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目次
平成 22 年度スーパーサイエンスハイスクールコア SSH 実施報告書
刊行にあたって
ASTY Camp 事業風景
第 1 章 ASTY Camp
第 1 節 これまでの SSH 国際交流の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第 2 節 ASTY Camp 概要
1-2-1 目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
1-2-2 参加者について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1-2-3 スケジュール一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1-2-4 アイスブレーキング活動について
1-2-5 科学英語講座
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
1-2-6 ワークショップ概要
① WS 生物
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
② WS 数学
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
③ WS 情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
④ WS 化学
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
⑤ WS 物理
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
⑥ 夜の数学 WS
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
1-2-7 ポスターセッションについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
1-2-8 パーティーと開会式、閉会式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
第 3 節 ASTY Camp 評価と今後の展望
1-3-1 Evaluation Session と Evaluation Sheet、Journal から見えてくるもの ・・・42
1-3-2 生徒事後アンケートの結果分析と考察
1-3-3 教員アンケートの結果分析と考察
1-3-4 運営指導委員評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・44
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
1-3-5 今後の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
第 2 章 海外教員研修
第 1 節 韓国教員研修
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58
第 2 節 韓国教員による本校での研修
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
第 3 節 その他海外研修
2-3-1 韓国
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
2-3-2 台湾
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
平成 22 年度スーパーサイエンスハイスクール
コア SSH 実施報告書 刊行にあたって
奈良女子大学附属中等教育学校では、本年度、コアスーパーサイエンスハイスクール(SSH)研究
開発を実施いたしました。本校のコア SSH は、
「海外連携校との中高生合同のサイエンスキャンプ
(ASTY Camp)や、教員実地研修等による、国際連携において中高生の理数の才能を育成する指導
方法の研究開発」を課題としています。
本校ではこれまで、既に、学校全体で平成 9 年より継続的に取り組んでいる国際交流プロジェク
ト「グローバルクラスルーム(GC)」と、平成 18 年度に加盟したユネスコ協同学校プロジェクトネ
ットワーク(ASPnet)を活用して、各国の理数英才教育校との国際交流を、教員を含めたレベルで活
発に行ってまいりました。
本年度のコア SSH では、学校全体で取り組むユネスコ協同学校プロジェクト(ASPnet)、
ESD(Education for Sustainable Development)を核とした国際交流と、中高 6 年一貫教育校として
前期課程(中学生)から文理の区別なく自然科学リテラシーを育成する SSH 研究を基盤として、多文
化圏の中高生が時間をかけて協働研究を行うことで、問いをたてる力、課題を解決する力を育成
し、”Think globally, Act locally”の理念を持った、将来の国際的な科学技術関係の人材を育成する
こと、また、その研究指導を通じて、生徒の理数の力を育成する教員の指導力の大幅な向上を図る
こと、を目標として、ASTY Camp と教員の海外研修を実施いたしました。
ASTY Camp では、生徒たちは、国際交流によって通常の授業では得られない科学的問題解決能
力やコミュニケーション能力、創造性に対する認識を深めることができたのではないかと考えてお
ります。また、韓国教員による本校での研修、本校教員の海外での研修は、今後の科学教育に大き
く寄与するものと期待しております。皆様の忌憚のないご意見、ご助言、ご指導をいただければ幸
いでございます。
最後になりましたが、ASTY Camp にご参加いただきました先生方、SSH 運営指導委員の
先生方、大学・研究機関の先生方、ご支援を賜りました皆様に、心より感謝申し上げますとともに、
今後ともなお一層のご指導、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。
平成 23 年 3 月
奈良女子大学附属中等教育学校
校長
塚本
幾代
オープニングセレモニー
ウェルカムパーティー
名刺交換
飛火野フィールドワーク
ウェルカムパーティー
みんなでゲーム
Nara City Tour
ワークショップ
ワークショップ(化学)
ワークショップ(物理)
ワークショップ(情報)
ワークショップ(数学)
ワークショップ(生物)
宿舎での数学ワークショップ
ポスターセッション
ポスターセッション
ポスターセッション
クロージングセレモニー&フェアウェルパーティー
Evaluation
フェアウェルパーティーにて、たこ焼き作り
クロージングセレモニー
集合写真
ポスター(化学WS)
化学1班-1
化学1班-2
化学2班-1
化学2班-2
情報1班-1
情報1班-2
ポスター(情報WS)
情報2班-1
情報2班-2
ポスター(数学WS)
数学1班-1
数学2班-1
数学1班-2
数学2班-2
ポスター(生物WS)
生物1班-1
生物2班-1
生物1班-2
生物2班-2
ポスター(物理WS)
物理1班-1
物理2班-2
物理 WS メンバー
物理2班
第1章
ASTY Camp
第1節 これまでのSSH国際交流の歴史
1.学校全体で取り組んできた国際交流
1997 年度より行っている国際交流プロジェクト「グローバルクラスルーム(GC)」は、本校が 5 カ
国(英国、スウェーデン、ドイツ、チェコ、南アフリカ)と結んでいるパートナーシップである。その
主な活動は、各校が持ち回りで主催する年次大会(毎年 6 月~7 月に開催)、留学制度、ビデオ会議シ
ステムを利用した協同授業である。GC は、学校全体で継続的に取り組む姿勢が評価され、2007 年度
に、権威ある「第 18 回国際理解教育奨励賞馬場賞」を受賞した。
2.SSH 重点枠と国際交流
2008、2009 年度と連続して指定された SSH 重点枠では、この GC の経験と、2006 年度に加盟し
たユネスコ協同学校プロジェクトネットワーク(ユネスコスクール ASPnet:Associated School Project
Network)を活用して、下記のような国際連携プログラム、生徒研究交流 ISSS(International Salon of
Super Science student)を実践した。
(1)
2008年度
・韓国の高校Korea Science Academy(KSA)とのビデオ会議を利用した交流
・台湾の高瞻計画(台湾版SSH)指定校の高雄女子高級中学との生徒研究交流(ISSS5日間)
・台湾の高瞻計画指定校の高校教員・大学教員訪問団との教員研修交流
・韓国の理数教育に重点を置く高校の教員・大学教員訪問団との教員研修交流
・マサチューセッツ工科大学(MIT)教員のビデオ会議による指導、MITで生徒研究交流(ISSS7日間)
(2)
2009年度
・韓国の忠南科学高校の生徒を、修学旅行の一環として受け入れて交流
・韓国の忠南科学高校、公州大学校で、本校サイエンス研究会の生徒と本校教員が研究交流(ISSS5
日間)
・韓国の公州大学校の教員と学生(現職教員を含む)が、奈良女子大学を訪問し交流
・フィンランドの小・中・高の授業観察、大学教員も含めた研究協議による教員研修交流(7日間)
・韓国の英才教育院の中学生と本校前期課程生との本校におけるワークショップ(1日間)
これらのSSH重点枠における研究成果として、次のことが明らかになった。
①
生徒の国際感覚は、お互いの話し合いや議論などのコミュニケーションを通じて養われる
②
国際交流では、英語の能力と同じくらいプレゼンテーション能力が重要である
③
国際交流では、「何が語れるか」が重要である
④
国際交流で得たものは、日頃の学習の強力な動機付けとなる
⑤
生徒は、もっと長時間にわたり、協働で1つのテーマを追究する体験を望んでいる
⑥
生徒の研究する力、問いをたてる力の育成には、教員の指導力が大きな比重を占める
3.具体例
(1)
台湾 ISSS(2008)
日
時
2008 年 8 月 18 日~8 月 22 日
場
所
高雄女子高級中学校(台湾高瞻計画指定校)
参加生徒
構
成
5 名(6 年生 1 名、4 年生 2 名、3 年生 1 名、2 年生 1 名)
生徒研究発表会、本校企画のワークショップ、相手校企画のワークショップなど
(2)
マサチューセッツ工科大学での生徒研究交流(2008)
日
時
2009 年 3 月 2 日~3 月 8 日
アメリカマサチューセッツ州
場
所
マサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学
ウッズホール海洋生物学研究所(MBL)他
講
師
MIT Robotics 研究室
松下光次郎
他
参加人数 生徒 4 名、引率教員 3 名
構
成
1.研究発表(口頭発表、ポスター発表) 2.大学および博物館見学
3.若手日本人研究者との懇談会
(3)
韓国 ISSS(2009)
日
時
2009 年 8 月 24 日~8 月 28 日
場
所
韓国(忠南科学高校、公州大学校、忠南科学臨界修練院)
講
師
Lee Hee Bok 教授(公州大学校・物理教育)
Lee Myoung Hee 教授(公州大学校・歴史教育)
参加人数 本校生徒 6 名(4 年生女子 4 名、男子 2 名)、引率教員 3 名
相手生徒 40 名(高校 2 年生 2 名、1 年生 38 名)
構
(4)
成
1.研究発表交流会
2.研究交流(干潟探索) 3.特別講義
その他
フィンランド教員研修(2009)
日
時
2009 年 10 月 3 日~10 月 9 日
場
所
フィンランド共和国
ヘルシンキ、タンペレ
参加人数 教員 3 名(数学科 2 名、理科 1 名)
1.ヘウレカ科学センター訪問、ヘルシンキ市内視察
2.サンモン高等学校(授業視察、研究協議)
構
成
3.プーニキ中学校(授業視察、研究協議)、タンペレ市内視察
4.アレキサンチェリン小学校(授業視察、研究協議)
5.タンペレ大学(研究協議)
(5)
韓国中学生とのワークショップ(2009)
日
時
2010 年 2 月 22 日
場
所
本校(大教室、物理教室)
講
師
Lee Hee Bok 教授(公州大学校・物理教育)
参加人数 本校生徒 25 名(2 年生 8 名、3 年生 17 名)
韓国生徒 20 名(中学 2 年生 18 名、中学 3 年生 2 名)
韓国教員(大学関係 5 名、高校 3 名、中学校 3 名、小学校 2 名)
構
成
1.ワークショップⅠ(実験交流) 2.ワークショップⅡ(環境ポスター作成)
第 2 節 ASTY Camp 概要
1-2-1
目的
本校では、これまでの国際交流の成果と課題をもとに、以下のような内容を目的とした ASTY
Camp(Asia Science and Technology Youth Camp)を実施した。
<
目的
>
1.科学的な諸問題解決のための、問いを立てる力、課題解決能力の育成
2.他者とのコミュニケーションを通じて、文化的・社会的背景を踏まえた視点で議論できる力の育成
3.コミュニケーション能力の育成
4.数学が世界の共通語であり、自然科学が世界の共通認識であることを実感させる
5.文化遺産見学を通じて、アジア各国との交流について知り、古代の人々の創造性について考
えさせる
これらの目的をふまえ、本キャンプに以下のような特徴を持たせた。
①
本校からの参加生徒について
本校からの参加生徒はサイエンス研究会に所属する生徒のみに限らず、一般の生徒も含めた該
当学年全体に対して募集を行った。これはⅡ期 SSH の目標の 1 つである「裾野を広げるための研
究活動」が背景にある。
②
事前学習の実施
上記①の参加生徒の実態にあわせて、本校生徒に対して 2 種類の事前学習を実施した。奈良先
端科学技術大学院大学(NAIST)の講師によるポスターセッションを意識した科学英語講座に加え、
本校英語科教員による各ワークショップの特色を踏まえた英語講座を実施した。
③
アイスブレーキング活動の重視
生徒同士のコミュニケーションを促進するために、必然的にコミュニケーションを必要とする
環境を設定した。特に、本研修のメインプログラムであるワークショップ以前のアイスブレーキ
ング(City Tour など)を過去のプログラムよりも長期的に設けた。これらの活動は、生徒のみでは
なく、指導者の立場である教員にとっても有用性が高いと考えた。
④
ワークショップ後の協働作業の時間を設定
ワークショップ後のポスター作成の時間を長めに設定することにより、生徒同士が議論を行え
る環境を設定した。ワークショップ後の生徒間の議論により、学習内容の理解度が促進されるだ
けでなく、コミュニケーションの基盤となる生徒間の信頼関係の構築を期待した。
⑤
ポスターセッションの形式の工夫
ワークショップの成果報告として、ポスターセッションの形式での成果発表会を実施した。パ
ワーポイントでの発表よりも対面式での議論が行いやすいと考え、ポスターセッションの形式を
選んだ。また、発表時間を 2 回にわけることで、生徒自身が「発表者」と「聴衆」の両者を体験でき
るように工夫を行った。
1-2-2 参加者について
今回の ASTY Camp には以下のような生徒が参加した。
本校
本校在籍の中学 3 年生 27 名、高校 1 年生 7 名
計 34 名(男子 8 名、女子 26 名)
韓国
公州大学校が運営する英才教育院在籍の中学 3 年生
台湾
高雄市立高雄女子高級中学、国立中山大学附属国光中学在籍の高校1年生
計 12 名(全て男子)
計 10 名
(男子 2 名、女子 8 名)
これらの参加生徒には以下のような特徴がある。
(1)
韓国からの参加生徒について
韓国では、2000 年の英才教育振興法の制定により、科学英才学校の設立など国家レベルの英才教
育を行っている。その政策の 1 つに、大学や各市道教育庁などが運営する小中高生を対象とした「英
才教育院」での指導がある。英才教育院は正規の学校ではなく、主に放課後や週末、または夏期休業
期間等を利用して開校されている。ここに通う生徒は、普段はそれぞれ異なる中学校に通う生徒で
あり、各中学校の希望者の中で選抜試験を通過したものがここでの特別カリキュラムに参加するこ
とができる。夏の合宿や各種サイエンスフェスティバルの実施、インターネットを利用した学習シ
ステムなど、その内容は多岐にわたり、いずれも将来を担う科学者を育成する目線で形成された高
度な理数教育のプログラムとなっている。今回は公州大学校が運営を行っている英才教育院在籍の
中学 3 年生が参加した。
(2)
台湾からの参加生徒について
台湾では日本のスーパーサイエンスハイスクールにあたる「高瞻計画」を実施している。大学が事
務局を担当し、各大学の教授で構成される専門委員会を構成しその運営にあたっている。日本と同
様に選抜を通過した学校がこの計画の対象校となり、各種サイエンスフェティバルや国際交流など
に参加している。今回はこの高瞻計画の対象校である高雄市立高雄女子高級中学および国立中山大
学附属国光中学に在籍する高校 1 年生が参加した。なお、台湾では高級中学が日本の高等学校にあ
たる。また、台湾では 8 月から新年度が始まるため、実質的には高校 1 年生の課程を修了した生徒
が今回のキャンプに参加している。
(3)
本校からの参加生徒について
本校では、第Ⅱ期 SSH の研究目標の 1 つに「裾野を広げるための研究活動」を掲げている。第Ⅰ
期の SSH における国際交流の対象生徒が本校サイエンス研究会に所属している生徒であったのに
対し、今回のキャンプでは一般生徒の参加を大きく視野に入れた募集を行った。これは、昨年度ま
での SSH の国際交流において、クラブ等の関係からサイエンス研究会に所属こそしていないが、
サイエンスを通じた国際交流に参加したいという生徒からの要望が多かったことも一つの動機とな
っている。開催国のメリットを生かし、これまでに国際交流への参加の機会が乏しかった一般生徒
にまで募集対象を広げることで、できるだけ多くの生徒に科学を通じた国際交流を体験してほしい
と考えた。加えて、他国の参加校が英語スキルおよび理数の知識に関する選抜試験を生徒に実施し
たのに対し、本校生徒には実施しなかった。その結果、サイエンス研究会に所属している生徒から、
普段の学習で理数教科や英語を苦手とする生徒まで幅広い生徒が参加する形となった。
1-2-3 スケジュール一覧
月日
午前
午後
10:00 教員・本校生徒集合(多目的ホール) 15:00 海外参加生徒到着
Day 1
10:15 会場準備
16:00 ホテルから学校へ向け出発
17:00 開会式(多目的ホール)
8 月 17 日
18:00 ウェルカムパーティー(生協食堂)
火曜日
19:30 校門前集合 ホテルへ出発
21:00 教員打ち合わせ(ホテルロビー)
7:00 朝食
8:30 フィールドワーク(奈良公園へ)
Day 2
11:30 昼食(生協食堂)
12:30 アイスブレーキング活動
奈良ミニシティツアー(東大寺等)
14:30 ホテル到着
8 月 18 日
15:30 奈良女子大学集合
水曜日
16:00 学校・文化紹介プレゼンテーション
17:30 プレゼンテーション終了
18:30 夕食
Day 3
8 月 19 日
7:00 朝食
12:00 昼食(生協食堂)
8:15 学校へ向け出発
13:30 ワークショップ
9:00 ワークショップ
16:30 校門集合 ホテルへ向け出発
18:00 夕食
木曜日
20:00 夜の数学ワークショップ(大広間)
21:30 終了
7:00 朝食
12:00 昼食(生協食堂)
Day 4
8:15 学校へ向け出発
13:30 ワークショップ
8 月 20 日
9:00 ワークショップ
16:30 校門集合 ホテルへ向け出発
金曜日
18:00 夕食
20:00 ミニナイトツアー(猿沢池方面散策)
7:00 朝食
12:00 昼食(生協食堂)
Day 5
8:15 学校へ向け出発
14:00~16:00 ポスターセッション
8 月 21 日
9:00 ワークショップ(ポスター作成)
17:00 校門集合 ホテルへ向け出発
17:30 夕食
土曜日
18:30~21:30 平城宮跡見学
Day 6
8 月 22 日
日曜日
7:30 朝食
12:00 自由時間(市内観光等)
9:15 学校へ向け出発
16:30 閉会式(多目的ホール)
10:00 Evaluation & Feedback セッション
17:30 フェアウェルパーティー(生協食堂)
19:30 校門集合 ホテルへ向け出発
Day 7
7:00 朝食
8 月 23 日
8:30 海外生徒 空港へ向け出発
月曜日
1-2-4 アイスブレーキング活動について
ASTY Camp 二日目には、参加者全体と各ワークショップのグループ内での親睦をはかるため、ア
イスブレーキング活動として、飛火野フィールドワーク、City Tour、文化交流会を行った。
■ 飛火野フィールドワーク
飛火野 FW 写真挿入
午前 8 時にワークショップのグループ毎にホテルを出発
し、
奈良公園内飛火野地区へ移動し、
そこで本校矢野教諭が、
奈良公園内の動植物の生態(鹿、フン虫、植物等)について
フィールドを散策しながら講義を行った。
同時に奈良公園を
取り巻く若草山、春日山、高円山について、それら三山を眺
めながらそれら山々の違いについても説明がされた。
矢野教
諭の出した質問(クイズ)に対して、参加者達が活発にグル
ープ内で話し合いながら答えていた姿が印象的であった。観光地として奈良公園内を散策するのとは違
い、奈良公園特有の動植物について話を聞きながら、実際に五感で感じながら学習する機会になった。
■ City Tour
City Tour 写真挿入
飛火野フィールドワークを終え、本校で昼食を済ませた
後、各グループに分かれて City Tour を行った。本校参加
者が次の会場(文化交流会会場である奈良女子大学)まで
様々な観光地をまわるルートを事前に決めておき、スムー
ズに海外からの参加者に対して説明ができるよう準備をし
ておいた。主に、なら町界隈へ向かい、元興寺、猿沢池、
興福寺、東大寺、国立博物館を巡るコースを設定している
グループが多かった。海外からの参加者にとっては、短時間ではあったが世界遺産を巡る貴重な時間
となったのではないだろうか。本校参加者からは、英語でそれぞれの名所を説明する必要があったた
め、事前にそれらのことをよく調べ、英語に訳していく過程で非常に勉強になったという声も聞かれ
た。
■ 文化交流会
文化交流会では、本校、高雄女子高級中学、中山大附属
の 3 校が学校紹介と各国の文化紹介をするとともに、歌や
ダンスのパフォーマンスが繰り広げられた。どのプレゼン
テーションも聴衆を魅了する内容であり、場を大いに盛り
上げた。韓国からは学校単位の参加でなく、事前準備がで
きない都合からプレゼンテーションができなかったため、
参加者からは残念がる声が聞かれた。台湾の黄先生のギタ
ーと歌で交流会は盛大に幕を閉じた。
1-2-5 科学英語講座
本キャンプへの参加者にはいくつかの特徴がある。本校からの参加者には、国際交流への参加が初
めての生徒が多いことに対し、海外からの参加者は選抜された生徒であり、研究活動やその発表活動、
英語でのディスカッションなどの経験値が本校生徒よりも高いことが予想された。本校からの参加生
徒の実情をふまえ、事前学習として以下の 3 点を重視した 2 種類の科学英語講座を実施した。
・ 科学英語に触れるきっかけを作る
・ 英語を使用してのポスター作りとその発表方法を学ぶ
・ ワークショップ時に想定される英語でのコミュニケーションを体験する
(1) 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の講師による科学英語講座
キャンプ中に開催されるポスターセッションに備え、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)より講
師を招き、科学英語講座を実施した。本校からの参加生徒には理数に関する研究活動をポスターで発
表するという体験をしている生徒がかなり少ない。単にポスター作成といっても、その作り方には様々
な目的があり、そのノウハウを体験しながら学習していくことを目的としてこの事前学習を企画した。
加えて、キャンプ当日は英語でのコミュニケーションが必須となるため、ネイティブの講師とのやり
とりの中で、当日のコミュニケーションのイメージを持たせることができるように内容を構成した。
日 時
場 所
講 師
目
的
内
容
7 月 29 日(木)、7 月 30 日(金)両日午後
本校多目的ホール
Steven Nishida
(奈良先端科学技術大学院大学(NAIST) 物質創成科学研究科英語教授)
Leigh McDowell
(奈良先端科学技術大学院大学(NAIST) 物質創成科学研究科英語講師)
・英語でのポスター作成の方法について学習する
・ポスタープレゼンテーションの方法について学習する
7 月 29 日(木)
・アイスブレーキング活動
・英語を用いたポスター作りの手法についての学習
・プレゼンテーションについての学習
・ポスター作成(グループ活動)
7 月 30 日(金)
・ポスタープレゼンテーションの実施
●
1 日目の活動
1 日目の活動では、講師が準備した様々なポスターを分析することで、ポスター作成の基礎的な技
術と着眼点について学習した。後半は少人数の班に分かれ、班ごとに設定したテーマに基づいて英語
を用いてポスターを作成した。参加生徒は最初、英語でのやりとりに困惑している様子が伺え、普段
の授業とは異なる雰囲気を感じているようであった。しかし、序盤でのアイスブレーキング活動等で
少しずつ積極性を見せるようになり、ポスター作成の際には班ごとに熱心な活動を行っていた。また、
どのようにして人の目をひくポスターを作るか、伝えたい内容を的確に伝えるためには、記載する内
容をどのように精選すべきかなど、学習したポスター作成の手法を生かそうとしている様子が伺えた。
今回の事前学習は、ポスターセッションにおける基礎的な技術に関する学習であり、単に本キャンプ
での有効性が高いだけではなく、普段の授業等における発表活動にも生かされる内容となった。
2 日目の活動
●
2 日目には、実際に自分たちが作成したポスターを使用した発表会を実施した。キャンプ当日に行
われるポスターセッションを意識し、当日と同じ形式で行われた。
生徒が作成したポスターの内容は「奈良から関西国際空港までの交通手段」「米ができるまで」「ク
ッキーの作り方」など、いくつかのプロセスを経て目的へと到達するテーマが選ばれていた。そのよ
うなテーマを設定することで、プレゼンテーションに起承転結が生まれ、観客をひきつける効果が期
待できる。また、図や絵などを用いて伝えたい内容を表現することで、視覚に訴えるポスター作成を
行うことが可能となった。
プレゼンを行う際には、講師から「まず観客に対して発表内容に興味を抱かせるために、発表者から
観客に向けて質問を投げかけることが効果的である」というアドバイスがあった。それを受けて生徒は
「奈良から関空までの行き方を知っていますか?」「米の作り方は知っていますか?」「クッキーは好
きですか?」などの質問をして観客の反応を見たのち、プレゼンの内容へと入った。発表者によるプ
レゼンが終了したのち、質疑応答が行われ、これによって発表者と観客が対面式で議論を行うことが
できた。会話の内容は基本的なものであったが、キャンプ当日に向けた素地を作ることができたと考
える。
(2) 本校英語科教員による科学英語講座
キャンプ中のワークショップに備え、各ワークショップの内容に特化した科学英語講座を実施した。
本キャンプで実施されるワークショップの内容は、これまでに参加生徒が学習したことがないテーマ
を扱っている場合が多い。そのために、ワークショップの内容に対する予備知識がほとんど無いこと
が予想された。そこで、各ワークショップに分かれての英語講座を行うことで、当日の研究内容に触
れる動機を与えることを目的とした。
●
日 時
場 所
講 師
目 的
7 月下旬~8 月上旬
本校
本校英語科教員
・各ワークショップの事前学習として、その内容について予備知識を得る
・各ワークショップに関連する科学英語について学習する
内
ワークショップごとに異なるテーマ
容
ワークショップ 1 生物
奈良公園の生態系に関する科学英語を学習した。この WS の目的は、奈良公園のシカやシカの糞に
よって形成されている生態系について調査を行うことであり、その事前学習では、生態系や食物連鎖
に関する基本的な知識と科学英語の習得を目指した。加えて、奈良公園の生態系に関する情報をクイ
ズ形式で学習した。キャンプ当日に予定されていたシカの糞の野外調査に備え、野外調査の際に必要
となってくる会話の練習も行われた。当日は海外の生徒と一緒に協力して野外調査を行う必要があり、
その場面を想定して実践的な学習をすることは、生徒にとっても大きな手助けとなったようである。
●
ワークショップ 2 数学
暗号解読に関する科学英語の学習を実際の解読作業を交えて学習した。暗号解読には数学的な論理
を必要とする一方で、ひとつの言語としての存在意義がある。この WS では、暗号解読のプロセスを
体験することで、数学の言語としての有用性を認識させることを目的とした。この観点に基づき、事
前学習では暗号に関する基礎的な科学英語と、暗号解読をテーマに扱っている英語の教科書を使用し
た学習が行われた。暗号にはどのようなタイプがあるのかを解読の体験を通して体得し、さらにはそ
こに秘められている数学的な論理を紹介していた。単に暗号といっても、単純なものから複雑なもの
まで、その種類と目的は多岐にわたる。体験型の学習を通して言語としての数学の世界に触れられる
内容であった。
●
ワークショップ 3 情報
コンピュータや数学に関する科学英語を 2 回にわたって学習した。キャンプ当日は、教育用プログ
ラミング言語 LOGO を用いて基本的な図形の描画を行うため、1 回目の講座では幾何や数式に関する
単語を英語で行う学習が中心となった。主に図形の名称、分数や小数の英語での表し方について学ん
だ。2 回目はコンピュータの基本用語について学び、実際にコンピュータ操作を行いながら単語を習
得することで、実践的な学習を行った。また、コンピュータの仕組みに関する長文を読み、コンピュ
ータ内部では 2 進数表現が行われていることを学習した。コンピュータの操作はごく簡単なものであ
り、それに関連した科学英語もそれほど難しくはない。これに対して幾何や数式に関する英単語は、
生徒がはじめて目にするものも多く、定着するまでには時間を要した。
●
ワークショップ 4 化学
私達の生活に密接に関わる水をテーマに扱った。水は私達のすぐ身近にあるものでありながら、私
達が持ち合わせている知識はあまりにも少ない。この事前学習では、日本の水の輸入量や世界におけ
る水事情、水とおいしい紅茶の関係など、多様な側面から水に関する学習を行った。イラストによる
コミック形式の資料も併用することで、生徒の学習がより円滑に進むように工夫がされていた。キャ
ンプ当日は、滴定操作を通して水について科学的な分析を行うことで水の性質を調べるとともに、世
界の一員として水とのつきあい方を考えていくきっかけ作りを目指した。生徒の水に対する興味・関
心を高めるとともに、1 つの事象に対して様々な視点を育成するきっかけとなる内容であった。
●
ワークショップ 5 物理
水時計や日時計など、科学技術の歴史の中で作られた様々な時計に関する科学英語について学習し
た。このワークショップでは、水時計や日時計のしくみを調べるとともに、その長所と短所を調べ、
それらをより精密化するためのしくみを考えることが目的とされていた。事前学習では、様々な時計
のしくみを簡単に学習し、どのような現象のどんな性質が時計の開発に利用されてきたかを学習した。
また、その際に必要となる科学英語の学習も行った。現代社会において、腕時計やデジタル時計の普
及により、時間を測る技術を直感的に感じられる機会は少ない。古典的な時計のしくみを学習するこ
とで、改めて時間を測ることと科学のつながりを実感できた生徒も多いようであった。
(3) 全体をふりかえって
キャンプ当日の生徒の様子を見ていると、事前学習の必要性を強く感じずにはいられなかった。短
時間のワークショップで深みのある学習を行うためには、その展開方法とともに、当日扱われる課題
への生徒の興味・関心が大きな鍵となる。各ワークショップで取り扱うテーマが生徒にとっては未知
のものが多かったため、事前学習によってそれぞれのテーマについての具体的なイメージを持つこと
ができ、興味・関心を育てるきっかけになったという点で、ワークショップの内容に特化した事前学
習の有用性は非常に高いように感じた。
ポスターセッションに関する事前学習も同様で、当日にこのときの体験が大きな糧となっている様
子が伺えた。同時に、海外の生徒のポスターセッションの能力の高さは明らかであり、その経験値の
差がどこから生じているのかを分析すべきであるように感じた。事前学習を行わずにワークショップ
を行うという展開方法も考えられるが、参加生徒の実態とキャンプ当日に期待したい研究レベルに照
らし合わせて事前学習のあり方を十分検討していく必要があるだろう。
(4) 事前学習 資料例(WS 生物)
Let’s enjoy conversation!
鹿について
A: When did the deer start to live in Nara?
B: Deer have lived in Nara Park for more than 1000 years. In 768, in order to keep
the peace in Heijokyo, deer were offered(奉納された) as divine messengers(神の使い).
Since then, deer are allowed to walk freely through the park.
A: Do deer attack people?
B: They sometimes attack people. Some female deer are having babies in summer
season so we have to be very careful. Male deer sometimes attack people with
their antlers(角), so don’t touch the antlers.
A: I want to feed deer.(エサをやりたい) Where can I buy the deer cookies.
B: At the stand(売店). They are 150 yen for 10 cookies.
休憩したいとき
A: I’m so hot and tired.
B: Let’s take a rest in the shade over there.
A: I’m thirsty.
B: There is a vending machine(自動販売機) over there.
フン虫を探す
A: Deer dung is on the ground.
B: Let’s dig(掘る) a hole in the ground.
A: There might be some dung under the leaf.
B: Turn over the leaf and check if there is any dung.
A: I can’t find any dung beetles!
B: In order to find dung beetles, we should move the dung.
A: Dung beetles are cute.
B: Watch out! They sometimes bite.
1-2-6 ワークショップ概要
1-2-6-1 WS生物
(1)
実施概要
講座名
場 所
WS 担当者
Investigate ecosystem in Nara Park
奈良公園、本校生物教室
矢野 幸洋(本校理科教員)
櫻井 昭(本校理科教員)
村井 幸輝郎(本校卒業生)
英語科教員
目 的
宮本
典子(本校英語科教員)
・奈良公園の生態系の構成要素には主にシカ、糞虫、芝生がある。これらの相互
関係を理解し、糞虫から学ぶ奈良公園の生態系の理解を目的とした。具体的な展
開は、次の①~④である。
①奈良公園に生息する糞虫を調査・観察し、その特性を調べる。
②調査観察を行う中で生じた疑問点を出し合い、その解明方法を考える。
③実際に実験を行い、疑問点の解明を行う。
④結果をまとめ、生態系の視点から考察する。
・国際交流という視点から、他国での昆虫などの生き物の様子の意見交換も行い
ながら研究を進める。
(2)
実施内容
■
経緯
生物班はフィールド実習を中心に展開する予定で、当初は 2 つのテーマ(①②)を設定し、いずれか
を選択させる予定であった。奈良公園の特徴であるシカと糞虫については是非とも海外の生徒にも知
ってほしかったし、プランクトンについては調査を続けている生徒たちがいたので、生徒たちが十分
に指導できると考えたからである。
①
奈良公園のシカの糞虫を探そう
②
奈良公園の川や池のプランクトンを調べよう
しかし、展開が英語であることを考え、糞虫と生態系に絞って行うことになった。生物班の担当者
は矢野、櫻井および英語科から宮本が、また、ティーチングアシスタントとして本校の卒業生の村井
さんにも参加してもらうことになった。
なお、糞虫と生態系について、以下のテーマを想定していた。
≪目的≫
シカの糞虫を探し、名前を調べ、糞虫から奈良公園の生態系を学ぶ。
≪内容≫
どんな状態の糞にいるか、どんな種類の糞虫がいるか、場所による違いはあるか
≪方法≫
①
長い棒で糞の中を探る。
②
糞虫が見つかれば写真に保存し、その糞の状態などを記録する。
③
飛火野と若草山で糞虫探しを行い、比較検討する。
④
過去のデータ(1994 年)と比較し、季節性や地域性などの観点も入れ、まとめる。
実際には、糞の中にいる糞虫ではなく、糞を巣へ運ぶ糞虫であるルリセンチコガネを多数見つけ、
この糞虫を使って、実験をすることになった。
■
展開
○7 月 30 日
午前中に、フィールド実習を行うにあたっての基礎英語を宮本から本校の参加生徒 8 名が学んだ。
午後からは、3 年生の 5 名が糞虫の基礎実習を奈良公園の飛火野で行った。
○8 月 10 日
事前に春日大社に飛火野での実験観察の許可を受けた。
○8 月 19 日 WS(1 日目)
韓国・台湾の生徒と教員全員で、糞虫を探しに出かけた。麓宛の南西側は糞虫が多く見つかること
が下見の段階で分かっていたので、そちらへ向かった。途中、糞の中にすむ糞虫を探しながら目的地
へ向かった。
麓宛の南西側の木の葉の下に多数の糞虫を見つけた。ほとんどがルリセンチコガネで、木の葉の下
方では死んだようにじっとしているが、拾い上げるとしばらくして動き出した。幸運なことに、生徒
の一人が糞虫が巣穴まで糞を運ぶ場面を動画で撮影することができた。さらに、糞にすむ糞虫も何匹
か観察して学校へ戻り、観察を受けてテーマの設定を行った。
まず、観察を受けての疑問点をいくつかあげた。2 つの班に分けて行うために、それぞれの班が何
をテーマとするかを情報交換し合いながらテーマ決定を進めた。
最終的に 5 つのテーマを各班が出し合い、それを解明するための実験方法を相談した。
<コメント>
1 日目からかなりハードな内容となったが、生徒たちは共通の言語である英語で何とかコミュニケ
ーションを取ろうと努力していた。
○8 月 20 日 WS(2 日目)
実験器具を準備して、昨日観察した場所へ行き、糞虫を使った予備実験を試みる。猛暑と器具の不
足のため、実験室へ糞虫を持ち帰って実験することにする。糞虫をもとに各班がテーマにそって実験
の具体化を試みるが、シャープな結果を得られず、試行錯誤を繰り返す。
徐々にではあるが、テーマが固まり、それに向けての実験を相談しながら進め、「におい」と「色」
をキーワードにまとめる方向が決まる。
<コメント>
想定外の猛暑のため実験室で実験を試みるが、生徒たちは生き生きと活動を続けた。午前中で終わ
る予定であったが、午後もしっかり実験を行い、かろうじて一つの方向性が見つかった。正に綱渡り
のテーマ設定であった。
○8 月 21 日 WS(3 日目)
実験データが不十分なところについては追実験を行い、一方では模造紙にまとめるという作業にな
った。発表会間際まで模造紙をまとめることとなった。なお、生物の 2 班は以下のテーマでまとめを
行った。
1班
櫻井・宮本担当
・糞虫の形態の研究
・糞虫と、糞の色・においの関係の研究
2班
矢野・村井担当
・糞虫と糞の色の関係についての研究
・糞虫と地面の色の関係についての研究
<コメント>
大変ハードであったが、仮説を設定し、実験によって検証するという科学の方法を模造紙にまとめ
ることができたのが最大の成果であった。
■研究内容
次に実際に行った実験の例を 2 つ紹介する。
≪実験Ⅰ≫
糞の色とにおいについての研究
・目的
糞虫は糞の色とにおいのどちらによって自分に必要な糞を区別しているのかを調べた。
・方法
①奈良公園に行き、においが強いものとして湿ったシカの糞、においが弱いものとして乾いたシカ
の糞を採集した。
②食紅、アクリル絵の具(ピンク色と黄緑色)を使って糞に色をつけた。
③白色のトレー(縦 20cm×横 30cm)に糞虫を 4 匹入れ、どの糞に近づくかを 30 分観察した。
・結果
4 匹のフン虫がフンに近づいた延べ回数を次に示す。
湿った糞で無着色、食紅、ピンク色
6
の絵の具、黄緑色の絵の具の順に多く
集まり、糞を食べていた。乾いた糞に
4
A
2
B
0
無着色
食紅
ピンク
黄緑
は無着色でも集まらなかった。なお、
人間にとってのにおいの強さは、アク
リル絵の具>湿ったフン>乾いたフン
と食紅だった。
↑無着色のフンに集まり、食べている様子
≪実験Ⅱ≫
↑食紅のフンに集まり、食べている様子
糞の色と地面の色についての研究
・目的
糞虫は地面の色や糞の色が違った場合において、どのような行動をとるのか調べた。
・方法
Ⅱ-a 偽の糞の色を変える
①
紙粘土とアクリル絵の具を用いて、茶色・緑色・白色の糞をそれぞれ複数つくる。
②
①でつくった偽の糞を緑色と茶色、緑色と白色、白色と茶色の組み合わせでそれぞれを順に透
明容器の中へ置く。
③
フン虫 8 匹を 2 種類の偽の糞が入っている容器の中へ入れ、行動を観察する。
Ⅱ-b
①
地面の色を変える
糞虫が普段住んでいる地面の色(茶色)の折り紙とその他の色(今回は桃色・白色・緑色・紫
色・黒色・黄色)をそれぞれ 1 枚ずつ透明容器に置く。
②
①の容器の中へ糞虫8匹を入れ、行動を観察する。
・結果
Ⅱ-a
偽の糞の色を変える
偽の糞を入れたときの糞虫は、茶色の糞だけに近づき、しかも糞の下に穴を掘ろうとした。
Ⅱ-b 地面の色を変える
地面の色を茶色と他の色とを比較したところ、糞虫は初めは端の方をゆっくりと動いて、しばら
くして半数以上の糞虫は茶色の方へ移動した。
↑白色と茶色の偽の糞では茶色に多く集まった
(3)
↑黄色と茶色の地面では茶色に多く集まった
担当者の感想
猛暑の 3 日間ではあったが、生徒たち自らが議論の中からテーマを設定し、仮説に基づいて実験計
画を考え検証するという正に科学の方法を実践することができた。この点は運営指導委員の先生方か
らも評価していただいた。ただし、これは目的意識の高い熱心な生徒と英語に堪能な TA の方に支え
られてのことであり、試行錯誤の重要性もしみじみ実感した。
期間は、実験 2 日間、まとめ 1 日間はやや短いと初めは感じたが、1 日延ばしたらそれだけよい研
究ができたかというと必ずしもそうではない。短期間で集中して行ったからこそ生み出すことができ
た発想があり、常に緊張した状態を持続させることができた。
また、WS生物ではサイエンス研究会に所属しない生徒たちも深く関わっていた点は評価される。
サイエンス研究会に所属しない生徒たちでその成果を生徒論文としてまとめることができ、科学の裾
野を広げることができた。
1-2-6-2 WS数学
(1)
実施概要
講座名
“Let’s read mysterious messages.”
場
本校メディア教室
所
WS 担当者
川口
慎二
(本校数学科教員)
英語科教員
山口
啓子
(本校英語科教員)
目
的
・さまざまなタイプの暗号について、解読方法を考察し、解法について議
論を行う。
・暗号解読の過程に用いられている数学的内容、特に整数の性質について
学習する。
・現代社会における暗号の役割や意義について考える。
・暗号解読の過程において、相互が自分の考えを提示し、協議することに
より、コミュニケーション力を育成する。
(2)
実施内容
■経緯
数学のワークショップでは、内容と展開方法の両面から、テーマを設定するべく検討を行った。そ
の結果、3カ国の中高生がコミュニケーションする際に、数学の「言語」としての機能を体験するこ
とに重きを置くこと、および ASTY Camp の目的が
①科学的な問題・課題に対して「問いを立てる力、問題解決する力」を育成する
②与えられた課題に対して、様々な背景(文化的、社会的背景)を踏まえて議論する姿勢を育成する
③コミュニケーション能力を育成する
であることを考えて、
「暗号解読」をテーマとすることに決した。このテーマは、文化的基盤としての
「言語」と自然科学における基盤としての「数学」がリンクする良き題材である。また、生徒同士が
与えられた暗号課題を「解読する」過程を体験させることで、言語としてのコミュニケーションはも
ちろん、数学的な議論を可能にし、数学の「言語としての有用性」を認識することにつなげることが
できると考えた。
さらに、インターネットが急速に発展し、世界の至るところと容易に通信することが可能になった
現代において、暗号の果たす役割を理解することは、暗号システムに隠れる数学の「科学としての有
用性」を知ることにつながり、科学が社会で果たす役割を意識する貴重な機会となる。
■展開および内容
○7 月 27 日~28 日
数学のワークショップに先立ち、議論で必要になる基礎英語と暗号の基礎知識について、事前学習
を 2 日間行った。数式や用語の意味の確認や暗号に関する基本的な内容を(ワークショップの中身に抵
触しないように留意しながら)説明した。
○8 月 19 日 WS(1 日目)
午前では、インターネットの発展により現代の世界が容易に情報を共有・交換できるようになった
こと、各国のインターネット事情を聞きながら、情報の保護、システム管理という観点から、いかに
安全な情報のやり取りを実現するかという課題が大きくクローズアップされてきたことを意識させた。
その結果、情報を関係者以外が閲覧・利用できないようにする手段として「暗号」が重要になってき
たことを確認した。そこで、暗号とはなにか、どのように暗号化・復号化するかという暗号理論に共
通した基礎事項を解説した。
さらに、暗号が歴史的な場面や文学のなかでどのよう
に現れたかについて、事例を挙げながら説明した。その
なかで、最もシンプルな暗号として「シーザー暗号」を
紹介して、その仕組みや解読方法を全体で考えた。また、
実際にシーザー暗号により暗号化された文章の復号化に
挑戦した。
午後には、午前に紹介した文学の中で現れる暗号の事
例のひとつとして、シャーロック・ホームズの「踊る人
形」のドラマを全員で鑑賞した。
○8 月 20 日 WS(2 日目)
2 日目は、前日の最後に扱った「シーザー暗号」を
数学的な視点から考えてみることにした。シーザー暗
号は、鍵となる文字数分だけアルファベットをずらす
ことにより暗号化されるため、復号化するには、同じ
文字数だけ逆方向にずらせばよいことになる。アルフ
ァベットの文字に、A-1, B-2, …, Z-26 と数字を
対応させると、鍵の文字数が m であるとき、文字 i は
文字 i  m に移ることになる( 1 ≦ i ≦ 26 )。ここで、
i  m が 26 よりも大きくなる場合もあるため、合同式
の考え方を利用して、mod 26 で計算すれば、対応す
る文字を決めることができる。
後半は、
「踊る人形」にも用いられた頻度分析による
「単一換字暗号」に挑戦した。単一換字暗号は、1つ
の文字を特定の1つの記号に置き換えてつくられてい
る暗号であり、26 文字の集合 A と 26 個の記号の集合
B の間にできる 1 対 1 対応が鍵となる。まず、頻度分
析について、
「英語の文章の場合は e の出現率が高い」
という経験則を利用して、暗号文中で出現率が高い記
号を e と推測して復号化していく。実際に、英字新聞
からランダムに選んだ2つの記事のなかに現れる文字の出現率を協力して調べてみて、出現率の高い
文字(推測する候補)を決めた。そして、実際に単一換字暗号で暗号化された文章を、頻度分析の結果
を用いて復号化する作業を行った。その際、一部が変換された語の文字の並びから、もとの単語を推
測する必要があり、どのような単語に置き換えたらよいのか、意見交換する姿が見られた。
○8 月 21 日 WS(3 日目)
それぞれのグループで発表用のポスター作成を引き続き行った。同時に、口頭で発表する内容を協
議して決め、分担を話し合う時間とした。
(3)
担当者の感想
ASTY Camp において、数学分野のワークショップは2つ準備された。1つは、夜に宿舎にて行わ
れたものであり、共通の問題を議論しながら解決するという内容であった。これに対して、本ワーク
ショップのテーマは非常に高度な内容を含むものであったため、本校生徒には敷居の高さを感じる結
果となってしまったようである。内容自体は、数学的な側面を重視して構成した。同時に、課題設定
に国際交流という観点が十分に反映されるよう、生徒同士の話合いの場面や全体で協議をする場面を
設定したつもりである。後半は、合同式や頻度分析といった科学的な観点を用意し、数学的に浅くな
らないようにも配慮した。
ただし、韓国や台湾の生徒からすると、内容がやや易しいと感じたようであると聞いた。彼らは、
今回の内容の延長線上にある RSA 暗号や楕円曲線暗号に興味を持っていたようである。これに対し
て、本校生徒は、単一換字暗号の仕組み(1対1対応や頻度分析)で精一杯という感じに見受けられ、
その理解の乖離にも難しさを感じた。最後の調べ学習についても、韓国・台湾の生徒が積極的に引っ
張っている場面が目立った。本校生徒がもう少しリーダーシップを発揮するべきではなかったかと反
省する。こちらが期待するほど議論が行われなかったが、その要因として、
①アイスブレーキングを設ける必要があった。
今回のワークショップは日程的に限られたものであるため、アイスブレーキングの時間を十分
に確保できなかった。そのため、ワークショップ当初は相互に議論をする雰囲気が醸成されてい
なかった。今後の実施機会には、課題に取り掛かる前に、十分なアイスブレーキングの時間を確
保し、相互が自由に自分の考えを伝え合える雰囲気作りを目指し、活動を構成せねばならないと
痛感した。
②準備段階が講義主体となってしまった。
暗号解読に必要な言葉や考え方を共有するために、1日目は講義主体の形式を採った。このた
め、参加生徒たちの発言機会が十分でなかった。
③理解度の格差が生じていた。
韓国・台湾の生徒と本校の間には数学的な予備知識に大きな格差があった。そのため、本校生
徒から見ると、基本事項の修得が不十分なまま議論せざるを得ない状況に至った。
④個人の中での思考が中心的な活動であった。
課題を実施するにあたり、まずは個人で考えることが必要である。そのため、課題の展開を、
(1)個人的な活動、(2)班別活動、(3)全体での共有というように段階を設定した。しかし、(1)の段
階に予想以上に時間がかかったため、(2)および(3)が手薄になってしまった。
という4点が挙げられる。
加えて、英語の能力は韓国・台湾の生徒が圧倒的に高い。同時にコミュニケーションをとろうとす
る姿勢や積極性も韓国・台湾のほうが高い。これは、経験の差に起因するものであろう。また、担当
者として、事前準備が不十分であったことも反省すべきである。準備自体はしっかりしたつもりであ
るが、内容や構成、課題設定の検討には十分な時間をかけることができなかった。
一見、生徒たちには活発な発言こそあまり見られなかったが、個人レベルでは思考していたことが
記録からは見て取れる。数学という学問は、最初の段階として、個人の内面的な思考から始まる点を
考慮すると、この段階で見た場合、本ワークショップは機能した。この段階を踏まえて、その思考を
整理し発露する活動と、他者の思考に触れて再度内省するという活動につながっていく。当初は、こ
の段階を狙って課題を設定していたため、時間不足あるいは消化不良という感がしたのであろう。
(4)
配布資料(一部)
ASTY Camp 2010 in Nara
WS No.2 (Mathematics) By S. Kawaguchi and K. Yamaguchi
Day 1 (2010/8/19)
Let’s read mysterious messages!
1. Introduction
1.1 What is a “cipher”?
Message
Sender
Name
Address
Phone number
Blood type etc.
Receiver
Senders send secret messages, such as addresses, phone numbers, bank numbers etc. to the
receivers. The messages are generally sent in the form of a letter or an e-mail.
Sender
Message
Receiver
Eavesdropper
However, if the message is captured by an eavesdropper who reads it in bad faith, the secret
between the sender and the receiver will be revealed. To keep the secret with some degree of
security, the sender transforms the original message (called a plaintext) into a special form
(known as a ciphertext), which seems nonsense on the surface. The sender and the receiver,
therefore, will need a rule to share the secret message so that others cannot read it.
Let’s go shopping next Sunday.
See you at 9:00 at the entrance of
Nara station.
[plaintext]
kwr&a fi agiooubf bwzr aybs]t.
aww tiy ]r ¥;@@ ]r rgw
wbre]bxw id b]e] ar]ruib.
[ciphertext]
encrypt
plaintext
ciphertext
decrypt
The process of encryption and decryption is as follows.
Sender
encryption
ciphertext
plaintext
sending a message
Receiver
decryption
ciphertext
plaintext
The sender sends only a ciphertext. So, even if eavesdroppers catch the message, they cannot
read it because they don’t know the rule for encryption and decryption. This rule for encryption
and decryption is very important to ensure the security of ciphers. It is called “the key” to the
cipher.
Let’s go shopping next Sunday.
See you at 9:00 at the entrance of
Nara station.
① plaintext
kwr&a fi agiooubf bwzr aybs]t.
aww tiy ]r ¥;@@ ]r rgw
wbre]bxw id b]e] ar]ruib.
② ciphertext
【①→②】Press the key left of each plaintext letter on the keyboard.
the key of encryption
【②→①】Press the key right of each ciphertext letter
on the keyboard.
the key of decryption
If the key of encryption and decryption is the same,
it is called “a symmetric cryptography.” If a pair of keys
is used to encrypt and decrypt a message, it is “an
asymmetric cryptography.”
1.2 Ciphers used in literature
The first mystery story including cryptography “The Gold Bug,” was written by Edgar Allan
Poe (1809-1849).
The story is about a man named William Legrand who recently found a
gold-colored bug. He seemingly goes insane after being bitten by the bug
thought to be made of pure gold. He told his friend the narrator to
immediately come visit him. Legrand pulls the friend and his servant Jupiter
into an adventure after deciphering a secret message that will lead to a
buried treasure of Captain Kidd.
The following code appears in the story.
53++!305))6*;4826)4+.)4+);806*;48!8`60))85;]8*:+*8!83(88)5*!;
46(;88*96*?;8)*+(;485);5*!2:*+(;4956*2(5*-4)8`8*; 4069285);)6
!8)4++;1(+9;48081;8:8+1;48!85;4)485!528806*81(+9;48;(88;4(+?3
4;48)4+;161;:188;+?;
Arthur Conan Doyle (1859-1930) is a mystery writer well known for his Sherlock Homes
stories.
In a Sherlock Holmes' story "The Adventure of the Dancing Men," a
man reports that his wife, Elsie, became upset when she received several
notes with a number of strange little dancing figures. Holmes deciphers
the code through much brainwork. The figures consist of two sets of
characters: one with flags and the other with no flags. The following is an
example of the code.
1-2-6-3 WS情報
(1)
実施概要
講座名
Let’s Try “LOGO”!
場
本校 PC1 教室
所
WS 担当者
英語科教員
目
的
田中友佳子(本校数学科・情報科教員)
山上
成美(本校数学科・情報科教員)
野上
朋子(本校理科・情報科教員)
塩川
史(本校英語科教員)
プログラミングを通して、順序だてて課題を解決する力をつけたい。普段の人間同士
の会話では、相手の発言が言葉足らずの内容であっても、その会話を受け取る側はある
程度内容を補完し、解釈することができる。しかし、コンピュータはファジーな処理は
苦手であり、コンピュータに処理をさせたい場合、細かく手順を踏んで指示しなければ
ならない。そこで今回は、プログラミングを行うことでコンピュータの得手・不得手を
実感し、生徒が普段何気なく使っているソフトウェアの動作原理を見せたい。
またプログラム作成段階では、エラー処理に多くの時間を割くことになるだろう。エ
ラー処理を通して、デバッグの手法を学ぶことができるのも本ワークショップの特徴で
ある。
さらに、一つのソフトウェアを作るためには、仕様設計から始まりさまざまな工程を
経て完成を迎えることができる。アルゴリズムを考え、実際にコーディングを行い、ソ
フトウェアが形を成していく。プログラムが完成したのちにバグなどのチェックをすべ
て通ると、一つの製品として世に出ることになる。通常私たちが目にするソフトウェア
は、一人の人間の手によって完成するものではない。プログラミングにしても、一人で
すべてを完成させるのではなく何人もが関わって初めて完成するものである。そのよう
な過程を体験することも、今回のワークショップの目的である。また、グループで一つ
のプログラミングを完成させることを通して、コミュニケーション力を養うことや、互
いのよさを認め合って協力することの大切さを知ることもできると考える。
(2)
実施内容
■
展開
本ワークショップでは、教育用プログラミング言語の LOGO を用いて、一連のプログラミングの流
れを経験するとともに、仲間と協同することで一つの作品を仕上げることを行った。
目的は上記に示したように、一つのソフトウェアが完成するまでには多くの人々の手が加えられて
いることを、生徒に体験させることである。それに加えて、生徒の状況を見ながら、プログラミング
における「関数」の考え方を理解させたいと考えた。その目的を達成するための課題として、グルー
プ内で決めたテーマに沿って、一人ひとりが LOGO で絵を描き、それを一つの画面にまとめグループ
の作品として仕上げることを行った。またプログラミングを通して、コンピュータの仕組みについて
知ることを試みた。特に国際交流として英語によるコミュニケーションを行うわけであるから、人間
同士の“コミュニケーション”とコンピュータにおける“コミュニケーション”の違いを知るよい機
会であると考えた。
WS の 1 日目には LOGO の基本的な操作と、基本的な図形の描画について学び、2 日目はグループ
ごとの作品を作成することに時間をかけた。
■
科学英語講座
情報 WS に向けて、情報および数学に関する基本的な英語を学習するための科学英語講座を、3 回
にわたり開催した。LOGO を使いこなすためには、コンピュータの仕組みやプログラミング基礎に関
する英語を知っているだけではなく、数学における図形や計算に関する基礎英語も学んでおかなけれ
ばならない。そこで 1 回目の講座では、図形の名称や数の単位など数学の基本的な英語と、コンピュ
ータの仕組みに関する長文を読み、その内容について確認した。特にコンピュータの仕組みに関して
は、生徒にとっては初めて学ぶ内容であり、キャンプ本番に向けて動機付けとなった。2 回目の講座
は、1 回目の続きが行われた。そして 3 回目の講座では、コンピュータの起動からはじまり、簡単な
操作(クリック、ファイルのコピーなど)に関して、英語で確認を行った。また、プログラムの設計
から始まって、コーディング、デバッグなどのプログラミングの一連の流れを確認することで、プロ
グラミングの基本を学習した。
■
WS(1 日目)
アイスブレーキングとして 2 人 1 組になり他己
紹介を行い、互いのことを理解したのち、LOGO
によるワークショップを行った。
LOGO のコマンドの基本は「直進」と「回転」
である。前もしくは後ろにどれだけ進むのか、右
もしくは左にどれくらい回転するのかを命令する
ことで、画面上に配置されているカーソルが動き、
直線が描画される。コンピュータ上でプログラミ
ングを行う前に、LOGO によるプログラミングの
イメージを体験することを目的として、教室の空
きスペースで生徒による実演を行った。コマンド
役の生徒 1 名と、コマンド役の指示を受けてその
通りに動く生徒 1 名を指名し、実際の動きを確認
した。左図がそのときの様子である。特に正三角
形の描画では、生徒のイメージと実際の結果に差
が出て、
「カーソルの立場になって考える」という
LOGO プログラミングの特徴を確認することが
できた。
実演を行ったあとは、実際にコンピュータ上で
LOGO プログラミングを行った。基本図形として
正方形、正三角形、ひし形、正多角形の描画を行
った。特に正多角形に関しては、海外の生徒はすぐに内容を理解し描画することができたが、本校生
徒は頂点の個数を一般化して考えることについて苦戦する姿が見受けられた。しばらくそのような光
景が続くと、しだいに海外の生徒が本校生徒へ課題の解決方法を説明する姿が見られるようになり、
海外生徒と本校生徒の距離が縮まった様子であった。基本図形の描画が終わると、次は基本図形を組
み合わせた発展課題へと取り組んだ。
1 日目の最後に最終課題の説明を行い、テーマを
一つ決めること、そのテーマに沿って一人ひとりが
LOGO を用いて絵を描くこと、個人が描いた絵を一
つの画面にまとめることを指示した。
WS(2 日目)
■
プログラミングにおける高度な技術として再帰が
ある。2 日目の WS の冒頭で、再帰について説明を
行い、再帰を用いた有名な例としてコッホ曲線とシ
ェルピンスキーのガスケットについて紹介した。再
帰を用いることで数学的に美しい図形を描くことが
できることを知り、それを用いてグループによる最
終課題に取り組もうとする生徒も見られた。
残りの時間を用いて、グループによる最終課題を
行った。インターネットを用いてテーマとなりうる
題材を調査し、グループによる議論を行った結果、
1 班は「惑星」をテーマに選択し、各自が一つずつ
惑星を描くことで、宇宙を表現しようと試みた。2
班は「平和」をテーマに掲げ、韓国・台湾・日本の
国旗などを描いた。個人の作成した絵をグループで
一つのものにまとめる作業を行う際に、関数の考え
方がポイントとなる。プログラミングを始めたばか
りの中高生にとって関数の考え方は難しく、どちら
の班も関数によるプログラミングを行うことはでき
なかった。しかし、一人ひとりの作品は 1 日目の課
題などを踏まえた上で完成されたものであり、限ら
れた時間の中で完成度の高い作品に仕上がった。特
に、韓国および台湾の国旗を作成した生徒が、自ら
作成した関数を多用して実物に忠実な作品を完成さ
せたことは評価したい。
■
WS(3 日目)
グループ課題の作品を完成させて、ポスター発表
に向けた準備を行った。本校生徒はキャンプ前の科
学英語講座においてポスター作成について学んでいたが、情報 WS ではそのときの技術をそのまま用
いることが困難な内容であったため、ポスターにどのような事柄を記載すればよいかについて、苦戦
した側面があった。
プレゼンテーションの技能に関しても、海外生徒と本校生徒の間に能力差が生じたが、足りないと
ころは互いに補い合い、まとめ上げることができた。特に、どちらのグループもコンピュータを用い
て LOGO のプログラミングの様子を実演するなど、工夫した発表を行うことができた。
(3)
考察
■
WS の内容に関して
WS の目的に示した、人間の“コミュニケーション”とコンピュータの“コミュニケーション”の
違いは何か、という問いを生徒に投げかけたところ、
・ コンピュータはステップ単位の命令のやりとりにより処理が実行されるが、人間はそうではない
・ 人間は、言葉だけではなく表情や身振り手振りで自分の考えを伝えることができるが、コンピュ
ータはそうではない
という答えが返ってきた。これは、キャンプ実施前に目的として設定した内容を十分に達成できたと
いえる。ただし、二つ目の返答に関しては、現在の技術では人間の表情などをコンピュータで読み取
って、処理することもできるという付け加えも行った。
個人作業においては、一人ひとりがテーマに沿った作品を完成させることができた。しかし、全体
でまとめるためには 2 日間という時間は短く、完成には至らなかった。個人では、プログラムの設計
からコーディング、デバッグという一連の流れを習得することができた。特に、既存の関数および各
自が作成した関数を多用して、一人ひとりが仕様に合致したプログラムを構築することができた。グ
ループ作業においては、プログラムの設計段階においてグループ内における綿密な打ち合わせが要求
される。特に、変数および関数の仕様などはグループ内で統一することが必要であった。しかし、生
徒はその必要性に気づくことができず、結果としてグループ作業ではプログラムを一つにまとめるこ
とは困難となった。早い段階で、担当者から生徒へのアプローチが必要であったといえる。
■
生徒に関して
LOGO で課題を解決する際には、数学の基礎知識は必要不可欠であることがわかった。今回のワー
クショップでは、数学に関する既習事項が身についている生徒とそうでない生徒によって課題解決に
差が出た。特に、本校生徒の数学の学力は海外生徒と比較すると低かった。しかし、時が経つにつれ、
早く課題を解決した生徒がそうでない生徒へ教える姿は多く見られた。教える際には、数式や LOGO
言語が有効に働いた。特に LOGO はコマンド名が英語に近いため、コマンドがどのような動作をする
のかを推測することは簡単であり、友だちへの説明も容易であったと考えられる。
プレゼンテーションについても、海外の生徒はポスターの記載事項や発表方法についてよく理解し
ていたのに対し、本校生徒はプレゼンテーションの方法についてやや知識が乏しい面があった。しか
し本校生徒にもキャンプ前に行われた科学英語講座で得た知識をもとに、工夫して発表しようという
意思はうかがえた。
WS 全体を通して
■
コンピュータをどのような位置付けで扱うかが、課題として残った。今回の WS において、コンピ
ュータは問題解決を行うための導入という位置付けにとどまった。物理や生物における現象をシミュ
レーションするなど、コンピュータを道具として用い、課題を解決することも可能であったと考えて
いる。プログラミングを行い、身近な課題をシミュレーションにより解析するとともに考察を行うこ
とで、科学的リテラシーの育成につなげることも可能と考えている。そのためには、理科教員と共同
でワークショップを行うことも検討していかなければならない。
前述のように LOGO はコマンドが英語に近いため、国際交流においては生徒が探究しやすいテーマ
である。今後、さらに課題内容の追究を行い、専門的な内容も取り入れた WS にしていきたい。
(4)
配布資料
1-2-6-4 WS化学
(1)
実施概要
講座名
場 所
WS 担当者
“ Our Drinking Water ”
本校化学教室
越野 省三(本校理科教員)
古池 美彦(本校卒業生)
英語科教員
目 的
南 美佐江(本校英語科教員)
・水の硬度について理解する。
・飲み水について科学的に考察する。
・世界の一員として水との付き合い方を考える。
(2)
実施内容
■
経緯
3 カ国の生徒たちが集まり、参加者が実験や作業、ディスカッションをしながら、スキルを伸ばす
場として、どのような題材が適切であるか。中学 3 年から高校 1 年という年齢も考慮し、日常生活に
おいて誰もが身近に接している「水」を題材とした。
日本の生徒たちにとっては身近にあって当たり前と思える水であるが、その水はどこからやってき
て、どのように流れていくのだろうか。毎日かかせない物質であり、すべてのいのちを支えている水
なのであるが、ほとんどの生徒はこれまでの生活において、足を止めて「水」のことを考えたことは
ないという。
日本でミネラルウォーターや浄化水、水道水など 12 種類を用意し、また台湾・韓国の両国から水(ボ
トルドウォーターおよび水道水)を数種、持ってきてもらい、それらを題材とし、滴定操作などを行い
飲み水について科学的に考察し、世界の一員とし
ての水との付き合い方を考えるきっかけにしよう
と考えた。
■
展開
今回はワークショップであるから、参加者が自
発的に作業や発言を行える場を用意し、参加者全
員が、その場で体験しながら、問題解決の方法や
思考トレーニングを学ぶ機会となるものにした。
当然ながら教員はファシリテーターとして関わり、
生徒の主体的行動を尊重する形態で実施した。
○ 8 月 10 日
南先生から本校の参加予定生徒 5 名が、
INTERNATIONAL DECADE FOR ACTION
「WATER FOR LIFE, 2005-2015」を題材に科学
に関する英語を学んだ。フィールドワークの目的
に照らし合わせ、事前に何か予備知識を与えてお
くことは最小限度に押さえたかったが、少し予備
学習的になってしまった。
資料 1
○ 8 月 19 日 WS(1 日目)
私たちが普段飲んでいる水について考えてみよ
う!
「水道水を飲む人もいれば、浄水器を通した水を飲
む人や、ペットボトルに詰められた水を買って飲む
人もいるだろう。それらの水にはどのような違いが
あるか、ここでは水の硬度を測定することによって、
私たちのまわりの水について考えてみよう!」
ボトルドウォーター(ミネラルウォーター)を買
う理由に「水道水よりもミネラルが入っていておい
しいから」というものがあり、その意見の占める割
合は80%以上にもなる。本当にミネラルが入ってい
ればおいしいのか。ミネラルとは何なのか。そもそ
も販売されているボトルドウォーター(ミネラルウ
ォーター)に水道水以上のミネラルが含有されてい
るのか。などを考えるために、水の硬度と私たちの
資料 2
生活について考えた(資料2)。
次に、生徒が2つのグループ(日本&台湾グループ)と(日本&韓国グループ)に分かれ、水の硬度を測
定する2つの実験をした。1つめは紅茶を利用した硬度測定(資料3)。その測定結果から、イギリスと日
本との文化の違いと水の硬度との関係について考えた(資料4)。2つめはEDTAを用いたキレート滴定に
よる測定(資料5,6)をした。2つめの実験では、校舎内の蛇口から出る水道水や市販されているミネラル
ウォーターと呼ばれている水、また大阪市が販売している高度浄化処理された水道水、また台湾で販売
されているボトルドウォーターや、韓国のミネラルウォーターなど、いくつもの水の硬度をより正確に
資料 3
資料 4
測定した。同時に、飲み比べをして、味とミネラルの関係やボトルドウォーターの価格について考え、
そこから各国の水事情について話し合った。
【実験1】
<準備物>
蒸留水(300mL)、紅茶のティーバッグ、軟水と硬水
のミネラルウォーター(各50mL)、水道水(50mL)、
300mLビーカー、100mLビーカー(3個)、100mLのメ
スシリンダー、ガラス棒、ガスバーナー、ステンレス
金網、三脚
<方法>
300mLビーカーに約200mLの蒸留水を取り、
①
加熱する。沸騰が始まれば加熱を止め、紅茶のティー
バッグを浸す。1分ほど浸した後、ティーバッグから
紅茶の色を充分に出す。その後、室温付近まで冷ます。
3個の100mLビーカーに蒸留水、軟水と硬水のミ
②
ネラルウォーターをそれぞれ40mLずつ入れ、各ビー
カーに①でつくった紅茶を40mLずつ入れ、ガラス棒
でかき混ぜる。
③
それぞれのビーカー内の紅茶の色を比べる。
<考察>
それぞれの水で、色の濃さはどのようになっている
だろうか。
資料 5
【実験2】
<準備物>
ビュレット、ビーカー4個、ろうと、スタンド、ガラ
ス棒、水道水、浄化水、ボトル水(数種)、
NH3-NH4Cl緩衝溶液(pH=10)、0.01mol/L EDTA溶
液
、EBT指示薬
<方法>
①
選んだミネラルウォーターの試料溶液50mLを、メ
スシリンダーを用いてビーカーにはかりとる。
②
①のビーカーへ、駒込ピペットでNH3-NH4Cl緩衝
溶液2mLとEBT指示薬2滴を加える。(溶液全体が赤く
なる)
③
ろうとを用い、0.01moL/L EDTA溶液を、ビュレ
ットへ静かに加える。
④
②のビーカーへビュレットからEDTA溶液を1滴
ずつ滴下し、ガラス棒でかきまぜる。
⑤
溶液の色が青く変わるまでに加えたEDTAの体積
(mL)を求める。
資料 6
⑥
同様の方法で、他のミネラルウォーター、水道水、浄化水などの測定をする。
<結果と考察>
それぞれの水の硬度を測定値から計算し、飲料水
と硬度の関係について考えてみよう。
○8 月 20 日 WS(2 日目)
午前中は第1日目の実験の続きを行い、その結果な
どからわかることを討論した。また、ボトルドウォ
ーターの価格の妥当性や、水を買うことの意味など、
世界の水の事情を考えながら議論した(資料7,8)。
午後は各班で補足のための資料等を集め、議論し、
ポスターにまとめる準備をした。
○8月21日WS(3日目)
ポスター作成と発表準備をした。
(3) 担当者の感想
韓国の生徒の論理的思考力は非常に高く見受けら
れた。また、台湾の生徒も取り組む姿勢が真面目で、
科学的な知識が豊富であった。両国と比べると今回
の日本の生徒たちは、知識、科学的思考力ともに物
資料 7
足りなかった。また、行動やホスピタリティの面でも、もう少しと言わざるを得ず、ホストとしての
役割はやや不十分であったかと思われる。しかし、このワークショップが単なる文化交流ではないこ
とを韓国、台湾の生徒はもちろんであるが、日本の生徒も理解できていたように見えた。
サイエンスに関するコミュニケーションに関しては、今回は、英語に堪能な自然科学研究者でかつ
国際学会での発表や国際交流経験も少なからずある TA の活躍が大きく、生徒たちが自分たちで考え
る場面を多く設定することができた。
飲料水の硬度の測定をすることで、ボトルドウォ
ーターのまやかしに気づき、社会の中の一員として
どのように行動すればよいかを考えられた生徒群と
水質汚濁の面に意識が向いた生徒群がいた。ファシ
リテーターの意図としては、より前者へと進めたか
ったが、どちらにしても社会と生活との関わりにつ
いて考えるときに、科学の方法を用いて考えていく
ことが大切であるということに気づいたのではない
かと思う。今回、その場で体験しながら、問題解決
の方法や思考トレーニングを学ぶというワークショ
ップの目的は十分達成できたといって良いだろう。
酷暑の中、冷房設備もない実験室での活動は、空調
設備が整った環境で学習している台湾や韓国の生徒
たちからすると、とても耐えられない様子で、集中
力が持続しない状況があった。実施期間は再考の必
要があるだろう。
資料 8
1-2-6-5
WS 物理
(1) 実施概要
講座名
場 所
WS 担当者
“Let’s study Motherland’s time measuring technology in history.”
本校 PC 教室
Prof. PARK Sang-Tae(韓国公州大学校教授)
KWON Jin-Young、SONG Ji-Won(韓国公立中学校教員)
英語科教員
目 的
平田 健治(本校英語科教員)
・自国で開発された古い時計の歴史を調べ、他国の生徒と情報交換を行うことで
世界全体の歴史の中での時間を測定する科学技術の進歩の過程を学習する。
・各国の古典的な時計の長所と短所を科学的な観点に基づいて議論し、より正確
に時間を測定するための工夫を考える。
・国際交流という環境を生かし、単に科学的知識の獲得を目指すのではなく、歴
史や文化の交流も念頭におく。
(2) 実施内容
①
時間を測定する技術の歴史を調べる(8/19(木) 9:00~16:00)
このワークショップでは、各国の時間測定の技術を調べ、それらをより精密化するための手法を議
論することを目的としている。そこで、最初の課題として、各国で開発された古い時計のしくみにつ
いて調べ、時間を測定する技術がどのようにして発展してきたかを調べることが提示された。加えて、
調べた内容を他国の生徒に説明するために、英語でのレポート作成を行わせた。当初の予定ではこの
活動は午前中のみの予定であったが、午後からもこの活動が継続された。前半はインターネット等を
利用した生徒の調べ学習の形式でワークショップが進んでいたが、生徒の活動が思うように進まなか
ったため、午後からは教員が先導して生徒の学習活動をサポートする形式をとった。この方針転換が
後の活動に大きな影響を与えるきっかけとなった。
このワークショップには、他の 4 つのワークショップとは異なる大きな特徴がある。それは、ワー
クショップの主担当者が海外の教員のみで構成されていた点である。そのため、面識の無い海外の教
員と英語でコミュニケーションをとることが初期の段階から求められた。この言語の壁は、特に本校
生徒にとって大きな課題となり、最初の時期は関係性づくりの困難さや、教員が意図する活動が円滑
に行われないなどの問題が生じた。そこで、
生徒の様子を見ながら日韓の教員が協議を
行い、適宜アイスブレーキングの活動を行
ったり、教員が主体となって生徒の学習を
サポートする形式をとるなどの工夫が行わ
れた。この日の午後の終わりには、アイス
ブレーキングの時間が再度持たれ、全員で
簡単なスポーツを行った。この時間を経て、
担当教員と生徒の関係や、国の違う生徒同
士の距離感がより一層近いものとなり、次
の日以降の生徒の研究活動を促進すること
となった。
②
調べた測定方法の長所と短所を議論する(8/20(金) 9:00~14:00)
2 日目は、2 つの班に分かれて個人が作成したレポートの発表活動を行った。班内での発表活動が
終わると、全体での情報共有が行われ、そ
の後、各測定方法の長所と短所を議論しあ
った。内容に関する予備知識が少ないこと
に加えて、慣れない科学英語を用いて説明
を行うことは、生徒にとっては決して容易
ではない様子であった。特に、各測定方法
の長所と短所を議論する場面では、どの生
徒も苦戦している様子が伺えた。
しかし、前日のアイスブレーキングの効
果もあってか、生徒間および生徒と教員間
のコミュニケーションはずいぶんスムーズ
になっていた。韓国の教員が各班を一人ずつ担当し、必要に応じて生徒をサポートする形で活動が行
われたため、1 日目に比べると、生徒の発言もずいぶん活発になり、議論の内容もより科学的になっ
ている印象を受けた。当初の予定では、班ごとの報告の後、以下のような課題が予定されていた。
・他の生徒が発表した測定方法の長所と短所について考察し、どうすればより正確に時間が測定で
きるかを考え、自分の意見を相手に伝える。
・他の生徒からの指摘をもとに、自分の発表した測定方法をどのように改良すればより正確に時間
を測定することができるかを考察する。
本来であれば、上記にあげた 2 つの課題を行うことがこのワークショップの大きな目的であったが、
実際の生徒の活動状況はその課題に達するものではなく、今回は 1 項目の課題のみにとどまった。し
かし、2 日目の活動の雰囲気は非常に良く、生徒のコミュニケーションや議論のスキル、科学的思考
力の向上が見られた。
③
ポスター作成(8/20(金)14:00~16:00,8/21(土)9:00~12:00)
2 日目の午後の後半からはポスター作成に取りかかった。どちらの班も最初にポスターに記載すべ
き内容やレイアウトを相談し、下書きを考えた上でポスターの作成にあたっていた。生徒同士の会話
もスムーズで、互いの意見を出し合いながらレイアウトを考えている様子であった。日本人の生徒達
は事前学習で学んだ英語を用いたポスター作りのノウハウを上手に生かしていた。タイトルや色づか
い、記載する内容の精選や聴衆の理解を助けるための効果的なイラストの導入など、日本人生徒が積
極的にアイデアを出している様子が伺え、ポスターセッションに特化した事前学習を行ったことが功
を奏していた。海外の生徒達もポスター作成の経験があるようで、作業は円滑に進んでおり、当日の
ポスターセッションでもタイトルの設定やデザイン性の高く評価されるポスターを作成することがで
きた。
(3) 考察
3 日間のワークショップ活動を経て、以下の 3 点を中心に考察を行う。
①
課題設定について
様々な国の科学技術を互いに学びあう活動が重視されており、国際交流の特性を生かした課題設定
であった。単に科学的な知識の習得にとどまらず、文化的背景を理解することにもつながる内容であ
った。その一方で、「昔の時計を調べることで、時間を測定する技術について調べてみよう」という最
初の発問に対して、参加生徒の中に「時間を測る」ということに対する知識やイメージ(例えば水時計
のしくみなど)があまりなく、何をどの程度調べればよいのかのイメージをつかむまでに時間を要した
生徒が多かった。そのために、当初担当教員がイメージしていた以上に 1 日目の活動が軌道にのるま
でに時間がかかってしまった。調べる内容が多岐にわたるうえに、そのしくみがひとつひとつバラバ
ラであるため、全体で取り扱う時計を 1 つに絞り、その時計の改良方法を実験を交えながら考察して
いくなど、導入方法を変えることでより科学的なアプローチができるように感じた。
②
海外生徒の英語能力および科学的思考力について
ワークショップ中に終始感じたことは、海外生徒の英語能力および科学的思考力の高さである。韓
国の生徒は本校と同じ中学 3 年生でありながら、教員からの英語の質問に難なく答えられ、課題を科
学的に思考する力も高い印象があった。台湾の生徒も同様であり、さらにはコミュニケーションスキ
ルが非常に高い印象があった。2 班に分かれての活動であったが、どちらの班も前半の日程をリード
していたのは台湾の生徒であった。これに対し、グループ内の構成人数が一番多い日本人が予想以上
に積極的なコミュニケーションがとれなかったことが印象に残る。英語能力の差は予想していたが、
グループワークの際に人数の多い日本人のほうがリードできるような雰囲気があればよかったように
感じた。また、海外の参加生徒は各種の選抜試験を通過した生徒であることも大きな相違点であろう。
今回の実践をふまえて、参加生徒に求める条件や、プログラムの構成を今後十分に議論すべきであろ
う。
③
事前学習および授業での学習活動について
今回、本校の生徒のみが科学英語に主眼をおいた事前学習を実施した。しかし、当日の様子を見て
いると、英語での日常的な会話や議論に関わる部分の指導が必要であるように感じた。この意見は、
Evaluation 活動の際に参加生徒からも出されていた。科学的思考力についても、日本人の生徒のほう
が経験値が低い印象があり、事前学習の内容を今一度考察することが必要であるように感じた。ただ
し、英語コミュニケーションに関わるスキルや科学的思考力の育成は事前学習のような短期的な学習
によって形成されるものではなく、普段の授業における学習活動と密接に関連している部分が大きい。
この国際交流をきっかけに、普段の学習への意欲をより高めてもらうことができればと思う。
(4)
担当者の感想
今回取り扱った課題は、当初の最終目的まで達しなかったものの、さらに科学的にアプローチでき
る側面を多分に持ち合わせている。そのためには、当日取り扱う内容をより精選していくことが必要
であるように感じた。1 つの改善方法として、調べ学習からスタートするのではなく、教員の講義か
ら始める形式をとるとよいのではないかと考える。例えば、最初に教員が 1 種類の時計のしくみにつ
いて講義を行い、実際にその時計を作成してみる。次に、その時計の精度をあげるためにどのような
工夫が必要かを考えさせた後、実験によって検証することで、「仮説を立て、実験で検証する」という
科学実験の基礎的な分析方法を体感させることができたのではないだろうか。
各国の時計の歴史を調べたり、上記のように共通テーマとなる時計のしくみを調べる段階までを事
前学習として取り扱うと、有効な事前学習になる可能性がある。今回の経験をもとに、このワークシ
ョップの可能性をさらに広げることができればと思う。
1-2-6-6 夜の数学ワークショップ
数学は、世界共通の言語だといわれる。言葉が十分通じなくても数学を通してコミュニケーション
ができ、数学的な考え方は伝わると考えられる。このワークショップ(WS)の目的は、韓国、台湾、日
本の生徒が、数学を通じてコミュニケーションをし、問題を解決した内容を伝えるのに証明の方法が
大切だと感じる場面を設定することである。
■
実施概要
内
容
平面幾何
日
時
平成 22 年 8 月 19 日(木)20:00~21:30
場
所
ホテル白鹿荘
大広間
授業者
横弥直浩(本校数学科教員)
対
本校生徒 34 名、韓国生徒 12 名、台湾生徒 10 名
■
象
WS の目標(ねらい)
① 数学の課題を積極的に解き、それを伝えるときに数学は世界共通言語であることを感じる。(関
心・意欲・態度)
② 証明という方法で、問題の解とその根拠を伝えようとする。(表現・処理)
③ 三角形の合同条件、円周角の定理、円に接する四角形の性質について知っている。
(知識・理解)
■ 授業展開(概要)
生徒の学習活動
指導上の留意点
評価の観点
Math Problem 1 を提示
・できない生徒には、補助線
課
・個人でプリントの問題を解く
が必要であることを伝える
題
・ホワイトボードで、3通りくらいの
・いろいろな解法があること
・証明という方法で、
1
解法を発表する
を気づかせる
問題の解とその根拠
・発表の内容・方法には、数学的な証
・説明するには、証明をする
を伝えようとする
明をつかう
ことが一番正確で伝わりやす
[表]
いことを印象付ける
課
題
2
ま
と
め
Math Problem 2 を提示
・5.6 人のグループになり、コミュニケ
ーションを取りながら問題解決をする
・模造紙にグループで相談して、1つ
の解答を作成する
・ホワイトボードに模造紙を貼り、各
グループの発表をする
・数学は、世界共通言語であることを
実感する
・問題解決の説明をするときには、証
明の形式が正確で簡潔に伝わる
・三角形の合同条件、
・各国の生徒が数学を通して
円周角の定理、円に接
コミュニケーションしている
する四角形の性質に
ことに気付く
ついて、知っている
[知]
・数学を、コミュニケーショ
ンの道具として使った
備考:上記の略号は、次のとおりである。
[関]関心・意欲・態度,
[数]数学的な見方・考え方,
[表]
表現・処理,
[知]知識・理解
■
WS の様子
Problem 1
Now, ∠BAE=20°,∠DAF=25°
This is a square ABCD.
■
使用プリント(略式)Math
Then Calculate the size of angle ∠AEF?
Math Problem 2
This is a rectangle ABCD.
Now, ∠ABC=80°,∠BCA=40°,
∠BDC=60°.
Then Calculate the size of angle ∠ADB?
1-2-7 ポスターセッションについて
今回の ASTY Camp では、
ワークショップ最終日に成果発表会としてポスターセッションを実施した。
通常、国際連携における研究発表会では、パワーポイントによる発表の形式が多い。この場合、より
多くの聴衆に対して成果を発信できる一方で、質疑応答を活発化させるためには、発表者と聴衆の両
方にある程度の経験値が必要となってくる。多くの聴衆の前で慣れない言語を用いて質疑を行うこと
は非常に難易度が高い。そこで、生徒同士が対面式で自分のペースで議論できるように、本キャンプ
の成果発表の形式としてポスターセッションを選んだ。
また、ポスター作成は手書きで行わせた。手書きでの作成を選択したことには、個人単位での作業
ではなく、班で協力して作業を行わせる意図がある。パソコンでのポスター作成には、イラストの作
成など時間を要する部分があるため、初めて作成にあたる生徒にとってはやや難易度が高い。そのた
め、使い慣れている生徒が中心となって作成にあたるなど、個人単位での作業になりやすいと考えた。
これらの要素を加味し、生徒のアイデアをできるだけ形にしやすい方法を考察し、手書きでのポスタ
ー作成を義務付けた。なお、パソコンや実験器具を用いての演示が必要な場合は、発表当日に自由に
用いて良いとした。
(1) ポスター作成中の様子
ワークショップごとにばらつきはあったが、ワークショップ 2 日目の後半からポスター作成を始め
る班が多かった。どの班もポスターの構成に関するアイデアを皆で議論する様子が伺えた。本校の生
徒は、事前学習で実施したポスター作成およびポスターセッションでの既習事項を積極的に活用して
おり、活躍が目立った。海外の生徒は、これまでにポスター作成の経験があるようで、より実質的な
アイデアを出すことができる印象であった。どの班もすぐにポスター作成に取り掛かるのではなく、
その構成を十分に練っている姿が印象的であった。この頃にはコミュニケーションも随分とスムーズ
になり、互いの意見を交換しながらアイデアを固めている班が多かった。また、手書きでの作成のた
め、生徒の思い描いている図やイメージを形にしやすいという利点も見られた。色使いやデザイン、
文字の大きさや形など、班ごとにバリエーションが異なり、班の特性を出すことができた。
(2) ポスターセッションの様子
ポスターセッションは本校多目的ホールにて行われた。2 回に分けてポスターセッションを行い、
前半の回で発表を行った班は後半では聴衆になるように指示し、参加生徒全員が発表者と聴衆の両方
を体験できる形式をとった。聴衆の立場になるときは、評価の観点を持ってやりとりができるように、
評価シートの記載を義務づけた。このシートには、自分の聞いた発表内容を要約するという課題を設
け、生徒の参加意識を高めるとともに、内容を理解しようと努力すべき環境づくりを行った。
発表中の様子は、各班によって特徴が見られた。実際に実験器具やパソコンを使って演示を行って
いる班や、ポスターの中にクイズを含めて聴衆に質問を投げかける工夫を行うなど、様々なアイデア
が見られた。また、作成されたポスターには、各ワークショップにおける実験や調査の結果をまとめ
るという形式が多く見受けられた。生徒たちは、絵や図を適切に用いることでより明瞭なポスターを
作成しており、短時間での作成にも関わらず、力作がそろっていた。英語の持つ独特の雰囲気をうま
く利用している様子も目立ち、目を引くポスターが多かった。また、発表の際も班ごとに様々な工夫
が見られた。日本の生徒は原稿を用意している班もあり、自分達の現状にあわせて工夫を行っている
姿が印象的であった。これに対し、海外の生徒はポスターセッションの経験からか、流暢に説明をす
る様子が伺えた。また、各ブースで少人数が集まって議論している姿が多く見られ、生徒同士が対面
式で議論できたのではないかと思う。運営指導委員の先生方の質問にも熱心に答えており、ポスター
セッションの有効性を改めて実感することとなった。
(3) 講評
ポスターセッションの最後には、参加してくださった運営指導委員の先生方から講評をいただいた。
各研究活動へのコメントや、実験の進め方に関する指摘、ポスターの作成上の留意点等の指摘があっ
た。この中に、研究仮説を記載している班が少なく、実験活動を行う際には自身の仮説を明記するよ
うにとの指摘があった。科学的な検証において、自身の仮説に基づいて実験を行って検証するという
プロセスは重要な流れである。これらの先生方からの意見を今後の指導に生かしたい。
(4) ポスターセッションをふりかえって
当初の目的にあったように、対面式での議論が行いやすい環境を設定し、生徒主体の発表会を実施
することができた。生徒の事後アンケートでもこの活動の満足度は非常に高く、協働研究を行った後
の発表活動の重要性が明らかとなった。本校の生徒については、事前学習で習得したポスター作成や
プレゼンテーションの経験を生かしている生徒が多く見られ、事前にそのプロセスを学習することの
有用性を感じた。同時に、海外の生徒のプレゼンテーションの能力の高さは明らかであり、海外教員
にその理由を尋ねたところ、研究会等への参加により、ポスタープレゼンテーションを体験する機会
が多いとのことであった。本校生徒においても、事前学習のみにとどまらず、通常の授業内やサイエ
ンス研究会におけるポスター発表などで積極的な指導を行うと良いように感じた。
Poster Session Sheet
Please write your comment freely.
自由にあなたの意見や感想を書いてください。
Evaluation 1 》
《
Choose one group which is most impressive one except your group. And make an answer to
following questions with your comment why you choose this evaluation. You can use your native
language.
自分の班以外の中から最も印象的であった班を1つ選び、その班の発表について以下の
質問に理由をつけて答えなさい。ただし、理由については母国語を使用して書いてよい。
選んだ班
①
WS Group Number 【
】
Is their presentation easily understandable?
【
5
・
4
・
Very Good
3
・
2
・
Usually
1
】
Not Good
Comment:
②
Do they research their theme by scientific or mathematical approach?
【
5
・
4
・
3
・
2
・
1
】
・
2
・
1
】
Comment:
③
Can you understand their poster well?
【
5
・
4
・
3
Comment:
《
Evaluation 2 》
Choose one workshop except same theme as yours and summarize their research.
You can use your native language.
自分達が研究したテーマ以外のワークショップの中から好きなワークショップを1つ選び、その研究
内容を要約せよ。ただし、母国語を使用して書いてよい。
1-2-8 パーティーと開会式、閉会式
本項では、開会式とウェルカム・パーティー、閉会式とフェアウェル・パーティーの様子を紹介す
る。
■
開会式とウェルカム・パーティー
参加者達は奈良に到着後すぐに本校まで移動し、開会式と
ウェルカム・パーティーに参加した。開会式では、はじめに
本校の吉田副校長より歓迎の挨拶があり、そこで、本 ASTY
Camp の目的等が語られた。
続いて韓国参加者代表の朴先生、
台湾参加者代表の黄先生からも挨拶をしていただいた。開会
式場ではプログラムや T シャツが配布され、参加生徒達は
皆緊張した面持ちで熱心にプログラムに目を通していた。
最
後に ASTY Camp のコーディネーターを務める本校教員藤
野より歓迎の挨拶、前田から日程の概略説明と注意事項の説明があり、開会式は終了した。
開会式後は、引き続き本校生協食堂にて、ウェルカム・パーティーが開かれた。各参加者が自分の参
加するワークショップごとに分かれてテーブルを囲み、パーティーが始まった。出会ったばかりの者同
士ということもあってか、異様に静かな、また緊張のためか空気の張りつめた会場の雰囲気になってい
たことが印象的であった。そのような状態を察知してか、急遽台湾の黄先生がマイクを持ち、ゲーム大
会が始まった。簡単なじゃんけんを応用した形のゲームであったが、黄先生のおかげで場の雰囲気が一
気に和み、各自が用意してきた名刺を交換し始め、交流が深まった様子であった。こうして、初日のプ
ログラムは終了した。
■
閉会式とフェアウェル・パーティー
閉会式全体集合写真挿入
最終日に行われた閉会式では、はじめに本校吉田副校長
から閉会にあたっての挨拶があった。続いて参加者一人一
人に本プログラムの修了証が副校長によって手渡された。
壇上にあがり、修了証を手にした各参加者は緊張した表情
をしつつしっかりと副校長と握手を交わしていた。
閉会式後、フェアウェル・パーティーが開かれた。ウェ
ルカム・パーティーとは違い、終始和やかな雰囲気の中、
プログラム中の思い出を語り合う場面が多く見られた。歓談が進んだ後、プログラム中に撮影した写
真をまとめたスライドショーの上映を行った。初日からの写真がスクリーンに映し出され、思い出を
語るとともに、時には大きな笑いも起こり、また涙ぐむ参加者もいた。スライドショーの BGM とし
て使用されていた曲は、二日目の文化交流会で台湾の生徒達が熱唱しながらダンスを披露した曲であ
り、上映にあわせて飛び入りで再びダンスを披露するなど大いに盛り上がった。また、スライドショ
ーの最後には “We are the world.”が流れ、参加した生徒、教員全員が肩を組み皆で熱唱し、ASTY
Camp の幕が閉じた。
涙を流しながら皆で歌っている様子を見ていると、ASTY Camp を通してかけがえのない友人と 1
週間充実した日々を送ったのだとだれもが確信できたのではないだろうか。
第3節
1-3-1
ASTY Camp 評価と今後の展望
Evaluation Session と Evaluation Sheet,Journal から見えてくるもの
今回の ASTY Camp では、評価活動の一環として、毎日の活動後に生徒が記入する Journal の導入
や、参加者全員で行う Evaluation Session を実施した。これらの活動には、キャンプ中の生徒の生の
声や変化を読み取る目的がある。
(1)
Evaluation Session
Evaluation Session とは、参加生徒や教員のディスカッションによる評価活動である。今回は、あ
らかじめ意見を聞きたい項目を記載した Evaluation Sheet を用意し、各グループに分かれて実施し
た。言語を気にせず、自由に意見を述べてもらうために、生徒は国別に分かれて評価活動を行った。
参加人数の関係から、本校生徒のみ 2 グループに分かれ、韓国、台湾の生徒はそれぞれ 1 グループを
作り、本校の教員や海外の教員が進行を務める形式で活動を行った。生徒同様に教員によるグループ
も設け、指導者側の教員による評価活動も行った。グループごとに 1 時間程度の Evaluation Session
を行ったあと、本校多目的ホールにおいて全体会が開かれ、情報の共有が行われた。
以下に全体会で出された意見の一例を示す。
・海外からの参加人数よりも日本人の参加人数が多かったため、班内で日本人が集まってしまう傾
向があった。次年度以降は各国からの参加人数を調整すべきである。(日本)
・海外の生徒の英語能力の高さに驚いた。日本の生徒とは明らかに差があり、ホストである日本人
がもっと積極的に会話をする努力をしなくてはいけないと思った。(日本)
・観光や文化遺産の見学を通じて、異なる国の文化や歴史を感じることができた。しかし、スケジ
ュールの関係から短い時間しか見学できなかったため、このような時間をもっと長時間設けてほ
しい。(台湾)
・海外の生徒と時間をかけて議論できたことは、とても貴重な体験であった。(韓国)
・ワークショップの時間をもう少し長くしてほしい。(3 ヶ国共通)
・キャンプの期間が 1 週間では短かった。もっと長くしてほしい。(3 ヶ国共通)
・City Tour や文化交流会など、アイスブレーキング活動がとてもよかった。(3 ヶ国共通)
・日本で開催するだけではなく、台湾や韓国での開催も行うとよい。(3 ヶ国共通)
どのグループでも、活発な議論が行われており、生徒自身が問題意識を高く持ち、このキャンプを
振り返ろうとしている様子が伺えた。次年度以降の運営に対する積極的な提案が多い点も印象的であ
った。
(2)
Journal
毎日の活動記録やその日の感想等を記録する目的で、参加生徒全員に Journal の記載を行わせた。
これは、日々の活動を通じての生徒の変化の様子を知る重要な資料となるものである。個人単位での
記載であるため、一人ひとりの生徒の意見を知ることができるというメリットがある。以下に本校生
徒が記載した Journal の一部を掲載する。
<ワークショップ 2 日目の Journal>
各生徒の Journal を見ると、初日から最終日にかけて、振り返りの内容がより具体的かつ内省的、あ
るいは積極的になっている様子が伺える。また、学年の異なる異文化の生徒に対する他者理解の側面
が強く現れるようになっており、国際交流の醍醐味を感じることができているのではないかと思う。
一方で、国別、男女別で比較した際の Journal の充実度には大きな差が見られるため、形式の変更や、
一定の基準を設けることも検討すべきであろう。加えて、これらの Journal の分析方法についても考
察する必要がある。
1-3-2 生徒事後アンケートの結果分析と考察
ASTY Camp 終了後、9 月末に本校参加生徒に対してアンケートを実施(回収率 96%)した。その
アンケートの結果を分析し、本事業の目的の達成度を評価したい。
■
生徒事後アンケート回答結果と考察
質問 1 ASTY Camp 参加理由(複数回答可)
(1)国際交流に興味があったから
(2)サイエンスに興味があったから。
1
28
6
9
3
14
(3)友達に誘われたから。
4
(4)友達が参加すると言ったから。
(5)親にすすめられたから。
(6)なんとなく。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
(7)その他
32 名の回答者のうち、23 名が国際交流に興味を持っていたため参加することにしたと回答してい
る。一方で、サイエンスに興味がある、という理由での参加は 5 名にとどまった。 3 年生、4 年生全
員に広く募集を行ったことで、どちらかと言うと国際交流により興味関心の強い生徒が応募してきた
のではないか、と思われる。 ただしこれは、SSH 行事に関わる生徒の裾野を広げるという意味にお
いて、この ASTY Camp を通してサイエンスにどの程度より興味を持つことになったかを調べてみる
とその変化が見られるかもしれない。
また、上記結果は募集段階において、ワークショップの内容を提示することができないままに募集
したことに起因しているところもあるかもしれない。
回答した生徒の約半数が、(5) 親のすすめによって参加した、というのも興味深い。(3) 友達に誘わ
れた、(4) 友達が参加すると言ったから、を含めると多くの生徒が、自分の意志でなく(自分の意志
が全くないということはないだろうが)、あるいは他人の後押しがあって参加した(できた)のだとい
うことがわかる。
質問 2 明確な参加目的の有無
明確な参加目的あり
25
明確な参加目的なし
7
質問 3 どのような目的であったか(自由記述)
(一部抜粋)
・台湾と韓国の生徒と積極的にコミュニケーションする。
・外国との交流は初めてだったので、しっかり話して友達になれたらなと思っていた。
・少しでも英語で話せるようになること。
・国際交流を通し、外国人との交友関係を作るため。
・外国人と英語で交流する(文化を教えあったり意見を言いあう)
・英語を話してコミュニケーションをとる。
・世界の同い年の子と交流を持つ。
・他の国の人と英語で積極的に話しかけられるようになりたい。自分の意見を英語で伝えられるようにな
りたい。
・外国の人と話す。
・自分から英語で発言する事が恥ずかしいと感じていたので、そういうものをなくしたかった。
・サイエンスを通して他国の生徒と交流したいと思ったから。また英語でたくさん話してみたいと思っ
たから。
上記のように、外国人とコミュニケーションを図ることや個人の英語スキルの上達を参加目的とし
ている生徒が大半であった。中には、交流を通して自分の精神面の強化を目的としている生徒も見受
けられた。 サイエンスを通して交流をしたい、という意見は少数であった。
質問 4 目的はどの程度達成されたか
(1)十分達成できた
1
6
16
2
0
(2)まあまあ達成できた
4
(3)あまり達成できなかった
(4)全然達成できなかった
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
無回答
100%
明確な目的を持って参加した 20 名の内、18 名がある程度自分の目的が達成されたと回答している。
プログラム自体が、生徒のニーズに応えることができていたということではないだろうか。 なお、無
回答の 4 名は、先の質問で「明確な参加目的なし」と答えた 4 名である。
質問 5 やってよかった活動はどれか(複数可)
(1)Welcome Party
(2)Field Work(飛火野)
(3)Nara Mini City Tour(東大寺)
1
22
3
18
18
18
21
10
(4)Cultures and Schools
Presentations
(5)Worksshops(夜の数学WS含)
30
(6)Poster Presentations
(7)Evaluation Session
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
(8)Farewell Party
質問 6 必要ない活動はどれか(複数可)
(1)Welcome Party
(2)Field Work(飛火野)
(3)Nara Mini City Tour(東大寺)
1 0
13
1
2
4
01 0
(4)Cultures and Schools
Presentations
(5)Worksshops(夜の数学WS含)
15
(6)Poster Presentations
(7)Evaluation Session
(8)Farewell Party
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
無回答
本プログラムのメインであるワークショップやポスターセッションの評価が文化交流活動等と同様
に比較的高い。 特にフェアウェルパーティーの評価は飛び抜けて高い。 一方で、飛火野フィールド
ワークの評価が低い。炎天下の中でのフィールドワークであったこともその原因であるかもしれない。
また、本校生徒にとっては既に総合学習等で飛火野へ出かける機会が多く、目新しい気持ちで挑めな
かったのではないかと推察する。その他の活動についての評価は概ね良いといえる。
質問 7
ASTY Camp を通して得たものは何か(複数可)
(1)科学の知識
(2)科学への興味・関心
(3)問題を科学的に解決する方策
(4)問いをたて る力
1
11
10
5
6
21
27
22
23
23
(5)英語の知識
(6)英語への興味・関心
(7)英会話能力
(8)異文化への興味・関心
(9)人との接し方
0%
1 0%
20 %
3 0%
40 %
5 0%
60 %
7 0%
80 %
9 0%
10 0%
(10 )その他
回答は主に二つにカテゴリー化される。 回答番号(1)~(4)はサイエンスに関する内容の答えとなっ
ており、(5)~(9)は主に言語的側面、異文化コミュニケーションに関する内容となっている。 このカテ
ゴリー別に結果を見てみると、少なからずサイエンスに関する知識や興味、関心を持つようになったの
は間違いないが、大半の参加者がプログラムを通して言語やコミュニケーションに対する興味、関心を
得たと回答している。 本校参加者自身の参加目的の大半が国際交流の実現であり、もっともな結果と
なった。
質問 8
ASTY Camp 参加後に、自分自身何か変わったところはあるか
ある
31
ない
1
質問 9
ASTY Camp 参加後に何が変わったか(質問 8 で変わったところが「ある」と答えた者)
(主
なものを抜粋)
・ 英語に対する抵抗を感じなくなりました。
・ やっぱり話せなくて悔しかったりしたので、もっと英語ができたいなと思いました。
・ うまく話せなくても相手に伝えようと挑戦する姿勢が身に付いた。
・ 積極的に動いたりしゃべったりするようになった。
・ 英語を話すことは抵抗が無くなりました。
・ 話した事が無い人とも、楽しく話せるようになった。
・ やはり外国人に対する考えが変わった。もっと違う考え方を持っていて、接しづらいイメー
ジだったが同じ人間なんだという事が改めて分かった。
・ 何が変わったかしっかりとは分からないけど、何となく考え(視野)が広くなったような気
がする。
・ 自分の意見をはっきり言えるようになったと思う。また疑問点もわかったふりをするのでは
なく、聞く事ができるようになった。
・ 色々な所で問いを考えるようになった。それを解決する方法を考えるようになった。
・ あまり話した事のない人にでも、気兼ねなく話しかけられるようになった。
・ 今まで英語での会話なんて怖くてできなかったけれど、ジェスチャーなどを加えて頑張れば
つたなくても伝わる事が実感できた。サイエンスの視野も広がった。
・ 数学は世界の共通語であると思っていたが、数学のワークショップを通してグループで議論
しながら問題解決している時に、そうではなく解決に至る過程や思考の仕方が文化によって
異なるとわかった。
質問 10 なぜ何も変わらなかったのか(質問 8 で変わったところが「ない」と答えた人)
・ やはり期間が短すぎて変わるには影響が足りなかったから。
上記質問 8~10 の結果から言えることは、ほぼ全ての生徒が 1 週間のプログラムを終え、自分自身
の中で何か意識や考えが、物事に対する姿勢に変化があると客観的に考えていることである。 その中
でもやはり異なる文化的背景を持つ同年代の人たちとのコミュニケーションに対する態度の変化が一
番多いと言える。 中には、「日常生活の中で問いを考え、解決策を探る」、といった回答や、「サイエ
ンスの視野が広がった」などの回答も見られる。 また、普遍的な答えであったとしても、文化によっ
て科学的問題の解決方法や思考が異なることを学んだ生徒もいた。
質問 11 今後の ASTY Camp のために改善すべき点はどこか(一部抜粋)
・ WS の時間が少なかったので日数を増やしてほしい。それぞれの国からの参加人数を同じぐ
らいにした方が良い。もっと文化交流の時間を増やしてほしい。
・ 日本、台湾、韓国の男女同じ数にすれば良い。
・ 人数比を均等に。もう少し日数(時間)が欲しかった。
・ WS をもっと多くする。
・ WS をする期間が短い。
・ スポーツをしたい。もっと国際交流という面でのプログラムを増やしてほしい。
・ 事前学習(WS も英語も)をしておくべき。
・ 一週間は短かった(10 日ぐらいでも)今回は男女比や人数比がアンバランスだったので、同じ
ぐらいにするといい。
・ WS の時間が少し短かった。日本人が多すぎた。
・ 一週間はやはり短いと思う。生物などは特にすぐに成果が出るものじゃないし、せっかく喋
れるようになってきたところでのお別れはさみしい。
質問 12 他国の参加者と今も連絡をとりあっているか
(1)頻繁に連絡を取っている
(2)時々連絡を取っている
1
6
10
3
3
2
11
(3)最初のうちは取っていたが、今はほとんどし
ていない
(4)連絡したが返事がない
(5)連絡が来たが返事していない
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
(6)全く何もしてない
100%
残念ながら、ASTY Camp 終了後も頻繁に連絡を取り合っている参加者は少ない。大半の生徒が連
絡先のやり取りをしている場面を見受けることができたものの、今後につながる人間関係にまでは発
展していない様子が伺える。
質問 13 今後このような SSH 国際交流があれば参加したいか
(1)選抜があっても積極的に参加したい
1
18
10
4
0
(2)選抜が無ければ参加したい
(3)わからない
(4)たぶん参加しない
(5)絶対参加しない
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
選抜のある、なしに関わらず「参加したい」と答えた者が大半であるということは、ASTY Camp
が本校生徒にとって満足できる活動の場であったと言える。
■
成果と今後の課題
以上の生徒アンケート結果を見てわかるように、本校参加生徒の大半が「国際交流」の機会を求め
て参加し、概ねその要望に答えることができたのではないかと考える。一方で、サイエンスに接する
機会を充分設けたつもりではあるが、質問 7 の回答にあるように、その成果をあまり感じ取ることは
できなかった。 もちろん中には、問題解決能力や問いを立てる力、サイエンスへの興味・関心がつい
たと述べている参加者もおり、今後への課題としてそれらがより一層増えるよう努力しなければなら
ない。
このような結果をうけて、ASTY Camp の目的と照らし合わせての成果と今後への課題をまとめる
と以下のように集約される。
(1) ASTY Camp の各目的における達成度
①
科学的な諸問題解決のための、問いを立てる力、課題解決能力の育成
質問 7 の(3)(4)の回答にあるように、
「問題を科学的に解決する方策」や「問いをたてる力」につい
ては、少数の生徒がそのような力がついた、と答えている。全般的に広く多くの生徒にそのような力
をつけさせることができたわけではない、ということがわかる。
② 他者とのコミュニケーションを通じて、文化的社会的背景を踏まえた視点で議論できる力の育成
③
コミュニケーション能力の育成
上記のような能力や力がついたかどうかはわからないが、そのような力が必要であること、またそ
れに向けて今後も努力をしようとする姿勢は多くの意見から見受けられる。少なくともそういった力
の素地をつけてやることはできたのではないかと考える。
④
数学が世界の共通語であり、自然科学が世界の共通認識であることを実感させる
質問 9 の回答にあるように、数学が世界の共通語ではあるが、文化が違えば結論は同じでもその思
考過程が異なることに発見を見出した生徒もいる。しかしながら、全般的にそのようなことに気づか
せることができたかどうかはわからない。
⑤
文化遺産見学を通じてアジア各国との交流について知り、古代の人々の創造性について考えさせ
る
これについては、本アンケートからは読み取ることはできなかった。
(2) 今後の課題
①
開催期間について
1 週間というのは短すぎるという意見が多く、またワークショップにもっと時間を割くべきである
との意見も多かった。期間の延長については、その他の学校行事や担当教員の負担、参加生徒の負担
等を考えると難しい問題である。本アンケートにおいて、参加生徒の意識がサイエンスにあまり向い
ていないのも、ワークショップの時間増により、少しは改善されるかもしれない。今後は更なるワー
クショップの質的量的充実が図られることが望まれるであろう。
②
参加者について
参加者については、主に参加生徒のアンバランスさと参加対象学年、参加者選考について、の3つ
の課題が挙げられる。プログラム中は本校参加者が全体の半数を占めていたことから、本校生徒のみ
で固まって行動する場面が多く見られた。参加対象学年としては今回 3、4 年生を参加対象とした(大
半が 3 年生)。このことにより、英語力が充分ついていない状態での参加者が大半となってしまい、
それが少なからずワークショップの運営や普段の共同生活場面で大きな影響を及ぼすことになったの
ではないかと考える。しかし、中学 3 年生にこのような経験を積ませることも本プログラムの特徴で
ある。また、参加希望者の選考試験や事前面接を行なわなかったことも様々な面で影響を及ぼしたと
思われる。英語の力について、普段の会話ならなんとかなるものの、ワークショップやプレゼンテー
ション中は非常に苦い経験、辛い思いをした生徒も少なくないと想像される。SSH 事業に関わる生徒
の「裾野を広げる」という意味ではよかった点ではあるが、議論や(言葉の問題という意味で)ワー
クショップの講師の話が理解できない生徒の参加については、今後慎重に議論されなければならない。
③
プログラム内容について
プログラム内容はできるだけ文化交流的側面と、サイエンスを通じた交流が均等となるよう考案し
た。国際交流、文化交流を主たる目的として参加している生徒も多いこともあり、文化交流的側面に
時間を割いて欲しいという要望は納得できる。しかしながら、あくまでもサイエンスを通した国際交
流であり、
「文化としてのサイエンス」といった観点から今後のプログラム、ワークショップを考えて
いく必要があるかもしれない。
また、理科系ワークショップにおいては「物化生地」を分けて考えワークショップの企画をしたと
ころがある。今後は、その枠にとらわれないワークショップのあり方も検討が必要である。また、ワ
ークショップ担当を学外に求めることも検討課題として挙げられよう。
④
事前準備について
科学英語講座を英語科教員との連携のもと開催し、各ワークショップにおいて事前準備を進めてき
た。また、外部講師を招いてプレゼンテーションの仕方に関する英語講座も開催した。 しかし本校生
徒にとっては、このような語学に関する準備では不十分であったと感じられたようである。このこと
は、参加者の選抜にも関わってくることである。英語力においてある程度の基準を設け、選抜を実施
すれば、上記の問題はクリアされるであろう。
サイエンスへの興味がきっかけで参加した生徒が少ないにも関わらず、生徒からのコメントに「ワ
ークショップの期間を延ばしてほしい」という意見が多数出たことは、少なからずサイエンスワーク
ショップに興味・関心を持ち、真剣に活動に取り組んでいたことの表れではないか。
■
資料(本校生徒向けアンケート)
ASTY Camp 参加者アンケート
SSH 専門部会
学年:
3年
・
4年
性別:
男
・
女
このアンケートは、あなたが ASTY Camp に参加する前後で、考え方や行動がどのように変わったの
かを調べるものです。その結果は、今後サイエンスに関する国際交流のよりよいプログラムを作る上
で参考にさせていただきますので、あなたが感じたり考えたりしたことを素直に書いてください。選
択肢がある場合は、選択肢に○をしてください。
1.あなたは、なぜ ASTY Camp に参加しようと思ったのですか。(複数回答可)
(1) 国際交流に興味があったから。
(2) サイエンスに興味があったから。
(3) 友達に誘われたから。
(4) 友達が参加すると言ったから。
(5) 親にすすめられたから。
(6) なんとなく。
(7) その他
(具体的に
)
2.あなたは明確な目的を持って ASTY Camp に参加しましたか。
はい
いいえ
3.2.で「はい」と答えた人に聞きます。それはどのような目的でしたか。また、その目的は達成
できましたか。
目的
達成度
(1) 十分達成できた
(2) まあまあ達成できた
(3) あまり達成できなかった
(4) 全然達成できなかった
4.2.で「はい」と答えた人に聞きます。自分の目的が達成できた(または達成できなかった)理
由は何だと思いますか。
5.ASTY Camp でやってよかったと思う活動はどれですか。(複数可)
(1) Welcome Party
(2) Field Work (飛火野)
(4) Cultures and Schools Presentations
(6) Poster Presentations
(3) Nara Mini City Tour (東大寺)
(5) Workshops (夜の数学 WS 含)
(7) Evaluation Session
(8) Farewell Party
6.ASTY Camp には必要ないと思う活動はどれですか。(複数可)
(1) Welcome Party
(2) Field Work (飛火野)
(4) Cultures and Schools Presentations
(6) Poster Presentations
(3) Nara Mini City Tour (東大寺)
(5) Workshops (夜の数学 WS 含)
(7) Evaluation Session
(8) Farewell Party
7.ASTY Camp を通してあなたが(多少なりとも)得たものは何ですか。(複数可)
(1) 科学の知識
(2) 科学への興味・関心
(3)問題を科学的に解決する方策
(4) 問いをたてる力
(5) 英語の知識
(6) 英語への興味・関心
(7) 英会話能力
(8) 異文化への興味・関心
(9) 人との接し方
(10) その他(具体的に
)
8.ASTY Camp 参加前と参加後の自分を比較してみて、何か自分の中で(考えや行動などが)変わ
ったことはありますか。
ある
・
ない
9.8.で「ある」と答えた人に聞きます。何が変わりましたか。複数あればすべて書いてください。
10.8.で「ない」と答えた人に聞きます。なぜ何も変わらなかったのか。理由は何だと思いますか。
11.ASTY Camp に改善すべき点があるとすればそれは何ですか。複数あればすべて書いてください。
12.ASTY Camp で知り合った韓国、台湾の特定の生徒たちと連絡(face book 等も含む)を取り合
っていますか。
(1) 頻繁に連絡を取っている
(2) 時々連絡を取っている
(3) 最初のうちは取っていたが、今はほとんどしていない (4) 連絡したが返事がない
(5) 連絡が来たが返事していない
(6) 全く何もしていない
13.今後このような SSH 国際交流の機会があったとしたら、参加したいですか。
(1) 選抜があっても積極的に参加したい
(3) わからない
(5) 絶対参加しない
ご協力ありがとうございました。
(2) 選抜がなければ参加したい
(4) たぶん参加しない
1-3-3 教員アンケートの結果分析と考察
本校理科・数学科教員に対して、事後アンケートを実施し、よかった点と今後への改善点、課題を
挙げてもらった。また、英語科教員にも自由記述形式の意見・感想を書いてもらった。それらの集約
結果を紹介する。
■
理科・数学科教員アンケート回答結果(一部抜粋)
(1)
よかった点
ASTY Camp を実施してよかった点として理科、数学科の意見を分類すると、大きく 3 つ(①生徒に
関わる点、②学内教員連携に関わる点、③海外との連携に関わる点)に分類できる。以下に意見ととも
にそれぞれ紹介する。
①
生徒に関わる点
・特に、ワークショップでは、猛暑の中、本当に生徒たちが必死で取り組み、よりよいものを創り上げ
ることができた。しかも、サイエンス研究会に所属しない生徒たちも深く関わっていた点は評価され
る。生物班では、サイエンス研究会に所属しない生徒たちでその成果を生徒論文としてまとめること
ができ、一部ではあるが科学の裾野を広げることができた。
・普段の SSH 事業への参加が乏しい3年生が多く参加する機会となったこと。これまで、3年生は SSH
全般に関わる人数が残念ながら少なかった。今回は、たとえ国際交流の色が強かったとしても、SSH
に参加してみたこととして評価に値する。ただし、今後の SSH 事業への関わりをどう意識付けるかは、
学年、理数の教科担当者等の努力が必要である。
・参加生徒が、韓国や台湾の生徒とともに貴重な時間を共有し、国際交流に対する意識付けができたこと。
・生徒に国際交流に参加するきっかけを与えることができたこと。生徒との日常会話の中で、彼らにと
って ASTY Camp の思い出はとても大きな財産となっていることがわかります。
・3年生、キャンプに参加した生徒の授業内での取り組み態度は、何か変わったと思う。これが、キャ
ンプによるものか、時期的なものなのかはわからないが。
②
学内教員連携に関わる点
・英語科の先生方に SSH 事業への関わりをもつ機会ができたこと。Ⅰ期 SSH は理数が中心となって進
めてきた。今回英語科の先生が関わることで、外から眺めていた本校 SSH とは異なる印象を得たこと
と思う。この部分が学校全体に波及することこそ、Ⅱ期 SSH の方針の一つである。この点から、意義
があったと考える。
・理数の中でも共通の話題と共通のタスクを持てたこと。これまでも全員で SSH 事業を遂行してきたが、
やはり、それぞれがそれぞれのパートを頑張ってきた感は否めない。今回の ASTY Camp により、全
員が同じ方向を向いて仕事をしている一体感をわたしは感じた。
・理科・数学科の教員全員が関わった事業であること。全員が SSH における国際交流のあり方について
考えることができたのではないかと思います。
③
海外との連携(国際交流)に関わる点
・本校の SSH が運営主体となったことで、そのノウハウを(一部の教員であれ)得たこと。国際交流のノ
ウハウは、理数の教員だけでは決して得られない。英語科とともに運営主体として進めていくなかで、
運営方法や交渉の手法を身に付けたことが意義深い。
・韓国・台湾という交流パートナーを確保することができたこと。国際交流において、パートナー探し
をして、連携関係を確立することが重要かつ困難なことであるのではないか。この意味で、今後関係
を継続できるパートナーを得た利点はある。
・韓国・台湾の先生方とのつながりができたこと。一部の教員だけでなく、理数のすべての教員が韓国・
台湾の先生方とつながりができたことは、今後 SSH 国際交流を進める上で大きな意味があると思います。
(2)
改善点、課題等
改善点、今後の課題としての意見は大きくは、①プログラム内容・期間に関わる点、②生徒に関わ
る点、③運営に関わる点、の 3 つに分類できる。
①
プログラム内容・期間に関わる点
・今回は、ワークショップが 3 日間であったが、もう 1 日ぐらいあるとゆったりできたような気がする。
一方で、今回は 3 日間という短期間であったからこそ緊張感が持続できたともいえる。
・私個人としては、事前準備にほとんど時間をかけられなかった。通常授業中はもとより、夏期休業中
でも、理数の教員は忙しく走り回っている。もっとゆったり準備に時間をかけたかった。
・「国際交流」の色が強く、「サイエンス」の視点が弱かった。すそ野を広くした結果であるためやむを
えないとも思いますが、すそ野を広くしたのであればそれなりに生徒に事前指導(英語およびサイエン
スの知識など)を徹底しないと、海外の生徒との交流は難しいのかもしれないと思います。
②
生徒に関わる点
・今回参加した生物班の生徒は、7 月下旬の事前調査から目的意識を持って積極的に取り組んでいた。
フィールドワークが始まってもその意識は薄れることなく持続され、短期間ではあったが一つの成果
をあげることができた。今回は目的意識の高い生徒に恵まれたが、サイエンス研究会には属さないが、
サイエンスに対する意識の高い生徒をいかに集めるかは今後の重要課題である。
・
「国際交流=言語的コミュニケーション」の枠を抜けきらなかった。基本的に、英語で海外の人と接し
てみたいという生徒が多く、本来 SSH 交際交流として考えてきた(それとも私が個人的に思い込んで
いた?)段階まで達し得なかった。
・本校生徒を選抜すべきであった。相手のレベルと今回の趣旨を鑑みると、やはりセレクションは必要
であったかと反省している。この際、セレクションの規準を「英語ができること」とか「理数ができ
ること」という尺度だけで設定してはだめだと思う。ここは次回の議論となるでしょう。
・英語の力の差が大きく、十分なコミュニケーションが図れなかった生徒もいるのではないか。
・選抜もあったほうがよかったのではないかと思います。すそ野を広くした SSH 国際交流を行うのであ
れば、通訳をつけるなど行い、言語の壁を取り払うような体制もよいかと思います。
・サイエンスについて議論できる場面を作るのであれば、4・5 年あたりがよいと思います。しかし、今
回 3・4 年で行った成果も大きいと思いますし、判断が難しいところです。
③
運営に関わる点、その他
・本校で実施する場合は特に英、数、理だけでなく、また一部の先生だけに過剰な負担をかけずに学校
全体で取り組めるような体制作りが必要。
・準備にたくさん時間と労力がかかったこと(数学の会議を夏休み中に開けなかった)。
・修学旅行より少ない生徒に半数の教員の力を注いだこと。
・キャンプに参加していない生徒への情報公開がない。ポスター掲示だけではわからない。
・本校で開催する場合、SSH の枠を超えて、他教科の先生方の協力も要請したい。特に、養護教諭には
生徒滞在期間中、保健室常駐の要請をしておくべきだと思う。体調不良、突発的な事故はおこる可能
性が十分ありうるという認識が欠けていたと思う。
・WEB の内容が、
『このような事をしました』という紹介だけで、生徒がこのキャンプを通し、どのよ
うな感想をもち、今後どのように日々の勉強、活動に活用していくのかがない。WEB をみる教育関
係者にとっては、キャンプの内容と共に、キャンプをすることによる生徒の内面の変化が、知りたい
情報だろうと思う。
■
英語科教員アンケート回答結果(一部抜粋)
本校英語科教員は主に英語言語的側面におけるワークショップの事前指導とワークショップ当日の
英語補助を担当した。以下、自由記述式アンケートの抜粋を紹介する。
・英語でのレクチャーに果敢に取り組まれた理数の先生方には頭が下がる。負担が大きい場合は、理数
の教員が英語で講義をすることにそれほどこだわる必要はないと思う。ハードルを低くして、皆がで
きるようにした方がずっと意味がある。英語科教員の通訳付き、と割り切ってやってはどうか。
・夏休み中とはいえ、全教員の約半数が 1 週間もかかわったのは、労力を割きすぎ。もう少しスリム化
できる。例えば、ワークショップは、講義担当と、英語科だけでやる、その代わり、宿泊や他のイベ
ントは、それ以外の教員が担当するなど。また運営を海外からの先生にもっと担当していただくなど。
・ワークショップの時間割り振り。せっかく取り組んだのだから、最後の仕上げをもう少し時間をかけ
てきちんとさせたかった。形にする所で、うんと交流が進んだと思うので、ポスター準備に半日では
なく 1 日をかけられるように。
・単純な国際交流ではなく、「SSH の」なので、規制があるのはわかるが、もう少し教員も生徒も「楽
しむ」ことを考えて、ゆるい、活動があってもよい気がする。少し真面目にやりすぎで肩がこりそう。
楽しくないものは長続きしないので。
・3 年生は英語の面からかなりしんどい。キャンプ前のセミナーは、語彙を増やすことを目的にしてお
こなったが、英語そのものの力がまだないので、語彙どころではない生徒もいた。5 年と言いたいと
ころだが、せめて 4 年で。選抜はする必要はないと思うが、動機だけは確認してほしい。
・理科教員と英語科教員が対話を重ね、共同で授業ができたのは、本校教員にとっては貴重な経験でし
た。しかしながら、少なくとも私の担当した班では、日本の教員と他国の教員の交流は全くありませ
んでした。その点では国際交流が行われていたとは言えません。生徒たちには、なんとか協同して作
業をしようとする姿が見られました。そこに 3 カ国の教員が混じってサポートに入れたら、いろんな
アイデアも出てきたでしょうし、意見も交わせたでしょうし、と思うと残念です。
・本校の国際交流事業を「交流ごっこ」にしないために大切にしていることの一つは、事前学習です。
今回は開催までの時間が短かったので、仕方ないところもありますが、本校だけでなく、すべての参
加者が自分でもう少し学習(リサーチを含め)をしていれば、また、グループでのディスカッションを重
ねていれば、本番の学びが深まったのではないでしょうか。
・ASTY キャンプの目的には、
「コミュニケーション」
「コミュニケーション能力」
「異文化理解」といっ
た、耳触りのよい言葉が散りばめてあります。そもそも、これらの言葉が何を意味するのか、話し合
われたことはあるのでしょうか。また何のための「国際交流」なのか、という点についても、話し合
ったうえでスタートしたプログラムなのでしょうか。今後続けていくプログラムであるならば、この
ような根本的な議論を深めるべきであろうと思います。
・サイエンスについての知識は必要ですが、英語科教員として相手を理解しようとする力や、自分から
話しかける大切さも生徒に少しは伝えることが出来たので終わったときは充実感がありました。
・ワークショップでのディスカッションは英語で話を進めるので、どうしても自分が司会役になります
が、理数の先生も遠慮せずにもっと関わっていただいても良かったと思います。
・学校紹介やスピーチの指導をしました。7 月末に発表者が決まったので練習の日程がほとんど取れず
に、結局生徒も時間がなくこちらで仕上げる部分も多くありました。
・理数の先生ばかりが宿泊されていて負担が大きかったと思います。
・3 年生くらいから国際交流の関心が高まってくる生徒もいますが、参加したくてもあまり機会が与え
られていませんでした。今回このような機会が生徒に平等に与えられた意義は大きいと思います。4、
5 年生での国際交流にも繋がると思います。
・成績が下位の生徒もいましたがキャンプに参加し自分の力不足を思い知り今後に活かそうとする生徒
や、一週間他の国の生徒と一緒に過ごしたことで自信を持った生徒も多くいました。ただ一週間とい
う期間がちょうど良かったでしょう。これ以上長くすると生徒がもたないと思います。
・サイエンスの専門家からはワークショップに関して厳しい意見も出ていたかもしれないが、それぞれ
のワークショップを見ている限りではコミュニケーションを通して問題設定、問題解決をはかるよう
に非常にうまくタスクが設定されていたように思う。ただ、タスクは設定されていたが活発な会話が
あったかと言われると物足りなさを感じる。これは本校生徒の能力に起因している所が大きいと思う。
■
教員アンケートまとめ
それぞれのアンケート結果をもとに、本 ASTY Camp を教員側の立場から評価するとすれば、第一
に校内での教員間連携が評価できる点である。アンケートにあるように、これまでの SSH の取り組
みは個々の教員がそれぞれ別個の役割を果たしてきた感があるが、ASTY Camp においては理科・数
学科だけでなく英語科も含めた教員が一体となって取り組めたプログラムであったと言える。同じ時
間、同じ課題、同じ目標をシェアすることで、今後の SSH にも繋がるものが得られたのではないか。
さらに、海外の教員との交流を通して、未来を生きる若者を育てる教員として、国際交流の本質的な
必要性がある程度英語科以外の教員にも理解してもらえたのではないかと考える。国際交流のよさ、
問題点を今後教員間で共有することで、発展した SSH 国際交流が望めるのではないだろうか。
次に、中学年の生徒(3、4 年)達にこのような国際交流の機会を与えることができたことも評価さ
れる。中学年の生徒にとっては、超えねばならない様々な問題(語学力や動機など)があったかもし
れないが、サイエンス研究会にも属さない生徒が SSH プログラムの一つに参加できた意義は大きい。
実際に教員の目から見ても、生徒にとっての財産を提供できたのは嬉しい限りである。
一方、上記のような評価されるべき点は同時に今後の課題としても挙げられているのが特徴である。
例えば、本校からの参加者については、語学力やサイエンスへの興味・関心のあるなしに関わらず参
加可とした。
「裾野を広げる」という点ではよかったかもしれないが、それ故に様々な困難点があった
ことも確かであり、今後十分議論する必要がある。また、理科、数学科、英語科の教員全員が何らか
の形で関われたことは収穫かもしれないが、本プログラムに割いたそれぞれの労力は並大抵のもので
はなく、これについても今後の課題として挙げられる。
最後に、生徒のアンケートを見ても、教員のアンケートを見てもある程度評価できるプログラムで
あったと思われるが、生徒、教員アンケートから見える様々な課題について十分な議論を踏まえた上
で、新たな SSH 国際交流プログラムへと繋げていかねばならないと考える。
1-3-4 運営指導委員評価
キャンプを視察していただいた運営指導委員の先生方からいただいたコメントの一部を紹介する。
(1)
ASTY Camp の目的について
台湾や韓国からは選抜された生徒が参加したが、本校は、参加希望者を選抜せずに全員参加させ
た。もし来年以降も、本校のサイエンス研究会所属の生徒ではなく、参加希望者を選抜せずに参加
させていくのでしたら、ASTY Camp の目的は、本校の平均的な生徒のレベルの向上を目指すこと
にある、と言えます。これも非常に大切なことですので、是非力を入れて実施していただきたいと
思います。
(2)
ワークショップについて
サイエンティフィックな考え方、方法、表現の基礎的体験をさせる目的に沿って考えると、
①
数学や情報の場合は、論理の立て方や演算結果の検証手順を明らかにする。
②
物理・化学・生物の場合は、わかったことを定量的に表現する。
この二点については教員の側から意図的に指導・誘導することと、意識的にそれを可能にする課
題を考案する、という方針を貫いた方がいいと思います。指導も行き過ぎると、
「宿題をやったの
は本人なのか親なのか?」という状況に陥るので、さじ加減は難しいのですが。実験の場合は、何
か道具や装置を手作りして、動作するまで不具合の発見と対処を行い、動作したら思うような特
性・性能になっているかを調べる、という課題が、論理の立て方や結果を定量的に表現する訓練に
は適していると思います。
そう考えると、時計のワークショップ(物理班)を例にとれば、本当にバケツをホースでつないで
水時計を作らせるようなことをすれば面白かったと思います。測る時間のレンジを必要なだけのば
すには、水の量とホースの太さをどのくらいにすればいいのか若干の試行錯誤をさせる、同じ水の
量を注いだときにその水が落ちきるまでの時間をストップウオッチで測る作業を繰り返して度数
分布を作り、水時計の計時精度がどれくらいか数値で出させる、といった課題設定にすれば、かな
りよい訓練になります。これで、統計や誤差の基本的な意味もわかってもらえればもうけものでし
ょう。要は、どんな項目でも、得たことを数値と単位で表現しようとしたらどんな可能性があるか
考える、という経験をさせ、そういう課題を一つは必ず入れておくべし、と考えています。
(3)
プレゼンテーションの仕方について
ポスター発表会では、英会話の能力の差とともに、プレゼンテーションの仕方についても巧拙が
あるように感じました。プレゼンテーションは、一通りの訓練をして技術を身につけることで目に
見えて向上できるのではないかと思います。
研究成果の発表にあたって、内容さえ良ければ話し方は二の次、というような初歩的な考えを脱
するとその反動からか、プレゼンテーションさえよければいいのだという行き過ぎた考え方に傾き
ますが、本来の姿は、内容が第一で話し方も大切、というものだと思います。優れた成果を挙げた
日本の研究者が欧米の学会やシンポジウムに招待されて英語で講演する際に、その英語が拙く、原
稿をたどたどしく読みあげるというようなプレゼンテーションの仕方であっても、聴衆である他の
研究者は息をひそめて聴いていた、というような例はたくさんあります。それとは反対に、ライフ
サイエンス分野の米国のベンチャー企業のプレゼンテーションは、例外なく流暢で自信に満ちたも
のですが、ベンチャー企業は投資家から投資を引き出さなければなりませんので、その故からか、
彼らのデータには誇張と作為が多いと感じます。プレゼンテーションの根本の目的は、自分たちの
得た成果や自分たちの考え方を正しく聴衆に伝えることにあります。
1-3-5 今後の展望
ASTY Camp を振り返り、今後の展望について考える。
(1)
課題の検討
今回の ASTY Camp では、以下のような課題が明らかになった。
①
ワークショップに関する分析
本キャンプでは、主に本校の教員や海外の教員など、中等教育に関わる教員によるワークショップ
が行われた。実際には、2 日間という期間はあまりにも短く、当初予定していた日程を全て消化でき
たグループは少なかった。これは、日程的な問題に加え、英語でのコミュニケーションの難しさや、
取り扱う内容の難易度が関係している。今年度の経験を生かし、2 日間という短い期間の中で、当初
の目的である「問いをたてる力」や「課題解決能力」の素地作りを行うためのワークショップづくりをさ
らに検討していく必要がある。また、生徒同士の議論が必要となるような課題設定を試みることが国
際交流における協働型のサイエンスキャンプの重要な項目であり、このような場面をより積極的に設
けるための工夫が必要であろう。加えて、ワークショップの期間に関する課題も残った。生徒のアン
ケートや担当教員の意見にも挙げられていたように、特にワークショップの期間が短い印象があった。
より科学的な考察を行うために、ある程度の時間の確保が必要であることが今後の課題として残った。
ワークショップ後のポスター作成にも時間を要するため、ポスター作成を含めた日数をもう一日増や
すなどの検討が必要である。
②
参加生徒の学年および選抜試験の有無について
本キャンプでは、海外からの参加生徒は一定の選抜試験を通過している生徒や、先導的なカリキュ
ラムを受講している生徒であった。これに対し、本校からの参加生徒は一般の生徒が多く、科学的思
考力や英語でのコミュニケーションなど、様々な面で差異が感じられた。より高度なプログラムを目
指すために、本校からの参加生徒に対して選抜を行うことや、対象学年を上げることも考えられるが、
中高一貫教育の特色を生かしたプログラムを実施すること、さらにはより多くの生徒への指導を目指
す視点を考慮して、慎重に検討を行う必要がある。
③
評価の方法について
本キャンプでは評価の方法として、Evaluation Session や Journal の導入、生徒および教員への事
後アンケート等を実施した。これらの結果を分析に加え、設定した目的に照らし合わせてワークショ
ップやプログラム全体をどのように評価していくかを考える必要がある。
(2)
今後の展望
今年度の経験を生かし、本校では次年度以降も本活動を継続する予定であり、現段階では、以下の
ような展望を持っている。その他の開催国との連携をさらに強め、より充実した企画・運営を心がけ
たい。
・県内の他校生徒の参加を募る
・アジア圏内での参加国を増やす
・大学や研究所と連携したワークショップを実施する
・台湾や韓国など、海外での開催を視野に入れる
第2章
海外教員研修
第1節
韓国教員研修
■
実施概要
本校では、国際的に活躍する理数に強い生徒を育てるために、知識・文化としての科学を身につけ
させ、自然科学的リテラシーを育成するための SSH カリキュラム編成と指導方法の研究開発を第 1
期 SSH で行い、それを継承・発展させるべく研究を継続している。その一環で、下記に示したこと
を目的として、韓国にて教員研修を行った。本節では、その過程と成果について報告する。
① 海外の学校の理数カリキュラムや先進的な指導方法を実地体験することで、より良
い SSH カリキュラムの開発と指導方法の向上を目指す。
目
的
② 本校の SSH カリキュラムと指導方法について、研究内容を海外に普及させる。
③ 韓国の理数英才教育を主導している研究機関等において、教育制度等に関する理解
を深める。
日
程
2010 年 11 月 14 日(日)~11 月 20 日(土)
場
所
韓国(釜山・大田・ソウル)
参加者
内容構成
教員 5 名(数学科 3 名、理科 1 名、英語科 1 名)
1 日目
関西国際空港から釜山国際空港へ移動
2 日目
釜山国際高校訪問および授業見学
3 日目
(午前) Korea Science Academy(KSA)訪問および授業見学
(午後) 大田に移動し、ナショナルサイエンスミュージアム見学
4 日目
(午前) 忠南科学高等学校訪問および授業見学
(午後) ハンバッ教育博物館視察見学
5 日目
(午前) 公州大学校にて研修
(午後) 大田大徳バレー視察見学
6 日目
(午前) 大田市内中学校・高等学校訪問
(午後) ソウルへ移動し、サムスン電子広報館見学
7 日目
(午前) 自由の橋・都羅展望台見学
(午後) 釜山国際空港から関西国際空港へ移動
■
研修記録
(1)
釜山国際高校訪問
韓国の高校は、一般の普通科高校、農業や商業などの実業高校、英才教育を目的とした特別目的高
校の 3 種類に大別することができる。特別目的高校には芸術系高校、体育系高校、外国語系高校およ
び科学系高校が含まれる。私立高校と公立高校との比率はほぼ同じであるが、公立高校の方が学力水
準は高いようである。特別目的高校以外の入試は、学区(道や市)ごとの適性検査と中学校の内申によ
って進学先の合否を決定するが、特別目的高校では、学校独自の入試を行い選抜する。特別目的高校
は大学への進学にも有利であることから人気が高く、競争率も非常に高くなっている。今回訪問した
釜山国際高校は、外国語系の特別目的高校として、国際関係の専門家を養成するべく人文系に特化し
た高校である。
釜山国際高校は、1997 年創立の比較的新しい男女共学の公立高校である。全寮制で中学校も併設し
ており、各学年 120 名の生徒は、1 学級 20 名で 6 つのクラスを構成している。人文系の学校である
ため、数学や理科の授業は他校と比較するとやや少なめである。また、いくつかの授業は英語で行わ
れて、必修の英語以外にも第 2 外国語として、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語などを学ぶこ
とができる。選択科目となるので選択者数の違いはあるが、日本語を選択する生徒が 1 学年に 50 名
程度で一番多いようである。海外からの留学生の受け入れも頻繁に行われており、中国やヨーロッパ
などから留学している生徒が 10 数名いる。
授業は、まず高校 2 年生の授業を見学した。教室の広さは日本とほとんど変わらないが、教室の前
半分に約 20 名分の机が配置されており、後ろは広く空いていた。各教室には、大型の液晶テレビが
前面に 1 台設置されており、そのテレビ画面をモニターとして利用し教卓上にある PC を操作しなが
ら、授業が展開されていた。区分求積法についての内容であったが、生徒はほとんどうつむくことな
くモニターや黒板に注目し、ノートはほとんどとっていなかった。生徒の非常に高い集中力と、熱心
に授業に取り組む姿を観察することができた。教員は、生徒とのやりとりを大切にし、モニターや黒
板をうまく活用しながらテンポ良く授業を展開していた。ただ、授業の進度は非常に速く、日本では
約 2 時間分の授業内容を 1 時間で行っていたこと、問題解決型の授業ではなく問題演習の時間もごく
限られていたことから、授業内で生徒がどの程度授業内容を理解しているのかが気になった。
次に中学 1 年生の英語の授業を見学した。EOZ(English Only Zone)という特別教室で行われ、ネイ
ティブの先生による授業であった。韓国では小学 3 年生から英語の授業を実施しているようで、英語
そのものの授業ではなく、英語を活用したプレゼンテーション作成手順や伝える内容について講義や
グループディスカッションが行われていた。生徒間の会話も全て英語で行われ、語学力の高さが印象
的であった。
中学 3 年生の生物の授業もネイティブの先生によるもので、PC ルームで行われていた。DNA につ
いて、WEB 上のゲーム(DNA に関する問いが出題され正解すると次の画面に進む)を通しての個人学
習であった。PC を用いた授業にも慣れている様子で、大半はスムーズに学習を進めていたが、一部
同じ問いを繰り返している生徒もいた。今回の授業が一連の DNA 学習の流れでどの段階に位置して
いるのか、その位置づけが気になった。次に見学した他クラスの物理の授業では、慣性という共通点
から、力のはたらきから授業が始まり、その後、プロジェクターを活用して時間と速度との関係、等
速直線運動や等加速度直線運動など物体の運動へと幅広く授業展開された。本校で行っている力学の
授業展開とは異なる手法であった。いくつかの小単元を一気に進んだ印象だが、改めて物体のいろい
ろな運動についてじっくり確認する機会があるのか疑問が残った。
最後に高校生の生物の授業を見学した。タバコや飲酒による健康被害についてのプレゼンテーショ
ンが、班ごとに行われていた。発表スタイルは本校の総合学習に似たものであった。You Tube などの
動画も利用し、過去のニュースの内容を取り入れながら丁寧にまとめられていた。
各授業において、デジタルコンテンツ教材が多用されていた。これらのデジタルコンテンツ教材は、
教員が逐次教材を作成するのではなく、広域自治区内の教育委員会から配布されており、自由に活用
できるそうだ。この教材は、生徒が基本的な学習内容や定理、性質を学ぶことを目的としている。授
業見学後、施設見学も行った。自習室には多くの机が並んでおり、各人に用意された個人スペースに
なっていた。PC ルームや寮の上階にも自習できる場所があり、夜 11 時まで自習可能である。カフェ
テリアや寮、17,000 冊もの専門書を有するライブラリーや自習室など、日本の高等学校とは比べもの
にならない充実ぶりである。
数学の授業
(2)
自習室
Korea Science Academy訪問
Korea Science Academy(以下、KSA)は、韓国きっての理工系大学であるKorea Advanced Institute of
Science and Technology (以下、KAIST)の附属校で、科学の専門家を養成する目的を持った韓国でトッ
プクラスの特別目的高校である。2008年からKAISTの附属校となり、KAISTへの内部進学が認められ
るようになった。毎年約3,000人の受験生があり、そのうち140~150名が選抜される。生徒だけでなく
教員も比較的自由な校風であるが、管理職が教員を厳しく評価することで教員のレベルアップを目指し
ている。すべての授業を英語で行うことを目指しているが、1年生の授業の一部では行われていない。
授業の進度も速く、1年生で高等学校の学習内容の大部分を終える。2年生以降は、選択制で大学の授業
内容となり、KAISTの教員によるものもある。単位制に近く、在籍2年半くらいで卒業する生徒もいる。
また、飛び級も認められており、18歳で大学卒業資格を得た生徒もいる。進学実績も目ざましく、大半
の生徒が難関大学の医学系や理工系に進学するほか、2年生修了と同時にKAISTに入学する生徒も多い。
さらに2年生以降に取得した単位で、科学系の大学における一部の基礎科学科目の履修を免除するとい
う優遇措置も見られる。
授業見学は短時間ではあったが、化学と数学の授業を見学した。化学の授業では、1 年生を対象に
基本的な分析実験が行われていた。授業はすべて英語で行われ、最初に全般的な講義があり、その後
2 つのグループに分かれ実習を行っていた。1 年生で基本的な分析実験を終え、その後の個人研究で、
あらゆる分析機器を自分で操作できるように指導している。また、研究論文にある実験を再現する実
習も行われている。数学の授業もすべて英語で行われ、内容は円錐曲線についてであった。教員が定
義を説明するなど、進め方は日本の一般的な数学の授業と変わらなかったが、生徒の応答もすべて英
語で行われていたのが印象的であった。施設も充実し、生徒も利用可能の高性能の天体望遠鏡なども
あり、授業で月面の観測なども行われている。各教室には充実した実験機材や情報機器が備わってお
り、ライブラリーには多くの英語で書かれた専門書が多数あり、恵まれた教育環境を提供している。
(3)
ナショナルサイエンスミュージアム見学
ナショナルサイエンスミュージアムは、大田市郊外にあり各種科学技術資料を集めて研究・展示し
ている科学文化施設である。常設展示場、特別展示場、プラネタリウムの 3 つの展示場があり、建物
奥には、模型の戦闘機や戦車が展示されていた。常設展示場には、自然史と自然科学・技術をテーマ
にした約 4,000 点の展示物があり、展示内容は様々ではあるが、自然から得たエネルギーをいかに活
用し、自国の科学が発展してきたかその経緯を知ることができた。小学生向けの展示物が多く、日本
の展示方法に似ていた。表裏の無い立体として知られているメビウスの輪やクラインの壷の模型も展
示されており、授業に応用可能なものも多数あった。
(4)
忠南科学高校訪問
忠南科学高校は、韓国の理数英才教育を行う特別目的高校として、理数系に特化した高校であり、
大半の生徒が 2 年間で高校課程の履修を終え、大学に進学している。また、全寮制で、授業は1週間
に数学が 8 時間、物理、化学、生物がそれぞれ 4 時間という理数の多いカリキュラムが特徴である。
訪問した翌日が修学能力試験(日本でいう大学入試センター試験)当日ということもあり、午前中の
みの授業日であったため、1 年生の物理の授業と学校設備等を見学した。
物理の授業では、波の干渉の実験が行われていた。20 名の生徒が 4 名ずつ 5 つの班に分かれ、各班
で水波投影装置を利用して 2 つの円形波を干渉させ、スクリーンに投影するものであった。実験にも
慣れている様子で手際よく実験装置のセッティングを行い、実験結果を記録していた。その後、理科
の準備室や学校施設を見学した。日本の高校にある科学実験機器はもちろんのこと、DNA シーケン
サーや X 線回折装置など、日本では大学の研究室にしかないような高度な分析装置が並んでいた。廊
下には化石や鉱物の標本棚が陳列してあり、屋外には太陽光パネルや天文台が設置してあった。高度
な教育や研究を行うための機器が取り揃えられており、科学・技術の特別目的学校としての設備の充
実ぶりが印象的であった。
「波の干渉」の実験装置
(5)
天文台
ハンバッ教育博物館見学
ハンバッ教育博物館は、日本統治時代の 1938 年に建てられた小学校の校舎を再利用して、1992 年
に創設された。9 つの展示室と 4 つの展示コーナーには約 6,000 点の教育資料を収集され、三国時代
から近代までの間、使用された教科書、教材や当時の教育機関の模型等も展示されていた。また、日
帝 35 年間の教育についての展示もされており、日本語の教科書等や当時の通知票なども展示されて
いた。当時、朝鮮半島でどのような日本語教育が行われていたかを知ることができた。古代から近代
までの教育の移り変わりを知り、韓国における教育に対する熱意を感じることができた。
(6)
公州大学校(Kongju National University)訪問
公州大学校は、忠清南道公州市に本部を置く大韓民国の国立大学であり、1954 年に設置された。公
州キャンパス(師範大学・人文社会科学大学・理工大学)のほか、公州市に玉龍キャンパス(映像保健大
学)、礼山郡に礼山キャンパス(産業科学大学)、天安市に天安キャンパス(工科大学)をもつ。
まず、公州大学校の入学査定官室から、Power Point を使って韓国の大学入試システムの説明があ
った。修学能力試験の結果をもとに、出願大学を決定するという。各大学の WEB サイトにて、自分
が合格ラインにあるかどうかを判定できるシステムが整備されている。
次に、公州大学校の英才教育センターから、英才教育センターのカリキュラムについて説明を受け
た。大学の英才教育センターの定員は、班別で 10~20 名程度で、課程は 2 年(基礎課程 1 年、深化課
程 1 年)である。児童・生徒は、1 年間で 100~150 時間の授業を受ける。定期的(毎月 1 回程度)に受
ける授業と、長期休暇中に受ける 50 時間ほどの集中教育がある。2 年間の課程を修了した者の中で優
秀な生徒を対象として、特別に師事課程を設置・運営することが可能である。
さらに、公州大学校が主催する英才教育院における情報カリキュラムの説明を受けた。中学 1 年生
から中学 3 年生までの 3 年間で学ぶ情報の内容を参照すると、日本の大学の工学部で学ぶような内容
の授業を行っている。情報オリンピック出場のために Robot についても学習している。
英才教育院以外の一般の学校では、日本における教科「情報」の授業は行われていない。大学入試
のための学習が中心に行われているため、そのような授業は工業系の高校でしか行われていない。基
本的なコンピュータに関するスキル(文字入力、ワープロソフトや表計算ソフトの使い方)は、家庭や
学校の授業などで自然に習得していく。一般の学校における情報教育としては、情報モラルや著作権
がある。韓国でも情報モラルの問題は存在し、WEB 上の情報を取捨選択することなどは教えている。
情報教育についての情報交換
集合写真
また、教育現場で情報を教える教員とも情報交換する機会を設けてもらった。韓国で情報を担当す
るものは、以前は技術・家庭科の教員だったが、現在はコンピュータ教育の教員免許と情報に関する
ライセンスの中の 1 つを取得している教員だそうだ。その教員は、情報管理と情報の授業を担当して
いる。韓国では、情報を教える教員を養成し始めてまだ 10 年も経っていないそうだ。しかし、今後
は教育現場にコンピュータ教育の教員免許を取得している教員が増え、全生徒に対して情報を教える
ことが期待できるそうだ。
(7)
大田市内中学校・高等学校訪問
まずは、大徳中学校を訪問した。ここでは、大徳中学校に通う生徒について説明を受け、英才教育
を行うための施設を見学した。大徳中学校は大徳バレーに位置する学校であるため、研究所やメーカ
ーなどに勤めている保護者が多い。その両親の影響か、数学と英語を得意としている生徒が多く、公
州大学校主催の英才教育院へと通う生徒も数名いる。校内にある英才教育用の施設には、目的に応じ
てさまざまな活動ができる教室や実験設備が備わっており、特別活動の時間や放課後、週末や長期休
暇に使用している。
次に大田科学高等学校を訪問した。ここでは、大田科学高等学校で実施している英才教育の内容と
卒業後の進路について説明を受けた。大田科学高等学校では数理・情報の英才教育を実施しており、
数学・理科ともに 20 名ずつ 2 班の計 40 名の生徒が授業を受けている。教員は 39 名のうち 16 名が
博士で、教員自身も熱心に勉強をしている。教員は、英才教育のキャンプ、セミナーやワークショッ
プも実施している。また、海外の英才教育の研修会にも参加している。英才教育プログラムの開発も
行っている。2011 年からは、地域だけでなく学校が独自に英才教育を展開するようになる予定である。
授業は年間 100 時間があり、週末や冬休みにも授業があり、Research and Education、Team Teaching
の授業もある。KAIST で行われる 2 泊 3 日のプログラムに参加したり、夏休みに 1 回、科学者の講
演を聞く機会も設けるなど、幅広く理数を学ぶ体制が整っている。高校課程修了後には、8 割がソウ
ル大学、KAIST に進学する。医科大学より工科大学への進学者が多い。医科大学に進学するのは 3~
4 名だが、その学生も医工学を学ぶのが目的である。大学卒業後には研究者になったり海外で活躍す
る者もおり、韓国の科学・技術を支えている。
大徳中学校訪問
(8)
大田科学高等学校訪問
サムスン電子広報館見学
2008 年、ソウル・江南地区にオープンしたサムスン電子広報館「サムスン・ディライト」を見学し
た。人気の携帯電話やホームシアターなど多くの新製品が展示されており、これらの製品をネットワ
ークでつなぐことで、人々の生活がどう変化するかを体感することができた。また、世界で愛された
サムスンのヒット製品のほか、歴史や企業哲学を映像で紹介する空間もあった。この見学を通じて、
韓国の IT レベルの高さを再確認することができた。
■研修を終えて
「韓国は資源がないので人材を育成するしかない」という考えから、韓国では国家的プロジェクト
のひとつとして理数の英才教育が徹底的に行われることを知り、日本との文化・教育制度の違いを知
った。教員は夜遅くまで自身の研究を進め、それを授業に生かしており、生徒の方も夜遅くまで行う
自習に疲れている様子もなく、目を輝かせながら熱心に授業を受けている。今回の研修で得たものを
本校理数全教員に情報提供し、今後のカリキュラム開発や指導方法向上に生かしていきたい。
第2節
韓国教員による本校での研修
■ 実施概要
本校では、これまでの国際連携において、生徒の理数の才能を伸ばす指導方法の研究を目指した教
員研修を実施してきた。中でも、韓国とは生徒交流や教員研修等の各種交流プログラムが盛んに行わ
れており、互いの国の教育理念に踏み込んだ研究開発ができる関係性が構築されつつある。このよう
な関係性を生かし、韓国の中学教員を招き、ワークショップの課題の立案や、授業およびカリキュラ
ム研究を目的とした教員研修を計画した。
目
的
①
本校および韓国の理数カリキュラムとその指導方法についての意見交換を行う。
②
共同でワークショップの企画・運営を行う
日
程
2011 年 2 月 18 日(金)~2 月 24 日(木)
場
所
本校
研修教員
Kwon Jinyoung (Daejeon jijok middle school 理科教員(専門:物理))
1 日目、2 日目
内容構成
3 日目
授業観察、公開研究会参加
大阪市立科学館見学
4 日目、5 日目
授業観察、4 年ホームルームでの発表、ワークショップの共同開発
■ 研修記録
(1)
本校公開研究会参加
本校公開研究会に 2 日間参加し、授業観察や分科会等に参加した。1 日目の授業観察では、生物
の公開授業および研究協議に参加し、本校の SSH カリキュラムについての意見交換を行った。2 日
目は、本校 SSH における国際交流の分科会や全体会に参加した。当該教員自身も参加した ASTY
Camp の報告や、リベラルアーツに関する講演を通して、本校の教育理念に強い興味を示していた。
(2)
1 年生の授業の開発
本校の 1 年生理科Ⅰの授業における教材開発を行った。両国での授業実践の例をもとに、今回取
り扱った「音の性質」の導入部分に関する教育実践について協議を行った。韓国の授業で使用されて
いる教材のアイデアを教えていただき、実際の授業で実践を行った。この教材に対する生徒の反応
は非常によく、思考過程を要するものであったにも関わらず、楽しんで考察している様子が伺えた。
(3)
5 年物理の授業の観察
5 年生の選択科目である物理の授業観察を行った。本校の理科カリキュラムの特徴の 1 つに、5
年生の理科における 2 時間連続の授業がある。この意図は、実験を行い、その考察をじっくりと行
うことであり、韓国の教員からもその授業形態が高く評価された。また、この日の授業で取り扱っ
た比熱の測定の実験は、韓国の物理の授業でもよく利用されるものであり、その有用性を改めて実
感できた。
(4)
4 年ホームルームでのプレゼンテーション
修学旅行で韓国に行く学年に対して、ホームルームの時間を利用して韓国の紹介を行う
プレゼンテーションを実施した。韓国の衣・食・住の文化や兵役の体験談についての話など、普段
の生活の中では想像できない情報を得ることができ、生徒からの評判も高かった。
(5)
ワークショップの開発
2 月 24 日(木)に実施された韓国の中学生と本校生の交流会で実施するワークショップの開発を行
った。今回のワークショップでは、アナモルフォーズという歪み絵の描画法の分析をテーマとして
取り扱った。対象生徒が中学 1、2 年生であることや、英語でのコミュニケーションが必要となる
観点から、アイスブレーキングの時間を設けるなどの工夫を行い、生徒同士が会話しやすい環境設
定を行った。また、ワークショップの課題については、以下の点に留意して内容の構成を行った。
・生徒同士の協働作業や議論を重視する
・科学を世界共通の言語として認識させる
・階層的な科学的思考を要する課題設定を行う
・仮説の立案後、実験による検証を行い、発見した
法則を別の課題に応用するという、科学的分析活
動の流れを意識した内容構成を行う
これらの項目を重視し、日韓の教員が協議を行い、
当日使用するワークシートを作成した。当日は韓国
の教員と連携して、ティ-ムティーチングの形態で
指導にあたり、教員からの指示は両国とも母国語で
行った。生徒同士のコミュニケーションは必然的に英語であることが求められたが、英語以外にも、
サイエンスを 1 つの共通語として会話をしている様子が伺え、活発な議論活動が見られた。生徒の
事後アンケートからも、「サイエンスは世界共通の言語だと思った。」、
「海外の生徒と議論すること
で、新しい考え方を知ることができた。」という返答が多く見られ、教員側の意図した目的をほぼ達
成することができたといえる。以下に当日の配布資料の一部を示す。
<当日生徒が使用した配布資料(日本語版)>
■ 研修を終えて
1 週間という期間を利用して、深みのある研修を実施することができた。中でも、ワークショップ
の開発は、互いの教育理念を知り、情報交換を行う観点から見ても、非常に重要な機会となった。ワ
ークショップの展開方法を考えるために多くの時間を要したが、連携を通して得たスキルも非常に大
きいものであった。また当日の指導には、日韓の多くの教員が共に指導にあたる環境があり、そのよ
うな教員間の連携を生徒に見せることが、生徒自身の活動にも大きな影響を与えているように感じた。
この 1 週間で実感したことの 1 つに、韓国の教員の教材開発の能力の高さが挙げられる。教育原理
に関する知識も豊富で、自身の教育活動に対する評価の観点が明確である点も印象的であった。今後
も連携を続け、本校の研究開発に生かしていきたい。
第3節
その他の海外研修
2-3-1 韓国
■
実施概要
ASTY Camp を充実したものにすることを目的に、韓国の中学校、高等学校および大学の教育環境
を視察し、先生方と議論を行った。
名
称
ASTY Camp 打ち合わせおよび研修(韓国)
日
程
2010 年 7 月 11 日(日)~7 月 13 日(火)(3 日間)
場
所
韓国(忠南科学高校、公州大学校、扶余中学校)
参加者
米田
内
ASTY Camp 実施に向けての打ち合せ、授業観察、質疑応答
容
■
研修記録
(1)
忠南科学高校訪問
隆恒、越野
省三、田中
友佳子(本校教員)
韓国の中ほどに位置する公州市大田は、省庁や研究所が集中す
る美しい都市である。韓国全体で国立の科学高校が 20 校あり、
そのうちの 1 校が忠南科学高校である。1 学年の生徒数 62 名、1
クラス 20 名で、科学教育に特化した授業が行われている。教員
は 26 名で内 11 名が博士号を持っている。大多数の生徒は、高校
2 年生から大学に飛び級する。高校における大学入学のための勉
強は、日本のように大学入学試験のための勉強ではなく、大学へ
入学してから学問を深めるための勉強だそうである。まさに、大学に接続するための勉強である。
授業では実験もよく行われ、実験は 2 時間連続授業である。実験設備が充実しており、さまざまな
手作り実験も開発されている。物理では、風洞実験用の装置を見せていただいた。化学では、フィル
ムケースくらいの大きさの手作りアルコールランプを用いたマイクロスケール実験装置を見せていた
だいた。電子顕微鏡も、生徒がいつでも操作してよい状態になっていた。
2 年生の代数の授業を参観した。1 人は黒板で解答を書き、他
の生徒は各自の問題演習に熱中していた。
「不等式はたのしい」
「問
題を解くことがたのしい」と話してくれた。
校舎内は非常に清潔で、広い廊下は有効に活用されていた。た
とえば、階段の壁面には、宇宙や天文、地質に関する図版やポス
ターが掲げられており、廊下の壁際には、大きな岩石の標本がた
くさん、几帳面に分類されて展示されていた。韓国も資源が貴重
であり、国土に対する具体的な興味を高めるのに工夫しているようである。
校舎の屋上には、天文台が 2 カ所あった。大きい方の建物は屋根が大きく開き、反射型望遠鏡がパ
ソコンによる自動追尾方式で稼働するようになっており、20 人の生徒が実習できるようになっている。
また、隣の小さなドームには、生徒用よりも高性能の Celestron の反射型望遠鏡が設置されている。
こちらは教員の研究用の望遠鏡だそうである。大学の先生の指導の下に、教員の研究用に活用されて
いるということである。
(2)
公州大学校訪問
有名大学からの就職は楽にできる。また、理系より文系の方が大学に入学しやすい。理系に対する
社会の評価が高く、大学入学後、文系から理系に移ることが可能なため、文系学部に入学後、理系に
移る学生が多くなっている。そのため、高校で理数の勉強をあまりしないで入学後に理系に進むこと
で問題が起こっているということである。
韓国の中学・高校の教員免許は中学・高校の区別がない。教員
採用試験の問題は、大学卒業段階の専門の知識が要求されるため
非常に難しい。
大学では、理科の先生を育てるために、夏は 1 月間教員研修を
行っている。また、半年の単位で中学校の若い先生 10 名くらい
が研修しており、それを終えると教員免許が 1 級から 2 級になる。
これらの先生方と懇談したが、どの先生も理科教育に対する情熱
をもって、研修を積んでおられた。
(3)
公州大学校英才教育院
英才教育院は、理数の優秀な生徒を育てるために、全国の 25
の大学に併設されている。月に 1 回土曜日に開講し、夏休み等は
集中して行われる。選抜された中学生(1 年、2 年が 90 名、3 年は
45 名)が特別プログラムに沿って学んでいる。答はあるが、そこ
に至るまでの道がいろいろあるような課題を与えて、研究のプロ
セスを体で学べるようにしているそうである。
(4) 扶余中学校訪問
大田市から車で 40 分、川沿いの一般道路を 70km/h(制限速度
内)で走って扶余(ぷよ)中学についた。公立の標準的な中学校であ
る。授業は静かに落ち着いており、生徒は勉強をたのしんでいる
ようであった。訪問した日は夏休み 1 週間前で、通常の授業は終
了しており、翌日が全国一斉の模擬テストで、そのための対策授
業に集中しているため、教室に入って授業観察をすることはでき
なかった。この学校は、電器メーカーの援助によって全教室に「電
子黒板」を設置し、通常の授業で活用するモデル校になっているそうである。タッチパネルにもなる
大きなディスプレイが中央にあり、両側がホワイトボードになっている。全教員がコンピュータを使
いこなすことができるそうである。
■
研修の成果
韓国では、港湾や空港、都市計画が、将来を見通して非常に計画的に進められていることを実感す
ることができた。資源の少ない国であり、国家の方針として理数系の教育に特に力を入れている。保
護者、生徒、教育関係者それぞれが理科教育に情熱を持っている。教員の養成として、採用試験のレ
ベルの高さ、若い教員の研修計画の充実が特徴的である。また、科学高校の教育内容の充実や、2 年
生から大学への飛び級など、さまざまな仕組みによって、科学立国を目指していることが伺えた。
2-3-2 台湾
台湾での授業観察や質問した内容から、研修した内容をまとめた。
■
実施概要
■
名
称
ASTY Camp 打ち合わせおよび研修(台湾)
日
程
2010 年 6 月 3 日(木)~6 月 5 日(土)(3 日間)
場
所
台湾・高雄:高雄女子高級中学校、国立中山大学附属国光中学
参加者
横
内
ASTY Camp 実施に向けての打ち合せ、授業観察、質疑応答
容
弥直浩、藤野
智美(本校教員)
内容
ASTY Camp 事前打ち合わせとともに、次の内容の研修をすることができた。
① 台湾の高雄女子高級中学校および国立中山大学附属国光中学を訪問し、その教育環境を視察す
る。
② 台湾の高雄女子高級中学校および国立中山大学附属国光中学の理科や数学の授業を参観し、そ
の授業内容およびカリキュラム等について研究協議をする。
③ ASTY Camp の内容について協議し、双方の意見を取り入れて、プログラムをよりよいものに
する。
■ 学校訪問してわかった内容
(1)
台湾の高瞻計画について
台湾の国家プロジェクトとして、理数に関するエリート教育を実施している。日本の SSH を参考
にして作られたようである。日本のように各高等学校が指定されているわけではなく、各生徒が指定
されている形である。今回の ASTY Camp 参加者は、高瞻計画のプログラムに参加している生徒であ
る。
(2)
学校の様子について
①
高雄女子高級中学校
■
設備・環境
・高級中学校とは、日本でいう高等学校であり、高雄市内のトップ校である。
・クラスによっては、時間割の中に日本語の授業が含まれている。
・理科の実験室だけの専門の棟があり、各実験室の数も多い。
・女性の理科教員数も多い。
・全教室に PC および据え付けのプロジェクターが設置され、それらを使った授業も多い。
(台湾国内のほとんどの公立高校がこのシステムを完備している)
・教室の大きさは日本のものと変わらないが、先生はマイクを使って授業をする。
■
授業観察(高校 2 年:物理)
・最初教員が、生徒を集めて授業内容や実験の方法等を説明する。(授業①)
・その後、各グループに分かれて実験をする授業展開であった。(授業②)
・教科書を使うのではなく、教員が作成したプリントをもとに実験をしていた。
「考察」
・理科実験の内容はやや発展的である。
・実験を重視した授業展開は、本校の理科の授業と共通するものである。
授業①
②
国立中山大学附属国光中学
■
設備・環境
授業②
・国立大学の附属学校で、本校と同じ中高一貫校である。
・高雄市内で5番目のレベルであるようだ。
・オープンな雰囲気で、生徒の印象も本校生徒に近い感じがある。
・理科の授業は、実験以外は HR 教室で行われる。
・プロジェクター等の利用が盛んに行われている。(理科授業)
・授業は、教室の大きさや生徒人数は日本のものとほぼ同じだが、マイクを使って行われる。
■
授業観察(中学 1 年:数学)
・中学 1 年の授業で、関数の内容であった。
・日本では扱わないような計算テクニックのような問題であった。(授業③)
・2 つの 1 次関数のグラフの交点(座標)がわかっているとき、その 1 次関数の式を求める内容であっ
た。(授業④)
「考察」
・本校では、関数の計算として難しい計算テクニックを指導することはない。(授業③)
・日本では、中学 2 年で学習する内容であるので、台湾の方がカリキュラム的にはやや進んでいる。
・身近な課題を取り上げるような PISA 型の問題設定ではなく、従来の日本の授業のようであった。
写真③
写真④
平成 22 年度スーパーサイエンスハイスクール
コア SSH 実施報告書
2011 年(平成 23 年)3 月 31 日発行
発
行
者
:奈良女子大学附属中等教育学校
校 長
塚 本 幾 代
表紙デザイン:教 諭
長 谷 圭 城
〒630-8305 奈良市東紀寺町1-60-1
TEL 0742(26)2571
FAX 0742(20)3660
http://www.nara-wu.ac.jp/fuchuko/
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