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東京高判平25.11.27-弁護人が接見等禁止決定を受けた未決拘留者

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東京高判平25.11.27-弁護人が接見等禁止決定を受けた未決拘留者
刑事訴訟法
東京高判平 25.11.27
―弁護人が接見等禁止決定を受けた未決拘留者
からメモを宅下げする場合における、留置担当
官による当該メモの検査の当否
事案
被疑者Aは、Y県警察署留置施設(以下、「本件施設」という。)
に勾留され、接見等禁止決定を受けた。Aの弁護人であるXは、本
件施設内の面会室において、Aと接見した後、留置担当官に対し、
Aの作成した宛名のないメモ書き4枚の交付(宅下げ)を申し出た。
これを受け、留置担当官が当該メモを検査した(以下、
「本件検査行
為」という。)ところ、内容が家族に宛てたもので弁護人に宛てたも
のではないとして、当該メモの宅下げの申出は拒否された。
そこで、Xは、留置担当官が本件メモの宅下げに応じなかったこ
と(以下「本件拒否行為」という。
)は憲法 34 条前段、刑事訴訟法
39 条1項等によって保障された弁護人等と被疑者との間の接見交通
権(秘密交通権)を違法に侵害する不法行為であるとして、国家賠
償法1条1項に基づき、損害賠償を請求した。
判
旨
控訴棄却
1
本件検査行為は、接見交通権を保障した刑事訴訟法 39 条1項及び書
類の授受の制限を弁護人と被疑者等との間の書類の授受には及ぼさな
いとする刑事訴訟法 81 条に反するか
刑事訴訟法 39 条及び刑事収容施設法 221 条ないし 227 条の規定は、
「憲
法 34 条による保障を受けて、接見交通権の行使と、捜査権並びに刑事
施設内部における規律及び秩序の維持との間の合理的な調整を規定し
たものと解されるから、弁護人の信書の授受に関する権利も刑事収容施
設法の手続によって実現されるというのが刑事訴訟法 39 条の趣旨と解
される。
このように解することは、刑事訴訟法 39 条が、接見については、
『立
会人なくして』と規定していながら、書類若しくは物の授受については、
これと同様に規定していないことと整合する。また、実質的にみても、
接見の際の口頭による意思の伝達、情報提供の場合には、刑事施設側が
施設内の接見室の設備等を整えることにより、施設内部における規律及
び秩序の維持等の目的を達しながら、接見交通権も確保することが可能
であるのに対し、書類の授受による意思の伝達、情報提供の場合には、
当該書類の物理的占有移転を伴うものであり、刑事施設側が書類中に危
険物や禁制品等が混入していないか、さらに、接見等禁止決定がされて
いる場合には、第三者宛ての書類等が混入されていないかを確認する必
要があるところ、その確認は、逃亡及び罪証隠滅の防止並びに刑事施設
内部の規律及び秩序の維持を図る目的で行われるものであり、事柄の性
質上、刑事施設が自らの職責において対処・実現すべきものであって、
接見交通権だけが優先されるものでない以上、接見と書類の授受とを同
一の位置づけのものとして解することは相当とはいえない。したがって、
書類の授受については、たとえ弁護人等との間であっても、合理的な調
整の1つとして、両者に区別を設けることが憲法上禁止されているとは
解されず、そのことと、接見交通権が憲法 34 条による保障を受けるこ
ととが、矛盾・抵触するとも思われない。
そうすると、弁護人等の接見時における被留置者との間の信書の発受
について、必要かつ合理的な制限をすることは憲法 34 条前段により禁
止されるものではない。
」
「上記に説示したとおり、未決拘禁者が弁護人等に発する信書につい
ては、第三者に宛てた書類が混入するなどするため、罪証隠滅のおそれ
がある場合を否定できないし、未決拘禁者の逸脱行為については、弁護
人のような懲戒制度や刑事処分等の制度的保障はない」から、「本件メ
モの宅下げ申出について、1審被告の留置担当官が本件メモが弁護人宛
てであるか否かのみでなく、その発受によって罪証隠滅の結果を生ずる
おそれの有無について検査すること自体は許されるのであり、1審被告
の留置担当官が本件メモの内容を検査することが直ちに刑事訴訟法 39
条1項、207 条、81 条に違反するものではない。
」
2
本件拒否行為の違法性
本件事実関係によれば、「本件メモは、弁護人に宛てた書類として、
法令の制限内において本件被疑者が弁護人と授受をすることができる
書類であると認めるのが相当である。」
「留置担当官が、文書の内容によ
り弁護人宛てか否かを判断することができるとすると、その主観的判断
により被疑者と弁護人との書類の授受が不当に妨げられるおそれがあ
り、刑事訴訟法 39 条1項が弁護人が被疑者と書類の授受をする権利を
認めた趣旨に反することになる。」
本件施設の留置担当官は、「本件メモの発受により罪証隠滅のおそれ
があること又は罪証隠滅の有無を検査中であることを理由に本件行為
をしたのではなく、本件メモの名宛人が弁護人ではなく、家族であるこ
とを理由に本件行為をしたものである。」そうすると、
「本件行為は、そ
の時点では、刑事訴訟法 39 条、刑事収容施設法 222 条、224 条の趣旨に
照らして不相当なものであり、弁護人が被疑者と書類の授受をする権利
(刑事訴訟法 39 条1項)を蔑ろにするものとみられるから、その限り
で」、違法である。
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