...

1)自殺の心理学的剖検症例・対照研究の文献レビューとわが国における

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

1)自殺の心理学的剖検症例・対照研究の文献レビューとわが国における
平成 17 年度厚生労働科学研究こころの健康科学研究事業
「自殺の実態に基づく予防対策の推進に関する研究」
分担研究報告書
心理学的剖検に関するフィージビリティスタディに関する研究:
自殺の心理学的剖検症例・対照研究の文献レビューとわが国における面接票の開発
分担研究者
研究協力者
川上憲人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・教授)
高橋祥友(防衛医科大学校防衛医学研究センター・教授)
井上 快(東京大学大学院医学研究科精神保健学分野・院生)
近藤恭子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・客員研究員)
鈴木越治(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・院生)
高崎洋介(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・院生)
土屋政雄(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・院生)
廣川空美(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・助手)
渡邉直樹(青森県立精神保健福祉センター・所長)
野宮冨子(青森県立精神保健福祉センター・相談指導課課長)
張 賢徳(帝京大学医学部附属溝口病院精神科科長・助教授)
田島美幸(国立精神・神経センター精神保健研究所・流動研究員)
これまでに公表されている自殺の心理学的剖検による 24 の症例・対照研究からその方法論を整理し
た。自殺の心理学的剖検における調査対象は通常1~2名の主要情報提供者(自殺者の配偶者、パート
ナー、両親、成人している子供、これ以外の家族)であり、これ以外にその他の親戚、友人、通院して
いた医療機関の担当者が対象となることもある。対照群については性別、年齢を一致させた一般住民が
選定されることが多かった。調査員は、多くの研究では、精神科医、臨床心理士、精神科専門看護師な
ど。遺族への調査は、悲嘆のための期間を考慮して、死亡後3~12 ヶ月目に実施されることが多い。調
査される要因は、死因に関する判断、自殺意図の表出、精神医学的診断、生活上出来事と日常生活の困
難、医療従事者との接触およびその時期、精神疾患に対して受けていた治療の内容、自殺に関する報道
や風聞の影響である。調査対象者は研究について十分説明を受け、参加への同意のある場合のみ面接さ
れる。自殺した者の人格を尊重することが重要視されている。支援や治療を必要としている遺族を必要
な機関に受診できるように手助けすべきである。一方、家族が調査を苦痛を和らげるものととらえるこ
とも知られている。
わが国における自殺の心理学的剖検フィージビリティスタディ用の面接票の開発にあたって、北京自
殺研究・予防センターによる自殺の心理学的剖検全国調査(症例・対照研究)の調査票を入手し、これ
をわが国に合うように改変した。また自殺対策に経験のある専門家等に討議してもらい、討議内容に基
づき調査票の構成や内容を修正した。本研究で開発した自殺の心理学的剖検面接票は 14 章(または部)
から成り、自殺の発症状況および危険因子について広範に情報を収集できるよう設計されている。面接
は自由な話し合いと、質問項目が決められた半構造化面接の2つの部分から構成され、最初に自由な聞
き取りを約 40 分間行い、その後に半構造化面接を実施する。また自殺者のご遺族の気持ちに配慮する
ために導入部、自由な話し合い、調査終了時に調査上の工夫を行った。面接票および面接調査の補助に
使用する「回答者用小冊子」は、
「死亡者の家族・知人用」と、
「一般住民の家族・知人用」の2種類を
作成した。また面接マニュアルと面接調査のトレーニング法も開発した。本研究により、次年度以降の
パイロット調査にむけての準備が整った。
A.はじめに
本研究班では、本年度、わが国ではじめての本
格的な自殺の心理学的剖検研究を実施するため
のフィージビリティスタディを実施することを
目的としている。世界で最初の自殺の心理学的剖
検研究は米国における 134 の自殺事例の心理学的
剖検(1956-1957)(Robins et al. 1959)であったと
言われる。これに続く第1世代の心理学的剖検研
究として対照群をおかない、記述的な研究が進め
られた。この目的は、死亡が自殺であるかどうか
の判断と、自殺の経緯の理解にあった。フィンラ
ンド等におけるこうした記述的な心理学的剖検
研究は、自殺の経緯の解明に有用であり、自殺予
防の国家戦略にも大きく寄与してきた。一方、
1990 年代以降は、心理学的剖検研究は第2世代
に入り、心理学的剖検を利用した症例・対照研究
によって自殺の危険因子を疫学的に明らかにす
ることが進められている。
本分担研究では、わが国における自殺の心理学
的剖検フィージビリティスタディ用の面接票の
開発のために、過去 10 年間に公表されている自
殺の心理学的剖検による症例・対照研究を文献レ
ビューし、その方法論を整理する。ついで、面接
票、マニュアルおよびトレーニング法を試作し、
専門家等の意見を聞きながらこれを完成させる
ことを目的として研究を行った。
B.対象と方法
1.自殺の心理学的剖検症例・対照研究:先行研
究のレビュー
過去 10 年間に実施された自殺の心理学的剖検
による症例・対照研究の先行研究を文献検索した
ところ、24 研究が見いだされた(I.引用文献リ
ストを参照)
。これらの研究における調査対象(自
殺者関係者と対照群)、調査方法(調査員の職種、
調査時期、調査手順など)を整理した。
2.自殺の心理学的剖検面接票の開発
わが国における自殺の心理学的剖検フィージ
ビリティスタディ用の調査票の開発にあたって、
北京自殺研究・予防センター(Beijing Suicide
Research & Prevention Center, 北京心理危机研
究与干預中心)が実施した自殺の心理学的剖検全
国調査(症例・対照研究)の調査票をもとにする
こととした(Phillips et al. 2002)。同センターの
Michael Phillips 博士から中国語版の調査票を提
供していただき、これをわが国でのフィージビリ
ティスタディに合うように改変した。また調査票
の素案に対して平成 18 年 2 月 6~8 日に国立精
神・神経センター精神保健研究所で実施された調
査員訓練に参加した地域の自殺対策に経験のあ
る精神科医、保健師等、また自殺対策支援NPO
スタッフに討議してもらい、討議内容に基づき調
査票の構成や内容を修正した。
3.自殺の心理学的剖検面接トレーニング法の開
発
平成 18 年 2 月 6~8 日に国立精神・神経センタ
ー精神保健研究所で実施された調査員訓練にお
いて、このために試作した自殺の心理学的剖検面
接トレーニングカリキュラムを実施し、有効性や
問題点を検討した。
C.結果
1.自殺の心理学的剖検:先行研究のレビュー
これまでに実施され、公表されている 24 の症
例・対照研究の対象、方法、主要な結果の概要を
表1に示した。
1)調査対象の選定
(1)自殺者の関係者の選定
自殺の心理学的剖検における情報ソースは、第
1に家族およびその他の親しい人間であり、これ
らに対する詳細な面接が実施される。またこれと
平行して、可能な限りの死亡者に関する医学的、
精神医学的およびこれ以外の関係ある資料の収
集がなされることが多い。面接の対象者は、通常
1~2名の主要情報提供者(配偶者、パートナー、
両親、成人している子供、これ以外の家族)であ
り、これ以外にその他の親戚、友人、通院してい
た医療機関の担当者が対象となることもある。
(2)対照群の選定
自殺の心理学的剖検による症例・対照研究では、
自殺者の遺族だけでなく、対照群を選定する必要
がある。しばしば行われるのが、性別、年齢を一
致させた一般住民(生存している者)である。情
報は、抽出された一般住民の近親から収集する。
これは自殺者に関する情報を近親から収集し、一
方で生者本人から情報を収集することによって
生じるバイアスを避けるためである。自殺の危険
因子の同定に適している。生存している精神科患
者が対照群として選ばれることもある。ハイリス
ク集団における特定の自殺関連要因に関心のあ
る場合に実施される。自殺以外の原因による死亡
者、例えば交通事故者を対照として選ぶこともあ
る。症例(自殺者)も対照も死亡者であり、より
比較が可能という利点がある。しかし交通事故の
死亡者は、一般住民とは異なる特性を持っている
という欠点もある。
2)調査員と調査方法
調査員は、多くの研究では、精神科医、臨床心
理士、精神科専門看護師など。一部に公衆衛生医
師やケースワーカーが実施した例もある。これら
の調査員が構造化、あるいは半構造化面接を実施
し情報を収集する。自殺の心理学的剖検において
しばしば調査される主要な要因は下記のようで
ある。
(1)死因に関する判断
学際的な専門家によるチームが全ての例につ
いて議論し、全ての利用可能な情報を基に自殺か
異なかを判断する場合もある。
(2)自殺意図の表出
自殺の意図の表出(死にたい気持ちを他の人に
伝えること)は、明らかな自殺のサインである。
しかしそれがないからと言って自殺のリスクが
ないという保証にはならないが。
ほぼすべての心理学的剖検が自殺の意図の表
出を検討している。しかしその定義はまちまちで
ある。
一般的には 1/3 から 1/2 の自殺者が自殺の意図
を家族に、また同程度の自殺者が自殺の意図を医
療従事者に伝えている。しかし自殺の実行直前に
は自殺の意図の表出はあまり多くないため、自殺
は驚きとして一般には驚きとしてとらえられる。
(3)精神医学的診断
学際的な専門家によるチームが全ての症例に
ついて議論し、全ての利用可能な情報を基に、包
括的な症例報告を作成する場合もある。フィンラ
ンドの心理学的剖検研究では、2名ずつ2組の精
神科医が別々に、暫定的な最適の想定診断をつけ
(評価者間信頼性係数カッパは 0.52-0.94)、診断
の不一致がみられた全ての症例については、第3
の精神科医を含めて情報を再分析し、合意の上で
最終的な想定診断をつけている。
(4)生活上出来事と日常生活の困難
死亡前6~12 ヶ月以後における生活上の出来
事、死亡前1ヶ月以内における日常生活上の困難
が評価されている場合が多い。
(5)医療従事者との接触およびその時期
医療機関への受診は自殺予防への介入の機会
であり、自殺前の医療機関への受診がどの程度行
われていたかを知ることは自殺予防への介入効
果の大きさを推測するために重要。約半数の自殺
者が自殺する1ヶ月以内に医療機関を受診して
いる。
(6)精神疾患に対して受けていた治療の内容
30 から 90%の自殺者が、自殺の前にうつ病性
障害に罹患していた。うつ病は単独で最重要の自
殺の危険因子であるため、うつ病に対する治療が
どのように行われていたかを知ることは重要。一
般には自殺者の 1/3 が抗うつ剤による治療を受け
ており、精神療法やECTはまれである。多くは
治療がなされていないか、なされていても不十分
な治療である。
(7)自殺に関する報道や風聞の影響
自殺に関する新聞、TV、その他の風聞に、本
人が接する機会があったか、またそれについてど
う考えていたかを調査する場合がある。
3)倫理的配慮
家族を自殺で亡くして間もない者は、心に傷を
負い、調査によって不安や罪悪感を引き起こしや
すく、しばしば混乱した状態にある可能性がある。
自殺の心理学的剖検においては倫理的配慮が重
要である。調査対象者は研究について十分説明を
受け、参加への同意のある場合のみ面接される。
またいつでも調査を拒否できる権利を持つべき
である。また自殺した者の人格を尊重することが
重要である。自殺者が性格上の問題やアルコー
ル・薬物問題を抱えていた場合には、しばしば自
殺者の生前の問題行動を聞くことになるが、質問
を工夫することで、本人や家族が抱えていた深い
問題を指摘するというよりも、尊重され共感でき
る形で情報を収集することができる。遺族を対象
とした調査においては、悲嘆のための期間を考慮
して、死亡後3~12 ヶ月目に実施されることが多
い。一方、心理学的剖検研究では、しばしば家族
が面接をストレスフルというよりも、苦痛を和ら
げるものとしてとらえることが観察されている。
心理的な支援や精神科治療を必要としている近
親者は対応する機関に受診できるように手助け
すべきである。
2.自殺の心理学的剖検面接票の開発
1)フィージビリティ研究のデザイン
今回のフィージビリティ研究では、自殺者につ
いてはすでに精神保健福祉センターや保健所な
どで把握されている事例の家族・知人に依頼する
こととした。対照群は一般住民を対象とすること
とし、今回のフィージビリティ研究では地域保健
のボランティアなどの参加者から自殺者と性別
が一致、年齢が近い者を選ぶこととした。
いずれの場合でも死亡者または一般住民とで
きる限り近い家族1名に調査を行う。家族がいな
い場合には本人を最もよく知っていた知人を選
び調査を行う。回答者の選択の優先順位は、最親
近者(配偶者、両親、子供)、次に接触時間の長
い同居家族、親しい友人の順とした。
調査にあたっては、本人の自殺について知らな
い者もいる可能性に注意することとし、最近親者
に調査を依頼して辞退された場合には、その最近
親者に次に接触してもいい者を紹介してもらう
ように調査員に勧めた。誰が回答者になったとし
ても最近親者が調査自体を拒否する場合には調
査はあきらめることとした。
調査は、精神科医と保健師がペアになって実施
することとした。調査は対面による面接法(聞き
取り調査)で実施する。調査は原則として1名の
回答者に質問をする形式で実施するが、回答者が
希望すれば調査に回答者以外の者が同席するこ
とは許可することとした。同席者が発言したり、
意見を述べることは許容するが、その場合でも本
来選ばれた回答者の回答を重視して調査を実施
することとした。
2)面接票の構成
(1)全体の構成
本研究で開発した自殺の心理学的剖検面接票
およびマニュアルは 14 の章(または部)から構
成されている。
Ⅰ ご本人に関する情報
Ⅱ 死亡診断書の資料
Ⅲ 調査の導入部分
Ⅳ 自由な話し合いでの質問事項
Ⅴ 死亡の状況
Ⅵ 生活歴
Ⅶ 生活出来事
Ⅷ 生活の質
Ⅸ 身体の病気の治療状況
Ⅹ 10 歳未満の場合の心の健康問題
ⅩⅠ 心の健康問題
ⅩⅠ:J [精神問題の援助要請過程]
ⅩⅠ:K [精神障害の診断および把握度]
ⅩⅡ 家族構成
ⅩⅢ 事故発生前の家庭状況
ⅩⅥ 調査員が面接終了後に記入する項目
Phillips ら(2002)の原本に従い、面接は自由な
聞き取りと、質問項目が決められた半構造化面接
の2つの部分から構成することとした。最初に自
由な聞き取りを約 40 分間行い、その後に半構造
化面接を実施する。面接は2時間程度で終わるよ
うに設計した。原則的には、心の健康問題(第Ⅹ
およびⅩⅠ部分)は精神科の医師が主となって面
接を実施し保健師が協力者となり、残りの部分は
逆に保健師が主となって面接を実施し精神科医
が補助することとした。
調査の複雑さを軽減するために、面接票は「死
亡者の家族・知人用」と、「一般住民の家族・知
人用」の2種類を作成した。また面接調査の補助
に使用する「回答者用小冊子」を作成した。これ
も同様に回答者によって2種類を作成した。
(2)ご遺族の気持ちへの配慮
調査員訓練を通じて、専門家からは調査にあた
ってのご遺族の気持ちへの配慮が重要であると
いう指摘があった。ご遺族は、本人の自殺から時
間が経過しても、なお強い感情に圧倒されている
場合があり、調査にあたっては、この点に配慮す
ることが重要である。本調査ではこのために以下
のような工夫を実施することとした。
1)調査員のうち1人は、自殺者の遺族への関
わりに経験のある者とする。
2)自殺者の遺族の心理的サポートについての
解説と、相談先の情報が掲載されたパンフレット
を調査開始時に手渡す。
3)「自由な話し合い」では、調査員がよい聞
き手になることを意識する。
4)調査をポジティブな経験として締めくくる
工夫をする。
5)回答者に感情的な混乱などがみられた場合
には、調査を中断し、「大丈夫ですか」など相手
を配慮し、必要に応じて相談先を紹介する。
6)調査後に、ご遺族の希望や必要性に応じて
保健師等による家庭訪問や電話連絡などのフォ
ローアップを行う。
(3)調査の導入部分
調査の導入部分では、調査員がまず自己紹介を
し、次に回答者に持参した研究内容の説明書を渡
す。調査の目的、調査の方法、調査内容の守秘に
ついて回答者に伝える参考として以下の文章を
準備した。
━ 日本では 1998 年以来自殺が増加しており、
大きな社会 問題として認識されています。毎 年少
なくとも自殺で3万人が死亡しています。
━ 自 殺 は本 人 だけでなく、家 族 や社 会 にも大 き
な影響を与えます。
━ 自殺の原因はまだ十分に明らかになっていま
せん。有 効 な予 防 対 策 を講 じるため、自 殺 に関
連する要因を把握する必要があります。
━ この問 題 を明 らかにするため、国 立 精 神 ・神
経 センター精 神 保 健 研 究 所 では、全 国 で自 殺 に
関 連 する要 因 についての調 査 を計 画 していま
す。今 回 は、今 後 全 国 で調 査 を実 施 する方 法 を
検討するための予備調査を行っています。
━ このために自 殺 で亡 くなった方 のご家 族 また
は知 人 の 方 を訪 問 させ ていただ いていま す。 調
査 は聞 き取 り調 査 の形 式 で行 われ、だいたい1
時 間 から2時 間 かかります。ご本 人 が亡 くなった
ご様 子 と、これについてのあなたのお考 えやお気
持ちをうかがいたいと思います。
━ お話 になった内 容 については、東 京 にある国
立 精 神 ・神 経 センター精 神 保 健 研 究 所 に集 めら
れ、集計されます。ご本人やあなたのお名前が外
に出 ることはありません。お答 えになりたくない質
問 があれば、そうおっしゃってください。その質 問
はとばします。また、いったん研究 に参 加されると
お決 めになった後 でも、いつでも撤 回 することが
できます。
この 説明後、少し間を置き、調査対象者から質
問がないか、あるいは調査員に要望がないかを確
認する。「調査への参加に同意いただけるようで
したら、この同意書に必要事項をご記入くださ
い」と述べて、同意書に記入してもらう。
この段階で自殺者の遺族向けパンフレットを
渡し、調査中に必要があれば遺族としての気持ち
や感情にも対応する用意があることを伝えるた
めに例えば以下のように説明する。「また、こち
らは自殺でご家族や知人を亡くされた方にお配
りしているパンフレットです。調査が終わった後
にでもご覧いただければと思います。なお、ご自
身のお気持ちをお話しになることで、精神的に楽
になることもあります。質問以外のことでも何か
あればどうぞお聞かせください。」
(4)自由な話し合い
面接では、回答者に関する基本的な情報を得た
後、自由な話し合いによる調査を行う。半構造化
面接が一問一答であるのに対し、自由な話し合い
による調査では回答者にご自身の体験や考えを
自由に話してもらう。自由な話し合いは非常に重
要な部分であり、回答者が自分の言葉で、自殺者
の死亡の過程、生前の社会的ネットワークおよび
この自殺についての回答者の見方を話してもら
う。自由な話し合いでは、次のような効果も期待
している。
①長い面接票を直接質問すると回答者に嫌気
が生じやすい。自由な話し合いを通じて良好な感
情の交流があれば、嫌気を減らすことができ、協
力レベルも高められる。
②自由な話し合いによる面接の中で収集され
た情報があれば、後半の半構造化面接では重複の
質問を避け、時間の節約ができる。
③敏感な問題について、回答者は自由な話し合
いの時に無意識に取り上げるかもしれない。この
ことで重要な情報を漏らすことがないようにで
きる。
面接票では、自由な話し合いにおけるテーマを
いくつか例示した。自殺者の遺族用のテーマの例
を下記に示す。一般住民対照の家族・知人用の面
接票では、別のテーマが用意されている。
(回答者の気持ちをほぐすために、まずは最近の
ご家族の様子などを聞くことから始める。)
(導入例)
ご本人がお亡くなりになってから、時間が少し
経ちましたが、いかが過ごされていますか?
あなたの気持ちや生活は少しは落ち着かれま
したか?
(注) 次の 1~7 の事柄について、必ずしも順番
に聞く必要 はない。
1.死亡の経 過について
ご本人の亡くなった経過についてご存知のこと
をお聞かせいただけますか?
(注)可能であれば、遺書の有無などを聞く
2.行動、態 度、精神 的 な変化について
亡くなる前の様子に変わったところはなかった
ですか?
当時、ご本人の精神状態には何か変化があり
ましたか?
3.家族との関係について
亡くなる前の6カ月間、ご家族の状況はどうで
したか?
家族同志のご関係はどうでしたか?
ご本人とご家族とはお互いに打ち解けて話さ
れましたか?
当時、ご本人は家庭生活に満足されていまし
たか?
4.親子、兄 弟や親族との関係について
亡くなる前6カ月間、ご本人と家族・親戚との
関係はどうでしたか?
ご本人は家族や親族と打ち解けて話そうとし
ましたか?
ご本人は困った時、家族や親族に助けを求め
ることを希望しましたか?
家族や親族による助けに満足していました
か?
死亡前6カ月間、ご本人と家族や親族との関
係に変化はなかったですか?
5.交友関 係 について
亡くなる前6カ月間、ご本人はお友達とよく交
流していましたか?
ご本人は友人と打ち解けて話そうとしていまし
たか?
困った時、ご本人は友人に助けを求めました
か?
亡くなる前6カ月間、ご本人と友人との関係に
変化はなかったですか?
6.仕事上の関係について
亡くなる前6カ月間、ご本人は仕事をされてい
ましたか。お仕事の様子はどうでしたか?
上司、同僚、隣人との関係はどうでしたか?
ご本人は仕事に満足していましたか?
7.家族 以外 で、特に相 談者がいたかどうか
亡くなる前に、ご本人が誰かに相談していたか
どうか、ご存知ですか?
(5)半構造化面接
自由な話し合いに引き続き、半構造化面接を実
施する。半構造化面接では、原則として用意され
た質問文を読み上げ、回答者の回答を選択肢や数
値で記録する。ただし調査員の判断で、追加の説
明や確認のための質問をしてもよい。半構造化面
接では、死亡の状況、生活歴、生活出来事、生活
の質、身体の病気の治療状況、心の健康問題、精
神問題による援助希求、 家族構成、事故発生前
の家庭状況について調査を行うこととした。
生活出来事では、A:職場の出来事、B:学業上の
出来事、C:経済上の出来事、D:対人関係上の出来
事、E:住居に関する出来事、F:家庭での出来事、
G:病気や事故、H:会社の経営、I:その他に関する
合計 77 項目(その他を含む)の生活出来事を一
覧表にし、ご本人が死亡(対照群では調査時)1
年前に経験したことのある出来事をあげてもら
い、経験した出来事についてはその時期、出来事
が本人とって良い事か悪い事か、出来事の本人へ
の精神的影響の持続期間、出来事の本人への精神
的影響の大きさを回答してもらった。
本人が経験していた可能性のある心の健康問
題(精神障害)については、DSM-IV 診断基準に
準拠し、以下の精神障害の診断を行うこととした。
自殺の心理学的剖検面接票で取り上げた
精神障害
Ⅹ-4 注意欠陥/多動性障害
Ⅹ-5 行為障害
A 精神遅滞
B 認知症
C-1 アルコール乱用
C-2 アルコール依存
D-1 物質乱用
D-2 物質依存
E-1 大うつ病性障害(単一または反復エピソー
ド)
E-2 気分変調性障害
F-1(b) 双極性 I 型(単一躁病エピソード)
F-1(b) 双極性 I 型(その他)
F-2 双極性 II 型障害
G-1 短期精神病性障害
G-2 統合失調症
G-3 その他の精神障害
H-1 パニック発作
H-2 強迫性障害
H-3 (a)外傷後ストレス障害
H-3 (b)急性ストレス障害
H-4 全般性不安障害
I-1 神経性無食欲症
I-2 神経性大食症
I-3 転換性障害
I-4 心気症
I-5 病的賭博
I-6 境界性人格障害
I-7 適応障害
I-8 その他の種類の精神障害
(6)調査終了
調査終了にあたっては感謝の言葉を述べる。録
音(録音していた場合のみ)を終了し、この後に
ついては回答者が録音を気にせずに話しができ
るように配慮する。まず、調査への感想をたずね
る。さらに回答者の気持ちや困難の聞き取りを
「その他にお困りになったこと、お話になりたい
ことなどがあればお聞かせください。ご本人のこ
とでもあなた(回答者)ご自身のことでもかまい
ません。」などのようにたずねる。調査員は、時
間のある限りできるだけ傾聴し、必要に応じて助
言や情報の提供を行う、必要に応じて、調査開始
時に渡したパンフレットの説明をする。例えば
「さきほどお渡ししたこのパンフレットには、自
殺された方のご家族や知人の方におきやすい心
配事や困難、それらを理解するヒント、困った場
合の相談先などが書かれています。参考になれば
幸いです」「気持ちの整理の問題やその他の心配
事、困り事についてご相談のある場合には、どう
ぞいつでもご連絡ください。」と説明する。この
ことにより、回答者が自分自身の気持ちや困難に
ついて調査員に相談できる機会を設け、調査員は
必要に応じて地域の相談機関を紹介する。
(7)調査員が面接終了後に記入する項目
調査員が面接終了後に、この調査や面接内容に
関する経験や感想、意見を自由記入できる項目を
作成した。ここで収集された情報は、来年度の研
究デザインや面接票の改善に反映される予定で
ある。
3.自殺の心理学的剖検面接トレーニング法の開
発
これまでの半構造化面接トレーニングの経験
から試作した自殺の心理学的剖検面接トレーニ
ングのスケジュールは下記のようである。
自殺の心理学的剖検面接トレーニングのスケジ
ュール
平成 18 年
第1日目:2 月 6 日(月)
午前:研究事務局挨拶(目的と概要)
自殺発生後の遺族の心理的ケア①(高橋祥友先
生)
午後:自殺発生後の遺族の心理的ケア②(同上)
質疑
第2日目:2月7日(火)
午前:自殺の心理学的剖検による症例・対照研究
の概要
研究デザインの説明と討議
午後:面接の手順と面接調査票の解説
質疑
第3日目:2月8日(水)
午前:模擬面接練習(模擬ケースを使用した練習)
午後:総合面接実習(1対1でペアになった練習)
全体としてトレーニングは順調に進んだ。今回
はスタッフ1名に自殺者の遺族という設定で模
擬回答者を演じてもらい、トレーニング参加者が
1人数問ずつ質問を行い、その回答を記録すると
いうやりとりを練習した。これは実戦的で効果的
な練習になったと考える。残念ながら模擬面接練
習が予想よりも長時間かかり、1対1での総合面
接実習を実施することはできなかった。パイロッ
ト研究におけるトレーニングでは模擬面接練習
の時間をより長く設定すべきと考えられた。
D.考察
わが国における自殺の心理学的剖検の方法論
に参考となるように、これまでに公表されている
自殺の心理学的剖検による 24 の症例・対照研究
の文献レビューを行い、方法論を整理した。自殺
の心理学的剖検研究の対象の選定や調査方法論
にはかなり多様性がみられたが、通常1~2名の
主要情報提供者(ご遺族)と、これに性別、年齢
を一致させた一般住民対照群に対して、ご遺族の
場合には死亡後3~12 ヶ月目に、精神科医、臨床
心理士、精神科専門看護師などが面接調査をする
ことが多かった。自殺者のご遺族への調査は、研
究についての十分説明と同意という一般的な疫
学研究倫理指針に基づく配慮の他、自殺した者の
人格の尊重や、ご遺族が支援や治療を必要として
いる場合に必要な機関に受診できる手助けすけ
が重要と思われた。しかし一方で、ご遺族が調査
を、苦痛を和らげ、世の中の役にたつものとして
前向きにとらえる傾向があることも見いだされ
た。
以上を参考にして、今回本研究で開発した自殺
の心理学的剖検面接票およびマニュアルについ
ては、3日間の調査員訓練を通じてさらに面接調
査にあたって、自殺者のご遺族の気持ちへの配慮
が十分になされるように、さまざまな具体的な工
夫が加えられた。このことはわが国ではじめての
本格的な自殺の心理学的剖検研究を実施するに
あたって大きな前進であると考えられる。フィー
ジビリティスタディの結果からのフィードバッ
クを加えて、調査回答者にとっても参加するメリ
ットが感じられる面接方法になるように、来年度
はさらに改善が加えられると期待される。
調査員のトレーニング法については、面接票の
内容の検討や意見聴取も同時に実施したため、必
ずしも予定どおりにはゆかなかったが、模擬回答
者を設定しての実戦的トレーニングは非常に有
効な方法であったと思われた。またトレーニング
の初日を自殺者の遺族への対応の講義にあてた
こともトレーニング参加者の共通理解や態度を
育成するのに効果的であったと考える。来年度の
パイロット研究にむけて有効なトレーニング方
法を一層の洗練させる予定である。
本研究では中国の自殺の心理学的剖検研究の
面接票を参考にして、自殺の心理学的剖検面接票
およびマニュアルを作成した。面接の中ではこれ
までの諸外国で調査された要因を評価するよう
に設計した。しかしながらわが国で自殺の増加要
因として注目されている経済困窮・借金、失業あ
るいは過重労働などの側面については、十分に考
慮されていない。わが国の自殺の心理学的剖検研
究においてどのような要因を調査し、さらにその
結果を自殺予防対策にどうつなげてゆくのかに
ついて自殺対策に関わる関係者による討議など
を通じて重要要因の洗い出しや優先順位の決定
を行ってゆく必要があると考える。
E.結論
これまでに公表されている自殺の心理学的剖
検による 24 の症例・対照研究からその方法論を
整理した。自殺の心理学的剖検における調査対象
は通常1~2名の主要情報提供者(自殺者の配偶
者、パートナー、両親、成人している子供、これ
以外の家族)であり、これ以外にその他の親戚、
友人、通院していた医療機関の担当者が対象とな
ることもある。対照群については性別、年齢を一
致させた一般住民が選定されることが多かった。
調査員は、多くの研究では、精神科医、臨床心理
士、精神科専門看護師など。遺族への調査は、悲
嘆のための期間を考慮して、死亡後3~12 ヶ月目
に実施されることが多い。調査される要因は、死
因に関する判断、自殺意図の表出、精神医学的診
断、生活上出来事と日常生活の困難、医療従事者
との接触およびその時期、精神疾患に対して受け
ていた治療の内容、自殺に関する報道や風聞の影
響である。調査対象者は研究について十分説明を
受け、参加への同意のある場合のみ面接される。
自殺した者の人格を尊重することが重要視され
ている。支援や治療を必要としている遺族を必要
な機関に受診できるように手助けすべきである。
一方、家族が調査を、苦痛を和らげるものととら
えることも知られている。
わが国における自殺の心理学的剖検フィージ
ビリティスタディ用の調査票の開発にあたって、
北京自殺研究・予防センターによる自殺の心理学
的剖検全国調査(症例・対照研究)の調査票を入
手し、これをわが国に合うように改変した。また
自殺対策に経験のある専門家等に討議してもら
い、討議内容に基づき調査票の構成や内容を修正
した。本研究で開発した自殺の心理学的剖検面接
票は 14 章(または部)から成り、自殺の発症状
況および危険因子について広範に情報を収集で
きるよう設計されている。面接は自由な話し合い
と、質問項目が決められた半構造化面接の2つの
部分から構成され、最初に自由な聞き取りを約 40
分間行い、その後に半構造化面接を実施する。ま
た自殺者のご遺族の気持ちに配慮するために導
入部、自由な話し合い、調査終了時に調査上の工
夫を行った。面接票および面接調査の補助に使用
する「回答者用小冊子」は、「死亡者の家族・知
人用」と、「一般住民の家族・知人用」の2種類
を作成した。また面接マニュアルと面接調査のト
レーニング法も開発した。本研究により、次年度
以降のパイロット調査にむけての準備が整った。
F.健康危険情報
該当せず。
G.研究発表
1.論文発表
該当せず。
2.学会発表
該当せず。
H.知的財産権の出願・登録状況
該当せず。
I.引用文献
1.自殺の心理学的剖検に関する総説
Cavanagh JT, Carson AJ, Sharpe M, Lawrie SM.
Psychological autopsy studies of suicide: a
systematic review. Psychol Med. 2003; 33:
395-405.
Isometsa ET. Psychological autopsy studies--a review.
Eur Psychiatry. 2001; 16: 379-85.
Pearson JL, Caine ED, Lindesay J, Conwell Y, Clark
DC. Studies of suicide in later life: methodologic
considerations and research directions. Am J
Geriatr Psychiatry. 1999; 7: 203-10.
Hawton K, Appleby L, Platt S, Foster T, Cooper J,
Malmberg A, Simkin S. The psychological
autopsy approach to studying suicide: a review of
methodological issues. J Affect Disord. 1998; 50:
269-76.
Jacobs D, Klein-Benheim M. The psychological
autopsy: a useful tool for determining proximate
causation in suicide cases. Bull Am Acad
Psychiatry Law. 1995; 23: 165-82.
Brent DA. The psychological autopsy: methodological
considerations for the study of adolescent suicide.
Suicide Life Threat Behav. 1989; 19: 43-57.
2.過去 10 年間に実施された自殺の心理学的剖
検による症例・対照研究の先行研究)
J. Tsoh, H. F. K. Chiu, P. R. Duberstein, S. S. M. Chan,
I. Chi, P. S. F. Yip and Y. Conwell (2005)
Attempted suicide in elderly Chinese persons - A
multi-group, controlled study. American Journal
of Geriatric Psychiatry 13, 562-571
H. F. Chiu, P. S. Yip, I. Chi, S. Chan, J. Tsoh, C. W.
Kwan, S. F. Li, Y. Conwell and E. Caine (2004)
Elderly suicide in Hong Kong--a case-controlled
psychological autopsy study
. Acta
Psychiatr Scand 109, 299-305
P. R. Duberstein, Y. Conwell, K. R. Conner, S. Eberly
and E. D. Caine (2004a) Suicide at 50 years of
age and older: perceived physical illness, family
discord and financial strain.
Psychological
Medicine 34, 137-146
P. R. Duberstein, Y. Conwell, K. R. Conner, S. Eberly,
J. S. Evinger and E. D. Caine (2004b). Poor
social integration and suicide: fact or artifact?
A case-control study. Psychological Medicine 34,
1331-1337
J. Zhang, Y. Conwell, L. Zhou and C. Jiang (2004)
Culture, risk factors and suicide in rural China: a
psychological autopsy case control study. Acta
Psychiatr Scand 110, 430-7
H. C. Kung, J. L. Pearson and X. H. Liu (2003) Risk
factors for male and female suicide decedents
ages 15-64 in the United States - Results from
the 1993 National Mortality Followback Survey.
Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology
38, 419-426
C. Owens, N. Booth, M. Briscoe, C. Lawrence and K.
Lloyd (2003) Suicide outside the care of mental
health services: a case-controlled psychological
autopsy study. Crisis 24, 113-21
K. Hawton, S. Simkin, J. Rue, C. Haw, F. Barbour, A.
Clements, C. Sakarovitch and J. Deeks (2002).
Suicide in female nurses in England and Wales.
Psychol Med 32 239-50
C. S. Lee, J. C. Chang and A. T. Cheng (2002)
Acculturation and suicide: a case-control
psychological autopsy study. Psychol Med 32,
133-41
M. R. Phillips, G. Yang, Y. Zhang, L. Wang, H. Ji and
M. Zhou (2002) Risk factors for suicide in China:
a national case-control psychological autopsy
study. Lancet 360,1728-36
M. Waern, B. S. Runeson, P. Allebeck, J. Beskow, E.
Rubenowitz, I. Skoog and K. Wilhelmsson
(2002) Mental disorder in elderly suicides: a
case-control study. Am J Psychiatry 159, 450-5
K. Conner, C. Cox, P. Duberstein, L. Tian, P. Nisbet,
and Y. Conwell (
2001) Violence, Alcohol,
and Completed Suicide: A Case-Control Study.
Am J Psychiatry 158: 1701–1705
D. Harwood, K. Hawton, T. Hope and R. Jacoby
(2001). Psychiatric disorder and personality
factors associated with suicide in older people: a
descriptive and case-control study. Int J Geriatr
Psychiatry 16, 155-65
K. Houston, K. Hawton, and R. Shepperd (2001).
Suicide in young people aged 15–24: a
psychological autopsy study. Journal of Affective
Disorders 63, 159–170
A. T. Cheng, T. H. Chen, C. C. Chen and R. Jenkins
(2000). Psychosocial and psychiatric risk factors
for suicide. Case-control psychological autopsy
study. Br J Psychiatry 177, 360-5
L. Appleby, J. Cooper, T. Amos and B. Faragher
(1999). Psychological autopsy study of suicides
by people aged under 35. Br J Psychiatry 175,
168-74
D. A. Brent, M. Baugher, J. Bridge, T. Chen and L.
Chiappetta (1999) Age- and sex-related risk
factors for adolescent suicide. J Am Acad Child
Adolesc Psychiatry 38, 1497-505
J. T. Cavanagh, D. G. Owens and E. C. Johnstone
(1999a) Life events in suicide and undetermined
death in south-east Scotland: a case-control study
using the method of psychological autopsy. Soc
Psychiatry Psychiatr Epidemiol 34, 645-50
J. T. Cavanagh, D. G. Owens and E. C. Johnstone
(1999b) Suicide and undetermined death in south
east Scotland. A case-control study using the
psychological autopsy method. Psychol Med 29,
1141-9
L. Vijayakumar and S. Rajkumar (1999) Are risk
factors for suicide universal? A case-control
study in India. Acta Psychiatr Scand 99, 407-11
M. S. Gould, P. Fisher, M. Parides, M. Flory and D.
Shaffer (1996). Psychosocial risk factors of
child and adolescent completed suicide. Arch
Gen Psychiatry 53, 1155-62
A. T. Cheng (1995) Mental illness and suicide. A
case-control study in east Taiwan. Arch Gen
Psychiatry 52, 594-603
A. D. Lesage, R. Boyer, F. Grunberg, C. Vanier, R.
Morissette, C. Menard-Buteau and M. Loyer
(1994) Suicide and mental disorders: a
case-control study of young men. Am J
Psychiatry 151, 1063-8
謝辞
本研究を実施するに当たり、心理学的剖検面接
の調査員訓練において、NPO法人自殺対策支援
センターライフリンクの清水康之代表には、ビデ
オ撮影等の記録作成にご協力いただいたと同時
に、本研究の今後の発展に役立つ貴重なご意見を
いただきました。この場を借りてお礼申し上げま
す。
自殺の心理学的剖検による症例・対照研究一覧 (1)
対象地域
(地域名,
国名)
B.
2005 Frankfrt
Schneider,
/Main
A. Schnabel,
area, ドイ
B. Weber, L.
ツ
Frolich, K.
Maurer and
T
P. R.
2004b Monoroe
Duberstein,
or
Y. Conwell,
Ononda
K. R.
ga
Conner, S.
counties
Eberly, J. S.
, New
Evinger and
York, ア
E. D. Caine
メリカ合
衆国
著者
P. R.
Duberstein,
Y. Conwell,
K. R.
Conner, S.
Eberly and
E. D. Caine
年号
2004a Monoroe
or
Ononda
ga
counties
, New
York, ア
メリカ合
衆国
J. Zhang, Y. 2004
Conwell, L.
Zhou and C.
Jiang
around
Dalian,L
iaoning
Province
, 中国
情報提供者(ケースとコ
ントロールで異なる場合
は分けて記述した)
自殺:the Centre of
生存者: 電話番号から 配偶者,成人した子ど
ランダムに抽出
も,両親,兄弟,他の関
Forensic Medicine で自殺
係者や友達;
と確定(ICD-9E 950-E
controlは本人のみ
959)された者
症例
対照
調査票
調査員
主要な結果
National Suicide
Prevention Project in
Finlandで使われた質問票;
SCID-I, SCID-II
記載なし
男性では他の要因を調整し
ても,現在の喫煙が自殺の
リスクになる(OR=2.6, 95%
CI 1.3-5.2)
監察医によって死因が自殺 生存者: 電話番号から 配偶者,18歳以上の子 (1)社会経済的変数-教育年
とされた者,50歳以上
ランダムに抽出
ども,18歳以上の孫,両 数,職業状況,税金を払う前
親,兄弟,親戚,友達 の家庭の年間収入
(2)社会的統合-[家族]:同胞ス
テータス,育児,生存している
兄弟,子どもの数,生活の配
置;
[社会/地域]:Duke Social
Support Index(Conner et
al., 2001b),地域活動への参
加,宗教的関与;
監察医によって死因が自殺 生存者: 電話番号から 配偶者,18歳以上の子 (1)社会人口統計学的指標-教
とされた者,50歳以上
ランダムに抽出
ども,18歳以上の孫,両 育年数,職業状況,税金を払
親,兄弟,親戚,友達; う前の家庭の年間収入
controlは本人も含む (2)精神障害
(3)過去1年のストレスフルなラ
イフイベント-Paykelら(1971)
の質問票に基づいた項目,
記載なし
精神障害や職業状態を調 データは
整しても,社会的ステータス Duberstei
は自殺のリスクを高めた。 n, et al. (
2004a)が
元
精神医学,
心理学,ま
たはカウン
セリングのト
レーニング
を受けた者
精神障害を調整した後も持
続していたのは身体疾患
(OR 6.24 95% CI 1.2851.284)のみであった。
Jinzhou とZhuanghe内の
行政区分2地域で選択され
た。Jinzhouでは公衆衛生
の職員がこの地域の自殺者
のリストを要求した。
Zhuangheでは全ての村に
調査チームを派遣し,村人
を訪問し最近の自殺者を聞
いた。
訓練された 中国の農村地域における自
専門家
殺のパターンは,他の文化
と同様の結果であった。
(1) 人口統計学的変数:性,
年齢,婚姻状態,教育,宗教
と信心深さ
(2) 社会的要因:Paykel’s
Interview for
Recent Life Events
(IRLE); Duke Social
Support Index (DSSI)+ 中
国の地方文化に合った19 life
event 項目 ;過去一年間で対
象者に与えた影響の強い順
に出来事を3つ
(3) 精神科的症状と診断
H. F. Chiu, 2004 香港, 中 警察が死因を明らかにした 生存者:政府による
血縁者か本人をよく知 (1)人口統計学的データ -年
者のうち,死因が自殺であり General Household る友達; controlは本人 齢,性,生活水準,婚姻状
P. S. Yip, I.
国
60歳以上である者
Surveyにおいて抽出さ のみ
態,職業,収入,教育,宗教
Chi, S. Chan,
(2)SCID
れた60歳以上である者
J. Tsoh, C.
(3)身体疾患の数と内容
W. Kwan, S.
(4)医療施設の使用状況
F. Li, Y.
(5)認知症尺度
Conwell and
C. Owens, N. 2003 Devon, 検死官による自殺による死 生存者: 7つのプライマ 近親者
社会人口統計学的特性,家
族・対人関係,仕事,最近のラ
Booth, M.
イギリス 因,または原因不明の死因 リヘルスケアセンターに
(open verdict)による,専 おける一般開業医のリ
イフイベントと慢性的な生活上
Briscoe, C.
の困難,性格,現在の身体
門的なメンタルヘルスサー ストからランダム抽出, メ
Lawrence
的・精神的健康,精神科病歴;
ビスを受けていなかった者,
ンタルヘルスサービスを
and K. Lloyd
18歳以上
Paykel’s Life Events
受けていない者
Schedule(Paykel, 1983);
H. C. Kung, 2003 アメリカ合
衆国
J. L. Pearson
and X. H.
Liu
C. S. Lee, J.
C. Chang
and A. T.
Cheng
2002
East
Taiwan
15-64歳の自殺者 (ICD-9
nos. E950–E959);
the US1993 National
Mortality Followback
Survey (NMFS)からデー
タを得た
Han Chinese, Atayal and
Ami;
生存者:同じ村や近所 近親者か自殺者の親
の者を現地で連絡を取 友;controlは本人も含
り,性,年齢をマッチン む
グして選んだ
自然な原因による死者 近親者
(ICD-9 nos. 001–799)
the US1993 National
Mortality Followback
Survey (NMFS)から
データを得た
生存者: 人口調査記録 一緒に住んでいた家族
からランダム抽出
K. Hawton, 2002
S. Simkin, J.
Rue, C. Haw,
F. Barbour,
A. Clements,
C.
Sakarovitch
and J. Deeks
England 検死官が評定した自殺によ 生存している女性看護 近親者や友達;
る死因,または原因不明の 師: Royal College of
and
controlは本人
Nursing and Unisonの登
Wales, 死因による女性看護師
録者リストから選択
イギリス
M. Waern, B. 2002
S. Runeson,
P. Allebeck,
J. Beskow, E.
Rubenowitz,
I. Skoog and
K.
Wilhelmsson
Gö
teborg,
Göteborg 法医学機関で剖 生存者: Göteborgと近
検され,確かな自殺,原因 接2都市から税金名簿
不明死から選択,65歳以上 により無作為抽出
精神科医2 抑うつ性障害と過去の自殺
名,臨床心 未遂の有無がリスク要因で
理士1名, あった。
ソーシャル
ワーカー1
名
記載なし
主要な予測因子は,以前の
自殺未遂,社会・対人問
題,現在の精神疾患,過去
の精神疾患,過去に専門
サービスを受けていたこと,
であった。
教育水準,生活の配置,マリ 記載なし
ファナの使用,火器へのアクセ
シビリティ,過度のアルコール
摂取,メンタルヘルスサービス
の利用
マリファナ使用,過度のアル
コール摂取,火器へのアク
セスがどちらの性において
も自殺のリスクを高めた。
自殺行動,医療・精神科的病
歴と死の時の臨床状態,性
格,家族の精神病理歴と自殺
行動歴と関連する心理社会的
要因;
The ICD-10 version
of the Standardized
Assessment of Personality
(SAP) (Mann et al. 1981),
以前の身体・精神的健康
精神科医1
名(第3著
者),心理学
者2名
Atayalと男性グループにお
いて,社会的同化の低さが
自殺の高いリスク要因で
あった
死の事情,個人・家族歴,対
人状況,死の前1年間で仕事
や家庭で直面していた問題;
ICD-10 research criteria
(WHO, 1993)に基づいた精
神状態を査定するツール;
Personality Assessment
Schedule (Tyrer et al.
1988);
case: 著者
ら F. B.,
A. C., J. R.
or S. S.(イ
ニシャル)
control: 記
載なし
current psychiatric
disorder (90.5% v. 7.1%,
OR=68.5),
personality disorder
(38.1% v. 1.2%, OR=32),
and history of deliberate
self-harm (71.4% v.
2.4%, OR=58.5)
case: 精神
科医1名
(M.W.)
control: 老
人病専門医
1名,精神
科看護師1
名,精神科
作業療法士
現在何らかの精神疾患があ
ることが,とても強いリスク要
因だった(OR=113.1, 95%
CI 32.9–389.2)
近親者か自殺者をよく 対人状況,ライフイベント,過
知るもの(配偶者,成人 去・現在の精神・身体的健康,
自殺行動,アルコール・非合
した子ども,兄弟,親
法薬物の使用,医療サービス
戚,親友,在宅介護
者,訪問看護師/医療従 との接触,処方薬の使用;
Comprehensive
事者);
コントロールは本人だ Psychiatric Rating Scale ,
が,健康状態の悪い者 認知症スケール,
については代理の者に
面接 た
備考
データは
Cheng,
(1995)の
研究が元
自殺の心理学的剖検による症例・対照研究一覧 (2)
著者
M. R.
Phillips, G.
Yang, Y.
Zhang, L.
Wang, H. Ji
and M. Zhou
対象地域
(地域名, 症例
国名)
2002 中国
10歳以上で死亡診断書が
自殺である者
年号
D. Harwood, 2001
K. Hawton,
T. Hope and
R. Jacoby
England 検死官により自殺と評定,ま
, イギリス. たは原因不明,事故とされ
た者の内死の状況が自殺の
可能性がある者,60歳以上
K. Conner et 2001 アメリカ合 自殺者,20-64歳,死因は死
衆国
al.
亡証明書による
K. Houston
et al.
2001 イギリス
A. T. Cheng, 2000
T. H. Chen,
C. C. Chen
and R.
Jenkins
East
Taiwan
検死官により自殺,原因不
明死,事故(交通事故以外)
の評定を受けた24歳以下の
者; 原因不明死,事故死の
者は記録を検討して自殺に
含めた
Han ChineseとAtayal,
Amiにおいて検察官または
検死官の報告による,殺人
以外の全ての不自然な死因
の中から選択
J. T.
1999b south検察官により評定された死
因が自殺・原因不明の者か
Cavanagh,
east
D. G. Owens
Scotland ら
and E. C.
, イギリス
Johnstone
情報提供者(ケースとコ
ントロールで異なる場合 調査票
は分けて記述した)
死者:10歳以上で死亡 家族メンバー,死者と親 (1)社会人口統計学的変数:
密だった関係者
診断書が事故である者
性,年齢,居住地,婚姻状
態,学歴,職業状況,家庭の1
人あたりの平均収入,身体障
害の有無
(2)心理学的変数:前年の慢
性的なストレスの重傷度,死の
前の急性ストレスの重傷度,
死の前2週間の抑うつ症状の
重傷度,死の前の精神疾患の
有無,以前の心理学的問題に
おける医療の援助,死の前1ヶ
月における向精神薬の使用,
慢性・急性ストレスは本調査に
おいて作成したチェックリスト
を使用,DSM-IV Axis Iの疾
患に対応した面接票を作成し
て使用
(3)対人環境とライフイベント:
以前の自殺未遂,血縁者にお
ける以前の自殺行動,友達や
関係者における自殺行動,死
の前1ヶ月のQOL得点,死の
前1ヶ月における家族外の社
会的活動水準の変化,独居か
否か,死の前1ヶ月の医療の
専門家との接触,死の前1ヶ月
における死者の身体疾患が家
族メンバーに及ぼした全体的
な影響の情報提供者による評
自殺者と同時期におけ 死の前1年間で最も対 antecedents to the death,
る病院での自然の原因 象者と親しかった者
and a detailed
による死者,
family and personal
history. Personality
variables
were assessed using the
ICD-10 version of the
Personality Assessment
Schedule (PAS) (Tyrer et
al., 1988);
Psychiatric Illness
Questionnaire based on
ICD-10
research criteria (WHO,
1993);
short version of the
Informant
Questionnaire on
Cognitive Decline in the
Elderly
(IQCODE) (Jorm 1994)
事故死者,20-64歳,死 近親者か生前死者と親 死亡前過去1年間の暴力行
因は死亡証明書による しかった者
為;
the CAGE questionnaire
(アルコール);
自傷行為のエピソード 近親者,親友,主治医; 死の状況,少年期と青年期と
がある男性: WHO/EU controlは本人のみ
家族状況,住居,教育歴,職
Multicentre Study on
歴,対人関係,財政・法的問
Parasuicide(Schmidtke
題,ライフイベント,病歴,精神
et al., 1996)の研究の一
医学的障害,人格障害,死者
部から抽出
への情報提供者の反応,過去
と現在の精神医学的障害;
Personality Assessment
Schedule (Tyrer et al.,
1988);
生存者: 人口調査記録 死か面接の前に一緒に 1)精神障害:Barracloughら
からランダム抽出
暮らしていた家族
(1974)が用いた面接票を現在
の診断システムに合うように修
正;
Standardized Assessment
of Personality(Mann et al,
1981);以前の身体的・精神的
健康に関する医療情報;遺書
などを家族から収集
2)人口統計学的要因:婚姻状
態,就業状態,社会経済的状
態,居住状態(一人か否か),
移住の有無,
3)個人要因:親の喪失の有無
とその理由,以前の自殺未
遂,
4)調査時点の身体疾患:重大
な疾患,慢性的な苦痛,不具
(保護の領域,言語・非言語
的コミュニケーション,日常生
活の介護,外での社会的活
動)
5)精神障害、自殺の家族歴
6)生活出来事:List of
生存者: 病院の入院・ 配偶者,または第一級 Schedule for Affective
外来患者,一般開業医 の近親者
Disorders and
からの紹介,マッチング
Schizophrenia - Lifetime
に精神障害も含む
Version (SADS-L);
The Personality
Assessment
Schedule (Tyrer et al.
1988);
対照
調査員
主要な結果
備考
公衆衛生 最終的なモデルに残った主
医,精神科 要なリスクは,高い抑うつ得
医
点,以前の自殺企図,死の
前の急性ストレス,低QOL,
高い慢性ストレス,死の前2
日間での重篤な対人葛藤,
以前の血縁者の自殺企図,
以前の友達か関係者の自
殺行動
第1著者,
depressive episode
OR=4.0 95% CI 1.6-9.9,
personality disorder
OR=4.0 95% CI 0.8-18.8,
Personality trait
accentuation OR=4.7
95% CI 1.2-15.1
トレーニング アルコール乱用がなく,死
された者
亡前1年間において暴力行
為があることは,自殺の重要
な予測因子であった。
記載なし
自傷行為者と比べると,自
殺者はより危険な手段を用
い,一人暮らしの割合が多
かった。
5つの主要なリスク要因が明
らかになった(喪失,第一級
近親者の自殺行動,大うつ
エピソード,感情的に不安
定な人格障害,物質依存)
データは
Cheng,
(1995)の
研究が元
精神科医1 自傷行為 OR=4.1 95% CI
名(第1著 1.0-16.0;
者)
身体疾患 OR=7.6 95% CI
1.3-47.6;
メンタルヘルスサービスの
利用 OR=0.011 95% CI
0.008-0.8;
データは
Cavanag
h, et al. (
1999a)が
元
精神科医1
名(第1著
者),心理学
者2名
自殺の心理学的剖検による症例・対照研究一覧 (3)
対象地域
(地域名,
国名)
J. T.
1999a southCavanagh,
east
D. G. Owens
Scotland
and E. C.
, イギリス
Johnstone
著者
年号
情報提供者(ケースとコ
ントロールで異なる場合 調査票
は分けて記述した)
検察官により評定された死 生存者: 病院の入院・ 配偶者,または第一級 Interview for Life Events;
因が自殺・原因不明の者か 外来患者,一般開業医 の近親者
慢性的に抱えている困難も評
ら
からの紹介,マッチング
定;
に精神障害も含む
Schedule for Affective
Disorders and
Schizophrenia - Lifetime
Version (SADS-L)
症例
対照
調査員
主要な結果
精神科医1 家庭における対人問題
名(第1著 OR=9.0 95% CI, 1.3-399
身体的健康に関連した悪い
者)
出来事 OR=5.0 95% CI
1.1-47
L.
1999
Vijayakumar
and S.
Rajkumar
Chennai 警察か判事により自殺と認
(Madras 定された14歳以上の者
), インド
Foster
Nothern 検死官に報告された14歳以 生存者: 自殺者の主治 近親者,友達
Ireland, 上の全ての死因のうち,自 医の患者リストからラン
ダム抽出
イギリス 殺が疑われる者
第1著者
Western 著者がこれまで行ってきた 生存者: 地理的クラス
Pennsyl 研究で累積した自殺者; 13- ターサンプリング
vania, ア 19歳
メリカ合
衆国
記載なし
年長と年少,男性と女性,と
いった人口統計学的なグ
ループ分けをしても,気分
障害,親の精神病理,虐待
の経験,銃の利用しやす
さ,過去の自殺企図といっ
たリスク因子は同様に有意
であった。
経験豊富な
精神科看護
師(第2著
者)
・無職,社会的孤立,結婚し
ていないこと,最近の対人
的ライフイベント,親や友達
や恋人との困難といった,
多くの社会・対人因子が自
殺と関連していた。
・全ての年齢での研究と比
較して,精神疾患やアル
コール・物質乱用を持つ割
合が高かった。
修士・博士
レベルの心
理学専攻学
生,認定さ
れたソー
シャルワー
カー
最も著名なリスクは学校関
連問題,家族の自殺行動
歴,親-子どもコミュニケー
ション,ストレスフルライフイ
ベントであった。
1999
D. A. Brent, 1999
M. Baugher,
J. Bridge, T.
Chen and L.
Chiappetta
L. Appleby, 1999 イギリス
J. Cooper, T.
Amos and B.
Faragher
35歳以下で死因評定が自
殺か原因不明であった者
生存者: 自殺者の近所 死亡/調査時に一緒に
に住んでいる者から選 住んでいた親密な近親
択
者,または死者/対象者
に親しかったと考えられ
る者
生存者:自殺者の主治
医(general
practitioner)に,自殺
者にマッチした者をリス
トアップしてもらった
178の質問項目;
第1著者
Paykel's Scale for life
eventsを修正して使用;
SCID Non-Patient
Version;
FH-RDC;
Standardised Assessment
of Personality(SAP)
Structured Clinical Interview
for DSM-III-R(Spitzer et al,
1989);
Standardised Assessment of
Personality(Mann et al, 1981);
List of Threatening
Experiences(Brugha & Cragg,
1990);
宗教的関与の指標(Davidson
& Knudsen, 1997);
騒擾への暴露度合い
両親,兄弟,友人
the Schedule for Affective
Disorders and
Schizophrenia for SchoolAge ChildrenEpidemiologic and Present
Episode vesions;
the Suicide Circumstances
Schedule(Brent et al.,
1988a);
the Beck Suicide Intent
Scale;
FH-RDC;
自殺前1年における生活上の
ストレッサー
親しい家族メンバーか, 人口統計学的変数,病歴,一
死の前に接触のあった 般的健康,精神科的病歴,以
者
前の自傷,教育と仕事,社会
的ネットワーク,ライフイベン
ト,アルコールや薬物乱用を
含めた精神状態;
Paykel's Life Events
Schedule(Paykel, 1983);
Personality Assessment
Schedule(Tyrer &
Alexander, 1979)
両親か自殺時に同居し (1)人口統計学的変数
ていた他の家族メン
(2)親-子ども関係
バー,兄弟,友達,学校 (3)重大な身体的虐待
の教師;
(4)親の精神病理学的特性と
control: 本人,両親も 家族の自殺行動歴
しくは養育者,学校の (5)ストレスフルライフイベント
(6)学校や職場の問題
教師
(7)子どもの精神医学的診断
M. S. Gould, 1996
P. Fisher, M.
Parides, M.
Flory and D.
Shaffer
New
20歳以下の自殺者
York
City他,
アメリカ合
衆国
生存者: 電話番号から
ランダムに抽出
A. Cheng
East
Taiwan
case: 公衆
衛生看護
師,地域の
役所の公務
員;
control: 精
神科医1名
(著者),臨
床心理士2
名
生存者: 自殺者の選挙 最も死者/対象者を知っ The Schedule for Affective 臨床心理士
1名,精神
区のリストからランダム ていた者(母親,父親, Disorders and
に抽出
兄弟,妻/ガールフレン Schizophrenia for School- 科研修医1
名,精神科
ド,友達,他の親類)
Age Children;
Sections of the Interview 医1名(全て
著者ら)
Schedule for Children;
Holmes and Rahe Social
Readjustment Rating
Scale;
Medical Research
Council's Social
Psychiatry Unit in
London, England;
1987 Quebec Hwealth
Surveyの項目;
1995
A. D. Lesage, 1994
R. Boyer, F.
Grunberg, C.
Vanier, R.
Morissette,
C. MenardButeau and
M. Loyer
Han ChineseとAtayal,
生存者: 人口調査記録 近親者や重要な他者
Amiにおいて検察官または からランダム抽出
検死官の報告による,殺人
以外の全ての不自然な死因
の中から選択
Montrea 検死官により自殺とされた
18-35歳の男性
l and
Quebec,
カナダ
DSM-III-Rの診断をするため
に必要な項目;
自殺行動に関する項目;
医学・精神医学的病歴と自殺
前の病態;
心理社会的要因;
備考
交絡要因を除いた最終的な
モデルで有意だった変数は
DSM-III=R Axis Iの障害
の存在(OR, 21.8; CI, 2.5193.3)
家族の精神病理歴(OR,
74.3; CI, 3.7-999)
自殺前1ヵ月におけるライフ
イベント(OR, 15.1; CI,
2.4-93.9)
Axis Iの精神障害を調整し
ても,Axis IIの障害, ライフイ
ベント,無職,自傷歴,自殺
前26週以内の主治医への
受診,が自殺のリスク因子
であった
有意に関連していたリスク
は,すべての精神医学的障
害以前の自殺未遂,家族の
自殺歴とうつ病歴
自殺者は大うつ病,境界性
人格障害,物質乱用といっ
た特定の精神疾患と関連が
あった。
データは
Foster,
et al.
(1997)が
元だが,
casecontrolは
これが初
めて
Fly UP