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若者における満足度の高い衝動買いの解明

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若者における満足度の高い衝動買いの解明
若者における満足度の高い衝動買いの解明
~衝動買い後の満足度の変化に焦点を当てて~
目次
① はじめに
1.研究動機
2.研究目的
3.衝動買いの定義付け
② 現状分析
1.若者の衝動買い
2.プレ調査
③ 既存研究
2.既存研究のレビュー
3.既存研究からの考察
④ 仮説設定
⑤ 仮説検証-本調査
1.検証方法
2.因子分析
3.クラスター分析
4.因子得点の比較
⑥ 検証結果考察
⑦ 今後の展望
参考文献
補録
石倉令奈 大棟啓子
近藤克彦 平山裕大
横内慶子
①―――はじめに
買いを誘発させるアプローチの解明」を本研究のテーマと
する。
1.研究動機
現在の日本では、安倍首相が表明し、世界中から注目を
※ここで言う「使用後」とは、衝動買いした商品を初めて
浴びている経済政策であるアベノミクスにより僅かに景
使用したときを意味している。また、本研究では、購入者
気が上向いているとはいえ、依然として私たち消費者が好
と使用者が同一であることを前提とする。
景気を実感することはほとんどない。すなわち日本は未だ
不景気の中にあるのである。そのような環境下では節約志
向が高まるのは皆が百も承知の事実である。けれども衝動
買いを行っている人は数多く存在する。調べていく中で、
2.研究目的
若者の衝動買いメカニズムという消費者行動を研究す
若者が他の年代に比べて最も多く衝動買いを行っている
ることは、企業のマーケティングにおいて意義があると私
という傾向があることに私たちは気付いた。他の世代と比
たちは考える。
較し、所得が少ないであろう若者がなぜ衝動買いを行う頻
また、アメリカでは60 年近く前から、日本でも30 年以
度が多いのであろうか。そのため、我々は衝動買いの中で
上前から衝動購買はマーケティングにおける重要なテー
も若者の衝動買いに興味を持った。
マとして注目されてきたが、衝衝動買い後の満足度の変化
また、若者に属する大学生である私たちは以下のような
衝動買いの経験を実際にしたことがあった。
所持している金銭が少なく必要性はないにも関わらず、
に着目した研究は大変少ないため、そこに焦点を当てて若
者がどういった衝動買いをしているのかを本研究で明ら
かにしていきたい。
コンビニエンスストアでポップ広告に惹かれ飲んだこと
のないジュースを衝動買いしてしまった。購入した直後は、
3.衝動買いの定義付け
新しいジュースを飲むことができるということで、ジュー
(「衝動買い」と「非計画購買」)
スに対しての評価は非常に高かった。けれども実際にジュ
私たちは「衝動買い」という漠然とした言葉を定義する
ースを飲んでみたところ、自身の口には合わず、ジュース
ために、まず「衝動買い」が歴史的にどのようにとらえら
に対する評価は飲む前と比較して低くなってしまったと
れてきたのかを調べた。以下がその内容になる。
同時に衝動買いをしてしまった自身の過去の行為を深く
過去 50年の間、衝動買いについての調査の焦点は多く
後悔した経験がある。だが一方、洋服店で割引されている
の変化を経てきた。初期の衝動買いについての調査では
コートを見て、全く購入する予定がなかったにも関わらず
「衝動買い」と「非計画購買」は同義語として用いられてお
購入してしまったことがあった。しかしコートに対する評
り、入店前には購入の意思を持たない消費者が店舗内で購
価はジュースの時とは異なり、使用後はよりコートに対し
買意思を持ち、商品を購入することが衝動買いであると定
ての評価が高まり、購入して良かったと思うことがあった。
義されていた。
これらの経験から衝動買い直後の満足度が高くても、使
その後、商品自体が衝動買いを引き起こす要因であると
用後に満足度が引き続き高くなるか、もしくは低くなるか
いう考えを経て、研究者の関心は消費者自身に向けられる
の違いがあることがわかった。そこで衝動買い直後は購買
ことになった。
に対する満足であるが、使用後は商品に対する満足である、
という違いに着目した。
『衝動的な消費の経験は、製品によるものではなく個人
によるものである』(Rook and Hoch,1985)という考え方が
私たちは衝動買い直後と使用後の両方の満足度をみて
最近の衝動買いに対する見方である。そして、消費者が突
総合的に「満足度の高い衝動買い」と考える。そのため、
然強力な衝動を体験し、その場で購入するということが衝
2 つの満足度に焦点を当てて、
「若者に満足度の高い衝動
動買いである(Beatty and Ferrell 1998;Piron 1991;Rook
1987)と定義されている。
最近では、自己抑制(自制心)が衝動買いに関係あるとい
何 か を 削 る こ と が で き る 」と い っ た 項 目 が 比 較 的 高
く 、若 者 が 消 費 に ポ ジ テ ィ ブ な 傾 向 が 伺 え る 。また、
う意見があり、人間の衝動性と自己抑制を基に衝動買いが
「ものを買う時には、機能よりもデザインを重視する」
「ピ
調査されている。
ンとくる・こないという感覚で判断して決めることが多い」
という回答が約 4 割も存在しており、感 性 と 直 感 を 重 視
これらの先行研究を受け、本研究では衝動買いを「事前
に買う予定がなかったものを、突然の抑えきれない購買衝
動により買ってしまうこと」と定義する。
し た 消 費 の 意 思 決 定 が 若 者 に 特 徴 的 と 言 え る 。( 図
表 2 参照)
こ の よ う な 点 か ら 見 て も 、「 若 者 が 他 の 年 代 に 比
べ て 衝 動 買 い を し や す い 」と 言 え る と 私 た ち は 考 え
る。
②―――現状分析
■図表―――2___________________
1.若者の衝動買い
消費行動を年齢別にみると、「実際に現物を見て商品を確
若者に特徴的な消費項目(生活定点調査 生活総研
博報
堂)2008 年
認してから購入する」「多少高くても品質の良いものを選ぶ」
「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」は大きな差は
みられないが、「新しい物好き」「衝動買いをする」は若年層の
割合が高い。(図表1参照)
20代男女 30-54歳男性 30-54歳女性 55-69歳男女
値段が高くても、気に入れば買ってしまう方だ
53.2
40.7
42.3
41.2
欲しい物のためには今の生活の何かを削ることができる方だ
58.2
50.6
46.1
40.7
物を買うときは機能よりもデザインを重視する
41.8
20.3
23.7
10.7
ピンとくる・こないという感覚で判断して決めることが多い
38.7
27.3
28.6
17.6
■図表―――1___________________
年齢別消費者行動(消費者意識基本調査 消費者庁)平成25年7
月
2.プレ調査
大学生の衝動買いの実態をつかむために、まず 37 人で
の少人数のプレ調査を行った。以下の図表 3 は調査概要で
ある。
(1)調査概要
■図表―――3___________________
プレ調査の概要
また、Wood(1998)は、若者の中でも「大学中退や在学
中の人に衝動購買が多いこと」を指摘している。そのため、
私たちは若者の中でも大学生をターゲットとしたいと思
対象
10 代~20 代の大学生男女 37 名
調査期間
2013 年 10 月 1 日
実施方法
紙媒体・選択、自由記述形式
実施目的
大学生の衝動買いの実態のおおまか
な特徴、傾向を理解し、本調査に繋げ
う。
ていく
それでは、若者がどのような特徴的な消費傾向を持って
いるのかを詳しく見ていく。博報堂生活総合研究所の生活
定点調査によると、「 値 段 が 高 く て も 、気 に 入 れ ば 買
っ て し ま う 」、「 欲 し い も の の た め に は 今 の 生 活 の
質問内容
①あなたは、普段衝動買いをどのくら
いしますか。
②あなたが最近衝動買いしたものを
思い浮かべてください。
衝動買いをしやすい人は大半を占めることは無かったが、
Ⅰ.その商品を教えてください。
少なくとも半分以上いることがこの結果から分かった。ど
Ⅱ.その商品を衝動買いした理由はな
ちらともいえないも衝動買いをある程度はするというこ
んですか。
とを推測出来ることから、多くの学生は日常生活において
Ⅲ.衝動買い直後の感情はどのような
衝動買いをするということが読み取れる。
ものですか。
②あなたが最近衝動買いしたものを思い浮かべてくださ
い。
Ⅰ.その商品を教えてください。
(2)結果と考察
この質問は調査対象の学生がどういった商品を衝動
①あなたは、普段衝動買いをどのくらいしますか。
この衝動買いの頻度を問う質問では 5 段階評価のもと
買いしたかを記述するもので、一人複数選ぶことが出来る。
で、右の図表 4 と図表 5 のような結果が得られた。
以下の図表 6 が結果を示したものである。
■図表―――4__________________
■図表―――6__________________
衝動買いの頻度①
大学生が衝動買いをした商品
衣服
16
4
お菓子
11
6
15
本
7
3
2
5
時計
5
少ない
4
5
9
ゲーム
4
非常に少ない
3
1
4
CD
3
雑貨
3
パソコン
2
衝動買いの頻度
男
女
TOTAL
非常に多い
3
1
まあまあ多い
9
どちらともいえない
結果の考察に入る前に、まず分類を行いたいと思う。選
択項目の「非常に多い」と「まあまあ多い」を選んだ人を
「衝動買いをしやすい人」
、
「少ない」
、
「非常に少ない」を
選んだ人を「衝動買いをしにくい人」とする。以下の図表
この結果から、衣服とお菓子が大学生にとって衝動買い
がこの分類をした後の分布を円グラフでまとめたもので
の対象になりやすいということが読み取ることができる。
ある。
ではなぜそういった結果になったのか考察していこうと
■図表―――5___________________
思う。
衝動買いの頻度②
衣服とお菓子の共通点には種類の多さ、そして売られて
いる場所が非常に多いということがある。衣服はブランド
の数ももちろん、今ではスーパーやデパート、駅の中でも
売っていて、消費者の目につきやすい。お菓子も同様で、
かつ安いので手が出やすい。他にリストにある商品は売ら
れている場所が限定されていることが、衝動買いの対象に
なることが少ないと考えられる。
以上より、本調査では「衣服とお菓子」に限定してみて
いく。
Ⅱ.その商品を衝動買いした理由は何ですか。
この質問は若い大学生がどういった理由で商品を衝動
5 つに分け、ネガティブな感情は「買っちゃった」
・
「少し
後悔・不安」の 2 つに分けた。
購買したかを検証する為のものである。ここから得られた
■図表―――8_________________
理由を本調査の衝動買いの要因として採用していく。例と
衝動買い直後の感情
していくつかピックアップしていく。
安い
割引
ポジティブ
ご褒美
一目ぼれ
期間限定
新商品
ストレス発散 広告に惹かれて
勧められて
プレ調査の結果、私たちのヒアリング、文献を合わせ、
本調査で以下の項目を衝動買いをした理由の項目として
テンションが上がる
5
満足感・幸せ・嬉しい・達成感
18
安心する
2
スッキリする
5
早く使いたい・食べたい
14
扱う。
(図表 7)
44
ネガティブ
■図表―――7_________________
人数
買っちゃった
6
少し後悔・不安
5
「衝動買いした理由」の項目
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
人数
11
ストレス発散したかったから
自分を元気づけるため
頑張った自分へのご褒美のため
この表から分かることは、衝動買いをした直後の感情と
自分にとって特別な日だったから
テンションが上がっていたから
して一番多く挙げられたのが満足感であることだ。多くの
お金を使いたい気分になったから
見た目に惹かれたから
学生は商品を買った直後は嬉しかったり、満足している状
今買わないともうこの商品には出会えないと思ったから
残りわずかだったから
態にあるということになる。次に多かったのが、その商品
流行っていたから
人気商品だったから
限定品・期間限定品だったから
新商品だったから
価格が安かったから
を早く使いたい・食べたいといったワクワク感を表す感情
である。全体的に見ても衝動買いした直後の感情としては、
ポジティブな感情が 44 人、
ネガティブな感情が 11 人と、
80%の学生が良い感情がもっている。しかし詳しく見てみ
割引されていたから
ほかの商品を買ったついでだったから
ると、商品を買ってしまったことにより後悔するような感
店員に薦められたから
友達が薦めていたから
情を持つ学生が購入した商品が最も多かったのは、意外に
広告・POPに引き付けられたから
キャンペーンをやっていたから
も最も衝動買いの頻度が高かった衣服である。11人の回
答の内、半数が衣服を衝動買いした時の感情である。
では、次に先程分類した「衝動買いをしやすい人」と「衝
動買いをしにくい人」で別々にポジティブとネガティブの
Ⅲ.衝動買い直後の感情はどのようなものですか。
この質問は大学生がそれぞれの商品を衝動買いをした
直後の感情を記述式で回答を求めたものである。ここから
感情の比率を図表 9 にて比較したいと思う。
■図表―――9_________________
衝動買いをしやすい人、しにくい人の直後の感情の割合
得られた回答を図表 8 のようにいくつかの項目に分けて、
その感情がポジティブなものかネガティブなものか、そし
衝動買いをしやすい人の直後の感情 (満足度)割合:
てその感情に対する人数を計算した。ポジティブな感情は
ポジティブ:20/22=90%
「テンションが上がる」
・
「満足感・幸せ・嬉しい・達成感」
・
ネガティブ:2/22=10%
「安心」
・
「スッキリする」
・
「早く使いたい・食べたい」の
衝動買いをしにくい人の割合直後の感情 (満足度)割合:
ポジティブ 17/26=65%
ネガティブ 9/26=35%
この結果から分かることは、衝動買いをしやすい人の直
●Ramanathan and Williams(2007)の研究
後の感情は基本的に良いということである。しかし衝動買
衝動的選択後の消費者の感情について検討している研
いをしにくい人の満足度は衝動買いをしやすい人と比べ
究である。彼らは感情をポジティブな快楽的感情(fun,
るとポジティブな感情を持った学生が少ないことが伺え
happy など)
,ネガティブな快楽的感情(depressed, angry
る。まだプレ調査の段階なので断定は出来ないが、衝動買
など)
,ポジティブな自己意識感情(proud, confident な
いをあまりしない学生は衝動買い直後にあまり満足度が
ど)
,ネガティブな自己意識感情(guilty, regretful な
高くない、ゆえに衝動買いの頻度が次第に減っていくとい
ど)に分類した上で,衝動的選択直後と 1 日後の消費者
うもが現状なのではないかと推測を立てることが出来る。
がどのような感情を保持しているかを消費者の衝動購買
傾向別に分析した。分析の結果,衝動購買傾向が高い消費
このプレ調査で大学生の衝動買いの現状について分か
者も低い消費者も,衝動的選択をした直後にはポジティブ
ったことをまとめる。
な快楽的感情とネガティブな快楽的感情を有するが,衝動
・衝動買いは頻繁に行われている
購買傾向の低い消費者は同時にネガティブな自己意識感
・衝動買いの対象になりやすい商品は衣服やお菓子である
情を有することが明らかとなった。また,衝動購買傾向の
・多くの学生は衝動買い後の直後の感情はポジティブであ
低い消費者は衝動的選択から 1 日経過するとポジティブ
る
な快楽的感情が弱まり,ネガティブな反応が主になるのに
・衝動買いをしやすい学生と衝動買いをしにくい学生では
対し,衝動購買傾向の高い消費者はネガティブな快楽的感
直後の満足度が異なる―衝動買いをしにくい学生は満足
情が弱まり,ポジティブな反応が主になる。こうした衝動
度が高い割合が少ない
的選択は次回の選択にも影響するという。
2.既存研究の考察
③―――既存研究
プレ調査で「若者の衝動買いの実態」をつかむことがで
これらの既存研究から、衝動買い直後の感情は非常に明
るいが、その商品を実際に使ったりするなど購買してから
きたが、衝動買い後の満足度の変化については特徴をつか
時間が経過すると、感情はが変化することが読み取れる。
むことができなかった。そのため、本調査に移る前に「衝
衝動買い直後と使用後の満足度で消費者をセグメントし、
動買い後の反応に着目した既存研究」について見ていく。
その変化を見て、それぞれのセグメントがどのような衝動
買いを行っているのかをみていく。
1.既存研究レビュー
我々の研究は衝動買い後の感情に着目するため、衝動買
い後の反応を捉えた先行研究を調べた。以下、2つの先行
研究に触れたいと思う。
●Gardner and Rock (1988)の研究
④―――仮説設定
以上のプレ調査、
既存研究を受け以下のように仮説を設
定する。
衝動買い後の感情や気分に注目した研究である。彼らの
調査の結果を見てみると,ほとんどの消費者が衝動購買に
仮説1:学生の大半が衣服とお菓子の衝動買いを経験して
よって気分が明るくなったと答えており,喜び(pleasure),
いる
興奮(excitement)
,満足した/くつろいだ
仮説2:衝動買い直後の満足度は、非常に高くなりやすい
(content/relaxed)などといった気分が多く報告されて
いる。
仮説 3:衝動買いの頻度が高い人ほど衝動買い直後・使用
後共に満足度が高くなる
→因子得点の比較で検証
仮説 4:衣服とお菓子で衝動買いする際に重要視する要素
に差が出る
また、因子分析に移る前に前提条件となる仮説1が立証
されるかどうかをまず確かめておく。
仮説 5:衝動買い後の満足度の変化の違いによって、衝動
まず衣服について。
買いを引き起こした要因に差異が見られる。
調査人数 132 人中、衣服の衝動買いを全くしたことが
ないと答えた人は 37 人で、132 人中 95 人(72%)の人
が頻度にかかわらず衣服の衝動買いをしていることが分
⑤仮説検証―本調査
かった。
次にお菓子について。
調査人数 132 人中、お菓子の衝動買いを全くしたこと
1.検証方法
まず、衣服およびお菓子を衝動買いする人を全体でそれ
がないと答えた人は 23 人で、132 人中 109 人(83%)の
ぞれ因子分析を行う。そして因子を導き出す。次にクラス
人が頻度にかかわらずお菓子の衝動買いをしていること
ター分析を行うことで衣服およびお菓子を衝動買いする
が分かった。
人を、衝動買い直後および使用後の満足度の 2 つの軸によ
これらの結果から、仮説1は立証された。
りセグメントする。最後にクラスター分析の結果出てきた
それでは、1.で示した通り因子分析から順に行ってい
セグメントごとに因子得点を集計することでそれぞれの
く。
セグメントで重要視されている因子を探る、という流れで
ある。
2.因子分析
また、④で立てた仮説を上記のどの分析で検証するのか
因子分析とは、多変量データにおいて共通因子を見つけ
を以下に示しておく。
出す手法である。まずここでは衣服の衝動買いに対する共
仮説1:学生の大半がお菓子と衣服の衝動買いを経験して
通因子を探るべく、分析を行っていく。
いる
→それぞれの「衝動買いしたことある人の割合」で検証
(1)衣服
〈調査概要〉
仮説2:衝動買い直後の満足度は、非常に高くなりやすい
調査形式:アンケート形式(無料のネット調査と大学内で
→クラスター分析で検証
の紙調査)
調査対象:18~22 までの男女
仮説 3:衝動買いの頻度が高い人ほど衝動買い直後・使用
調査全体人数:132 人(うち男 65 人、女 67 人)
後共に満足度が高くなる
有効回答数(衣服の衝動買いをしている人)
:132 人中 95
→クラスター分析で検証
人
調査期間:2013 年 10 月7日~10 月 16 日
仮説 4:衣服とお菓子で衝動買いする際に重要視する要素
調査目的:衣服を衝動買いする人の中で満足度を従属変数
に差が出る
とし、様々な要因を独立変数として挙げ、それらから共通
→因子得点の比較で検証
因子を探していく。
仮説 5:衝動買い後の満足度の変化の違いによって、衝動
〈調査内容〉
買いを引き起こした要因に差異が見られる。
5 点尺度法を用いてアンケートを行った。質問項目はプレ
調査で定めた以下の 20 項目である。
■図表―――10________________
衝動買いした理由
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
残りわずかだったから
.705
.623
流行っていたから
.791
.719
人気商品だったから
.796
.813
.713
.653
限定品期間限定品だった
ストレス発散したかったから
から
自分を元気づけるため
頑張った自分へのご褒美のため
新商品だったから
.742
.634
自分にとって特別な日だったから
テンションが上がっていたから
価格が安かったから
.742
.701
お金を使いたい気分になったから
見た目に惹かれたから
割引されていたから
.697
.692
.481
.418
店員に薦められたから
.678
.558
友達が薦めていたから
.663
.562
.817
.745
.710
.638
今買わないともうこの商品には出会えないと思ったから
残りわずかだったから
流行っていたから
人気商品だったから
限定品・期間限定品だったから
ほかの商品を買ったつい
でだったから
新商品だったから
価格が安かったから
広告に引き付けられたか
割引されていたから
ほかの商品を買ったついでだったから
ら
店員に薦められたから
友達が薦めていたから
キャンペーン
因子抽出法: 主因子法
広告・POPに引き付けられたから
キャンペーンをやっていたから
表 11 は共通性の結果の表である。共通性の低い因子(共
〈分析結果〉
通性が 0.4 以下のもの)を取り除こうと思ったが今回はそ
■図表―――11
れが出なかったので分析を続行する。分散の合計では 4 つ
の因子が出てきて、それらの因子で約 46%が説明できる
共通性
という結果が出た。スクリープロットの結果からは固有値
初期
因子抽出後
.677
.617
.795
.967
.736
.631
.691
.549
.549
.574
.569
.555
.602
.629
品には出会えないと思っ .612
.507
ストレス発散したかった
から
自分を元気づけるため
頑張った自分へのご褒美
のため
自分にとって特別な日だ
ったから
テンションが上がってい
たから
お金を使いたい気分にな
ったから
見た目に惹かれたから
効であるということが分かった。以上の結果より因子は 4
つ出てきたことが分かった。なので次に回転後の因子行列
の表からそれぞれの項目を 4 つの因子にまとめる作業に
入る。
今買わないともうこの商
たから
が 1 以上の因子を採用しようと考えたとき 4 つの因子が有
■図表―――12
頑張った自分への
.279
.388
.628
.095
流行っていたから .552
.253
.098
.583
.353
.117
.278
.582
.161
.211
.472
.530
ご褒美のため
回転後の因子行列 a
広告に引き付けら
れたから
キャンペーン
限定品期間限定品
だったから
友達が薦めていた
から
因子
お金を使いたい気
1
分になったから
から
人気商品だったか
ら
自分にとって特別
な日だったから
3
4
テンションが上が
.822
.068
.211
.138
っていたから
.774
.167
.106
.015
因子抽出法: 主因子法
.737
.079
.246
.207
.725
-.079
.141
.097
.111
.189
.277
.698
.046
.207
.159
.673
.134
.132
.570
.633
.167
.318
.137
回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
新商品だったから .714
店員に薦められた
2
ら
見た目に惹かれた
から
えないと思ったか
-.001
.004
.361
から
自分を元気づける
ため
ストレス発散した
かったから
因子」と名付けた。主に周りからの影響を受けての行動が
ったから、割引されていたから、見た目に惹かれたから、
今買わないともうこの商品には出会えないと思ったから、
残りわずかだったから、の 5 つである。これらを「今だけ
.041
.830
.058
.084
.083
.820
.096
-.058
.014
.780
.102
.099
因子」と名付けた。今だけの低価格、今だけしか出会えな
い、などのような要素が強かったのでこのように名付けた。
3 つ目の因子が自分を元気づけるため、ストレス発散した
かったから、頑張った自分へのご褒美のため、の 3 つであ
る。これらを「自己投資因子」と名付けた。その名の通り、
自分に投資するために購買するという特徴がみられた。4
つ目の因子が流行っていたから、お金を使いたい気分にな
.051
.614
.293
.203
ったから、テンションが上がっていたから、の 3 つである。
これらを「衝動因子」と名付けた。衝動的なその場の感情
ら
残りわずかだった
分にとって特別な日だったから、ほかの商品を買ったつい
多いのでこのように名付けた。2 つ目の因子が価格が安か
今買わないともう
この商品には出会
間限定品だったから、友達が薦めていたから、新商品だっ
でだったから、の 9 つである。私たちはこれらを「流され
ら
割引されていたか
ら 4 つの因子が抽出された。1 つ目の因子が広告に引き付
たから、店員に薦められたから、人気商品だったから、自
たついでだったか .537
ら
表 12 は回転後の因子行列のグラフであり、この結果か
けられたから、キャンペーンをしていたから、限定品・期
ほかの商品を買っ
価格が安かったか
a. 6 回の反復で回転が収束しました。
においての行動が多いのでこのように名付けた。
.265
.566
.290
.385
.262
.202
.916
.136
.380
.127
.636
.228
(2)お菓子・スイーツ
続いて、お菓子・スイーツの因子分析を行っていく。
調査概要、調査内容は衣服と同様なので省略する。
有効回答数(お菓子の衝動買いをしている人)
:132 人
図表 13 は共通性の結果である。共通性の低い因子(共
通性が 0.4 以下のもの)は「
「ストレス発散したかったか
ら」のみだったため、この項目を除いてもう一度共通性を
中 109 人
探った。
(分析結果)
■図表―――14
■図表―――13
共通性
初期
共通性
自分を元気づけるため
初期
.461
.435
.536
.547
.576
.488
.554
.613
.491
.515
.502
.473
.676
.835
残りわずかだったから
.664
.690
流行っていたから
.697
.672
.653
.610
.687
.805
因子抽出後
頑張った自分へのご褒美の
ストレス発散したかったから .464
.353
ため
.561
.555
自分にとって特別な日だっ
自分を元気づけるため
頑張った自分へのご褒美のた
め
自分にとって特別な日だった
から
テンションが上がっていたか
.536
.576
.578
.473
因子抽出後
たから
テンションが上がっていた
から
お金を使いたい気分になっ
たから
.555
.515
.497
.444
.506
.472
.681
.871
残りわずかだったから
.664
.677
人気商品だったから
流行っていたから
.697
.676
限定品期間限定品だったか
人気商品だったから
.659
.620
ら
限定品期間限定品だったから .688
.797
新商品だったから
.687
.748
新商品だったから
.687
.754
価格が安かったから
.624
.765
価格が安かったから
.629
.770
割引されていたから
.605
.698
割引されていたから
.606
.687
ほかの商品を買ったついで
.481
.415
店員に薦められたから
.672
.678
ら
お金を使いたい気分になった
から
見た目に惹かれたから
今買わないともうこの商品に
は出会えないと思ったから
ほかの商品を買ったついでだ
見た目に惹かれたから
今買わないともうこの商品
には出会えないと思ったか
ら
だったから
.483
.420
店員に薦められたから
.677
.678
友達が薦めていたから
.691
.612
友達が薦めていたから
.716
.602
広告に引き付けられたから
.699
.730
広告に引き付けられたから
.705
.719
キャンペーン
.704
.684
キャンペーン
.718
.679
因子抽出法: 主因子法
ったから
因子抽出法: 主因子法
共通性は全て 0.4 以上であったため、こちらの 19 項目
を採用して因子分析を行った。
見た目に惹かれ
分散の合計およびスクリープロットの結果より因子は
たから
4 つ出てきたことが分かった。
今買わないとも
■図表―――15
うこの商品には
出会えないと思
回転後の因子行列a
広告に引き付け
られたから
流行っていたか
ら
キャンペーン
友達が薦めてい
たから
店員に薦められ
たから
人気商品だった
から
2
3
残りわずかだっ
4
5
.202
.125
.058
.086
から
割引されていた
.456
.224
.427
.275
.034
.261
.826
.086
.378
.116
.190
.704
.054
.034
.230
.126 -.025
.833
.182
.137
.110
.793
.718
.165
.085
.347
.043
から
.692
.196
.290
.257
.125
因子抽出法: 主因子法
.690
.261
.094
.241
.040
.661
.106 -.030
.473 -.071
.643
.260
.128
.074
回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
a. 7 回の反復で回転が収束しました。
図表 15 は回転後の因子行列を表しており、この結果か
ら5つの因子が抽出された。
.332
.048
1 つ目の因子が「広告に引き付けられたから」
、
「流行っ
ていたから」
「キャンペーンをしていたから」
「友達が勧め
ほかの商品を買
ったついでだっ
たから
価格が安かった
.814
.179
ったから
因子
1
.017
.581
.164
.125
.048
.179
ていたから」
「店員に薦められたから」
「人気商品だったか
たから
ら」
「ほかの商品を買ったついでだから」の 7 つである。
テンションが上
私たちはこれらを「流され因子」と名付けた。主に周りか
がっていたから
頑張った自分へ
のご褒美のため
.149
.725
.219
.042
.123
2 つ目の因子が「テンションが上がっていたから」「頑
.193
.632
.307 -.011
.126
.305
.563 -.075
.293
.116
るため
るという特徴がみられた。
.233
.561
.157
.005
.203
.456
.463
.113
.160
.167
品だったから
新商品だったか
ら
らを新奇性因子と名付けた。期間限定品・新商品という要
因が強く働いていたのでこのように名付けた。
ら
限定品期間限定
3 つ目の因子は「限定品・期間限定品だったから」「新
商品だったから」
「見た目に惹かれたから」である。これ
自分にとって特
別な日だったか
日だったから」の5つである。これらを「自己投資因子」
と名付けた。その名の通り、自分に投資するために購買す
ら
自分を元気づけ
張った自分へのご褒美のため」
「お金を使いたい気分にな
ったから」
「自分を元気づけるため」
「自分にとって特別な
お金を使いたい
気分になったか
らの影響を受けての行動が多いのでこのように名付けた。
5 つ目は「今買わないともうこの商品には出会えないと
.234
.204
.814
.125
.174
思ったから」
「残りわずかだったから」の 2 つである。今
だけしか出会えないという要素が強かったのでこのよう
.285
.295
.715
.238
.107
に名付けた。
6 つ目の因子は「価格が安かったから」「割引されていた
■図表―――16
から」の 2 つである。これらを「お得感因子」と名付けた。
相対的な値段の安さが消費者にお得感を感じさせている
「衣服」のデンドログラム
と考え、このように名付けた。
3、クラスター分析
衝動買い直後と使用後の満足度がどのように変化して
いるのかをとらえるために、私たちは衣服・お菓子それぞ
れでクラスター分析を行った。
クラスター分析とは、異なる性質のものが混ざりあって
いる集団の中から互いに似たものを集めて集落(クラスタ
ー)を作り、対象をセグメントごとに分類しようという方
法を総称したものである。
グループ(クラスター)の作り方には、代表的に「平均
図表 17 は、クラスター分析の結果を散布図にしたもの
連結法」
「完全連結法」「Ward 法」の3つの方法がある。
である。
一般的には「Ward 法」を用いるが、グループが小さくな
■図表―――17
りすぎること、むやみに大きくなることを避けたかったた
め、今回は「完全連結法」を用いる。
(1)
クラスター分析結果(衣服)
衣服のクラスター分析
〈調査概要〉
調査形式:アンケート形式(無料のネット調査と大学内で
の紙調査)
調査対象:18~22 歳までの男女
調査人数:132 人(うち男:65 人、女:67 人)
調査期間:2013 年
10 月 7 日~10 月 16 日
有効回答数(衣服の衝動買いをしている人)
:132 人中 109
人
調査目的:衣服の衝動買いに対する満足度が類似している
グループでセグメントを分けるため。
この表の中で右上のグループを第 1 グループとし、左下
のグループを第 2 グループとし、右下のグループを第 3
〈分析結果〉
グループとする。第 1 グループについて、ここは衝動買い
衝動買い直後と使用後の満足度の 100 点満点の評価を用
直後も使用後も満足度が高いグループであり、全体の
いて、クラスター分析を行った結果を示したのが、図表
59%を占めている。衝動買い直後の満足度が高い人は、衝
16 のデンドログラムである。今回は、クラスターごとの
動買い頻度が高い人が多い傾向である。3 つのグループの
共通性とその汎用性という観点からクラスターを 3 つに
中で最も人数が多いグループである。次に第 2 グループに
分けた。
ついて、衝動買い直後も使用後も満足度が低いグループで
あり、ここは衝動買いの頻度が低い人が多いことが分かっ
クラスター分析結果(お菓子)
た。全体の 20%を占めている。最後に第 3 グループにつ
いて、ここは衝動買い直後の満足度は高いものの使用後の
満足度が低いグループであり、衝動買い直後の満足度が極
端に高い人は頻度が高い人であることがわかった。全体の
21%を占めている。この結果からわかることは若者の衝動
買いでは衝動買い直後も使用後も満足度が高いグループ
が最も多いことである。
(2)お菓子・スイーツのクラスター分析
次に、お菓子のクラスター分析を行う。
〈調査概要〉
衣服の時と同様である。
表 19 はクラスター分析の結果を散布図にしたものであ
る。この表の中で右上のグループを第 1 グループとし、左
下のグループを第 2 グループとし、右下のグループを第 3
〈分析結果〉
グループとする。第 1 グループのついて、ここは衝動買い
衣服と同様に行い、図表 18 のようなデンドログラムが得
直後も使用後も満足度が高いグループであり、全体の
られた。
59%を占めている。衝動買い直後の満足度が高い人は、衝
動買い頻度が高い人が多い傾向である。購買後に行動に移
■図表―――18
る人は約半数いることがわかった。全体の 68%を占めて
いる。3 つのグループの中で最も人数が多いグループであ
「お菓子」のデンドログラム
る。次に第 2 グループについて、衝動買い直後も使用後も
満足度が低いグループであり衝動買いの頻度が低い人が
多いことがわかった。
全体の 14%を占めている最後に第 3
グループについて、ここは衝動買い直後の満足度は高いも
のの使用後の満足度が低いグループであり、衝動買いの頻
度が高い人も低い人もいることがわかった。全体の 18%
を占めている。この結果からわかることは若者の衝動買い
では衝動買い直後も使用後も満足度が高いグループが最
も多いことである。
クラスター分析のまとめ
表 19 はクラスター分析の結果を散布図にしたものである。
衣服・お菓子両方のクラスター分析を見ると、使用後の
満足度にかかわらず衝動買いをすると衝動買い直後の満
足度高くなりやすいことがわかる。(第一グループ、第 3
グループが多いため)
■図表―――19
よって、仮説2:衝動買い直後の満足度は、非常に高くな
りやすい
は立証された。
また、どちらも第一グループの右上に衝動買いの頻度が
高い人が多く属しており、仮説 3:衝動買いの頻度が高い
流され
今だけ
自己投資
衝動
第1女
-0.05244
0.372927
0.222683
-0.00927
第1男
0.13
-0.37056
-0.03889
0.189444
衣服およびお菓子のクラスター分析の結果より、どちら
第2女
0.14125
-0.265
-0.04375
-0.1025
も最も人数が多かった第 1 グループの衝動買いをした理
第2男
0.195833
-0.315
-0.21833
0.075833
由を詳しく分析し、そして第 2,3 グループの分析結果と
第3女
-0.401
-0.203
-0.627
-0.401
比較することで、
「満足度が高い衝動買い」を誘発するア
第3男
0.033333
-0.07889
0.085556
0.093333
人ほど衝動買い直後・使用後共に満足度が高くなる
は立
証された。
プローチを導けると考える。
表 21 は表 20 を男女で分けた時の因子得点の表である。
第 1 グループの女性は「今だけ因子」
、男性は「衝動因子」
4、因子得点の比較
の重要性が高い。第 2 グループは女性、男性ともに「流さ
ここからは先ほどのクラスター分析によって分けられ
たセグメントごとに因子得点を比較していく。
れ因子」の重要性が高いとわかる。第 3 グループの女性は
「今だけ因子」、男性は「衝動因子」の重要性が高いとわ
かる。第 1 グループの女性は「今だけ因子」を重要視して
(1)衣服
おり、衝動買い直後と使用後の満足度が共に高いこのグル
■図表―――20
ープは今だけ、という限定的な要素を最も重要だと考え、
また周りに流されての衝動買いはあまりしない。第 3 グル
因子得点(衣服全体)
ープの女性は逆に今だけという要素は重要だと考えてい
流され 今だけ
自己
投資
衝動
第1
0.003
0.146
0.143
0.051
第2
0.174
-0.295
-0.149
0.005
第3
-0.195
-0.144
-0.289
-0.167
ない、という対照的な結果が出た。
(2)お菓子
■図表―――22
表 20 は先ほどのクラスター分析によってセグメントされ
た 3 つのグループの因子得点を表にしたものである。第 1
グループにおいては「今だけ因子」の重要性が高いことが
流され
自己投資
新奇性
今だけ
お得感
第1
-0.041
0.066
0.094
-0.05
0.124
第2
-0.125
0.061
-0.116
0.074
-0.393
第3
0.376
-0.52
-0.274
0.198
-0.183
わかる。また第 2 グループにおいては「流され因子」の重
要性が高いことがわかる。第 3 グループにおいては「今だ
け因子」の重要性が高いようだが、すべての数値がマイナ
スになってしまっていることがわかる。
表 22 は先ほどのクラスター分析によってセグメントさ
れた 3 つのグループの因子得点を表にしたものである。第
■図表―――21
1 グループにおいては「お得感因子」の重要性が高いこと
がわかる。また第 2 グループにおいては「今だけ因子」の
■図表―――23
買いをすることは結果満足度の低い衝動買いを引き起こ
す。そして衝動買い直後の満足度が高くても使用後に満足
度が下がってしまう人たちは因子得点がすべてマイナス
流され
自己投資
新奇性
今だけ
お得感
になっているところから見ると衝動買いを引き起こすよ
第1女
0.007
0.226
0.220
-0.175
0.250
うな要素ほぼすべてに関して全く重要視していないので
第1男
-0.121
-0.117
-0.119
0.117
-0.036
ある。そのため、満足度が高い衝動買いを引き起こす大き
第2女
-1.059
0.039
-0.044
0.021
-0.396
な要因であった「今だけ」という特別感を消費者に与える
第2男
0.420
0.074
-0.158
0.104
-0.391
ことにより、より満足度が高い衝動買いを多く引き起こせ
第3女
0.178
-0.780
-0.213
0.440
0.333
るのではないか、と考える。
第3男
0.508
-0.347 -0.314
0.037 -0.528
次にお菓子に関して満足度が高い衝動買いに対して値
段が安くなっていたり、などのお得感があると良い結果に
表 23 は表 22 を男女で分けた時の因子得点の表である。
第 1 グループの女性は「自己投資因子」
「新奇性因子」
「お
得感因子」
、男性は「今だけ因子」の重要性が高い。
第 2 グループの女性は「自己投資因子」の重要性が高く、
それに対し「流され因子」の重要性が極端に低い。また、
男性は「流され因子」の重要性が高いとわかる。
第 3 グループの女性は「今だけ因子」
、男性は「流され
因子」の重要性が高いとわかる。
なる、逆に今だけ、という特別感や周りに流されて衝動買
いをすることは結果満足度の低い衝動買いを引き起こす。
つまり、満足度が高い衝動買いを引き起こす大きな要因で
あった価格の安さ、などの「お得感」を消費者に与えるこ
とにより、より満足度が高い衝動買いを多く引き起こせる
のではないか、と考える。
これらが衣服とお菓子の違いであり、結果の考察である。
次に男女別での考察を考える。まず衣服について述べる。
第 1 グループに関しては女性は「今だけ」という特別感を
これらの因子得点の比較より、
仮説 4:衣服とお菓子で衝動買いする際に重要視する要素
に差が出る
仮説 5:衝動買い後の満足度の変化の違いによって、衝動
買いを引き起こした要因に差異が見られる
は立証された。
重視しており、男性は「衝動」で購買をしてしまうという
傾向が見られた。第 3 グループに関して女性は「今だけ」
要素がマイナスの数値として出ているので女性に「今だけ」
因子をアプローチしていくことは有効である。しかし、男
性に関しては第 1 グループも第 3 グループも数値に差はで
ているもののどちらも「衝動」因子を重視しているという
点で男性へのアプローチは考え直す必要がある。このよう
⑥―――検証結果考察
まず、それぞれ全体での因子得点の違いや共通点を探す。
衝動買い直後も使用後も満足度が高いグループに関して
衣服は「今だけ因子」が、お菓子は「お得感因子」が最も
重要視されている、という違いがわかった。その他、2 つ
のグループに関しては衣服は「流され因子」、および「今
だけ因子」がマイナスの値として出てきて、お菓子も同様
に「流され因子」と「今だけ因子」が出てきており、ここ
が共通点である。このようにトータルで見ると、まず衣服
に関しては満足度の高い衝動買いに対して今だけ、という
特別感があると良い結果になる、逆に周りに流されて衝動
な結果が出たのは「衝動」というのはプラスにもマイナス
にも働くと考えられるからではないか。
次にお菓子について述べる。第 1 グループに関して女性
は「自己投資」「新奇性」「お得感」を、男性は「今だけ」
を重視しており差が出たことが明らかである。また、第 3
グループを見ても男女ともに重要視する因子が異なる。よ
って、第 1 グループの男女の重要視している因子が満足度
の高い衝動買いを引き起こしていると言えるので、その因
子を用いたアプローチが有効であると考えられる。
⑦―――今後の展望
今回、衣服とお菓子の衝動買いに着目して分析を行って
いった結果、両者に違いがあることがわかった。さらにそ
の中でセグメントされたグループごと、そして男女の間に
も重要視する因子に違いが見られた。
そこから、男女別でアプローチ方法を細かく分けていく
ことが有効ではないのかと考える。
また、今回アンケートの調査人数が小規模だったので今
後はそれを増やして、正確なデータを得ることで、より有
効なアプローチを導くことができるのではないか。
参考文献
クラスター分析
社会学研究法
www2.itc.kansai-u.ac.jp/~tyasuda/files/2012/.../2_cluster.pdf
若者の消費特性と価値観 生活総研 博報堂
http://seikatsusoken.jp/teiten/theme/report-35/
消費者視点の衝動購買研究 石井裕明
www.j-mac.or.jp/mj/download.php?file_id=265
消費者意識基本調査 消費者庁
http://www.caa.go.jp/adjustments/index_16.html
(補録)プレ調査
衝動買いに関するアンケート調査①
私たちは、現在衝動買いに関する研究を行っています。この研究を進めるにあたって、大学生の方々がどのような考え
を持って消費・購買行動をしているかについて、伺わせていただきたいと思います。
ご回答の内容は研究以外の目的に使用することは決してありません。調査は無記名です。ありのままをお答えいただき
ますようお願いいたします。
性別:男性・女性
学年:1年・2年・3年・4年
衝動買いの定義
「事前に買う予定がなかったものを、突然の抑えきれない購買衝動により買ってしまうこと」
Q1.あなたは、普段衝動買いをどのくらいしますか。
1.非常に多い 2.まあまあ多い方だ
3.どちらともいえない
4.少ない方だ
5.非常に少ない
Q2.あなたが最近衝動買いしたもの思い浮かべてください。
それぞれの商品について、以下の質問に答えてください。
1.その商品を衝動買いした理由は何ですか。
2.衝動買い直後の感情はどのようなものですか。
3.購買後、その感情を何らかの方法で誰かと共有しようとしますか。
4.「はい」と答えた人は、どのような方法をとりますか。
5.数日たった後のその商品に対する満足度を教えてください。
1.満足
2.どちらかといえば満足 3.どちらともいえない
(商品:
4.どちらかといえば後悔
5.後悔
)
1.(
)
2.(
)
3.はい・いいえ
4.(
5.(番号
)
)
(商品:
)
1.(
)
2.(
)
3.はい・いいえ
4.(
5.(番号
)
)
(補録)本調査
衝動買いに関するアンケート調査②
私たちは、現在衝動買いに関する研究を行っています。この研究を進めるにあたって、大学生の方々がどのような考え
を持って消費・購買行動をしているかについて、伺わせていただきたいと思います。
ご回答の内容は研究以外の目的に使用することは決してありません。調査は無記名です。ありのままをお答えいただき
ますようお願いいたします。
性別:男性・女性
年齢:(
)歳
衝動買いの定義
「事前に買う予定がなかったものを、突然の抑えきれない購買衝動により買ってしまうこと」
Q1.あなたは、お菓子・スイーツの衝動買いの頻度はどのくらいですか。
1、高い
2、どちらかとうと高い
3、どちらかというと低い
4、低い
5、全くしない
Q2.あなたは、衣服の衝動買いの頻度はどのくらいですか。
1、高い
2、どちらかとうと高い
3、どちらかというと低い
4、低い
5、全くしない
Q3.
Q1.2 で「5、全くしない」以外の人は、どうして衝動買いをしたのですか。
1当てはまらない
2どちらかというと当てはまらない 3どちらともいえない 4どちらかというと当てはまる 5当てはまる
ストレス発散したかったから。
自分を元気づけるため
頑張った自分へのご褒美のため
自分にとって特別な日だったから
テンションが上がっていたから
お金を使いたい気分になったから
見た目に惹かれたから
今買わないともうこの商品には出会えないと思ったから
残りわずかだったから
流行っていたから
人気商品だったから
限定品・期間限定品だったから
新商品だったから
価格が安かったから
割引されていたから
ほかの商品を買ったついでだったから
店員に薦められたから
友達が薦めていたから
広告・POPに引き付けられたから
キャンペーンをやっていたから
お菓子・スイーツ
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
衣服
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
Q4. Q1.2 で「5、全くしない」以外の人は、その商品を衝動買いした直後・初めて使用した後の満足度を 100 点満点で評
価してください。
お菓子・スイーツ: 衝動買いした直後(
衣服:衝動買いした直後(
)点
)点
初めて使用した後(
初めて使用した後(
)点
)点
Q4. Q1.2 で「5、全くしない」以外の人は、衝動買いをした後にどのような行動をとりますか。
(複数回答可)
お菓子・スイーツ
1、知人・親類に薦めた(口コミをした)
ッターで書いた
の他(
2、衝動買いした商品についてネットで調べた
4、同じ商品(ブランド)のものをリピート買いした
3、ブログ・SNS・ツイ
5、特に何もしなかった
6、そ
)
衣服
1、知人・親類に薦めた(口コミをした)
ッターで書いた
の他(
2、衝動買いした商品についてネットで調べた
4、同じ商品(ブランド)のものをリピート買いした
3、ブログ・SNS・ツイ
5、特に何もしなかった
6、そ
)
Q5. Q4 で「5、特に何もしなかった」以外の人は、そのような行動を取ることで満足度はどのように変化しましたか。
お菓子・スイーツ
1、高くなる 2、どちらかというと高くなる
3、変わらない
4、どちらかというと低くなる
5、低くなる
3、変わらない
4、どちらかというと低くなる
5、低くなる
衣服
1、高くなる 2、どちらかというと高くなる
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