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拡大が予想される中国人観光客とわが国経済への

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拡大が予想される中国人観光客とわが国経済への
平成 22 年(2010 年)6 月 18 日
拡大が予想される中国人観光客とわが国経済への好影響
【要旨】
— 訪日中国人数は団体観光を中心に増加基調を辿り、2009 年には 100.6
万人まで拡大。来日外国人全体に占める割合も 15%へと上昇した。
— 政府は、7 月 1 日より中国人への個人観光査証(ビザ)の発行要件を
大幅に緩和することを決定。これにより、年収要件が現行の 25 万元(約
340 万円)程度から年収 3~5 万元(約 40~67 万円)程度まで拡大、
対象世帯は現状の 10 倍となる 1,600 万世帯まで拡がる見込み。
— 中国人観光客の平均消費額は 12.8 万円と、韓国(6.8 万円)や台湾(11.8
万円)を上回り、米国(15.0 万円)、英国(13.1 万円)と比較しても
遜色ない。なかでも、物品購入額は 7.9 万円と主要国中最も多く、中
国人観光客の高い購買力が窺える。
— 先行き、経済成長に伴い中国の海外旅行需要は一段と拡大する公算。
出国者は既に 4,500 万人と日本の 3 倍近い水準であり、人口大国であ
る中国の旅行需要増加の量的インパクトは他の国とは桁違いである。
— 今のところ、中国人旅行客の消費がわが国マクロ経済全体へ与える影
響は限定的だが、地理的な近接性や充実した消費市場の存在等から、
中国人の訪日旅行需要は高く、将来的に大幅な増加が見込める。
— 先行き、内需の伸び悩みが予想されるなか、海外旅行客の取り込みに
よる需要創出の重要性は一段と増す見込み。今後も、成長戦略の一環
として観光立国に向けたオール・ジャパンでの努力が求められよう。
1
NO.2010-9
1.急増する訪日中国人観光客
訪日中国人数は、近年大幅に増加し、
2003 年の 44.8 万人から 2009 年には 100.6
万人と 6 年間で 2 倍以上に拡大した(第 1 図)。特に、2008 年から 2009 年にか
けては、グローバル金融危機による景気後退の深刻化で世界全体の訪日外国人
数が大きく落ち込むなか、主要国で唯一微増を維持しており、中国人の旅行需
要の趨勢の強さが窺える。訪日外国人全体に占めるシェアも 2009 年時点で 15%
に達し、韓国、台湾に次ぐ規模にまで拡大した(第 2 図)。
第2図:訪日外国人の地域別内訳
(2009年実績)
第1図:主要地域別の訪日外国人数
300
(万人)
(万人)
834.7
835.1
679.0
672.8
613.8
200
521.2
150
50
0
700
81.2
44.9
61.6
65.3
100.0
韓国
500
台湾
100.6
300
その他アジア
74.7万人
11%
欧州
600
400
94.2
100
北米
800
733.4
250
900
その他の地域
5.5万人
1%
北米
87.5万人
13%
欧州
80.0万人
12%
香港
45.0万人
7%
中国
中国
100.6万人
15%
香港
200
100
オセアニア
24.6万人
4%
全世界 (右目盛)
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 (年)
台湾
102.4万人
15%
韓国
158.7万人
22%
(資料)日本政府観光局統計より三菱東京UFJ銀行
経済調査室作成
(資料)日本政府観光局統計より三菱東京UFJ銀行
経済調査室作成
これまでの中国人の訪日観光の変遷を振り返ると、2000 年 9 月に北京市・上
海市・広東省に限定した団体観光旅行が解禁されたことから始まった(次頁第 3
図)。その後、対象地域が徐々に拡がり、2005 年 7 月には全国へと拡大したこと
で、中国人の団体観光客数は大幅に増加してきた。更に、2008 年 3 月には家族
観光旅行が開始、2009 年 7 月には対象者を限定しつつも、個人観光旅行も開始
されている。もっとも、今のところ対象者が一部富裕層に限定されていること
などから、2009 年の発行件数は 8 千件程度に留まっている。こうしたなか、政
府は、2010 年 7 月 1 日より、中国人の個人観光客に対する査証(以下、ビザ)
の発行要件を大幅に緩和することを決定した。
2
150
140
130
120
(万件)
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
第3図:中国人へのビザ発行件数の推移
2000年9月 団体観光旅行開始(北京市・上海市・広東省に限定)
2004年9月 団体観光旅行範囲拡大(遼寧省・天津市・山東省・江蘇省・浙江省)
2005年7月 団体観光旅行範囲の中国全土拡大
2008年3月 家族観光旅行開始
0.8
2009年7月 個人観光旅行が開始
(北京市・上海市・広東省に限定)
13.9
12.5
個人観光
27.0
24.3
35.1
37.9
その他
(就労・配偶者等)
短期滞在
(商用・親族訪問)
団体観光
08
09 (年)
13.5
11.8
9.5
20.1
11.1
26.3
23.6
22.4
6.4
7.4
04
05
15.7
06
26.2
07
(資料)外務省資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
今回の発行要件の緩和は、①「一定の条件」の緩和、②申請受付公館の拡大、
③取り扱い旅行業者の拡大、の 3 点である(第 1 表)。なかでも影響が大きいの
は、①「一定の条件」の緩和で、これまでの「十分な経済力を有する者」から、
「一定の職業上の地域及び経済力を有する者」へと改定される。2009 年 7 月か
ら開始された個人観光旅行ビザの発行要件は、年収 25 万元(約 340 万円)程度
と一部の富裕層に限定されていたが、今回の緩和で年収 3~5 万元(約 40~67
万円)程度まで緩和される見通しである(注 1)。外務省は、今回の要件緩和によ
って、発行対象はこれまでの約 10 倍の 1,600 万世帯程度まで増加することを見
込んでいる(注 2)。
第1表:中国人に対する個人観光査証(ビザ)発行要件の緩和措置
1.「一定の条件」の緩和
現行の「十分な経済力を有する者」から「一定の職業上の地位及び経済力を有する者」
へと発行要件を緩和。
2.申請受付公館の拡大
3公館(北京・上海・広東)から、内陸部や北東部を含む中国全土の7公館(重慶・瀋
陽・青島・大連を追加)に拡大。
3.取扱旅行業者の拡大
48社から290社へ拡大。
(資料)外務省プレスリリースより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
仮に、各種報道の通り、年収要件が現行の年収 25 万元程度から同 3~5 万元
程度に緩和された場合、発行対象世帯は中国都市部世帯の 4~8 割程度まで拡大
するとみられることから、中国人観光客の一段の増加を期待する声が膨らんで
いる(注 3)(次頁第 2 表)。
(注 1)5 月 9 日・5 月 19 日付、日本経済新聞より。
(注 2)5 月 18 日付、岡田外務大臣記者会見。
(注 3)年収要件の他にも、大手カード会社のゴールドカード保有、官公庁・大企業の課長級
以上、等の条件が付与される見通し(5 月 19 日付、日本経済新聞より)
。
3
第2表:中国都市部世帯の年収分布
年収
2008年実績
単位:元
都市部平均
低い 0~20%
20~40%
年
40~60%
収
60~80%
区
80~100%
分
80~90%
90~100%
高い
単位:万円
49,667
21,452
33,582
43,508
56,949
96,828
74,719
119,030
66.8
28.8
45.2
58.5
76.6
130.2
100.5
160.1
都年
市収
部3
世万
帯元
の以
約上
8
割
年
同収
5
約万
4元
割以
上
(注)世帯年収は世帯人員一人辺り年収に、世帯の平均人員数を乗じて当室にて算出。
(資料)中国国家統計局資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
2.物品購入を中心に高い購買力を持つ中国人観光客
国別に訪日旅行中の総消費額をみると、中国人観光客は 12.8 万円と韓国(6.8
万円)や台湾(11.8 万円)を上回り、米国(15.0 万円)・英国(13.1 万円)等の
欧米先進国からの旅行者と比較しても見劣りしない水準である等、中国人観光
客の高い購買力が確認できる(第 4 図)。項目別の消費額をみると、欧米の観光
客は宿泊費や飲食費、観光費等のサービス消費の金額が大きい一方、アジア各
国の観光客は物品購入費のウェイトが大きい点が特徴的である。なかでも、中
国人観光客の物品購入費は 7.9 万円と主要国中で最も多く、ショッピング(物品
購入)が、来日の主な目的であることが窺える(第 3 表)。
第3表:居住属性別にみた訪日旅行動機(2008年)
(単位:%)
中国
順位
50.9
ショッピング
1
39.7
温泉
2
25.3
歴史的建造物の見学
3
第4図:主要国の訪日外国人の旅行中消費額
16
(万円)
14
13.1
12.8
11.8
12
交通費
8.3
飲食費
6.8
6
宿泊費
4
2
0
その他
観光費
10
8
15.0
14.3
7.0
7.9
7.7
3.1
韓国
台湾
中国
香港
物品購入費
2.1
2.7
2.4
豪州
米国
英国
消費額合計
韓国
順位
1
2
3
温泉
日本食
ショッピング
41.1
38.4
36.8
順位
1
2
3
米国
歴史的建造物の見学
日本食
日本の伝統文化の体験
56.2
36.8
29
(注)複数回答可。
(資料)日本政府観光局「JNTO訪日外客訪問地調査」
より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(注)2007年12月調査。旅行中の消費額。旅行前に支払った航空運賃や
ツアー料金等は除く。
(資料)日本政府観光局「JNTO訪日外客消費動向調査2007-2008」より
三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
4
中国人観光客の訪問地域は、東京や千葉・神奈川等の首都圏、大阪・京都等
の近畿圏、静岡・愛知等の中部圏を中心とした大都市圏のほか、北海道等に集
中している(第 5 図)。こうした地域では、文化遺産等の観光スポットのほか、
特に、大都市圏では中国人観光客の人気購入品である化粧品や家電等を取り扱
う大型の家電量販店・百貨店等が多く、中国人観光客の高い購買力の恩恵を享
受していると推察される。
70
(万人泊)
第5図:訪日中国人の都道府県別述べ宿泊数
(2009年)
60
50
40
30
20
0
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島
沖縄県
10
(注)延べ宿泊数=宿泊者数×一人当たり平均宿泊数
(資料)国土交通省官公庁「宿泊旅行統計調査」より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
中国人観光客の物品購買意欲の高さや、来日者数の急激な増加を背景に、近
年わが国の対中旅行サービス収支の受取額は大幅に増加している(第 6 図)。
2006 年以降、中国はわが国にとって最大の旅行収支の受取国となっている。2009
年には小幅ながら減少に転じたものの、それでも 2,364 億円と全世界からの旅行
サービス収支受取額のうち、四分の一を占めるに至っている。
第6図:国別・わが国の旅行収支受取額
3,000
2,500
2,000
第7図:旅行サービス収支受取額の国別内訳
(2009年)
(億円)
中国
台湾
韓国
米国
英国
香港
オーストラリア
211億円
2.2%
カナダ
その他
202億円
1,618億円
2.1%
16.8%
中国
2,364億円
24.5%
フランス
222億円
2.3%
1,500
タイ
223億円
2.3%
1,000
韓国
1,483億円
15.4%
英国
246億円
2.6%
500
香港
739億円
7.7%
0
米国
864億円
9.0%
台湾
1,470億円
15.2%
96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(注)来日外国人が滞在中に支払った財貨・サービスの対価。
宿泊費、食事代、交通費、土産代等が含まれる。
(資料)日銀「国際収支統計」より三菱東京UFJ銀行
経済調査室作成
(注)来日外国人が滞在中に支払った財貨・サービスの対価。(年)
宿泊費、食事代、交通費、土産代等が含まれる。
(資料)日銀「国際収支統計」より三菱東京UFJ銀行
経済調査室作成
5
3.今後も大幅増が見込まれる中国人観光客がわが国経済へ与える影響
先行き、中国人の旅行需要は、経済発展に伴う所得水準の上昇を背景に、一
段と拡大することが予想される。2009 年時点の中国の一人当たり GDP は 3,700
ドル程度だが、この水準はわが国の 1970 年代前半とほぼ同水準で、出国率も約
3.5%と日本の 1970 年代後半並みの水準である(第 8 図)。わが国では、一人当
たり GDP の増加に伴って出国率も上昇基調を辿ったが、この先中国でも出国率
は同様に上昇基調を辿る公算が大きい。
第8図:中国・日本の一人当たりGDPと出国率の推移
一人当たり名目GDP
50,000
(%)
(米ドル)
45,000
日本(1963~2009年)
40,000
中国(1996~2009年)
35,000
14
日本(1963~2008年)
12
中国(1994~2008年)
30,000
10
25,000
8
20,000
(%)
中国の出国率は
日本の1979年と同水準
6
中国の一人当たり名目GDPは
日本の1973年と同水準
15,000
出国率
(%)
16
4
10,000
2
5,000
0
0
60
65
70
75
80
85
90
95
00
05
(年)
60 65 70 75 80 85 90 95 00 05
(年)
(注) 出国率(%)= 出国者数 / 総人口
(資料)内閣府「国民経済計算」、厚生労働省「人口動態統計(確定数)の概況」、日本銀行「外国為替市場」
法務省「出入国管理統計」、United Nations"National Account Main Agrregates Database",IMF"World Economic Outlook"
より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
加えて、出国率でみると、中国はわが国の 1970 年後半と同水準とはいえ、出
国者数では、既に 4,500 万人を超えており、わが国の 3 倍近い水準に達する(第
9 図)。13 億人もの人口を抱える中国では、経済成長に伴う出国率の上昇が与え
る量的なインパクトは他の国とは桁違いに大きい。仮に、過去の日本と同様の
ペースで中国の出国率が上昇した場合、2008 年に約 4,500 万人であった中国人
出国者数は 2020 年には 1.2 億人(+7,700 万人)まで急増することとなる。
5,000
第9図:日本・中国の出国者数
(万人)
4,584
4,500
4,095
4,000
中国
3,500
3,452
日本
2,885
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
1,358
611
1,530
714
1,669
759
1,680
818
1,581
843
1,636
923
2,022
1,782
1,047
3,103
1,622
1,213
1,652
1,683
1,740
1,753
1,729
04
05
06
07
1,599
1,330
1,660
500
0
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
(資料)法務省「出入国管理統計」、中国国家統計局「中国統計年鑑」より
三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
6
08
(年)
中国人観光客にとって、地理的な近接性や、家電量販店・百貨店といった旺盛
な購買意欲を満たす消費市場の存在、世界遺産等の観光名所の多さ、等からわ
が国への潜在的な旅行需要は小さくないと考えられる。実際に、中国人の主な
出国先内訳をみると、マカオ・香港等の特別行政区を除くと、わが国はシンガ
ポール・韓国・タイ等のアジア主要国に次ぐ第四位に位置している(第 10 図)。
(百万人)
第10図:中国人出国者の目的国の内訳
(2007年)
香港
日本
1,000
450
900
400
350
300
250
200
150
100
50
ラオス
エジプト
トルコ
スウ ェーデン
ベルギー
カンボジア
ニュージーラン
ド
スイス
英国
カナダ
イタリア
フィリピン
カザフスタン
オー スト リア
インドネシア
モンゴル
豪州
台湾
米国
ドイツ
フランス
ベトナム
ロシア
マレーシア
タイ
シンガポール
韓国
マカオ
0
(注)上位30国掲載、受入国側の統計。
(資料)日本政府観光局「2009年JNTO国際観光白書」より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
足元の中国人旅行者による国内消費額(旅行サービス収支の受取額)は 2,711
億円程度(対個人消費比 0.1%)とわが国マクロ経済を直接的に押し上げる力は
未だ限定的(注 4)であるが、先行き大幅な増加が予想される中国人観光客の需要
を取り込むための布石として、今回の個人観光客向けビザの発行要件の緩和措
置は評価に値しよう(第 4 表)。これまで、中国人の来日観光は団体旅行が中心
であったが、旅行会社指定のプラン内で添乗員の同行が義務付けられ、自由行
動が認められていなかったため、今回の個人観光旅行のビザの発行要件緩和が、
自由な個人観光を希望する中国人観光客の裾野を広げると考えられるからだ。
第4表:旅行サービス収支の受取額と対個人消費比率
(単位:10億円)
2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度
1,644.7
1,364.1
1,482.9
1,333.1
1,222.8
旅行収支受取
うち中国
157.7
255.4
277.7
271.1
0.57
0.47
0.51
0.46
0.43
対個人消費(%)
うち中国(%)
0.05
0.09
0.09
0.09
(注)旅客運賃等は除く。
(資料)日銀「国際収支統計」より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(注 4)当該試算は国際収支統計上の旅行サービス収支の受取額のみ。平成 22 年 4 月の国交
省資料(戦略策定会議・各省庁ヒアリング配布資料「国土交通省の成長戦略」
)によ
ると、2008 年度の訪日外国人による旅行消費額 1.3 兆円に加えて、国内生産への波及
効果 3.2 兆円、直接的雇用押し上げ効果 12 万人、波及的雇用押し上げ効果 26 万人と
の試算がなされている。
7
先行き、一段の高齢化や人口減によって内需の伸び悩みが予想されるわが国
では、海外旅行客の取り込みによる需要創出の重要性は一段とますこととなろ
う。もっとも、わが国の旅行収支の受取額は、2007 年時点で約 93 億ドル、名目
GDP 比 1.1%程度と諸外国と比較すると極めて低水準に留まっており、海外旅行
客を十分に獲得出来ているとはいえない状況である(第 11 図)。
(%)
8.0
旅行収支受取額
(左目盛)
日本の旅行収支受取額は
93億ドル(名目GDP比0.2%)
7.0
同 名目GDP比
(右目盛)
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
米国
スペイン
イタリア
フランス
英国
中国
ドイツ
タイ
豪州
カナダ
香港
マレーシア
オランダ
スイス
メキシコ
スウェーデン
インド
ベルギー
ポーランド
ロシア
ポルトガル
日本
南アフリカ
シンガポール
アイルランド
デンマ ーク
インドネシア
韓国
ブラジル
台湾
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
第11図:旅行収支受取額の対名目GDP比の各国比較
(2007年)
(10億ドル)
0.0
(注)2007年の実績。旅行収支受取額はUNWTOデータ、名目GDPはIMF”WEO”より。
(資料)United nation World Tourism Organization , IMF "World Economic Outlook " , 日本政府観光局
(JNTO)資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
こうしたなか、政府は今月中を目途に策定する新成長戦略において、観光を
成長戦略の柱の一つと位置付け、訪日外国人数を 2020 年初めまでに 2,500 万人、
将来的には 3,000 万人まで拡大させる目標を明記する見込みである。リーマン・
ショック後の急速な落ち込みの影響もあったものの、2009 年の訪日来客数が 679
万人であることを考えると、2020 年初めまで 10 年程度で 4 倍近い拡大を見込む
政府目標の達成に向けたハードルは低くない。
今回の中国人個人観光客へのビザの発行要件の緩和に留まらず、今後も成長
戦略の一環として、例えば交通・案内標識の多言語化、外国語スタッフの人材
育成、決済インフラの充実、プロモーションの強化、景観整備等、観光立国に
向けたオール・ジャパンでの努力が求められよう。
以
(H22.6.18 中村
逸人
上
[email protected])
発行:株式会社 三菱東京 UFJ 銀行 経済調査室
〒100-8388 東京都千代田区丸の内 2-7-1
当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、金融商品の売買や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利用に関し
ては、すべてお客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されています
が、当室はその正確性を保証するものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著作物
であり、著作権法により保護されております。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。
8
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