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325号 - 結核予防会

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325号 - 結核予防会
〔第7回人間開発グローバル会議開催〕
平成20年11月17日から21日まで5日間,岐阜県高山市においてICA文化事業協会および
ICAインターナショナル主催による「第7回人間開発グローバル会議」が開催され,結核
予防会も参加し,結核研究所の国際研修事業をPRしました。(関連記事9ページ参照)
松田岩夫 ICA会長による主催者挨拶
全世界ICA加盟31カ国から参加者が集まった
10テーマのグループに分かれて問題解決を探っていった
問題と解決策を列記し整理
さまざまな意見が集まって,具体的宣言の準備
会議の最後10の分科会参加者が壇上で宣言発表
Message 年頭のごあいさつ
厚生労働省健康局長
上田 博三(うえだ ひろぞう)
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
昨年7月,厚生労働省健康局長に就任いたしまし
た。昨年は,財団法人結核予防会をはじめとした関
係者の皆様には,結核対策の推進に御尽力いただき,
心より感謝申し上げます。
さて,我が国の結核を取り巻く状況をみますと,
昭和26年の結核予防法制定以来,官民一体となっ
た取組により,結核患者数が大幅に減少するなど,
飛躍的に改善してまいりました。
しかし,現在においてもなお,年間約2万5千人
の新規結核患者が発生するなど,結核は,依然とし
て我が国の主要な感染症であり,特に近年では,多
剤耐性結核菌の発生,患者の高齢化,都市部での問
題等,新たな課題がみられます。
また,2006年,世界では新たに約920万人
が結核を発症し,約170万人が結核により死亡し
たと推定されるなど,結核はいまだに世界最大レベ
ルの感染症であり,国内対策はもとより,国際的な
協力も求められております。
このような中,昨年,我が国において,「第4回
アフリカ開発会議(TICADⅣ)」及び「北海道
洞爺湖サミット」が開催され,結核対策を含む感染
症対策について活発な議論がなされました。
また,「第6回WHO西太平洋地域結核制圧技術
諮問会議」が東京で開催され,結核をめぐる国際的
な課題について議論され,その後に開催された「国
際結核シンポジウム」において,厚生労働省,外務
省,JICA,財団法人結核予防会,ストップ結核
パートナーシップ日本の5者により,「ストップ結
核ジャパンアクションプラン」が発表されました。
このように,我が国が関係団体と連携して国際的な
結核対策に取り組んでいくことを表明するとともに
国際的な連携強化を呼びかけたことは,大変意義の
あることと考えております。
厚生労働省としましては,結核の克服という大き
な目標に向け,地方自治体や関係団体の皆様と連携
を図りながら,国内外の結核対策を一層推進してま
いります。そのためには,財団法人結核予防会を始
めとする関係者の皆様の御活動が極めて重要となり
ますので,引き続き,皆様におかれましては,格別
の御支援,御協力を賜りますよう,お願い申し上げ
ます。
終わりに,財団法人結
核予防会並びに関係者の
皆様方のますますの御活
躍と御発展を祈念いたし
まして,年頭のご挨拶と
させていただきます。
Contents
■年頭のごあいさつ
上田 博三……1
■新春ご挨拶2009
蒔本 恭・丸瀬 和美・川島 霞子……2
■お知らせ 第60回結核予防全国大会開催要領(案)
……3
■第67回日本公衆衛生学会報告
○少子高齢化社会における公衆衛生活動∼その理念と実際∼
岩本 治也……4
○結核集団発生の対策は今
桑野 隆史……5
■ストップ結核パートナーシップ
○シンプルisベスト?大胆不敵の10%宣言!!
鈴木 幹久……6
■ストップ結核パートナーシップ日本総会 講演
「結核対策とのかかわり−これまでとこれから− ……8
■第7回人間開発グローバル会議開催
……9
■お知らせ 平成21年3月5日・6日 国際結核セミナー・世界結
核デー記念セミナー・全国結核対策推進会議
……9
■DOTS 福岡県久留米保健福祉環境事務所における
DOTS事業の取り組みについて
大村 美穂……10
■創立70周年を迎えるにあたって(5)最終回
結核予防会各施設のこれからの役割
青木 正和……12
■健康日本21全国大会に初出展 −「肺年齢体験ブース」−
……14
■「元気!2008」にNPO J-BREATHと共同出展
−肺年齢体験ブース−
……15
■IUATLD報告 ○第39回国際結核肺疾患連合会議に参加して 西山 裕之・山田 紀男……16
○国際結核肺疾患連合会議報告
下谷 典代・大室 直子・安藤 宣孝……17
■ノルウェースタディツアー報告
鎌田 有珠……18
■WHOたばこ対策部長ベッチャー博士来会!
……19
■カンボジアスタディツアー団長報告
須田 勝吉……20
■たばこ 女性の喫煙が胎児に及ぼす影響について(後編) 望月 博之……22
■日本医師会「禁煙に関する声明文」について
内田 健夫……24
■ずいひつ 国際選挙に思う
西山 正徳……25
■新型インフルエンザ対策シンポジウム報告 日本におけるパンデミック
インフルエンザ対策 世界保健機関(WHO)の提案
……26
■結核予防会支部紹介のページ 島根県支部 田代 收……27
■思い出の人を偲んで 小島貞夫さん 小林 義雄……28
■結核予防会本部事業所から
▽「複十字」掲載主要論文・記事一覧
……30
▽予防会だより
……31
●切手にみる結核 8.結核に悩んだ文学者たち(日本・中
国編 Ⅱ)
〔表紙〕「空からみた富士山」
(甲府上空,航空機内より見た富士山)
撮影者:堀川 春男氏
〔カット〕佐藤奈津江
1/2009 複十字 No.325
1
新春ご挨拶 2009
危機の時代を迎えて
結核予防会長崎県支部長
(長崎県健康事業団理事長) 蒔本 恭
新年あけましておめでとうございます。
昨年6月に,長崎県支部長に就任し,初めての
新春を迎え,あらためて身が引き締まる思いをい
たしております。
今,世界は未曾有の金融危機のなかにあり,日
本経済も底無し沼のように景気後退が続いていま
す。
一方,私ども健診機関にとりましては,医療制
度改革に伴う特定健診が,昨年4月にスタート致
しましたが,多くの問題を抱え,混乱状態が今も
続いています。
特に実施主体の変更で被扶養者の方々の多くが
特定健診を受診できず,いわば「健診難民」が発
健診事業運用の
転機を迎えて
結核予防会全国支部事務局協議会会長
(結核予防会鳥取県支部事務局長) 丸瀬 和美
新年あけましておめでとうございます。
平成20年度は,「高齢者医療確保法」に基づ
く特定健康診査・特定保健指導が始まりましたが,
受診券発行など事務手続きの遅れ,広報の不足な
どによる受診者減少とそれに伴う収入減の支部も
あり,支部経営に多大の影響がでております。
また,米国のサブプライムローンの破綻から金
融機関の信用不安が広がるとともに,世界同時株
結核予防会七十周年に
あたって
東京都地域婦人団体連盟会長 川島 霞子
平成21年の新春にあたり,謹んで新年のお慶び
を申し上げます。又結核予防会創立70周年を迎え
られ,かさねてお祝い申し上げます。
70年の長きに渡り,結核根絶のためのご努力を
続けてこられました諸先輩には,深い敬意を表す
る次第でございます。70年追って,御会の活動も
より幅広く,世界への働きかけも素晴らしいもの
となりました。
2
1/2009 複十字 No.325
生するという事態が起こりました。
そのため,がん検診受診率も大きく低下し,健
診機関の経営も危機的状態にあります。
このような状況の中でも,支部経営を維持し,
精度の高い健診を実施することによって県民の健
康づくりに寄与していくことが,私ども健診機関
の大きな社会的使命であろうと思います。
長崎県健康事業団は,ここ数年来組織をあげて
取り組んできました,新電算システムの開始,精
度評価機構の認定,プライバシーマークの取得な
ど着実に成果を上げ,体制強化が図られてきまし
た。これらは全て,職員一人一人が真剣に取り組
んだ結果の賜であります。
どんな危機の時代にあっても一喜一憂すること
なく,職員一丸となって困難に立ち向かう姿勢こ
そ,今最も求められていることだと思います。
新しい年が,皆さんの力で危機を乗り切り,更
なる飛躍ができる年となることを信じてご挨拶と
致します。
安と続き,円高の進行と円を除く主要通貨の暴落
もあり,世界恐慌にも匹敵するような危機的状況
となっています。企業も大きく利益を減らしており,
不況は確実に国民生活を直撃しています。
このような厳しい状況ではありますが,「がん
対策推進基本計画」によるがん健診事業をはじめ
とする健診事業の効率的運用など,収益を生む体
質への転換を図る好機ではないかと思います。また,
国民・県民の健康管理は,結核予防会の本部支部
が行うという気概を持つ必要があります。
最後になりましたが,皆様のご発展とご健勝を
祈念いたしますとともに,全国支部事務局協議会
へのご指導ご鞭撻をお願いいたしまして新年のご
挨拶と致します。
しかしながら現在,貧困と格差は増大し,健康
保険からもれた人々が多数となり,医療制度から
切りはなされた人々の状況はどうなるのかと心に
かかります。医療・福祉の面での充分な配慮と,
制度そのものも実状に合ったものに緊急に改正す
べきであると存じます。生活面の劣悪さから沈静
していた病が再発することも心配され,まだまだ
安心できる状況にないと存じます。殊に高齢者の
再発防止・若年層への生活指導等,私ども婦人会
の役目もあると存じます。ご指導下さいませ。
課題山積の中で迎えた年ですが,3月には御会70
周年の全国大会が東京で開催されます。大会のご
成功と御会のご発展をお祈りして新年のご挨拶と
致します。
お知らせ
財団法人結核予防会創立70周年記念
第60回結核予防全国大会 開催要領(案)
期 日 平成21年3月17日(火)∼18日(水)
場 所 ホテルニューオータニ
と き 平成21年3月17日
(火)∼18日
(水)
ところ 東京都千代田区
(8)全国結核予防婦人団体連絡協議会懇談会
場 所:舞の間 〒102−8578 千代田区紀尾井町4番1号
TEL03−3265−1111(代表)
主 催 東京都・財団法人結核予防会
後 援 厚生労働省,外務省,社団法人日本医師会,
17:00∼17:45
(9)大会決議・宣言起草委員会
場 所:椿の間
17:00∼18:00
(10)大会歓迎レセプション
場 所:芙蓉の間
18:30∼20:00
社団法人日本歯科医師会,社団法人日本薬
剤師会,社団法人全国結核予防婦人団体連
【第2日】3 月18日(水)
絡協議会,財団法人健康・体力づくり事業
(1)特別講演
財団,独立行政法人国際協力機構,日本結
場 所:鶴の間
核病学会,財団法人日本対がん協会,財団
「結核と文学と実業の世界」(仮題)
法人予防医学事業中央会,財団法人エイズ
予防財団,特定非営利活動法人ストップ結
核パートナーシップ日本,ストップ結核パー
トナーシップ推進議員連盟(以上予定)
【第1日】3月17日(火)
10:00∼10:30
(3)全国結核予防婦人団体連絡協議会総会
場 所:舞の間 場 所:鶴の間
2)東京都知事あいさつ
東京都知事 石原慎太郎
10:40∼11:40
3)結核予防会会長あいさつ
財団法人結核予防会会長 青木正和
4)秩父宮妃記念結核予防功労賞第12回受賞者表彰
5)来賓祝辞
(4)第2回全国結核予防婦人団体連絡協議会理事会
場 所:椿の間 厚生労働大臣
11:45∼12:10
外務大臣
(5)結核予防会支部長午餐会
場 所:edo ROOM
社団法人日本医師会会長
12:00∼12:45
社団法人全国結核予防婦人団体連絡
(6)全国結核予防婦人団体連絡協議会昼食会
場 所:悠の間 (7)研鑽集会
11:10∼12:40
1)開会のことば
10:00∼11:30
(2)第1回全国結核予防婦人団体連絡協議会理事会
場 所:椿の間 演 者:辻井喬
(2)大会式典
財団法人結核予防会理事長 仲村英一
(1)結核予防会全国支部長会議
場 所:翠鳳の間
10:00∼10:50
12:10∼13:00
13:30∼16:45
協議会会長
6)議 事
①議長および副議長選出
セッションⅠ「人形劇」 13:30∼15:00
②全国支部長会議及び研鑽集会報告
場 所:鶴の間
③決議および宣言
主 題:結核のない世界へ
④次期開催地について
―罹患率100万対1をめざして―
司 会:小林典子(財団法人結核予防会結核
7)閉会のことば
財団法人結核予防会常任理事 長田功
研究所対策支援部長)
セッションⅡ 「パネルディスカッション」
15:15∼16:45
場 所:鶴の間
主 題:パートナーシップ!!
司 会:尾身茂(WHO西太平洋地域事務局
長)
アシスタント: 永田容子(財団法人結核予防会
結核研究所保健看護学科長)
(今後,変更が生じる場合があります)
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3
第67回日本公衆衛生学会総会報告
少子高齢化社会における公衆衛生活動
∼その理念と実践∼
福岡県京築保健福祉環境事務所
岩本 治也
保健監(京築保健所長) 平成20年11月5日から7日までの3日間,福岡県福
健康問題と支援,等のNPO等が関連しており行政
岡市において,福岡大学医学部衛生学教室畝博教
や大学等とは違った観点の報告がみられるもの,健
授を学会長に,第67回日本公衆衛生学会総会が開
康危機管理時の栄養・食生活支援について,Health
催された。第67回学会総会のメインテーマは「少
Impact Assessmentの政策・施策・事業への適用,
子高齢化社会における公衆衛生活動」であり,学
自殺は予防できる,GIS(地理情報)システムの公
会長講演,特別講演,シンポジウム,教育講演,
衆衛生における活用,喫煙対策自由集会,等の近年
フォーラム,合計18の分科会による様々な発表等
の課題に対応したもの,記録映画「いのちの作法」
が行われた。
上映会,公衆衛生に国境はない─国境を越える感染
学会期間は大相撲九州場所の直前であり,学会
症─等の特色ある活動を行っているものがあった。
場の福岡国際会議場のとなりにある福岡国際センター
結核予防会も毎年自由集会を開催しており,今回
には力士名の入った幟が立ち並び,まだ暖かいと
は「結核集団発生の対策に関する集会」をテーマに,
はいえ晩秋の博多の風情をかもし出していた。
石川信克結核研究所長の挨拶の後,生活保護者宿泊
メインシンポジウムでは現在もっとも関心の高い,
施設での結核発生事例,遊技場等におけるM株集団
特定健診・保健指導が取り上げられ,特別講演で
発生事例の報告が行われ,最後に基調講演として森
は医療制度改革を中心とした少子高齢化社会にお
亨名誉所長の「接触者健診のためのネットワーク分
ける保健・保健医療・福祉制度の現状の課題,生
析」が発表された。QFT陰性例の擬陽性への対応,
活習慣病の疾病構造の時代的変化と現状等が論じ
ソーシャルネットワーク分析によって従来認識され
られた。この学会は,参加者の数や職種の広さを
ていなかった接触情報を「場所」の要因で把握でき
考えても日本有数の規模を誇る学会であり,その
る可能性があること等興味深い内容であった。
カバーする範囲も広範囲にわたる。その中で今回
自由集会の良さは,その時々の課題をとらえたテー
の報告は,ここ数回報告されていない,(結核予防
マ設定,現場の実情が聞け,自由な雰囲気で議論で
会も参加している)自由集会にスポットを当てるこ
きるところ等である。ここで,複十字本年11月号の
ととする。
青木会長のご寄稿「これからの結核予防会」に述べ
自由集会とは,学会参加者により様々なテーマ
られている今後の結核対策の課題7項目の中に,「格
で開かれる「小」集会である。その特徴は,「小」
差の拡大」,「増大する大都市の結核対策」,「漸
集会であることを生かした,自由なテーマ設定と
増する外国人の結核」,「HIV感染合併結核」等が
学会発表とはひと味違う現場感覚にあふれた報告
あげられていることから,時機に応じたテーマでの
等が行われることである。今回は11月5日と6日の
自由集会での現場に近い意見を聞くというのも,「結
18時から20時までに計36の自由集会が開催され,様々
核予防会の基本方針」,「いわゆる四つ葉のクロー
な議論が行われた。
バー」をより大きく育てるために有用であろう。
今回の自由集会には,ジョン・スノウの会,全
このほか公衆衛生学会総会では,会員以外の方で
国衛生行政研究会セミナー,第24回運動と健康自
も参加できる市民フォーラムも多く開催される,来
由集会,全国いきいき公衆衛生の会,等の以前か
年は奈良で開催される予定であるので,複十字をお
ら活動しているもの,HIV感染者の就労環境を考え
読みの方も市民フォーラムを覗いてみてはいかがで
る集会,エイズ対策における行政とNPOの連携,
あろうか。
保健指導にコーチングを生かす,不安定就労者の
4
1/2009 複十字 No.325
結核集団発生の対策は今
福岡市博多区保健福祉センター
健康課健康づくり係長 第67回日本公衆衛生学会にあわせて,11月5日
(水)結核予防会結核研究所の主催により「結核
集団発生の対策に関する自由集会」が開催されま
したのでご報告いたします。夕方6時から8時とい
う遅い時間帯にも関わらず139名の方々が参加さ
れ大盛況でした。 集団感染の事例報告
初めに,東京都足立保健所の桐生宏司先生より「生
活保護者宿泊施設での結核発生」という表題で事
例報告をして頂きました。この報告では生活保護
受給者が生活をともにする宿泊施設での集団発生
を題材とされていました。被検者らのQFTの結果
を提示した上で20年前,まだQFTが存在しなかっ
たころの名古屋市における集団発生の報告と比較
しながら健康管理の機会に乏しい宿泊施設居住者
に対する有効な健診システムの必要性を説いて頂
きました。
次に高知県中央東福祉保健所の田上豊資先生よ
り「遊技場等におけるM株集団感染事例の報告」
という表題で事例報告をして頂きました。この報
告ではパチンコ店で発生した複数の結核患者(初発
はパチンコ店員)を題材にされており,空気環境が
極めて悪く,かつ不特定多数の人間が出入りする
場での結核発生リスク,フォローアップの難しさ
について説明を頂きました。店側にとっては結核
の発生やリスクの周知は風評被害につながりますし,
接触者の健診はおろか啓発のポスターを店内に貼
る事すら困難な状況のようです。私の個人的意見
としてパチンコ店やインターネットカフェといっ
た閉鎖空間を持つ遊技場内の環境改善は結核根絶
の為に必要不可欠な要素と考えますし,受動喫煙
による健康被害も無視できないと思います。今や
10億円産業といわれるモンスター産業と化したパ
チンコ業界への対策は今後の大きな課題と考えます。
接触者調査の最前線
最後に結核研究所名誉所長の森亨先生に「接触
者調査のための社会ネットワーク分析」という表
題で基調講演をして頂きました。この講演では幾
何学的な図が多数スライドに盛り込まれ,接触者
桑野 隆史
のリサーチをするにあたり,人と人との接触を共
通の場を介して考えていくという非常に興味深い
ものでした。例えば結核の集団発生で一見接触の
無さそうな患者群が風俗バーという社会的集合場
所を共有していたというアメリカでの症例を提示
されSNA(Social Network Analysis:社会ネッ
トワーク分析)の概念についてわかりやすく説明
頂きました。
日々の業務に応用
結核は空気感染という肉眼では捉えられない性
質を持っており,この疾患を相手にするには,患
者−接触者の接点を明らかにする為に共通の場の
概念を明確に捉えることが非常に重要であること
を改めて確認できた集会でした。
先日,私どもの担当地区で結核の発生がありま
した。患者はコンピューター会社勤務の方で,接
触者調査のため職場の状況を確認に参りました。「コ
ンピューターメーカーだから換気も空調も立派な
職場だろう」と先入観を持って立ち入りしましてビッ
クリ! ソフト開発の都合上,窓は常時閉め切り(最
後に開けたのはいつかわからないとは担当者の弁),
おまけにビルが非常に古く,換気扇もどの程度稼
働しているのかわからないという始末でした。接
触者健診の輪が予定より広がったのは言うまでも
ありません。実際に目で見ることも含めて接触の
場を明確に捉えるということの重要性を早速,実
感できた機会でした。
広い会場もあっという間に熱気に包まれました
1/2009 複十字 No.325
5
シンプル is ベスト? 大胆不敵の10%宣言!!
新年,あけましておめでとうございます。ストップ結核パートナーシップ日本(STBJ)はおかげさまで2
周年目に突入,本年ますます励んで精進してまいります。さて,ここでは簡単に昨年の活動の報告と2009年
の展望について書かせていただこうと思います。
STBJ活動報告
昨年の主な活動としては,秋篠宮妃殿下ご臨席の下,外務省,厚生労働省,WHO西太平洋地域事務局,
結核予防会と国際結核シンポジウムを開催し,世界の年間死亡者数166万人の10分の1に相当する16万人を救
う(以下,10%宣言)というストップ結核ジャパンアクションプランを発表したことが,一番のハイライト
として挙げられます。10%宣言は,実に分かりやすい簡潔明確な目標ではありますが,同時にこれは大変思
い切った大宣言だということができます。どれほどに思い切った目標なのかと言いますと,結核の世界目標
には,2015年までに有病率及び死亡率を1990年比で50%削減するという,これまた大変な目標が掲げられて
いますが,仮にこの目標が達成されるほどの目覚ましい対策の進展があったとしても,この10%宣言は実現
できるとは言いきれません。昨年11月,国境なき医師団(MSF)が抗結核薬の研究開発を進めるためには欧
州連合(EU)は世界の研究開発費の30%相当を負担すべき,との報告を発表しました。MSFは世界随一の
ラディカルなアドボカシー(政策提言)活動で有名で,この報告も大変に手厳しい内容になっています。実
際,EU諸国はこの報告に大いに頭を悩ませていることと思います。しかし,このMSFの主張する研究開発
が滞りなく進んだとしても,10%宣言が実現できるとは限りません。どれほどに大胆なのか,ご理解いただ
けたかと思います。将来,結核が根絶した日には,2008年が第一歩の年として記憶されることになるでしょ
う。今後,具体的にどのような実施がなされ,実現していくのか,すでに世界中の注目が集まっています。
その中でも「パートナーのひろがり・つながり」は大事なポイントの1つになっていくことと思います。ス
トップ結核パートナーシップ日本はこれまでに,4,000以上の個人会員,30余の団体会員にご参加いただいて
います。世界的には760団体が加盟し,STBJのような国別パートナーシップが,準備中のものを含めて23カ
国に設立されています。本年はますます多くのパートナーと協力していければと考えています。
今年のテーマはMDR-TB
さて,今年,世界の結核対策は大きく舵が切られていくことと思います。昨年10月末,タンザニアで開催
されたストップ結核パートナーシップの理事会では,今年のアドボカシーのテーマとして,「MDR-TB(多
剤耐性結核)」が満場一致で決定しました。本年上半期には,2つの国際会議が開催され,この流れが加速
していくことと思います。一つは,4月に中国政府がWHO,ビル・ゲイツ財団らと共同で開催するMDR-TB
対策のためのハイレベル会合です。27カ国の結核高蔓延国から閣僚,専門家が招かれ開催される予定です。
もう一つは,太平洋保健会議(Pacific Health Summit)というアメリカで開催される会合で,500人ほど
の国際保健医療関係者がMDR-TBを主要議題に3日間に渡って話し合います。この会議はビル・ゲイツ財団
の本拠地であるシアトルで,同財団から強力なサポートを受け開催されますが,その翌日にはH8(この分野
の主要な機関WHO,UNICEF,世界銀行,UNFPA,この会議はビル・ゲイツ財団,世界基金,UNAIDS,
GAVIの最高責任者8人による会合)が開催されます。H8は国際保健分野のG8とも言われており,その前段
でMDR-TBが話し合われることは,今後の国際保健のアジェンダに大きな影響を与えることになりそうです。
中国,アメリカで開催されるこの二つの会議で,MDR-TBに対する問題意
識が一層高まっていくことは間違いありません。蛇足になりますが,一連
の流れを見ていますと,今日の国際保健分野においてビル・ゲイツ財団が,
大きな存在感を持っていることを改めて強く感じます。また,先日,中国
の会議を主催する担当部長,太平洋保健会議の事務局長にそれぞれ別の機
6
1/2009 複十字 No.325
感も否めず,アメリカにとっての太平洋はいまや明確に対中国外交である,といったこと
もよく見えてきます。太平洋保健会議のロゴマークは生命の「生」という漢字があしらわ
れていますが,これもきっと日本というよりむしろ中国を意識してのことなのでしょう。
第3回ストップ結核パートナーフォーラム
ところで今年は,5年振りにストップ結核パートナーシップフォーラム(以下,フォー
ラム)が開催される記念の年でもあります。前々回のアメリカ・ワシントンDC,前回の
インド・ニューデリーに続いて今回が3回目で,3月にブラジルのリオデジャネイロで開催
されます。世界中から1,000人以上の専門家,行政官,市民社会代表らが集まり,活発な
議論が行われるほか,開催国ブラジルにおける関心喚起と資金動員が期待されています。
ブラジルは,感染率はそれほど高いわけではないですが,人口が多いこともあり,世界22
カ国の高負担国の1つになっています。経済的には中進国に位置しており,世界基金のド
ナー国(資金提供国)でありかつ,レシピエント国(資金需要国)であるという,両方の
顔を持つ興味深い国でもあります。今回のフォーラム準備にあたっては,重要な部分はイ
ンターネット上で議論して決めるという,ユニークなプロセスが取られています。ストッ
プ結核パートナーシップの理事で,ブラジル人のTB/HIV活動家サントス氏が,このフォー
ラムの運営に携わっていることが,このような民主的なプロセスを形成できている大きな
要因なのだろうと思います。このプロセスで決定された今回のフォーラムのテーマは,「シ
ンプルに,結核をなくそう!(Simply, stopping TB)」です。結核対策においては,目
下のMDR-TBに加えて,結核とHIV/エイズの二重感染,新薬開発,新診断薬開発等々さ
まざまな政策が同時並行で進められており,ストップ結核パートナーシップでもそれぞれ
重要課題としてワーキンググループが編成されています。その中にあって「シンプルに,
結核をなくそう!」は,一見古典的にも見えますが,とても斬新な主張だと言うことがで
きます。「いろいろ新しい課題もあるけれど,そもそも通常の結核が片付いてない!普通
の結核を治そう,DOTSをやろうよ」という意見です。これは10年来主張されている基本
的な意見ではありますが,逆にその素朴さゆえに,時に無視されがちな主張でもあります。
それだけに今回のフォーラムで,「シンプルに,結核をなくそう!」がテーマとして設定
されることは,とても意義のあることだと思います。中国,アメリカと続くMDR-TBの潮
流にやや押され気味ではありますが,このテーマにつきまとう素朴さという困難を克服し
て,大いに「シンプルに,結核をなくそう!」が喧伝されることを願わずにはいられませ
ん。STBJも10%宣言だけでなく,このテーマについても,大いに謳っていきたいと考え
Coughing even; not alone
会にお会いしましたが,これらの会議が中国,アメリカという大国の外交上の一端という
ス
ト
ッ
プ
結
核
パ
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プ
日
本
だ
よ
り
No.
4
ています。
(ストップ結核パートナーシップ日本 事務局長 鈴木 幹久)
タイトル:俳人尾崎放哉の「咳をしても一人(Coughing even; alone)」から。咳をしても1人じゃないぞ!
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ストップ結核パートナーシップ日本総会 講演
「結核対策とのかかわり−これまでとこれから−」
2008年11月19日(水)19:00より,結核予防会本
ぐって,大蔵省(現・財務省)と折衝を重ね,ようや
部会議室において,ストップ結核パートナーシップ日
く結核医療基準に収載されるにいたる経緯は,今でも
本の第一回総会が開催されました。森亨先生を議長に,
心に深く残っているそうです。
議事が進行し,事業報告と収支決算,事業計画と収支
国際協力活動
予算,そして審議事項がつつがなく議決されました。
1978年∼2年間JICAで医療関係の技術協力に携わら
その後,ストップ結核パートナーシップ日本の諮問委
れました。特に人材育成が強調されており,技術移転,
員で,全国社会保険協会連合会理事長の伊藤雅治先生
専門家派遣,研修員の受け入れなどに取り組まれまし
から講演をいただきましたので,誌上報告いたします。
た。結核ではアフガニスタンとネパールの西部地域の
公衆衛生対策に関わって来られ,結核研究所の当時の
所長岩崎先生との思い出も多いとお話されました。
結核対策との18年5ヵ月
その後,厚生省に戻られ,1994年に厚生省大臣官房
伊藤先生は,33年1ヵ月の
審議官としてWHOを担当され,4回総会に参加されま
公務員生活のなかで,なんと
した。その時のお写真をご紹介くださいました。そこ
18年5ヵ月も結核と関わって
には,先日お亡くなりになった山口次官が大臣の代わ
来られました。新潟大学をご
りに出席され,一緒に撮ったものでした。結核を含め,
卒業後,新津保健所に勤務さ
国際協力に大きな功績を残されたことを知っていただ
れ,公衆衛生の現場を経験さ
きたいとご紹介されました。
れてから,1971年に厚生省公
感染症対策の推移と今後
衆衛生局結核予防課に入職されました。当時は,感染
保健医療局長として,「感染症法」の施行に関わら
症のなかでも「結核とハンセン病」を中心に取り扱う
れ,結核緊急事態宣言を受け,結核予防法の統合が
課として独立していたことを話してくださいました。
2006年の新感染症法の改正論議となり,主に人権問題
また,その後も保健医療局長,厚生労働省医政局長な
上で統合されたと認識していると語られました。
どを歴任されました。
昭和40年代の日本の結核対策
そして,ストップ結核パートナーシップに対して,
これからの要望が述べられました。まず,ストップ結
1970年4月∼8月にかけてWHOの結核トレーニングコー
核パートナーシップ日本として,7月に5団体で採択さ
スに参加されました。内容はチェコスロバキアのプラ
れた「ストップ結核アクションプラン」に基づき,日
ハでの講義とインドのバンガロールで1ヵ月,フィー
本の知見を国際協力に生かしていくことと,その地盤
ルドトレーニングで,日本もプレゼンテーションをし
を固める上で,国民運動として,ストップ結核の普及
たり,日本の対策を議論したりする経験をされました。
啓発を行い,また国に対してもきちんと提言していく
その時,参加者(医者)から,「日本は結核菌と戦っ
ことが重要であるとまとめられました。
ているのではなく,レントゲンの陰影と戦っているの
(文責:編集部)
ではないか」と日本の結核対策について痛烈に批判を
受け,「戦う敵は結核菌である」という強い信念を持
たれたようです。研修で「菌検査の重要性」を再認識
されました。
帰国後,沖縄返還の準備に取りかかられ,返還前の
沖縄の結核対策に取り組まれましたが,その手法は本
土よりグローバルスタンダードに近いものであったこ
とを懐かしくお話くださいました。
夢の抗結核薬リファンプシン
実は,1971年に抗結核薬と認められ,夢の薬として
注目されたリファンプシンから,早40年近くたとうと
していますが,その後1つも新薬は出ていないことを
ご説明されました。当時は,公費負担医療の導入をめ
8
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講演される伊藤雅治先生
第7回人間開発グローバル会議開催
第7回人間開発グローバル会議は,特定非営利活動法人ICA文化事業協会とICAインター
ナショナル(The Institute of Cultural Affairs International 以下,ICAI)の主催により,
2008年11月17日(月)から21日(金)までの5日間にわたり,岐阜県高山市の飛騨・世界生
活文化センターを会場として開催された。第1回を1984年インドのニューデリーで行い,以
降4年毎にメキシコ,チェコ,エジプト,アメリカ,グアテマラと会場をICA加盟各国に移
して開催されてきた。第7回となる今回「人間の可能性を広げ,共に新しい世界を創造しよ
う!」をテーマに,日本から308名,海外36カ国から210名が集う会議となった。
17日の開会式では,主催者側からICA文化事業協会松田岩夫会長,ICAIランバート・オ
クラ事務局長の挨拶ののち,外務省五月女光弘NGO担当特命全権大使,岐阜県知事(代理
出席横井篤副知事),高山市土屋守市長,岐阜大学森秀樹学長が挨拶され,続いて,アフリ
カ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)ムゾブス・ムボヤ博士が「アフリカでの人
間開発:チャレンジと見通し」と題し特別スピーチを行った。休憩ののち,JICA上田善久
理事から「新JICAの使命と戦略」,松田岩夫会長からは「新しい世界を共に創造しよう」
と題して基調講演が行われた。
翌18日からは,参加者は分科会テーマごとに分かれファシリテーターの進行のもとディス
カッションを重ねながら問題解決の道を探っていった。今回は,①効果的なガバナンスと人
権の尊重②貧困の削減③環境問題の解決④地域の活性化⑤紛争阻止と平和構築⑥医療アクセ
スの保証と感染症の防止⑦教育の普及と識字率の向上⑧過剰消費の変革⑨個と社会の断絶の
解消⑩NGOと企業の連携による新しい社会貢献(CSR)の10テーマについてディスカッショ
ンがなされた。21日の最終日には総括として,分科会ごとに自由な表現方法で発表を行った。
岐阜県という世界遺産に認定された白川郷合掌造り集落など日本の伝統文化が色濃く残る
地域で開催された今回の会議は,高山市民の協力も得ながら盛会のうちに閉幕した。次回は,
2012年にネパールで開催されることが決定している。
今回,このような会議に出席したことは貴重な経験となり,今後の業務にも生かしていき
たいと思います。ありがとうございました。
(事業部参事 渡邉 知巳)
お知らせ
平成21年3月5日・6日 国際結核セミナー・世界結核デー記念セミナー・全国結核対策推進会議
会場:ヤクルトホール(東京都港区東新橋1-1-19 JR新橋駅より徒歩5分)
主催:財団法人結核予防会結核研究所
■平成21年3月5日(木) 13:00∼19:30
【第一部】第14回国際結核セミナー 13:00∼17:30
テーマ:日本における外国人結核対策
◆基調講演 「日本と西欧における外国人結核の現状と対策」
◆シンポジウム「外国人結核患者の治療成功を目指して」
【第二部】世界結核デー記念セミナー 17:45∼19:30
結核とエイズをテーマにこれからのわが国の対策について考えます。
■平成21年3月6日(金) 9:30∼15:30
平成20年度全国結核対策推進会議
テーマ:感染症対策としての結核対策−質の高いDOTSの実践
◆講演1 「結核対策の動向」
◆シンポジウム1「感染性患者への対応−先進国の対策から考える−」
◆講演2 「DOTS 変わるべきはわたしたち」
◆シンポジウム2「確実な服薬支援:Quality DOTSの実践」
◆ポスター展示 日頃の活動を紹介していただく場としています(病院・保健所で取り組んだ活
動の紹介,DOTSなど)
※ポスターによる活動発表を募集いたします!〔10題,締切:2月10日(火)〕
プログラム,申し込み方法(ポスター展示含む)は結核研究所ホームページ(http://www.jata.or.jp)
に掲載します。皆様お誘い合わせの上,是非ご参加ください。
問い合わせ先:結核研究所対策支援部 TEL042-493-5690
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Use DOTS More Widely
福岡県久留米保健福祉環境事務所における
DOTS事業の取り組みについて
福岡県久留米保健福祉環境事務所
大村 美穂
健康対策課 1.久留米保健福祉環境事務所の概要
当所は福岡県の南部に位置し西は佐賀県,東は
大分県に隣接している。平成19年度まで4市2町(面
積467.76裄,平成19年10月1日現在人口464,417人)
を管轄していた。平成19年の結核発生状況は新登
録患者数85人,うち喀痰塗抹陽性患者41人で,罹
患率18.3である。
平成20年4月に久留米市が中核市となり保健所
を設置したため,現在は3市2町(面積237.92裄,
平成20年4月1日現在人口158,335人)を管轄して
いる。
2.地域DOTSの実際
当保健所では,患者の治療成功をめざし地域
DOTSを円滑に実施するためにカンファレンス(管
内患者の主な入院先であるH結核専門病院との定例
カンファレンス,退院時のDOTSカンファレンス,
所内DOTSカンファレンス)を平成17年11月より行っ
ている。
1)H病院との定例(月1回)カンファレンス
①内容
ナースステーションに結核病棟・外来看護師長,
病棟看護師と保健所保健師が一堂に会し,入院中
の患者および外来通院中の患者を対象に,地域
DOTSの経過や服薬終了者の報告を行っている。
②利点
入院中の療養状況を担当保健師は知ることができ,
調整が必要なケースに対して退院間際に慌てるこ
とがなくなった。外来受診状況の確認もタイムリー
に行うことができ,菌検査の結果が把握しやすくなっ
た。退院後に保健所が実際にどのようにかかわっ
ているかが伝わるようになった。
2)退院時DOTSカンファレンス(個別)
①内容
H病院の全ての入院患者を対象に実施している。
患者・家族,病棟看護師,担当保健師が同席する
ため,家族の都合に合わせて主に退院日に行って
いる。
③利点
退院後の治療方針を把握でき,入院時から行われ
10
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ている院内DOTSから地域DOTSへの連続性をもた
せることができる。家族も参加するため,服薬が自
己管理できる患者であっても退院後の地域DOTSの
方針について家族の理解と協力が得られ,服薬の継
続について再認識できる。また,家族の協力が得ら
れにくい場合などには,担当保健師は患者に合った
支援のポイントを検討できるようになった。
3)所内DOTSカンファレンス
①内容
リスクアセスメント票(県様式),退院時支援計
画票(当所様式)を用い,所長(医師),医師,課
長,係長,係内の全保健師で実施している。担当保
健師がリスクアセスメント票で点数化し,一次判定
を行い,総合判定案の提示を行う。案を元に全体で
話し合い,総合判定を行う方法にした。また,患者
の状況に変化があった場合,再判定を行う。
②年度別総合判定の内訳
4)地域DOTS(担当保健師による服薬支援)
訪問,来所,電話など患者に合わせた方法を選
択し,主に担当保健師が実施している。
訪問だけでなく,来所可能な患者には保健所ま
で出てきてもらうことや支援頻度の高い患者につ
いては特に担当保健師以外でも複数で関わり,対
応できるような体制作りを試みた。また,PTP包
装や薬包を確認する際は患者の目の前で数え互い
に確認した。
事例1
<来所DOTS事例;支援方法:毎日(A2)>
72歳 男性。入院前は朝から飲酒することもあり,
息子は長距離の運転手のため一人暮らしに近い生活。
入院中に読み書きや,数を数えることが困難な状
況が判明。入院中から担当看護師が患者と相談し
ながら準備をすすめた結果、平日は保健所で
DOTSを行い,休日は薬包をとっておき月曜日に
保健所に持参する方法を続けた。最初「もう(来
所しなくても)よかろうもん」と言っていた患者
に対して,保健師が電話をして来所を促すことを
続けた。毎日来所することをねぎらい評価するこ
とで,患者が必ず約束の時間にくるようになった。
対応については事前に取り決めごとをスタッフに
説明し,担当保健師だけでなく係全員で意思統一
を行った。この患者の場合,保健所に通うことで
生活のリズムがつき飲酒もせず,12ヵ月間完遂した。
また,担当看護師が時々電話や外来受診時に声を
かけてくれたことは本人の励みになった。
事例2
<介護支援専門員と協力した事例;支援方法:週
1回(B1)>
81歳 女性。認知症。83歳の夫と二人暮らし。
近くに娘達が住んではいるが協力を得にくい状態。
夫が一生懸命妻(患者)の身の回りのことをして
いるが,介護サービス等の導入は拒否的。ただし
薬をセットしておけば夫は必ず患者に服薬させる
など協力が得られた。しかし夫は薬をセットしよ
うとするが間違うため任せることに不安が生じた。
関係者が集まりケース会議も行ったが,娘の協
力は得られなかった。保健所から片道1時間の場所
に居住しており,担当保健師が可能な場合は毎週
訪問できる体制とした。カレンダー式で1週間分
のウォールポケット4
枚(1ヵ月分)を準備し,
ポケットに日付のポス
トイットをはり,さら
に受診日には「病院」
等大きく書いたポスト
イットを貼るようにした。
保健師だけではなく,
患者宅を訪れた際には
関係者(介護支援専門
員)にポケットを見て
もらうようにした。夫
ウォールポケットの例
(実際のものとは異なる)
はセットされた薬は必
ず飲ませる,ということと受診日を忘れない,と
いうことは確実にやり遂げ,服薬終了することが
できた。この事例ではケアマネージャーが力強い
味方になってくれ,状況の変化等があった時にも
素早く対応することができた。
事例3
<外来と協力した事例;支援方法:月1回(C3)>
42歳 女性。入院時から夫は妻(患者)の結核
を受け入れられず,保健所や病院の説明を全く聞
き入れない。
患者は入院時から副作用が強かったため中断の
おそれがあり服薬確認が必要と考えた。しかし,
退院後に数回DOTS訪問は実施できたが夫の拒否
により困難となる。外来はきちんと受診していた
ため,外来に1ヶ月分のPTP包装を預かってもらい,
受け取ったことを本人の携帯に電話連絡する方法
をとる。受診の確認もでき,中断もなく完遂する
ことができた。
外来と協力した事例で実際に患者が外来に預けていた
PTP包装の空袋
3.おわりに
現在,所内DOTSカンファレンスではDOTSの頻
度や方法を判断することを主に実施しているが,
評価を目的としたコホート検討会を実施していく
ことや患者に添った支援をしていくために服薬支
援者を育成し,保健師以外のマンパワーを整備し
ていくことは大きな課題である。
また,服薬支援は患者の治癒率を向上させること
が目的であり,最後まで服薬支援をすることは患
者本人だけでなく,患者を地域に戻し保健所に託
した医療機関の信頼を得ることにもつながる。
DOTSの主役は患者本人であり,毎日の服薬を習慣
化して継続していくためには家族やその他の支援
者達とも相談して決定していくことが長続きさせ
る上で重要である。
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創立70周年を迎えるにあたって(5)最終回
結核予防会各施設の
これからの役割
青木 正和
結核予防会 会長 1.結核軽視防止と効果的対策の維持
結核罹患率は10万対20を割った。今後も年間4∼
5%の割合で減少を続け,数は減り,対応困難例が
増えるだろう。現在既に赤字が続く結核診療は経
済的にはさらに魅力がなくなり,必然的に結核の
診断,治療,予防技術レベルの低下が起こる。
しかし結核は今後も少なからず残り,10万対10を
割るのは2020年,米国が結核の少なくなった州と
称する10万対3.5以下になるのは早くて2040年頃だ
ろう。それまで結核軽視を防ぎ,診療技術や,ま
すます難しくなる集団感染防止,接触者健診方策
を高く維持しなければならない。結核予防会はそ
の難事業の中核の一つとして活動をすべき立場に
居るのである。
2.予防会の各施設がなすべき事業
こう考えると,国内の結核問題だけでも難しい
仕事が山積しており,従来にもまして困難な研究,
試行,評価,研修などが求められ,多くの人手,
智慧,エネルギーが必要であろう。国際協力事業
もますます活発になるので,多忙を極めるだろう。
予防会各施設の業務についてごく簡単に概観すれ
ば次のとおりである。
(1) 研究, 研修業務
サーベイランスの充実
今後,結核患者の数は減るが,超重症例,超高
齢患者,多剤耐性例,外国人患者など質的には大
きく変化し,地域格差も一層拡大するだろう。これ
らへの対応のためにはサーベイランスがますます
重要になる。これには「菌バンク」,「VNTRな
どでの菌株同定」など抗酸菌サーベイランスも含
まれる。
研究の進歩への対応
有望な新薬で既に臨床研究段階に入っている薬
剤が5指に余り,遺伝子分析による耐性検査,菌株同
12
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定など,学問的進歩は早い。研究の重点を決め,
特に診療,対策に関する研究に重点を置いて研究
を推進することが不可決である。予防会の活動は
すべて研究で得られたエビデンスの基盤の上に築
き上げていくべきである。
研修事業
今後,結核専門の医師,保健師などは減り,多く
の業務の一部として結核も担当する形になってい
くだろう。従って,これらの医師,保健師に,結核
医療,対策の情報を常に流すことは重要である。
予防会はその創立以来研修事業を中心的業務の一
つとして努力してきた。今後も研修,各種情報の発
信は重要な業務となる。
対策支援事業
今後多くの結核対策は改革が求められる。各自治
体が行う事業に協力して問題を解決し,評価, 改
善を提案することは予防会が行わなければならな
い重要な使命である。
(2) 国際協力事業
2007年11月,「ストップ結核パートナーシップ
日本」が結成され,2008年は当面のアクションプ
ランも決定された。予防会はその中心的実践部隊
として活躍することが求められている。 45年間の伝統と継続
結核予防会は創立以来「対策の柱は人材の育成
である」という確信を持って活躍してきた。国際
研修も既に45年間継続,発展させ,世界97カ国か
ら2,082人に上る研修生が卒業し,多くの途上国で
活躍している。今後さらに発展させ,卒業生のネッ
トワークを強化し,世界の結核対策の進展に大き
く寄与することが望まれる。
国際協力の継続・発展
WHO, IUATLDを通しての国際交流は1953年か
ら始められ,JICA(当時はOTCA)を通しての2国
間国際協力は1960年から今日まで数多く実施され
てきた。現在も計16本の国際プロジェクトが進行
しており,多忙を極めている。しかし,日本はそ
の継続,拡大を避けることは出来ない。外部の人
材の活用など実施方法を工夫し一層発展させる必
要がある。
(3)診療事業
結核の診療を最高レベルに維持・継続すること
は結核予防会の最重要課題の一つである。ただ,
その採算性が極端に悪く,結核だけでの維持は困
難である。病院,診療所は既に伝統と地域性を考
慮して公益性の高い分野を選んで診療領域を広げ
ている。中心課題は「四ツ葉のクローバー」として
既に述べたとおりである。
結核医療の将来
入院患者は減少するが,結核病床は不可欠である。
入院期間は短縮し,手のかかる患者が次々と入り,
結核病棟はますます忙しい。 しかも経営的には赤
字が続き,このままではその維持は困難である。
しかし,短期的には経営可能な結核医療費への
改善を求め,数年後には総合病院の部屋単位で結
核患者を収容し,入院期間を2週間くらいとする患
者と,超高齢患者,MDR患者など長期入院の患
者の2種類に分けて考えざるを得ないだろう。具体
的にどう対応すべきか,至急研究が望まれる。
非結核性抗酸菌症
結核は減っているが非結核性抗酸菌症は微増を
続け,罹患率は10万対6を超え世界で最も高い国の
一つとなり,患者は長期治療に悩んでいる。結核
を扱う施設では非結核性抗酸菌症の診療を積極的
に受け入れ, より良い治療法の開発に努めること
が望まれる。
地域医療の推進
結核専門病院は約40年前から赤字を続け,診療
科目を地域のニーズに合わせて徐々に拡大してきた。
しかし結核病棟の赤字は大きく,「結核医療の崩壊」
が叫ばれて久しい。複十字病院,新山手病院は地
域で信頼される病院として消化器,循環器,がん
医療などそれぞれ得意とする分野に診療領域を広げ,
地域の医師会との交流も進み,地域に定着してきた。
今後もそれぞれ得意とする領域の包括的地域医療
を広げ,地域の信頼を得ながら,結核・呼吸器疾
患集学的がん医療専門施設としても活躍すること
が望まれる。
(4)健診・外来事業
結核予防会はその創立時から結核健診を熱心に
進め,実施方法を具体的に研究して標準方式を確
立し,全国の支部と共に大規模に展開し,その後も,
受診率向上策,各集団別の注意点などを検討し,
常にわが国の集団健診をリードしてきた。全国民
が殆ど洩れなく年1回健診を受け,多くの患者を発見,
治療して,世界で最も早く罹患率を減少させるこ
とに大きく寄与したのである。最近,結核の減少と
集団健診の反省期のため,集健事業はややマンネ
リズムの傾向があることは否めない。 しかし今
こそ長く培った胸部検診の経験を生かし,エビデ
ンスに基づく健診方式の試行,実施,普及をめざし,
肺がん,COPD,乳がんなどの早期発見と共に,新
しい特定健診事業の育成・改善に努力を注ぐこと
が望まれよう。 特定健診事業
長年蓄積してきた集団健診のノウハウを生かし,
結核分野で培ってきた保健指導に重点を置き,新
しい考え方に基づく特定健診の先頭をきって展開
していきたい。また,総合的,経時的に健康状態
をチェックし,健康増進を図る人間ドック事業も
結局特定健診事業に吸収されていく方向をとるだ
ろう。
ネットワーク事業
全国の支部と連携し,質の高い健診事業をすすめ,
集まってくるデータを集計・分析して,その結果
をフィードバックすれば,国の健診の評価・改善
に大きく寄与するだろう。困難なことであるが一
歩一歩進めたい。
胸部疾患外来
結核治療では今後,外来治療の比重が大きくな
るし,創立以来伝統ある胸部疾患外来なので,一
層の充実が望まれる。接触者健診,集団感染対策,
クォンティフェロン(QFT)検査も強化すること
が望まれる。
3.おわりに
「創立70周年を迎えるにあたって」と題して5回に
わたって連載をしてきた。普通,先ず70年の歴史
を振り返り,その業績を誇って始めるが,今回は「わ
が国の結核は今後どうなるか?」,「この状態に対
しわれわれはどうすべきか?」に限って述べてきた。
職員の意識の不統一,紙数の制限もあり,具体性
に乏しく,欠落している点も少なくない。各施設
でさらに具体的に議論を深めることが強く望まれる。
結核予防会の将来のさらなる発展を心から願い
つつ本稿を終わりたい。
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健康日本21全国大会に初出展
−「肺年齢体験ブース」−
快晴に恵まれた10月4日土曜日午後1時から4時40分,
名(池尾様,西浦様,緒方様)に実施していただき,
熊本県立劇場コンサートホール(熊本市)において,
フクダ電子株式会社のご厚意により3台の肺年齢ソフ
第9回健康日本21全国大会が開催されました。
ト付スパイロ検査機器を使って実施することができま
全国大会開始前と終了後を含めて正午から午後5時
した。COPD共同研究事業の共同研究者である日本ベー
までの5時間,社団法人全国結核予防婦人団体連絡協
リンガーインゲルハイム株式会社の熊本CSセンター
議会と財団法人結核予防会の共催により,「肺年齢体
から2名の応援と,結核予防会熊本県支部から尾方副
験ブース」を出展し,COPDとタバコの害について普
支部長,山田事務局長,橋口総務部長,原保健指導部
及啓発を実施しました。健やか生活習慣国民運動のス
長,黒瀬企画広報課長が参加され,たいへんお世話に
ローガン「1に運動 2に食事 しっかり禁煙」の中
なりました。
の,禁煙に関する普及啓発のために呼吸器疾患専門団
体として出展しました。
224名の方々に,スパイロメーターによって肺年齢
を体験していただき,COPD普及啓発パンフレット
結核予防会本部からは結核予防婦人会事務局の役割
を兼ねて,事業部長と普及課長が参加しました。
実施に際しまして多くの方々のご協力を賜り,誠に
ありがとうございました。
と肺年齢チラシを配布しました。
他にも多くの健康増進に役立つ魅力的なブースが出
展され,スタッフが時々交替で持ち場を離れて体験し,
見識を深めました。
「肺年齢」の概念が今年の春に誕生してから半年間で,
スパイロメーター(肺機能検査)による「肺年齢」体験
イベントを機会あるごとに実施してまいり,それらの
多くを本誌上でも紹介してきました。今回は,健康日
本21全国大会に初めての参加であること,7月実施の
北海道G8オルタナティブサミットでの肺年齢体験会に
続いて地元支部と協力し合っての2回目の開催である
ことが画期的だったと言えましょう。
スパイロ検査は結核予防会熊本県支部の検査技師3
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肺年齢体験の真っ最中
(文責:編集部)
「元気!2008」にNPO J-BREATHと
共同出展
−肺年齢体験ブース−
11月7日(金)から9日(日)の3日間,東京都港
区の赤坂サカスにおいて健やか生活習慣国民運動
のキックオフイベントとして,「元気! 2008」
が開催されました。このイベントは健やか生活習
慣国民運動のプレイベントとして3月に開催された「健
やか生活習慣フェスタ」(東京池袋,サンシャイ
ンシティー)の後継イベントに当たり,健康日本
21の事業と共に,国が力を入れている事業です。
このイベントに,非営利活動法人 日本呼吸器障
害者情報センター(NPO J-BREATH)と一緒に参
加しました。2者共催で「肺年齢体験ブース」を出
展し,COPDと,健やか生活習慣国民運動のスロー
ガンの禁煙について普及啓発を実施しました。禁
煙関係では他に「NPO法人 禁煙ネット」が出展
しました。
11月19日(水)の世界COPDデーに近い日取
りだったので,「世界COPDデー(11/19水曜日)
記念肺年齢体験会」と標榜し,「毎年11月の第2も
しくは第3水曜日は,世界COPDデーです」と説
明して世界COPDデーの周知に努めました。そ
して,「あなたの肺は何歳?」と記したチラシを
貼り出し,通る人々の関心を集めました。その効
果もあり,3日間で744名に及ぶ多数の方々に,ス
パイロメーターによる肺年齢を体験していただき,
COPD普及啓発パンフレットと肺年齢チラシを
配布しました。また,スパイロメーターに受診者
の情報を入力するために,性・年齢・身長・体重・
喫煙歴記入様式を,複十字シール広報用はがきに
印刷して作り,受診者に記入いただきました。記
入後に順番待ちの間,はがきオモテ面の複十字シー
ルの説明を熱心に読んでいる方々が多数いらっしゃ
いました。
本会は本運動のメンバーとして,主催者エリア
で出展しました。他に企業エリアも設営され,多
くの企業による活気に満ちた出展によりステージ
上での催しと共にイベントを盛り上げていました。
特に企業エリアでは,万歩計製作の携帯電話メーカー
や玩具メーカー,体重や体脂肪率の計測機器メーカー,
大手のお笑い芸人事務所など,国民の健康増進に
新たなビジネスチャンスを見出そうと新鮮で元気
な出展が目立ちました。
NPO J-BREATHと共催で事業を実施したのは,
4月の「ラングウォークジャパン」(東京,日比
谷公園),7月の「JCサマコン2008in横浜」(神奈川,
パシフィコ横浜)に続いて3回目で,今回の1日当
たりのスタッフはスパイロメーター製造会社(チェ
スト社)2名,派遣検査技師2名,NPO J-BREATH
から岡田雅善事務局長1名,本会から普及課長1名
の6名体制により実施しました。最終日の午後には,
日本呼吸器学会の村上彰事務局長,NPO JBREATHから遠山和子事務局長も顔を出され,盛
り上げていただきました。
出展の様子と貼り出したチラシ
複十字シール広報用はがきを利用した記入様式
4月と7月のイベントで共に事業実施したNPO JBREATH創立者の遠山雄二理事長が10月9日に逝去
され,今回は参加がかないませんでした。故遠山
雄二様のご冥福を祈り,今後も遠山様と共通の志
を継いで事業を推進したいと心を新たにいたしま
した。
(文責:編集部)
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15
第39回国際結核肺疾患連合会議〈2008年10月16日∼20日,パリ〉
(International Union Against Tuberculosis and Lung Disease: IUATLD)に参加して
西山 裕之
結核研究所国際協力部長 山田 紀男
結核予防会国際部 ヘルスシステムの強化と結核対策の促進
では,上述のレントゲンマニュアル作成の中心となっ
今回の会議のテーマは,“Global threat to lung
た国際協力部岡田耕輔先生,臨床疫学部長伊藤邦
health: the importance of health system responses”
彦先生,伊達卓二氏らの発表や本会が関与してい
で,世界120カ国から約2,500人の結核対策に関わる
るプロジェクトから,多くの発表がありました。
人々が集まりました。初日のシンポジウムでは,
西山は,カンボジアでのコミュニティーDOTSにつ
上記テーマに従って結核対策の改善がヘルスシス
いての発表でしたが,これからコミュニティー
テム全体を強化し,またヘルスシステムを強化す
DOTSを導入しようとする国(ボリビア)からの質
る事が,結核対策の促進につながるという事が強
問や,なぜこんなに治療成功率が高いのか(ジン
調されました。このメインテーマの他に,近年そ
バブエ)等様々な質問があり,プロジェクトの成
うであったように,新しい結核診断,TB/HIV,多
果を紹介する良い機会となりました。
剤耐性結核が今回も主要な分野として挙げられます。
また,胸部レントゲンに関するシンポジウムがあっ
JICAと結核予防会の共催のシンポジウム
たことは特筆すべきことではないかと思います。
19日にはJICAと結核予防会の共催で行われた
レントゲンは近年,HIV合併結核の診断や,結核実
international symposium “More focus on Laboratory:
態調査の必要性から,以前よりも重要な役割を持っ
what can the laboratory do for Stop TB Strategy”
てきているにもかかわらず,特に途上国ではレン
が開かれ,テーマに沿ってJICA支援の各国(アフ
トゲン写真の質に問題がある場合が多く,それを
ガニスタン,インドネシア,パキスタン,ミャン
改善するための活動が行われています。そのひと
マー,カンボジア)の活動報告が行われました。
つとして,長年に渡る結核予防会のレントゲン写
西山が赴任しているカンボジアからはウーン氏が
真精度管理の経験に基づいて途上国向けの精度管
発表しました(タイトル“Establishment of
理マニュアルが作成(USAIDの支援でTBCTAが
Culture Lab at Provincial Level - Experience in
作成)されています。このようなレントゲン検査
Battambang, Cambodia”)。会議室に入りきれな
の問題点と改善について,2007年12月まで結核研
い程の参加者があり,日本に対する各国の期待の
究所国際協力部長で現在WHO勤務の小野崎郁史先
高さを伺い知ることが出来ました。多剤耐性菌結
生が発表を行いました。本分野は,これまでの予
核やHIV合併結核への対応のための検査機能の拡大
防会の日本での経験を生かして貢献できる分野で
が求められていますが,基本的な検査室機能の確
あると考えられます。一般演題(ポスター)発表
立も重要であるということを認識する機会として
意義があったと思われました。
ポスター報告の模様
16
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ポスターの前で(写真は西山)
国際結核肺疾患連合会議報告
国際研修ネットワーキングの場としてのブース出展
式では島尾顧問よりファニング博士のこれまでの
2008年10月16∼20日までの5日間,結核研究所・
活動が紹介され,IUATLD北米地域会長(2000-
結核予防会(以下RIT/JATA)は昨年度に引き続
2003年),IUATLDの会長(2003-2005年)など,国
き今年もブース展示を行いました。ブース展示で
際的な重責を務められた功績を称えられました。
は訪れる人々にRIT/JATAの研究や国際協力の活
これに対しファニング博士は,結核予防会のネパー
動を紹介します。今年の特徴は主に,1)国際研修
ルでの地道な,しかし確実な活動に非常に感激し
に関心をもたれた方が多くいた, 2)ラボ(実験室)
たこと,これらの活動は先進国と途上国がともに
のテキストに関心が高く,18日にJICAと共同でお
手を携えることができた素晴らしい実例であるこ
こなったシンポジウム“M o r e F o c u s o n
とが述べられました。博士は公式には退職されて
LABORATORY よりラボの活動を焦点に”にも
いますが,世界賞受賞によって今後も結核対策に
多くの方が集まった, 3)国際研修卒業生がブース
尽力されていく決意を新たにされていました。世
に立ち寄り所属や連絡先など情報の更新ができた,
界賞受賞賞金は母校アルバータ大学の人材育成プ
といったことにありました。隣にはJICAブースも
ログラムへ寄付されており,1998年より始められ
設置され,各国のプロジェクトや国際研修の活動
た世界賞がますます広がりをもって世界の結核対
について連携を取りながら日本の活動を伝えるこ
策へ寄与していることを強く感じました。
とができたと思います。
(結核予防会本部国際部 大室 直子)
(結核予防会本部国際部 下谷 典代)
国際研修卒業生ネットワーク・ミーティング
19日には結核研究所の国際研修卒業生ネットワー
ク・ミーティングが行われ,およそ70名が参加し
ました。冒頭,加藤副所長の挨拶ではこの卒業生
のネットワークが今後世界で結核対策を行う上で
貴重なリソースであり重要なネットワークになっ
ていくと,この会の意義を説明しました。また情
報共有セッションでは,山田国際協力部長から本
年7月に東京で行われた国際結核シンポジウムおよ
展示ブースでの様子
秩父宮妃記念結核予防功労賞世界賞授賞式
びその中で発表された「ストップ結核ジャパン・
アクションプラン」の紹介を行いました。続いて
17日にはIUATLD総会にて,第11回秩父宮妃記
各国代表から情報共有の発表が行われ,45周年を
念結核予防功労賞世界賞授賞式が行われました。
迎え世界97カ国2,000名を超える国際研修の歴史の
本年はカナダ・アルバータ大学名誉教授のアン・ファ
重みを感じながら,世界の結核対策を進めていく
ニング博士が受賞されました。ファニング博士は
ためにもこの貴重なネットワークを強化していく
長年,世界の結核対策に医師としての関わりだけ
ことがますます必要であると改めて感じました。
でなく活動家として関わってこられました。授賞
喜びをかみしめるファニング博士(左は島尾顧問)
(結核予防会本部国際部 業務課長 安藤 宣孝)
ネットワークミーティングの様子
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ノルウェースタディツアー報告
独立行政法人国立病院機構
札幌南病院呼吸器科 鎌田 有珠
平成20年7月のある日,結核研究所の加藤誠也副
所長からお電話を頂いた。
「結核研究所の研究事業の一環として数年前か
ら結核対策先進国の視察を行っており,本年はノ
ルウェーを訪れる予定がある。ノルウェーの結核
罹患率は6.5で,貴君の診療拠点である札幌市並び
に北海道は数年後にはこのレベルに達して頂きたい。
将来のあるべき姿を予め知っておくことは有意義
と考え,視察メンバーに推薦したい」
思いもかけず,ノルウェースタディツアーの末
席を汚すこととなった。9月下旬,ノルウェー公衆
衛生研究所のDr. Einar Heldal の御案内で,実り多
い視察をさせて頂いた。
ノルウェーの結核の現状
2007年の患者は307名。ノルウェー人は64名で罹
患率は1.5と極めて低い。順調に減少し,また多剤
耐性結核の症例もほとんど見られない。高齢者に
多く,発見の遅れにより不幸な転帰をとる例が少
なくないことが残された課題とのことである。
一方,喫緊の課題は全体の約8割を占める移民患
者対策である。移民並びに移民からの患者発生が年々
増加し,ノルウェー全体の罹患率はむしろ上昇傾
向にある。移民患者は20から30代に圧倒的に多い。
移民はそれぞれのコミュニティ内での交流がほと
んどで,ノルウェー人との接触及び感染はほとん
ど認められない。
多剤耐性結核は年間数例であるが,その多くは
移民患者である。上記の理由でノルウェー国内で
の感染の可能性は低く,そのほとんどは母国で既
に感染したと考えられる。
移民患者対策
ノルウェーはEU非加盟であるがシェンゲン協定
調印国であり,国境は無いに等しい。貧しい国の人々
が豊かな国への移動を考えるのは自然なことであり,
それを阻むことは難しい。移民特に難民,亡命希
望者から結核患者が発見された時に,強制退去さ
18
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せても再び舞い戻って来る可能性がある。この間
に不十分な治療により耐性患者となった場合,却っ
て治療は困難となる。
移民患者に対する基本的なスタンスは,
・移民の流入は止めようがない。
・入国の段階で確実に結核患者を発見すること
が重要である。
・ 更に発見された患者はたとえ不法滞在者であっ
ても退去はさせず,確実に治療を完了する。
・ 結局はその方が,ノルウェーの結核対策にとっ
ては得策となる。
と言えよう。
結核は社会経済的疾患であり,社会の不平等さ
を示す指標の一つと考えられる。社会の質は弱者
やその周辺の人々(移民,不法滞在者,住所不定者,
薬物やアルコール依存症)への対応で評価可能で
ある。ある時,住所不定者と思しき老人が道端で
雑誌を売っていた。表紙を見るとDr. Heldal には無
用と思われたが,彼は躊躇無く購入し,老人に経
済的援助をした。この国の懐の深さの原点を見た
気がした。
ノルウェー公衆衛生研究所で参加者の皆さんと
(右から3人目が筆者)
結核医療体制
特徴として,
・完璧な登録システム
・呼吸器科医,感染症専門医,小児科医のみが
結核の治療を開始可能
・全患者,全治療期間のDOT
が挙げられる。
病院は基本的に公営で,RFPの処方情報なども
管理されており,登録の漏れはほとんど無い。結
核治療を行う医師に制限を与えることにより医原
性の多剤耐性結核の抑止効果がある。他にも様々
な規定が法律に記されている。投入される人的経
済的資源は相当なものの様だ。
Dr. Heldal は「人口500万人弱の小国だから可能」
とコメントされていた。その条件に加えて,「結核,
特に多剤耐性結核に対する強い危機感」が根底に
あることは想像に難くない。
約100年前,ノルウェーは貧困のゆえに人口10万
対300以上と結核死亡率の最も高い国の一つであっ
たという。「叫び」で知られる画家,ムンクの姉
も十代の若さで亡くなっている。姉を描いた「病
める少女」像を「結核対策ガイドライン」の表紙
に見ることが出来る。「悲劇を繰り返さない」強
いメッセージを感じるのは筆者だけではないであ
ろう。
結核対策ガイドラインの表紙
WHOたばこ対策部長 ベッチャー博士来会!
2008年12月2日,結核予防会本部に,WHO(世
界保健機関)より,たばこ対策部長のベッチャー
部長とTobacco Free Initiativeのリー技術専門官が,
結核予防会顧問の島尾忠男先生を尋ねていらっしゃ
いました。
11月号(複十字№324の21p参照)に「喫煙と結核」
という記事でご紹介した,「結核とたばこ政策の
モノグラフ」を発表した経緯や今後結核とたばこ
のプログラムを共同で行っていく計画をご説明さ
れました。2009年3月ごろには,開発途上国へ抗結
核薬の提供をしてきたように,安価なニコチンパッ
チやガムをたばこ対策が進まない地域に提供し,
たばこ対策を推進することを計画されているそう
です。ネパールで進めている先駆的な事例を増や
していきたいというご説明がありました。そこで
結核予防会が世界で行っている結核対策のプロジェ
クトを紹介しました。結核で培ったフィールドを
今度はたばこにも生かしていくことが求められて
いると感じました。
日本は,早くから「たばこ規制枠組み条約」に
批准したことを評価される一方,まだまだ「完全
な無煙環境(Total Tobacco-Free)」という点では,
弱いというお言葉を頂きました。翌日は神奈川県
議会を訪問し,「神奈川県公共的施設における受
動喫煙防止条例(仮称)」に対する意見交換を行
う予定と伺いました。WHOも神奈川県の取組みに
期待を寄せているようです。「世界の各地で行わ
れている『無煙環境』は,必ず日本でも実現でき
るのですよ」という励ましの言葉をベッチャー部
長にいただき,たばこ対策を進める思いを新たに
しました。 (文責:編集部)
左からベッチャー部長、島尾顧問、リー専門官
来会の記念に「たばこイニシアチブ」の
ロゴ入りボールペンが島尾先生に手渡されました
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カンボジアスタディツアー団長報告
結核予防会総務部
須田 勝吉
部長 思いもしない事態発生
11月26日,当初予定のタイ航空TG643は,バンコ
ク空港の事情で欠航。便を変更して搭乗手続きを
するが,順延の後に欠航。出国の逆を辿り[welcome
to JAPAN]の文字を複雑な思いで眺めながら入国。
婦人会の皆さんの意向を確認し,翌日出発でツアー
続行を決断。往復共にタイ経由をベトナム経由に
切替えることにし,早朝に意気揚々と出立したホ
テルに帰還。
カンボジア第一歩
翌27日,ベトナム航空VN951は,離陸滑走路R4
に誘導され,10:38に機首を上げて無事離陸。機中,
安堵で赤と白の食前ワインが体中に染み渡った。
14:55(日本時間16:55)にホーチミン空港に
着陸。2時間半余りの待ち時間の後,18:00にプ
ノンペン空港に到着。現地スタッフ山本さんの出
迎えを受け,夕刻のプノンペン市内をバスでホテ
ルへ向かった。
滞在中,毎日驚きは続くのだが,センターライ
ンを越えて車が向かってくるし,溢れるほどのバ
イク・バイクタクシー,自転車が時折逆走したり,
直前横切りがあったり,交通ルールがあるのか,
ないのか恐ろしい限りであった。信号のある交差
点がほとんどなく,また,あっても信号があるこ
とを認識していない人もいるということで,思わ
ず前座席の手すりを握り締めてしまったのである。
また,夕涼みをしているのか,いたる所に小さ
な人の集まりが出来ていた。カンボジアの人口は,
約1,400万人で,そのうちプノンペンの住民は約200
万人ということだが,全ての人が外に出ているの
ではないかと思う程であった。照度が少し低いと
感じる明かりの中で,屋台などが活気づいていた。
到着したホテルで,現地スタッフの西山さん,
出張中の内村さんに出迎えられ,今後のスケジュー
ルなど説明を受け,カンボジアに到着したことを
改めて実感した。カンボジア最初の夜が何事もな
く更けてゆくことに,何はともあれ感謝であった。
CENATとCATA
28日,CENAT(国立結核ハンセン病対策センター)
を訪問した。CENATは,白壁に薄いオレンジの模
様が印象的な4階建ての建物で,1階にCATA(カ
ンボジア結核予防会),3階にJICAが入り,JATA
のメンバーは,JICAの事務所の中に入っていた。
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西山さんに受けた説明を要約すると,CENATは,
日本で言えば,厚生労働省に当たる国の機関であり,
国全体の結核対策の総合的マネージメントを行う
所である。CATAは,高齢者,工場労働者への教育・
啓発活動,コミュニティーDOTS活動など身近な地
域活動を行う組織である。CENAT,CATA,JICA,
JATAが一体となり,カンボジアの結核対策全体が
展開されていた。
CATA代表のモン・キー氏の出迎えを受けた後,
トンレサップ川の河畔の建物に案内された。そこは,
ダイサン村の住民ボランティアが集まり,コミュー
ンの指導者との対話による啓発が行われる現場だっ
た。モン・キー氏や区長の挨拶,そして,対話へ
と進んでいった。「Q.結核は遺伝病ですか」「A.
そうではありません」,「Q.結核は治りますか」「A.
薬で治ります」等の一問一答が繰り返された。住
民ボランティアの皆さんは,ひと月に1人の結核
患者を探し,治療に結びつけるように活動してい
るということであった。終盤,日本からの我々に
感想を求められ,尾上さん(京都市)と私が活動
に敬意を表し,活動の継続が重要であることを述
べた。
午後再びCENATを訪問し,結核病棟を見学した。
患者さんに向井さん(青森県)が中心となってプ
レゼントを渡し,激励して回った。ICU病棟も含め
開放的な治療の現場である。マスクをしているが,
上半身裸で,元気に遊びまわる裸足の子供たちも
見られた。2001年に寄附した元茨城県支部の検診
車があったが,今は週2日位活動しているという
ことであった。
記念式典で挨拶をする筆者
別室に関係者が集合し,CATA5周年記念式典
が厳かに始まった。CENATのマオ・タン・イェン
氏の歓迎挨拶,モン・キー氏のCATA活動報告,
JICAの村上氏とWHOのジャミートンシン氏の挨拶
と続き,最高潮に達した緊張の中で指名を受けた
私は,歓迎への感謝,JATAとCATAの協力強化等
を述べた。そして,保健省大臣マン・ブン・ヘン
氏がJICA,JATAからの支援に対する謝辞を含む
挨拶を行い,最後に,当方が1,000USドルの寄附を
行い,プレゼント交換,記念撮影で式典を終えた。
夕刻に場所を移し,CATA主催の夕食会が行わ
れた。恒例のロアム・ヴォン(輪踊り)で交流も
一層深まり,やがて,小田嶋さん(秋田県)のラ
ストスピーチでプノンペンの行事を終えた。
アンコール小児病院
12月1日,シェムリアップのアンコール小児病院
を訪問した。1993年シェムリアップ市を訪れた写
真家井津氏の設立決意を受けて,1999年2月に日
米中心に3,000人を超える人々の支援で開院したと
いう病院である。訪問者が多いこと,感染予防を
したい,子供たちを見世物にしたくないというこ
とから訪問者対応のために建設され,出来上がっ
たばかりという建物に案内され,日本人看護師の
赤尾さんから活動状況などの説明を受けた。
15歳までの子供を対象とし,24時間体制の救急
病院で,1日平均350人の外来があり,50床の入院
病棟と5床のICU病棟がフル回転しているとのこと
であった。医療従事者教育を行い,サテライトプ
ロジェクトとして医師,看護師を州立病院へ派遣
している政府の教育認定病院で,地域医療支援,
保健教育プロジェクトによってカンボジアの保健
衛生の向上を目指している。
治療費は無料だが,支払うことの出来る患者(約
2割)には1,000リエル(約30円)の寄附をお願い
しているということであった。5歳未満の子供の
死亡率は人口1,000人対140で,アジアで最も高く,
下痢や栄養失調など予防できる病気で亡くなるこ
とも少なくない中,呼吸器疾患,結核,破傷風そ
してHIV/エイズなどの子供がここで受け入れられ
ている。笑顔のない子供を受け入れ,退院時に笑
顔を見られても,その子供が亡くなっていたとい
うことを訪問看護で知ることになるのが現実だと
いう。運営費が年間1億5千万円で,どこまで続
けられるのか厳しい現実である。
人々で溢れている外来受付,患者と家族の自炊
のための炊事場,野菜栽培の畑等を案内してもらっ
た後,清水さん(長野県)から施設へのプレゼン
トを渡し,200USドルの寄附も行った。
説明して下さった赤尾さん(前列右から2人目)と
現地スタッフ山本さん(前列右端)
見たまま,感じたまま
高級なホテル,瀟洒な邸宅が建ち並び,42階,
53階建の高層ビル建設がある一方で,ハンモック
だけの路上生活者,粗末と見える家(小屋),川
にせり出す高床式の水上家屋や舟のみの水上生活
者の存在があった。
プノンペンのセントラルマーケット,シェムリアッ
プのオールドマーケットで多くの人々が逞しく働
いている姿も見た。一方で,小さな店が多く見ら
れる街並みに,何をするともなく集う,しゃがみ
込む,佇む人々が多く見られたのは気になった。
そして,カンボジアの人口が1千万人の時代に
200万人が殺戮されたポル・ポト時代を物語る博物
館「トゥール・スレーン」では,死を目前にした人々
の写真の目,積み上げられた頭蓋骨の写真の光景に,
命の尊厳の何たるかを思わざるを得なかった。暑
い日差しの庭にはプルメリアの白い花が歴史の証
人者のように風に揺らいでいたのが印象的であった。
また,世界遺産で,9∼13世紀に栄えたアンコー
ル王朝の遺跡である「アンコール・ワット」,「ア
ンコール・トム」では,悠久の時を感じることが
出来た。
無事に解団
12月2日,雲の上から富士山,朝焼けを眺め,帰国。
メンバーそれぞれの帰路の無事を約して解団した。
思い出をスーツケースに詰め込んで,今回のカ
ンボジアスタディツアーはその目的を終えた。学
ぶことの多かったスタディツアーが成功裏に終え
たこと,多くの関係者の皆さんに心から感謝である。
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女性の喫煙が胎児に及ぼす
影響について(後編)
群馬大学大学院小児科学分野
准教授 望月
博之
4.女性の喫煙,受動喫煙への対応を考える
の被害は深刻である。健康増進法第25条では,「学
1) 母親の喫煙と小児
校,体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,
Lanneroらの報告によれば,喫煙の女性が妊娠し
百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店その他多数
た場合,妊娠後期と乳児期前半には喫煙を控えるが,
の者が利用する施設を管理する者は,これらを利
妊娠前半と乳児期後半には,それまで同様に喫煙
用する者について,受動喫煙を防止するために必
するようである。出生直後に確認できる障害であ
要な措置を講ずるよう努めなければならない」と
れば,妊婦の喫煙との因果関係もわかりやすく,
明示されているが,現在,上記に該当する全ての
喫煙が胎児に直接的な悪影響を与えたことへの理
施設が,満足のいく環境にないことは明らかである。
解が得られるものであるが,出生後の影響,特に
一般に,受動喫煙による健康への影響には,流涙,
年余に至って明らかになる異常があることも忘れ
鼻閉,頭痛等の諸症状や呼吸抑制,心拍増加など
てはならない。
が報告されているが,これらはあくまでもタバコ
喫煙する妊婦から生まれた小児は,喫煙しない
の煙に直接曝露された状態での症状と考えられる。
妊婦から生まれた小児に比べて知能の発達が劣る
問題は,被害を感じない程度で,かつ,慢性的な
ことや注意欠陥多動性障害(ADHD)の頻度が高
曝露についてであろう。いくつかの検討から,生
いこと,男児では暴力犯罪を犯す率が高いことな
活の中でのタバコの曝露は,認識される以上のも
どが少しずつではあるが報告されている(図1)。
のであることが証明されている(図2)。困った
これらは,胎児期の脳が低酸素状態に置かれたり,
ことは,目に見える煙やタバコの匂いより,透明
様々な化学物質にさらされたりすることによって
で無臭である成分により多く曝露される傾向にあ
何らかの障害を受け,その障害が長期に及ぶため
ることである。
と考えられている。
胎児を受動喫煙の害から守るためには,妊婦本
人の認識はもちろん,喫煙する家族や周囲への指
導を徹底する必要がある。このためには,女性が
妊娠する前に,家族の喫煙状況を改善すべく,準
2) 受動喫煙を回避する
22
備を進めなくてはならない。妊婦が受動喫煙の危
受動喫煙とは,「室内又はこれに準ずる環境に
険性を認識し,胎児の受動喫煙の被害を防止でき
おいて,他人のタバコの煙を吸わされること」と
るような教育が必要と思われる。タバコの害の啓
定義されているが,日常生活において,受動喫煙
発にあたり,独立行政法人環境再生保全機構によ
1/2009 複十字 No.325
る冊子「教えて!こどものぜん息」の中では,「Q,
しかしながら,有効であったのは設置当初のみであっ
たばこはやめたほうがいいでしょうか?」の問い
たようである(表)。識別カードの普及率は全国
に対して,「A,家族の喫煙は,赤ちゃんの喘息
的にはまだ2割ほどで,貸与や使い回しが発覚する
の発症に重大な影響を及ぼします」と明言してい
など混乱が続いている一方,深夜帯の午後11時か
る(図3)。家族の喫煙,特に母親の喫煙は,乳
ら午前5時の自販機での販売自粛が,識別カード導
幼児の喘息の発症に密接な関連があること,また,
入と引き換えに24時間稼働化への議論がなされて
母親の妊娠中の喫煙も喘息の発症因子として明ら
いるとも言われており,青少年を取り巻くタバコ
かであることも述べられている。胎児への影響が
販売の実際は楽観できるものではない。
深刻であることから,受動喫煙から回避すること
は極めて重要であることを,妊婦教育として繰り
返し述べられるべきである。
中学生,高校生の平成8年,12年,16年における
喫煙経験率を比較すると,男女ともに次第に減少
しているのがわかる。好奇心から吸い始め常習的
5.妊婦とタバコをめぐる諸問題
になってしまうことが考えられるため,好ましい
1) 家族の禁煙の問題
現象と歓迎すべきであるが,一説には,最近の青
母親が喫煙者であれば,これまでの胎児への不
少年は携帯電話やゲームにお金がかかってしまい,
利益を説明し納得を得ることも可能であるが,父
タバコ代がないための現象とも言われている。こ
親や祖父では,なかなかうまくいかないのが現状
の減少は世界的に見られるようであるが,いずれ
である。家庭で喫煙する際には,ベランダや換気
にしても,十代での喫煙率を下げることは,妊娠
扇の下で喫煙するという保護者が増えているが,
中の喫煙・受動喫煙を低下させることに直結する
この程度では受動喫煙の害を完全に防ぐことはで
と思われる。
きない。妊婦の受動喫煙を完全に防ぐためには,
一方,諸外国に比較し,日本ではタバコの販売
家族全員の禁煙が最良の方法であるが,「子供は
価格が安いことも,青少年の喫煙に影響するとい
変わることができるが,大人は変わることができ
う報告もあるため,常習者も喫煙習慣を止める可
ない」のたとえのごとく,それができない大人には,
能性が大きい1箱1,000円まで値上げすることは,
せめて家の敷地内での禁煙,帰宅後の禁煙を課す
あながち,間違いではない。青年期に喫煙の習慣
必要がある。
が作られなければ,生涯,喫煙とは無関係でいる
2) 青少年と喫煙の問題
ことができるという考えは,喫煙の常習者を社会
近年,本邦においても,喫煙の習慣はローティー
から減らすにあたって重要である。畢竟,妊婦の
ンから見られるようである。未成年者にタバコが
喫煙,受動喫煙をなくすには周囲の喫煙者をなく
購入できないように,カードを用いる成人識別機
すことが重要で,これには,喫煙を自分の意思で
能付きのたばこ自動販売機が設置されてきたが,
行わない,または,喫煙自体に興味を抱かせない
種子島では2004年から先行して検討されている。
青少年からの教育が不可欠であろう。(了)
1/2009 複十字 No.325
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日本医師会「禁煙に関する声明文」
について
日本医師会常任理事
内田 健夫
日本医師会では,1999年,来日したWHOのブル
ントラント事務総長との座談会において,禁煙活
動を積極的に推進していくことを明らかにして以降,
WHO「たばこ規制枠組み条約」の成立,批准に向
けた要望書を厚生労働大臣等に提出し,また「禁
煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)」
を行うなど禁煙推進活動を積極的に展開してきて
いる。
2000年,2004年と2008年には,医師の喫煙行動
と医療機関における喫煙防止対策の状況等を明ら
かにすることを目的に,日本医師会員を対象とし
て喫煙に関する意識調査を実施した。2008年の調
査は現在,結果集計中であるが,2004年の調査結
果では,2000年と比べ,男性医師の喫煙率が有意
に減少するとともに,「医師は立場上喫煙すべき
でない」,「患者は喫煙すべきでない」と考えて
いる医師が男女とも増加するなど,良好な変化が
認められた。本調査は,禁煙に対する意識向上に
もつながっていると考えている。
2008年9月16日,日本医師会では,禁煙に対す
る取り組みの一層の推進を図るため,「禁煙に関
する声明文」を第7回理事会で承認し,翌9月17
日の定例記者会見において公表した。本声明文は,
各都道府県医師会の他,内閣総理大臣,厚生労働
大臣をはじめとする関係大臣並びに都道府県知事
等へも提出した。
今後も引き続き国民の健康を守る立場から,禁
煙活動を推進していきたいと考えている。
禁煙に関する声明文
喫煙は,肺がんをはじめとする多くのがんの原因となるほか,慢性気管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾
患や,心筋梗塞や脳卒中などの心・血管系疾患の原因となることが国内外の研究によって確立しています。ま
た,喫煙者のみならず受動喫煙にさらされる周囲の人たちに肺がんや心筋梗塞,胎児を含めた発育障害,老化
など多様で重大な健康障害をもたらします。さらに,たばこに由来する医療費の増加や,火事をはじめとする
社会的損失等,甚大な影響を及ぼします。
我が国は,平成17年2月に発効したWHOたばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約(FCTC)の締約
国となっています。FCTCの目的は,「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康,社会,環境及
び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」です。喫煙率の低下,特に若年者や女
性における喫煙率の低下と受動喫煙の防止に取り組むことは,極めて重要かつ喫緊の課題であり,国としての
責務であると考えます。
日本医師会でも,平成15年に「禁煙日医宣言」を採択し,会員の喫煙実態調査,医療機関における禁煙対
策の調査を継続的に実施し,また資料やポスターの作成,配布,医師会館の禁煙等様々な禁煙推進活動に取り
組んでいます。
今般,神奈川県において受動喫煙による健康被害を未然に防止し,県民の健康の確保を図るため,県,県民,
保護者及び事業者の責務を明らかにした「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)」骨子案が発
表されました。不特定多数の者が利用する公共的施設における受動喫煙を防止する内容で,禁煙社会の実現に向
けて大きく踏み出すものとして,高く評価されます。今後,同様の取り組みが全国に広がること,そして職場に
おける受動喫煙防止の取り組みが推進されることを,日本医師会としても期待し協力したいと考えています。
喫煙開始年齢の若年化と女性の喫煙率の上昇は,個人の健康問題にとどまらず,社会的にも大きな課題です。
若年者の喫煙率低下には,幼小児期からの喫煙防止教育とあわせて,職場・公共の場所の禁煙とたばこの価格
を上げることが有効な手段とされます。日本のたばこ価格は欧米に比較して安く,たばこ税の引き上げにより
価格を上げることで喫煙率,特に若年者の喫煙率を低下させることは,健康の保持増進に寄与するだけでなく,
たばこの害による社会的負荷を軽減するという点で,日本の将来にとって重要な意味を持っています。
日本医師会では,今後,以下の取り組みを進めます。
1, 医療機関,医師会における全面禁煙の徹底
2, 禁煙治療・禁煙支援体制の整備
3, 喫煙防止教育の推進
4, 若年者や女性の喫煙抑止のための,たばこ税・価格の引き上げ
5, 職場・公共の場所における喫煙の法的規制の推進
平成20年9月16日
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ずいひつ
国際選挙に思
国
国際選挙に思う
際選
際選挙に思
際選挙に思う
際
選挙 思
思う
翠会精神医学研究所副所長
(前厚生労働省健康局長)
西山 正徳
世界柔道連盟の理事に日本人が一人も入れなかっ
た,と先日の新聞報道にあった。この記事を読
んで私は「へー,こんなになっちゃうのかな?
何が連盟で起こったのかな。柔道の世界で日
本人が一人も入らないなんてちょっと考えられ
ないけど。例によって日本人バッシングか
な・・・」と溜息が出てしまった。つい最近,
柔道界のある幹部の方と話す機会があったので,
どうして日本はそのようなことになったのか聞
いてみた。彼は,理事は世界中の加盟国が投票
で決める。韓国のお金に負けた,と。そこで私
は彼に理事ポストを確保することが何故それ程
重要なのか尋ねてみると,それは競技ルールの
変更・決定する権限があるからとのことであった。
以下要約すると柔道には「組み手」と「足取り・
寝技」とが対極する攻め手で,日本柔道は,「組
み手」から背負いなどに移って勝つパターンを
評価し,腰から下を攻めることについては評価
点が低い。しかし,世界のすう勢は違う。組め
ば日本選手に断然有利だが,そういった規則を
嫌う国がほとんどでレスリングみたいな柔道になっ
てきている。柔道は相手と組んで勝負する。足
を取りに行くような形は駄目だ,とのことであっ
た。さらに,日本は優勝して300万円。ところが,
多くの国は「億」の単位,あるいは終身年金が
保障されている。今回の北京オリンピックで優
勝した石井もK1に奔っていく。情けない話だ・・・
とも。
彼とこんな話をしているうちに,私は2006年
11月尾身氏のWHO選挙を想い出していた。私は,
その選挙はナイス・チャレンジ,勇気ある闘い
であったと今でも思う。彼と武見敬三副大臣(当
時),麦谷真里東海北陸厚生局長,井上肇国際
協力室長と私(当時技術総括審議官)を中心に
世界中を飛び回ったが敗北した。その最大の理
由は,日本と中国におけるアフリカ支援の経済
力の差,であったと思う。
成田空港を出発し,パリでトランジット(何
と6時間待つことになる),南アフリカ連邦のヨ
ハネスブルグへ。そして現地大使館員と合流,
レソトに到着したのは,日本を出てから30時間
以上も経過した後であった。翌日,レソト国の
厚生大臣に面会する予定だったが,残念ながら
急遽,近隣の国へ出張とのことで,その代わり
事務次官と面談,選挙応援をお願いした。とこ
ろが,その後,経済大臣と面談した時,彼女が
WHOの選挙のことを知らないせいか雑談の中
で『ああ,彼(厚生大臣)なら今,北京に行っ
て留守だわ。何でもアフリカ中の大臣が保健医
療協力の打ち合わせのために北京に集まってい
るそうよ』。この言葉にはわが耳を疑った。事
務次官からは,大臣が中国に行っているとは一
言もなかった。30時間以上もかけて彼の地まで
来て,しかもお土産まで持って。私や外務省含
めて日本政府が中国のこうした会議開催の動き
について全く情報を得ていなかったことに愕然
とし,「ひょっとしたら」,と背筋が凍った。
世界柔道連盟とWHO選挙,どちらもお金で
票をとるような時代になった,と揶揄する人も
いる。しかし,外交インテリジェンス(真の外
交諜報)が無ければ選挙には勝てないことも事
実である。レソトで経験したことがジュネーブ
でも同じになってしまったのかも知れない。国
際都市ジュネーブには様々な国々,人種が混在
して住んでいる。永住している人もいる。果た
して,保健医療分野で,そのような日本人が何
人いるか知らないが,街角やカフェ,晩餐会な
どでの語らいの中に,真の情報があるとしたら
日本は国際選挙の闘い方を根本から変更する必
要があるのではないだろうか。そういうことを
思わせてくれただけでも一つの収穫ではあったが,
敗北が決まった時のジュネーブの選挙対策本部
の部屋で,全員を前にして尾身氏が流した涙を
私は生涯忘れない。そして,
それを我々は無駄にして
て
はならない。
彼の情熱と勇気に乾杯!
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新型インフルエンザ対策シンポジウム報告
日本におけるパンデミックインフルエンザ対策
世界保健機関(WHO)の提案
平成20年11月17日(月)15:00∼17:00,東京
都庁第一本庁舎5階大会議場において,標記シン
ポジウムが開かれた。まず,石原慎太郎東京都知
事から新型インフルエンザは自分の身に起こる問題,
身内の問題として真剣にとらえてほしいと聴衆に
挨拶した。
WHOからの提案
WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂先生は,1
年間に1つは新しい感染症が生まれ,人類を脅かし
続けている。そこで,最近の鳥インフルエンザウ
イルスの変異の事例を紹介した。1918年のスペイ
ン風邪(死者4,000万人),1957年のアジア風邪(死
者2,100万人),1968年の香港風邪(死者100万人)
のような大流行が40年近く発生していないことから,
今世界で注目されている鳥インフルエンザに対して,
いつ起こってもおかしくない大流行に備えた対策
の基本的な考え方を示した。
パンデミックの発生は,まず「非常事態」と覚
悟を決め,日本中の公的機関や保健医療関係者及
び一般国民がそれぞれに役割を果たすべきである。
そのためには事前の合意形成が重要であり,医療
の選択肢や治療の優先順位,病院やセクター間の
役割分担と連携を明確にすべきである。日本人に
なじみのない自宅待機・外出制限などの理解を求
めることが封じ込めに必要であり,効果があると
ともに課題でもあると述べた。
新型インフルエンザの監視体制
国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部
信彦先生は,11月20日に厚生労働省新型インフル
エンザ専門家会議が行われ,具体的な案が示され
るため、今回はウイルスのパンデミック対策の問
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題点を話された。未知のものに対する準備には,
今までの医学的な経験の集積で行えないため,推
測や数理モデル等の情報が必要で,そのためにサー
ベイランスを総動員して対策を実施することが望
まれる。早期にウイルスの出現を検知し,健康被
害や社会機能の破綻を軽減するための対応には,
パンデミックを判断する政治・行政・医療・メディ
アがパニックにならないことが重要である。また,
わが国の感染症サーベイランスネットワークを活
用し,新型インフルエンザにも導入することが必
要になると説明された。
新型インフルエンザへの準備
国立国際医療センター国際疾病センター長の工
藤宏一郎先生からは,臨床の立場から新型インフ
ルエンザは通常のインフルエンザと鳥インフルエ
ンザとどのように違うかを説明していただいた。
鳥インフルエンザは急性期をすぐ迎えるため,不
安を引き起こしており,今後起こりうる新型イン
フルエンザに対して早期に診断・治療することを
開発することが重要で人に感染する鳥インフルエ
ンザ症例から推量されるとした。今できることは,
まず地域住民に対して感染予防として手洗い,マ
スク・手袋など感染を防ぐ啓発を行うことである。
そして,医療協力体制を地域の医療機関や中核病院,
医師会,消防,警察などと連携を図り,その統括
部門として東京都が薬や防護具の整備,各医療機
関への財政的支援が必要であると述べた。
東京都福祉保健局技監の櫻山豊夫先生のコーディ
ネートにより,3名のシンポジストとのセッショ
ンが続き,シンポジウムは終了した。
(文責:編集部)
結核予防会支部紹介のページ
島 根 県 支 部
すこやかな暮らしを
ささえるために
支部外観
はじめに(沿革)
(財)島根県環境保健公社は,昭和48(1973)年
2月,結核予防会島根県支部,島根県予防医学協会,
島根県成人病予防協会の既設三団体を統合し,更
に水質汚濁に係る検査への対応等,当時の社会状
況を背景に環境検査機能を付加し,環境保健事業
を推進し県民の健康の増進と福祉の向上に寄与す
ることを目的に健診検査の専門機関として設立し
ました。
昭和49年4月に,県西部地域における胃がん検診
等の精密検査機関であった島根県成人病予防センター
を統合し,県西部の健診体制の充実を図りました。
平成8年には島根県初の人間ドック・検診の専門
施設として「総合健診センター」を開設し,平成
15年にISO9001認証取得(環境部門),平成16年に
は食品衛生法第26条第1,2,3項の登録検査機関とな
る等,幅広く事業を展開しています。
拠点
松江市に本拠をおき,本部社屋に総合健診センター
及び食品検査センターを併設。その他,浜田市に
支所及び島根県成人病予防センター,出雲市に出
張所をおいています。
事業概要
【健診事業】
胃がん検診※車5台,乳がん検診車1台,子宮がん
検診車1台,胸部X線検診車10台,THP検診車1
台を整備し,巡回検診を主として,総合健診センター
における人間ドック・健康診断とともに,巡回・
施設の両面から健診体制を充実しています。
中でも寝たきり者仕様胸部デジタルX線検診車
による結核検診,施設における胸部X線装置をデ
ジタル化するなど,検診機器の充実化に取り組ん
でいます。
また,女性の健康を守るため,マンモグラフィ
による乳がん検診(巡回・施設),巡回による子
宮がん検診のほか,自己採取による郵送検査でH
PV検査を実施しています。 『事業内容』・・・・・・
「臨床検査」,「胃がん検診」,「乳がん(マン
モグラフィ)検診」,「子宮がん検診」,「結核・
肺がん検診」,「職域健診」(巡回・施設),「特
結核予防会島根県支部
(財)島根県環境保健公社
理事長 田代 收
定健康診査特定保健指導」(巡回),「学校検診」,
「人間ドック」
【普及啓発事業】
がんを始めとした生活習慣病,その他各種疾患
に関する予防等の普及啓発活動,募金活動を行っ
ています。また,結核の予防知識の啓発と意識の
高揚を図るため,教育広報活動,教育資材の斡旋,
島根県連合婦人会と連携して複十字シール運動を行っ
ています。
【成人病予防センター事業】
島根県成人病予防センターは昭和44年開設と同
時に人間ドック事業に取り組み,県下でも数少な
い専門の健診機関として消化器系疾患及び循環器
系の生活習慣病の1次予防や2次予防に努めています。
『事業内容』・・・・・「保険診療」(一般外来及び
一般入院),「自由診療」(人間ドック及び各種
健診),「受託検査」(開業医等からの検査受託)
寝たきり者仕様胸部デジタルX線検診車
【環境事業】
各種水質検査等をはじめ,環境保護・環境保全
に関連した各種検査・測定事業はもとより,フィー
ルドでの調査事業も積極的に行っています。また,
“安全・安心な食”のニーズに応えるため,食材
の微生物検査や農産物等の残留農薬検査を行って
います。
最新鋭の検査機器を備えるなど技術力の維持向
上に努めているほか,ISO9001品質マネジメントシ
ステムの導入,あるいは水道GLP認定取得など,信
頼性確保に努めています。 『事業内容』・・・・・・「用
水検査/環境検査」,「環境測定・調査」,「作
業環境測定/ばい煙測定」,「温泉成分分析」,「石
綿(アスベスト)調査」,「食品検査」等
おわりに
平成20年12月から新公益法人制度が施行され,
当支部においても設立以来の大きな転機が訪れま
した。そうした環境の変化への対応のほか,近年
の健診を取り巻く状況の厳しさなど,課題は多く
抱えていますが,今後も当支部に課せられた役割・
使命を果たすよう,役職員一丸となって努めてま
いります。
※当支部ではがん検診等,単独のものを「検診」,健康診断を「健診」と表記しています。
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結核との闘い60年 生涯を患者・障害者運動へ
こじま さだお
小島 貞夫
さん
平成20年9月8日逝去 享年90歳
文:日本患者同盟 会長 小林
昨年9月8日,東京都患者同盟の会長であり,日
本患者同盟副会長の小島貞夫さんが,呼吸不全の
ため入院先で死去されました。90歳でした。
葬儀・告別式は13日正午から地元清瀬市の全龍
寺普門閣斎場において,喪主は長女の加瑞子(か
ずこ)さんで行われ,患者・障害者運動に生涯を
かけた小島さんの死を悼み,各界から300余名の人々
が参列され,しめやかに行われました。
小島さんは,若くして結核を発病,都内の結核
病院に入院,そのころ結核は「不治の病」「亡国病」
と怖れられていました。そして患者は「死にたく
ない」「一日も早く治って家に帰りたい」との思
いを募らせ入院生活を送っていました。小島さん
はそういう思いを結集させて患者会をつくり,全
国で初めての患者同盟の結成を目指して力を注ぎ,
昭和21年10月13日,国立中野療養所の慰安室に9つ
の患者自治会(中野療養所・清瀬病院・浄風園病院・
保生園・杉並療養所・松戸療養所・上宮教会清瀬
療園・武蔵野療園・白十字村山療養所)の代表100
余名が参加して開かれた結成大会で議長団の一人
となり奮闘しました。
都患同盟結成後の小島さんは,まだ自治会のな
い都内の病院を訪問,患者会づくりの援助,激励
をかさねながら全国組織の結成に力を注ぎ,2年後
の昭和23年3月31日,待望の全国組織である,日本
患者同盟の創立で後に「人間裁判」を闘った故朝
日茂さんと共に中心的な役割を果たし,全国の療
友と力をあわせ,生命と医療,生活を守り抜く運
動を首都の患者同盟の誇りと責任をもってすすめ
ていきました。
そして,昭和26年の7月には,結核回復者のため
28
1/2009 複十字 No.325
義雄
の施設「東京アフターケアー」建設に力を注ぎ,
理事長として重責を担い,青森,熊本など5県で
のコロニー建設運動の先陣をきって開所式を挙行,
これを,朝日・読売・毎日の3大新聞が写真入りで
大きく報道し,都患同盟の名を広めました。小島
さんは昭和51年に革新都政のもとで内部障害者の
収容授産施設である,清瀬喜望園の建設に力を注ぎ,
初代園長に就任,結核対策とともに障害者の生活
と権利を守る運動にも力を尽くしました。
このように都患同盟は結成以来,患者・障害者
運動の前進をめざし全力を挙げてきましたが,62
年の歴史のなかで最高,最大の運動としてあげら
れるのは,昭和29年におこした「入退所基準反対」
の運動です。
この運動は,政府の再軍備強化政策により生活
保護予算,結核予算が切り詰められ,生活保護で
の入院患者は「菌が止まったら,熱があっても退
院させろ」という非情な「入退院基準」の強行実
施反対の闘いでした。
都患同盟は,7月27日,都庁,都議会に向け各地
から大型バス43台で結集,2泊3日で3,000人での大
陳情を展開。その結果,安井都知事が「患者さん
の気持ちはわかるが国の方針を曲げることはでき
ない。運用の面で充分考慮し,皆さんに不安を与
えないよう努力する。生活保護の継続,生活保護
基準の引上げ,結核ベッドの増設,社会保障費の
増額等についてもできるだけ措置し,政府に要請
すべきものは要請していく」の談話をラジオで放送,
発表しました。
この運動が果たした,都患同盟と小島さんの功
労は今日も語り継がれています。この運動で結核
回復者に都営住宅の優先割当制度をつくらせ毎年
の抽選会を行い,今日まで3,000戸の優先入居が行
われていることを見てもうなずけることです。
また都患同盟は昭和49年,結核予防会が7億円の
赤字を理由に当時の結研病院(現複十字病院)を
閉鎖せざるをえないという危機に直面したときに
結核予防会労組,日本医労協,東京医労連,日患
同盟と協力して「結核医療五者共闘会議」を結成,
小島さんは代表として予防会再建のため,経営側
と国を相手に先頭に立って奮闘しました。“五者
共闘”の運動により結核研究所への国庫補助,検
診単価の引上げなどの成果をあげ,複十字病院建
設の道を開きました。
このように,都患同盟結成以来60年余結核対策,
患者・障害者運動に生涯をかけてきた小島さんは,
おととしの一月,心臓発作で倒れ,車椅子生活と
なり,私たち関係者も心配しましたが,昨年6月10
日に結核研究所講堂で「ストップ結核パートナーシッ
プ日本」と結核予防会,研究所の後援を得て開催
した「日本患者同盟創立60周年記念集会・祝賀会」
で,私の主催者挨拶に続いて「結核との闘い60年」
と題し,歴史に残る運動の成果と教訓を,思い出
を交えながら報告され,参加者の皆さんから感動
の拍手が起きました。私どもも安堵の胸をなでお
ろしましたが,それから3ヵ月後に逝去という悲報
を聞くとは,無念の極みです。
私は,小島さんが倒れられてからは時折ご自宅
に伺い,お見舞いと報告をさせていただきました。
この記念集会の7ヵ月前の11月19日,結核予防会を
始め多くの関係団体が超党派の議員の支援,協力
を得て“日本と世界から結核をなくそう”をスロー
ガンに「ストップ結核パートナーシップ日本」の
設立総会が予防会本部で開催され,日患同盟の私
も役員(監事)に選出され,レセプションで乾杯
の音頭をとらせていただきましたが,その後伺っ
たとき設立総会の模様を報告しました。私が「小
島さんは62年,私は45年,おたがい都患同盟,日
患同盟の一員として結核と闘ってきたが,結核を
なくそうの悲願達成へ一歩近づきましたね」と声
をかけると,小島さんは「良かった,本当に良かっ
た。結研,予防会始め皆さんのご援助に感謝します。
義雄さん(いつもこう呼ぶ)もご苦労さんでした。
これからも頼みます」と励ましてくれた笑顔が忘
れられません。
井出厚生大臣(左)に要請中の小島さん(平成6年)
小島さんを偲ぶとき,忘れられないことがまだ
あります。それは都患同盟の大蔵大臣,厚生大臣
等への要請です。都患同盟は結核対策の拡充強化,
患者・障害者を守る要求を掲げ,主として歴代の
厚生大臣に要請してきましたが,会長の小島さん
はいつも先頭に立って頑張りました。その足跡を
列挙してみると,松浦周太郎労働大臣(昭和31年),
神田博厚生大臣(昭和32年),堀木鎌三厚生大臣(昭
和32年),池田勇人大蔵大臣(昭和32年),田中
角栄国会議員(昭和32年),福永健司労働大臣(昭
和36年),西村英一厚生大臣(昭和37年),小林
武治厚生大臣(昭和38年),神田博厚生大臣(昭
和39年),鈴木善幸厚生大臣(昭和40年),斎藤
昇厚生大臣(昭和46年),愛知揆一大蔵大臣(昭
和48年),三木武夫副総理(昭和49年),大平正
芳大蔵大臣(昭和49年),安部晋太郎官房長官(昭
和53年),渡辺美智雄大蔵大臣(昭和55年・五者
共闘会議代表と共に),園田直厚生大臣(昭和55年),
林義郎厚生大臣(昭和58年),渡部恒三厚生大臣(昭
和59年),斎藤十朗厚生大臣(昭和61年),津島
雄二厚生大臣(平成2年),井出正一厚生大臣(平
成6年),小泉純一郎厚生大臣(平成8年),宮下
創平厚生大臣(平成10年),丹羽雄哉厚生大臣(平
成11年),坂口力厚生労働大臣(平成14年),尾
辻秀久厚生労働大臣(平成17年)。というように,
これでも若干割愛していますが,大臣要請に力を
入れ,実現してきました。歴史に残る活動です。
小島さんを失った悲しみを乗り越え,一緒に闘っ
てきた結核制圧への悲願を受け継ぎ,「ストップ
結核パートナーシップ日本」の皆さん,「ストッ
プ結核パートナーシップ推進議員連盟」の先生方
とともに日本と世界から結核をなくす運動に微力
を尽くしていきたいと思っています。
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「複十字」掲載主要論文・記事一覧
№319(1月号)∼№324(11月号)/2008年
◆国内結核事情及び対策の動き
「第13回厚生科学審議会感染症分科会結核部会開催された」
№320 3月 p. 37
「35年ぶりに抗結核薬(リファブチン)が承認された」
№322 7月 p. 11
「公共広告機構(AC)第34回通常総会で結核予防会広告紹介される」
№322 7月 p. 29
「60年間結核と闘ってきた日患同盟が記念集会・祝賀会を開催」
№322 7月 p. 30
「結核予防週間特集」結核予防週間に寄せて2008 結核制圧に向けた結核予防
石川 信克
№323 9月 p. 2
「国際結核シンポジウム報告」 ストップ結核ジャパン(Stop TB Japan)
アクションプラン
№323 9月 p. 14
国際結核シンポジウム開かれる「世界の結核の征圧:アジアからアフリカまで」
下谷 典代
№323 9月 p. 19
国際結核シンポジウムに国際研修生と共に参加して
杉山 達朗
№323 9月 p. 21
「『結核の統計2008』を読む」
加藤 誠也
№324 11月 p. 2
「日本の国際保健協力と結核」
中野 靖彦
№324 11月 p. 10
◆DOTS
「神戸市結核対策におけるDOTS事業の取り組みについて」
田中 賀子
№319 1月 p. 8
「新潟市における服薬支援(DOTS)の現状と課題」
有田 範子
№320 3月 p. 8
「宮城県大崎保健所における地域DOTSの取り組み」
新澤 緑
№321 5月 p. 12
「結核の病院連携クリティカルパスの作成について」
青笹 美香
№322 7月 p. 12
「葛飾区保健所におけるDOTS推進の取組み−薬局DOTSの試み」
藤原 ひかる
№323 9月 p. 24
「保健所の役割と医療機関の連携を通して」
島田 和
№324 11月 p. 12
◆健診関係
肺がん集検−きのう,きょう,あした−
№319 1月 p. 6
「健康ネットワーク事業№17」
菊地 健司
№319 1月 p. 25
「健康ネットワーク通信№18」
菊地 健司
№320 3月 p. 36
「第18回がん検診に関する検討会開催」
№320 3月 p. 23
「健康ネットワーク通信№19」
菊地 健司
№321 5月 p. 25
「第44回日本循環器病予防学会参加報告」
上田 博子
№322 7月 p. 24
「健康ネットワーク通信№20」
菊地 健司
№322 7月 p. 28
「健康ネットワーク通信№21」特定健診・保健指導の成果の要−受診率向上に向けて
岡山 明
№324 11月 p. 30
◆結核予防会関連行事・事業
「第66回日本公衆衛生学会総会報告」地域保健∼その原点に返り未来を展望する∼
大西 照美
№319 1月 p. 4
「結核集団発生の対策に関する自由集会」に参加して
河合 ゆみ
№319 1月 p. 5
「『2007世界COPDデー』キャンペーン報告」
青木 新
№319 1月 p. 7
「結核予防会全国大会」 第59回結核予防全国大会支部長会議
№320 3月 p. 2
研鑽集会 国境なき感染症「結核」の制圧を目指して
加藤 誠也
№320 3月 p. 3
世界結核デーのテーマ解説 I am Stopping TB
№320 3月 p. 12
平成19年度フィルム評価会報告 健診の精度向上を目指して
菅野 通
№320 3月 p. 14
第29回結核予防会事務職員セミナー報告
木島 秀之
№320 3月 p. 15
平成19年度(第48回)結核予防会医師研修会
№320 3月 p. 17
マンモグラフィ講習会の更なる発展に向けて∼平成20年度開催予定のご紹介∼
星野 豊
№320 3月 p. 21
「第59回結核予防全国大会報告」第59回結核予防全国大会を顧みて
栗田 雄三
№321 5月 p. 2
国境なき感染症「結核」の制圧を目指して
永田 容子
№321 5月 p. 4
結核予防会全国支部長会議報告結核予防会
新潟県支部
№321 5月 p. 5
「第13回国際結核セミナー・平成19年度全国結核対策推進会議報告」
世界の動きに呼応した結核対策
№321 5月 p. 15
世界結核デー記念セミナー “ストップ結核パートナーシップ日本”に期待すること
№321 5月 p. 16
変革を続ける結核対策:課題と展望
№321 5月 p. 17
「健やか生活習慣フェスタ『健やか生活習慣国民運動』って知っていますか?」
№321 5月 p. 22
「『肺年齢』:新しい指標による肺の健康増進」 相澤 久道
№321 5月 p. 23
「“呼吸の日”に関する記者会見 肺のたいせつさを知るきっかけに」
№321 5月 p. 27
「平成20年度『女性の健康週間イベント』女性の健康課題と将来展望を考える」
№321 5月 p. 24
「日本結核病学会報告」第83回日本結核病学会総会印象記
大森 正子
№322 7月 p. 2
公開シンポジウム 今結核対策がおもしろい:世界への日本の貢献
№322 7月 p. 4
「アフリカンフェスタ2008に結核予防会が出展参加した」
冨名腰 あん
№322 7月 p. 6
「平成19年度フィルム評価会報告」
尾形 英雄
№322 7月 p. 14
「呼吸の日記念フォーラム2008 家族を守れ! 肺の健康を考える」
№322 7月 p. 20
「肺年齢測定体験会 呼吸の日記念イベントin横浜開催される」
№322 7月 p. 21
「日本呼吸器学会学術講演会に今年も出展」
№323 9月 p. 33
「JCサマコン2008 in 横浜に肺年齢出展」
№323 9月 p. 37
「ベトナムフェスティバル2008開催される」
№324 11月 p. 16
「グローバルフェスタJAPAN2008 世界へ響け! 地球を守るメッセージ」
№324 11月 p. 17
「平成20年度地区別講習会実施報告」
№324 11月 p. 24
◆世界の結核事業と結核対策の動き
「IUATLD報告」
結核対策における立ち向かうべき課題
岡田 耕輔
№319 1月 p. 12
結核予防会ブース出展と秩父宮妃記念結核予防功労賞世界賞授与
大室 直子
№319 1月 p. 14
∼「健康の外交」を2008年G8サミットに∼
№319 1月 p. 15
「2007年カンボジアスタディツアー報告 懐かしいカンボジア−その発展を目の当た
りにして」
岡田 加枝
№320 3月 p. 18
「南東アジア地域結核対策責任者会議でダッカを訪問して」
石川 信克
№320 3月 p. 19
「ヤープ・ブルックマン博士との勉強会」
№321 5月 p. 14
「NGO結核研究所・結核予防会フィリピン(RIT/JATA Philippines, Inc.)マニラ事務所
開設」
大角晃弘,大室直子,大菅克知,石川信克
№321 5月 p. 18
「結核サーベイランス研究会(TSRU)に参加して 山田 紀男
№322 7月 p. 16
「ザンビアでの住民主導による結核・HIVコミュニティーDOTSプロジェクト」
堀井 直子
№322 7月 p. 17
「国際研修45周年記念祝賀会 “結核対策における成功の鍵”」
下谷 典代
№323 9月 p. 22
30
1/2009 複十字 No.325
「研修生インタビュー」
卒業生研究所再訪問Dr. Victor Yamamoto Miyakawa 石黒 洋平
№323 9月 p. 28
結核研究所でのオペレーショナル研修を終えて
大室 直子
№323 9月 p. 28
◆ストップ結核パートナーシップ日本関連
「ストップ結核パートナーシップ日本設立総会開催」
№319 1月 p. 16
ストップ結核パートナーシップ日本だより
「ACSM? 人を引きつけ,輪をひろげよう」
鈴木 幹久
№320 3月 p. 13
「ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟立ち上がった」
№320 3月 p. 23
ストップ結核パートナーシップ日本だより№2
「結核分野で世界のコンダクターに」
三宅 新吾
№321 5月 p. 11
「ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟から結核対策に関する官房長官への申
し入れ」
№321 5月 p. 29
ストップ結核パートナーシップ日本だより№3
「いまなぜ『ストップ結核パートナーシップ日本』なのか?」
森 亨
№322 7月 p. 5
「ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟『マニラ首都圏都市貧困層における結
核対策プロジェクト』視察」
鈴木 真帆 №322 7月 p. 7
◆結核予防会本部事業所から
「ベストドクターズTMに複十字病院白石先生が選出された」
№319 1月 p. 27
「複十字病院工藤翔二院長が平成20年度環境保全功労者表彰を受ける」
№322 7月 p. 30
「2008G8サミット NGOフォーラム 市民サミット2008
−世界は,きっと,変えられる。−開催」
事業部普及課
№323 9月 p. 23
シリーズ新しくなった結核研究所(1)
「結核菌バンク」と「疫学情報センター」の開設
石川 信克
№324 11月 p. 9
「今年で3年目の在日外国人無料結核健診」
№324 11月 p. 16
◆支部紹介の頁
「愛知県支部」
藤岡 正信
№319 1月 p. 20
「三重県支部」
田中 桂子
№320 3月 p. 27
「滋賀県支部」
三谷 健太郎
№321 5月 p. 26
「京都府支部」
佐藤 篤彦
№322 7月 p. 25
「奈良県支部」
畑中 伊知雄
№323 9月 p. 32
「和歌山県支部」
植野 博文
№324 11月 p. 11
◆複十字シール運動
「平成20年度結核予防会広報・シール担当者会議『心ひとつに,夢をもって』」
松枝 尋子
№322 7月 p. 18
「平成19年度複十字シール募金結果報告」
№322 7月 p. 19
「平成19年度高額寄付を頂いた方々からのメッセージ」
総務部庶務課・事業部資金課
№323 9月 p. 34
◆エイズ・感染症
「今年もRED RIBBON LIVEが開催され、合わせてチャリティCDがリリース」
永井 頼政
№319 1月 p. 17
「C型肝炎に関する最近の情報」
相崎 英樹
№319 1月 p. 21
「『SARS いかに世界的流行を止められたか』(A4判297頁)出版」 №320 3月 p. 23
「ASEAN・日本HIV/AIDSワークショップ −アンコールは遠かった−」
山崎 厚司
№322 7月 p. 26
「新型インフルエンザに関する最近の情報」
森兼 啓太
№322 7月 p. 27
「国際エイズ会議(2008/8/3-8,メキシコシティ)参加報告」 島村 珠枝
№324 11月 p. 18
「タイ国チェンマイ県におけるUNAIDS理事会開催」 堀井 直子
№324 11月 p. 19
「『第4回アジア大都市感染症対策プロジェクト会議』の報告」
櫻山 豊夫
№324 11月 p. 20
◆教育の頁 シリーズかたき病−結核
「(10)『非結核性抗酸菌症(1)』」
青木 正和
№319 1月 p. 10
「(11)『非結核性抗酸菌症(2)』」
青木 正和
№320 3月 p. 10
◆教育の頁 シリーズ−結核予防会創立70周年を迎えるにあたって
「結核予防会創立70周年を迎えるにあたって(1)」 青木 正和
№321 5月 p. 8
「(2)『わが国の結核病学の特徴』」
青木 正和
№322 7月 p. 9
「(3)『まん延状況に合わせた対策を』」
青木 正和
№323 9月 p. 26
「(4)『これからの結核予防会』」
青木 正和
№324 11月 p. 14
◆たばこ
「受動喫煙のない社会の実現のために」
№319 1月 p. 24
「家庭内喫煙者による乳児への受動喫煙の影響に関する研究」
中田 ゆり
№320 3月 p. 24
2008年世界禁煙デー記念シンポジウム 子どもをたばこから守るために №322 7月 p. 22
受動喫煙のない環境−タバコの煙のない社会をめざして
№322 7月 p. 23
東京都内の街頭に肺年齢体験希望者の行列−「世界禁煙デー記念移動肺年齢測定体験
会」開催−
三宅 新吾
№322 7月 p. 24
「喫煙と結核」
島尾 忠男
№324 11月 p. 21
「女性の喫煙が胎児に及ぼす影響について(前編)」望月 博之
№324 11月 p. 22
◆思い出の人を偲んで
「久世 彰彦君」
山本 健一
№319 1月 p. 18
「東 義国先生」
島尾 忠男
№320 3月 p. 28
「磯江 驥一郎先生」
青木 国雄
№324 11月 p. 28
◆巻頭メッセージ
「年頭のごあいさつ」
西山 正徳
№319 1月 p. 1
「新春ご挨拶2008」
久野梧郎・石塚 實・神田アヤ子
№319 1月 p. 2
「第59回結核予防全国大会を迎えて」
泉田 裕彦
№320 3月 p. 1
「複十字病院院長を拝命して」
工藤 翔二
№321 5月 p. 1
「結核国際協力飛躍の年に寄せて」
仲村 英一
№322 7月 p. 1
「結核予防週間に当たって」
梅田 珠実
№323 9月 p. 1
「世界の結核対策に対する日本の貢献」
杉浦 康夫
№324 11月 p. 1
◆ずいひつ
「私が歩んだ保健師の3つの大罪とたったひとつの成果」
石井 英子
№320 3月 p. 16
「−トゥジュール・ジュネーブ−」
中谷 比呂樹
№320 3月 p. 22
「カヌーの愉しみ」
垣添 忠生
№320 3月 p. 26
「日本から学ぶこと」
小野崎 郁史
№321 5月 p. 21
◆その他
「結核予防会総裁秋篠宮紀子妃殿下構成・訳の絵本シリーズ出版開始」
№319 1月 p. 26
「切手に見る結核 2.BCG」
№319 1月 p. 32
「切手に見る結核 3.レントゲン」
№320 3月 p. 40
「切手に見る結核 4.検診風景」
№321 5月 p. 32
「切手に見る結核 5.結核に悩んだ国家元首」
№322 7月 p. 32
「切手に見る結核 6.結核に悩んだ文学者たち(西洋編 Ⅰ)」 №323 9月 p. 40
「切手に見る結核 7.結核に悩んだ文学者たち(西洋編 Ⅱ)」 №324 11月 p. 33
予防会だより
●平成20年度結核予防会ブロック会議各地で開催
本年度も,全都道府県支部が6ブロックに分かれ,各地で会議
が開催された。各ブロックの内容は,下記の通り。
[北海道・東北地区]
日 程 11月11日(火)
場 所 福島県(福島ビューホテル)
出席者 34名(7道県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して福島県支部佐藤副支部長並
びに本部山下事業部長からの挨拶後,協議に入った。
(討議事項)
・公益法人制度改革への対応について(北海道)
・公益法人制度改革に伴う各県支部の準備状況について(宮
城県)
・来年度の検査料金について(岩手県)
・各種検診等の読影料について(山形県)
・事業所健診(定期健康診断)および人間ドック健診のXM
Lデータ作成について(青森県)
・労働安全衛生法に基づく事業主健診及び政府管掌健康保険
生活習慣病予防健診受診者の特定健診結果データの提供に
ついて(山形県)
・特定健診及び特定保健指導のXMLデータの代行機関等への
提出状況について(山形県)
・特定健診実施にかかる看護師の配置状況について(青森県)
・特定健診・保健指導の実施取り組みの検討事項について(宮
城県)
・市町村の受診券発行状況について(秋田県)
・20年度,特定健診・特定保健指導の受診状況について(北
海道)
・特定健康診査の現状と課題について(福島県支部)
・特定健診の被用者保険の被扶養者の受診者確保についての
取り組みについて(秋田県)
・被扶養者の特定健診を効率的な実施の工夫について(秋田県)
・特定保健指導の運営について(福島県)
(次期開催県)宮城県
[関東・甲信越地区]
日 程 12月1日(月)∼2日(火)
場 所 東京都(ザ・ホテル ベルグランデ)
出席者 40名(9都県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して東京都支部石館副支部長並
びに本部山下事業部長からの挨拶後,協議に入った。
(討議事項)
・平成21年度特定健康診査の集合契約について(栃木県)
・特定健診の詳細健診項目について(埼玉県)
・特定健診・特定保健指導データのXML作成について(群馬
県)
・保健指導の料金について(千葉県)
・健診料金の最低保障制導入状況について(群馬県)
・結核・肺がん検診の受診者の減少とその対策(茨城県)
・じん肺のデジタル撮影について(埼玉県)
・CR搭載車の検診料金設定について(新潟県)
・検診車内における受診者のプライバシー保護について(神
奈川県)
・デジタル眼底カメラの使用状況について(神奈川県)
・集団での予防接種の取り組みについて(千葉県)
・競争入札の状況について(東京都)
・裁判員制度への対応について(茨城県)
(次期開催県)埼玉県
[東海・北陸地区]
日 程 12月4日(木)∼5日(金)
場 所 三重県(三重県健康管理事業センター)
出席者 23名(7県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して三重県支部草川副理事長並
びに本部金子専務理事からの挨拶後,協議に入った。
(討議事項)
・接触者健康診断の感染予防について(石川県)
・特定健診実施による受診者の状況と対策について(石川県)
・特定保健指導の料金について(富山県)
・特定保健指導の進捗状況,スタッフ,メニューについて(富
山県)
・本部のHDBシステム,活彩の利用状況について(石川県)
・事業所健診における胸部X線検査の読影について(三重県)
・複十字シール運動にかかる広報活動について(福井県)
・結核予防週間中の活動について(岐阜県)
・郵送募金における趣意書について(愛知県)
・胸部検診車の所有台数と更新計画について(愛知県)
・検診車製造計画及び資金手当てについて(静岡県)
・公益法人制度改革への対応について(静岡県)
(要望事項)
・検診機関への公的補助について(石川県)
(次期開催県)愛知県
[近畿地区]
日 程 10月10日(金)
場 所 兵庫県(ホテル北野プラザ 六甲荘)
出席者 25名(5府県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して兵庫県支部後藤理事長並び
に本部金子専務理事からの挨拶後,協議に入った。
(討議事項)
・特定健診・特定保健指導の進捗状況について(大阪府)
・特定健診と特定保健指導の混迷について(滋賀県)
・新規事業:医療機関の特定健診データ電子化委託事業(滋
賀県)
・特定保健指導についての受託,対応状況について(兵庫県)
・JATAネットワークについての説明(結核予防会本部)及
び各支部の取り組み状況等(各支部)
(事例紹介)
・「受診率向上に向けた取り組み」(兵庫県支部足立健診事
業部次長)
(次期開催県)京都府
[中国・四国地区]
日 程 11月13日(木)
場 所 愛媛県(東京第一ホテル松山)
出席者 43名(9県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して愛媛県支部仙波常務理事,
日本対がん協会荒田常務理事,本部竹下企画・情報部長からの
挨拶後,協議に入った。(結核予防会・日本対がん協会との同
時開催)
(討議事項)
・特定健診及び特定保健指導の実施状況(岡山県)(徳島県)
・特定健診及び特定保健指導の結果報告(岡山県)(広島県)
・がん検診の実施状況(鳥取県)(岡山県)
・がん検診受診率の向上対策(香川県)(愛媛県)
・各がん検診の実施体制(香川県)
・検診料金関連議題(高知県)(広島県)
・競争入札関連議題(山口県)
・健診(検診)スタッフ関連議題(広島県)(徳島県)
・個人情報関連議題(岡山県)
・公益法人の申請及び収益事業区分等(高知県)(愛媛県)
・公益法人の運用(愛媛県)
(次期開催県)山口県
[九州・沖縄地区]
日 程 11月27日(木)
場 所 佐賀県(グランデはがくれ)
出席者 32名(7県,本部)
開会にあたり,開催県を代表して佐賀県支部江崎専務理事並
びに本部山下事業部長からの挨拶後,協議に入った。
(討議事項)
・住民の特定健診での国保以外の方の受付について(福岡県)
・集合契約について(長崎県)
・健保組合等被扶養者の集合契約A・Bタイプで参加での各県
のメリット・デメリットについて(熊本県)
・自治体の集団検診現場における受付方法,健診後の処理方
法等について(熊本県)
・健診事故(怪我,針刺し等)処理,解決方法について(熊
本県)
・移動健診における車椅子利用者への危険防止対策について(熊
本県)
・妊娠中又は妊娠の疑いがある胸部X線撮影受診者の対応に
ついて(鹿児島県)
・巡回健診部門の事務スタッフの役割について(福岡県)
・COPD検診について(照会)(長崎県)
・健診の予約体制について(熊本県)
・結核塗抹培養について(熊本県)
・産業医受託事業場への産業保健活動について(熊本県)
・子宮がん検診医師の確保及び派遣報酬について(佐賀県)
・検診車の燃料費高騰による諸対策について(佐賀県)
・次年度検診計画の作成について(佐賀県)
(次期開催県)大分県
●平成20年度結核予防会胸部検診対策委員会精度管理部会フィ
ルム評価会開催
12月11日(木)・12日(金)の2日間にわたり,結核予防会
本支部より約80名の参加の下,結核研究所において標記評価会
が開催された。
●第30回(平成20年度)結核予防会事務職員セミナー開催
12月15日(月)∼17日(水)の3日間にわたり,21名の参加
を得て,標記セミナーが開催された。
1/2009 複十字 No.325
31
結核予防週間(複十字シール運動キャンペーン)実施報告(続報)
支部名 大阪府
① 9/24 13:30∼15:00 結核予防推進大会 大阪市「大阪国際会議場」 係員:16名(支部13名・他3名)
配布物 5点・280∼560セット 内容:<大阪から結核を追放する女性の集い>として,大阪府支部
と(社)大阪エイフボランタリーネットワークとの共催で,地区女性を対象に開催。・ 大阪エイフ会員
による結核予防関係婦人団体中央講習会の研修報告・大阪府健康福祉部保健医療室地域保健感染症課板
原氏による「大阪府の野宿生活者結核健診の現状と課題」とNPO法人HEALTH SUPPORT OSAKA井
戸氏による「社会的弱者の結核」と題した2つの講演・座長を支部長,助言者を副支部長とし,上記講
演の講師と会場参加者による講演内容に関しての質疑応答を行った。参加者273名
② 9/24 12:00∼15:20 肺年齢測定体験会 大阪市 「大阪国際会議場」入口付近 係員:7名(支部6名・
他1名) 配布物 3点・100セット 内容:スパイロメーターを使って呼吸機能検査を行った。肺年齢
測定を行うことにより,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防普及啓発を呼びかけた。受診者数:125名
③ 9/29 10:30∼14:30 街頭無料健診 堺市「クロスモール泉北」(堺市実施) 係員:支部6名 配布物
3点・15・300・2,000個 内容:健診会場に,週間名と実施期間を表示した横幕をつけた健診車とのぼ
りを設置。ティッシュやエコバッグ,オーキューバン(絆創膏)を配布しながら結核予防を呼びかけ,
街頭無料健診を行った。受診者数:94名
④ 8/1,22,9/8 12:00∼12:20 結核予防週間キャンペーン 当支部正面玄関前 係員:5名 配布物:4点・
95∼525個 内容:当支部正面玄関前にてのぼりを設置し,ティッシュやうちわ,オーキューバン(絆創膏),
エコバッグを配布しながら結核予防を呼びかけた。また,複十字シール運動へのご協力をお願いした。
⑤ 新聞広告 ・府政新聞(9/5)結核について,結核予防週間行事,街頭無料健診等の記事を掲載した。・
女性大阪(10/8)結核について,「結核予防推進大会」,「全国一斉複十字シール運動キャンペーン」
についての記事を掲載した。
⑥ 9/24∼30 11:00∼22:00 アドビジョン 大阪市中央区 道頓堀「トンボリステーション」 内容:屋外
電光サイン広告(大型フルカラーモニター)に週間名,実施期間,AC公共広告機構支援キャンペーン
「結核は,決して過去の病気ではありません。日本でも」,複十字シール,当支部健診車や支部名を入
れた結核予防週間告知CMを放映した。計154回
多額のご寄付をくださった方々
<指定寄付等>(敬称略)
占部浩一(新山手病院),吉森浩子,細渕セツ子,森田薫,
東條恵子,蜷川輝昌,児玉敦朗,柳澤弘仁(保生の森)
<複十字シール募金>(敬称略)
東京都−帝京中学・高等学校,東京都交友会,荒川区保健
所職員有志一同
新潟県−江部医院,長谷川進,波多俊二,新保眼科医院,
たかき医院,富樫医院,堀医院,まなべ整形外科クリニッ
ク,むとう医院,涌井医院,JA東日本くみあい飼料,文
明屋,新潟ファーネス工業,大平勇,小幡光一,関口次郎,
山本克巳,小出耳鼻咽喉科,西蒲中央病院,安田耳鼻咽喉
科医院,野村裕子,佐藤医院,西川内科医院,安田診療所,
村中歯科医院,小飯塚医院,加島屋,新潟県看護協会,中
村啓識,大熊内科医院,佐藤クリニック,県仏教会,近藤
堯,ラック,志田材木店,三栄製作所,協和製作所,浦川
原診療所,ロイヤルハートクリニック,庭野医院,下田渡
辺医院,小出さや子,早津内科医院,樋口医院,加納耳鼻
咽喉科医院,税理士法人小川会計,たかぎクリニック,竹
内クリニック,たけだ眼科医院,渡辺医院,創価学会新潟
池田文化会館,霜鳥内科医院,加藤研削工業,高瀬衛,弁
天町共同ビル,メディス,登坂尚志,宮原新聞舗,樋口病
院,斉藤内科消化器科医院,くろきクリニック,双葉印刷,
森下組,渋谷医院,斉藤貞一,松井組,ナルサワコンサル
タント,イタリア軒,新潟興産,須田医院,貝谷伸一,堀
田利雄,コニカミノルタNC,新井ふるさと振興,上越地
域総合健康管理センター,杉田医院,星野医院,相沢医院,
石栗吉枝,和田内科医院,新潟県労働金庫,阿賀野病院,
新宣,村山稔,Pronto Net,依田医院,山田医院 京都府−祇王寺高田智照
大阪府−福井登志雄,済生会野江病院,園田ニ,橋本祐次,
藤井昇,名和茂,キタグチ印刷,南順吉,高田公惠,鶴俊
夫,岡島美津子,鈴木雅子,八田光子,鍵本成敏,吉田岸
雄,小林公平,岸田豊子,青木啓一,村尾隆一,廣岡正明,
飯田順雅,穴吹立比古,島西チカエ,木村元士,脇田治重,
正岡徹,大洋かつを,湯川松子,古田裕三,森井塗装店,
池田典子,安田光隆,森英子,樋口茂治,佐野榮宏,東洋
製薬,岡田武忠,皆川友夫,岡本シモ,林滋一,岡本高司,
藤田修一,渡辺照男,藤井正光,間野大雄,東邦インター
ナショナル,井上英隆,下田芳博,豊田広栄,高木慶一,
三浪祥光,藤井和男,西川昌廣・節子,鈴木豊栄,河合憲
一,藤野正勝,木村昭,久保田藤人,長村治,堀井博,エ
ンソー,吉川誠一,松下比登美,恩地食品,三好隆夫,中
村好一,中村昇,小川豊邦,仁木在久,京極俊明,岡田昭
二,森本淳祐,饗庭健介,明石恵実,森田ミエ子,豊和貿
易,大喜多克己,松本機械製作所,勝喜久,弘生会老寿サ
ナトリウム,太田光重,小林武彦,木下芳明,瀬戸千代子,
水谷美代子,西村勉,東口義次,小林富美子,中野眞雅,
坂口泰敏,岡野幸義,奥田よし子,吉田哲郎,柿田政夫,
加藤伸一,下田喜久子,築田廣司,仲好江,東昭和,藤林
三雄,喜多組商事,濱野晃吉,山本茂,三島厨器産業,楠
宗一,村瀬昭夫,林正明,籏野裕久,青木和人,小林一蔵,
井上恵,オークボ,川中雅人,陶山喜久子,小林立美,村
瀬種子,後藤和彦,谷口英春,寺岡修,関西植木,志村晴
信,寺坂邦広,原一仁,別役聡志,大同鐵鋼,西田邦輔,
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泉葉里子,西尾一夫,浅野英雄,久保義男,辻本富三郎,
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上育子,日之出工業,森川正,山本英子,中池一仁,西部
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勝,紀伊産業,石川昌司,近藤博亜,福村タイヤ商会,西
村忠,林俊男,村上克彦,野間口裕子,小澤昌治,内藤道
夫,石刑家貫立,田口鐵男,渡辺敬雄,北條秀樹,岩本圭司,
松村和夫,四宮章夫,大桑裕,岩田吉一,藤田英夫,広岡
貢,三ツ橋建彦,深津利子,松平佳敬,山村恵津子,佐々
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本恵照,小川達三,諸農孝子,石田茂,一色玄,高折忠太,
柳保,友国泰治,ダイユ,東洋製薬化成・城東工場,辻野
隆志,田中陽子,山中直樹,中村諭,石井賢治,前田イエ,
梅木英二,二階利禮,神尾正生,金森隆子,妙代さき子,
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敏郎,安闢淳子,谷淳吉,枩倉正春,尹景徹,光テレホニ
イ,森薗玄堂,中道昇,樟蔭学園,富永泰司,三原秀雄,
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野木森雅郁,松原正弘
愛媛県−十全総合病院,循環器科・林病院,済生会西条病
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材店,日本食研,四国八洲薬品,眞田明志,丸尾傳,木元
裕子,嘉村信二,岡部哲,矢野智澄世,重松授
お詫びと訂正 前号(№324)の平成20年度地区別講習会実施報告書26pに誤りがありましたので,お詫びして訂正します。
(誤)感染症グループ 松村幸代 →(正)感染症グループ 主任技師 松村幸代
平成21年1月15日 発行
複十字 2009年325号
編集兼発行人 山下 武子
発行所 財団法人結核予防会
〒101- 0061 東京都千代田区三崎町1-3-12
電話 03
(3292)9211(代)
印刷所 日本印刷株式会社
東京都千代田区外神田6-3-3
電話 03
(3833)6971
結核予防会ホームページ
URL http://www.jatahq.org
本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。
複十字シール運動
みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会
平成20年度複十字シール
複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病
気をなくすため100年近く続いている世界共通の
募金活動です。複十字シールを通じて集められた
益金は,研究,健診,普及活動,国際協力事業な
どの推進に大きく役立っています。皆様のあたた
かいご協力を,心よりお願いいたします。
運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。
問合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
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1/2009 複十字 No.325
● 切手にみる結核 8.
結核に悩んだ文学者たち
(日本・中国編 Ⅱ)
岡西雅子様から貴重な切手のご紹介は8回目となり,前回に引き続き文学者を集めてみました。
①日本・1950年
②日本・1950年
③日本・1951年
④日本・1951年
⑤中国・1962年
⑥中国・1962年
⑦中国・1961年
⑧中国・1966年
*切手の下には,発行地域と発行年を記載しています
切手解説
前回に引き続き,文学者を取り上げます。今回は,日本と中国の文学者を紹介します。
①の夏目漱石(なつめ そうせき,1867−1916年)は,小説家,評論家,英文学者です。『吾輩は猫である』
『こゝろ』などの作品で広く知られ,森鴎外と並ぶ明治・大正時代の文豪です。彼は腹膜炎にかかり,試験が受
けられず,落第したが,その翌年長兄と次兄が相次いで結核で死亡しました。明治27年に肺結核の疑いありと診
断されていますが,菌発見が明治15年で,すでに結核菌検査をうけていたことは,注目に値します。
②の正岡子規(まさおか しき,1867−1902年)は俳人,歌人です。日本の近代文学に多大な影響を及ぼした,
明治時代を代表する文学者の一人です。21歳のとき,鎌倉で喀血し,結核との闘いが始まりました。文筆活動を
通じてその苦痛から逃れようとしましたが,1902年9月18日辞世の句「糸瓜咲いて痰のつまりし佛かな」などを
残し35歳の生涯を終えました。肺結核に脊椎カリエスも併発し,その痛みに耐えながら仕事を続けました。
③の森鴎外(もり おおがい,1862−1922年)は,明治・大正期の小説家,陸軍軍医,評論家,翻訳家です。
第一次世界大戦以降,夏目漱石と並ぶ文豪と称されています。彼は,結核患者の心理をたくみにとらえたオース
トリアのシュニッツレルの「みれん(原題:死)」を翻訳しました。自分が結核にかかっていたことは隠してい
たようです。
④の樋口一葉(ひぐち いちよう,1872年−1896年)は,小説家です。「たけくらべ」「十三夜」「にごりえ」
といった秀作を発表しましたが,25歳(数え年)で肺結核により亡くなりました。2004年11月より,五千円札の
肖像に採用されています。
⑤と⑥の杜甫(と ほ,712−770年)は,中国盛唐の詩人です。「国破れて山河あり・・・」という詩は有名
で,律詩の表現を大成させました。詩人としての最高位の呼称である『詩聖』と呼ばれ,李白と並び称されて
います。官職を追われた47歳頃に肺を患い,その状況を詩にも書きました。共に誕生1250年を記念した切手で,
⑥は成都にあった杜甫の草堂が描かれています。
⑦と⑧の魯迅(ろじん,1881−1936年)は,中国の小説家,翻訳家,思想家です。代表作に「阿Q正伝」,「狂
人日記」などがあります。1902年に医学を学びに日本に留学しますが,文学の道へ進みます。その後中国に戻り,
文学革命・思想革命に努力します。しかし,孫文の死後,北京を逃れて上海で生活します。この間に結核に罹
りましたが,医療を受けず55歳でこの世を去りました。⑦の切手は,生誕80年を記念して発行されたものです。
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