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田畑輪換を取り入れた輪作による経営の安定化
(3) 美唄市 課題番号 8 活動年次 平成26年度 課題区分 普及課題 田畑輪換を取り入れた輪作による経営の安定化 キャッチフレーズ あらたな道を開いて発展 重点対象 美唄市開発地区 担当者 関連事業 地域第一係 (33戸) 大平係長 西川調査員 武田調査員 橋下普職 関係機関 美唄市 JAびばい 美唄市小麦プロジェクト 1 課題設定の背景 (1)転作面積率は68.1%と高い地域であり、転作作物は小麦が5割、大豆が3割でこの2作物が主 である。転作作物は連作障害や湿害により収量レベルは低く、JA全体としても秋小麦の収量性 改善が急務(25年産JAびばい平均収量6.2俵/10a)。 (2)転作作物の安定生産には、新規の土地利用型作物の導入による輪作体系の確立、水稲直播栽 培との田畑輪換を図る必要がある。 (3)開発地区は市街地に近く通い作が多い。また、労働力も経営主のみの経営が多く、水稲直播 栽培等の労働時間削減のニーズが強い。 2 活動の経過 26年は新たに①なたねを組み入れた輪作効果の実証、②排水性改善と労働時間削減を兼ねた 大豆狭畦栽培の実証、③秋まき小麦‘ゆめちから’の栽培技術習得、④水稲の復元、新規直播 栽培者の生産安定化、⑤たまねぎの輪作効果の実証について、支援を実施した。また、継続し て⑥担い手及び女性活動について支援を実施した。 (1) 地域農業活性化組織の生産性改善に向けた活動の定着(予定も含む) 時 期 4、6、8、10月 4、5、8、10月 5、7、8、10月 5、8、10月 8、9、10月 4、6、11、1、1月 4~3月 4、6月 3月 支援方法 集合・個別 個別 集合・個別 個別・集合 個別・集合 集合 個別・集合 集合 集合・情報配布 回数 延人数 4 40 4 12 4 8 3 6 3 6 5 46 9 35 2 8 1 35 主 な 活 動 内 容 生産性向上に向けた企画の立案、実施支援 RTK測位法を活用した透排水性改善対策の調査支援(大豆) なたねを入れた輪作効果の調査支援(秋まき小麦、大豆) グレンドリルを活用した大豆狭畦栽培の試作支援 コンビネーション作業機を活用した秋まき小麦の生育改善 女性研修会の実施支援(連絡員による研修の企画・運営含め) 女性起業グループ「つむぎ屋」の育成支援(加工販売技術) 担い手研修会の企画、実施支援 プロジェクト活動報告会、成果集3(なたね栽培編)の発行 (2) 輪作作物の安定確収技術の定着 ア 「ゆめちから」の茎数に対応した窒素分施の実践 時 期 4月 4、5、6、8、11月 支援方法 集合 情報配布 回数 延人数 1 22 5 55 主 な 活 動 内 容 品種特性に対応した栽培講習会の開催支援 生育調査ほ場の設置及び調査結果の情報提供 イ 水稲の復元、新規直播栽培者の栽培技術改善 時 期 4、5、6、7、8、9、 10、11、2、3月 6、7、8、9、10月 6、7、8月 支援方法 集合・個別 個別 個別・集合・情報配布 回数 延人数 8 34 5 13 21 62 主 な 活 動 内 容 水稲チーム活動の支援(初期生育、施肥改善と倒伏防止、 雑草対策、いもち対策、活動内容の検討他)、情報提供 初期生育、除草効果、収量の実態把握 いもち病予察等の情報提供 - 37 - ウ たまねぎほ場の輪作の実施 時 期 6、7、8、9月 4、6、7、2月 3 支援方法 個別・集合 集合 回数 延人数 4 16 4 16 主 な 活 動 内 容 調査ほの設置、調査支援、結果検討 栽培講習会(ネギハモグリバエ対策)の開催支援 成果の具体的内容 表1 課題の到達目標と実績 具体的推進事項 「地域農業活性化組 織」の生産性改善に 向けた活動の定着 輪作作物の安定確収 技術の定着 目標事項 (評価項目) 開始年 生産性向上に向けた改善計画の作成と実施 (排水対策(土壌亀裂促進機等)の施工 0戸 収量等の改善農家) 品種特性に対応した栽培技術の実践 (ゆめちからの適期分施実施戸数) 0戸 水稲の復元、新規直播栽培者の栽培技術改 善(地域の直播栽培の平均収量以上を確保 0戸 した農家戸数) たまねぎほ場の輪作の実施 (作土層の拡大(15cm以上)戸数) 0戸 現況 目 標 実 績 到達度 10戸 15戸 15戸 100% 0戸 8戸 8戸 100% 1戸 3戸 4戸 133% 1戸 2戸 3戸 150% (1) 重点地区活動を生かした【美唄市 小麦プロジェクト】の始動 秋まき小麦は重点地区で明らかになった高収・低収要因をJA全体に伝達した。特に、JAびば いの25年産秋まき小麦トップ5に重点地区から3名入り、‘麦はやることをやればとれる! ’ という機運ができ、美唄市全体での‘小麦プロジェクト’に発展した(表2、写真1)。プロジェ クト初年目の26年産の秋まき小麦収量は、JAびばいで前年を2俵上回る8.3俵/10aとなった。 また、JAびばいの26年産の最高収量者は重点地区の生産者だった(2年連続)。 27年産に向け、は種時期の重要性が意識され、重点地区も含め2日程度稲刈りを中断し、秋 まき小麦が適期に播種された。 表2 26年 小麦プロジェクトの活動 実施日 研修会名 参加人数 3月 6日 JAびばい青年部学習会 30名 17日、23日、27日 各地区冬期秋まき小麦研修会 130名 4月 11日 JAびばい青年部秋まき小麦現地研修会 30名 14日 JAみねのぶ青年部秋まき小麦現地研修会 30名 3、14、15日 起生期講習会 120名 5月 14日 JAびばい青年部秋まき小麦現地研修会 35名 6月 2日 JAびばい青年部秋まき小麦現地研修会 36名 7月 1日、2日 各地区現地研修会 40名 4日、11日 麦プロ研修会 80名 11日 JAびばい青年部秋まき小麦現地研修会 35名 8月 28日 JAびばい青年部秋まき小麦実績検討会 20名 9月 1日、 5日 JAびばい、JAみねのぶ 播種前講習会 39名 10月 28日 JAみねのぶ青年部秋まき小麦研修会 30名 29日 JAびばい青年部秋まき小麦現地研修会 15名 11月 27日 JAみねのぶ 各地区冬期講習会 25名 JAびばい青年部 秋まき小麦増収に向け頑健茎調査を実施 5月~7月、計4回 5月7日、6月2日、6月25日、7月22日 写真1 JAびばい青年部 小麦プロ現地研修 (2) 地域農業活性化組織の生産性改善に向けた活動の定着 輪作作物が少ない解決策として新規の土地利用型作物「なたね」を導入し、後作物の増収 効果を実証した。また、排水対策(心土破砕耕、ほ場均平)に継続して取り組み改善効果を 実証した。さらに、開発地区でニーズの高い労働時間削減と排水性改善を目的に大豆狭畦栽 培について実証した。 ア なたねを導入した輪作の効果は高い なたね後作ほ場の畑作物収量は秋まき小麦で40%、大豆で20%向上し、後作物の増収効 果を実証した。その結果、地区内の栽培面積も増加した(26年1.1ha、27年3.3ha)。JAび ばい全体の平均収量は300kg/10aを上回り良好であった。この結果、JAびばい内で生産へ の意欲が高まりなたね導入が進んだ(JA全体25年2.3ha、26年19.8ha、27年36.6ha)。 - 38 - イ 継続した排水対策の効果実証 23年から湿害回避として、心土破砕 耕及び土壌均平の実証に取り組んだ。 JAびばいの26年産大豆のトップ10に重 点地区から4名入り、いずれも6俵を 上回った。その中で、大きく増収した 生産者A、Cは24年からRTK測位法 を活用したムリのない土壌均平に取り 組んだ(図1)。 図1 大豆収量の改善 ウ 大豆狭畦栽培の導入 25年に大豆狭畦栽培を視察し、26年は排水性改善と労働時間削減を目指し3戸、1.7haで 試作した。湿害の発生もなく、収量も慣行に比べ20%増収し、中耕除草は平均で2.6回削 減された。この結果、次年度は大幅に面積が増加する予定(10ha超、地域の約1割)。 (3) 輪作作物の安定確収技術の定着 ア 「ゆめちから」の品種特性に対応した栽培技術の実践 半数の生産者(11戸)が26年産から「ゆめちから」に品種変更した。定点調査ほ場を設置 し、生育状況を情報提供し、茎数に対応した窒素分施の実施を図った。8戸が茎数に対応 した窒素分施を実施しており技術の定着が見られたが、各生育期節の窒素分施量の差が大 きいことが確認された(表3)。また、JAびばいの高収量生産者と窒素分施の状況を比較す ると分施時期に幅があり課題があることがわかった(表4)。 表3 「ゆめちから」に対応した窒素分施の達成状況 実施者/生産者 窒素 平均 分施量 最低 (kg/10a) 最高 イ 起生期 幼形期 9/11 8/11 7.2 4.3 0.0 0.0 16.0 9.2 止葉期 9/11 5.1 0.0 16.0 表4 高収量生産者10戸との窒素分施の実施状況比較 起生期 施肥日 4/13~21 上位※ 窒素分施量(kg/10a) 9.6 施肥日 4/14~22 開発 窒素分施量(kg/10a) 7.2 ※JAびばい 製品収量上位10戸 水稲の復元、新規直播栽培者の栽培技術改善 復元、新規直播栽培者の課題である① 表5 重点改善技術の実践度合い 初期生育の確保、②施肥改善と倒伏防止 は 初 ③雑草及びいもち病防除について改善技 種 期 区分 農業者 型式 品 種 深 生 術を提案した。改善技術の実践度合いの 度 育 高かった4戸は地域の直播栽培の平均収 A 乾直 ほしまる ○ ○ 量を上回った(表5)。新規の栽培者から 復元田 B 湛直 ほしまる ○ ○ C 乾直 ほしまる ○ △ 「心配したが何とかとれた。来年も頼む D 湛直 おぼろづき ○ ○ ね」と活動への期待の声が聞かれた。 新規直播 E ウ 乾直 ほしまる ○ ○ 幼形期 止葉期 5/3~15 5/29~6/12 4.3 5.2 4/30~5/12 5/21~6/14 4.3 5.1 施 肥 改 善 倒伏 割合 (%) 雑草 対策 いもち病 予 察・ 適期防除 収 量 比 ○ 5 ○ ○ 103 ○ 0 ○ ○ 124 ○ 0 △ ○ 80 ○ 1 ○ ○ 122 ○ 3 △~○ ○ 114 注1)各評価項目;○適正、△要改善 注2)は種深度;14ミリ以内 たまねぎほ場の輪作の実施 注3)初期生育;直播:6葉期600本/㎡以上 作土層拡大を提案し、4戸中3戸で畑 注4)施肥改善:側条施肥窒素4~5kg/10a、緩効性肥料使用 注5)収量比;地区直播平均反収を100 作物栽培後ほ場でたまねぎを栽培した。 収量は連作ほ場を20~40%上回った。また、畑作物導入の効果はおおよそ3年間持続して いることが確認できた。 (4) 経営経済評価 作物別の粗収益は25年に比べ水稲は減少し(-6%)、小麦、大豆、青果で増加した(いず れも+20%)。総体では25年に比べ3%増加した(表6、図2)。また、農業者と目標としていた ‘ 受取共済金の減少’については大きく減らすことができた(-80%、図3)。 - 39 - 表6 経営経済評価 22年 23年 24年 25年 26年 自己資本比率 60 62 63 64 66 固定比率 151 135 126 124 122 売上高負債比率 153 125 126 131 123 農業所得 78 96 95 75 80 農業所得率 31 36 34 29 29 ※26年対象30戸、農業所得は21年を100とした 図2 作物別粗収益の推移 図3 4 受け取り共済金の推移 結果の考察 (1) 重点地区活動を生かした‘美唄市 小麦プロジェクト’の始動 秋まき小麦の農業者のニーズは、品種変更だった。これについては、25年、26年と中央農 試の協力により設置した品種比較試験ほ場を現地研修を実施する各組織、団体に必ず見ても らい、農業者に当面‘きたほなみを作り続ける’覚悟をしてもらった。 また、24年、25年は雪害により大きな被害を受けた。その中で低収要因を解析し、改善技 術を示し、高収量を実証した。そのデータ、技術を関係機関と共有し、現地研修会等により すみやかに地域に波及させたことで、1年目からの増収につながったと考えられる。また、 JA担当職員や農業者の自信になったと考えられる。「頑健茎調査(輪ゴム実験)」はJAびば い青年部等の活動のモチベーションを高く保ち続けることに有効であり、活動の話題づくり の一つとなった。 (2) 地域農業活性化組織の生産性改善に向けた活動の定着 なたね栽培、大豆狭畦栽培は視察研修がきっかけとなった。視察を見学で終わらせないよ う活動し続けた結果と考えられる。 (3) 輪作作物の安定確収技術の定着 ア 「ゆめちから」の茎数に対応した窒素分施の実践 「きたほなみ」の窒素分施技術が定着してきたため、農業者からは‘栽培1年目としては まずまずの収量’と評価されたと考えられる。農業者間で収量差が見られ(4~8俵/10a)、 窒素分施量や施肥時期等の技術習得に差があると考えられる。 イ 水稲の復元、新規直播栽培者の栽培技術改善 増収の要因は、①は種深度の適正化による初期生育と苗立ち本数を確保、②側条施肥量 の適正化による早期倒伏の回避、③草種と発生量に対応した除草剤が選択や予察に基づい たいもち病防除等の提案が実行されたためと考えられる。 ウ たまねぎほ場の輪作の実施 輪作による生産性改善効果を示し続けた結果と考えられる。 5 今後の対応 継続した提案により、おおむね目標に到達した活動が多い。このため、農業者と協議し、秋 まき小麦の収量向上、水稲の直播栽培の安定生産に集約して普及活動を展開する。 (1) 輪作作物の安定確収技術の定着 ア 「ゆめちから」に対応した栽培技術習得を支援する。起生期重点の分施の実施で収量差の 改善を図る。 イ 水稲は直播栽培の重点技術の定着を支援する。特に、26年産で問題となった製品歩留ま りの向上をめざし、初期生育改善、栽培管理の徹底を図る。 - 40 -