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(6)【
○
PTヒ ア リング】林直樹氏
(東 京都 立 松沢病院精神科部長 )
松沢病院に 自殺 関連行動 で入 院 した 155人 の 患者 に つい て 、分析 した
ところ、境界性 パ ー ソナ リテ ィー 障害 (BPD)が 56%で あ つ た。内容 は 、
自己切傷 410/0、 次 い で過量服薬が 32%で あ った。BPDの うち過 量 服薬
の経験率 は 76%と 高か った。 また 、入院患者 107人 を 4年 間観察 した
とこ ろ、他 の精神疾患 に くらべ て、 自殺企 図 の再発 率 が優位 に高か つた。
BPDの 重症患者 は、過量服薬や 自殺 の リス クが高 い ことが示 唆 され る。
O BPDは
、 うつ 病等 の患者 よ りも治療が困難で、診療 に時間がかか るが、
チ エ ム医療や十分な診療時間 を確保す る ことが 困難 である。過量服薬 を含
む 自殺 リス クの高 い患者 へ の対応 のひ とつ として、BPDに 着 目 し、ガイ ド
ライ ンの普及や診療体制 の 充実 が望 まれ る。
以 上 のよ うに 、過 量服薬 をめ ぐる実態には、 さま ざま要素 が 関与 してい る と
考 え られ るが、精神医療 の 質 の 向 上や診療体制 の 充実 、 一般 医療 と精神科 医療
との連 携 強化 な ど、根本的 な解決 には様 々 な観 点か らの対策 が必要 とな る と考
え られた。
3.解 決に向けて実施する取組 と、今後検討 してい く対策
O PTに おける議論や意見を踏まえ、過量服薬への対応 として、【別紙 1】
に挙げる取組を実施 していく。
○ さらに、過量服薬の課題に本格的に取 り組むため、【
別紙 2】 に挙げる事
項について今後検討 を進めていく。 このため、PTに 過量服薬対策について
集中的に検討するワーキングチームを設置する。
4.お わ りに
O
我 が 国 の 自殺予防対策 に関連 し、過量服薬 へ の対応 とい う観点 か ら、専
門家か らの意見を交 え、今後 、厚 生 労働省 として、当面推進す べ き取組 につ
いて ま とめた。
しか しなが ら、「 1 基本的考 え方」で述 べ た とお り、 この課題 は様 々 な
要素が複雑 に絡み合 つ た根深 い課題 であ り、患者側 の立 場 も含 め今回行 つ
○
た ヒア リング と異 なる観 点で の ヒア リン グを実施 す るな ど、今後 も継続 し
て対応策 につ いての検討 を深 めて行 く必要がある。
○
厚 生労働省 では、 ここで とりあげた対策 を早急 に取 り組 めるものか ら順
次進 め る とと もに 、薬物 治療 が精神科 医療 にお いて欠 く ことができ,な い も
の である ことに 留意 しつつ 、薬物治療 の みに頼 らな い診療環境 の整備 に向
け さらに検討 を進 め 、今後 も継続 して、過量服薬や多剤 投与 に陥 りやす い
とされ る精神科 医療 全 体 の課題 に対応 してい く必要 があると考えて い る。
賜ll紙 1】
解決 に向けて実施する取組
患者 の 多 くは 、 処方 薬 を受 け取 る場 合 に薬剤 師 と面会 す る こ と とな るた め 、
薬剤 師 は、過 量服薬 の リス クの高 い 患者 を早 期 に見 つ け出 し、適切 な医療 に結
び付 け るため の キ ーパ ー ソン として重要 な役 割 と担 うと考 え られ る。
例 えば、薬 局 を訪 問す る患者 の 中 で 、向精神 薬等 を長期 に処方 され て い る患
者 に つ いて は t薬 剤 師 か ら、患者 に対 して 「よ く眠れ てい るか J、 精神科 を受診
して い な い 患者 に 「精神 科 を受診 して い るか Jな どの 声 か け をす る こ とや 、 必
要 に応 じて処方 医 に疑 義照会 を行 うな ど、患者 が適 切 な精神 科 医療 を受 け られ
るよ う医療従事者 間 の 連携 を深 め る といつた役割 が 期待 され る。
このた め 、薬剤 服 用歴 や お薬 手帳 な どか ら向精神 薬 乱用 が 疑 われ る患者 に対
す る声 か けや処方 医 へ の 疑 義照会 な どを積 極 的 に行 え るよ うに し、過 量服 薬 の
リス クの高 い 方 を早期 に発 見 で き るよ う、薬剤 師 に対す る向精神 薬 、睡眠 薬 、
市販 薬 の 誤用等 と自殺 行動 に対す る知識 や研 修機会 の提 供 に つ いて検討 す る。
①最新 の診 療 ガイ ドラインの普及啓発 を推進す る
診療 の現場 では、患者 の症状等 か ら適切 な診断 と、 それ に基 づ き適切 な治療
法 を選択す る こ とが重要 である。厚 生労働省 では 、 これ まで も各種 ガイ ドライ
ンの作成 を行 うて き てお り、今後 も、向精神薬 の処方 に関す る実態把握 を踏 ま
えた適切な処方 のあ り方 に 関す るガイ ドライ ンの策定 が予定 されて い る。 こ う
したガイ ドライ ンについて 、学会や団体等 を通 じて医療機 関 へ 普及 を図 る とと
もに、 [取 組
3]の 研修事業 の 中で取 り入れ て い く。
く参考 >
厚 生 労働 科学研 究 にお けるガイ ドライ ンの 策定状況 に つい て
○既 に策 定 され て い るガイ ドライ ン
20年 度
境 界性 パ ー ソナ リテ ィー 障害 ガイ ドライ ン
(H1416)「 覚 界性 人格 障害 (BPD)の 新 しい 治療 システ ムの 開発 に関す る
・ 平成
研 究J
(H17‐ 19)「 境 界性 人格 障害
(BPD)の 治療 ガイ
ドライ ンの 検証 に 関す る研
究 J(牛 島定信 :東 京 女子大学文理学部 (前 。東京 慈恵会 医科大学精神 医学講
座 ))
・ 平成
20年 度
救急 自殺未 遂 患者 へ の 対応 ―外 来 (ER)・ 救急科 ・ 救命救急
セ ンター のス タ ッ フのた めの手 引 き
(H18‐ 20)(こ ころの健 康科学研 究事業 )「 自殺未 遂者 お よび 自殺者 遺族等 ヘ
のケア に 関す る研 究」 (伊 藤 弘人 :国 立 精神
神 経 医療研 究 セ ンター 精神保健
研 究所 )
21年 度
うつ 病 の認 知療法・ 認 知行動療 法 マ ニ ュ アル
(H19‐ 21)「 精神 療 法 の 実施 方法 と有 効性 に関す る研 究」 (大 野裕 :慶 應 義塾
・ 平成
保健 管 理 セ ンター )
大学
○今後策 定 され る予 定 の ガイ ドライ ン
・ 精神疾 患 に合併 す る睡眠 障害 の診 断・ 治療 ガイ ドライ ン (仮 )
(H1921)「 精神疾 患 に合併す る睡眠 障害 の診 断 ・ 治療 の 実態把握 と睡眠 医
療 の 適 正 化 に 関す る研 究」
(H2224)「 睡眠 障害患者 の QOLを 改 善す るた めの科学 的根拠 に基 づ いた
診 断 治療 技術 の 開発 」 (三 島和夫 :国 立 精神・ 神経 医療研 究 セ ンター 精神保健
研 究所 )
。統合失 調症 に対 す る抗精神 病薬 多剤 処方 の是 正 に関す るガイ ドライ ン (仮 )
(H2224)「 抗 精神 病薬 の 多剤大量投 与 の 安全 で効果 的 な是正 に 関す る臨床
研 究」 (岩 田仲生 :藤 田保 健衛生大学 医学部 )
・ 薬 物依 存症 へ の認 知行 動療 法 マ ニ ュアル (仮 )
(H2224)「 薬物依 存症 に 対 す る認力 行動療 法 プ ロ グ ラ ムの 開発 と効 果 に 関
す る研 究」 (松 本俊彦 :国 立精神
:く 参考
神経 医療研 究 セ ン タ ー 精神保健研 究所 ):
>
英 国 立 医 療 技 術 .T価 機 構 (NICE:National lnstitute for Health and i
Clinical Excellence)、
米 国精 神 医 学 会
(APA:American Psychiatric i
Association)が 作成 してい る診療 ガイ ドライ ン では、
:
・軽症 の場合 には認知行動療法な どの精神療法 を薬物治療 に優先 して実施す
る方が有効 である こと、
依存性 の 高 い薬物 (睡 眠薬 、抗不安薬等 )に ついて は長期 に使用 しない こ
と、
・プ ライ マ リー ケ アでは抗 うち薬 の併用療法 は行 わない こと
な どとされ て い る。
<ガ イ ドライ ン>
・ Depression / Treatment and management of dopresSiOn m adults,
including admts● th a chonic ph/sical health problellrl(2099 NICE)
・ Borderline personaliy disorder/Treatment alld management(2009
NICE)
・ Practice Guideline for the Treatment of Patients llltll Malor DelllressⅣ
e
Disordei′ SecOnd Edition(2005 APAl
・ Practice Guideline FOr the Treatment of Patients ヽ
Vith Borderline
② 境界性パーソナリテイー障害に関する診療ガイドラインの普及啓警
境界性 パ ー ンナ リテ ィー 障害 にっ いては、他 の精神疾患に比 べ て過量服薬 を
含 め 自殺 の リス クが高 い こ とが知 られ て い る一 方 、治療 が難 しいため、正確 な
診断 治療 が可能 な専門医 との連 携 が重要であ る。 このため 、厚 生 労働科学研
究班等 にお いて 作成 され た診 断 ・ 治療 に 関す るガイ ドライ ンについて 、パ ー ソ
ナ リテ ィー 障害 に関す る専門研修等 を通 じて、 一層 の普及啓発や専門医 に 関す
る情報提供 を進 め る。
① 厚生労働省 の研修事業 を活用
過量服薬 の実態 と対策 を知 ることは t医 療従事者が積極的 に対策 に 関 与す る
体制 を構築す るために重要である。 このため 、厚 生労働省 で行 つてい る研 修事
業 にお いて 、過 量服薬 に 関す る留意事項 を 、研修 内容に盛 り込む。
過量服薬 に関す る留意事項 に つい て は 、過量服薬 の 現状、 リス クの 高 い患者
へ の処方の 際 の留意点 、複数 医療機 関 か らの処 方 の有無 の確認 、 チ ーム 医療 の
重要性 、最新 の治療 ガイ ドライ ンな ど、研修対象 に合 わせた内容 を検討す る。
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