請求・支払いを禁止する政策を発 表した。これら一連の政策により、ナイラ安の進行は 1 1.4%増加した。一方、ポートフォリオ投資等を含む資本 ドル= 196 ナイラ水準で止まっている。一方で、2013 年 輸入全体では、207 億 5,076 万ドルと前年比 2.7%減となっ 以来、前年同月比で 1 桁台を保っていた消費者物価上昇 た。 率は、ナイラの切り下げを受けて、2014 年 12 月の 8.0% 業種別の資本輸入では、製造業(前年比 2.4 倍)が大幅 に増加したほか、通信(8.8%増) 、金融(43.5%増) 、石 油・ガス(60.6%増) 、卸・小売り・貿易(37.7%増)な どへの投資が増加した。一方で、主要産業の中では農業 から徐々に上昇し、2015 年 6 月には 9.2%となった。 ■ ナイジェリア ■ ■政権交代が実現、新政権による経済の立て 直しが急務 2015 年 3 月 28、29 日には大統領選挙が実施され、野党 円(36.8%増)となった。 日本の輸出は、ポンプおよび遠心分離機や原動機など の一般機械(構成比 36.3%、4.4 倍)や電気機器(5.1%、 の全進歩会議(APC)のムハンマド・ブハリ元最高軍事 98.7%増)が大幅に伸びた一方で、これまで上位を占め 評議会議長が、現職のグッドラック・ジョナサン大統領 てきた輸送用機器(18.4%、36.8%減)と鉄鋼(21.6%、 を破り当選した。1999 年の民主化以降、初めて政権が交 11.5%減)は減少した。輸送用機器は、政府が 2013 年 10 代する歴史的な勝利となった。選挙の争点だった治安の 月に発表した国内の自動車産業の保護育成政策が施行さ 回復と汚職撲滅については、ボコ・ハラムによる大量殺 れ、2014 年 7 月から完成車の輸入関税(賦課税含む)が りくと誘拐、破壊行為が拡大する中、文民出身のジョナ 乗用車 70%、商用車 35%に大幅に引き上げられたことが サン氏は有効な手を打つことができなかったことから、 影響した。 特に被害の大きい北部地域で軍出身のブハリ氏を支持す 日本の輸入は、 天然ガスおよび製造ガス (構成比92.0%、 る声が高まった。汚職についても、1999 年の民政化以来 前年比 35.9%増)が大幅に伸びたことに加え、石油およ 16 年間にわたり政権を握り、汚職がなくならなかった与 び同製品(3.7%、55.5%増)、採油用のゴマ(2.4%、67.8% 党に対し、クリーンなイメージを築いたブハリ氏に期待 増)などの主要品目が軒並み増加し、全体で前年比 36.8% が集まった。 増だった。 ブハリ政権は就任早々、北東部でのボコ・ハラム掃討 日本企業のナイジェリア進出では、2014 年 8 月に電通 について、チャドなど隣国や欧米諸国との連携強化、防 の海外本社電通イージス・ネットワークがナイジェリア 衛本部の首都アブジャから前線となる北東部の都市マイ のメディア・エージェンシーに出資し、ビジネス展開す ドゥグリへの移転など、積極的に治安対策強化に取り組 ることを決定した。エボラ出血熱に伴う渡航自粛により んでいる。しかしながら、経済政策については、閣僚人 日本企業の活動が停滞した時期もあったが、12 月にはヤ 事の調整に時間を要しており、いまだ具体的な経済政策 マハ発動機がナイジェリアへの再進出を発表した。ヤマ は打ち出せていない。大統領選および政権交代による政 ハ発動機は、2015 年 4 月に豊田通商傘下の仏商社 CFAO 治的な空白期間は経済活動を著しく停滞させ、2015 年第 と折半出資で二輪車のノックダウン生産・販売の合弁会 1 四半期の成長率は 4.0%にまで落ち込み、経済の立て直 社を設立した。2015 年は、大統領選が無事に終了したこ しが急務だ。 とから、日本企業によるナイジェリア市場開拓が本格化 前政権時代は安定したマクロ経済が海外から多くの投 すると見込まれる。 資を引き付けたが、前年来の国際的な原油価格の下落に より、政府財政はこれまでになく苦しい状況に陥ってい る。非石油部門からの税収増と支出の見直しによる財政 再建に取り組みつつ、短期的には金融政策により原油価 格の下落を引き金とした為替の急速な下落とそれに伴う 物価上昇を抑える必要がある。また、長期にわたり審議 中となっている石油産業の立て直しに係る法案の早期成 立や、国内製造業の育成を目的とした自動車産業育成政 策の本格実施や、電力不足の解消など、成長に向けた政 策を着実に進めていく必要がある。課題山積の中、ブハ リ政権が、力を入れて取り組んでいる北部地域の治安回 復や汚職の撲滅は経済面でも大きなプラスとして作用す ることから、今後の取り組みが期待される。 ■日本の対ナイジェリア貿易は輸出入とも大幅 増、企業の市場参入は 2015 年以降本格化 財務省「貿易統計(通関ベース)」によると、2014 年 の日本のナイジェリアへの輸出は 764 億 7,541 万円(前年 表 7 日本の対ナイジェリア主要品目別輸出入<通関ベース> (単位:100 万円、%) 輸出(FOB) 2013 年 金額 金額 一般機械 6,244 27,730 ポンプおよび遠心分離機 672 14,421 原動機 1,485 5,483 鉄鋼 18,678 16,525 16,111 14,048 鉄鋼のフラットロール製品 輸送用機器 22,280 14,070 バス・トラック 15,883 7,684 乗用車 4,122 3,210 自動車の部分品 655 1,312 織物用繊維およびくず 6,811 7,478 電気機器 1,963 3,900 合計(その他含む) 63,208 76,475 輸入(CIF) 2013 年 金額 金額 天然ガスおよび製造ガス 320,049 434,910 石油および同製品 11,125 17,297 ゴマ(採油用のもの) 6,802 11,415 アルミニウムおよび同合金 7,388 8,952 合計(その他含む) 345,475 472,724 比 21.0%増) 、ナイジェリアからの輸入は 4,727 億 2,415 万 〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」 2014 年 構成比 36.3 18.9 7.2 21.6 18.4 18.4 10.0 4.2 1.7 9.8 5.1 100.0 伸び率 344.1 2,046.0 269.2 △ 11.5 △ 12.8 △ 36.8 △ 51.6 △ 22.1 100.3 9.8 98.7 21.0 2014 年 構成比 92.0 3.7 2.4 1.9 100.0 伸び率 35.9 55.5 67.8 21.2 36.8