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連続繊維シートの付着耐久性

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連続繊維シートの付着耐久性
土木技術資料 54-9(2012)
報文
連続繊維シートの付着耐久性
西崎
到 * カリム・ベンザルティ * * マーク・キアトン * ** 加藤祐哉 * ***
高温(40℃95%)気中における室内試験を採用した。
1.はじめに 1
高 湿 度 条 件 は コ ン ク リ ー ト と FRP界 面 の 付 着 性
1995年 よ り 、 建 設 省 土 木 研 究 所 と フ ラ ン ス 中
央土木研究所(Laboratoire Central des Ponts et
能の劣化に影響を与えることは、既に他の研究者
により報告されている 1)。
板状のコ ンクリート供試体 (30×30×5cm)を 、
Chaussees, 以 下 LCPCと記 す、いずれ も当時)は 、
道路分野における先端技術・材料関連の分野にお
ポルトランドセメント(CEM I)と珪質石灰岩骨材
いて 研究協力関係 があった 。 3年毎にワー ク
に よ り 、 水 セ メ ン ト 比 0.5 で 製 作 し た 。 コ ン ク
シ ョ ップ が開 催さ れ既 にそ の 回数 は 6回を 数え て
リ ー ト 圧 縮 強 度 は 35MPaで あ っ た 。 表 面 処 理 に
いる。両研究所に組織改編があったが、研究協力
は 2種 類 の異 なる 手法 (サ ン ドブ ラス ト、 動力 工
関係は現在もなお、独立行政法人土木研究所とフ
具(ディスクサンダー)仕上)を設定した。表面
ラ ン ス 交 通 企 画 ネ ッ ト ワ ー ク 研 究 所 ( Institut
処 理 後の 供試 体に 、 2種類 の 市販 の繊 維系 コン ク
Français des Sciences et Technologies des
リ ー ト補 強材 料を 施し た。 1つ は 、炭 素繊 維シ ー
Transports, de l'Aménagement et des Réseaux,
トに樹脂を含浸させながらコンクリート表面に貼
以 下 IFSTTARと 記 す ) に 引 き 継 が れ て い る 。 こ
り 付 け る タ イ プ の 材 料 で あ り ( Carbon Fiber
のワークショップでは、連続繊維シートなどの繊
Sheet, 以 下 CFSと 記 す る ) 、 も う 一 つ は 工 場 で
維系コンクリート補強材料の長期的耐久性(特に
成形品となったCFRP板 を、コンクリート表面に
付着耐久性)がトピックスの一つとなっていた。
貼 り つ ける タイ プ のも ので あ る (図 -1aお よ び 1b
連続繊維シートは、炭素繊維などによって作られ
参 照 ) 。 供 試 体 の 種 類 は 下 記 に 示 す 4種 類 と な
たシート状の補強材でコンクリート表面で樹脂含
る。
浸 し て 硬 化 し た FRPと す る 材 料 で あ る 。 日 本 で
−
サンドブラスト + CFS
はその優れた施工性から耐震補強などを目的に広
−
サンドブラスト + CFRP板
く普及しており、フランスにおいても採用が増え
−
動力工具処理 + CFS
つつある。ワークショップの中では、日本、フラ
−
動力工具処理 + CFRP板
ンスのそれぞれが独自に行った検討結果について
製 作 し た 供 試 体 は 気 温 40℃ 、 相 対 湿 度 95%の
情報交換が行われていたが、その後、連続繊維
恒温恒湿槽にて劣化試験に供した。時間経過とと
シートのコンクリートへの付着耐久性や試験法に
関する双方の独自の結果を比較検討し、一つの報
告としてとりまとめられた。LCPCは室内試験、
土木研究所は屋外暴露試験を中心に検討を行った
(a)
が 、 こ こ に その 概 略 を紹介 す る 。( な お、 本 研究
は LCPC が IFSTTAR に 組 織 改 編 さ れ る 前 の 内 容
(b)
であるので、フランス側の研究をLCPCのものと
して記述する。)
2.LCPCによる付着耐久性評価に関する研究
(c)
2.1 プルオフ試験法による付着性状評価
LCPCでは付着耐久性 試験方法として、高湿度
────────────────────────
Durability of adhesive properties of continuous fiber sheet for
strengthening of concrete structures.
(d)
図-1 供試体
((a)CFS貼り付けコンクリート , (b)CFRP板貼り付けコ
ンクリート , (c) プルオフ試験概要, (d)長時間経過後の
プルオフ試験後の破壊状況例(コンクリート表面が
残っている部分と接着層部分の破壊が混在している))
- 24 -
土木技術資料 54-9(2012)
もに付着 強度をプルオフ試験法(図 -1(c), ASTM
− また、長期時間経過時は接着層部分での破壊
D4541に準拠)により測定した。
が、特に動力工具処理の場合に増加すること
図-2に付着強度の時間による変化を示す。およ
が 認 め ら れ た( 図 -1(d)に事 例 ) 。 こ れは 湿 潤
そ 600日 目までのデー タを取 得した。ばら つきが
環境により接着層が劣化したことによるもの
かなり大きいものの、以下に示す傾向が読み取れ
と考えられる。
る。
−
表面処理条件は、プルオフ試験による付着強
本試験の結果では、コンクリート部分での破壊
度に大きな影響を与える結果となった。大ま
が起きることが多かったが、これは補強材とコン
かにいって、動力工具処理に比べてサンドブ
クリートとの付着状態の情報が得にくいという点
ラスト処理の方が付着強度が高い傾向が認め
において、プルオフ法による付着特性評価の課題
ら れ た。 これ は 特に 100日 以 下の 初期 で 顕著
の一つと考えられる。また、この他にもプルオフ
であった。破壊モードはサンドブラスト処理
試験の課題として、準備段階の補強材カットの深
による場合はコンクリート表面の比較的深い
さの影響や、測定機器設置時の微細な軸のずれの
位 置 で凝 集 破壊 ( 素材内 部 の破 壊 )し てい
影 響 を 受 け る 点 な ど も 指 摘 さ れ て い る 2) 。 こ の
るのに対し、動力工具処理の場合にはコンク
ため、これに代わる付着特性評価方法として、せ
リート表面のごく浅い領域で起きていた。
ん断付着試験に着目し、その付着特性についてプ
※
− 経過時間が長期の場合に、付着強度に多少の
低下が認められた。この傾向は動力工具処理
ルオフ試験の場合と比較することとした。
2.2 せん断試験法による付着性状評価とプルオフ
の CFRP 板 の 場 合 で 特 に 顕 著 で あ っ た ( 図 -
試験との比較
2(b))。これは、CFRP板の付着強度が連続繊
CEM II 32.5 セ メ ン ト と 珪 質 石灰 岩 骨 材に よ
維シートに比べて厳しい環境に敏感であると
りコンクリートブロック(21×21×41 cm)を製
の 過 去 の 研 究 報 告 1) と も 一 致 す る 。 と は い
作 し た 。 水 / セ メ ン ト 比 は 0.55 、 圧 縮 強 度 は 37
え、データの変動が大きいことから、より長
MPaであった。
期にわたる計測による確認が必要である。
プルオフ試験用FRP
せん断試験用FRP
サンドブラスト / CFS
(a)
動力工具処理 / CFS
荷重
付 着強度(プルオフ法)(MPa)
5
コンクリートブロック
4
3
図-3
せん断付着試験方法の概要
図-4
せん断付着試験の実施状況
2
1
0
0
100
200
300
400
500
600
試 験時間(days)
サンドブラスト / CFRP板
動力工具処理 / CFRP板
付 着強度(プルオフ法)(MPa)
(b)
5
4
3
2
1
0
0
100
200
300
400
500
600
このブロックの打設面を動力工具処理し、図 -3
試 験時間(days)
図-2
プルオフ試験による付着強さの変化
(劣化条件: 40℃95%大気中)
────────────────────────
※
土木用語解説:凝集破壊
に 示 す 2か 所 ( 1か 所 は せ ん 断 試 験 用 で 接 着 部 の
長さ250mm、もう1か所はプルオフ試験用)に炭
- 25 -
土木技術資料 54-9(2012)
素 繊 維 を エ ポ キ シ 樹 脂 で 貼 り つ け た 。 2.1節 と は
− プルオフ試験よりもせん断試験の方がデータ
異なる種類の市販のCFSを用いた。
のばらつきが少なかった。
補強コンクリートブロックは 40℃湿度100%の
− 3か月まででは、最大せん断強度およびプルオ
恒温恒湿槽におき、時間経過後の付着特性を、プ
フ試験による付着強度に、特に明確な変化は
ル オ フ 試 験 (図 -1(c))と せ ん 断 試 験 (図 -3)に よ り 評
認められなかった。
価した。図-5a、bに、最大せん断荷重とプルオフ
− しかし、せん断試験の破壊モードでは、初期
試験による付着強度の時間経過による変化をそれ
にはコンクリート部分における凝集破壊で
ぞれ示す。以下のような特徴が認められた。
あ っ た ( コ ン ク リ ー ト 表 層 部 が 剥 離 し た FRP
シートに残っている(図-6a))のが、時間経
最大せん断荷重(N)
25000
過後は界面または接着層での破壊(図-6c)へ
20000
の変化が認められた。
15000
− プルオフ試験ではこれらの変化は認められ
ず、コンクリートにおける凝集破壊のままで
10000
あった(図-6b,d)。こ れらの結果から、せん
5000
断試験の方がプルオフ試験よりも、補強材の
コンクリートとの付着特性の変化を詳細に評
0
0
(a)
(a)
100
200
300
400
価できる可能性があると考えられる。
試験時間(days)
4
3.土木研究所による付着耐久性評価に関す
る研究
付着強度(プルオフ法) (MPa)
3.5
3
2.5
3.1 プルオフ試験による付着性状評価
2
土木研究所では、連続繊維シートの付着耐久性
1.5
を調べるための試験として、長期にわたる屋外暴
1
露試験を主に実施した。評価方法としては、既に
0.5
(b)
(b)
コンクリート表面被覆材の標準的な付着性状試験
0
0
100
200
300
400
試験時間(days)
に市場から入手した歩道舗装用のコンクリート平
図-5 CFSのコンクリートへの付着特性
( (a)せ ん 断 荷 重 (繰 り 返 し 数 :3), (b)プ ル オ フ 試 験 の
結果(繰り返し数 :6))
母材コンクリート
母材コンクリート
で あ っ た プ ル オ フ 法 を 第 一 に 選 択 し た 。 1992年
板 (30×30×6 cm) に対し、当時日本国内で使用
さ れ て い た 4種 類の 製 造会 社 の 異 なる CFSを 用 い
た。各CFSは製造会社の示す標準的な手順・材料
に従って、コンクリート平板の全面に施工した。
コンクリート表面の前処理は動力工具処理(ディ
スクサンダー)とした。プライマー(コンクリー
(b)
(a)
剥離部分(コンク
リートが残存)
剥離部分(コンク
リート付着がない)
ト表面に始めに塗布する浸透性の高い被覆材)は
全てのCFSで使用されたが、パテ(不陸調整材)
はCFSによっては使用しないものもあった。マト
リックス樹脂(含浸用樹脂)は全てエポキシ系で
あ っ た 。 CFSの 積 層 構 成は 2層 と し 、 互 いに 直 交
するように配置した。CFS施工後には白色の上塗
(c)
母材コンクリート
(d)
母材コンクリート
図-6 破壊モードの典型的な例
( (a)せ ん 断 試 験 ,(b)プ ル オ フ 試 験 ( と も に 初 期 ) ,(c)
せん断試験 ,(d)プルオフ試験(ともに 13カ月経過後)
り塗装を行った。供試体の一覧は下記のとおりで
あ る 。 各 供 試 体 は 10個 製 作 さ れ 、 初 期 値 用 を 除
く9個を暴露に供した。
- 26 -
土木技術資料 54-9(2012)
−
供試体 A: CFS-A (高強度系) パテ有
を表しているものではないものと考えられ
−
供試体 B: CFS-B (高強度系) パテ有
る。
−
供試体 C: CFS-C (高弾性系) パテ有
−
供試体 D: CFS-D (高強度系) パテ無
3.2 引きはがし法による付着性状評価とプルオフ
暴 露 試 験 は 1992年 に つ く ば 市 内 の 土 木 研 究 所
試験との比較
構 内 で 、 架 台 を 使 っ て 南 向 き 5°で 暴 露 さ れ た
(図-7)。
本暴露試験の開始当初はCFSとコンクリートの
付着性状の耐久性をプルオフ法により評価するよ
うに計画されていた。しかし、近年では引きはが
し試験による評価の試みが報告 3),
4) されているこ
と か ら 、 土 木 研 究 所 に お い て も 、 14年 暴 露 し た
供試体を用いて、CFSとコンクリート間の付着力
評価法としての適用性を検討することとした。図
-9に示すように、各供試体の端部の一部をダイヤ
モンドカッターにより切り取ってCFSをつかむ部
図-7
分を作るとともに、供試体表面に切込みを入れ、
土木研究所における暴露試験の状況
4.0
付着強度 (MPa)
3.5
初期値
幅 30mm、 長 さ 170mmの ス リ ッ ト 状 の 評 価 対 象
暴露14年
部分を5つ作成した。
3.0
2.5
プルオフ試験部位
2.0
下層シートの繊維方向
1.5
1.0
0.5
0.0
A
図-8
B
C
D
14年暴露した供試体のプルオフ試験の結果
30mm
2006年に1組の供試体を回収し、付着特性を評
スリット
価した。プルオフ試験を行った結果を図-8に示す。
グリップ部
170mm
傾向は以下のようにまとめられる。
−
切り取り
プルオフ試験による付着強度の初期値はおよ
そ 3.0MPaで あ っ た 。 14年 暴 露 し た 供 試 体 で
図-9
引きはがし試験実施のための供試体加工
は 、 2.1MPa か ら 3.2MPa と な っ た 。 供 試 体
A、B、Cでは初期値に対して64%から76%の
付着強度低下が認められるが、供試体Dでは
殆ど変化が認められなかった。
−
暴露後に付着強度低下が認められる供試体で
Load cell
ロードセル
θ= -15°~+15°
も 、 そ の 絶 対 値 は 最 低 で も 2.1MPaあ り 、 実
用上は十分な付着特性を維持していると考え
Wire
ワイヤー
θ
Load
direction
載荷の方向
られる。
−
プルオフ試験の破壊モードは、初期において
Chuck
チャック
Peeling
引き剥がし
direciton
試験方向
も 、 14年 暴 露 後 に お い て も 、 い ず れ も コ ン
供試体
Specimen
クリート表面における凝集破壊であった。こ
万能試験機
Tensile
test
machine
の結果から、暴露試験後に認められたプルオ
フ試験による付着強度の多少の低下は、必ず
しもCFSとコンクリート間の付着特性の低下
- 27 -
図-10
引きはがし試験の実施方法
土木技術資料 54-9(2012)
次 に 供 試 体 を 、 図 -10に 示 す よ う に 、 万 能 試 験
面積で同様の破壊モードであったのに対し、
機にセットし、クロスヘッドと供試体のグリップ
供試体AおよびCでは引きはがし部のCFS上に
部分を、途中にロードセルを挿入したワイヤー
コンクリートの残存は認められなかった(図-
( 長 さ 600mm ) で つ な い だ 。 試 験 速 度 は
13b)
100mm/minと し た 。 得 ら れ る 引 き は が し 荷 重 対
− このような破壊モードの供試体間の相違など
時 間 線 図 の 典 型 的 例 を 図 -11に 示 す 。 試 験 開 始 か
の特徴は、プルオフ法では認められず、すべ
ら 50秒 後 か ら 試 験 終 了 の 10秒 前 ま で の 区 間 の 最
てのケースでコンクリートの凝集破壊が起き
大荷重と最少荷重の平均値を引きはがし荷重とし、
ていた。この試験の結果からは、プルオフ法
これを試験部位の幅で除した値(単位幅あたりの
による付着試験は品質管理などの目的では問
平均引きはがし荷重)を求めた。
題 な い も の の 、 CFSと コ ン ク リ ー ト と の 付 着
特性を詳細に評価するのには別法(引きはが
試
験
荷
重
し試験)の方が適していると考えられ点で、
LCPCの 試 験 結 果 ( せ ん 断 ) と 同 様 の 結 果 と
なった。
引き剥が
試験終了
最大荷重
剥 離 し た CFS片
h
し荷重
最小荷重
0
母材コンクリート
時間 (秒)
50
10
秒
前
1.4
14年暴露した供試体
新たに製作した供試体
1.2
母材コンクリート
(b) CFS上にコンクリートが残っていない(供試体A)
1.0
図-13
0.8
0.6
引きはがし試験後の供試体の状況
残念ながら、供試体作成時に引きはがし試験は
0.4
計 画 さ れ て い な か っ た た め 、 14年 間 暴 露 後 の 引
0.2
きはがし試験結果を、初期と比較することはでき
0.0
A
図-12
剥 離 し た CFS片
単位幅あたりの平均引きはがし 荷重の算出
単位幅あたりの引きはがし荷重(N/mm)
図-11
(a) CFS上に残るコンクリート(供試体 D)
B
供試体
C
な い 。 そ こ で 、 1992年 当 時 に 作 ら れ た 材 料 と 手
D
法にできるだけ近いものによる供試体を、新たに
14年暴露した供試体の引きはがし試験結果
製作して、引きはがし試験を実施することとし
た 。 た だ し 、 1992年 当 時 と 同 種 類 の 材 料 ( プ ラ
図 -12( 左 側 の 棒 グ ラ フ) は 14年 暴 露 し た 供 試
イマー、パテ、炭素繊維シート、エポキシ樹脂)
体の単位幅あたりの平均引きはがし荷重の結果で
が入手できたのは、供試体Dのみであり、他の供
あ る 。そ れぞ れ、 5回 のデ ー タの 平均 値を 示し て
試体は入手可能な類似の材料を使用した。また、
いる。以下の特徴がまとめられる。
コンクリートは全て新たに製作したものである。
− 供 試 体 A、 C、 Dが 0.10か ら 0.16N/mmで あ る
新たに製作した供試体の引きはがし試験の結果
の に 対 し 、 供 試 体 B は 特 に 大 き な 値 ( 0.29
( 平 均 値 ) を 、 図 -12 の 棒 グ ラ フ ( 右 側 ) に 示
N/mm)を示した。
す。新たに製作した供試体の引きはがし荷重は、
− 供 試 体 Dで は 表 面 の コ ン ク リ ー ト が 部 分 的 に
い ず れ も 14年 暴 露 後 の 供 試 体 と 比 べ て か な り 大
引 き は が し 部 分 の CFS 上 に 残 っ て お り ( 図
き な 値 と な っ た 。 新 た に 製 作 し た 供 試 体 は 14年
13a) 、供 試体 Bでも引きはが し部分の 70%の
暴露供試体と完全に同等に再製作されたものでは
- 28 -
土木技術資料 54-9(2012)
な い た め 、 こ の 結 果 は 必 ず し も 14年 の 暴 露 期 間
壊から界面破壊 ※ に変わった。しかし最大せん
の間の劣化を示すものではない。
断付着強度に変化はなかった。
供試体Aはパテ層内部の凝集破壊で破壊し、供
− 14年 暴 露 し た 供 試 体 の 引 き は が し 荷 重 は 、 新
試 体 Bと Cは CFSと コ ン ク リ ー ト と の 界 面 で 、 供
たに製作された類似供試体に比べて小さな値
試体Dはコンクリート表面層の凝集破壊であった。
を 示 し た 。 た だ し 、 こ の 結 果 は 必 ず し も 14年
た だし供 試体 Bで は、引き はがし 部分の 20%で は
の暴露期間の間の劣化を示すものではない。
2つ の 連 続繊 維シ ート 層の 間 およ びコ ンク リー ト
引きはがし試験の破壊モードは初期値および
表面層内でも破壊したことを示している。これら
14年 暴 露 後 の 供 試 体 と も に 類 似 し て お り 、 プ
の 特 徴 は 、 そ れ ぞ れ 供 試 体 の 14年 暴 露 供 試 体 の
ルオフ試験とは異なる破壊モードを示すケー
破壊モードとほぼ同様なものとであった。また、
スがあった。
同時に行った新たに製作した供試体のプルオフ試
− プルオフ試験は品質管理などの用途には適し
験の結果が全てコンクリート部分の凝集破壊で
ていると考えられるが、詳細な付着特性評価
あ っ た 点 に お い て も 、 再 製 作 供 試 体 は 14年 暴 露
にはあまり適しているとは言い難い。一方、
供試体と同様の結果を示した。
せん断付着試験や引きはがし試験はコンク
リート内部での破壊をよりおこしにくく、付
4.まとめ
着特性の詳細な評価には適していると考えら
連続繊維シートとコンクリートとの付着耐久性
れる。
について、土木研究所とフランス中央土木研究所
との研究協力協定に基づき、双方の研究情報を比
較検討を行った。
は じ め に、 付着 試 験へ の影 響 因 子は 2つ の ケー
スが検討され、双方に一致する点として、プルオ
フ試験による付着性状評価では、多くのケースで
コンクリート表面部分の凝集破壊がおきることか
ら、連続繊維シートとコンクリートとの付着性状
評価法としては限界があることが示された。
次に連続繊維シートの付着耐久性について、そ
れぞれの機関から得られた結果は以下のとおりで
ある。:
− 湿 潤 大 気 (気 温 40°C, 相 対 湿 度 95%)中 で 12か
月静置した供試体の、せん断付着試験の結
果、破壊モードはコンクリート表面の凝集破
西崎
到*
独立行政法人土木研究所
つくば中央研究所材料資
源研究グループ新材料
チーム 上席研究員、博
(工)
Dr. Itaru NISHIZAKI
参考文献
1)Grace, N.F & Singh, S.B., Durability Evaluation
of
Carbon
Fiber-Reinforced
Polymer
Strengthened Concrete Beams: Experimental
Study and Design, ACI Structural Journal
102(1): 40-51, 2005.
2 ) Bonaldo, E.; Barros, J.A.O. & Lourenço P.B.,
Bond
characterization
between
concrete
substrate and repairing SFRC using pull-off
testing, International Journal of Adhesion and
Adhesives 25: 463-474, 2005.
3)藤澤健一、冨山 禎仁、大島敏幸 稗田省三 :「引き
剥がし試験による防食ライニング材のふくれ評価
手法の検討」、日本コンクリート工学協会年次大
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Fracture Characterization of Debonding in FRP
Plated Concrete Affected by Moisture, ASCE
Journal of Composites for Construction 10(1) :
35-47, 2006.
カリム・ベンザルティ**
フランス交通企画ネット
ワー ク研究 所( パリ)、材
料物理化学研究室 研究
員、Ph. D.
Dr. Karim BENZARTI
マーク・キアトン***
フランス交通企画ネット
ワーク研究所(パリ)構
造挙動・耐久性研究室
研究員、 Ph. D.
Dr. Marc QUIERTANT
────────────────────────
※
土木用語解説:界面破壊
- 29 -
加藤祐哉 ****
国土交通省関東地方整備
局横浜国道事務所交通対
策課(元 独立行政法人 土
木研究所つくば中央研究
所材料地盤研究グループ
新材料チーム研究員)
Yuya KATO
Fly UP