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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL 非晶質半導体の欠陥状態と伝導の型 清水, 立生 物性研究 (1977), 28(1): 1-10 1977-04-20 http://hdl.handle.net/2433/89345 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 非晶質半導体 の欠陥状態 と伝導 の型 非 晶質 半導体 の欠陥状態 と伝導 の型 金沢大学工学部 清 水 立 生 §1 .は じ め に 非晶質半導体 の電子的性 質は一般 には結晶半導体 に較 べて不純物 に敏感 ではな く,棉 造 的欠 陥に もとず くバ ン ド・ギャ ップ中の局在状態 が重要な役割 を演 じてい ることが多 い 。本論文 の 目的 は化学結合論 の立場 か ら,種 々の非晶質半導体 の価電子帯 の性質 ,棉 造 的欠陥 の性質 と電気伝導 の型 (n型 か p型か )の関連 について考察 を行 うことにある。 §2.本研究 の背景 の概観 1) 非晶質半導体 は大 き く分 けて S,Se,Te (カルコゲン元素 )を含 む カル コゲナ イ ド 系 とGeや Siのよ うな 4面体配位構造 をす るテ トラ- ドラル系 に分類 され ,両者 でかな り異 なる性 質 を示す こ とが知 られ てい る 。 そのよ うな差異 の原因 は最上 の価電子帯が前 者 ではカル コゲ ン元素 の p電子 の l onepa i rか ら成 り立 っているのに対 して ,後者 では結 合軌道か ら成 り立 ってい ることに起 因す ると考 え られ ている。 st r e etと Mot t2)はカルコゲナイ ド非晶質半導体 の構造的欠陥 と して ,化学結合 の手 が 切れた da ng l i ngbond (D と記す )を考 え ,l onepa i r p電子 の存 在のために da ng l i ng bondは中性状態 にあるよ りも電子 の移行 によってプラス とマイナスに 荷 電 した もの に 分れ た方 がェネルギーが低 く,安 定な状態 である とい うモデル を提 唱 した 。 す なわ ち次 の反応 が発熱的 である と考 える。 2DO → D+ + D ( 1 ) ここで肩 の添字 O,十,-は荷電状感 を示す 。 D十の近 くに存在す る l onepa i r P電子 壮 D' との相互作用 に よってエネル ギーが下 るために D-でのクー ロン反発 エネルギー に打 ち勝 って (1)式 は発熱的 となるのであ る。このよ うなモデルによって ギャ ップ中に多 く の局在状態 が存在す るに もかかわ らず , E S Rが観測 されず ,lそ の よ うな局在状態 にお i a bl er a ngehoppi ngも観測 され ない こ とが説 明 され る 。 ける var これ に対 して Ka s t ner ,Adl er ,Fr i t zs c he3)は da ng li ngbo nd よ 。もェ ネ ル ギー的 に出 ー 1- 清水立生 来 易 い と考 え られ る 3配位 のカルコゲン元素 (普通 は 2配位 )を出発 点 に して , S t r e e t Mot tモデル と同様 に電子 が移行 して次 のよ うな荷 電 欠陥 になるとい うモデル を提 唱 して い る。 2 C … C+Cll - ( 2) : ここで C はカ / レコゲ ン元素 を表 し,添字 の数字 は配位 数 ,肩 の +,-,0 は荷 電状態 を o n ep a i rとの相互作用 に よ って , それ らの間 に 表 す 。 (1)式 で D+が近 くに存 在す る l 完 全 な化学結合 を した とすれ ば D'は C ;とな り (D-は定義 に よって Ciと同 じもの ), ( 1 )式 と (2 )式 の右辺 の状態 は同 じものになる なお , Bi s ho p らに よってカ/ レコゲナ 。 イ ド非晶質半導体 にお いて観測 され てい る光誘起 ESRは光 照射 に よって作 られ た不対 0に よる もの と考 え られ る4 0 ) 電子 を持 つ DOぁ るいは C3 さて この よ うに電子 が移 行 した方 がェ ネ ルギー が低 くな る とい うこ とは このよ うな欠 陥 にお ける実効的 電子相 関エ ネル ギーが負 である とい うこ とであ る 。 このよ うな場合 に l e rとYof f a5 )は次 のよ うな簡単 なノ、ミル トニ ア ンを用 いて ,大分配 関数 を計 っ いて Ad 算 して フ ェル ミ準位 H - EFを求 めた Toi fo ni O + 。 ( 3) 1 niT ni U∑ ↓ α は i とい う位 置 にある欠 陥 に局在 したス ピン αの電子 に対 す る数 オペ レー タ ここで ni ーであ り, T。は欠陥 に電子 が 1個存 在す る時 のエネル ギー , U は負 の実効的電子相 関 エネ ル ギー を表 す EF三 ( U<0)0kTく く I UIの時 , T. ・ 与 U 一与 kTBn( 2n 1-1) ( 4 ) とな る 。 ここで nは 1つ の欠 陥 に存 在す る平均電子数 (0≦n≦ 2)であ る 。 ∩ -1 の時 , EF - T. ・ 与 U ( 5 ) とな り, Uは負 で あるか ら EFは T。 よ りも下 に位 置 す るこ とにな る 。 Ad l e r -Yof f aに よれ ば ,カル コゲナイ ド系 では U が負 のた めに EF は T。の下 に位 置 し, p 型伝 導 にな り易 いのに対 して ,テ トラ- ドラ′ レ系 では U が正 のた めに EF は Toよ り上 に位 置 し, n 型 にな り易 い とい う。 しか し T。が ギャップのどこに位 置す るか を考 察 しなけれ ば ,こ - 2- 非晶質半導体の欠陥状態と伝導の型 の よ うな議論 は無意味 である 。 実験的 には熱起電能 の符号 の正負 に よって p型 か n 型か を決 める と,カルコゲナイ ド 系 では p型 を示 し冒)テ トラへ ドラル系 では 。型 を示す . 7 )但 し,テ トラへ ドラル系 では 普通 はギャップ中の局在状態 にお ける v a r i a bl er a ng ehop pi ngによる伝導 がみ られ ,熱起 電能 の符号 は試料 の作製条件 に よって正 に も負 に もな る 。 したが って ここではグロー放 電法で作 られ た ギャップ中の局在状態 が少 く,バ ン ドに励起 され たキャ リヤによる哲性化 型 の伝導 がみ られ る試料 だけ を対象 にす る 。 また 5族 に属 し,カル コゲナイ ド系 とテ ト ラへ ドラル系 の中間 に位 置す る非晶質 Asでは負 の熱起電能 が観 測 され てい㌔ (但 しホ ー ル係数 は正 であ り,最近 グロー放 電法 で作 った非晶質 Asでは熱起電能 が正 であ った とい う報告 もある9 . ))。また非晶質 Ge-Asでは熱起電能 は負 , 1 0)非晶質 Ge -A sL ll) で eの組成 の多い所 では正 の熱起電能 が観測 され ている は Geの組成 が多い所 では負 , s 。 §3.フェルミ準位 の位 置 フ ェル ミ準位 の位 置 を正確 に求 めることは困塵 であ り,ここでは大 まかな傾 向 のみ を 論 じ,伝導 の型 に関す る実験結果 の説 明 を試み るこ とにす る . Ad l e r -Yof f aの考察 では T。が ギャ ップの どこに位置す るかに全 くふれ ていないが,これ か ら述べ るよ うに T.の 位 置 はバ ン ド構造 に大 き く依存 し,それが EF を決 め る重要 な要因 となる 。 テ トラへ ドラ/ レ系 では sp3混成軌道 による結合軌道 が価電子帯 を形成 し,反結合軌道 が伝導帯 を形成 している 。 これ に対 してカル コゲナイ ド系 ではカル コゲン元素 の l one pa i r p 状感 が最上 の価電子帯 を形成 してい る (伝導帯 はや は り反結合軌道 )0 Asや Ge -A s .では最上 の価電子帯 と伝導帯 はそれ ぞれ結合軌道 と反結合軌道 か ら形成 され る onepa i r s状態 か ら形成 され るバ ン ドが よ りエネル ギーの低い所 に存在す が , Asの l a ng li ngbond を電子 が 1個 るこ とがテ トラ- ドラ/ レ系 と相違 す る所 である . ところで d 占めている時 のエネルギーは bondを作 っていないのだか ら, l o nepa i r電 子 のエ ネ / レ ギーに近 い と考 え られ るo したが って もし欠陥が d a ng l i ngbond によるものならば , To はテ トラ- ドラル系 , Asや Ge-Asでは ギャ ップの中心付近 に位 置す るのに対 して , カル コゲナイ ド系 では価電子帯 の近 くに位置す る と考 えられ る 。 しか しカル コゲナイ ド 系 や Asでは l onepa i r電子 の存 在 のために U が負 にな ってい る もの と思 われ る 。 Asの onepa i r は 場合 には l S 電子 であ ってエネ/ レギー の低い所 に位 置す るので,果 してカル コゲナイ ド系 と同様 な ことが起 ってい るのか疑 問であるが ,フォ トル ミネ ッセ ンスの大 - 3- 清水立生 きなス トー クス ・シ フ トや光誘起 ES R等 がカ/レコゲナイ ド系 と同様 に 観 測 され るこ と 0 )このよ うに Uが負 になってい る時 には Toとし か ら U が負 にな ってい る と推測 され る4 a ng l i ngbo ndに電子 が 1個 ある時 のエネルギー を用 いるのは妥 当ではな く, U が負 てd にな った メカニズムにまで立 ち入 る必要 がある。た とえば Ka s t ne rらのモデルによれば , C ;が一番 エネルギーが低 いので,欠陥状態 と しては C ; , C; , ciのみ を考 えれば T.は d a n g li n gbo ndではな くC … にあ る一番高 いエネル ギー の電子 中性 の欠陥状態 としては す なわ ち反結合軌道 にある電子 のエネルギ- とな り,伝導帯 の近 くに位 置す ることにな る 。 したが って U が負 であ って も EF は ギャ ップの中央 よ り上 に位 置す る と考 えられ る。 この辺の事情 を Ad l e r -Yo f f aと同様 に大分配 関数 を用 いて も う少 しくわ しく考察 してみ よ うO 今 ,欠陥状態 と して C I O ,c l + ,C 1,C 3 0 ,C 3 + ,C 3 1を考 え ると,それ らの電子数 と エネル ギーは表 1のよ うにな る。 表 1 Ka s t ne r らのモデ′ レによる種 々の欠陥状態 にある カル コゲン元素 の p電子 の数 niとエネルギー Ei 欠 陥状 態 ∩1 . Ei C1 0 4 (Eo- Eb) + 3Eo C1+ 3 (Eo- Eb) + 2Eo Cr 5 (Eo- Eb) + 4Eo+Ul C㌔ 4 3(Eo - Eb)+( Eo+ Eb+△ ) cJ 3 3(Eo- Eb) ここで Eoは n o nb o nd i n g( l o nepa i r ), Eo-Ebは結 合状態 , Eo+Eb+△ は反結合状 態 にある p電子 のエネルギーである 。 反結合状態 は原子軌道 間 の重 な りの効果 で △ だ o nepa i r け結合軌道 のエネルギー の下 り Ebよ りも高 くな るo また Ul と U2 はそれ ぞれ l と反 結合軌道 にあ る電子 間 の クー ロン反 発エネ′ レギーで正の量 である。大分配 関数 Z は 次式 で与 え られ る 。 - 4 - 非晶質半導体の欠陥状態 と伝導の型 Z - 〔∑e (Ei-n EF)/kT No - ( 6) 〕 i ここで N。は欠陥 の数 である 。 欠陥 1個 あた りの平均電子数 n は次 のよ うになる 。 -( Ei -n薄 ) V' kT e ∑ 日. 1 ( 7) n- 苧 ( 禦 誓 )No\∂ kT J T- ∑ e -( E! -ni EF)/kT 1 他 か らの電荷供給 がない とすれば ,電気的中性条件 よ り n- 4であ るか ら, ( 7) 式 で CC ; の状態 n-4 とお いて ,表 1の ni ,Eiを代入すれば EFが求 まるoただ し, ごと 7)式 の和 の中で 2倍 して はス ピンの向 きによって 2重 に縮退 してい るこ とを考慮 して ( C … がC 言よ りもエネルギーが低い ( Eb>△ ) の で , kT が小 さい時 には表 1の状態 の中で C ; , C ; ,C 言のみが効 いて, EF は近 似 的 お く。 _ Ka s t ne rらのモデルによれば に次のよ うにな る。 EF ≡ E。 + Eb 十 を Ul ( 8) 反結合軌道 (伝導帯 )と l onepa i r (価電子帯 )のエネルギーはそれぞれ Eo+Eb+△ >△ ,Ul >0 /2 とな り, Bb と Eoであるか ら,ギャ ップの中心 は Eo+ (Eb+△) であるか ら ( 8)式 で与 え られ る EF はこれ よ りも上 に位置す る。 ここでの議論 ではバ ン ド幅 を無視 してい るが ,幅 を考慮 に入れ て も EF が ギャップの中心 よ りも上 に位 置す る こ とには変 りはない と考 え られ る。 EF が ギャップの中心 よ り上 にあれ ば n 型 になるこ とが期待 され るが ,実験的 にはカル コゲナイ ド系 は p型 である。 そ こで次 に欠陥 の状 態 として Ka s t ne rらのモデル を用 いず に ,St r e e トMot tのモデル を用 いて, D+ は近 くの l o nepa i r電子 と相互作用 はす るが ,完全 な結合 は作 らない と仮 定す る。 そ の結合 のみ に注 目すれば ,完全 な結合 を作 った方がェネルギーは低 くな るが ,そ のよ うな こ とが起 るためには原子 の位 置 の大 きな変位 が必要 であ り,そ のために他 の原子 に無理 が生 じる 可能性 は充分 にあ り得 ることである 。 このよ うなモデル を用 いれ ば , D+と近 くの l one pa i rp・ 電子 との弱 い結合 による結合状感並びに反結合状態 のエネルギーはそれぞれ , 占 E.-E と Eo+E占+A' ( E占<Eb,A'<△)とな るo この場合 には表 2のよ うな 2 原子 か らなる欠陥状態 を考 える必 要 がある 。 表 の中の ( C2-Cl)の点線 は弱 い結合 を 表 す 。また U;は弱 い結合 による反結合軌道 にある電子間 のクー ロン反発 エネル ギー を - 5 - 清水立生 表2 St r e e t -Mot tモデ ルに よる種 々の欠 陥状態 にあ る 2つ の 1 カル コゲ ン元素 の p 電子 の数 niとエ ネル ギー E・ 欠 陥状 態 Ei ni t C 2O +C に対 I ( D ご応 ) 8 7 3( Eo-Eb)+4 +5E. C ( D I C C2 2 ) + 0に対 2 +C -C に対 -C ;1 1 1 応 ) ) + 0) 9 8 7 3( (Eo .-Eb) )+6 )+2 +2 +2 E E E o o . . +2 +( +U 2 ( E 1 E ( o E . + o +E EL E ; + も + A' ) A' )+2( E.-E占) E o b + b 表す o ( 8)式 を導 いた の と同様 な計算 に よって, E'> △ ′な らば C2 +C;, ( C2-Cl ) 0 , ( C2・ ・ ・ Cl) ' のみ が効 いて , EF は次 の よ うにな る。 ( 9) EF 三 Eo・ 鞘 +÷ Ul バ ン ド幅 を無視 すれ ば , ・ 与( E。+△) > Ei ÷Ul ( 10) の時 には, EFは ギ ャ ップの中心 よ り下 に位 置 し, p型 が期待 され る 。St r e e t -Mot tのモ デ′ レが成立す るた めには 2DOよ り D'+D-の方 がェネルギーが低 くな ければ な らず ,そ のた めには 2△ ′ >U l ( -6- l l) 非晶質半導体の欠陥状態と伝導の型 が成立 しなければ な らない。 (1 0)式 と ( ll)式 が共 に成立することは充分 にあ り得 るこ とで ある o この時 の負 の実効的電子相 関エネル ギーは -(2A'-Ul) である O も LE b ' く △′な らば ( C2・ ・ ・ C. ) 0よ りも C2 +C;の方がェわ レギーが低 くな り, I ) 0としては C 2+ c l Oを用 い るこ とになる。そ の場合 は ( ll)式 の △ ′の代 りに E占を用 い ることにな り, 負 の実効的電子相 関エネルギーは -( 2E占IUl)とな る で与 え られ , (1 0)式 の条件 は変 りない 。 o そ の場合 EFはや は り (9 )式 なお結合 の強 さが正常 な結合 の強 さ に等 し く 現 て も ( -Eb,△′-△ ),Ebく△ の場合 には △>Eb+Ul であれば EFはギャップ の 中心 よ り下 に位 置す る 。 テ トラ- ドラ′ レ系 に対 しては電子相 関エネル ギーUは正であ り, Toはギャ ップの中 l e -Yo f T aの議論 がそ のまま適用 され , EF はギャ ッ 心付近 にある と思 われ るので,Ad プの中心 よ り上 に位 置す る可能性 が大 き く,n型 になるこ とが期待 され る。 Asや Ge Asでは Uが負 にな ってい る可能性 があるが,そ の場合 にはカル コゲナイ ド系 につ いて の上述 の考察 と同様 に して EF は n o nb o n d i n g状態 ( l o nep a i r )と反 結 合状態 の間 に位 置 す るこ とが期待 され る 。 Asや Ge -Asでは最上 の価 電子帯 は l o n ep a i rで は な く癌 合 状 態 であるか ら, EFはギャ ップの中心 よ り上 に位 置 し, n型 にな るこ とが予想 され る 。 Ge -S e系 では Geの多い組成 の時 にはテ トラ- ドラ/ レ系 で期待 され る n型 とな り, S e の組 成 の多い時 にはカル コゲナイ ド系 で期待 され る p型 となるこ とが予想 され ,実験結 果 と合致す る 。 §4. 欠陥 と光誘起 ESR 例えば As2 S e 3 のよ うな A sカル コゲナイ ドでは Ka s t n e rらのモデルによれば ,表 1 の欠陥 の他 に Asが関与 した 4配位 As( S電子 を利用 す る )( P4 と記すoPは As ( p n i c t i d e ) を表 し,添字 は配位 数 を表 す 。)が存在 し, ( 2)式 の代 りに次 の反応 + 0-p 4 ++C 1 2 P 4 ( 1 2) が発熱的である とす る。同様 に して非晶質 Asに対 しては, 2 P 4 0- p 4+P + ( 1 3) 2 が期待 され る 。 As2 S e3 において光照射 によって観測 され る光誘起 ESR シ グ ナ ル は Bi s ho pらによれば ,非晶質 Asに対す る光誘起 ESRシグナル と非晶質 Seに対 す る光 -7- 清水立生 4 . ) K a s t ne rらのモデルによれば ,これ らは 誘記 ESR シ グナ ルの重ね合 せであ らわ され る C 3 やC 3 0にある不対電子 は As2 0と 0に よる もののはず であるo ところが P4 0 それ ぞれ P4 Se3 において は,いずれ も Asと Se を結 ぶ反結合軌道 にあるはず で (As -Asや Se -Se 結合 は考 えない ), Asと Seの両方 の原子 の上 に拡 が ってお り, Asの核 との超微細相 互作用 による ESR シ グナルの幅 の拡 が り (実際 ,非晶質 Asの光誘起 ESR シ グナルは 非晶質 Seに対す る もの と異 り,幅 の大 きな拡 が りが見 られ る。 Seでは大部分 の核 が ス ピンを持 たないので,このよ うな相 互作用 に よる幅 の拡 が りはない 。)が観測 され るは ず で ある。 しか し, Bi s ho pらによれ ば ,幅 のせ まい シ グナル (Se)と幅 の広 い シグナル ( As)を重ね合せ た ものが観測 され てお り,このよ うな Ka s t ne rらのモ デ ル と矛 盾 す る よ うに思 われ る。また , Bi s hopらに よれ ば非晶質 Asの光誘起 ESR の幅 よ り不対 電 子 o軽度 と見積 られてい る 。 しか るに 4配 位 の は主 として p 電子 で , S軌道 の湿 りは 5% p4 0 の反結合軌道 には もっと大 きな S軌道 の混 りが期待 され る ( P4は s p3混成 に よっ て 4配位 とな ってい る )0 o nepa i rと弱い結合 を してい る としたSt r e e t これ に対 して前節で述 べた D'が近 くの l C ( Asの da ng li ngbo nd)となるoこのよ うな欠陥 C 1 0や P 2 0はそれ ぞれ Seや As原子 V , ) 2 0の不対 電子 - の 軌道 の混 りも小 さい As 2Se において 上 にのみ局在す るoまた P Mot tモ デルで Eム <△′̀とすれば ,中性状態 にある欠陥 は 3 0や P4 0ではな く C1 0とP2 0 S o 3 は 中性状態 の欠陥 と LSeの da ng l i ngbo nd CI Oと Asの d a ng l ngbo i ndp2 0が存在す る と すれば ,上述 の Bi s hopらの実験結果 と一致す る 。 そ して通常 はそれ ぞれ表 2の記法 を 用 いれば次 のよ うな よ り安定 な荷電状態 になってい る。 2( P3 0+cl Oh ( p3・・・ Cl ) '+ (P3 0 +C;) ( 1 4) ( C20+cl -) ( 1 5) 又 は, 2( C2 0+C: )- ( C2・ ・ ・ Cl)I+ 並 びに, 2( C2 0+p2 0)- (C2・ ・ ・ P2) I+( C2 O+p2 -) ( 1 6) また非晶質 Asにおいては次 のよ うにな る 。 2( P3 0+p 2 0)- ( p3・ ・ ・ P2) ++ ( P3 0+ p2 -) ( 1 7) (1 4),( 1 5),(1 6),(1 7)式 中の弱 い結合 (-・ ・ ・) が 正常な結合 の時 にはそれ らはそれ - 8 - 非晶質半導体の欠陥状態 と伝導の型 ぞれ 次 のよ うにな る 。 p4 ++ C1 ( 1 8) 2C1 O - C3 + +C 1 ( 1 9) 2P2 0 - C3 ++P2 1 ( 2 0) 2P2 0 - p4 + + P2 ( 21) 2C1 O- §5. お わ りに 以上 の結果 に よ り,カ/ レコゲナイ ド非晶質半導体 にお ける欠 陥 は, 中性 状 態 で は da ng l i ngbondではな く Seでは 3配位 , Asでは 4配位 とな ってい る とい う Ka s t ne rら のモデル は実験 と矛盾 す るこ とが分 る 。 中性状態 では欠 陥はそれ ぞれ 1配位 と 2配位 の da ng l i ngbondにな ってお り,よ り安定 な荷電状 感 では D十が近 くの l onepa i r電子 と弱 r e e t -Mot tのモデル (かれ らは結合 の強 さについてはあま りは い結合 を してい る と した St っき りした こ とを述 べ ていない )が妥 当 である と考 え られ る.そ してそ の癖合 , EF は ギャ ップの中心 よ り下 に位 置 し, p型 になるこ とが期待 され実験 店巣 と合致す る 。 本論文 で の議論 は大変 あ らっぽ い ものであ り,伝導 の型 が種 々 の組成 で どのよ うに変 るかは理 論的 に も実験 的 に も今後 もっ と くわ しい研究 が必要 である と思 われ るcLか し 大約 の傾 向 と しては最上 の価電子帯 が結合状態 か l onepa i rか に よって n型 か p 型 かが 決 ってい るよ うに思 われ る。 参 考 文 献 1 ) 清水立生 :日本物理学会誌 32 ( 1 977)No. 5 (予定 )0 2) R.A.St r e e ta ndN.F.Mot t : Phys .Re v.Le t t e r s35 ( 1 975)1 293. 3) M.Ka s t ne r ,D.Adl e ra ndH.Fr i t z s c he: Phys .Re v.Le t t e r s35 ( 1 976)1 504. 4) D.Adl e ra ndE.J .Yof r a: Phys .Re v.Le t t e r s36( 1 976)11 97. r om a ndP.C.Ta yl or :Phys .Re v.Le t t e r s34( 1 975)1 3 46; Phys .Re v. S.G.Bi s hop,U.St Le t t er s36( 1 976)543;Sol i d St a t eCommun.1 8( 1 976)573. 1 976)11 97. 5) D.Adl e ra nd E.J .Yof f a . I Phys .Re v.Le t t e r s36 ( e ct r oni c Pr oc e s s e s i n NonCr ys t al l i ne Mat e r i al s 6) N.F.Mot ta nd E.A.Da v i s :El ( Cl a r e ndonPr e s s ,Oxf わr d,1 971 )p. 329. -9- 清水立生 7) W・E・Spea ra ndP・G.L e Comber : Phi l .Ma g.33 ( 1 976)935. 8) E・A・Da vi sa nd G・N・Gr e a ve s : Pr oc・I nt e r n・Conr ・Amor phousa ndLi qui dSe mi , Le hi ng r a d, 1 975,El ect r oni c Phe nomena I n NonCr ys t al l i ne Semi c onc onduc t or s duct or s ,e d・B.T.Kol omi e t s( Na uka,L e ni ng r a d,1 976)p. 21 2. ht g s : Phi l .Ma g.3 4( 1 976)663. 9) J .C.Kni nderPl a sa ndR.H.Bube :∫ .a ppl . Phys . 46 1 0) C.∫ .Par k,∫ .E.Ma ha n,R.S hi a n,H.A.Va ( 1 975)5307. ll ) T.T.Na ng,M.Okuda,T.Ma t s us hi t a,S.Yokot aa ndA・Suz uki :J a pa n・J・a ppl ・P hys ・1 5 ( 1 976)849. -10-