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通信用マイクロ波技術を応用した SPS 用送受電装置 Power

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通信用マイクロ波技術を応用した SPS 用送受電装置 Power
- 11 社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEER
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
SPS2005-07 (2005-06)
通信用マイクロ波技術を応用した SPS 用送受電装置
三神 泉†
佐藤 裕之† 池松 寛†
山本 敦士†
篠原 真毅‡
橋本 弘藏‡
松本 紘‡
†三菱電機通信機製作所 〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町 8-1-1
‡京都大学生存圏研究所 〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄
E-mail:
あらまし
†[email protected], ‡[email protected]
SPS 実現のため,システムとしての実現性検討といったレベルから,RF コンポーネントでの検証と
いったレベルにいたるまで,数多くの研究がなされている.いくつかの研究では,試作品の製作,評
価が行われているが,最終的な SPS システムは極めて大規模であるため,これらの試作品は,比較的
小規模のコンポーネントの組合せにとどまらざるを得ないこととなる.従い,SPS の実現性について
考察する場合には,最終的に実用化されるであろう大規模な SPS システムで性能が発揮されることを
考慮した,慎重なアプローチが必要である.筆者らは,通信用装置で実用化されているマイクロ波技
術を利用して,研究結果が最終的なシステムに適用可能となるよう,マイクロ波送電,ビーム制御,
および受電レクテナの各サブシステムの構成について検討したので報告する.
キーワード SPS,RF 伝送,ビーム制御,レクテナ
Power Transmitting/Receiving Apparatus for SPS Employing
Microwave Technology for Communication
Izumi MIKAMI†
Hiroyuki SATOH†
Naoki SHINOHARA‡
Hiroshi IKEMATSU†
Kozo HASHIMOTO‡
Atsushi YAMAMOTO†
and Hiroshi MATSUMOTO‡
†Mitsubishi Electric Corporation, Communication Systems Center 8-1-1 Tsukaguchi-Honmachi, Amagasaki-shi, Hyogo, 661-8661 Japan
‡Reseach Institute of Space and Humanosphere, Kyoto University Gokasho, Uji-shi, Kyoto, 611-0011 Japan
E-mail:
Abstract
†[email protected] ,
‡[email protected]
In order to contribute to the SPS actualization, many researches have been made from system level feasibility to the
component level feasibility. Some of them created breadboard or prototype models, and evaluated whether or not their
approaches can attain the proposed performance. Such models were configured with, by nature, extremely smaller or
much-smaller number of components compared with the actual scale of the final SPS. Due to such a limited fidelity of those
models, a careful approach is naturally required from the standpoint that performances verified at the models can be succeeded
to the final SPS with no big theoretical and technological modification. Bearing this in mind, the authors made a study to
configure each subsystem of RF transmission, the beam control and the rectenna, utilizing innovative component technology
available at the present satellite communications with practical enhancement, so that the study results may be directly
applicable to the final system.
Keyword SPS, RF transmission, Beam-control, Rectenna
て い る も の も あ る が ,最 終 的 な SPS に 適 用 さ れ る マ イ
1. は じ め に
クロ波装受電装置は極めて大規模となるため,地上で
宇 宙 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム ( Space solar Power satellite
行われる実証実験は,実用システムと比較し小規模な
System; SPS) の 実 現 の た め , シ ス テ ム 的 な 見 地 か ら ,
も の と な ら ざ る を 得 な い . 従 い , SPS へ の 実 現 向 け た
あ る い は ,RF コ ン ポ ー ネ ン ト へ の 要 求 実 現 と い っ た レ
検討においては,小規模な実証システムでは問題とな
ベ ル に い た る ま で , 多 く の 研 究 が な れ て い る [1-5].こ
り 難 い 機 能 お よ び 性 能 上 の 制 約 条 件 が , 最 終 的 な SPS
れらの研究の中には,試作品の開発および評価を行っ
用の装置として,実用化を阻害する問題とならないか
- - 11 - -
どうか,あるいは,検討した技術が大規模システムと
れる.従来,レクテナの検討はプリント基板上
して構築し得るか,といった観点から,慎重にアプロ
にマイクロストリップアンテナおよび整流回路
ーチを行う必要がある.筆者らは,現在,通信用とし
を実装したものが主体であったが,上記の受電
て 実 用 に 供 さ れ て い る RF コ ン ポ ー ネ ン ト 技 術 を 利 用
サイト実現の観点から,薄膜フィルムを用い,
し,マイクロ波送電,ビーム制御,受電レクテナの各
地導体を省面積化することで,光透過性を向上
サブシステムについて,いくつかの検討を行っている
し,環境への負荷を軽減することを検討した.
[6-8].こ れ ら の 技 術 は 既 に 衛 星 通 信 用 の 大 型 地 球 局 装
また,併せて受電サイトの周辺部で必要となる
置 と し て 実 用 化 さ れ て い る も の で あ り ,本 研 究 成 果 は ,
低 電 力 領 域 で の RF-DC 変 換 効 率 改 善 の 検 討 も 実
将 来 の SPS の 実 用 シ ス テ ム の ス ケ ー ル ま で 拡 張 し て 適
施した.
用可能となると考えている.本研究の要点は以下の通
りである.
1)
2. DDS-PLL 技 術 を 用 い た 超 低 損 失 RF 送 信 機
マイクロ波送電サブシステム:従来提案されて
い る ア ク テ ィ ブ フ ェ ー ズ ド ア レ イ( APAA)型 の
APAA 型 送 電 回 路 に 使 用 さ れ る 従 来 の RF モ ジ ュ ー
送電サブシステムにおいては,アンテナ面内に
ル の ブ ロ ッ ク 図 を 図 1(a)に 示 す .RF モ ジ ュ ー ル は 主 に
配 置 さ れ た 送 電 モ ジ ュ ー ル へ 数 GHz 程 度 の 送 電
移 相 器 と 多 段 の 半 導 体 高 出 力 増 幅 器( SSPA)と で 構 成
波を供給するため,マイクロ波帯の電力分配器
さ れ る .大 規 模 な SPS シ ス テ ム を 想 定 し た 場 合 ,分 配
が必要となる.大規模なアンテナパネルを用い
回 路 で の 送 電 波 の 損 失 を 補 う た め ,送 電 APAA 入 力 −
た 最 終 的 な SPS に お い て は , 伝 送 距 離 が 極 め て
RF モ ジ ュ ー ル 間 に 多 数 の 中 継 増 幅 器 が 必 要 と な る .
長くなるため,波源と各モジュール間に多数の
中継増幅器が必要となり,送電効率の低下が生
2)
DDS-PLL 型 の RF モ ジ ュ ー ル の 構 成 を 図 1(b)に 示 す .
高 出 力 VCO の 出 力 波 の 位 相 は ,周 波 数 変 換 方 式 の PLL
じ る . さ ら に , 送 電 用 の 高 出 力 増 幅 器 ( HPA)
に よ り DDS の 出 力 波 と 正 確 に 位 相 同 期 さ れ る . DDS
には高利得が要求されるため,多段化により
は出力波の初期位相を多ビットの分解能で設定するこ
DC-RF 変 換 効 率 が 低 下 す る こ と と な る . 提 案 す
と が 可 能 で あ り , 従 来 の RF モ ジ ュ ー ル 内 に 設 け ら れ
る DDS-PLL 型 送 電 回 路 で は ,ダ イ レ ク ト デ ィ ジ
た移相器と異なり,移相量がディジタルサンプリング
タ ル シ ン セ サ イ ザ ( DDS) お よ び 位 相 同 期 ル ー
で設定されるため,極めて高精度にビーム制御を行う
プ ( PLL) に よ っ て 出 力 位 相 を 制 御 さ れ た 高 出
こ と が 可 能 と な る . ま た , 本 構 成 で は , GHz 帯 の 送 電
力 発 振 器 ( VCO) を APAA 用 の 波 源 と し て 用 い
波 の 分 配 は 不 要 と な り , PLL の 基 準 信 号 と な る MHz
ることで,これらの問題を解決することを検討
帯のクロックを伝送することで,各モジュールを制御
した.
可能となるため,中継増幅器による電力効率の劣化が
ビーム制御サブシステム:従来提案されている
抑制可能である.さらに,高いビーム指向精度を得る
レトロディレクティブ型ビーム制御回路では,
Phase
Shifter
受信するパイロット信号と,折り返しパイロッ
ト信号方向へ送出する送信波との間で位相共役
multi-stage SSPA
ANT
Source
wave
の関係を維持する必要があるため,わずかに周
波数の異なるパイロット受信波と送信波を採用
Setting data
す る 必 要 が あ っ た .SPS 実 用 シ ス テ ム で は ,MW
ANT
級の送電出力が必須であり,このような送受信
周波数の近接したレトロディレクティブ型のシ
(a) 従 来 の 構 成
ステムでは,送信波が受信波に干渉し,所望の
MIX
ビーム指向精度の確保が困難となる.上記の問
LO
題を解決するため,周波数変換および逓倍・分
ANT
周回路を用い,送受信が大きく異なる場合でも
位相共役の関係を保持し,レトロディレクティ
Reference
clock
ブとしての動作が可能となる構成を検討した.
3)
High
power
VCO
DDS
PD
受 電 レ ク テ ナ : SPS の 受 電 サ イ ト 建 設 に あ た っ
ては,広大なレクテナ設置の領域確保および環
Setting data
境への配慮,あるいは,受電サイト建設費用の
低減につながる,レクテナ重量の軽減が要求さ
- 12 -
(b) DDS-PLL 型 構 成
図 1
APAA 型 送 電 回 路 用 RF モ ジ ュ ー ル の 構 成
た め に は , 従 来 の RF モ ジ ュ ー ル で は 増 幅 器 を バ ッ ク
オフさせて使用する必要があるが,本構成では,高出
3. PLL ヘ テ ロ ダ イ ン 方 式 を 用 い た 高 精 度 レ ト ロ デ ィ
レクティブビーム制御
力 発 振 器 を 波 源 と し て い る た め , FET を 飽 和 領 域 で 使
用 す る こ と が 出 来 , 従 来 の RF モ ジ ュ ー ル で 3dB 程 度
従来のレトロディレクティブ型ビーム制御回路で
の バ ッ ク オ フ が 必 要 と 仮 定 す れ ば , 2 倍 以 上 の DC-RF
は , 送 信 周 波 数 を 5.99GHz, 受 信 周 波 数 を 6.01GHz と
変換効率を得ることが可能となる.
するなど,位相共役の実現のため,極めて近接した送
試 作 し た 送 電 シ ス テ ム の 構 成 を 図 2 に 示 す [6].そ れ
受信周波数を採用するのが一般的であった.一方で,
ぞ れ 3 つ の DDS-PLL モ ジ ュ ー ル を 波 源 と し て 備 え た
SPS の 実 用 シ ス テ ム に お い て は , 所 望 の ビ ー ム 指 向 精
ア レ ー 給 電 反 射 鏡 ア ン テ ナ ( PAA#1∼ #3) を 3 台 ア レ
度 を 得 る た め , 数 100∼ 数 MW の 送 電 出 力 と -100dBm
ー合成し,9 素子の一次元アレーとして動作させるシ
程 度 の パ イ ロ ッ ト 信 号 間 で 100dB 以 上 の ア イ ソ レ ー シ
ス テ ム と な っ て い る .DDS-PLL モ ジ ュ ー ル 内 の 高 出 力
ョンを確保する必要があり,従来のような近接した周
VCO に は ,増 幅 器 と し て 使 用 し た 場 合 の 最 大 電 力 付 加
波数関係では,所望のアイソレーション特性の実現は
効 率 35% の 内 部 整 合 形 FET 及 び シ リ コ ン の 可 変 容 量
困難となる.衛星通信システムにおいても,送受間の
ダ イ オ ー ド を 用 い ,VCO の 出 力 は 8W,DC-RF 変 換 効
電力差は極めて大きいが,送受信を異なる周波数で行
率 は 21% で あ っ た .現 在 ,C 帯 で は GaN や SiC と い っ
っているため,所望のアイソレーションの実現が可能
た WBG デ バ イ ス の 効 率 改 善 に よ り , FET の 電 力 効 率
と な っ て い る . 従 い , SPS 用 の レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ
は 80% 程 度 に ま で 大 幅 に 改 善 さ れ る 見 込 み が 得 ら れ
型ビーム制御回路においても,衛星通信システムと同
て お り , 将 来 の DDS-PLL モ ジ ュ ー ル の DC-RF 変 換 効
様,送受の周波数をフィルタ等による分波が可能な程
率 は 50% 以 上 が 期 待 さ れ る .最 後 に ,ビ ー ム 走 査 特 性
度に離す必要があると考えられる.
や,試作版システムの放射パターンを図 3 に示す.
図 4 に ,提 案 す る PLL ヘ テ ロ ダ イ ン 式 レ ト ロ デ ィ レ
クティブアンテナのブロック図を示す.送信周波数
DDS/PLL OSC #1
(f t x )と 受 信 周 波 数 (f r x )の 関 係 ,及 び 局 部 発 振( LO)周 波
DDS/PLL
PAA #1
DDS/PLL
数 (f tl o , f rl o )は 以 下 の 通 り .
INTFC
Unit #1
DDS/PLL
INTFC
Unit #2
PC
System Controller
PAA #2
DDS/PLL
OSC #2
ftx = N frx
f t x - f t l o = N ( f rl o − f r x )
図 5 にレトロディレクティブアンテナにおける,隣
接する二つの素子アンテナ間の経路差と送受信波の位
相関係を,図 6 に実際に試作したレトロディレクティ
ブ 用 RF モ ジ ュ ー ル 内 の 各 ポ イ ン ト で の 隣 接 素 子 ア ン
PAA #3
DDS/PLL
OSC #3
(1)
INTFC
Unit #3
テナ間の位相差を示す.図 4 に示した周波数逓倍器を
用いることで,隣接した二つのアンテナ素子の位相誤
図 2
試作した送電システムの構成
差は送受の割合によって逓倍される.それゆえ,周波
数の異なる送信波とパイロット受信波との間を位相共
役の関係に保持することが可能となり,ビーム方向は
Frequency : 5.8 GHz
Polarization : RHCP
Plane : Horizontal
0
パイロット信号の方向に制御される.さらに送受の干
渉 は LNA の 前 段 に 設 置 さ れ た 狭 帯 域 BPF に よ り , 容
Relative power (dB)
-10
易に抑圧することが可能となる.
-20
提案するレトロディレクティブアンテナのもう一
-30
つ の 特 長 は ,送 信 の 波 源 と し て PLL 回 路 を 採 用 し て い
ることである.従来のヘテロダイン方式のレトロディ
-40
レクティブアンテナにおいては,送信波の信号対雑音
-50
比 ( C/N) が , 受 信 し た パ イ ロ ッ ト 信 号 の C/N に 依 存
-60
-30
図 3
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
Offset angle (deg)
10
15
20
25
30
し て し ま う 問 題 が あ り ,地 上 間 -SPS 衛 星 で パ イ ロ ッ ト
信 号 の 送 受 を 行 う 場 合 の C/N が 極 端 に 劣 化 す る 可 能 性
アレイ給電アンテナの放射パターン(近軸)
が あ る が , 本 方 式 で は , PLL 回 路 を 採 用 し , PLL ル ー
プの帯域外雑音が抑制されることを利用して,送信波
- 13 -
の C/N を 高 め て い る .
Antenna-PANEL RF-PANEL
図 7 に試作した 8 素子一次元アレーのレトロディレ
クティブアンテナの構成を示す.アンテナ素子には,
Tx-LO
#1
RETRO-RF
Module#1
#2
RETRO-RF
Module#2
送受を同一の位置に配置可能なスタック型円形・円管
Rx-LO
パ ッ チ ア ン テ ナ を 用 い て い る .ま た ,RF モ ジ ュ ー ル に
•
•
•
で あ っ た ,高 ビ ー ム 指 向 精 度 の 実 現 に つ い て は ,0.37°
rms の 指 向 誤 差 が 得 ら れ て お り , 良 好 な ビ ー ム 走 査 特
性が得られた.
Rx-LO
Tx-LO
ftx
DIP
ftlo
Tx-LO
Rx-LO
LOCAL UNIT
する構成とした.表 1 に主要特性を示す.所期の目的
Tx-LO
8-DIV
は , 共 通 の LO 波 源 か ら 2 種 の 周 波 数 (f t l o , f rl o )を 供 給
frx
MIX
RETRO-RF
Module#8
#8
Rx-LO
Ele.
ANT
VCO
ftx - ftlo
図7
試 作 し た 8素 子 一 次 元 ア レ ー レ ト ロ デ ィ レ ク
BPF
ティブアンテナの構成.
PD
N( frlo - frx )
Loop Filter
XN
MULT
表 .1
LNA
frlo - frx
frlo
MIX
図 4.
試作したレトロディレクティブアンテナの主要
特性
PLL ヘ テ ロ ダ イ ン 式 レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ ア ン
テナのブロック図
∆φtx = −N∆φrx
Element
antenna
•
•
•
items
results
Tx frequency
5.77 GHz
Polarization
Tx:RHCP / Rx:LHCP
Scanning range
+/- 25 degree min.
Minimum Pilot signal
level
Error of beam orientation
-40dBm@MDL
0.37 degree r.m.s.
Number of elements
8 Linear array
4. マ イ ク ロ ス ト リ ッ プ ア ン テ ナ 技 術 を 用 い た 地 導 体
省面積化構造薄型フィルムレクテナ
図 .5 隣 接 す る 素 子 ア ン テ ナ の 経 路 差 と 位 相 差 の 関 係
従来のレクテナでは,低損失化のためテフロン基板
等の硬質の樹脂基板を用い,表面をパッチアンテナ,
BPF
−N∆φ@N( ftx - ftlo )
SSPA
AMP
ftlo
ftx - ftlo
−∆φ@ frlo - frx
AMP
[9-11].し か し な が ら ,SPS の 最 終 的 な 大 規 模 サ イ ト を
−N∆φ@ ftx
VCO
MIX
−N∆φ@N( frlo - frx )
裏面を整流回路部とする構成が多く採用されている
ftx
考慮すると,レクテナの軽量化および光透過性の向上
LPF
を考える必要がある.筆者らはこの目的のため,地導
Loop Filter
体領域を可能な限り少なくした薄膜フィルムを用いた
PFC
マイクロストリップアンテナで構成したレクテナを提
N( frlo - frx )
×N
案 し た [7,8].し か し な が ら ,基 板 厚 が 700um 以 下 で あ
MULT
る場合,Q 値の低下により放射効率が確保できないと
LPF
frlo - frx
LNA
frlo
MIX
BPF
∆φ@ frx
いう制限があった.このため,薄膜レクテナの素子ア
frx
ンテナおよび整流回路に,地導体が不要な平衡二線線
路 を 用 い た 薄 型 レ ク テ ナ の 検 討 を 行 っ た [12].
図 .6 各 回 路 で の 隣 接 素 子 ア ン テ ナ 間 の 位 相 差
図 8 に平衡二線型レクテナの等価回路を示す.
- 14 -
帯域
C1
LPF
0
C2
-5
RL
-10
-15
図 8
平衡二線型レクテナ等価回路
誘電体基板の材料としては,軽量化及びはんだ耐熱
Return Loss [dB]
C1
-20
-25
-30
-35
-40
性を考慮し,ポリイミド基板を採用した.また,薄膜
-45
で可撓性があり,ある程度の光透過性もあるため,レ
-50
クテナサイトとして,森林地帯への設置も可能性を有
-55
Cal(PDA)
Cal(PDA+LPF)
Meas(PDA)
Meas(PDA+LPF)
5.3
5.4
5.5
5.6
5.7
5.8
5.9
Frequency [GHz]
していると考えている.
図 10
図 9 に採用した平衡二線型プリントダイポールアン
6
6.1
6.2
6.3
アンテナの反射特性
テ ナ と LPF の 構 成 を 示 す .本 方 式 は ,地 導 体 が 原 理 的
に不要で放射効率も高く,広帯域であるため,レクテ
12mm
ナ用素子アンテナとして適している.
2.6mm 2.6mm
図 10 に 平 衡 二 線 型 プ リ ン ト ダ イ ポ ー ル ア ン テ ナ と
LPF の VSWR の 周 波 数 特 性 を 示 す .特 性 イ ン ピ ー ダ ン
ス は 200Ω で あ る . LPF の 有 無 に よ り 特 性 が 若 干 変 化
し て い る も の の , 5.8GHz 帯 の ア ン テ ナ と し て 概 ね 良
図 11
好な特性を示している.
レクテナ整流回路部の外観
(負 荷 抵 抗 実 装 前 )
図 11 に ,レ ク テ ナ の 整 流 回 路 部 の 写 真 を 示 す .整 流
回 路 部 と し て は 10mm□ 程 度 の 回 路 面 積 に 収 め る こ と
抗 側 に 平 滑 用 キ ャ パ シ タ を 並 列 に 追 加 し て い る .図 12
に ,整 流 回 路 部 の RF-DC 変 換 効 率 を 示 す .破 線 は 回 路
シミュレータによる計算結果であり,実線が測定結果
で あ る .レ ク テ ナ 周 辺 部 で の 使 用 を 考 慮 し ,1mW 入 力
という比較的低電力領域で最適負荷を求めたところ,
付 加 抵 抗 の 値 は 1kΩ と な り , 1mW に お け る 効 率 は 計
算 で 54% , 実 測 で 49.7% と な っ た .
30mm
100
RF-DC transmission efficiency [%]
が可能である.今回,図 8 で示した基本回路の負荷抵
90
measurement
80
calculation
70
52.6%
60
50
40
49.7%
30
20
10
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Input Power [mW]
3.3mm
図 12
5mm (≒0.1λ)
RF-DC 変 換 効 率 の 入 力 電 力 依 存 性
図 13 に , プ リ ン ト ダ イ ポ ー ル と 整 流 回 路 部 を 一 つ
平面ダイポール
アンテナ
(PDA)
の レ ク テ ナ 素 子 と し ,6×6 素 子 配 列 し た レ ク テ ナ ア レ
イ を 示 す . こ こ で は 全 並 列 で 電 力 を 取 り 出 す . 図 14
LPF
に 示 す 入 力 電 力 依 存 性 で は ,1mW 入 力 時 に ,素 子 単 体
で の 最 適 負 荷 抵 抗 値 か ら 求 め ら れ る 1kΩ /36= 27Ω で
LPFの性能
-0.26dB@5.8GHz
-18dB@11.6GHz
-28dB@17.4GHz
図 9
は な く ,22Ω で RF-DC 変 換 効 率 で 最 大 値 を 得 た .差 異
フィルム基板
の理由は,ダイオード毎の最適負荷抵抗のばらつきと
考 え て い る .図 15 に 入 力 電 力 別 に お け る 負 荷 抵 抗 に 対
平衡二線型レクテナダイポールアンテナ
するレクテナアレイ効率を示す.本試作レクテナアレ
及 び LPF(Low Pass Filter)
イ で は ,1m W 以 上 の 入 力 時 に お い て 最 大 効 率 を 得 て お
り ,1m W 以 下 級 の レ ク テ ナ を 実 現 さ せ る た め に は ,レ
クテナ素子の接続法まで含めた検討が必要である.
- 15 -
り , SPS シ ス テ ム の 最 適 化 が 図 ら れ る と 考 え て い る .
我々は本研究が今後も広くサポートされることを期待
したい.
6. 謝 辞
本研究を進めるにあたり,有益な助言ならびに試作・
評 価 の 支 援 を 頂 き ま し た JAXA 殿 及 び USEF 殿 に 感 謝
致します.
RF-DC transmission efficiency [%]
図 13
試 作 版 レ ク テ ナ ア レ イ (全 並 列 型 )
60%
50%
40%
27Ω
22Ω
18Ω
15Ω
12Ω
10Ω
30%
20%
10%
0%
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Input Power [mW]
RF-DC transmission efficiency [%]
図 14
入力電力に対するレクテナアレイ効率
%
%
%
%
%
0.1mW入力
1mW入力
10mW入力
%
%
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
Load Resistance [Ω]
図 15
入力電力別における負荷抵抗に対する
レクテナアレイ効率
5. 結 論
SPS を 実 現 す る た め の 通 信 用 の コ ン ポ ー ネ ン ト 技 術 を
応用した送電・受電・ビーム制御の各サブシステムに
ついて述べた.通信をはじめとするマイクロ波コンポ
ーネント技術は日々進歩し続けており,これらの技術
に立脚し,合理的かつ実践的に検討を進めることによ
- 16 -
文
献
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