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【総論】労働安全衛生活動におけるリスクアセスメントの現状と導入に向け

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【総論】労働安全衛生活動におけるリスクアセスメントの現状と導入に向け
総 論
労働安全衛生活動における
リスクアセスメントの現状と
導入に向けての課題
中央労働災害防止協会 技術支援部
マネジメントシステム推進センター
田中 信介
このような状況の背景には、一般的に中小企業
労働災害の現状と課題
は経営基盤が弱いことや人材が不足していること
などがあると言われている。しかし、規模の小さ
わが国の労働災害は、長期的には減少傾向にあ
な事業所が事故を起こしやすいかと言うと、決し
るものの、死傷者は 33 年ぶりに2年連続での増加
てそのようなことはない。中小規模事業所におい
を示した(図1)。今年に入っても現在のところそ
ても災害の少ない事業場は数多く存在し、それら
の傾向には歯止めがかからない状況が続いている。 の事業所を見ると、トップの安全衛生意識が高い
また中小規模事業所の労働災害は、大規模事業
ことや事業場の安全衛生活動への取組みが活発で
所に比べると圧倒的に多く、平成 23 年度の労働災
あることなど共通点が見いだせる。そこで、先取
害の死傷者数(死亡者と休業4日以上の災害)
を事
りの安全手法と言われているリスクアセスメント
業規模別に見ると、労働者数 50 人未満の事業場で
の導入が、特に中小規模事業所にとってどのよう
全体の3分の2を占め、300 人未満の事業場規模
な意義があるのか考えてみよう。
では9割を超えていると言う厳しい現状がある(図
2)。
図1 死亡災害・死傷災害発生状況の推移
250,000
5,000
死傷者
4,500
死亡者
200,000
4,000
3,000
2,500
100,000
2,000
死亡者数
死傷者数
3,500
150,000
1,500
50,000
1,000
500
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
平
2
年
0
成
元
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平 年
成
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
平
成 年
0
H23 は東日本大震災を直接の原因とする死亡者・死傷者を除く 資料出所:労災保険給付付き及び労働者死傷病報告(労災非適)
8
Vol.58 No.13 工場管理
特集 現場一体となって安全を守る! リスクアセスメント推進のポイント
図2 H23 年事業場規模別の労働災害発生状況
事業場規模
9以下
50∼99
10∼29
100∼299
9,286 人
7.8%
17,349 人
14.5%
30∼49
300 以上
28,819 人
24.1%
16,302 人
13.6%
16,590 人
13.9%
31,276 人
26.1%
資料出所 労働者死傷病報告
図3 リスクアセスメントの基本的な手順
手順1 機械・設備、原材料、作業行動や環境などに
ついて危険性・有害性を特定します。ここでの危険性・
スタート
況のことで、作業者が接近することにより危険な状
態が発生することが想定されるものをいいます。危険
手順1
手順2
有害性とは、労働者に負傷や疾病をもたらす物、状
危険性・有害性の特定
危険性・有害性ごとのリスクの見積もり
性・有害性は「ハザード」ともいわれます。
手順2 特定したすべての危険性・有害性についてリス
クの見積もりを行います。リスクの見積もりは、特定
された危険性・有害性によって生ずるおそれのある負
手順3
リスク低減のための優先度の設定・
リスク低減措置内容の検討
傷・疾病の重篤度と発生可能性の度合の両者の組み
合わせで行います。
手順3 危険性・有害 性について、それぞれ見積もら
手順4
リスクの低減措置の実施
れたリスクに基づいて優先度を設定します。
手順4 リスクの優先度にしたがい、リスクの除去や
●実施時期
・設備、原材料、作業方法などを新規に採用、または変
更するなど、リスクに変化が生じたときに実施
・機械設備の経年劣化、労働者の入れ替わりなどを踏ま
え、定期的に実施
・既存の設備、作業については計画的に実施
低減措置を実施します。
リスク低減措置は、基本的に次の優先順位で検討、
合理的に選択した方法を実施します。
① 設 計や計画の段階における危険な作業の廃止、
変更など
② インターロックの設置などの工学的対策
③ マニュアルの整備などの管理的対策
④ 個人用保護具の使用
※リスクの定義:リスクとは負傷または疾病の重篤度およびその発生の可能性
リスクアセスメント導入の意義
る対策などを実施する手法である。なお、リスク
低減措置には優先順位があり、対象となる作業に
おいて法令で定められた事項があれば、まずそれ
リスクアセスメントとは、職場の存在する危険
を実施してその後、①本質的安全対策
(危険な作業
性または有害性(危険源、危険有害要因、ハザード
の廃止・変更など)
、②工学的対策
(ガード、イン
とも言う)を特定し(見つけ出し)
、その危険性また
ターロック、安全装置など)
、③管理的対策
(マニ
は有害性に係るリスクを見積り、リスクの大きさ
ュアルの整備、立ち入り禁止措置など)
、④個人用
に応じてリスク低減措置の優先度を設定し、リス
保護具の使用
(①∼③の措置を講じても除去・低減
ク低減措置の内容を検討し、最も効果的と思われ
しきれなかったリスクのみ実施)
の順番に従ってそ
工場管理 2012/11
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