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モータ制御用RC−IGBT
特集論文 高橋英樹* 金田 充* 友松佳史* モータ制御用RC−IGBT RC-IGBT for Motor Control Hideki Takahashi, Mitsuru Kaneda, Yoshifumi Tomomatsu 要 旨 IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor)が誕生した当 列に配置した。表面構造を形成したウェーハの裏面側を研 時から,FWD(Free Wheeling Diode)をIGBTに内蔵させ 磨した後,CSTBTとFWD直下の研磨面にそれぞれP層と た逆導通IGBT(RC(Reverse Conducting)−IGBT)のアイ N層を形成した。RC−IGBTにCSTBTを採用することで, デアはあった。しかし,量産された当初のIGBTは飽和電 CSTBTの特徴であるIGBTの低飽和電圧特性を実現した。 圧V CE(sat)とターンオフロスのトレードオフ関係を改良する さらに,CSTBTのキャリヤ蓄積層がFWD動作の場合はリ ために,裏面構造はパンチスルー型であり,厚いコレクタ カバリー電流の低減に寄与した。 P層を持つパンチスルー型では裏面加工が非常に難しいこ RC−IGBTの開発においては,コレクタショート構造に とから,RC−IGBTの実現は不可能であった。最近になり, 起因するIGBTのスナップバック現象,IGBTのゲートをオ IGBTの特性改善とウェーハ材料のノンエピ化(ノンエピタ ンさせると内蔵FWDの順電圧(V F )が上昇する問題が発生 キシャルウェーハ化の略)で,各社とも薄厚ウェーハ技術 したが,RC−IGBTの表面と裏面の構造を最適設計するこ の開発を積極的に行っている。三菱電機では100µm以下の とでこれらの問題は解決した。 薄厚ウェーハへの裏面加工技術開発を行うとともに, 当社は白物家電のモータ制御用として世界で初めてRC− FWDをIGBTに内蔵させたRC−IGBTを構造と製造プロセ IGBTを搭載した3A/600VのDIP−IPM(Dual In-line (1) スの両面から研究・開発してきた Package Intelligent Power Module)の販売を2006年から 。 開始した(3)。ただし,RC−IGBTのリカバリー電流は,現 R C −I G B T の表面側構造は当社オリジナルのC S T B T (2) 構 (Carrier Stored Trench−Gate Bipolar Transistor) 在のところIGBTとFWDが別々の場合より大きく,今後さ 造を採用した。Pベース層とエミッタ/アノード電極の接 らなる改善を行い,RC−IGBTの適用範囲を拡大していく 続に工夫をこらしてダイード領域を形成し,IGBTと逆並 予定である。 層間膜 エミッタ/アノード 電極 エミッタ/アノード 電極 バリヤメタル ポリシリコン P+拡散層 酸化膜 Pベース層 Pベース層 3A/600V DIP-IPMの概要 6 : 25℃ キャリア蓄積層 エミッタ層 N−層 P+層 コレクタ/カソード 電極 N+層 :125℃ 2 IC(A) N−層 4 0 −2 −4 FWD領域 IGBT領域 −6 −3 開発したRC-IGBTの構造の概念図 1 2 3 0 VCE(V) 3A/600V DIP-IPMのI-V特性 −2 −1 開発したRC−IGBTの構造の概念図及び製品化したDIP−IPMの外観とI−V特性 RC−IGBTの構造はNPT(Non Punch Through)−CSTBTとIGBTのPベースをアノードにしたFWDを並列接続している。製品化したDIP− IPMはVCE(sat)が1.6V,VFが1.3VとIGBTとFWDが別々な製品と比べても遜色(そんしょく)ない値である。 * パワーデバイス製作所 ( 7 313)