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1 - 経済産業省

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1 - 経済産業省
第1章 拡大生産者責任に係るこれまでの検討状況等の調査
本章においては、拡大生産者責任に係るこれまでの検討状況等について、
拡大生産者責任という概念の起源についての整理、および過去の国内外の拡
大生産者責任に係るセミナーの開催状況や国内における委員会における議論
を整理することにより、調査を行った。
1.1 拡大生産者責任に係る過去の検討状況
(1)拡大生産者責任の起源
1)概念、原理の起源
拡大生産者責任(EPR: Extended Producer Responsibility)の概念は、ス
ウェーデン、ルンド大学のリンドクビスト教授(Thomas Lindhqvist)が 1990
年代はじめに提唱したものである。
拡大生産者責任とは「生産者に製品のライフサイクルにおける責任を課す
ことで、製品から発生する環境負荷の低減を目指す原理である」と定義し、
また「生産者が設計段階で環境負荷を低減できる立場にいるから全責任では
ないが、根本的な責任について生産者が追うべきである」との主張を行った
ことが契機となった。
その後、各国組織の支持を受け、1992 年5月に国連環境計画(UNEP: United
Nations Environmental Programme)により最初の拡大生産者責任セミナー
が開催されるなど、拡大生産者責任による新しい環境負荷低減のための社
会システム構築へ向けた動きが活発化してきた。
そして、1994 年に OECD 事務局が日本政府の援助を得て、OECD 地域におけ
る拡大生産者責任制度の策定と実施に関する調査を開始した(
(2)における
フェーズ1)のを契機として、拡大生産者責任ガイダンスマニュアルの策定
への動きへと繋がっていった。
2)実際の運用
拡大生産者責任制度の実際の運用という面では、1991 年にドイツが容器包
装に関して導入したのがはじまりである。これは包装廃棄物政令により、包
装廃棄物を生産者と流通業者の責任として回収・リサイクル義務を課すこと
とし、第三者委託するものとしたことが契機であった。委託先は、法規制を
見越して、各家庭や事業所から包装廃棄物を回収・リサイクルする目的で、
1990 年に創設された民間企業の DSD(Duals System Deutschland)である。
ドイツの政策の主な目的は、容器包装のリサイクル率向上により、埋立処
分量を削減することであった。導入当時の課題としては、従来市町村が実施
している収集システムと調和した形で運営することなどが挙げられていた。
DSD は主に包装材の削減、回収、リサイクルへの対応が最も効率的に行う
1-1
ことができる製品充填メーカーと契約を結び、契約企業が支払うライセンス
料を回収・分別に要するコストに充当する形で運営されている。なお、契約
企業は製品価格への上乗せを行っているため、生産者の概念に消費者を含め
た形での拡大生産者責任といえる。
ドイツの包装材に関するこのリサイクルシステムでは、リサイクル品はバ
ージン原料からの製品価格と競合する形で市場に流通している。これは、リ
サイクル会社が DSD から補助金を受けており、リサイクル素材の価格を下げ
ることができるからである。
なお同制度により、ドイツ国内での包装材使用量増加が止まり、リサイク
ル量は 1992 年の 40,000 トンから 2001 年には 60 万トンまで増加するという
効果を上げている。
DSD によりもたらされた利益として他に挙げられるのは、リサイクル市場
拡大、雇用創出、消費者意識の向上といったことである。ただし、一方でシ
ステムの導入費用が高額であるという指摘もある。
図1−1に DSD のシステム概要を示す。
製品
卸売業者
商品製造業者
小売業者
(ボトラー等)
包装・原材料
生産者
製品
製品
グリェーネ
ブンクト
使用済み容器
請負・仕様書
料金
インフォメーション
デュアル・
システム・
ドイチュランド
リサイクル
全国生産者
協会
保証
公共・民間
処理施設
・ ガラス(白)
・ プラスチックボトル
・
(茶) ・ プラスチックフォーム
・
(緑) ・ プラスチックフィルム
・ 紙
・ 混合物
・ カートン
・ スチール缶
M.R.F.
リサイクル施設
回収
無料引き取り
・ アルミニウム缶
図1−1
DSD のシステム
(出所:拡大する企業の環境責任、環境新聞社)
1-2
(2)OECD における議論
以下に OECD による拡大生産者責任ガイダンスマニュアルの策定経緯につ
いて、以下に記す。
OECD では拡大生産者責任を以下のように定義している。
「製品に対する生産者責任を製品のライフサイクルの使用後段階にまで拡大すること」
そして拡大生産者責任施策に関連する二つの特徴として、以下を挙げている。
・ (物理的および(もしくは)財政的な又は全面的もしくは部分的な)責任を地方自
治体から上流部門の生産者へと移すこと。
・ 製品設計の際環境に配慮するよう生産者に動機を与えること
(以上、OECD 拡大生産者責任ガイダンスマニュアルより抜粋)
マニュアルの策定作業は 1994 年から開始し、2001 年3月に完成した。
拡大生産者責任ガイダンスマニュアルによると、策定過程における議論・
検討は以下のフェーズ1,2,3を経て、完成にこぎつけた。
表1−1
フェーズ
OECD 拡大生産者責任ガイダンスマニュアル策定経緯
目的と議論の内容
1994 年に開始され、加盟諸国における法的・行政的な拡大生産者責任活動を詳細に
(フェーズ1) 調査した。第一段階の中間報告は、1995 年にワシントン DC で開催された廃棄物最
小化ワークショップで発表され、廃棄物最小化に関する基本原則ならびに基幹戦略
として、拡大生産者責任を採択した。さらに、OECD の廃棄物管理グループおよび汚
染防止・管理グループは、製品政策に貢献、これを強化する重要な廃棄物最小化手
段であるとして、拡大生産者責任の分析を継続することを強く支持した。第一段階
の報告書では、拡大生産者責任アプローチを策定・実施している加盟諸国における
共通の問題点を特定し、政府の活動に関する詳細な情報を紹介、さらに新しく浮上
している拡大生産者責任政策およびプログラムの共通テーマや特徴について議論を
行った。
1996 年から 1997 年にかけて、拡大生産者責任に向けての各種アプローチの経済効
第二段階
(フェーズ2) 率および環境改善効果の分析を行った。
ここでは、容器包装に関わる二つの拡大生産者責任プログラムを詳細に研究し、拡
大生産者責任の枠組みに関する報告書を作成することを目的とした。また、フェー
ズ1で提起された共通の問題点を調査し、1998 年に(1) 拡大生産者責任の枠組みに
関する報告書、(2)オランダの容器包装材協定の事例研究、(3)ドイツの容器包装材
制令の事例研究を発表するに至った。(注:OECD 拡大生産者責任ガイダンスマニュ
第一段階
アルの付属書 12,14 にドイツの容器包装リサイクルに関する記述あり)
1998 年から 1999 年にかけて、利害関係者によるワークショップ開催とそれに基づ
(フェーズ3) く加盟国政府への拡大生産者責任ガイダンスマニュアルの策定を行った。
ここでは、フェーズ1およびフェーズ2で明らかにされた多くの問題点を検討する
ことを目的とした。なお、以下の2つの重要な目標を達成するために複数の利害関
係者による4つのワークショップを開催した。
ひとつは加盟諸国に対するもので、情報を共有して拡大生産者責任の実施に際して
生じた政策及びプログラム上の問題点を検討すること、もう一つは事務局に対する
もので、加盟諸国から拡大生産者責任に関する情報および示唆を得ることであった。
第三段階
1-3
表1−1に示した第2段階(フェーズ2)については、そのフレームワー
ク報告の内容について「拡大する企業の環境責任(環境新聞社)
」に資料編と
して掲載されている。これによると、表1−2に示すような事項がフェーズ
2において検討・決定されたことがわかる。
表1−2
フェーズ2フレームワーク報告の概要
テーマ
検討内容
拡大生産者責任の
・消費後製品処理コストの負担を納税者から末端生産者に移行するために、処
核心
理コストを製品価格に内部化
・廃棄物処理システムの負担者が重要事項(処理事業主体は重要ではない)
・生産者に処理コスト削減を図るインセンティブを与えたことにより、廃棄物
削減、製品の再使用などのような効果を期待
素材フローと金銭
のフロー
・ほとんどの製品が、拡大生産者責任プログラム導入と同時に素材フローと金
銭フローが新設または修正されている
・生産者責任機構(PRO:Producer Responsibility Organization)と呼ぶ法人
組織を導入することが多い。集団責任で拡大生産者責任プログラムを実施す
る場合に重要な組織である。
可能なアプローチ
・法的拘束力の弱い順に、業界主導の自主的取組、政府・業界の交渉による協
定、立法化の各アプローチ、が拡大生産者責任システム実行の際に採用可能。
責任と活動
消費後製品の責任を公正に拡大し、社会全体で分担するように拡大生産者責任
プログラムを設計する手段の分析に着手。これは、製品ライフサイクルと政策
の立案実行過程の両方を通じて社会の各関係者に関連づけることができる責任
および行動の特性を包括的に説明しようとする初めての試み。
最大の成果を得る
責任の拡大・分担の配分を明確化することに加え、以下のような活動が必要と
ために
なる。
・プログラム実施の適切なタイミング
・不正利用(ただ乗り)の防止
・生産者責任機関が独占体になる潜在性への対処
・国際貿易に関連する争点に留意
・責任を遂行している関係者への報奨
・拡大生産者責任を補完、支援する事業への取組
成果の測定
異なる拡大生産者責任システムの比較を容易にするために以下の基準を開発、
説明を経て、適用。
−環境への効果/経済効率/画期的な進歩/政治的受容性/管理運営の容易さ
OECD の所見
拡大生産者責任は多目的アプローチであり、公共、民間を問わず、環境ガバナ
ンスに画期的な進歩を期待できる機会を提供するものである。同時に拡大生産
者責任には多数の課題が提示されているが、それぞれの課題について、解決す
れば便益が生まれるという認識が得られた時点で個別に検討が必要。
1-4
フェーズ3においては4回のワークショップが開催され、主に以下のテー
マについて議論が展開された。
<ワークショップにおけるテーマ>
第1回(1997 年 12 月)
:生産者(producer)とは誰か
第2回(1998 年 5月)
:拡大生産者責任実施に対する障害(貿易、競争力、ただ乗り等)
第3回(1998 年 12 月)
:経済効率、環境効果
第4回(1999 年 5月)
:政策オプション、拡大生産者責任プログラム評価基準・方法等
※我が国の廃棄物政策と拡大生産者責任(EPR)OECD における議論を中心に
(慶應義塾大学経済学部教授
山口光恒)による
これらの検討、議論の過程を経て、拡大生産者責任ガイダンスマニュアル
の策定に至った。
拡大生産者責任ガイダンスマニュアルの目次構成は以下のようになってお
り、フェーズ1,2,3の内容を反映した形になっている。
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
概観と背景
拡大生産者責任施策と考察
手法と措置
役割と責任
貿易と競争
ただ乗り、孤児(製造撤退)及び現存(既販)製品
設計から実施まで
将来的ステップ
(3)日本における議論
日本においては、平成 11 年7月の産業構造審議会廃棄物・リサイクル部会、
地球環境会合同基本問題小委員会報告書として取りまとめられた「循環経済
ビジョン」の内容等を受けて、循環型社会基本法において「事業者の責務」
として「拡大生産者責任」の考え方を明示しており、個別リサイクル法にお
いてその具体化に着手したところである。
拡大生産者責任の議論は、特に産業構造審議会 環境部会 廃棄物・リサ
イクル小委員会の企画ワーキンググループにて議論が行われている。以下に、
第1回、第2回の企画ワーキンググループにて、どのような内容の議論が行
われたかを記す。
1-5
1)第1回企画ワーキンググループ(2001 年7月 26 日)
以下に、第1回企画ワーキンググループでの配付資料を参考とし、拡大生
産者責任に関する検討状況を記す。
論点として、拡大生産者責任等の基本的な考え方の整理(3Rの取組にお
ける関係者の役割分担と費用に対する考え方)が採り上げられた。
また、「循環経済ビジョン」
、循環型社会基本法を受けて拡大生産者責任の
考え方を整理し、以下のように位置づけた。
•
•
拡大生産者責任とは生産者等の事業者が廃棄物処理に要する費用を全
て製品価格に内部化することを直ちに意味する概念ではなく、さまざま
な費用負担、責任分担を包含する概念である。
容器包装リサイクル法、家電リサイクル法等の各種リサイクル法や資源
有効利用促進法は、上記のような考えに沿って生産者等に一定の役割を
担わせつつ、関係者の役割分担による実効的かつ効率的なリサイクルシ
ステムを構築するものである。
①本ワーキンググループにおける論点
論点として以下のことが挙げられた。
• 日本における拡大生産者責任の適用において、事業者の責任としてど
のような要素を強調すべきか
• 日本の社会経済システムや個別製品の性質等を考慮して、各主体の役
割分担、費用の考え方(事前徴収と排出時徴収、デポジット制の導入
など)についての法則性、理論構築
• 既存法(廃棄物の処理清掃に関する法律、私的独占の禁止及び公正取
引の確保に関する法律等)の制度について配慮すべき事項等
• 事業者と地方公共団体の処理責任との関係、地方公共団体の処理費用
の在り方
• 国が技術開発や施設整備などの適切な支援を行うべきではないか
②主要な議事
第1回企画ワーキンググループでの議論のうち、拡大生産者責任の基
本的な考え方の整理に関する部分について、表1−3に記す(第1回企
画ワーキンググループ議事録より抜粋)。
1-6
表1−3
第1回企画ワーキンググループでの議論
論点
委員からの意見
日本における拡大生産者責任
・ 拡大生産者責任で大事なのは総括的な責任をメーカーが負うことであり、リサイクルを行う主体はメーカーでなくてもよい
拡大生産者責任の適用におい
・ 産業廃棄物の処理コストについては事業者が負担するのがよい
て、事業者の責任としてどの
・ 素材産業の役割がまだ不十分ではないか
ような要素を強調すべきか?
日本の社会経済システムや個
・ 不法投棄を防ぐためにはデポジット制や費用前払いがよいのではないか
別製品の性質等を考慮して、
・ 法的な枠組みが整備されてきたが、自主的取組や市場メカニズムも重要である
各主体の役割分担、費用の考
・ 拡大生産者責任の役割分担、特に消費者の役割分担を議論する必要がある
え方(事前徴収と排出時徴収、 ・ アセンブリ製品に関しては、素材業者、部品業者、最終的には流通業者との連携も含め、関係者の役割の大きさを実感する。
デポジット制の導入など)に
業界の垣根を越えたシステムの構築を考えたい
・ 費用負担について誰がどこでどういう理由で払うかを検討していきたい。費用負担のコンセンサスをどのように得るかが最大
ついての法則性、理論構築
の課題ではないか
・ 拡大生産者責任は「ものを作るところが費用を全て負担する」と誤解されることも多いし、3R の順番もアプリオリに決まっ
ているわけではなく、基本法でも LCA 的発想で「環境負荷があるならそれによらないこと」とされているという点に留意すべ
き
・ 法律で再生資源を強制的に使ってもらうくらいの対応が必要ではないか
既存法(廃棄物の処理清掃に
関する法律、私的独占の禁止
・ 既存のシステム(容器包装リサイクル法、家電リサイクル法)を、例えば対象品目の拡大等によってもっと有効活用していく
必要があるのではないか
及び公正取引の確保に関する
・ 拡大生産者責任が強化され、事業者が積極的に取り組もうとする際に、廃掃法等が障害にならないように配慮してほしい
法律等)の制度について配慮
・ マンデート、ボランタリーについてどのようなベネフィット、デメリットがあるのか、拡大生産者責任でリデュースに繋がる
例があるのか等、現在のシステムの把握を行うべきである
すべき事項等
・ リサイクル法制も規制強化であることには違いない。日本の国際競争力が低下している中で、経済合理性を見ながら最低限の
法律にしてほしい
・ 拡大生産者責任は環境に対しては明らかに効果があるが、OECD のペーパーでもコストの視点は重要視されていない。拡大生産
者責任のコスト分析が必要ではないか
事業者と地方公共団体の処理 ・ 事業者ルートが構築される中で、市町村の廃棄物行政も再構築する必要がある。市町村の浮いたお金をどのように市民に還元
責任との関係、地方公共団体
していくかということも重要である
・ 一般廃棄物は市町村の責任ということから市町村が直接実施すると解釈がされてきたが最近では委託も含むと解釈される。責
の処理費用の在り方
任と実行を分けて考えた方が効率的ではないか
・ 拡大生産者責任は自治体からメーカーに責任が移っていくため、自治体に納める地方税が安くならなければならない。自治体
についての情報開示が進んでいないのではないか
国が技術開発や施設整備など
・ グリーン購入の促進等デマンドサイドのリサイクル政策が弱いのではないか
の適切な支援を行うべきでは
・ 事業者が独自にリサイクルルートをつくると物流コスト等隠れたコストが生じる。一生懸命取り組む企業にインセンティブを
与える仕組みが必要
ないか?
・ 再利用のための技術開発は、企業・業界の枠を越えた産官学の協力体制が必要
・ 様々な製品に関してリサイクル法が各々の主管省庁の下に整備されているが、国全体としてどのような循環型社会を目指すの
かといった、最終イメージを示してほしい
【特に重要と思われる意見】
① 事業者の責任として強調すべき要素
・ 拡大生産者責任で重要なのは総括的な責任を事業者が負うことであり、リサイクルを行う主体は事業者
でなくてもよい。
② 各主体の役割分担、費用の考え方
・ 費用負担のコンセンサスを得ることが最大の課題
・ 不法投棄を防ぐにはデポジット制や費用前払い制がよいのではないか
・ 特に消費者の役割分担を議論する必要がある
③ 既存法について配慮すべき事項
・ 拡大生産者責任が強化され、事業者が積極的に取り組もうとする際に、廃掃法等が障害にならないよう
に配慮すべき
④ 地方公共団体の処理責任、費用のあり方
・
市町村の廃棄物行政の再構築が必要。市町村の浮いたお金をどう市民に還元するか
⑤ 国による適切な支援
・ グリーン購入等デマンドサイドのリサイクル政策が弱い
・ リサイクルに一生懸命取り組む企業にインセンティブを与える仕組みが必要
1-7
2)第2回企画ワーキンググループ(2001 年9月 10 日)
議題は拡大生産者責任等の基本的な考え方の整理について、特に役割分担
についての議論が中心となった。
以下に、第2回企画ワーキンググループでの配付資料を参考とし、拡大生
産者責任に関する検討状況を記す。
①役割分担に関する議論
まず、各主体の役割分担について、以下のように整理している。
○事業者
:環境配慮型製品の製造・販売、リサイクル等の実施、環境
情報の提供、素材産業と加工組立産業の連携、技術開発
の推進、動脈と静脈の一体化他
○消費者
:分別回収への協力、環境配慮型製品の選択的購入、NPO を
通じた活動他
○国、自治体:制度設計、市場の整備、環境教育、廃棄物処理の着実な実
施、NPO 等との関係者との十分な意志疎通、情報公開他
次に、各主体の役割を適切に促進していくための政策手法として以下を挙
げている。
・自主的取組を促進するためのガイドライン等
・経済的なインセンティブやディスインセンティブを与える経済的手法
・法制化等により関係主体の役割を定める規制的手法
そして、役割分担を考える上で必要となる、物理的責任と経済的責任につ
いての考察を提示している。
○物理的責任→実効性、効率性の観点から判断(既存の回収・リサイクル
システムがある場合は活用するなど)
○経済的責任→リサイクル費用については、拡大生産者責任の考え方を導
入する場合、最終的にはその一部または全部が消費者の
負担となる。そのため、消費者による費用の支払時期の
検討にあたって以下のような留意事項が考えられる。
・ 不法投棄の防止
・ 長期使用の促進
・ リサイクル費用の予見性の反映→予見しづらい場合、排出時徴収が
有効
・ 義務対象者の補足(フリーライダーの排除)
1-8
②個別分野ごとの回収・リサイクルシステムの分析
◇ 事業者等の役割分担
それぞれの個別分野ごとの回収・リサイクルシステムと役割分担を簡便
にまとめると以下の通りである。
・ 設計・製造面での配慮
・ 回収への対応
・ 再資源(商品)化への対応
・ 回収リサイクルシステムの全体的管理・・・容器包装除く
・ 費用面での対応・・・容器包装は、地方自治体(回収)及び生産者
(処理・処分)
、二次電池は生産者が一次的な費用負担を行う。家電、
事業系パソコン、自動車では、ユーザが一次的な費用負担を行う。
◇ リサイクルシステムの費用・便益分析
・容器包装リサイクル法の導入による効果と費用
平成 11 年度の埋立処分量の実績値と推計値を比較し、削減効果を提
示した。市町村の追加的費用は、最終処分場が既設の場合 95 億円、新
設の場合 16 億円とした。
・家電リサイクル法の費用・便益分析
仮定による推計値として、事業者による収集、処理・処分費用は 271
億円から 503 億円に増加としている。
便益としては、地方公共団体の収集量と費用がそれぞれ 527 万台か
ら 46 万台、379 億円から 25 億円に減少するとしている。
コスト面では事業者の負担費用が増加するものの、便益面ではリサ
イクル資源量の活用や地方公共団体の処理費用削減等の便益が増加す
ることとなり、費用の増加を上回る便益を生むとしている。
③その他検討すべき課題
◇ 制度的障害の除去
・ 廃棄物処理法の規制緩和→原料を逆有償で調達する場合、廃棄物処
理業の許可及び廃棄物処理業施設の設置の許可の義務付けを規定
・ 産業廃棄物と一般廃棄物の区分見直し
・ リサイクルの観点からの特例措置
→ 環境省が告示する廃棄物の再生利用を行う者であって環境大臣の認
定を受けた者は、業及び施設設置の許可を受けずにリサイクルを行
うことができるという規定が追加(1997 年廃棄物処理法の改正)
・・・
同制度の対象品目として満たすべき要件について明確な指針を策定、
対象廃棄物の範囲拡大など
1-9
・ 独占禁止法の規制緩和
・ 廃棄物処理施設の設置に当たっての諸制度
◇ 地方公共団体の廃棄物処理行政
拡大生産者責任の導入による地方公共団体の廃棄物処理支出の減少分
について、住民に還元されることがなければ、事業者による処理にかか
る費用の分だけ社会全体としてのコストが増加したことになる。
本ワーキンググループでの議論のうち、拡大生産者責任の基本的な考え方
の整理に関する部分について、主要なものを以下に記す(第2回企画ワーキ
ンググループ議事録より抜粋)。
(役割分担・責任)
・ 拡大生産者責任ということで、相当の設備・人員を抱える自治体が
すべての責任を製造事業者に押し付けていくのは自治体として望ま
しい姿ではない。
・ 一時的に事業者と消費者がコストを分担することになっても、最終
的には消費者のコスト負担になるのが正しい姿と認識している。
・ 回収・リサイクルシステム全体に関して事業者が統括的な役割を果
たすという表現は事業者の負担が大きすぎる。事業者が担える範囲
の文言に変更すべきである。
・ 事業者に一律に統括的な役割を求めるのには疑問がある。製品特性
を踏まえ、実態に即して物理的責任と経済的責任を定めるべきであ
る。
・ 役割分担に関して法を強く意識しすぎている。企業の自主的な取組
を推進していくルールづくりも考慮する必要がある。
・ 流通の現場から見ると、今は消費者に責任を求められる状況にはな
い。法律があっても机上の空論になってしまい、不法投棄等が発生
する。消費者にどう認識してもらうかをもっと考えてもらわなくて
はならない。現状、税金で負担している以上、リサイクルに資金が
必要という認識は持てない。
・ リサイクル率の達成に関し、実施の責任はリサイクル業者にあるが、
統括的にリサイクル率を達成できるような状況を作り上げるのは事
業者である。制度構築の際の責任と比較して、リサイクルシステム
が軌道に乗った後の運用段階では制度を補強していくという意味で
の統括的な責任が一番重要である。
1-10
(費用負担)
・ 例えば容器リサイクル法のように自治体が費用までも負担している
点が問題である。費用負担の問題は、最終的には誰が負担するのか
ということである。
・ 負担の公平性をいかに保つかが難しい。物理的責任に関しては、実
効性や効率性、既存のシステムに基づき決めることに異論はないが、
資金負担に関する公平性を保つこと、特に税金等がどのような形で
投入されているかが問題である。
(既存システム)
・ 容器包装リサイクル法は、回収が地方自治体の役割となっていて、
その費用負担はリサイクルの費用より大きいことは事実である。現
行制度には疑問がある。
・ ドイツの DSD の場合は回収も事業者が行うが、日本の容器リサイク
ルの場合は自治体が収集運搬を行う。今は社会的な実験を行ってい
るところであり、随時変更していくべきである。
・ 回収率とか回収目標があいまいであるという意見があるが、容器包
装リサイクル法、家電リサイクル法ともに現行法ではそのような数
値を入れることが難しい。
(その他)
・ 中小企業、零細企業、新規参入者に関して拡大生産者責任を適用す
ることを考えたときにどのような影響が出るのか検討が必要である。
・ リサイクルの対象となる製品が増え、製品ごとにルールを決めるの
は、消費者の混乱を招く。消費者にとってわかりやすい仕組みにす
るべきである。
・ 今回の議論の中では、拡大生産者責任に関する情報普及の観点とリ
サイクル市場のマッチングの問題が抜けている。
・ 拡大生産者責任という言葉にとらわれ過ぎである。拡大生産者責任
は抽象的なものでしかなく、個別の製品ごとに制度設計した後で、
背景としての理論を考える際に、拡大生産者責任の視点から評価す
るといったようにするべきである。
1-11
表1−4
第2回企画ワーキンググループでの議論
論点
各主体の役割分担
委員からの意見
・ 一時的に事業者と消費者がコストを分担することになっても、最終的には消費者のコスト負担になるのが正しい姿と認識している
・ 回収リサイクルシステム全体に関して、事業者が統括的な役割を果たすとあるが、統括的な役割ということを、事業者がシステム
を取りまとめ・監督するといいうことだと解釈すると、事業者にとって負担が大きすぎる。事業者が担える範囲の文言に変えたほ
うがよい
・ すべてを事業者任せではリサイクルがビジネスとしてうまくいかない
・ 処理工場をつくる際に、自治体がいくらで用地を売ってくれるのか、住民との関係をどうすればいいのか、再生製品をどう販売し
たらいいのか、その辺を考える必要がある
・ 流通の現場から見ると、今は消費者に責任を求められる状況にはない。法律があっても机上の空論になってしまい、不法投棄等が
発生する。消費者にどう理解してもらうかをもっと考えてもらわなくてはならない。現状、税金で負担している以上、リサイクル
に資金が必要という認識は持てない
各主体の役割を適切に促進
していくための政策手法
・ 負担の公平性をいかに保つかが一番重要な点である。物理的な責任に関しては、実効性や効率性、既存のシステムに基づき決める
ことに異論はない。資金負担に関する公平性を保つことが一番大切である。税金等がどのような形で投入されているかが問題であ
る。特定の製品に偏って投入されると、企業としては不公平感が生じる。
・ 行政はリサイクルに対し公的費用がどのように投入されているかという情報等の開示を行ってほしい。これが消費者の消費活動の
インセンティブになる。
・ 今回の議論において、論点として書けている点が2点ある。まず拡大生産者責任に関する情報普及の観点が抜けている。拡大生産
者責任は Shared Responsibility、共有責任の一つの概念であり、その中で消費者が主体的に関わるためには情報共有が必要であ
る。事業者のリサイクル費用、自治体の処理費用に関しての情報提供が必要である。次に、リサイクル市場のマッチングの問題が
抜けている。出口の問題を考えなければならない。
個別分野ごとの回収・リサ
(事業者等の役割)
イクルシステムの分析
・ 事業者に一律に統括的な役割を求めるのには疑問がある。製品の特性を踏まえ、実態に即して物理的責任と経済的責任を定めるべ
・・事業者等の役割分担
・リサイクルシステムの費
用・便益分析
きである。家電リサイクル法と容器包装リサイクル法とは本質が異なる。容器包装に関しては、家庭から出てくるごみの分別は既
存の回収ルートを活用した方が効率的であり、事業者が担うものではない
・ 循環ができあがると、その中で主体的な役割を果たすのは事業者と市民である。事業者の統括的責任であるが、リサイクル率の達
成に関し、実施の責任はリサイクル業者にあるが、統括的にリサイクル率が達成できるような状況を作り上げるのは事業者である。
制度構築の際の責任と比較して、リサイクルシステムが軌道に乗った後の運用段階では、制度を補強していくという意味での統括
的な責任が一番重要である
・ 役割分担に関して、法を強く意識しすぎている。企業の自主的な取組を促進していくルール作りも考慮する必要がある
(個別分野ごとの回収・リサイクルシステムの分析)
・ 回収率とか回収目標があいまいであるという意見があるが、容器包装リサイクル法にせよ家電リサイクル法にせよ、現行法ではそ
のような数値を入れることが難しい。循環基本法による循環基本計画のような大きな枠組みの中で考える必要がある
・ 経済的責任に関し、消費者の支払い時期を検討するにあたって検証せねばならないこととして不法投棄の防止が最初に挙げられて
いるが、非常に疑問に残る。本来あるべき姿として製品の長期使用が最初に来るべきである
(拡大生産者責任およびリサイクル法一般)
・ リサイクルの対象となる製品が増え、製品ごとにルールを決めるのは、消費者の混乱を招く。消費者にとってわかりやすい仕組み
にするべきである
・ 個別の回収リサイクルの枠組みを積み上げれば全体の枠組みができるとは思うが、そろそろ既にある個別の枠組みの見直しをして
全体の統合を行うべきである。その際、これまでの枠組みを全て踏襲するのは無理である
・ 拡大生産者責任は論議自体まだ発展途上のものである。日本の制度も拡大生産者責任を意識してきたと思うが、その辺の分析をす
ることで、世界の拡大生産者責任研究の発展に貢献してもらいたい
・ 中小企業、零細企業、新規参入者に関して拡大生産者責任を適用することを考えたときに、どのような影響が出るのか。その点を
含めて、日本流の整理の中で答えを出していくことが必要である
・ リサイクル業界はほとんどが中小企業である。中小企業の問題を今後もう少し深く考えてほしい。
・ リサイクルということで色々な法律ができているが、今の世の中の急速な変化と比較して、見直しの期間が非常に長い
1-12
表1−4
第2回企画ワーキンググループでの議論(続き)
論点
委員からの意見
その他検討すべき課題
(廃棄物処理法、廃棄物の定義)
・制度的障害の除去
・ 廃棄物の定義から変えないといけない。リサイクルの対象になっているものは廃棄物ではないというように変えなければならない
・地方公共団体の廃棄物処理
・ 廃棄物処理法の見直しが言われるが、見直しを必要とする理由が人によって異なる。廃棄物処理法の役割として一番期待されてい
行政
るのは、不適正処理の防止である。廃棄物の定義を変えたら、不適正処理の防止をどう担保できるのか、そこから議論を進める必
要がある
・ 一般廃棄物に関しては、もっと排出者責任を考えて行かなくてはならない。廃棄物として排出するのか、リサイクルするものとし
て排出するのかを明確にする必要がある。市町村の責任は廃棄物として排出するものの適正処理であるべきである
・ 廃棄物からリサイクルするものすべてを循環資源として分類してしまうと、循環資源の名目で不法投棄が行われる可能性がある。
そういったシステムをきちんと抑えておく必要がある。このことは廃棄物の定義の見直しにも関わる廃棄物の定義の見直しに関し
てこのような考え方及び方向付けを出していかなくてはならない
・ この問題に最初に直面したのはドイツであり、ドイツでも制度改定がされたが、うまくいっていないという指摘もある。廃棄物を
循環資源として読みかえただけの、見かけ上の話だけで進めていくと、結果として我々が望んでいないシステムができあがってし
まう。
・ 廃棄物処理法の見直しの方向性が問題である。廃棄物処理法を見直して、製品別の法律を施行すると、リサイクルを装った不法投
棄が起きるのではということを危惧している。廃棄物処理法からすべての循環資源を外すのは時期尚早である。
・ 廃棄物の定義に関しては、日本の廃棄物行政の歴史を踏まえる必要がある。廃棄物処理法によって廃棄物という定義ができ、事業
系一般廃棄物が存在することになったが、本来税金を払って処理する都市ごみを一般廃棄物、それ以外をすべて産業廃棄物とする
べきであった。
・ 廃棄物処理法はあくまでも生態系と経済活動を保つための法律である。その為、ある程度の規制的側面はあって当然である。リサ
イクル法はあくまでも市場原理に基づく中で成立するものである。リサイクル法はインセンティブの世界である。その辺をきちん
と定義するべきである。
(独占禁止法との関係)
・ 独占禁止法との関係であるが、もう少し整理が進んでいるはずである、循環型社会はコストミニマムでの実現が考えられている。
動脈ではコストミニマムが効率的な社会を生み出すということは知られているが、これに静脈が取り込まれた場合に、独占禁止法
のために非効率なシステムを作り出す可能性があり、社会的なコストの最小化が実現しないかもしれない。
(地方公共団体の廃棄物処理行政)
・ 拡大生産者責任ということで、相当の設備・人員を抱える自治体がすべての責任を製造事業者に押し付けていくのは自治体として
望ましい姿ではない
・ 拡大生産者責任の中でも物理的責任と経済的責任と分けられているように、市町村の責任も物理的責任と経済的責任に分けられる。
市町村の物理的責任を考える際は、当面対応しうる役割と長期的な考えに沿った役割とに分けて考えるべきである。長期的な考え
に沿った役割を考えると、地方自治体から責任を製造業者に移して小さな自治体政府に移行するということになるが、当面は対応
できない。物理的責任に関しては、ある時点までの移行過程として既存のインフラを活用するという意味でも自治体がある程度の
責任を負うことはあり得る
・ たとえば容器包装リサイクル法のように、自治体が費用までも負担している点が問題。費用負担の問題は、最終的には誰が負担す
るのかということである。従来納税者として負担している回収・リサイクル費用を今後は消費者として負担させる方向性が容器包
装リサイクル法と家電リサイクル法では必要である
・ 容器包装リサイクル法は、回収が地方自治体の役割となっていて、その費用負担はリサイクルの費用よりも大きいことは事実であ
る。今のやり方には疑問がある
・ 容器包装リサイクル法でも、家電リサイクル法でも、回収を含めたリサイクル率の目標が織り込まれていないのが問題である
・ ドイツの DSD の場合は、回収も事業者が行うが、日本の容器包装リサイクルの場合は自治体が収集運搬を行う。今は社会的な実験
を行っているところであり、色々問題があれば、変更していくべきである。
・ 行政のごみ処理コストが不透明であり、この不透明さが排出者のごみ処理のコスト負担を逃れる言い訳になっている。
(その他)
・ 容器包装リサイクル法も家電リサイクル法も、一般廃棄物と産業廃棄物という枠組に縛られているという印象がある。捨てられる
ことを前提として法律をつくる場合は、一般廃棄物の流れで処理することに縛られてしまう。建設リサイクル法でも、一度、廃棄
物としてから循環資源として取り出すという形になっている。捨てずにとっておくような前提での法律作りが必要である。そのよ
うな法律構造にどのようにして切り替えていったらよいのかも問題である
・ 排出者の意識向上のために、ごみ処理の有料化が論じられるべきである。ごみを排出した者が排出量に応じて料金を納めるという
考え方ができれば、拡大生産者責任という意識も広がっていくと思われる
・ 流通の現場では循環型社会の構築を目指して経済性と環境を両立しようと考えても色々な障害が発生してしまい、計画段階から実
行段階に移すことができないのが現状である。
・ 循環型基本法ができた際に、日本全体の中で循環を考えるという視点があった。循環型基本法の下にある法律の中で矮小化されて
しまっているのではないか。もう少し幅広い視点から環境や循環型社会を考える必要がある。
1-13
以上に示したように、第1回、第2回企画ワーキンググループにお
ける拡大生産者責任についての議論の主要なポイントは以下のような
事項であった。
・関係各主体の役割分担の明確化
事業者、消費者、国・自治体の役割分担について活発な意見が出
された。拡大生産者責任の性格として自治体から川上へ責任をシフ
トしていくのは当然のことであるが、事業者が担うことができる責
任の限界や消費者が果たすべき責任などについての議論、また費用
負担についての議論が主だったものであった。
・回収リサイクルシステムの分析
容器包装リサイクル法、家電リサイクル法について、導入の費用
対効果が示されたが、特に容器リサイクル法においては回収責任が
自治体にあり、その費用がリサイクル費用よりも大きいことなどに
ついて意見が出された。
・地方公共団体の責任
拡大生産者責任施策により、地方自治体の負担が減るが、特に費
用面で浮いたお金をどう市民に還元していくか、また相当の設備、
人員を抱える自治体がすべての責任を事業者に押し付けるのは望
ましくない、など、拡大生産者責任導入による自治体の廃棄物行政
のあり方について議論がなされた。
・制度的障害の除去
廃棄物を循環資源と位置づけ直すか否か、それに伴う廃棄物処理
法の見直しの方向性に関する議論が活発になされた。
廃棄物処理法は規制的側面があってしかるべき性格のものであ
り、リサイクル法は市場原理に基づく中で成立するものであるとい
う点が重要であり、廃棄物の定義や廃棄物処理法の見直しは慎重に
議論されるべきものである。
1-14
1.2
国内外で開催された拡大生産者責任関連セミナー、関連資料に
おける論点
国内外において実施された拡大生産者責任に関するセミナー開催状況(過
去3年間実施されたもの)等を調査し、主要な話題や拡大生産者責任に対す
る意見をとりまとめた。
海外の対象国は、ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ、アメリカ、
オーストラリア、カナダ、イギリス、韓国の9カ国である。2002 年 12 月に
OECD により開催された「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」
の参加者や関係機関を通じ、イギリスを除く8カ国から、関連する情報を入
手した(「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の内容について
は第2章を参照)。
海外に関する問い合せ先と問い合せ結果を表1−5に示す。
国内に関しては、また、69 団体に対してセミナー実施状況に関する問い合
せを行ったが、拡大生産者責任に関連するセミナーを開催しているとの回答
は、回答が得られた 33 団体中2団体のみであり、いずれも内容は非公開との
ことであった。
また、アンケートとは別に、環境省から財団法人 クリーン・ジャパン・
センターが主催した「平成 13 年度「拡大生産者責任」セミナー」の情報を頂
いた。また、インターネットによる検索の結果、K−RIP(九州地域環境・リ
サイクル産業交流プラザ)が主催した「環境経営支援セミナーin 大分」
、北
海道大学大学院大学院工学研究科 都市代謝システム工学(荏原)講座、国
立公衆衛生院、廃棄物学会が主催した「拡大生産者責任(EPR)等廃棄物処理に
関するシンポジウム―OECD の EPR 戦略と日本の取り組み―」の情報を入手し
た。
入手した拡大生産者責任関連セミナー情報について、セミナー名、開催日
等、どのような情報を入手したのかを表1−6に示す。
1-15
EPR関連図書リスト
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1-21
12
13
14
15
16
17
18
19
20
図書名
OECDレポート「日本の環境政策」
拡大生産者責任(仮訳)
循環型社会キーワード
Extended Producer Responsibility A GUIDANCE MANUAL
FOR GOVERNMENTS(原元)
これでわかるごみ問題Q&A
ごみ行政はどこが間違っているのか?
拡大する企業の環境責任
「循環型社会」を問う-生命・技術・経済”
循環型社会を創る
自動車リサイクル
家電製品のリサイクル-100の知識
循環経済・廃棄物法の実態報告-最新主要法令と実際-
(翻訳本)
著者
OECD
OECD
OECD
訳者
出版者/発売元
税別価格(円)
中央法規
2,400
クリーン・ジャパンセンター
非売品
クリーン・ジャパンセンター
1,714
OECD東京センター
4,200
熊本一規
合同出版
熊本一規
合同出版
佐野敦彦、他
佐野環境年計画事務 環境新聞社
エントロピー学会
藤原書店
エントロピー学会
藤原書店
梶原拓治
工業調査会
永田勝也・監修
東京書籍
ヨッハイム・H.シュ パンゲン 中曽利雄・総編訳者 ドイツ循環経済
ベルク、ローダ・フェアハイエ
ン、ザンドラ・シュトリヴスキー
1,300
1,400
2,800
2,200
2,400
2,000
1,300
9,400
EPRセミナー開催状況調査アンケート(回答団体)
・実施機関:平成15年2月25日から3月10日
・配布数:69団体(内10団体、転居先不明で未配達)
・回答数:33団体
・回答率:55.9%(33団体/59団体)
・アンケート用紙:別紙
番号
団体名
1
2
3
4
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
役職
氏名
郵便番号
住所
表1-5 拡大生産者責任関連セミナー実施状況の問い合わせ先、問い合わせに対する回答、得られた情報、及び情報の選択理由(海外)
国 名
所属先
回答(*) 拡大生産者
責任関連セミ
ナーに関する
情報(**)
1 フランス①
2 フランス②
ATOFINA
ADEME
○
○
○
○
3
4
5
6
7
Environment Directorate, OECD
OECD代表部
France Telecom
在日フランス大使館
Ministere de l'amenagement du territoire
et de l'environnement
Ministere de lecologi et du
developpement durable
Ecole des Mines de Paris
Der Grune Punkt Duales System
Deutschland AE
P&G(Japan External Relationsも含む)
○
○
○
○
○
×
×
×
×
×
ITUT
Federation of German Industries
Ministry of Housing, Spatial Planning and
the Environment
フランス③
フランス④
フランス⑤
フランス⑥
フランス⑦
8 フランス⑧
9 フランス⑨
10 ドイツ①
11 ドイツ②
12 ドイツ③
13 ドイツ④
14 オランダ①
15
16
17
18
得られた情報
情報の選択理由(拡大生産者責任関連セミナーでの議論(論点)を中心にまとめた)
資料(OECDセミナー2001「Integrated Product Policy and EPR」)
ATOFINAとADEMEの資料を確認した結果、ATOFINAの資料には、化学関連企業の意見(政府は企
2002年に開催された「産業とリサイクル2002-廃棄製品に関する専門家会合(シンポジウム)」の発 業に規制をかけるのではなく、目標だけを設定し、目標達成の手段は企業に決めさせるべき)が若
干載っているのみだった。ADEMEの資料には、シンポジウムの発表タイトルのみが載っていたが、こ
表タイトル
のシンポジウムは近い過去に開催されており、また1,000人近い参加者があったことから、発表タイト
ルからフランスの拡大生産者責任の動向を若干でも知ることができると思い、この資料を訳すことと
した。
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(2001年OECD/EPRセミナー参加者)
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(フランス及びイギリス)
フランス国内とヨーロッパで開催されるイベント
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(フランス)
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(フランス)
×
×
○
○
○
○
×
×
○
2002年に開催されたマルタードイツワークショップ「マルタ島における廃容器のEU指令の実施につ
いて」の発表タイトル
資料(①「European perspective on Integrated Waste Management, EPR and container deposits」、
②「Integrated Waste Management: LCA and its Practical Use」、 ③「P&G launches the 2nd edition
of the book "Integrated Solid Waste Management - A Life Cycle Inventory"」、 ④「Variable-Rate
or "Pay-as-you-throw" Waste Management: Answers to Frequently Asked Questions」、 ⑤「The
Challenge of the German Industry in Solid Waste Management: the Example of Packaging」、 ⑥
「OECD Seminar "EPR Program Implementation and Assessment" 2001」、 ⑦「OECD Working
Group on Waste Prevention and Recycling "EPR: Draft Programme of Work and Budget for 20032004」)
拡大生産者責任関連セミナーの論点に関する情報は入っていなかったが、発表タイトルから、ドイツ
及びマルタにおける拡大生産者責任の動向が若干でもわかると思い、訳すこととした。
左記の7つの資料を確認した結果、ヨーロッパの拡大生産者責任政策に対して、反対意見を述べて
いる①「European perspective on Integrated Waste Management, EPR and container deposits」が参
考になると思われたため訳した。 ⑦「 OECD Working Group on Waste Prevention and Recycling
"EPR: Draft Programme of Work and Budget for 2003-2004」は、未確定(案)の状態だったため翻
訳は控えた。
○
資料(オランダの拡大生産者責任政策「REVISED STAND ON PRODUCER RESPONSIBILITY IN
WASTE POLICY IN THE NETHERLANDS」)
拡大生産者責任関連セミナーに関する情報は入っていなかったが、生産者責任は、廃棄物の発生
抑制につながらないと結論付けているため、日本の今後の生産者責任政策に参考になると思い翻
訳した。
オランダ②
在オランダ日本大使館
オランダ③
在日オランダ大使館
オランダ④
Vrije Universiteit
スウェーデン① Swedish Environmental Protection
Agency
○
○
×
○
×
×
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(オランダ)
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(オランダ)
○
拡大生産者責任関連セミナーに関する情報は入っていなかったが、スウェーデンの電子・電気機器
の拡大生産者責任政策(個々の費用責務と環境デザインの関係)に触れている①「 International
Electronics Recycling Congress」が参考になると思われたため、訳すこととした。
19 スウェーデン② スウェーデン大使館科学技術部
20 スウェーデン③ Lund University
26 アメリカ①
Product Stewardship Team, Minnesota
Office of Environmental Assistance
○
×
○
×
スウェーデンの電子・電気機器の拡大生産者責任に関する情報等(①「International Electronics
Recycling Congress」、②「Europe Information Service」、③「Summary of WEEE & RoHS
directives」、④「Comparison Swedish ordinaces and practical ststem」、⑤「Introduacion to the
Swedish Ordinace on Producer Responsibility for Electrical and Electronic Prducts」)
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(スウェーデン)
○
拡大生産者責任に関するホームページ(①Minnesota Office of Environmental Assistance、②US
EPA、③California Integreated Waste Management Board)
左記のホームページを検索した結果、「第3回全米電子機器プロダクト・スチュワードシップ関係者対
話公式会合」の議事録に、電子製品の拡大生産者責任に関する議論が掲載されていたため、訳す
こととした。
27 アメリカ②
US EPA
28 オーストラリア Environment Australia
×
○
○
29 カナダ①
○
○
拡大生産者責任に関するホームページ(①オーストラリア連邦政府(包装・電気製品・廃油・プラス
チックバッグ)、②ニューサウスウェールズ州政府、③ヴィクトリア州政府、④サウスオーストラリア州
政府)
拡大生産者責任に関する情報(①カナダ環境省の拡大生産者責任に対する取り組み、②カナダ環
境省のホームページ)
左記のホームページを検索した結果、電子・電気機器と包装に関する拡大生産者責任の情報が若
干あった。電子・電気機器の拡大生産者責任は、現在戦略が作成されている最中で、まだ未確定で
あるため、包装に関する拡大生産者責任の情報「National Packaging Covenant」を訳すこととした。
カナダ環境省のホームページに掲載されている、第2回カナダEPRワークショップでの議論(拡大生
産者責任に関する様々な話題)が役立つと思われたため訳すこととした。
○
○
拡大生産者責任に関する若干の情報(容器包装の製造者と新聞印刷業者に対する、製品の回収と 若干の情報であったが、カナダの拡大生産者責任に関する情報だったため、紹介することとした。
処理の義務づけの準備)
○
○
○
○
拡大生産者責任に関するホームページ(①Manitoba's Legislation and Regulations、②Manitoba's
Proposed Household Hazardous Waste Stewardship Program、③2002 Canadian Workshop on
Extended Producer Responsibility with additional links to programs across Canada and
Internationally、④Manitoba Product Stewardship Corporation Website)
拡大生産者責任に関する若干の情報(①拡大生産者責任に関する州・准州の役割、②Nova Scotia
でのリサイクル品目、③Nova Scotiaで課せられている生産者責任の品目)
30 カナダ②
31 カナダ③
32 カナダ④
Sustainable Consumption Division,
National Office of Pollution Prevention,
Environment Canada
Direction de l'analyse économique et de
la tarification, Qu-bec Environment
Department, MENV
Pollution Prevention Branch, Manitoba
Conservation
Nova Scotia Department of Environment
and Labour
③「2002 Canadian Workshop on Extended Producer Responsibility with additional links to programs
across Canada and Internationally」は、上記で紹介した第2回カナダEPRワークショップのことであ
る。
若干の情報であったが、カナダの拡大生産者責任に関する情報だったため、紹介することとした。
国 名
所属先
回答(*) 拡大生産者
責任関連セミ
ナーに関する
情報(**)
得られた情報
33 カナダ⑤
34 カナダ⑥
36 韓国①
Alberta Used Oil Management
Delegation Permanente
Sangmyung University
×
×
○
○
拡大生産者責任関連セミナーに関する若干の情報
35 韓国②
37 韓国③
Association of Electronics Environment
Resource Recycling Division, Waste
Management and Recycling Bureau, The
Ministry of Environment
Korea Resources Recovery and
Reutilization Corporation
National Institute of Environmental
Research
Korea Environment Institute
Samsung Electronic
Embassy of Japan in Korea
University College London
WPNEP
Department of the Environment,
Transport and the Regions
在イギリス日本大使館
Pira International
○
×
×
×
拡大生産者責任関連セミナーの問い合わせ先(韓国)
38 韓国④
39 韓国⑤
40
41
42
21
22
23
韓国⑥
韓国⑦
韓国⑧
イギリス①
イギリス②
イギリス③
24 イギリス④
25 イギリス⑤
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
注) (*):アンケートに対する回答(○:有り、×:無し)、(**):拡大生産者責任関連セミナーに関する情報(○:有り、×:無し)
情報の選択理由(拡大生産者責任関連セミナーでの議論(論点)を中心にまとめた)
拡大生産者責任関連セミナーの論点に関する情報は入っていなかったが、論点以外の情報を若干
得たので紹介することとした。
表1−6
拡大生産者責任セミナー事例調査
海
入手先
外
国
内
ミニセミナー
国
ダ
ダ
ダ
ダ
カ
CJCセミナー
ナ
ナ
ナ
ナ
リ
ダ
①
④
③
②
①
①
①
②
①
②
①
KーRIPセミナー
韓
カ
カ
カ
カ
メ
ン
ツ
ツ
ス
ス
オーストラリア①
ア
ラ
イ
イ
ン
ン
ス ウ ェ ー デ ン ①
オ
ド
ド
ラ
ラ
質問内容
フ
フ
(海外の
入手先は
表1−5
に対応し
ている)
情報の入手状況
セミナー名
○
○
○
―
―
○
○
―
○
―
―
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―
○
○
○
開催日
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開催場所
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セミナー目的
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―
―
―
主催
―
○
○
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○
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○
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○
○
○
○
主要な話題
―
○
○
―
―
―
○
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○
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―
―
○
○
○
○
―
―
―
―
―
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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―
○
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○
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○
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―
○
○
○
○
○
○
○
○
―
○
○
※1
※3
※2
※2
※2
拡大生産者責任
に係わるセミナ
ーの主な論点
セミナーの対象
基調講演等のス
ピーカー
スピーカーの拡大
生産者責任に
対する立場・意見等
その他
備考
※○は情報が入手できたことを、−は情報を入手できなかったことを示す。
※イギリスは回答なし
※1 セミナー発表用資料入手
※2 ホームページの情報
※3 セミナー情報ではなく資料を入手
1-18
(1)海外の拡大生産者責任関連セミナー、関連資料
海外において実施された拡大生産者責任関連セミナー、関連資料の情報を
各国別に示す。
1)フランス
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関 9 者に、フランスにおける拡大生産者責任セミナーの事例について問い
合わせた。
問い合せ先は、以下のとおりである。
◇ Environment Directorate, OECD
◇ フランス環境・エネルギー開発庁(ADEME:AGENCE DE L’ENVIRONNEMENT
ET DE LA MAÎTRISE DE L’ÉNERGIE)
◇ OECD 代表部
◇ ATOFINA
◇ France Telecom
◇ 在日フランス大使館
◇ Ministere de l'amenagement du territoire et de l'environnement
◇ Ministere de lecologi et du developpement durable
◇ Ecole des Mines de Paris
問い合せの結果、Environment Directorate, OECD、フランス環境・エネル
ギー開発庁、OECD 代表部、ATOFINA、France Telecom、在日フランス大使館、
Ministere de l'amenagement du territoire et de l'environnement から回
答を得ることができた。拡大生産者責任セミナーに関する情報は、回答のあ
った 7 者のうち 2 者(フランス環境・エネルギー開発庁と ATOFINA)から得
られた。
ATOFINA からは、OECD セミナー2001「Integrated Product Policy and EPR」
の資料を、フランス環境・エネルギー開発庁からは、2002 年 11 月に開催さ
れた「産業とリサイクル 2002−廃棄製品に関する専門家会合(シンポジウ
ム)」の発表タイトルの資料(フランス語)を得た。
ATOFINA の資料には、化学関連企業の意見(政府は企業に規制をかけるの
ではなく、目標だけを設定し、目標達成の手段は企業に決めさせるべき)が
若干掲載されていた。
フランス環境・エネルギー開発庁の資料には、シンポジウムの発表タイト
ルやラウンドテーブルのテーマに関する情報が掲載されていた。シンポジウ
ムにおいて議論された内容については情報を入手できなかった。
本会合では、
「拡大生産者責任の活用」というテーマで、
「世界の状況と OECD
1-19
の手法」、「責任分担、廃棄物管理に関するコミュニケーション手法」、「最終
使用製品の管理:フランスのダイナミズム(動向)」といったタイトルの発表
が行なわれた。
ラウンドテーブルでは、
「生産者から消費者へ:如何に責任を分かち合うべ
きか」といったテーマで議論がなされた。
さらに、中古車分科会、家電製品分科会、農業製品廃棄物分科会、プラス
チックリサイクル分科会、中古タイヤ分科会、廃電池・バッテリー分科会、
廃農業製品分科会の各分科会で様々な議論が行なわれた。
また、本会合において、
「産業界の貢献:成功の秘訣」というテーマで、
「欧
州業界の多様性:教訓」というタイトルの発表が行なわれ、「コストの競争、
透明性、コントロール」というテーマでラウンドテーブルが開催された。
2)ドイツ
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関 4 者に問い合せを行った。問い合せ先は、以下のとおりである。
◇
◇
◇
◇
DSD(Duales System Deutschland AE)
P&G(Procter & Gamble)
ITUT(Internationales Transferzentrum für Umwelttechnik GmbH)
Federation of German Industries
問い合せの結果、Duales System Deutschland AE(DSD)と P&G の2者から
回答及び拡大生産者責任セミナーに関する情報を得ることができた。
DSD からは、2002 年に開催されたマルタードイツワークショップ「マルタ
島における廃容器の EU 指令の実施について」の発表タイトルの情報を入手し
たが、拡大生産者責任の論点に関する情報は入手できなかった。
P&G からは、以下の7つの資料を得ることができた。
• European perspective on Integrated Waste Management, EPR and
container deposits
• Integrated Waste Management: LCA and its Practical Use
• P&G launches the 2nd edition of the book "Integrated Solid Waste
Management - A Life Cycle Inventory"
• Variable-Rate or "Pay-as-you-throw" Waste Management: Answers to
Frequently Asked Questions
• The Challenge of the German Industry in Solid Waste Management:
the Example of Packaging
• OECD Seminar "EPR Program Implementation and Assessment" 2001
1-20
• OECD Working Group on Waste Prevention and Recycling "EPR: Draft
Programme of Work and Budget for 2003-2004
European perspective on Integrated Waste Management, EPR and container
deposits(P&G から入手)はヨーロッパの拡大生産者責任政策に対して、反
対意見を述べている。
P&G の拡大生産者責任における論点の概要は、以下のとおりである。
◇ ヨーロッパの拡大生産者責任政策(「The Waste Management Hierarchy」に
基づいて決められるヨーロッパの廃棄物管理戦略)は非常に硬直的であり、
特定地域におけるこの政策は、環境に効果的で経済的に有効な廃棄物管理
の選択に結びつかない。廃棄物管理方法の選択は、統合化された廃棄物管
理戦略のもとで、平等に検討されるべきである。その理由は、「The Waste
Management Hierarchy」によって順位付けされた廃棄物管理方法は、廃棄
物処理の違いによる環境影響(良い影響と悪い影響)を比較することがで
きない、費用面が考慮されていないので、経済的効果のある廃棄物管理シ
ステムにつながらない(ドイツの市町村の廃棄物管理費用は、拡大生産者
責任の導入によって、1991 年∼1995 年間に 84.5%も上昇)、廃棄物処理の
順位付けは、科学的または技術的論拠にほとんど基づいていない、の 3 つ
である。
◇ 廃棄物管理統合化システムの選択に、ライフサイクルインベントリーを用
いる方法がある。ライフサイクルインベントリーは、廃棄物管理における
エネルギー消費、大気・水・土壌への排出、全体のライフサイクルに関す
る情報を提供し、廃棄物からできる製品量(例:コンポスト)、二次的原料、
使用可能なエネルギーを予測する。しかし、各地域における廃棄物管理統
合化システムの最も良い選択方法は、地域のニーズと優先事項(例:最終
処分量を減らす、大気・水への排出を減らす)を考慮したものであり、そ
の選択は、ライフサイクルインベントリーだけで行うことはできない。ラ
イフサイクルインベントリーは、システム選択に必要な全ての環境情報を
提供するが、最終的な判断は、地域のニーズと優先事項を考慮して人間が
行うべきである。
◇ 廃棄物管理統合化システムの費用は、製品のライフサイクルの各段階(原
材料の抽出、処理、製造、配送、消費)で、廃棄物を排出する者が、廃棄
物の種類及び排出量に応じて支払うべきである。この責務分かち合いの方
法を用いると、市民は廃棄物の発生抑制につながる製品やサービスを選ぶ
1-21
ようになるので、生産者や製造者は、廃棄物発生量の少ない製品開発に取
り組むようになり、また市町村の廃棄物管理費用も削減する。
3)オランダ
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関(4者)に問い合せを行った。問い合せ先は、オランダ 住居・国土・
環境省(Ministry of Housing, Spatial Planning and the Environment)
、
在オランダ日本大使館、在日オランダ大使館、Vrije Universiteit である。
問い合せの結果、Vrije Universiteit を除く3者から回答を得ることがで
き、拡大生産者責任セミナーに関する情報は、回答のあった3者のうちオラ
ンダ 住居・国土・環境省から得ることができた。
拡大生産者責任に関する情報は、オランダ 住居・国土・環境省から、オ
ランダの拡大生産者責任政策「REVISED STAND ON PRODUCER RESPONSIBILITY IN
WASTE POLICY IN THE NETHERLANDS」に関する情報を得た。この資料には、拡
大生産者責任セミナーに関する情報は入っていないが、日本の今後の生産者
責任政策に参考になる情報が含まれている。
①オランダでは、廃棄物の発生抑制とリサイクル推進のために、ボランティ
アベースの生産者責任を 1990 年に導入した。
②廃棄物の収集と処理は、各製造者による独自のシステムではなく、製品ご
との共同システムで行われている。これは、各製造者による収集・処理が
実用的でないからである。個々のシステム開発は、関連法令によって妨げ
られてもいるが、個々のシステムを確立させるための試みは、どれも実現
することができなかった。
③廃棄物処理費用の外部化(処理費用を目に見えるかたちにする)は、生産
者に収集・処理システムを進んで作らせ、また消費者への教育効果にもつ
ながる。しかし、オランダ競争局(Netherlands Competition Authority)
は、このシステムが競争に関する法律に矛盾していると主張しており、矛
盾をめぐる議論は現在も続いている。
④廃棄物処理費用は、リサイクル率ではなく、製品の型によって決められて
いる。生産者は、リサイクル率に応じた廃棄物処理費用の相違は、非常に
複雑であると考えている。実際、製造期別によるテレビのリサイクル率の
比較調査によると、同世代に作られたテレビのリサイクル率に違いはほと
んどない。これは、製品価格への影響がほとんどなく、リサイクルデザイ
ンのインセンティブがほとんど与えられないということになる。但し、情
1-22
報・伝達技術機器については、処理費用に大きな違いがでており、費用は
実際の処理量に応じて請求される。
⑤廃棄物処理費用は、
「pay-as-you-go システム(新製品で徴収した処理費
用を、その年に廃棄される製品の処理費用にあてる)」で徴収した料金で
賄っている。生産者は、生産者自身に責任のない製品(例:製造者が市場
からいなくなってしまった製品や製造者が不明な製品)に対しても管理責
任を負っている。廃棄物処理費用が不足しないように、費用を別に蓄えて
おくケースが多いが、この蓄えた費用が以前に問題となった。
⑥全ての製品に廃棄物処理費用を課すことについて同意がなされている。こ
れは、生産者基金システムに参加しないフリーライダーが、競争面で優位
にたつことによって、収集システム全体に害が及ぶことを避けるためであ
る。
⑦ 多くの法規制は、製品の最終所有者が、その製品を無料で廃棄できるよ
うにすべきであるとしている(対象製品:廃自動車といくつかの大型家電
製品)。この「無料」の法規定は、製品の運搬にも当てはめることができ、
これによって、不法投棄を減らすことができる。しかし、非常に汚染され
た廃棄製品の無料処理は、非常に困難である。
⑧議会(AMvB)の規則は、廃棄製品の収集に関する生産者責任を明確に規定
していない。議会の規則では、大型家電製品(洗濯機・冷蔵庫・テレビ・
ハイファイ製品)の生産者・輸入者の責務は、自治体や小売業者による廃
棄製品の収集後に生じることになっている。
⑨生産者責任の導入によって、廃棄物の発生は抑制され、リサイクルしやす
い製品デザインが開発されると考えられていたが、実際は予想どおりにな
らなかった。それは、以下の理由のためである。
◇ 生産者責任のほとんどの基金は、徴収された廃棄物処理費用で賄われて
おり、その費用は、リサイクル率に応じた額ではなく、製品ごとに統一
化された費用となっている。
◇ リサイクル率による徴収費用の変更は、製品の品質に合わせた収集・分
別の必要性があるだけでなく、システム登録にもかなり高額な費用がか
かるため実行が難しい。
◇ 廃棄物の処理費用は、一般的に、製品価格の僅かな部分しか占めないの
で、リサイクルを考慮したデザインで処理費用を削減しても、製品価格
に影響を与えることはほとんどない。また費用の面から見ても、販売競
1-23
争に影響はしない。
⑩生産者責任の導入によって、収集とリサイクル量が急激に増加したが、そ
れらにうまく対応できたのは、以下の理由による。
◇ リサイクルに関する生産者責任のほとんどは、明確な基準のもとで具体
的な責務が打ち出された。
◇ 生産者責任システムによって、廃棄物処理費用が課せられたため、製品
のライフサイクルの赤字問題が解決された。
◇ 共同組織の規模と市場力が効果的にまとまったため、廃製品の分別収集
と処理が可能になった。
◇ 独自の目標と方法を持った共同組織が、数多く出現した。
⑪オランダで導入した生産者責任の原則は、発生抑制やリサイクルしやすい
製品設計につながらなかった。その理由は以下の通り。
◇ 生産者責任のほとんどの基金は、徴収された廃棄物処理費用でまかな
われている。生産者はどのケースにおいても、リサイクル率による徴
収費用を変更する方法ではなく、製品ごとに統一された徴収費用を選
択している
◇ リサイクル率による徴収費用の変更は、製品の品質に合わせた収集・
分別の必要性があるだけでなく、システム登録にもかなり高額な費用
がかかるため実行が難しい。更に付け加えると、同じ製品のリサイク
ル率の差はわずかである。
◇ 廃棄物の処理費用は、一般的に、製品価格の僅かな部分しか占めない
ので、リサイクルを考慮したデザインで処理費用を削減しても、製品
価格に影響を与えることはほとんどない。また費用の面から見ても、
販売競争に影響はしない。
1-24
4)スウェーデン
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関(3者)に問い合せを行った。問い合せ先は以下の3社、スウェーデン
環境保護庁(Swedish Environmental Protection Agency)、スウェーデン大
使館科学技術部、Lund University である。
問い合せの結果、スウェーデン環境保護庁とスウェーデン大使館科学技術
部から回答を得た。拡大生産者責任に関する情報は、回答のあったスウェー
デン環境保護庁から得ることができた。
スウェーデン環境保護庁から、拡大生産者責任に関する情報とし、
「International Electronics Recycling Congress」、「Europe Information
Service」、「Summary of WEEE & RoHS directives」、「Comparison Swedish
ordinances and practical system」、
「Introduction to the Swedish Ordinance
on Producer Responsibility for Electrical and Electronic Products」の
5つの資料を入手した。
上記の資料には、拡大生産者責任セミナーに関する情報は入っていなかっ
たが、スウェーデンの電子・電気機器の拡大生産者責任政策(個々の費用責
務と環境デザインの関係)に触れている上記 International Electronics
Recycling Congress が参考になる。なお、この資料の内容は、2002 年1月に
スイスのダボスで開催された「国際リサイクリング会議」で発表されている。
資料の概要は、以下のとおりである。
①スウェーデンでは、電気・電子機器の EU 指令(WEEE 指令)を採択するか
否かについて、議論が数年続いている。
②WEEE 指令を成功させるためには、生産者に対する明確な責務を打ち出す
必要がある。
③自社製品に対してのみの費用責務(個々の費用責務)は、生産者に環境デ
ザインや効率的なリサイクルシステム開発のインセンティブを与え、リサ
イクル費用削減につながる。
④自社製品以外についても費用責務を負う共同財政計画(共同の費用責務)
は、環境デザインのインセンティブをそぐ。
⑤欧州委員会は、製造者不明製品、及び製造者の確認が取れない製品のリサ
イクル費用については、既存の企業に負担させるとしている。
1-25
⑥リサイクル費用を製品価格に上乗せする義務を無視して、不公平な競争利
益を得ようとする企業がでてくると思われる。それによって、リサイクル
費用を製品価格に上乗せする正直な生産者は、フリーライダーの費用も負
担するため、痛みが2倍になる可能性があり、その結果、環境デザインに
投資しなくなる。
⑦法律的な視点から判断すると、生産者が、自社製品以外の製品に対して費
用を負担するのはおかしい。欧州委員会の提案は、共同体の法律に矛盾し
ていると法律研究は結論づけている。
⑧欧州委員会の提案は、フリーライダーにインセンティブを与えるため、将
来、フリーライダーが増加するであろう。
⑨洗濯機・冷蔵庫のリサイクルでは、機械破砕による金属回収が目的となっ
ているが、この方法では、様々な種類のプラスチック分別ができない。使
用部品を少なくしたり、モジュラー方式(標準化された部品で生産する方
式)を用いることによって、製品の解体時間が減り、再生率が上昇し、リ
サイクルの価値が増えることになるであろう。
⑩欧州委員会は、CFC・HCFC・HFC だけでなく、温暖化の可能性が極めて低
い HC(HFC と比較すると数百倍低い)の分別処理も提案書に入れている。
しかし、HC を使った製品は、HFC を使った製品よりも高く、それに分別理
費用が加算されると、製品価格が上昇し、HC を使用した製品の売り上げ
は減ることになる。その結果、生産者は環境に優しくない HFC を用いるよ
うになるであろう。
⑪欧州議会は、温暖化の可能性が 15 以上(HC は3)ある冷却剤・発泡剤の
分別処理を提案している。この提案は、生産者に、HFC 製品から HC 製品
へ転換させる動機を持たせる。
⑫製品デザインとシステム開発には大きな可能性があるので、生産者に製品
の解体費用と最終処分費用を減らす経済的なインセンティブ(例:個々の
費用責務)を与えることが必要である。
⑬企業は、環境デザインのインセンティブ(リサイクル率を上げ、消費者負
担を減らすインセンティブ)を WEEE 指令に入れる必要性を感じている。
環境デザインのインセンティブを与えるためには、生産者の処理費用責務
1-26
を自社製品のみに限定した、個々の費用責務方式にする必要がある。
⑭個々の費用責務は、以下の協会等で支持されている。
◇ 国 内 機 器 製 造 者 の 欧 州 委 員 会 ( European Committee of Domestic
Equipment Manufactures)
◇ 欧州情報コミュニケーション技術協会(European Information and
Communication Technology Association)
◇ 日本ビジネスヨーロッパ議会(Japan Business Council Europe)
◇ アメリカ電子機器協会(American Electronics Association)
◇ Orgalime(ヨーロッパの機械・電気・電子・金属細工企業の連絡グルー
プ)
◇ ブリュッセルを拠点にしている環境保護団体(ヨーロッパ環境事務所)
◇ BEUC(ヨーロッパ消費団体)
⑮欧州議会は、将来の製品処理費用の負担は、個々の費用責務に拠るべきで
あるとし、欧州委員会の提案を修正した。しかし、個々の費用責務によっ
て、高額な費用が生じた場合は、共同財政を認めるとしている。
⑯審議会は、昨年の6月の会合で、WEEE 指令提案に政治的合意をした。審
議会は、製造者不明製品や、見分けがつかない製品の処理費用を既存の生
産者に負担させるために、共同財政に賛成している。
⑰欧州委員会の将来の製品処理費用に対する考えは、あいまいである。欧州
委員会は、生産者に環境にやさしい製品開発のインセンティブを与える
個々の費用責務が望ましいと非公式に述べている。
⑱個々の費用責務が課せられることで、企業が自ら回収・リサイクルシステ
ムを作らねばならなくなるという考え方があるが、これはリサイクルシス
テムと法的義務(生産者責任)を混同しており、誤りである。生産者責任
の定義に係わらず、リサイクル会社・運搬会社と協力し、最も費用が安く、
最も適切な回収・リサイクル手法を開発する必要があるが、その際、他の
製造業者と協力した方が、効率的になる。
⑲共同の財政責務は、廃棄物の最終処分量を削減するであろう。しかし、一
方で、共同の財政責務は、環境デザインへの投資を妨げ、また長期的に見
て、全ての関係者(例:環境・製造者・消費者)にとって満足のゆく方法
ではない。
1-27
5)アメリカ
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関(2者)に問い合せを行った。問い合せ先は、Product Stewardship Team,
Minnesota Office of Environmental Assistance、US EPA である。問い合せ
の結果、Product Stewardship Team, Minnesota Office of Environmental
Assistance から回答及び拡大生産者責任に関する情報を得た。
Product Stewardship Team, Minnesota Office of Environmental
Assistance から、拡大生産者責任に関する情報として、以下のホームページ
を紹介された。
・Minnesota Office of Environmental Assistance
・US EPA
・California Integrated Waste Management Board
上記のホームページを検索した結果、
「第3回全米電子機器プロダクト・ス
チュワードシップ関係者対話公式会合」の議事録に、電子製品の拡大生産者
責任に関する議論が掲載されていた。以下に概要を紹介する。
NEPSI(National Electronics Product Stewardship Initiative; 全米
電子機器プロダクト・スチュワードシップイニシアティブ)は、全米の電子
製品の管理問題を解決するために設立された組織である。関係者は、連邦・
州・地方政府、製造者、小売業者、リサイクル業者、環境グループ等である。
NEPSI には、様々なグループがあるようであるが、この議事録には、①財政
サブグループ、②社会基盤サブグループ、③規制サブグループで議論された
内容が中心に掲載されている。各サブグループでの議論の概要は、以下のと
おりである。
①財政サブグループ
財政サブグループは、11 月のボストン会合時では、三つの財政モデル
(Advance Recovery Fee: ARF, License Fee, and End-of-Life Fee: EOL
Fee)の様々な特質を比較検討し、マトリックスを開発し、そのマトリッ
クスを基にシステム開発を試みたが、関係者の満足を得ることができなか
った。現在は、二つの財政モデル(EOL Fee:製品の最終使用者が製品廃
棄の費用を負担する、ARF:製品廃棄の費用は上流部に組み込まれ、最終
使用者の負担はない)を検討しており、この会合で、両モデルに対する賛
否両論の議論が行われた。
1-28
END-OF-LIFE FEE SYSTEM
賛成理由
反対理由
全ての人が対象となる
後退的―低所得者が最終使用者になりやすい
歴史がある
ただ乗りを防げる
製品回収に協力的でなくなる
明確な論理、費用を分配する必要なし
不法投棄が増える
製品の使用期間が長くなる
政府による基盤整備が必要
市場原理によるリサイクルシステムが開発さ
製造者の介入なし
れる
競争により費用が下がる
費用は下がらない
基盤を動かすには最も早い方法
政府はリサイクル業者と協議する力を持って
いないので、効率性にはつながらない
OEMs にリサイクルを行う機会を与え、また他
廃棄製品回収時に費用を集めるのは難しい
のリサイクル業者と競争できる
もし OEMs が、廃棄製品を引き取ってリサイク
監視がないと、集めた費用をごまかす者もで
ルすれば、デサインを重視することができる
てくる
様々な関係者に門戸がひらかれる
費用の支払いが市民教育につながる
消費者に便利なように柔軟性がでてくる
ADVANCE FEE SYSTEM
賛成理由
反対理由
より多くの経験がうみだされる
ただ乗り者がでる
費用に違いを持たせることによって、効率性
インターネット販売
があがり、意欲を持たせることができる
OEMs は独自のリサイクルシステムで運営する
公正の問題
ことができる
柔軟性がある
市民教育に資金をあてがえる
費用
在庫品や生産者不明製品をカバーできる
在庫品をカバーできるのか?
目に見える費用は、市民教育につながる
回収・管理のための行政システムが必要
回収意欲を高める
実施に時間がかかる
今日の購入者は、昨日出された製品のリサイ
クルに費用を支払う(自分の製品ではなく、
他人の製品に費用を支払うことになる)
購入価格が上昇する
1-29
議論の結果、財政モデルを合意させるためには、以下の情報が必要である
と述べた。
・高い収集率達成に必要な最低限のサービスレベルの定義付け
・最低限のサービスに必要な料金と料金構造の予測
・EOL を最初に使い、後に ARF に移行するためのシステム概要の開発・分
析
②社会基盤サブグループ
社会基盤サブグループは、ボストンの会合以来、3つの活動(①電子製
品の回収・リサイクル・再使用の既存モデル研究、②理想のモデル作りの
ための提案、モデル分析のためのマトリックスツールの開発と主要な特質
に重点を置いてきた。理想のモデル作りでは、ARF と EOL Fee を基盤とし
た 2 つの社会基盤モデルが開発された。モデル分析のためのマトリックス
ツールの開発と主要な特質では、既存及び提案されているモデルを評価す
るためマトリックスツールを開発し始めた。
今回の会合では、マトリックスツールの縦・横軸に入れる望ましい特質と
主要な特徴について議論を行った。また、理想のモデル作りでは、ARF を
基礎としたモデルの改良を行い、国の小さな第三者機関にそのシステム管
理を任せることに同意した。更に、PAZ で開発されているモデルツールが、
NEPSI に役立つ可能性があるため、PAZ と SAIC と一緒にモデル開発に取り
組むことに合意した。
③規制サブグループ
規制サブグループの役割は、既存の規制が、電子製品の回収・再利用・
リサイクル・処分にどの様な影響を与えているかを評価することにある。
規制サブグループは、今回の会合の前までに、マトリックスを開発し、国・
連邦の規制を、消費者・回収者・運搬者・リサイクル者の4つの分類に分
けた。今回の会合では、①規制変更(リサイクルのための規制緩和、また
はリサイクルに意欲的に取り組むための規制を与える)、②輸出問題(海
外への輸出を避ける)、③最も望ましいリサイクルの実践(リサイクル業
者の認証制度、リサイクルをしやすい環境にするための必要な措置)の更
なる調査・開発を今後行うと発表した。
④その他
◇ データサブグループ
データサブグループは、全米のリサイクル情報を集めるために開発
した新しいオンラインデータフォームを紹介した。このオンラインフ
1-30
ォームでは、電子製品のリサイクルプログラムとイベントに関する情
報を関係者で共有できる。オンラインフォームには、電子製品の収集・
リサイクル・運搬の費用と収入だけでなく、イベント参加と商品の市
場に関する情報が含まれている。また、イベント主催者によるプログ
ラムの成功や、将来のイベントに活かすべき事項を反映させるための
欄が設けられている。
◇ NEPSI で取り組むべき事項
NEPSI で取り組むべき優先事項は、財政モデルの選択である。
◇ NEPSI 方法の問題
新聞で取り上げられた NEPSI 方法の問題(関係者は NEPSI 方法に全
てをゆだねるのか、関係者は、NEPSI の目標に矛盾する NEPSI 外での
擁護活動の制限に同意できるか)について議論を交わし、関係者は、
目標に向かって進むために、NEPSI 方法に関わることを再度確認した。
また、電子製品のリサイクルについては、提唱されている法律で進め
ている州がいくつかあるが、この法律は、問題に断片的にあたってい
るだけなので、国全体の問題を解決するには、NEPSI 方法が好ましい
と産業の代表者が述べ、この意見に対する議論が行われた。
6)オーストラリア
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者
(Environment Australia )に問い合せを行い、回答を得た。拡大生産者責
任に関する情報としては、以下のホームページを紹介された。
◇
◇
◇
◇
オーストラリア連邦政府(包装・電気製品・廃油・プラスチックバッグ)
ニューサウスウェールズ州政府
ヴィクトリア州政府
サウスオーストラリア州政府
上記のホームページを検索した結果、電子・電気機器と包装に関する拡大
生産者責任の情報が若干あった。電子・電気機器の拡大生産者責任は、現在
戦略が作成されており、まだ未確定であるため、包装に関する拡大生産者責
任の情報「National Packaging Covenant(全国包装協定)」を訳すこととし
た。以下に概要を紹介する。
オーストラリア包装協定は、生産者責任の責務分担にもとづいて、包装関
連企業と政府との間に取り交わされた自主的な規制である。この協定は、包
1-31
装製品の全サイクルを通じて、包装廃棄物の環境影響を最小限にすること、
リサイクルの輪をつなぐこと、経済的に実行可能で、持続可能なリサイクル
収集システムを開発すること、また自発的な取組を続けることを目的として
いる。この協定には、様々な包装関係者が加盟しているが、これらの加盟者
が市場で不利益を被ることがないように、使用済み包装材料に関する国家環
境保護対策が作られた。
オーストラリア包装協定は、協定加盟者のとるべき行動を明らかにしてい
るが、それらの行動は柔軟性にとんでいるため、協定加盟者は、自分たちの
組織に最もふさわしい行動を決めることができる。協定の加盟者は、加盟か
ら 90 日以内に、行動計画を作成して提出しなければならない。行動計画は、
企業ごとに作成してもよいし、産業協会や企業グループごとでもよい。
リサイクルシステムをより持続可能で、市場に基づくものにするために、
「Transitional Arrangements」と呼ばれる計画が協定内で作られた。この計
画では、歩道脇での収集計画の費用効果の向上や、収集された包装品の市場
拡大を目的とした研究や対策がなされる予定である。この計画の資金として、
3,450 万ドルが政府と企業から集められた。
7)カナダ
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関(6者)に問い合せを行った。問い合せ先は、以下のとおりである。
◇ Sustainable Consumption Division, National Office of Pollution
Prevention, Environment Canada
◇ Direction de l'analyse économique et de la tarification, Qu-bec
Environment Department, MENV
◇ Pollution Prevention Branch, Manitoba Conservation
◇ Nova Scotia Department of Environment and Labour
◇ Alberta Used Oil Management Association
◇ Delegation Permanente
問い合せの結果、Sustainable Consumption Division, National Office of
Pollution Prevention, Environment Canada 、 Direction de l'analyse
économique et de la tarification, Qu-bec Environment Department, MENV、
Pollution Prevention Branch, Manitoba Conservation 、 Nova Scotia
Department of Environment and Labour の4者から回答及び拡大生産者責任
に関する情報を得ることができた。
拡大生産者責任セミナーと拡大生産者責任に関する情報としては、上記回
答者から以下の回答を得た。
1-32
・ Sustainable Consumption Division, National Office of Pollution
Prevention, Environment Canada
−カナダ環境省の拡大生産者責任に対する取組
−カナダ環境省のホームページ
・ Direction de l'analyse économique et de la tarification, Qu-bec
Environment Department, MENV
−容器包装の製造者と新聞印刷業者に対しての、製品の回収と処理を義務
づける準備
・Pollution Prevention Branch, Manitoba Conservation
以下のホームページ
−Manitoba's Legislation and Regulations
−Manitoba's Proposed Household Hazardous Waste Stewardship Program
−2002 Canadian Workshop on Extended Producer Responsibility with
additional links to programs across Canada and Internationally
−Manitoba Product Stewardship Corporation Website
④Nova Scotia Department of Environment and Labour
−拡大生産者責任に関する州・准州の役割
−Nova Scotia でのリサイクル品目
−Nova Scotia で課せられている生産者責任の品目
上記の情報を比較検討した結果、カナダ環境省のホームページに掲載され
ている、第 2 回カナダ EPR ワークショップでの議論(拡大生産者責任に関す
る様々な話題)が役立つと思われたため訳すこととした。以下に、議論の概
要を紹介する。
◇ 拡大生産者責任を実施するために乗り越えなければならない障害
産業界も消費者も、拡大生産者責任をより受け入れるようになってきて
いる。例えば、産業界は、規制施行前のプログラムの開始や、独自のプロ
グラム作成などを日常的に行っている。また、政府もより責任をとるよう
になってきている。企業間の協力、政府間の協力、また企業と政府の協力
が増えている。
◇ カナダの拡大生産者責任における次の標的製品及びその理由
電子廃棄物、家庭/産業有害廃棄物、プラスチック/ファーストフード容
器が、次の標的製品としてあげられた。拡大生産者責任提案者は、飲料容
器のような国全体で高いリサイクル率を容易に達成できる製品から始める
べきであると主張している。拡大生産者責任の標的製品を選ぶ際に考慮す
1-33
べき基準は、排出量、有害性、廃棄物の特性、経済性、他のプログラムで
の実行の可能性、既存のインフラでの可能性、人体への有害性、管轄権の
制約である。
◇ 拡大生産者責任プログラムを確実に成功させるための主要な構想要素
・ 生産者と消費者の両者が拡大生産者責任に参加できるような戦略と動
機
・ 明確な責務の配置
・ 環境と社会目的
・ 持続性と明確な基金
・ 拡大生産者責任の進歩状況を評価できるシステム
◇ 成功に必要な支援方法
規制緩和、有害物質へのシール貼り、伝達・教育、プログラム間の相乗
作用の調査、基盤・技術への支援またはそれらへの基金提供、機能的な行
政システム、環境デザイン設計の動機付け
◇ 拡大生産者責任プログラムの基金システムを選ぶ際に考慮すべきこと
幅のある水準、地域の違いによる制約、余剰金を信用基金に回す、消費
者と企業が参加しやすいようにする、わかりやすいプログラム基金、環境
と環境デザインへの影響、経済と社会の目標
◇ 拡大生産者責任責務の評価方法
独立した環境監査、廃棄物減量目的の設定、目標のある自発的な協定、
費用と利益の比較方法、評価方法の基準化
◇ 協同体制による拡大生産者責任から学ぶべきこと
危機的な状況になった場合は、利害関係者との協議と対話が重要。また、
明確な目標、目的、及び責務が同意されていること、及び同意を得るため
の努力が非常に重要。
◇ 管轄内における拡大生産者責任の協力を促進するための方法
利害関係者が、情報や成功談を聞く機会を設けること、協力を促進する
ための国の組織をつくることが必要。
1-34
8)韓国
「拡大生産者責任の経済学に関するワークショップ」の参加者、及び関係
機関(8者)に問い合せを行った。問い合せ先は、以下のとおり。
◇ Association of Electronics Environment
◇ Sangmyung University
◇ Resource Recycling Division, Waste Management and Recycling Bureau,
The Ministry of Environment
◇ Korea Resources Recovery and Reutilization Corporation
◇ National Institute of Environmental Research
◇ Korea Environment Institute
◇ Samsung Electronic
◇ Embassy of Japan in Korea
問い合せの結果、Association of Electronics Environment と Sangmyung
University の2者から回答を得た。拡大生産者責任セミナーに関する情報は、
Sangmyung University から若干の情報を得た。
セミナー名は不明だが、Sangmyung 大学、環境省、韓国資源回収・再利用
公社(Korea Resource Recovery and Reuse Corporation)の主催で、1998
年3月、1999 年5月、1999 年9月、2002 年にセミナーが開催されている。
主要な議題としては、韓国に拡大生産者責任を導入する可能性、拡大生産
者責任の比較、現在のデポジット払い戻しシステム、拡大生産者責任の対象
製品、製造者責任、リサイクル率、手続き、ただ乗り問題等であった。
具体的にどのような議論がされたかといった情報は入手できなかった。
1-35
(2)国内の拡大生産者責任関連セミナー、関連資料
国内において実施された拡大生産者責任関連セミナー、関連資料の情報を
各国別に示す。
1)事例1 クリーン・ジャパン・センター(CJC)主催、
「平成 13 年度「拡大
生産者責任」セミナー」
平成 13 年9月 18 日(火)
、財団法人 クリーン・ジャパン・センターが「平
成 13 年度「拡大生産者責任」セミナー」を東京で開催した。
セミナーでは、拡大生産者責任に関する OECD ガイダンスマニュアルが紹介
され、パネルディスカッションが行なわれ、日本における拡大生産者責任の
在り方が議論された。
セミナーでは、パネリストが様々な意見を述べた。
①山口 光恒
ごみ処理の有料化など従来の廃棄物政策がいずれも自治体による処理を
前提にしてきたのに対し、責任を官から民に移転する拡大生産者責任は画
期的な政策手法として評価している。
これにより、生産者は、リサイクルが難しい商品の価格を引き上げざるを
得ないため、リサイクルしやすい商品の生産に力をいれるようになる。ご
み減量や廃棄物処理費用を安くすることも期待でき、循環型社会の構築に
役立つ。
しかし、生産者を一律に汚染者とみなして責任を負わせることは、事実に
反するだけでなく、効率的な環境保全の面で最適な結果は得られないと指
摘する。
②田辺 靖雄
国の立場から、循環型経済システムのあるべき姿、循環型社会構築に向け
た法体系の現状、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、資源有効利
用促進法、自動車リサイクル法等の拡大生産者責任関係各法の実施・検討
状況、エコタウン、技術開発支援、環境会計等のソフト手法、グリーン購
入等の拡大生産者責任に対する国の政策的支援、課題について現状紹介を
した。課題としては、循環システムの高度化、循環ビジネスの振興、自治
体の役割の変化等を指摘した。
③篠木 昭夫
地方公共団体の立場から、循環型社会構築に向けた地方公共団体のこれま
での取組や今後の展望について述べた。
一般廃棄物処理責任は市町村にある。廃棄物の排出量は 1955 年が約 17000
1-36
トン/日に対し 1997 年は 7.2 倍の約 123000 トン/日に増加している。ごみ
減量化として始まった容器リサイクル法(容リ法)の施行は市町村の費用
負担額が増大し、費用分析が課題になっている。現行のリサイクルシステ
ムに対し、市町村は容リ法を例に収集運搬費用も事業者負担とすべきだ。
廃家電リサイクル法に関してはリサイクル費用は販売価格上乗せ方式を取
り入れるべきだ。2次電池は回収率向上のために「デポジット」制を採用
すべきだ。
拡大生産者責任に繋げた廃棄物処理の今後の在り方として、「排出者責任
の原則」、「原因者責任の原則」、「効率性の原則」、「環境負荷最小の原則」
の4つの一般的原則をベースとした合理的なリサイクル方式を構築するよ
う提言した。
④小林 光男
企業の環境責任者として、行政、工業会、海外の法人等での実際の議論や、
現場経験を通じて、日頃感じていることや拡大生産者責任の在り方につい
て意見を述べた。
企業内で開発設計時に環境配慮を取り込むことは、重要であると誰でも認
めるが、具体的な市場の支援なしには難しいのが現状である。市場の動向
を無視して継続的な環境配慮は困難であり、開発設計へのインセンティブ
が重要である。多くの企業が製造拠点をアジア諸国に移転してきているが、
企業は進出国での対応に責任を持つのは当然であるが、生産国での対応方
法に対する政策策定が遅れている。
また、使用寿命の短いもの、長いもので費用徴収時期を柔軟に対応するこ
とで回収リサイクル費用の公平性、実効性が高まる。
⑤近藤 博俊
製造業の立場で、一般廃棄物の中に増大する工業製品の合理的な発生抑制、
適正処理の社会ニーズに源流を持つ拡大生産者責任推進上の問題点等につ
いて意見を述べた。
拡大生産者責任の健全な浸透促進をする上で、廃棄物処理の責任は自治行
政に残しながらも経済効率性から PFI 導入等による民営化の導入が望まし
い。拡大生産者責任は信頼性が不透明な再生製品の市場創出を招きかねな
い、規格保証を前提とした市場を確実に確保する国の政策が重要なポイン
トになる。日本の近代工業は鉱山、精錬、化学、組立、運輸等が分業構造
で効率化を追求してきた。拡大生産者責任の追求に当たってはそれぞれの
工業技術が生かせるインターフェース制度、技術の開発が必要である。
1-37
⑥益田 清
自動車メーカーの立場で、自動車工業会のリサイクルに対する基本的な考
え方を踏まえ、拡大生産者責任導入を前提にした使用済み自動車リサイク
ル法制化の状況を述べた。
自動車製造時の有害物質使用の極小化と易リサイクルの向上、適正な競争
原理による社会コストのミニマム化、拡大生産者責任導入には製品リサイ
クルチェーン及び消費者も含む全当事者の参加が不可欠である。
⑦崎田 祐子
一市民、ジャーナリストの立場から、循環型社会に向けて市民の担うべき
役割について4つの重点事項を述べた。
一人ひとりの「ごみダイエット」でごみゼロ社会への道が見えてくる。グ
リーンコンシュマーなど消費者の排出者責任の徹底が企業の拡大生産者責
任を支える。行政への要望として循環型社会づくりの的確なコーディネー
ターとしての役割を期待する。市民・企業・行政の信頼が環境の「地域づ
くり」を育む。
2)事例2 K−RIP(九州地域環境・リサイクル産業交流プラザ)主催「環境
経営支援セミナーin 大分」
平成 14 年2月5日に K−RIP(九州地域環境・リサイクル産業交流プラザ)
が「環境経営支援セミナーin 大分」を開催している。
環境経営支援セミナーでは、環境に配慮した企業活動、環境経営が社会的
な責務となっていることや、競争社会を勝ち抜くことを目的として、最新の
環境経営戦略や先進的な取組事例が紹介された。
3つの講演の一つとして、基調講演に「企業の環境保全への取組み:拡大
生産者責任を中心に」を取り上げられた。
講演内容は、導入の話としての企業と環境、拡大生産者責任とは、従来の
廃棄物政策との違い、OECD における検討の経緯、OECD 拡大生産者責任ガイダ
ンスマニュアルの内容、マニュアルの問題点、日本の廃棄物政策、廃棄物政
策と貿易、企業の取組、更なる廃棄物政策の推進、である。
3)事例3 拡大生産者責任(EPR)等廃棄物処理に関するシンポジウム「―OECD
の EPR 戦略と日本の取り組み―」
OECD の拡大生産者責任に関する最終ワークショップが平成 11 年5月に開
かれ、その内容を紹介。
5つのセッションが開かれ、セッション1,2は基調講演で、日本の現状
1-38
と拡大生産者責任の取組について厚生省と田中勝教授が講演、セッション3
は拡大生産者責任の政策案、必要性について議論、セッション4は拡大生産
者責任の実行状況、評価とその結果をレポートする仕方について議論、セッ
ション5は評価、拡大生産者責任について一般市民にわかりやすく情報提供
するコミュニケーションの重要性、そのための指標づくりについて議論がさ
れた。
基調講演は「EPR の政策案の種類と評価―OECD の EPR ワークショップに参
加して」というテーマで、北海道大学客員教授の田中勝氏が行った。基調講
演の内容は、以下の通り。
拡大生産者責任の評価は、環境負荷、資源、コストの3つの指標が考えら
れる。これらは、資源回収を極端に高率にするとコストが上がってくる、あ
るいは環境負荷が大きくなるという関係があり、この3つの指標で評価すべ
きである。環境負荷における量的制限(環境容量)や、資源配分量のように、
絶対的に決められてしまうものがある。また、相対的に3つの指標の重要性
が決まることもある。例えば、最終処分場を造るときに、アメリカのように
土地が広くあり、埋立地確保は制約条件にならないところと、日本のように
厳しい制約条件になるところでは、評価の考え方は違ってくる。場所によっ
て国によって違うし、時代によっても変わってくる。答えは皆違うから、拡
大生産者責任のポリシーもそれぞれの国が判断して選ぶ必要がある。
1-39
(3)拡大生産者責任関連セミナー、関連資料における拡大生産者責任に関する
主要な論点
今回の調査によって得られた各セミナーの情報、各種資料から拡大生産者
責任に関する主要な論点を整理し、表1−7に示した。
論点は、OECD 拡大生産者責任ガイダンスマニュアルの内容に照らして(目
次に照らして)まとめてある。
最終目的と目標、どの製品又は廃棄物フローを選択するか、責任の配分、
誰が払うか、コストの内部化、政府の役割、地方自治体の役割、ただ乗り、
孤児製品、評価、進捗状況と達成度の測定、費用負担は個別負担か共同負担
か、リサイクル率に応じた処理費用徴収、費用の徴収時点、輸出問題といっ
たものが論点になっていることがわかる。
表1−7 各セミナー、各種資料における拡大生産者責任施策に関する主要論点
国
④
セ
セ
セ
ミニセミナー
ダ
③
セ
CJCセミナー
韓
ナ
ダ
②
セ
カ
ナ
ダ
①
セ
カ
ナ
ダ
資
カ
ナ
カ
資
国 内
カ
リ
資
オーストラリア
メ
ダ
セ
ア
ン
②
資
ス ウ ェ ー デ ン
ラ
ツ
セ
オ
イ
①
セ
ド
ツ
どの製品又は廃棄物フ
ローを選択するか(2.6)
法的及び行政的アプロ
ーチ(2.7)
目標と割当(2.8)
イ
O E C D 拡 大 生 産 者 責 任 ガイ ダ ン ス マ ニ ュ ア ル で 採 りあ げ
最終目的と目標(2.3)
セ
ド
フ ラ ン ス ①
セミナーか資料か
外
KーRIPセミナー
海
セ
○
〇
〇
〇
△
需要と供給のマッチン
グ(2.9)
最終目的、プログラム、
法律の役割と関係
(2.10)
政策要因(3.2)
EPR 政 策 手 法 と 措 置
(3.3)
初期的な応答(3.4)
〇
△
〇
適用可能性(3.5)
実施上の構成要素(3.6)
その他の政府の措置
(3.7)
注)〇か△は等は当該トピックに関する議論が行なわれたことを示す。〇は具体的な議論の内容についての情報を入手できたこ
と、△は具体的な議論の内容についての情報は入手できなかったことを示す。
1-40
表1−7 各セミナー、各種資料における拡大生産者責任施策に関する主要論点(続き)
外
国 内
ダ
③
④
ミニセミナー
ナ
ダ
②
CJCセミナー
カ
ナ
ダ
国
カ
ナ
①
韓
カ
ダ
カ
ナ
リ
カ
メ
オーストラリア
ア
ス ウ ェ ー デ ン
②
ダ
ツ
①
ン
イ
ツ
ラ
ド
イ
オ
ド
フ ラ ン ス ①
KーRIPセミナー
海
OECD拡大生産者責任ガイダンスマニュアルで採りあげられているトピック
その他の手法(3.8)
環境的有効性と経済的
効率(3.9)
選択基準(3.10)
責任とは何を意味する
か(4.3)
生産者とは誰か(4.4)
責任の配分(4.5)
△
○
責任の配当時に考慮す
べきこと(4.6)
誰が払うか(4.7)
〇
〇
コストの内部化(4.7.2)
○
〇
〇
政府の役割(4.8)
地方自治体の役割(4.9)
○
〇
○
〇
消費者(4.10)
小売業者の役割(4.11)
生産者責任機構(4.12)
ただ乗り(6.2)
〇
孤児製品(6.3)
〇
△
中小企業(7.5)
取引費用(7.6)
モニタリングと報告
(7.7)
段階的導入(7.9)
評価(7.10)
〇
国際的次元(7.11)
進捗状況と達成度の測
定(7.12)
勧告と教訓(7.13)
ガイダンスマニュ
アル以外
費用負担は個別負担
か共同負担か
リサイクル率に応じ
た処理費用徴収
費用の徴収時点
○
〇
〇
〇
〇
輸出問題
○
〇
注)〇か△は等は当該トピックに関する議論が行なわれたことを示す。〇は具体的な議論の内容についての情報を入手できたこ
と、△は具体的な議論の内容についての情報は入手できなかったことを示す。
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