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目 次 菌糸紋 新年のごあいさつ………………………………2 平成28年

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目 次 菌糸紋 新年のごあいさつ………………………………2 平成28年
ミズナラの切株に発生した野生のシイタケ(Lentinula edodes)、北海道
目 次
菌糸紋 新年のごあいさつ………………………………2
平成28年 新春に寄せる私の抱負 ……………………… 3
シイタケの袋掛け栽培技術:理論と実際………………5
シイタケ115のブランド化と食味特性について ………10
乾シイタケ 楽しく戻して美味しく料理 ………………13
1月号 全農乾シイタケ情報 ……………………………16
生シイタケの市況動向……………………………………19
1~3月のシイタケ栽培管理……………………………20
各地のきのこだより………………………………………26
-1-
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
菌糸紋
新年のごあいさつ
つねだたかよし
■ 常田享詳 ( 一般財団法人日本きのこセンター理事長 )
明けましておめでとうございます。平成28年、申年の年頭にあたり、
謹んで初春の祝詞を申しあげますとともに、新たな年が生産者各位にと
り希望と誇りを持って原木シイタケ栽培経営に取り組める再出発の年に
なることを心より祈念いたします。
さて、昨年を振り返りますと、自然科学の未来を切り拓く力の素晴ら
しさに国中の人々が感銘を受けた二人の日本人科学者によるノーベル医
学生理学賞および物理学賞受賞の慶事がありました。特に北里大学の大
村智先生の言葉「人類を救う宝物は自然の中にある」は至言だと思いま
す。総じて、加速する少子高齢化、度重なる豪雨災害、安全保障関連法
の成立、TPP大筋合意、そして世界で頻発するテロ事件など、私ども
の生き方、ひいては社会や国のあり方についての価値観が問われる実に多くの事案に接した1年
であったと思います。また、経済の低迷と人口流出に悩む地方や地域の再生を目指す地方創生政
策が実動し始める中、田舎暮らしに夢と可能性を見出し都市部から地方に移り住む若い人たちの
流れがより鮮明になった年でもありました。
これまで日本の山を守り、山里の暮らしを支え、国民の健康増進に寄与してきた花形の環境保
全型農林業としての原木シイタケ栽培は、平成以降の国産菌床シイタケの急拡大と安価な外国産
品の輸入圧力ならびに先の福島原発放射能汚染事故による出荷制限や風評などによって大幅に縮
減し、存亡の危機に追い込まれてきました。しかし、国の原木しいたけ再生回復緊急対策事業に
より昨年やっと植菌量の減少に歯止めがかかりました。そして、昨年春からの乾シイタケ市況の
高値回復に加え、放射能汚染事故によって筆舌に尽くし難い苦境に立たされてきた関東・東北地
方の産地における出荷制限の相次ぐ解除もあり、原木シイタケの生産意欲や生産再開への機運が
高まり始めたことは誠に嬉しい限りです。ただ、ここまで縮減した原木シイタケは引き続き国の
後押しなくしては振興・発展を望めない段階にきておりますので、昨年来農林水産大臣に国の力
強い生産支援の継続を重ね重ね要請してきていることを申し添えます。
我が国の原木シイタケの振興・発展は、国のバックアップはもとより、生産者ならびに関係者
各位の叡智と日々の努力なくしては成し遂げられるものではありません。このことに関連して今
年も敢えて苦言を申しますと、今後もこれまでのように生産量に固執した栽培経営を続けて行く
ことで、ほんとうに国際競争力が備わりかつ若い人たちが魅力を感じて栽培に参入したくなる生
業に成長させることが可能なのでしょうか。やはり昨年も申しましたように品質に優れ美味しく
健康に良いものを求める消費者のニーズにマッチした、言い換えますと量より質に重きを置くと
ともに品種を分別・統一したシイタケの生産・流通に転換していく必要があると考えます。その
点で、石川県の「のとてまりや」や鳥取県の「鳥取茸王」などのような品種と品質にこだわった
原木シイタケのブランド化や大分県の輸出への取り組みは、今後の原木シイタケが歩むべき道を
照らす光明と言えましょう。
また、私は常々「食材」を「食財」と呼ぶべきであると考えています。なぜなら、食材という
文字からは、単に食べる物というイメージしか浮かんできません。一方、食財には食べる人の健
康はもとより、作る人の暮らしを支え、作る環境を守る上で役に立つ物、すなわち財という意味
が込められていると思えるからです。全ての食料を食財と呼ぶかについては異論もあろうかと思
いますが、山の資源を活用して生産される原木シイタケ等食用きのこ類こそ食財と呼ぶに相応し
い産物と言えます。だからこそ皆さん、我が国の原木シイタケ栽培の火を消すことなく益々大き
く燃え上がらせ、若い世代に繋いでいくためにも希望と誇りを持って頑張りましょう。
日本きのこセンターとしましては、本年も、我が国の原木シイタケはもとよりきのこ産業の発
展に微力ながら寄与すべく役職員一丸となって努めて参る所存ですので、生産者各位をはじめ行
政、関係団体の倍旧のご理解とご支援の程をお願い申しあげ、新年のごあいさつといたします。
-2-
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
平成28年 新春に寄せる私の抱負
歳に負けず規模拡大
岩手県下閉伊郡山田町 浜登長十郎
私の住む岩手県山田町は沿岸部で、平成23年の東日本大震災によって
大きな被害を受けました。また、放射能問題により国から出荷制限が出て
いますが、安全な原木を使用し県の示す管理工程の徹底を図り、現在まで
に12名の方が個人解除となりました。しかし、現在も地元の山では放射能度が高く原木を伐採
できないところが多いです。それでも管内には名人位の方が2名おられ、良品の生産できる産地
と自負しております。この地域から良品生産の火を消さないよう、生産に努力していきたいと思
っており、私自身も震災後ハウス栽培に力を入れて、現在所有するハウス6棟に加え、昨年中古
ハウス10棟を購入しました。昨年は、ハウスで栽培した乾シイタケを全農乾椎茸品評会に出品
し、上どんこの部で全農全和会長賞を受賞することができ、誠に感謝しています。また、ハウス
栽培により単収が大幅に伸び、春先の気象の影響を受けず昨年は豊作になり喜んでいるところで
もあります。今後は、さらに上を目指すべく努力しているところです。
産地再生の道のりはまだまだ遠いですが、体にムチ打って歳(87)に負けないよう努力して
いきたいです。本年度の玉取り原木本数も大幅に増やしました。また、今後は後継者育成にも力
を入れていきたいと思っています。
香川での美味しい原木シイタケの栽培・普及を目指して
香川県丸亀市綾歌町 向谷暢晃
香川県で原木シイタケ栽培をしております向谷と申します。今年で2回
目の収穫シーズンを迎え、失敗を繰り返しながらも原木シイタケ栽培業に
勤しんでおります。
私が栽培している場所は、山ではなく畑を埋め立てた平地です。なぜ原木シイタケ栽培を始め
たかと言いますと、何か食物を生産し生計を立てたらと志していた時、どうせなら自分の好物で
ある原木シイタケを栽培できないものかと思い立ち、インターネットで(一財)日本きのこセン
ター四国事務所の存在を知り、直接伺ったのがきっかけでした。熱心に、素人の私にも分かりや
すく“原木シイタケ栽培のノウハウ”を説明していただき、その日のうちに熟練の生産者の方と
連絡を取り付けてもらい、実際の栽培施設を見学することができました。そこで見た、ほだ木が
ずらっと並ぶ壮観な景色に圧倒されました。「山を持っていなくても、原木シイタケ栽培はでき
ますか?」と相談したところ、どのような施設や道具が必要か詳しく教えていただき、「全面的
-3-
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
にサポートします」と心強い言葉をかけてもらったのが、私が原木シイタケ栽培を行おうと決心
した瞬間でした。本当に出会いに恵まれたと感謝しております。
私の現在の施設栽培規模は小さく、仕事として満足できるようなものではありません。しかし、
自ら苦労して栽培した原木シイタケを、喜んでもらえるお客様も確実に増えてきており、この仕
事にとても大きなやりがいを感じております。これからも香川での美味しい原木シイタケの栽培・
普及に努めていきたいと思います。
品評会出品を目指して高単価を狙う
宮崎県西臼杵郡五ケ瀬町 小椋優司
明けましておめでとうございます。昨年を振り返ってみますと、乾シイ
タケの市況が後半から久しぶりに平均単価4,000円~5,000円台に回復
して、私自信も生産意欲が高まっております。
私の場合は年植15万個前後で栽培を行っております。収量のアップには、古ほだ木の発生操
作(天地返し、ほだ木移動)が欠かせません。また、良品作りとして、冬期に芽切ったシイタケ
には袋掛けを徹底して行い厚肉品に成長させて収穫しています。最近はハウス栽培を行っていま
すが、なかなか良品が取れず苦労しています。単価のアップについては、品評会にできるだけ出
品して、平均単価を上げるように心掛けています。本年も積極的に品評会に出品して、上位入賞
を目指し、高単価を狙っていきたいと思います。
乾シイタケの単価もようやく回復してきましたが、農林業を取り巻く環境は依然として厳しい
状況に変わりありません。今後も魅力ある農業を目指して、原木シイタケ栽培にこだわりを持ち、
消費者に美味しい原木シイタケを提供できるよう、今年も努力していこうと思います。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
シイタケの袋掛け栽培技術:理論と実際
■ 時本景亮・坪井正知
シイタケの林内における原木栽培を中心に、成長中のきのこにポリエチレン製の袋を掛ける栽
培手法が行われています。気温が低くてきのこが成長しない寒冷期にきのこを成長させることが
でき、しかも成長したきのこの傘の直径と厚さが大きくなります。特に「菌興115号」などの
厚肉系の品種では極めてボリューム感のあるきのこを生産することができます。ここでは袋掛け
栽培技術の理論と実施方法についてまとめてみます。
1.袋掛けの効果
写真をみれば一目瞭然ですが、袋掛けの効果は絶大です。左が袋を掛けずに成長したきの
こ、右は袋掛けをしたきのこです(図1)。もっとも、効果の程度は気象条件や手法で変わりま
図1.袋掛けをしたきのこ(右)としなかったきのこ(左)。品種:菌興115号。
す。最も大きな効果が期待できるのは、袋掛けをしなければきのこがほとんど成長しない厳寒
期で、日当たりの良い場所で実施するときです。たとえば、1月から2月上旬に鳥取市で試験し
た場合では、袋を掛けることで傘の直径は1.3倍(6cmが8cm)、傘の厚さは1.7倍(1.4cm
が2.4cm)、きのこの生重量は2.2倍(49gから106g)に増えました。乾燥した後の重さでも
1.5倍(8.7gが13.3g)に増えていますので、単なる水ぶくれではありません(図2)。なお、
傘の厚さは中心点と縁との中間部で測定しています。ここでは比較のために幾つかの小さい孔を
袋に開けた試験もしていますが、温度上昇効果が弱まるので無孔袋ほどの効果はありませんでし
た。
-5-
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
2.5
無孔袋
2.0
有孔袋
袋かけ無し
1.5
1.0
0.5
0.0
傘直径
柄長
傘厚
生個重
乾個重 乾燥歩留
図2.寒冷期の袋掛け効果
「袋かけ無し」:傘直径6.0cm, 柄長4.1cm, 傘厚1.4cm, 生個重49g, 乾個重
8.7g, 乾燥歩留18.1%。縦軸は袋掛け無しに対する割合(倍)。1月下旬から2
月上旬に発生した各区10個体を調査。
2.0
生重
1.5
乾重
1.0
0.5
0.0
無孔袋
有孔袋
袋掛け無し
図3.温暖期の袋かけ
「袋かけ無し」:生重41g /個、乾重10.5g /個。縦軸は袋掛け無しに対する比率(倍)。
3月下旬から4月上旬に発生した各区30個体を調査。 一方、温暖期の3月下旬から4月上旬の試験結果は図3の通りです。厳寒期ほどではありませ
んが袋掛け効果はあり、ここでは有孔袋の方がきのこが大きくなっています。この理由について
は後でも触れますが、厳寒期はきのこを袋で包み込むようにして温室効果を高めるのに対し、温
暖期は通気性が増すように袋の掛け方を工夫し、温度が高くなりすぎないようにするのがポイン
トと考えられます(図4)。また、温暖期で降雨の時の袋掛けでは、雨がきのこに当たったり過
湿にならないように注意する必要があります。袋を完全にきのこに被せないようにしたり、雨よ
けとしてきのこの上にひさし状に袋をのせるなどの方法が有効でしょう。
シイタケの原木栽培生産者の多くは冬季に袋掛け技術を導入しています。特別な施設は不要で、
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
高い
密 閉 度
低い
高い
保温・保湿性
低い
図4.保温保湿効果が異なる3段階の袋掛け
まさに省エネです。具体的な袋掛けの方法は簡単で、きのこがまだ親指ほどの大きさの時に、ポ
リエチレン製などの透明の袋をかぶせます。風で袋が吹き飛ばされる場合はピンを刺すなどの方
法で袋をほだ木に固定します。
2.品種の特性と袋掛け栽培
なぜ袋掛けがきのこの成長促進に有効なのかを、品種「菌興115号」の特性から考えてみます。
温度を8、13、および18℃に設定した人工気象室(相対湿度90%)にきのこが芽切ったばか
りのほだ木を入れてきのこを成長させました。その結果、傘の直径、傘の厚さ、柄の長さともに
13℃区が最大でした(図5)。生きのこの個重も13℃が最高ですが、乾燥後の個重は8℃と13
℃でほぼ同じでした(図6)。ただ、乾燥歩留まり(乾燥重量/生重量×100、%)は明らかに
8℃が最大でした。以上のことから、きのこを大きく育てるには13℃前後が適していることが
わかります。
7
傘径 cm
6
柄長 cm
5
傘厚 cm
4
3
2
1
0
8
13
18
(℃)
図5.品種「菌興115号」の成長温度ときのこの形態
図5.品種「菌興115号」の生長温度ときのこの形態
相対湿度90%の人工気象室。40個体の平均値。
相対湿度90%の人工気象室、40個体の平均値
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
35
生重 g/個
30
乾重 g/個
25
乾燥歩留 %
20
15
10
5
0
8
13
18
(℃)
図6.品種「菌興115号」の成長温度ときのこ個重
試験条件は図5と同じ。
図7.きのこの温度測定
針状の温度計を刺して測定。
袋掛け試験を実施する時、成長中のきのこに温度計を刺してきのこの温度を測定しました(図
7)。一例として晴天日の温度の経時変化を図8に示します。外気温は最高9.3℃、夜間は2~3
℃で、かろうじてきのこが成長する温度域です。袋を掛けたきのこの温度は最高24.7℃に達し
ますが、それは一時的で、夜間は0℃前後まで下がっています。きのこが成長している日中(9:00
~19:00)の平均温度は13.8℃です。図5および6は一定温度での試験なので単純な比較はで
きませんが、袋掛けによってきのこが大きく成長する13℃前後の温度が与えられたと思われま
す。袋掛けをしていないきのこの温度は最高16℃ですが、日中温度の平均は8.5℃で低過ぎま
す。なお、曇天の日は袋内のきのこの温度は外気温とほとんど同じですので、袋掛けの効果は晴
天時に限られることがわかります。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
温度(℃)
30
25
袋内きのこ
20
袋外きのこ
15
10
気温
5
0
3:00
2:00
1:00
0:00
23:00
22:00
21:00
20:00
19:00
18:00
17:00
16:00
15:00
14:00
13:00
12:00
11:00
10:00
9:00
8:00
7:00
6:00
5:00
4:00
-5
時刻
図8.袋内、袋外のきのこの温度ならびに気温の推移
(鳥取市、1月の晴天日)
きのこの成長には水分の供給も大切です。袋内は風によるきのこ水分の蒸発が抑制されますし、
日中と夜との温度変化が大きく朝の結露も多いので、きのこに充分な量の水分が与えられます。袋
掛けは温度と水分の両方の条件を満たすことによってきのこを大きく成長させると考えられます。
3.まとめ
袋掛けはミニ温室をきのこに提供すると言って良いでしょう。気温が低くてきのこが成長でき
ない時に成長の機会を与えることができます。その結果、収量アップとなるだけでなく、通常よ
りも大きなきのこが収穫できる優れた技術なのです。
(菌蕈研究所名誉研究員・同元主任研究員)
実際の袋掛け栽培の様子
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
シイタケ115のブランド化と食味特性について
■ 福政幸隆・作野えみ
傘の肉厚が3cm以上、傘径が10cm以上に成長するシイタケ菌興115号(通称シイタケ
115)は、今を遡ること34年前の昭和56年に(財)日本きのこセンター菌蕈研究所で、晩秋
~春に発生する原木栽培用の低中温性品種として開発された。開発当初、この品種は、11月上
旬のまだ暖かい時期にきのこを発生させると菌柄が極端に長く(約20cm以上)、傘が小さい形
になることから実用栽培品種としては有望視されなかった。しかし、12月から3月中旬の寒冷
期に袋を掛けて育てると図1、2のように驚くほど超肉厚で大型のきのこに成長するものがある
図1.シイタケ115の袋掛け栽培
図2.袋掛け栽培により超肉厚かつ大きく育ったシイタケ115
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
ことが分かり、従来の品種には無い特性を持った新品種として一躍注目され、その栽培は急速に
全国に広まっていった。
超肉厚、大型に育ったシイタケ115は、かつてジャンボシイタケとして鳥取県では「鳥取茸
王」、岡山県では「たけ太郎」、奈良県では「なら大物くん」などと愛称され一世を風靡したが、
ただ大きいという特徴だけでは他の品種との区別性が明確でなかったこともあり、残念ながらブ
ランドシイタケとしては定着しなかった。しかし、その卓越した食感や美味しさが認識されるに
つれて、このシイタケ115を高付加価値シイタケとしてブランド化しようとする動きが最近に
なって再燃、石川県では「のとてまり」ブランドとして市中の注目を集めている。また、鳥取県
でも、県、生産者、系統農協、県森林組合、一般財団法人日本きのこセンターそして菌興椎茸協
同組合が「原木しいたけブランド化促進協議会」を立ち上げ「とっとり115」ブランドの復活
に向けた取り組みに力を入れている。その乾シイタケも、全国的規模の全農乾椎茸品評会で上位
の賞を軒並み独占するなど、市場で高い評価を受けている正にシイタケの中のシイタケである。
シイタケ115は、消費者からアワビのような食感で美味しく、その乾シイタケを水戻したも
のは一段と美味しさが際立つとの評判を得ている。とりわけ、その「しいたけステーキ」料理
(図3)は逸品メインディシュとして人気を博している。このようなシイタケ115に特有の食味
を科学的に明らかにすることで、その消費拡大ひいては生産振興に役立てるとともに、今後さら
に食味に優れたシイタケの新品種を開発していく上での里程とする目的で菌蕈研究所では分析調
査研究を近年来実施している。ここでは、そのような調査研究で一定程度明らかにされているシ
イタケ115の食感特性(歯切れや口あたりのこと、テクスチャともいう)と旨味成分について
紹介する。
シイタケ115は生であれ乾燥品であれ、傘肉が非常に厚いにも拘らず、食感が素晴らしいと
の評価を得ているので、その乾シイタケと外国産輸入菌床乾シイタケおよび国産の他の7品種の
原木乾シイタケとのテクスチャ比較を行った。いずれの乾シイタケも冷蔵庫内で一晩水戻しして、
図3.対翠閣(鳥取市)の名物料理「しいたけステーキ」
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
800
mN
600
400
200
0
外国産菌床
その他国産原木
115
図4.各種乾シイタケの歯切れ度合(貫通最大試験力、ミリニュートンmN)の比較
図 3. 各種乾シイタケの歯切れ度合(貫通最大試験力、ミリニュートン mN)の比較
その後20分間蒸し調理したものをテクスチュロメーターにより分析した。針状の治具が傘肉を
貫通する際の最大試験力(歯切れ度合の指標値)を比較した結果を図4に示す。シイタケ115の
最大試験力はこの試験で用いた国産の他品種原木シイタケのそれとほぼ同じ値であり、歯切れに
おいて両者で差はなかった。しかし、シイタケ115は他品種の原木シイタケに比べて食感が優
れているとの評価については、その傘肉の厚さが大きく影響していると思われる。一方、外国産
輸入菌床乾シイタケの最大試験力はシイタケ115や国産の他品種原木乾シイタケのそれらより
明らかに大きく、前者は歯切れにおいて劣ることが示された。また、乾燥シイタケ115を水で
戻した際の傘肉厚の復元程度は乾燥前の傘肉厚まで戻るので、このことがシイタケ115の歯切
れや口あたりの良さに繋がっていると考えている。
他方、シイタケ115の旨味成分に関しては、きのこ特有の旨味成分であるグアニル酸の量は
他の品種と比較して大差がなかったが、グルタミン酸の量は明らかに多いことが示された。グア
ニル酸はグルタミン酸と混ざると数十倍に旨味が強くなるとされており、このグルタミン酸の量
の多さがシイタケ115の旨味を一層引き立てていると推察している。また、シイタケ115の乾
燥品は、甘味やまろやかさに関係するグルコースやトレハロースを他品種に比べて多く含む傾向
があり、このことがシイタケ115特有の美味しさを引き立たせているものと考えている。
シイタケの食味にはテクスチャ、旨味、甘味、苦味、渋味、香りなど多様な要素が関っている
とされている。それらの要素に関する分析調査研究が進展すれば、その美味しさを定性かつ定量
的観点から科学的に評価できるようになるであろう。併せて、シイタケに含まれる機能性成分に
関する科学的知見の深化により、さらに良食味で高機能性シイタケの新品種開発も夢ではないと
思っている。
(菌蕈研究所長・同主任研究員)
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
乾シイタケ 楽しく戻して美味しく料理
■ 山本真史
皆さんは乾シイタケをどのような料理に使っていますか?煮物、野菜炒めや鍋物などの料理の
味や彩りを引き立てる名脇役として和食には欠かせない乾シイタケですが、もっと美味しくそし
て楽しく料理をするためにちょっとしたポイントがあります。それは乾シイタケの戻し方なんで
す。乾シイタケを戻す際に水ではなく、昆布やカツオ出汁につけて戻すと、三大旨味成分でもあ
る昆布のグルタミン酸、カツオのイノシン酸と乾シイタケのグアニル酸が合わさり、相乗効果で
旨味が数十倍に増えるので、塩分控えめでも美味しくヘルシーな料理になります。しかし、これ
だけではやっぱり乾シイタケ料理のレパートリーを増やすことができず、乾シイタケをメインに
した料理を作るのは難しいですよね。
今回は「かんぶつマエストロ」の池田雅子さんのトマトジュース戻しのアイデアも含めて「し
いたけ大使(著者)」考案のいろいろなスープで戻す変わり種シイタケ料理をいくつか紹介します。
これさえマスターすれば乾シイタケが主役の料理もできますし、食物繊維とビタミン豊富な乾シ
イタケを毎日でも食べることができますよ。
たとえば水で薄めた黒酢やリンゴ酢で戻した乾シイタケを使った「椎茸南蛮」。黒酢やリンゴ
酢の風味とともにほんのりと優しい甘味も加わってたくさん食べることができます。他には豆乳
で戻して「クリームパスタ」にしたり、トマトジュースで戻して「ミネストローネ」にしたりす
ることで乾シイタケの香りや風味を抑えられ、栄養はそのままで食べやすくなります。乾シイタ
ケでまさかスイーツまではとお考えの方、そんなことはありません。柑橘系のジュースで戻すこ
とで「カボスゼリー」などスイーツだって作れます。風味が強い柑橘類を使うと乾シイタケの香
りがじゃませずにナタデココのような食感だけが残ります。
また、乾シイタケのスープ戻しは、乾シイタケ特有の風味を和らげることで、和食だけでなく
洋食にも使え、乾シイタケを使った料理の幅が広がり、また小さなお子さまやシイタケ嫌いの方
でも美味しくシイタケを食べてもらえます。お子さまにいろんなスープや飲み物で乾シイタケを
戻してもらって、アイデア料理に挑戦するのもいいでしょう。さらにいろんなスープで戻すこと
で戻し汁もすべて料理に使うことができ、乾シイタケの旨味や栄養をすべて活かせるのも乾シイ
タケスープ戻しの特徴です。
以下、4種類の料理レシピを紹介しますので、ぜひお試しください。
(知財活用部門 主任技師)
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
豆乳戻し椎茸クリームパスタ
【材料】(2人分)
乾燥パスタ 100g
乾シイタケ 3枚
豆乳 200cc
水 200cc
牛乳 1カップ
ベーコン 3枚
にんにく 1片
オリーブオイル 大さじ1
塩 少々
こしょう 少々
パルメザンチーズ 少々
パセリ 少々
【作り方】
① 乾シイタケは軽く水洗いし、豆乳と水を合せた中に浸し、冷蔵庫に入れて一晩置く。
② 戻したシイタケをスライス、にんにくはみじん切り、ベーコンは細切りにする。
③ 鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて熱し、べーコン、シイタケを入れてよく炒める。
④ ③に①の豆乳水と牛乳を加え、塩・胡椒で味を調え、火を止めて茹でたパスタを入れて混ぜ
合わせる。
⑤ ④にパルメザンチーズを加えて軽く絡めたら、器に盛り付け、パセリを振りかけて完成!
椎茸カボスゼリー
【材料】(4人分)
乾シイタケ 中葉1枚
カボスドリンク 190g×3本
ゼリー粉 6g
ホイップクリーム 適量
【作り方】
① 乾シイタケをカボスドリン
クで戻す。
② 戻った乾シイタケをみじん
切りにして沸騰させないよう
に鍋で軽く火を通します。
③ そこに戻し汁のカボスジュースと砂糖を加え弱火で沸騰させないように温めたら、分量に合
わせてゼリー粉を加えて後は冷蔵庫で固まるまで冷やせば完成!
- 14 -
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
椎茸ミネストローネ
【材料】(2人分)
乾シイタケ 1枚
トマトジュース 200㏄
水 200cc
キャベツ 1/2枚
タマネギ 1/4個
ニンジン 1/8個
ジャガイモ 1/2個
ニンニク 1/2個
塩コショウ 適量
オリーブオイル 大さじ1
固形ブイヨン 1個
【作り方】
① 乾シイタケは軽く水洗いし、トマトジュースと水を混ぜたトマト水の中に浸し、冷蔵庫に入
れて一晩置く。
② 戻したシイタケはスライスし、野菜は1㎝幅の角切りにする。
③ 鍋にオリーブオイルを熱し、②のシイタケと野菜を炒める。炒めたらシイタケの戻し汁(ト
マトジュース)、ブイヨンを入れて煮込む。
④ 煮込む途中でアクが出たら取り除き、塩コショウで味付けして、完成!
黒酢戻しシイタケ南蛮
【材料】(2人分)
乾シイタケ 6枚
はちみつ黒酢 400㏄
小麦粉 適量
タマネギ 1/4個
薄口しょうゆ 大さじ2
酢 大さじ1
砂糖 小さじ1/2
サラダ油 適量
【作り方】
① 乾シイタケは軽く水洗い
し、市販のはちみつ黒酢に浸し、冷蔵庫に入れて一晩置く。
② 戻したシイタケは大きめならば半分に切り、軽く絞って水気を取り、小麦粉をまぶして油で
カラッと揚げる。
③ 薄口しょう油、酢、砂糖、①の黒酢、水を混ぜ合わせて、薄くスライスしたタマネギを入れ
漬けだれを作る。
④ ③に揚げたシイタケを入れて味がなじめば完成!
- 15 -
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
1月号 全農乾シイタケ情報
■ 全農椎茸事業所
1.新年のごあいさつ
新年明けましておめでとうございます。平素から本会シイタケ事業につきまして特段のご協力
を賜り厚くお礼申しあげます。昨年は原発事故以降続いていた価格の低迷から脱し、原発事故以
前の価格に回復したため、生産者の皆様をはじめ関係者にとっては今後に希望が持てる年となり
ました。市況好転は、価格低迷により植菌量が減少し生産基盤が縮小したことに加え、春子の不
作が重なったことが大きな要因ですが、この危機的な状況の中、業界を挙げて消費拡大に向けた
取り組みを行なってきたことも一つの要因になったのではないかと捉えています。また、いまだ
に多くの市町村で出荷制限がかかっている東日本産地においても、適切な生産工程管理の実践に
より少しずつではありますが部分的に出荷制限が解除されてきており、風評被害が徐々に緩和さ
れつつある中で明るい兆しとなりました。本年はさらに多くの地域で出荷制限の解除が進むこと
を切に願っております。ここに到るまでの全国の関係者の皆様のご尽力に敬意を表するとともに、
新しい年が皆様にとって良き年になりますよう心からご祈念申し上げます。
本年も有効ほだ木の減少から春子の生産量は3,000tを下回り、市況も再生産可能な水準で推
移していくと見ておりますが、生産量の減少は業界の縮小・弱体化につながるため、生産量を維
持しながら、再生産価格を維持し、次世代に引き継げる原木シイタケ生産・経営ができるよう、
当事業所も中長期的な視点を持ちながら取り組んでまいります。具体的には、産地と取引先をつ
なぎ安定した価格で安定した売り場を確保するために、現在強化しております相対販売をさらに
拡充していく考えです。販売先からもそのような取引を望む声が増えてきています。また、より
多くの消費者の方に原木乾シイタケの魅力を知ってもらうよう、引き続き関係団体とも連係して
消費宣伝に取り組んでいく所存ですので、皆様からの変わらぬご支援をお願い申しあげ、新年の
ごあいさつといたします。
2.平成28年度入札日程表について
この程、平成28年度入札日程を決定し、12月中旬に関係各所へ日程表(ポスター)を配布し
ました。届きましたら、関係先および生産者への配布をお願いいたします。予備はございますの
で不足の場合は椎茸事業所へお問い合わせ下さい。
平成28年の第49回全農乾椎茸品評会の展示表彰式は埼玉県久喜市にて開催します。詳しくは
日程表にてご確認下さい。また、12月の入札会は出品数が少なく中止となりましたが、1月20
日の初市は開催しますので、お手持ち品がありましたらご出荷下さいますようよろしくお願いい
たします。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
3.入札状況(品柄・出品数量等)
全農入札状況:12月の納会は出品が少なく開催することができなかった。1月20日の初市は
必ず開催しますので、全国からの出品をお願いします。商社会の行事を同日開催することもあり、
参加商社は25社程度と多数となるため、活発な応札を見込んでいます。出品できる方は1月14
日までに椎茸事業所に到着となるようご手配をお願いします。
産地状況:林野庁が公表した9月末時点のきのこ用原木需給調査結果によると、前回調査時に
比べ不足していた県で調達が進み、供給側も原木の堀り起こしが進んだことから、全体では供給
可能量が供給希望量を上回ったが、供給を希望する樹種はコナラが全体の91%なのに対し、供
給が可能とされる樹種はクヌギが59%と、コナラの不足が依然として続いている状況となって
いる。
4.乾シイタケ販売動向・一般情勢
贈答:大分県内の百貨店のお歳暮催事場を見ると、日本一の産地だけに乾シイタケのコーナー
が大きく展開されていた。各県で取り組んでいるブランド化の取り組みにより、大分県以外の県
でも乾シイタケが地元の名産品として贈答品に選ばれるようになって欲しいと思う。
家庭用・小袋:一部の小売店・生協を除いては量目を減らしたり、価格を上げるなどの末端価
格の値上げが行なわれた。商社の量販店からの受注状況は昨年同様のところもあるということで、
量販店側の販売していこうという意欲は感じられるが、年末の販売がどうなるか。年末商材の必
需品として点数が大きく落ち込まないことを期待している。
業務・加工用:国産乾シイタケを使用しているある外食チェーンでは、今までホールで使用し
ていたものを半分に切ったものに変えるなど、値上げによって使用量の減少につながる動きが出
てきている。
輸出入:10月の輸出量は2.0tで、単価は6,624円となった。単月では昨年対比11%、1~
10月累計では昨年対比105%となっている。1~10月累計での単価は昨年対比96%となって
いる。一方、10月の輸入量は487tで、昨年同月の423tから増加した。1~10月累計では昨
年対比99%となっている。1~10月累計での単価は昨年対比108%と価格は上がっている。
5.事業所から
新年明けましておめでとうございます。昨年は低迷していた価格が回復し、関係者の皆様から
もやっと安心の笑顔が見られた年になりました。今も出荷制限が続く産地の方々におかれまして
も、生産・出荷の再開に向けて明るい材料となったことと思います。当事業所においても、再生
産価格での販売を維持し、原木乾シイタケの魅力をより多くの消費者の方に伝えるべく、今年も
職員一丸となって販売、消費宣伝活動に取り組んで参ります。国産原木乾シイタケは中山間地域
の重量な産物であり、その振興は里山の保全や政府が進める地方創生にも確実につながっていき
ます。引き続き全国の関係者が力を合わせ、自信を持って国産原木乾シイタケの生産・消費拡大
に向けて、様々な意見を出し合いながら一緒に取り組んでいきましょう。今年も皆様のご支援・
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
ご協力のほどよろしくお願いいたします。
6.今後の全農椎茸事業所入札日程
1月:20日(初市)、2月:17日、3月:16日。
乾シイタケの輸出実績(平成27年10月)
10月
数量Kg
台
湾
香
港
ベ ト ナ ム
シ ガ ポ ール
サウジアラビア
オ ラ ン ダ
フ ラ ン ス
イ タ リ ア
カ
ナ
ダ
アメリカ合衆国
合計
前年対比
前年実績
668
675
0
0
171
0
0
0
0
493
2,007
10.7%
18,819
価額(千円) 単価(円/Kg)
5,924
8,868
3,807
5,640
0
0
0
0
558
3,263
0
0
0
0
0
0
0
0
3,006
6,097
13,295
6,624
21.5%
201.8%
61,762
3,282
1~10月
数量Kg
価額(千円) 単価(円/Kg)
31,303
86,733
2,771
9,628
52,056
5,407
1,386
3,517
2,538
61
455
7,459
171
558
3,263
445
2,531
5,688
30
205
6,833
250
1,450
5,800
263
1,974
7,506
3,577
16,223
4,535
47,114
165,702
3,517
105.0%
101.3%
96.4%
44,863
163,655
3,648
乾シイタケの輸入実績(平成27年10月)
中
香
国
港
合計
前年対比
前年実績
10月
数量Kg
価額(千円) 単価(円/Kg)
487,216
781,056
1,603
0
0
0
487,216
781,056
1,603
115.2%
120.9%
105.0%
422,950
645,798
1,527
1~10月
数量Kg
価額(千円) 単価(円/Kg)
4,148,232
6,544,278
1,578
4,420
7,897
1,787
4,152,652
6,552,175
1,578
99.4%
107.1%
107.7%
4,178,466
6,118,852
1,464
原木乾シイタケの逸品「上どんこ」
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
生シイタケの市況動向
東京市場
11月の生シイタケの入荷量は745tで前年比97%、キロ単価960円で前年比96%であった。
中国の入荷量は29tで前年比90%、キロ単価533円で前年比100%であった。国産は716t、
前年比97%であった。
12月上旬の入荷量は264tで、前年比107%、キロ単価1,022円で前年比102%であった。
12月中旬の入荷量は251tで、前年比91%、キロ単価1,024円で前年比90%であった。
11月、大型野菜の価格低迷の影響も受け、販売苦戦が続いた。また、暖秋であったため入荷
も潤沢であった。12月に入っても気温は比較的高く、鍋商材は引き続き厳しい販売となった。
1月については、野菜が全般的に減少するとの情報もあり、気温の低下とともに再度、需要が増
すであろう。
(東京荏原青果㈱ 野菜三部一課 池田拓郎)
大阪市場
12月上旬の生シイタケ入荷量は前年比87%の68t(国産前年比87%の67.3t、輸入前年比
86%の0.7t)であった。価格は前年比109%のキロ1,066円(国産前年比109%の1,112円、
輸入前年比96%の548円)であった。
12月中旬の入荷量は前年比80%の67t(国産前年比80%の66.3t、輸入前年比63%の
0.7t)であった。価格は前年比99%のキロ1,149円(国産前年比99%のキロ1,155円、輸入
前年比95%のキロ556円)であった。
12月に入り暖冬傾向が続く中、鍋物需要は低迷した状態であるものの、数量不足により
昨年並みの販売であった。年末需要に向け堅調な販売が見込まれる。年明け1月については昨年
よりも少ない入荷が予想され概ね昨年並みの販売を見込む。
(大阪中央卸売市場 大阪中央青果㈱ 蔬菜部 田島範弘)
生シイタケの輸入実績(平成27年10月)
生シイタケの輸入実績(平成27年10月)
中
国
合計
前年対比
前年実績
10月
数量Kg
価額(千円) 単価(円/Kg)
203,898
78,559
385
203,898
78,559
385
84.6%
88.0%
104.0%
240,902
89,254
370
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1~10月
数量Kg
価額(千円) 単価(円/Kg)
1,733,855
678,001
391
1,733,855
678,001
391
87.8%
89.7%
102.2%
1,974,840
755,884
383
菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
1~3 月のシイタケ栽培管理
乾シイタケ栽培
昨年10月は全国的に気温が順調に下がり、中温菌、中低温菌を中心に芽切りが始まり、11月
上旬には収穫が終了しその後が期待された。しかし11月中旬以降の気温が予想以上に高く推移
したため発生は続かなかった。12月下旬になってようやく芽切りがそろい、今後の寒子が期待
される。品柄についは10月の降水量が少なく天候に恵まれたため、菌興240号を中心に秋子は
中葉主体で傘が明るく柄の短い良品が収穫された。
1.原木の伐採・玉切り
冒頭に述べたように、昨年の11月は気温が高く推移し原木の黄葉も遅れ、伐採適期の見極め
に苦慮された人も多い。最適期は逃したものの3月新葉が芽吹くまでは適期である。今後も伐採
を行い原木の確保に努めていただきたい。
適期に伐採した原木は玉切り作業にかかる(積雪の産地は除く)。長期間の葉枯らしは原木表
面が過乾燥となり、クロコブタケ、ニマイガワキンの侵入を招きやすくなるため、伐採後30日
程度経過すれば速やかに玉切り作業を行い集材する。積雪が心配される伐採地では、玉切りした
状態で降雪の下にならないように玉切りを調整する。集材したものは低めの棒積みで笠木をかけ、
原木表面の過乾燥を防ぐ。また積雪地では原木の上面にビニールシートなどを掛け雪を防ぐ。
2.植菌・仮伏せ
すでに年内植菌により作業を完了されている人もおられると思う。植菌は早いほど菌糸伸長も
良くなる。しかし1月、2月は低温乾燥の時期であり植菌後保温・保湿ができなくては早期植菌
の効果が現れない。そのため植菌後は仮伏せを徹底してほしい。方法として低い棒積み(降雨が
すべてのほだ木に行きとどく高さ、約30~50cm)で笠木をかけ、状況によってはビニール被
覆を行い保温・保湿を図る。3月以降は被覆内の温度が20℃以上にならないように注視しなが
ら仮伏せ管理を行う。
3.寒子・春子対策
玉切り・集材・植菌など忙しい時期であるが、ほだ場・ほだ木の状況を確認して増収・良品生
産の方策として下記の管理・操作を実施してほしい。
1)暗いほだ場は枝打ち、間伐を行い明るくする。春先の芽切りが早くなり、品質向上につなが
る(図1)。
2)防風垣(ネット)を設置しほだ場の保湿、保温を図る。広いほだ場では周囲だけでなく内部
にも防風垣の設置が必要となる。また、つなぎ目や切れ目から入る風は強力となるため補強、
補修を行う。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
3)現在芽切っているものには袋掛けやビニール被覆を行って成長を促す。寒冷地では凍結防止
にもなる(図2)。
4)4年ほだ木以降の古ほだ木は、クギ目・鉈目を3か所程度入れて水分が給水しやすいように
して春子増収に努める(図1)。
5)散水施設を所有する人は、2月中旬以降に芽切り促進の散水を実施する。
図1.春子対策
図2.袋掛け、ビニール被覆対策
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
4.乾燥機の点検
春子発生に備えて乾燥機の事前点検を行う。オイルホースの亀裂、煙突、オイルタンクのごみ
詰まり等点検し、使用時にあわてないように。一度試運転を行い春子に備える。
(研究普及局課長 大竹俊充)
生シイタケ栽培
生シイタケ栽培の可否は、その時々の発生の良し悪しだけでなくシーズン・年間を通してのき
のこの収量と品質で判定される。成果を挙げるためには、良いほだ木を作ることが最優先事項で
ある。そして、品種の特性やきのこの発生の仕組みを熟知し水温や芽出し温度、ハウス内の温度・
湿度の管理を行うことが大切。
1.冬菌・低中温菌の浸水栽培(菌興115号、118号、141号)
低中温菌の1~3月の浸水栽培は、春子の先取りであり操作は容易となる。浸水後の芽出し・
成長とも低温刺激が不十分な年内(晩秋)は温度を低くしなければならないが、冬~春は比較的高
図3.菌興115号、118号、141号の発生操作
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
くすることで発生数が増加する傾向にある。このことを踏まえて操作を行いたい。一連の操作は
図3のとおりであるが、ポイントは次の通り。
1)浸水時間:凍結したほだ木を浸水する場合は長めに行う。凍っている状態ではほだ木は吸水
しない。3年ほだ木以降の古ほだ木は、水揚げ時には浸水槽の水位を確認し、十分な吸水とな
っていることを確認する。古ほだ木の発生不良は、吸水不足に起因することが多い。
2)成長温度:厳寒期と3月上旬以降では発生ハウス内の温度は一変する。ハウス資材等の調整
を行い日中は15~20℃、夜間は0~5℃を目安とする。
3)休養方法:浸水休養を行っている場合は、温度の上昇とともに発生が始まり休養の意味をな
さないことがある。浸水休養を行う場合は極力10℃以下になる場所を選定したい。
4)使用後の管理:ほだ場で春子を採取する場合は、3月までには浸水もしくは散水を行いほだ
場へ返す(図4)。
図4.使用後のほだ木の管理
2.夏菌・高中温菌の浸水栽培(菌興697号、702号)
オガ・形成菌の1年ほだ木は昨秋から使用し、1~3月期には2~3回転目を迎えていることが
多い。冬菌と大きく異なる点は、温度管理を徹底することであり、厳寒期ほど慎重に操作を行い
たい。
1)浸水:水の温度は10℃以上を確保し(最適は13~18℃ )、浸水時間は12時間以上を目安
とする。次回発生のため種菌部に吸水させるためである。
2)芽出し温度:13~18℃。
3)成長温度:13~28℃。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
4)休養:1~3月以降は、きのこの発生が植菌孔から樹皮発生へと変化する。このことを踏
まえ、樹皮面の腐朽を進めることが重要となる。樹皮の熟度促進のためには、温度と水分が必
要であるばかりか、休養ハウスの日中の温度も25℃程度を確保したい。
3.夏出しへ向けての事前管理(菌興697号)
菌興697号を初夏(自然子終了後)より使用する場合は、使用前少なくとも1ヶ月前には事前管
理を行い、発生しやすいほだ木に仕上げる。方法としては、ハウス内へほだ木を取り込んだり、
人工庇陰や林内での被覆により原基作りや原基の肥大を促す。
4. ほだ木作り(植菌~仮伏せ)
昨年は7月中旬~8月中旬までの猛暑が一変し1年ほだ木の「仕上げ時」に温度不足となり発
生にバラツキが出た。そうした中、早期植菌やその後の仮伏せ管理をしっかり行っているほだ木
は例年通り安定発生するところもあった。仮伏せ中にほだ木の腐朽をできるだけ進めることが大
切である。
1)植菌:オガ・形成菌を植菌した1年ほだ木の使用を目的にする場合の植え付け種菌数は原木
の木口直径の5~6倍を目安とする。2年ほだ木使用の場合は木口直径の3~4倍とし、駒菌の
場合もそれに準じる。
2)仮伏せ:ハウス(図5)あるいは露地(図6)での仮伏せはともに被覆による管理とする。被
覆内の温度は、ほだ木材内の菌糸伸長が3センチ程度となるまでは最高温度が18℃以上にな
らないように管理する。厳寒期と3月以降では温度が一変するため注意深く観察しながら、温
度管理に努めてほしい。3月以降は、気温が上昇するため、それまでの温度確保の管理からい
図5.ハウス内での仮伏せ
黒マルチを換気のため一時的に剥いだ状態。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
図6.露地でのヨシズを使用した仮伏せ
かに適温を維持して管理するかがポイントとなる。露地での仮伏せの場合は、ブルーシート等
温度上昇を防ぐ資材を使用して温度調節を行う。ハウス内仮伏せでは、20℃以上となった時
は、日中数時間でも被覆を剥いで換気を行うことで温度を調節する、夕方再度被覆を行うとと
もに、ほだ木が乾燥している場合は全体が濡れるくらいの散水を行う。
(研究普及局次長 安田修一)
全国3カ月気象予報(平成27年12月25日、気象庁発表)
1月 北日本日本海側では、平年と同様に曇りや雪の日が多い。東・西日本日本海側では、平年
に比べ曇りや雪または雨の日が少ない見込み。北日本太平洋側では、平年と同様に晴れの日が多
い。東・西日本太平洋側では、平年に比べ晴れの日が少ない見込み。
2月 北日本日本海側では、平年と同様に曇りや雪の日が多い。東・西日本日本海側では、平年
に比べ曇りや雪または雨の日が少ない見込み。北日本太平洋側では、平年と同様に晴れの日が多
い。東・西日本太平洋側では、平年に比べ晴れの日が少ない見込み。
3月 北日本日本海側では、平年と同様に曇りや雪または雨の日が多い。北日本太平洋側では、
平年と同様に晴れの日が多い見込み。東日本日本海側では、天気は数日の周期で変わる。東日本
太平洋側と西日本では、天気は数日の周期で変わるが、平年に比べ晴れの日が少ない見込み。
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
各地のきのこだより
三重ニュース
三重県の山嵜保・佳代さん夫妻、内閣総理大臣賞を受賞
昨年の10月21日、三重県多気町の山嵜保・佳代さん夫妻が、平
成27年度(第54回)農林水産祭の林産部門において内閣総理大臣賞
に輝いた。「大径のほだ木を利用した肉厚で風味の良い高品質シイ
タケの栽培・経営」が受賞理由。同夫妻は全農乾椎茸品評会上どん
この部で過去5年連続を含め計6回の農林水産大臣賞を受賞してい
る三重県内屈指の原木シイタケ生産者である。
(中部駐在 安田修一)
山嵜保・佳代さん夫妻
日向ニュース
日向椎茸研究会、ホームページを開設
日向椎茸研究会(会長奈須高光さん 会員92名)は、原木シイタケ生産経営に必要な技術を探究
し、宮崎県シイタケ産業の振興発展に寄与することを目的に昭和49年に発足した歴史ある団体
です。昨年、発足から40周年を迎えた会の新たな取り組みとして、会の活動を消費者にまで広
く知っていただくためにホームページ(以下HP)を開設しました。
HPの技術的な運用管理は研究会事務局である(一財)日本きのこセンター九州日向事務所が行
っていますが、HPでは以下のような情報を発信しています。
①研究会の案内:基本的な情報、発足当時の紹介、②栽培情報:生産者向け栽培管理情報(会
員専用情報もあり)、③現在の産地の発生、収穫情報、④自家用シイタケ、各種きのこ(なめこな
ど)の栽培資料、⑤シイタケ料理(プロ料理人の提案、会員の提案)、⑥シイタケ(商品)を取り寄せ
できる生産者およびシイタケ専門問屋さんの紹介、⑦活動案内(行事予定、終了した行事の様子
日向椎茸研究会ホームページのトップ画面
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菌蕈1月号(第62巻 第1号 724号)
紹介)、⑧イベント紹介。
今後は会員の原木シイタケを使ったプレミアム製品の限定通販や、ネットの特性を生かした動
画での技術資料提供など、作る側、消費する側の両方に楽しくてためになる情報を発信していき
ます。HPアドレスはhttp://hyuga-shiitake.jp/、検索キーワードは日向椎茸研究会です。
(九州日向事務所長 笹山儀継)
きのこセンターニュース
鳥取県アンテナショップで新品種エリンギ「濃丸」の試食・販売
(一財)日本きのこセンターは、12月14
日(月)、15日(火)の両日、鳥取県のアンテ
ナショップ「とっとり・おかやま新橋館」
において、当財団が15年の歳月をかけて
開発した新品種“プレミアムエリンギ濃丸”
の試食・販売を行いました。
この度は、アンテナショップを利用され
ているお客様へ濃丸の魅力を存分に感じて
いただくべく、試食には“濃丸のオリーブ
オイルソテー”、“濃丸のサラダ風ドレッシ
ングがけ”および“濃丸とトマトのスープ”
の3種類の料理を用意し、濃丸の優れた食
試食・販売の様子
味・食感を活かした召し上がり方を提案し
ました。傘も柄も立派な濃丸なので、切り方を工夫してそれぞれの食感を楽しんでいただきまし
た。太い柄を輪切りにしたものを試食したお客様には、「これがエリンギなの?!」、「歯ごたえが
違うね!」と見た目や食感に評価をいただきました。また、1パック2本入り300円と3本入り
400円の特別価格で販売し、販売予定数量のパックは完売しました。
「エリンギが大好きなの!」
と言って来てくださるお客様も多く、今後もより一層東京での販路拡大に力を入れていきたいと
思います。 (知財活用部門コーディネーター 渡邊萌生)
ひとりごと
明けましておめでとうございます。菌蕈は1月号から当財団のホームページ
に掲載します。引き続きご愛読していただきますようお願い申しあげます。こ
の1年、できる限り多彩なきのこ情報の掲載に努めて参ります。(F.Y.)
菌蕈1月号(第 62 巻 第 1 号 通巻 724 号)
発行日:平成 28 年 1 月 5 日
発 行:一般財団法人日本きのこセンター
鳥取県鳥取市富安 1 丁目 84 番地
☎ 0857-22-6161、http://www.kinokonet.com/
編 集:菌蕈編集委員会
記事、写真およびデータの無断転載を禁じます。
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