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Huntington病の診断と 鑑別疾患
Huntington病の診断と 鑑別疾患 2008年5月 選択実習 医学科6年 K.J. 症例 60歳代 男性 z 起始経過:食事をこぼすようになり、その後徐々 に不随意運動が出現 z 遺伝子検査は拒否 z 家族歴 z HD HD Huntington病 Huntington病 概念:舞踏運動、認知障害を呈する進行性の神経変 性疾患 z 頻度:欧米 5∼10/10万 日本 0.4∼1/10万 性差なし z 好発年齢 30∼50歳 (20歳以下の若年型もある) z 遺伝形式:常染色体優性遺伝 浸透率:極めて高い 父親からの遺伝により表現促進現象を呈する z 遺伝子:4p16.3の塩基反復配列(huntington遺伝子)、 CAGリピート数異常伸長によるtriplet repeat病 z Huntington病 症状:舞踏運動、痴呆、人格変化、10代発症の 若年型や高度に進行した例では、舞踏運動が ほとんど見られず、パーキンソニズムを呈する (固縮型) z 神経病理:尾状核と被殻に限局した運動機能調 節ニューロンの萎縮 z Huntington病の画像所見 z z z z 早期:被殻の萎縮 中期:尾状核頭部 の萎縮による側脳 室前核の拡大 前頭葉を主体とする 脳萎縮 尾状核、被殻の萎 縮及びそれに伴う T2WIで高信号 Huntington病の診断 FH CC IT CC:intercaudate distance FH:frontal horn width IT:calvarial inner table FH/CC=1.77 (正常値 2.2∼2.6) CC/IT=0.21 (正常値 0.09∼0.12) Neophytides AN. Computed axial tomography in Huntington’s disease. Adv Neurol 1979;23:185-191 次の①∼⑤のすべてを満たすもの,あるいは③及び⑥を満たすものを, ハンチントン病と診断する。 ① 経過が進行性である。 ② 常染色体優性遺伝の家族歴がある。 ③ 神経所見で,(1)∼(3)のいずれか1つ以上がみられる。 ④ 臨床検査所見で,下記の所見がみられる。 ⑤ 鑑別診断で,下記のいずれでもない。 ⑥ 遺伝子診断で,下記の所見がみられる。 Ⅰ神経所見 (1) 舞踏運動(chorea)を中心とした不随意運動。ただし若年発症例では仮面様顔貌, 筋固縮,無動などのパーキンソニズム症状を呈することがある。 (2) 易怒性,無頓着,攻撃性などの性格変化・精神症状 (3) 記銘力低下,判断力低下などの知的障害(認知症) Ⅱ臨床検査所見 脳画像検査(CT,MRI)で尾状核萎縮を伴う両側の側脳室拡大 Ⅲ遺伝子診断 DNA 解析によりハンチントン病遺伝子(IT15)にCAG リピートの伸長が ある。 Ⅳ鑑別診断 (1) 症候性舞踏病:小舞踏病,妊娠性舞踏病,脳血管障害 (2) 薬剤性舞踏病:抗精神病薬による遅発性ジスキネジー、その他の薬剤性ジスキネ ジー (3) 代謝性疾患:ウイルソン病,脂質症 (4) 他の神経変性疾患:歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、有棘赤血球症を伴う舞踏病 鑑別疾患 z 両側基底核外側がT2WIで高信号 多系統萎縮症Parkinson型 Wilson病 Leigh脳症 CADASIL z 舞踏運動から鑑別すべき疾患 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 有棘赤血球舞踏病 50歳代 女性 歩行時のふらつきと書字の際の手の震え、呂律が回 りにくくなった Multiple system atrophy(MSA) 多系統萎縮症Parkinson型 (multiple system atrophy:MSA-P) 概念:被殻、黒質、橋核、小脳、自律神経系など広 範囲に渡る神経変性疾患 小脳失調主体のMSA-CとParkinson症状主体の MSA-Pに分類される z 好発年齢:40∼60歳代 z 遺伝性:なし z 症状:小脳失調、Parkinson症状、自律神経失調、 運動麻痺、精神症状 z 30歳代 女性 徐々に動作時のぎこちなさが出現、 その後集中力の低下、眼の不快感、視力低下を来たした Wilson病 Wilson病 概念:先天性銅代謝性異常疾患 銅の排泄障害により肝及び末梢組織への銅沈着 を来す z 遺伝形式:常染色体劣性遺伝 z 遺伝子:ATP7B遺伝子 z 症状:肝機能障害、Kayser-Fleischer角膜輪、ミオ クローヌス、運動失調、歩行障害 z 検査所見:血清セルロプラスミンの低下、血清銅の 低下、尿中銅排泄の増加 z 治療:D-ペニシラミン z Leigh脳症 (亜急性壊死性脳症) 概念:視床、大脳基底核、中脳、橋などに左右対 称性の壊死性病変を持つ神経変性疾患 z 原因:ピルビン酸代謝障害 z 好発年齢:2歳以下 z 症状:筋緊張低下、哺乳力低下、精神発達遅滞 z 検査所見:血液および髄液中の乳酸、ピルビン酸 の増加 z 若年性遺伝性脳血管性痴呆 (cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infaracts and leukoencephalopathy:CADASIL) 概念:大脳白質に多発脳梗塞を来す脳動脈疾患 z 遺伝:常染色体優性遺伝 z 遺伝子:Notch3 z 症状:片頭痛、繰り返すラクナ梗塞、進行性痴呆 z 病理:細小動脈中膜にオスミウム好性顆粒物質 (GOM)が沈着 z 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (dentatorubropallidoluysian:DRPLA) 概念:歯状核ー赤核系と淡蒼球ールイ体系の2系 統が侵される神経変性疾患 z 遺伝形式:常染色体優性遺伝 z 遺伝子:12q13.31上のDRPLA遺伝子のCAGリ ピート数の異常伸長によるtriplet repeat病 父親から遺伝により表現促進現象を呈する z 症状:舞踏運動、小脳性運動失調、認知障害 (若年発症の場合はてんかん、ミオクローヌスも) z 有棘赤血球舞踏病 (chorea-acanthocytosis:ChAc/Levine-Critchley 症候群) 概念:舞踊運動、精神障害などの神経症候と有棘 赤血球症を合併するneuroacanthocytosisの一型、 極めて稀 z 平均発症年齢 35歳(20歳以降に発症) z 遺伝形式:常染色体劣性遺伝 z 症状:舞踏運動、遠位型ミオパチー、口腔領域と舌 を中心とするジストニア→自咬症 z 血液標本:有棘赤血球 z 結語 Huntington病の画像所見と鑑別疾患を報告 した z Huntington病の画像では尾状核と被殻の萎 縮が有用な所見であるが早期には尾状核の 萎縮はなく被殻の萎縮を来す疾患の鑑別を 要する z