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ロシア情勢（2016年8月 モスクワ事務所）
更新日：2016/9/21 JOGMEC モスクワ事務所 黒須 利彦／井戸 智子 公開可 ロシア情勢（201６年 8 月 モスクワ事務所） １．政治・経済情勢 (1)国内 経済・財政 ・ 8月23日、メドヴェージェフ首相は、「2016年の財政赤字はGDPの3％以上になる可能性がある。これ は予測水準よりも高く、政府は予測値を超過しないようあらゆる努力をする」と発言。首相によれば、 予算は油価50ドル/バレルを前提としており、油価がこれを下回れば赤字が増加することになる。現 在の油価平均は約40ドル/バレル。上期連邦予算歳入も計画比11％減であり、通年では1.5兆ルー ブルが不足する見込み。財務省予測では、年金基金歳入も見込みを1,740億ルーブル下回る。 首相は、これらの状況から分かる通り、経済・財政状況は厳しいものであると強調した。また、今年度 2回目となる年金引上げは財源不足により、2017年1月に5,000ルーブルを一回支給することが決定さ れた。これにより2,000億ルーブルの財源が必要となる。2017年の引上げは従来通り2016年のインフ レ率に合わせ、支給する見込み。必要な財源は2,700億ルーブルとされる1。 ・ 8月30日付Vedomosti紙によると、経済発展省はベースシナリオに加えて、2016年および2017～2019 年ベースプラスシナリオを策定したとのこと。ベースシナリオでは、2017～2019年の油価は従来通り、 1バレル40ドルとしているが、ベースプラスシナリオでは、2017年は50ドル/バレル、2018年および 2019年は55ドル/バレルとなっている。予算案については、9月末に予算計画政府委員会で協議さ れる予定。詳細は下表のとおり。 1 Government.ru,2016/08/23 –1– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 経済発展見通し 2016 指標 世界経済成長率（％） 油価（＄/bbl） 対USD為替レート（RUB） インフレ率（％） GDP（兆RUB) GDP成長率（％） 2017 2018 2019 ベース ベース ベース ベース 新シナリオ（8 月） シナリオ 新シナリオ（8 月） シナリオ 新シナリオ（8 月） シナリオ 新シナリオ（8 月） シナリオ （4 月策 （4 月策 （4 月策 ベース ベース ベース ベース （4 月策 定） 定） 定） ベース ベース ベース ベース プラス プラス プラス プラス 定） 3.2 40 67.2 6.5 84.3 -0.2 3 41 67 5.8 82.8 -0.6 3 41 67 5.8 82.8 -0.6 3.4 40 64.8 4.9 89.5 0.8 3.4 40 65 4.9 87.1 0.6 3.4 50 61.1 4.6 88.6 1.1 3.4 40 64.1 4.5 95.4 1.8 3.5 40 64.6 4.4 92.4 1.7 3.5 55 59 4.2 95 2.1 3.4 40 62.7 4 101.4 2.2 3.5 40 64.1 4.1 98.3 2.1 3.5 55 58.7 3.9 101.2 2.4 (出所：Vedomosti) 国営企業の民営化 【Rosneft】 ・ ウリュカエフ経済発展相は、Rosneft の国家保有株式 19.5％の売却について、様々な作業があるた め、「今年度中には間に合わないかもしれない」と発言。政府は Rosneft 株の売却により少なくとも 7,000 億ルーブルの政府収入を見込んでおり、年内に実施されない場合、年末までに予備基金の全 額を支出してしまう恐れがある。一方で、ある政府高官によれば、年内に Rosneft の株式売却が行わ れない場合、財政赤字は拡大するが、許容範囲であり、新たな支出削減の必要はないとのこと 2。 ・ 政府関係者および潜在的投資家によれば、Rosneft の株式購入者に対する条件の一つに、BP との 間で株主間合意契約の締結禁止があるとのこと。政府関係者は、「潜在的な株式購入者は政府との 利害合致に合意することとなっており、そのような合意事項の必要性も理解できる」とした 3。 ・ 中国石油天然気集団(CNPC)の王董事長は、同社が Rosneft 株式を購入する条件の一つは、同社の 経営に参画すること、すなわち、少なくともRosneftの取締役会に中国企業の代表が入ることだと発言 した 4。 【Bashneft】 ・ 8 月 10 日、経済発展省は、Bashneft の民営化の方法に関する提案書を政府に提出したと発表した。 省庁関係者によると、経済発展省は国有株を市場ではなく、競売で戦略投資家に売却するよう提案 したとのこと。また、潜在的な応札者に対して以下のような条件の提示を提案している。 2 Vedomosti,2016/08/05,08/07 3 Kommersant,2016/08/9 4 Itar-Tass,2016/08/16 –2– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ロシアに法人登録されていること 税務負債がないこと 2015 年の売上高が 100 億ルーブルを上回っていること 国営銀行から買収資金を借り入れないこと 連邦反独占局から買収の認可を受けること Bashneft の発展戦略を策定すること 競売開始価格の 10％前払い金として支払うこと Bashneft 民営化には Rosneft、Lukoil、Antipinsky Oil Refinery、Independent Petroleum Company、 Tatneft、Tatneftegaz、ユスホフ氏の投資ファンド「エネルギヤ」およびロシア直接投資基金が関心を 表明しているが、上記条件が承認された場合、Tatneftegaｚは 2015 年の売上高が 2,980 万ルーブル しかないことより、参加出来ないことになる。専門家は、ロシアにおける法人登録および売上高に関 する要件は外国企業を除外するために設定されたと指摘しているが、外国企業は、今のところ Bashneft の株式取得に関心を示していない。Ernst&Young の評価によると、政府保有株式50.08％の 市価は 3,060 億ルーブル。過去 3 ヶ月間の加重平均株価に 19％のプレミアムが付いたことになる 5。 ・ Bashneft の普通株式の 60.16％（定款資本の 50.08％）を対象とする民営化が延期されることになった。 首相報道官は「首相が延期の決定を下し、大統領がその決定を支持した」と延期を認めている。年内 の民営化はなく、Rosneft の民営化の後になると見られている。延期の理由として、①市況の低迷② 同時期に Rosneft 株式 19.5％の売却が予定されていること③バシコルトスタン共和国ハミトフ大統領 からの延期要請が挙げられている。同大統領は、十分な自己資金を保有しない会社（Independent Petroleum Company、Tatnefｔegaz、Rosneft など）が融資金を元に購入した場合、LBO 方式となり、借 入金負担を Bashneft に転嫁するのを懸念しているとのこと。なお、有力候補の Lukoil は十分な自己 資金を保有するが、これに反対する勢力がある。Rosneft のセチン社長は、「Lukoil に売却するため に、Bashneft の再国有化が行われたわけではない」と、プーチン大統領に訴えていた。一方で、政 府内には国有企業による株式取得に激しく反対する勢力がある。 経済発展省の広報は、本来であれば、今週中に政府が Bashneft 株の売却に関する決定を行い、 10 月に民営化が予定されていたことを明らかにした。省庁高官は、「民営化の遅延により国の貯金 （準備基金と国民福祉基金）はより早期の段階で枯渇することになるであろう。準備基金については、 5 Vedomosti,,2016/08/11,Interfax,2016/08/04 –3– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 確実に年内に枯渇するであろう」と語った 6。 その他 ・ 8 月 12 日、プーチン大統領は旧知の側近として知られたイワノフ大統領府長官を解任し、アントン・ ワイノ副長官を後任に任命した。イワノフ氏は、環境保護、環境・運輸担当の大統領特使となる。 ワイノ氏は 1972 年エストニア生まれの 44 歳で、英語と日本が話せる。1996 年～2001 年に在京ロシ ア大使館に勤務。2007 年に連邦政府官房次官、2012 年に大統領府副長官に任命された 7。 【イワノフ大統領前長官（左）、プーチン大統領（中央）ワイノ新長官：上写真出典 http://en.kremlin.ru/events/president/news/52691/photos/45215,45219 】 ・ 8 月 26 日、プーチン大統領は、リオ五輪のロシア代表選手たちをクレムリンに迎え勲章を授与した。 ロシアは、今大会で約 100 人の選手が出場を禁止されたが、56 個のメダルを獲得した。内訳は金メ ダル 19、銀メダル 18、銅メダル 19。 【上写真出典：http://en.kremlin.ru/events/president/news/52765/photos/45272,45275 大統領（左）ラマノフ・レスリングフリースタイル金メダリスト（右）】 6 Vedomosti,2016/08/16 7 Kremlin.ru,Kommersant 他,2016/8/12 –4– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ・ レヴァダ・センターが実施した米国大統領選挙でどちらの候補者の勝利がロシアにとり、好ましいか との調査に対し、ロシア国民の 35％がトランプ候補、13％がクリントン候補、52％が答えるのが難しい とした。オバマ大統領に対する評価については、７％が肯定的、55％が否定的、10％は答えるのが 難しいとの結果（2011 年の調査では、55％が肯定的、21％が否定的と回答）。また、ドイツのメルケル 首相に対する評価は、15％が肯定的、68％が否定的、17％がどちらとも言えないとした（2011 年調 査では、60％が肯定的、12％が否定的と回答）。ウクライナのポロシェンコ大統領に対する評価は 5％が肯定的、87％が否定的、8％が答えるのが難しいとした（2014 年調査では、肯定的が 13％、否 定的が 40％と回答）8。 (2)対外関係 ①トルコ ・ 8 月 9 日、トルコのエルドアン大統領は、ロシアのサンクトペテルブルグを訪問。昨年 11 月 24 日のト ルコによるロシア軍機撃墜後、初めてプーチン大統領と会談した。会談後、あらゆる分野において、 両国の関係を段階的に正常化していくことが発表された。具体的には、二国間協力事業であるアック ユ原子力発電所およびガス P/L「Turkish Stream」の再開が決定した。ノバク・エネルギー相は、10 月 には第一系列の建設に関する政府間合意を締結し、2019 年後期には建設が完工するとの見通しを 示した。エルドアン大統領は、トルコは同 P/L が同国領内を通過してからの建設費用の 50％を負担 する用意があると述べている 9。 【プーチン大統領（左）エルドアン大統領（右） ：上写真出典http://kremlin.ru/events/president/news/52671/photos/45171,45172 】 8 Interfax,2016/08/24 9 Kremlin.ru,Vedomosti 他,2016/08/09 –5– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ②ウクライナ ・ 8 月 10 日、ロシア連邦保安庁（FSB）は、ウクライナ軍特殊部隊の工作員がクリミアで計画していたテ ロ攻撃を阻止したと発表した。阻止する過程で、ロシア軍兵士と FSB 職員の 2 名が死亡したことを明 らかにした。プーチン大統領は愚かな犯罪行為と批判。一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は、 「クリミアでのテロ行為を行ったというロシアの声明は荒唐無稽であり、ウクライナに対する次なる軍事 的威嚇のための口実に過ぎない。ウクライナはテロリズムを断固として非難しており、従って、クリミア に奪還に関しては、政治・外交的方策を取り、テロ的な方策を行うことはない」と強調した 10。 ２．石油ガス産業情勢 (1)原油・石油製品輸出税 ・ 2016 年 8 月、原油輸出税は USD 12.3/bbl に引き下げ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等 に対しては、引き続きゼロ課税となった。 ・ 8 月の石油製品輸出税は USD 36.0/t、ガソリンについては USD 63.9/t に設定された。 ＜参考：原油及び石油製品輸出税の推移＞ 輸出税 原油（USD／t） 2012 年 平均 404.3 2013 年 平均 392.2 55.4 53.7 199.2 27.3 266.8 363.8 190.1 26.0 258.8 353.0 原油（USD／BBL） 減税特典原油（USD／t） 減税特典原油（USD／BBL） 石油製品（USD／t） 内、ガソリン（USD／t） 2014 年 平均 366.1 50.2 2015 年 平均 120.3 16.5 2016 年 上半期 61.1 8.4 2016 年 8月 90.1 12.3 174.9 24.0 242.0 330.0 0 0 57.7 92.7 0 0 24.4 43.3 0 0 36.0 63.9 （出所：ロシア経済発展省） (2)原油生産・輸出量 ・ 8 月、原油、ガス･コンデンセート生産量は 4,530.9 万 t（約 3.3 億 bbl）で、前年同月比 0.1％増 11。 1～8 月の生産量は 3 億 6,125 万 t（約 26.4 億ｂｂｌ）で、前年同期比 1.9％増 12。 10 Lenta.ru,2016/08/10,Vedomosti,2016/08/11 11 Interfax,2016/09/02 –6– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ・ 8 月、原油輸出量は 1,940 万 t（約 1.4 億 bbl）で、前年同期比 1.8％減 13。 1～8 月の原油輸出量は 1 億 6,820 万 t（約 12.3 億ｂｂｌ）で、前年同期比 5％増 14。 (3)天然ガス生産・輸出量 ・ 8月、天然ガス生産量は453億㎥（約1.6TCF）。1～8月の生産量は3,977億㎥（約14.31TCF）で、前年 同時期比0.8％減15。 (4)税制 ・ 8 月15 日付Kommersant 紙は、石油会社は新規プロジェクトの鉱物資源産出税の特典の適用期間の 延長を希望しており、エネルギー省がそれに応じ、税法典の改正案を作成したと報じた。現在は、特 典の適用期間は鉱床ライセンスの登録日から開始となるが、エネルギー省は、生産開始後に特典を 付与することを提案している。財務省は、予算収入の減少を危惧し反対しており、天然資源・環境省 は、この案が採択された場合、鉱床開発期間が長引く可能性があることより慎重な姿勢を示している とのこと。 ・ 財務省の情報筋は、税制改正案の策定が終わったことを明らかにした。財政赤字の穴埋め策として 石油ガス分野に対して増税を行う方針。2017 年からの鉱物資源産出税の増税により、追加でガスプ ロムからは 1,700 億ルーブル、石油分野からは 1,500 億ルーブルをそれぞれ徴収する内容 16。 ・ 8 月 23 日付 Kommersant 紙は、エネルギー省から入手した資料を元に、同省が Gazprom Neft の Novoportovskoye 鉱床および Surgutneftegas の Alinskoye 鉱床で生産される原油に対する輸出税の 免税措置を廃止することを提案したと報じた。現行法では、鉱床の内部収益率が 16.3％に達するま で免税となるが、同省は、Novoportovskoye 鉱床が 4 月 1 日、Alinskoye 鉱床が 7 月 1 日に内部収益 率 16.3％を達成したと見ており、今後、両鉱床には通常の輸出関税が適用されることになる。9 月の 12 Interfax,2016/09/02 13 Tass.ru,2016/09/02 14 Tass,2016/09/02 15 Interfax,2016/08.02 16 Vedomosti,2016/08/25 –7– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 原油輸出税は 80 ドル/ｔ17。 （５）オークション ・ 天然資源・環境省は、石油埋蔵量 1 億トン超の Erginskoye 鉱床のライセンスのオークションを 8 月か ら 10 月に延期した。ロシア直接投資基金（RDIF）のドミトリエフ総裁が 3 月に、「落札者はアラブ首長 国連邦のムバラダ開発（RDIF が共同で 2013 年にコンソーシアムを設立）をプロジェクトに参加させる 義務を負う」という項目をオークションの条件に加えることをプーチン大統領に要請したことが延期の 理由とされる。一方、ドンスコイ天然資源・環境相は、実施方式を規定した政府令の変更を行わない ことをプーチン大統領に要請した。ある情報では、フロポニン副首相は、政府指令に変更を加えな いという方針を既に承認しているとのこと。天然資源・環境省の広報は、特別な条件を付ければ、オ ークションにおける競争の制限につながり、反独占局の批判を受ける可能性があることを危惧してい ると説明。オークションの開始価格は 53 億 5,000 億ルーブル。多くの企業が関心を示しており、価格 は大幅に上がる可能性があるとのこと 18。 ３．ロシア石油ガス会社の主な動き (1)Rosneft ・ 8 月 2 日付 Vedomosti 紙は、インドの ONGC Videsh Ltd.(OVL)が Rosneft が保有する Tagulskoye 鉱床の権益49％の取得を検討していると報じた。取引額は 10 億ドル以上になる可能性がある。天然 資源・環境省の広報は、「プロジェクトのマイノリティとしての参入であることに加え、同鉱床は連邦的 意義を有する鉱床ではない為、情報は入ってきていない。ただ、我が省は、地質探査への投資を想 定するプロジェクトへの外資の参加を歓迎する」と語った。 Tagulskoye 鉱床はクラスノヤルスク地方の北極圏内に所在し、パラフィンを多く含む多数の貯留層で 構成される複雑な構造で知られている。2016 年初頭時点の可採埋蔵量（ABC1+C2）は石油・ガスコ ンデンセートが 2 億 8,600 万トン、ガスが 2,280 億㎥。2016 年内に約 10 本の坑井を掘削する計画。 ・ Rosneft は、イルクーツク州の Verkhneichersky ライセンス鉱区において、推定埋蔵量は石油換算 2,500 万トンの新規鉱床を発見したことを発表した。同鉱区の Nizhneustkutsky 層準の探鉱井で日産 17 Prime,2016/08/23 18 RBC Dairy,2016/08/02,Kommersant,2016/08/18 –8– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 230㎥のオイルフローがあった。同層準の原油の可採埋蔵量は推定で1,000 万トン。同社は、今回発 見した鉱床における炭化水素埋蔵量の事業性評価の準備を進めている。同鉱床のオペレーターは Verkhnechonskneftegaz (VCNG)で、開発は North-Danilovsky 油ガス田および Verkhnechonsky 油ガ ス田のインフラを利用して行う予定。同社はイルクーツク地方において、Verkhneichersky を含む 10 のライセンス鉱区で地質調査のオペレーターをしている。Verkhneichersky 鉱区のライセンスは 2007 年のオークションで取得。同鉱区は Ust-Kut の北東 250km、ESPO P/L から 90km 東に位置する。オ ークション時の D1 資源量は石油 5,000 万 t、ガス 900 億㎥ 19。 ・ 8 月 15 日、Rosneft は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通り。 売上：前年同期比 14.2％減の 2 兆 2,800 億ルーブル EBITDA：前年同期比 7.3％減の 6,210 億ルーブル 純利益：前年同期比 45.8％減の 1,030 億ルーブル CAPEX：第 2 四半期の投資は第 1 四半期と同レベルの 1,540 億ルーブル ・ Rosneft は、9 月からクラスノヤルスク地方の Suzunskoye 油ガス田で生産を開始する。2017 年の原油 生産計画量は 450 万 t。同油ガス田は Vankor 鉱床群の一部であり、PRMS 準拠の 2015 年後半時点 での炭化水素埋蔵量は推定で 5 億 7,000 万バレル石油換算（boe）。一方、ネネツ自治管区の Naulskoye 鉱床の稼働開始は、当初予定の 2016 年第3 四半期から第4 四半期に先送りした。同鉱床 での2017年の生産量は約石油換算40万トンとなる見込み。埋蔵量は推定でC1:3,886万9,000トン、 C2：1,231 万 7,000 トン、C3：338 万 3,000 トン 20。 （2） Lukoil ・ 8 月 29 日、Lukoil は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通り。 売上：前年同期比 13.7％減の 2 兆 5,166 億 3,300 万ルーブル EBITDA：前年同期比 8.6％減の 3,815 億 6,300 万ルーブル 純利益：前年同期比 37.2％減の 1,053 億 9,200 万ルーブル CAPEX：前年同期比 20.8％減の 2,414 億 4,700 万ルーブル 炭化水素生産量：前年同期比 4.3％減の 4 億 1,110 万 boe、日量 230 万 boe 19 Interfax,,Neftegaz.ru,.2016/08/15 20 Interfax,2016/08/17 –9– Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 (3)Gazprom ・ 8 月 29 日、Gazprom は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通り。 売上：前年同期比 5％増の 3 兆 643 億 7,200 万ルーブル 純利益：前年同期比 9.5％減の 6,254 億 500 万ルーブル ガスの純売上：前年同期比 8.4％増の 1 兆 7,552 億 7,100 万ルーブル 内訳 ①欧州およびその他の諸国：前年同期比 19％増の 1 兆 1,282 億 7,100 万ルーブル、輸出量 同 36％増（290 億㎥）の 1,094 億㎥ ②旧ソ連諸国：前年同期比 27.4％減の 1,666 億 2,100 万ルーブル。輸出量同 21.5％減（45 億㎥）の 164 億㎥ ③国内：前年同期比 1.1％減の 4,203 億 9,500 万ルーブル。輸出量同 8.6％減（103 億㎥）の 1,097 億㎥ （4）Gazprom Neft ・ 8 月 25 日、Gazprom Neft は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通 り。 売上：前年同期比 4％減の 7,710 億 7,700 万ルーブル EBITDA：前年同期比 1.8％増の 6,210 億ルーブル 純利益：前年同期比 19.5％減の 903 億 9,500 万ルーブル 生産量：前年同期比 10.2％増の石油換算 4,180 万トン (5) Bashneft ・ 8 月 29 日、Bashneft は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通り。 売上：前年同期比 7.6％減の 2,731 億 2,700 万ルーブル EBITDA：前年同期と同水準の 619 億 5,000 万ルーブル 純利益：前年同期比 0.1％増の 292 億 6,700 万ルーブル CAPEX：前年同期比 38.4％増の 381 億 4,500 万ルーブル – 10 – Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 石油生産量：前年同期比 10.9％増の 1,058 万トン （6）Transneft ・ 8 月 29 日、Transneft は上半期の財務報告書（IFRS 基準）をプレスリリースした。概要は以下の通り。 売上： 前年同期比 2.5％増の 4,174 億ルーブル EBITDA：前年同期比 5.8％増の 2,078 億ルーブル 純利益：前年同期比 12.3％増の 1,345 億ルーブル 輸送量：原油・・・前年同期比 0.3％減の 2 億 3,880 万トン、石油製品・・・前年同期比 6.8％増 の 1,720 万トン （7）Zarbezhneft ・ Zarbezhneft Production Khariyaga (Zarubezhneft の子会社)は、Total Exproration Development Russia （Total の子会社）から KhariyagaPSA 事業の権益20％を取得し、同プロジェクトのオペレーターとなっ た。取引額は公表されていないが、Interfax 紙は Total の財務報告から 8,000 万ドルと推計。 権益比率：Zarubezhneft 20%、Zarbezhneft Production Khariyaga20％、Statoil30%、Total Exproration Development Russia20％、Nenets Oil Company10%21。 ４. 東シベリア・極東・サハリン情勢 (1) 東シベリア ・ Transneft は、Zapolyarye-Purpe P/L のライン部分のオイルフィルを完了した。9 月初旬には、原油の 粘性や 物理的・ 科学的性状を 考慮し なが ら P/L 全体の 試運転を 行う た めに 、Lukoil の Pyakyakhinskoye 鉱床から最初の原油の受け入れを予定している。10 月末まで設備、および全体の システムのテストを行った後、11 月に操業を開始する予定 22。 (2) 極東 ・ 8 月 3 日付 Vedomosti 紙は、英 Skyland Petroleum がヤクーチアの石油ガス資産を買収する意向を 21 Ru.Total.com,Kommersant,2016/08/01 22 Interfax,2016/08/19 – 11 – Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 示したと報じた。取引相手は非公表であるが、同社が公開した取得予定の鉱区情報に基づき、スマ・ グループ傘下のヤクート燃料エネルギー会社が保有するミールニンスキー鉱区が買収対象であると されている。ライセンスホルダーはヤクート燃料エネルギー会社の子会社の Mirnyneftegas。鉱区面 積は 2,452km2。Machchobinskoye、Mirninskoye、Nerbinskoye および Severo-Nelbinskoye の 4 つの 鉱床が発見されている。2016 年 1 月 1 日時点の C1+C2 の可採埋蔵量は石油とガスコンデンセート が 9,680 万バレル、ガスが 286 億㎥。 Skyland Petroleum は、2015 年に Rosneft から Taas-Yuryakh Neftegazdobycha の株式を最大で 29％ 買収することで基本合意したと報道されたが、Rosneft は今年 3 月にインド企業コンソーシアムと法的 拘束力のある合意書に調印したことを発表している。 ５．新規 LNG・P/L 事業 (1) ESPO ・ 中国石油天然気集団（CNPC）は8月16日、ESPO P/Lの大慶支線の拡張工事の開始を発表した。 総延長は、漠河（モヘ）から大慶までの940km、年間送油能力は1,500万トン。2017年10月末までに建 設を完了し、2018年1月1日から商業稼働開始の予定23。 (2) Yamal LNG ・ Yamal LNGは8月17日、2016年7月に中国開発銀行と中国輸出銀行の与信枠で560億7,000万ルーブ ルを借り入れたことを発表した。当該借入はユーロと元で実施されており、約7億7,500万ユーロに相 当する。同社は、6月29日に中国の銀行から最初の借入金4億5,000万ユーロの払い込みを受けたこ とを発表しているので、現時点での中国の銀行からの借入額は12億ユーロとなる24。 (3) Nord Stream 2 ・ ポーランドの反独占局は、Nord Stream 2に関する合弁企業設立申請を却下された6社（Gazprom、 Engie、OMV、Shell、 Uniper、Wintershall）がその申請を取り下げたことについて、6社による合弁設 立が不可能となったことを意味し、Nord Stream 2プロジェクトには赤信号がついたとコメント。6社は、 23 Angi.ru,2016/08/18 24 Neftegaz.ru,2016/08/17 – 12 – Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 「先に現在100％Gazprom管理下のNord Stream 2 AG（スイス登記）が予定通り同プロジェクトを実現 する。各社が独自にプロジェクトへの出資の可能性を模索する」との共同声明を発表し、ポーランド 当局の合意無しに進める意思を明らかにしている25。 ・ ラブロフ外務相は、講演の中で、Nord Stream 2ガスP/Lは欧州における開かれたガスインフラ建設と いうEUの目的や課題と一致しており、ロシアが同プロジェクトの政治化を望まないと語った26。 (4) South Stream ・ 8月5日、ブルガリアからの要請でプーチン大統領はブルガリアのボリソフ大統領と電話会談を 行った。エネルギー分野に関する共同プロジェクトの実施に関し、ワーキンググループの創設 等について協議したとのこと。両者は、South StreamおよびBelene原子力発電所の協議再開で合 意した模様27。 以上 25 Interfax,2016/08/12 26 Kommersant,2016/08/15 27 Regnum.ru,2016/08/05 – 13 – Global Disclaimer（免責事項） 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構（以下「機構」）調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。