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NPPVの実践的使用法 - 徳島人工呼吸セミナー
NPPVの実践的使用法 2013年11月9日 徳島大学病院 救急集中治療部 綱野 祐美子 本日のテーマ 1. NPPVとは 2. 適応と禁忌 3. 換気モード 4. 導入・使用上の注意点 NPPVとは NPPV(noninvasive positive pressure ventilation) 非侵襲的陽圧換気 モニター 気管チューブを使わず マスクをフィットさせて マスク 行う陽圧換気 写真は代表機種 BiPAP VISION® 加湿器 NPPVの利点 ●人工呼吸器関連肺炎が減少する ●着け外しが簡単にできる ●挿管手技に伴う合併症が回避できる (低酸素血症、血圧変動、食道誤挿管、歯牙損傷) ●鎮静の必要性が減少する ●ICU滞在期間が短縮 NPPVの適応 ●心原性肺水腫 ●COPD急性増悪 ●免疫不全患者の呼吸不全 気管挿管を希望しない場合(悪性疾患など) NPPVの禁忌 ●心停止•呼吸停止 ●上気道閉塞•気道分泌物排出が不能 ●意識障害、誤嚥あり ●肺以外の臓器障害が重篤 (重篤な脳疾患、重篤な消化管出血、 不安定な血行動態) ●顔面の手術、外傷、奇形 ●非協力的 換気モード ●CPAP モード (PEEP) 肺が虚脱している(肺水腫、無気肺、肺炎) よい適応:心原性肺水腫 ● S/T モード(PEEP+PS) 1回換気量が少ない(呼吸麻痺、疲弊) よい適応:COPD急性増悪 CPAP モード (Continuous positive airway pressure mode) 無呼吸 流量 換気量 圧 S/T モード (Spontaneous/Timed mode) 無呼吸 流量 換気量 圧 マスクの選択 フェイスマスク トータルフェイスマスク 鼻マスク マスクの特徴と適性 フェイス トータルフェイス 鼻 導入時期 急性期 急性期 慢性期 高い設定圧 可能 一部可能 困難 開口での使用 可 可 不可 リーク 多い 少ない 少ない マスクの種類 多い 1種類 多い 皮膚トラブル 多い 少ない(頸部) 少ない 最適なマスクは? ●種類は? 急性期はフェイスマスクで! ●サイズは? 迷ったらまずM フェイスマスク マスクのサイズ ●目にあたらない ●鼻孔が閉塞しない ●口が開いても唇がはみ出ない ●横になった状態でフィットする 導入時の注意点 1. 患者がもっとも楽な体位で開始する 2. 不安を和らげる声かけをする 3. いきなりベルトを固定しない 4. 最初から設定圧を高くしない 5. 胸郭の動き、呼吸数の変化を観察する 6. リーク量を評価する マスク装着時 1. 患者がもっとも楽な体位で開始する 起坐呼吸であれば、座位のままで導入も可 2. 不安を和らげる声かけをする ×「このマスクつけて!がんばって、はい深呼吸!」 ○「今からマスクを変えます。このマスクは風が 出ているのでびっくりするかもしれませんが、 呼吸を助けてくれるので、必ず楽になります。 落ち着いて呼吸をしてください。」 NPPV開始時 3. いきなりベルトを固定しない まずはスタッフが手で保持する 受け入れ具合を確認しながらベルトを固定 4. 最初から設定圧を高くしない 低い設定圧で開始し、徐々に目標の圧へ 例 (6 cmH2O) (8-10 cmH2O) NPPV開始してすぐに 5. 胸郭の動き、呼吸数の変化を観察する 安定を確認するまではベッドサイドを離れない 6. リーク量を評価する リークが多いと ●加湿不足で口腔内が乾燥 ●吸気トリガーがうまく働かない リーク補正能は、機種によって異なる VISION®は60 L/分までは補正可能 使用上の注意点 ●合併症 皮膚潰瘍、乾燥性結膜炎、口腔•鼻腔内の 乾燥、耳痛、腹部膨満 ●治療効果の評価 設定変更?治療継続?気管挿管? 注意すべき合併症 皮膚潰瘍 乾燥性結膜炎 鼻梁 鼻周囲 合併症への対応 合併症 皮膚潰瘍 乾燥性結膜炎 口腔・鼻腔内の乾燥 耳痛 腹部膨満 対応 マスクの調節、皮膚保護剤(写真) マスクの調節、点眼剤 加温・加湿器の使用、オーラルケア 圧設定の変更 胃管挿入、圧設定の変更 治療効果の評価 急性期であれば治療開始1〜2時間で効果 ●呼吸数減少 ●呼吸パターンの改善 ●循環動態の改善 ●血液ガス所見の改善 患者さんが楽そうになったら効果あり!! 効果がない場合は気管挿管を検討 まとめ ● NPPVの最もよい適応は、心原性肺水腫、 COPD急性増悪、免疫不全患者の呼吸不全 ● マスクの選択、フィッティングが重要 ● 導入直後〜数時間の変化に注目 ● 効果がなければ、気管挿管に速やかに移行