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プランクトンを観察しよう

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プランクトンを観察しよう
プランクトンネットの作製
1
課題
新学習指導要領の実施により、小学校では、メダカの餌生物として、プランクトンの観
察が新たに加わった。中学校、高等学校では、顕微鏡を使った最初の実験観察においては、
生きた微生物を観察できるという点からプランクトンは最適の材料である。しかし、市販
のプランクトンネット(図1)や柄付プランクトンネット(図2)は高価であり、必ずし
も学校にあるとは限らない。そこで、100 円ショップで手に入るものを使ってプランクト
ンネットを自作する方法を考えた(図3)。
図1 プランクトンネット
2
(1)
図2 柄付プランクトンネット
図3 自作ネットの原理
作り方
野外で使うプランクトンネット1号
ア 材料
ナイロンストッキング(ひざ下)、フイルムケース(カメラ屋で手に入る)
重り(鉛か石)、輪ゴム、刺しゅう枠、Wクリップ、ナイロン糸
イ 手順
(ア) 刺しゅう枠で開口部を作る。
ストッキングの開口部を内側の枠の中から通して、外側に1回折り返す(図4)。
図4 刺しゅう枠を 1 回くぐらせると見えてくるプランクトンネット 1 号の全景
(イ) ストッキングの中に重り(鉛か石)
を入れ、次にフイルムケースを入れ
て、プランクトンが集まるバケット
部を作る(図5)。
(ウ) (イ)のバケット部を固定するため
に、輪ゴムでしっかりとめる(図5)。
図5
バケット部を輪ゴムで固定
※ もし、管びんがあれば、ふたをはずして、輪ゴムで止めると重りがいら
ないバケットになる(図6)。
図6 バケット部に管びんを使ったタイプ。びんそのものが重りにもなる。
(エ) 刺しゅう枠(外側)をWクリップ4つではさみ、ナイロン糸で牽引部を作る。
※ ナイロン糸をまとめる所には、壊れたキーホルダーなどをリユースすると便利で
ある(図7)。
(オ) 刺しゅう枠(内側)を(エ)の刺しゅう枠(外側)ではさむとできあがり(図8)。
図7 キーホルダーに糸を縛り付けると便利
図8 完成したプランクトンネット 1 号
※ 金具(Wクリップ、キーホルダー)は錆びるので、使わないときには
はずしておく。金具をはじめから使わなくてもよいが、使っている途
中で、ナイロン糸がずれてくるので、注意が必要である。
(2)
採水してきたものをろ過して使うタイプのプランクトンネット2号
ア 材料
ナイロンストッキング、ペットボトル(大)、フイルムケース、輪ゴム
(管ビンがあれば、そのままバケット部に利用してもよい。)
イ 手順
(ア) ペットボトルの口から 10cmぐらいの
ところを切り離す。
(イ) ストッキングの中にフイルムケースを
入れて輪ゴムで固定し、バケット部を作
る。
(ウ) ストッキングをペットボトルの口から
通して、折り返せばできあがり。
図9 ペットボトルとストッキングで
作ったプランクトンネット2号
3
プランクトンネット使用上の留意点
(1) ネットに付着したプランクトンを完全に回収する方法
野外で使うプランクトンネットは、水中をろ過したときには、ネットにプランクトン
がたくさん付着している。プランクトンをなるべくバケット部に回収するために、引き
上げる直前に、2、3度プランクトンネットを水面で上下させるとよい。
※ プランクトンネット2号で、校内の
水槽にわいたミジンコを採集する
場合には、開口部からミジンコがい
る水を注いだ後、外側から水道水を
ホースでかけてやるよい。ネットに
残ったプランクトンがほとんどバ
ケットに回収される(図 10)。
図 10
ネットに付着したプランクトンを全部バケットに回収
(2) バケットのプランクトンを簡単に管びんに回収する方法
バケットにたまったプランクトンを管びんに回収するには、プランクトンネットをめ
くって(図 11)、上から管ビンをバケットに装着し(図 12)、ひっくり返す(図 13)
と、簡単に管ビンに回収できる(図 14)。
図 11 プランクトンネットをめくる。
図 12 上から管びんを装着する。
図 13 バケットと管びんをひっくり返す。 図 14 プランクトンが管びんに回収される。
(参考資料)
プランクトンの教材化
1
まれに見るほど豊かな海:瀬戸内海
愛媛県は、海面漁業・養殖業生産額において国内第3位の水産県である。天然の好漁場
であるリアス式海岸の宇和海。瀬と灘が絶妙のバランスで存在し、地中海の20 倍の漁業
生産量を誇る瀬戸内海。愛媛県は、世界的に見てもまれに見るほど豊かな海に囲まれてい
る。
ところが、今、地球温暖化の影響であろうか、海水温が上昇し、宇和海では、これまで
冬には見られなかったミズクラゲが越冬する様子が観察されている。瀬戸内海でも捕れる
魚種が変わってきていると言われている。
愛媛の理科(生物)教育によって、郷土の豊かな海について興味関心を持ち、そのすばら
しさを伝えていくことができれば幸いである。
2
プランクトンとは
海を見て、きれいだなというときには、その透明度を指していると思われる。ごみがな
いこともあるかもしれないが、きれいな海にも、実はたくさんのプランクトンが存在して
いる。そして、このプランクトンの量が海の豊かさを決めているといっても過言ではない。
逆に、富栄養化によって、植物プランクトンが大量発生したのが赤潮である。
いずれにしても、見ようと思わなければ、気づかないようなところで生態系の中で重要
な働きをしながら存在しているのがプランクトンなのである。
※
水中生物(動物)を3つに分類すると
① ネクトン・・・・普通に泳ぐ魚たち。海流に逆らって泳ぐことができるだけの
遊泳能力を有する動物。
② プランクトン・・浮遊生物と訳す。潮流に逆らって泳ぐほどの遊泳能力をもた
ない動物。マンボウ(3m以上あるものもある)やエチゼン
クラゲ(笠が1m以上にもなる)も巨大プランクトンである。
③ ベントス・・・・底生生物と訳す。ゴカイやウニ、アサリやハマグリなどのよ
①
②
うに、海底の砂や泥にすむ動物。
※
ちなみに、ウミホタルは、昼間、砂の中にじっとしていて、夜になると砂から
はい出して餌をあさる生物なので、プランクトンというよりベントスと言える。
<海洋プランクトンの一例>
背中の育房に卵が見える
<淡水の水槽でよく見られるプランクトン>
ミジンコ
育房に赤ちゃんがいるミジンコ
ケンミジンコ
カイミジンコ
瀬戸内海で見られるプランクトン
ウミケンミジンコ:綺麗な形をしている。右は卵を抱えている。コヒゲミジンコ(上)とオヨギソコミジンコ(下)
コヒゲミジンコ:たくさん採れるカイアシ類、右は上から光を当てた。
底生性のウカレソコミジンコ
メガネケンミジンコ:胸部にある1対の緑のラインと頭部にある1対のレンズ状の大きな眼が特徴。
ミナミヒゲミジンコ(3mm)
カギアシケンミジンコ
底生性のシオダマリミジンコ
<海産の枝角(ミジンコ)類について>
淡水域では、動物プランクトンの主役はミ
ジンコ類であるが、海中では、カイアシ類で
ある。淡水産ミジンコ類は 100 種以上知られ
ているが、海産ミジンコ類は8種類である。
ウスカワミジンコ
トゲナシエボシミジンコ
カイアシ類の幼生
カニ類のゾエア幼生
多毛類の mitoraria 幼生
クモヒトデのオフィオプルテウス幼生
二枚貝のベリジャー幼生
オタマボヤ
<渦鞭毛藻類>
夜光虫:海に石を投げると青白く光る。夜船に乗っている時、
舳先が輝ているのを見たら夜光虫である。大量に発生し、赤潮
を形成すると、ケチャップのような鮮やか赤色になるが毒性
オオスケオビムシ:夜光虫と同じ鞭毛藻類に属
する。名前のとおり、植物性ではあるが、
鞭毛で泳ぎ、捕食する。
が特徴であ少ない。
タマウキガイ
トゲナシウキガイ
両者とも、有孔虫類である。石灰質の殻で覆われている。
光を上から当てて観察すると宝石のよう
に輝いている植物性のプランクトン。海中
お土産でよく見かける「星の砂」は、大昔に底生の有孔虫
ではケイ藻類が主役であり、別名「海の牧
の一種が化石となったものである。
草」と呼ばれる。
3種とも学名 Cosinodiscus
の仲間(左と中はタイココアミケイソウ): シャーレ(ディスク)を重ねたような構造を
している。このシャーレのような殻はガラスと同じ成分で、非常に堅い。海水中を浮遊するケイ藻類のほとん
どが、このように上下からシャーレを重ねたような構造を持つ円心目である。
オオクサリケイソウ:
サスマタツノケイソウ:
ハシゴケイソウ:
円筒形の細胞が小骨のよう
円筒形の細胞がつながる。
アーチを描いて曲がった群体
な細い連結糸でつながって
を形成する。
群体を形成している。
Bidulphia obtuse
Triceralium sp.
Bacteriastrum sp.(左写真上と右写真左はサキワレトゲケイソウ)
カサボネケイソウ:Corethron
sp.
イカリツノモ:渦鞭毛藻類。通常は1細胞
風車のように見える植物プランクトン(左)。右はそれを横から
で出現するが、数細胞が連なって
見た写真である。どちらも Bacteriastrum の仲間である。
群体を形成することもある。
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