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韓国における高齢者自殺予防事業の問題と 今後の在り方

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韓国における高齢者自殺予防事業の問題と 今後の在り方
117
論文
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と
今後の在り方
孟
†
浚鎬
要約:本論文は,韓国の高齢者自殺予防事業に関する示唆を得ることによって,韓国の高
齢者の自殺予防事業の問題を明らかにすることを目的とし,自殺予防事業機関の担当者へ
のインタビュー調査を行った。質的分析の結果,5 つの概念的カテゴリーが抽出された。
さらにそれらを高齢者の自殺予防事業の構造的問題と機能的問題に分類して検討を行った。
まず,高齢者の自殺予防事業の構造的問題として,『インフラの不足』
『自殺予防支援体系
の問題』
『財政的支援』が,機能的問題として,『情報共有』
『高齢者自殺の原因に関する見
解の相違』が明らかになった。以上の結果から,今後の韓国の高齢者自殺予防事業の改善
のためには,上記の高齢者の自殺予防事業の構造的問題と機能的問題を積極的に解消する
ことの必要性が示唆された。
キーワード:高齢者,自殺,自殺予防センター,インタビュー,韓国
目次
1.問題の背景及び目的
2.調査方法
2−1.調査協力者
2−2.調査手順と分析方法
2−3.倫理的配慮
3.結果
3−1.インフラ不足
3−2.自殺予防支援体系
3−3.財政的支援
3−4.情報共有
3−5.高齢者自殺の原因に関する見解の相違
4.考察
1.問題の背景及び目的
韓国では,保健衛生や環境改善,医療の発達などに伴って平均寿命が伸長しつつあ
────────────
†
同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程
*
2013 年 10 月 1 日受付,査読審査を経て 2014 年 1 月 22 日掲載決定
118
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
る。2000 年には,高齢化社会となり,2006 年の平均寿命が 79 歳で OECD の平均寿命
である 78.9 歳と比較してようやく 0.1 歳上回った。2010 年現在では 80.7 歳であり,
OECD 国家の平均寿命を大幅に上回っている。また,人口全体に占める高齢者人口の
比率をみると,1995 年に 5.9%,2000 年に 7.2% と高齢化社会に突入していることが分
かる。2006 年に 9.3%,2010 年に 11.0% と年々高齢化は進んでおり,2018 年には 14.3
%まで増加して高齢社会に到達すると予想され,さらに 2020 年には 20.8% にまで到達
し,本格的に超高齢社会に至るものとされている。このように高齢者人口が増加するに
つれ,高齢者の問題も複雑化,多様化し,それに伴って,高齢者の自殺も急激に増加す
ることとなった。高齢者の自殺の深刻性は,政府によって早急に解決するべき課題とし
て扱われるほどの社会問題となっている。
OECD(2012)の報告によると,韓国は 10 万人当たりの自殺人口が 1990 年 8.8 人か
ら 2010 年現在,33.5 人で持続的に増加し,約 4 倍の増加率を示している。この数値は
OECD 平均 12.8 人よりも高く,更に自殺率 2 位のハンガリーの 23.3 人(2009)より 10
人以上高い数値であり,韓国は 2003 年から現在に至るまで OECD 国で継続して自殺率
1 位である。特に,高齢者の自殺率をみると,65 歳∼74 歳の自殺率は人口 10 万人当た
り 81.8 人であり,また,75 歳以上の自殺率は 160.4 人で OECD 国 1 位を占めている。
2 位のハンガリーの自殺率と比較してみると,ハンガリーでは 65 歳∼74 歳の場合 65.5
人であり,75 歳以上の場合は 36.1 人と圧倒的な差を見せている。これは韓国の高齢者
の自殺問題がどれほど深刻であるかを示している(OECD, 2005)
。さらに,高齢者の自
殺は他の年齢層に比べてより多く実行されている。2011 年の統計庁の資料によると,
韓国の高齢者の自殺率は人口 10 万人当たり 70.7 人で平均自殺率である 31.7 人の 2 倍を
超えている状況である。この状況を鑑みるに,ベビーブーマー世代が本格的に引退して
高齢者層に移行する時期から,自殺者の数はさらに急増するものと予想される。
しかし,韓国の社会では自殺を高齢期とは関係ないものと考える傾向がある。自殺及
び死について話すことを嫌う社会文化的な影響により,自殺に対する議論自体が高齢者
を敬う伝統的な社会の価値観とは一致していない,情緒的にもそぐわないことだと考え
る傾向がある。そのため,他の年齢層が自殺を実行する前にあらゆる方法で直接的,間
接的に自殺意図を表現する一方,高齢者は自殺を考える際,自殺意図を表現せずにすぐ
に実行に移す場合が多い(ソジョンファ,2005)
。
政府は自殺率を減少させるために,2005 年に自殺予防 5 カ年総合計画を提示し,さ
らに 2008 年には 2 次自殺予防総合対策(2009−2013)を立案した。それにもかかわら
ず,自殺率は増加し,政府は 2011 年 3 月,
「自殺予防及び生命尊重文化の造成のための
(1)
法律」
(以下,自殺予防法)
」を制定して実施しているが,自殺率の減少には繋がって
いない。その大きな理由として,高齢者の自殺の急増が挙げられる。高齢者の自殺率は
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
119
年毎に増加しているが,政府の自殺予防対策に伴う高齢者自殺予防事業は,高齢者の自
殺率に,さほど影響を与えるに至っていない。
したがって,本論文では,現在の高齢者自殺予防事業に着目し,韓国の高齢者自殺予
防事業に関する示唆を得て,韓国の高齢者の自殺予防事業の問題を明らかにすることを
目的とする。
2.研究方法
2−1.調査協力者
本調査における調査対象者は,ソウルと地方(京畿道,大田)に位置している自殺予
防事業を目的とする機関の担当者を対象とした。詳しくは,ソウルに位置している命の
電話本部,西大門区老人自殺予防センター(西大門区老人総合福祉館内に位置)
,カト
リック大学病院,京畿道に位置している水原市自殺予防センターと水原市老人総合相談
センター,大田市の老人自殺予防センターなどを訪問し,担当の社会福祉士や精神保健
社会福祉士,精神保健看護師,予防医学科の教授を対象としてインタビューを実施し
た。調査機関の選定は 1 次・2 次的予防事業(2)の機関である老人自殺予防センター 2 ヵ
所と自殺予防センター 1 ヵ所,3 次的予防事業の機関である病院 1 ヵ所を選定した。ま
た,自殺に関する電話相談を専門的に担当している命の電話と,高齢者の自殺予防を中
心に電話相談や介入を実施している老人総合相談センターをそれぞれ選定した。インタ
ビューの調査協力者の属性は表 1 にまとめた。
2−2.調査手順と分析方法
調査期間は,2012 年 8 月 27 日∼30 日までの 4 日間実施した。インタビューは基本的
表1
性別
調査協力者の属性
所属機関
職種
地域
担当業務
A
女
カトリック病院
予防医学科教授
ソウル
自殺研究
B
女
カトリック病院
精神保健看護師
ソウル
相談及びケース管理
C
男
西大門区老人自殺予防センター センター長
ソウル
老人自殺業務総括
D
女
命の電話
事務局長
ソウル
電話相談事業総括
E
女
水原市自殺予防センター
精神保健社会福祉士
京畿道
相談及び
プログラム開発
F
女
京畿道老人総合相談センター
実長
京畿道
センター事業及び
研究事業総括
G
男
大田老人自殺予防センター
社会福祉士
大田
相談及び
プログラム開発
120
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
に個人的な属性を把握した後に,半構造化面接法を用いて,調査協力者から高齢者の自
殺と予防についての語りを得た。主なインタビューの内容は,韓国での高齢者自殺の深
刻性とその原因,高齢者自殺予防に対する政策及び支援とその問題点,これからの展望
などであった。インタビューの時間は平均 1 時間 30 分程度であった。
調査協力者である各機関の担当者からのインタビュー内容は録音し,KJ 法(川喜田
二郎,1996)を用いてデータを分析した。協力者のインタビューが長時間にわたり,デ
ータの量が多いことと,役割が違う機関からの多様な発言をまとめるのに,KJ 法が適
合であると判断し,採用した。分析の手順としてはまず,録音したデータを聞きなが
ら,調査協力者の発言から自殺予防事業の問題点に関する重要な意味を有すると考えら
れる概念を抽出し,調査協力者別に整理した。抽出した概念は総計 59 個であった。そ
の後,抽出した概念の中から類似したものをカテゴリー化し,それぞれのカテゴリーに
見出しを付けた。本研究においては,3 人以上の共通した概念があった場合のみ,カテ
ゴリーとして構成することとし,その結果,5 つのカテゴリーを生成した。最終的に,28
個の概念を用いて 5 つのカテゴリーにまとめ,それらをカテゴリーの特性を考慮して 2
つのカテゴリーに分類した。
2−3.倫理的な配慮
まず,高齢者の自殺対策に携わる機関を調査して事前に担当者にメールを送り,調査
許可を得られた 6 つの機関を対象とした。各調査協力者に再度,面接について直接依頼
を行い,許可を得た方のみを調査対象とした。また,直接面接を行う際,再びこの調査
の趣旨を説明し,インタビュー内容について秘密を厳守すること,話したくない話や質
問については答えなくても良いことを説明した。録音したインタビューの内容は研究に
使用することも十分に説明した。調査協力者のプライバシーを保障するために本研究で
は名前をアルファベットで表記した。
インタビュー内容を録音したレコーダーは筆者のみ使用し,そのデータはパソコンに
移して速やかに消去した。また,パソコンに移したデータに関しては,個人のホルダー
に入れ,ロックをして取り扱った。
3.結
果
自殺予防事業のために政府及び民間が運営している機関の担当者のインタビューを分
析した。当該分析は,現在,高齢者自殺予防事業が抱えている問題を中心として行っ
た。その結果,高齢者自殺予防事業上の問題を 5 つのカテゴリーにまとめ,それを大き
く『構造的側面』と『機能的側面』に分けた。まず,
『構造的側面』としては,3 つの
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
表2
カテゴリー
構
造
的
側
面
高
齢
者
自
殺
予
防
事
業
の
問
題
機
能
的
側
面
121
高齢者自殺予防事業上の問題に関する発言内容
発言内容
イ
ン
フ
ラ
の
不
足
・現在,韓国の自殺者の人口に比べると,自殺予防機関があまりにも少ない(C, D, E, F, G)
・市・都別に 1 ヶ所しかないの自殺予防センターがその大きな地域を担当するということはありえな
いことであり,自殺予防センターに比べてクライアントの数があまりにも多く,役割をきちんと果
たすことが可能であるのか疑問である(C, F, G)
・自殺予防センターは段々増えているが,まだ大幅に不足している(E)
・ある地方の場合,自殺予防センターが担当する地域が大きすぎて移動だけで 2 時間かかる.この場
合にはクライアントがいても距離が遠くてすぐ尋ねることができない場合もあるという話を聞いた
(G)
・農村地域には高齢者自殺予防のインフラがなく,地域によってその格差も大きい(C)
自
殺
予
防
支
援
体
系
の
問
題
・今の自殺予防総合システムでは高齢者の自殺の特性を見逃し,他の年齢層と同じように考えてアプ
ローチすると,高齢者の自殺率を下げられない(C, F, G)
・高齢者の場合は,自殺のハイリスク群を見つけることさえ簡単ではない仕事なので,専門機関の介
入が必要とする(C)
・介入しやすくて効果が良く現れる児童や青少年層を中心とした予防事業が多いことは事実である
(E)
・自殺予防センターが高齢者を対象にして自殺予防教育やスクリーニングを行う際は,結局,高齢者
が集まる場所である福祉館に行くしかない.しかし,すでに自殺予防プログラムを実施している福
祉館もたくさんあるため,重なるところが多く,協力できない.インフラが整っている高齢者利用
施設を利用して,高齢者の自殺予防にアプローチすることが最も効果的であると思うが,1 次自殺
予防事業と 2 次自殺予防事業は異なるので,高齢者自殺予防センターと自殺予防センターが役割を
分担するのが望ましい(F)
・一つの地域に高齢者自殺予防センターと自殺予防センターがのような機関がある場合は,事業の内
容や対象が重なるため,お互いに協力しない。高齢者自殺予防事業は,毎日接しているため,その
地域の高齢者に関する情報は,最も詳しく知っていて,ラポも形成されている.その意味では,高
齢者の自殺予防事業は他の機関より福祉館が最もよく行えると思う(G)
財
政
的
支
援
・予算自体が少ないため,地域住民を対象に自殺予防教育と広報,スクリーニング調査のみでおおか
た予算がなくなる.他の事業を展開するには予算が少なすぎる(E)
・高齢者自殺の介入には多くの時間と費用がかかる一方,結果が顕著に現れないため,多くの機関は
現在の少ない予算のうち,高齢者の自殺予防のために多くの予算を使わないようにしている(E)
・より多くの職員を採用する必要があるが,予算が足りないため,限られた予算を節約できる方法
は,職員の数を減らすことである.予算が少なくても事業を縮小することはできないためである
(C)
・自殺予防法が制定される前から老人自殺予防センターを運営してきて多くのノウハウも積み重ねた
が,高齢者のみを対象とした自殺予防センターということで,政府のサポートを受けられないとい
うのは残念なことである(C)
・今まで受けてきた共同募金会のサポートを今年は受けられなかったため,昨年より事業を縮小し,
職員の数を減らした.担当人力の不足によって事業も縮小せざるを得ない(D)
・民間機関が抱えている共通の悩みは,財政の確保である.政府の予算の支援がないため,民間の機
関は自ら財政を用意しなければならない.財政を確保できないという理由で,今まで実施してきた
プログラムや事業を終了せざるを得ない場合が最も残念である.しかし,いくら難しい状況になっ
てもこの事業は続けていくべき大事な事業である(G)
情
報
共
有
・病院と精神保健センター,自殺予防センターのような医療・保健係と福祉館のような福祉係は,事
例共有やクライアントに関する情報共有が全く行われていない.また,医師の場合,自殺の可能性
があるクライアントが退院する場合にも個人のプライバシー上,他機関との情報共有をしない.外
国の場合には,自殺に関するものは必ず情報を共有するようになっている.韓国も必ずクライアン
トに関する情報を共有する体制に変わらなければならない(F)
・警察庁や関連機関から自殺に関する統計や情報を得ることさえも容易ではない.個人情報のことも
理解できるが,そのようなシステムが構築されなければ,自殺予防事業を進めるのには大きな障害
となる(C, G)
自
殺
原
因
に
関
す
る
見
解
の
相
違
・高齢者が一人で多くの時間を過ごすことによってうつ病が伴われるようになる.うつ病によって生
活の意欲が低下することと同時に積極的に活動をしないことが自殺につながる(A, B)
・高齢者の自殺は,生計の問題である.1 年のうち,高齢者の自殺相談はあまり多くないのに,最近
では生活保護の対象から除外されたという問題で 3 件の自殺相談を受けた.特に,韓国では高齢者
にとって生計の問題は,最も大きな問題であると思う(E)
・多くの研究や医療・保健係は,うつ病が高齢者自殺の主な原因であると述べている.健康保健公団
の資料によると,高齢者全体の 20% を越える人口がうつ病の薬を服用している.うつ病の治療を
受けているにもかかわらず,自殺率が減らないのが現実である.そのために,うつ病で多くの高齢
者が自殺するとは説明し難いところがある(F)
・高齢者が失業や貧困,健康などの基本的な生活上の問題で自殺を選択するのに対し,現在のシステ
ム上では根本的な原因ではなく,それに伴ううつ病に過度に注目が集まっていることが大きな問題
である(F)
・医療・保健係では自殺の原因をうつ病として判断している.しかし,福祉係では自殺の原因を複合
的な要因であると判断している.うつ病にかかっている人の自殺率は高いが,皆が自殺するわけで
はない.保健系とは自殺の原因に関する視点から異なっているため心配である(G)
122
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
問題が把握できた。1 つ目は「インフラの不足」
,2 つ目は「自殺予防支援体系の問
題」
,3 つ目は「財政的支援」である。
『構造的な側面』は,既存の制度によって発生し
ている問題であり,政府の介入による政策的な変化と対応が求められる要素として設定
した。
『機能的側面』としては,2 つの問題が把握できた。1 つ目は「情報共有」
,2 つ
目は「高齢者自殺の原因に関する見解の相違」である。
『機能的側面』は,自殺予防事
業の実践を行う際,各機関の特性によって発生している問題であり,各機関が有する機
能を阻害する要素である。
カテゴリー化した調査協力者の発言は表 2 のように整理した。
3−1.インフラの不足
インフラの不足は,自殺人口に関する側面と担当地域の範囲による側面に分けられ
た。自殺人口に関するインフラの不足は,医療機関に勤めている A さんと B さん以外
に自殺予防事業を担当している調査協力者(C・D・E・F・G)の共通した発言であっ
た。自殺予防事業を行っている 1 次・2 次自殺予防機関としては,自殺予防センターと
老人自殺予防センターが挙げられる。全年齢層を対象としている自殺予防センターは,
全国に設置され,地域住民の自殺予防に尽力しているものの,全国に 10 ヵ所しか設置
されていない現状にある。自殺人口は 15,906 人(2011 年)であり,全体自殺人口の約
4 分の 1 が 65 歳以上の高齢者であることからすると,自殺予防センターが担当してい
る高齢者はあまりにも多すぎると言えるだろう。最近では,高齢者の自殺人口が急激に
増加することに伴って,民間組織が老人自殺予防センターを運営しているが,その規模
も小さく,その数も正確に把握できない状況にある。高齢者自殺人口が急増しているこ
とを鑑みると,自殺予防センターや老人自殺予防センターのような自殺予防機関,とり
わけ,自殺率が高い高齢者向けの自殺予防機関を増やす必要がある。
次は,インフラの不足による担当地域の広範囲と格差である。C・F・G さんは,地
域の自殺予防センターの場合,都・市別にわずか 1 ヶ所で,地域全体を担当しており,
市の住民全体を対象として自殺予防事業を行うのには限界があると語っている。また,
G さんの発言にあるように,担当地域にクライアントがいても,距離が遠くてすぐ訪
ねることができない場合もある。支援を求めている高齢者にとって,支援機関との間に
距離がある場合,アクセスすることが困難になり,それは大きな障害となる。現在の自
殺予防機関を俯瞰すると,都市に集中している。その一方,農村地域には,自殺予防機
関が全くなく,とりわけ,都農地域(都市地域と農村地位が共存しているところ)の場
合は機関の都市集中によって,支援を必要とする農村地域の高齢者はわざわざ都市部の
支援機関まで来ざるを得ない。2011 年,統計庁の資料によると,都市地域より農村地
域の高齢者の自殺率がはるかに高いにもかかわらず,都市地域を中心として自殺予防事
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
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業が行われているため,農村地域に住んでいる高齢者には手が回っていない。現在で
は,都市地域でも自殺予防機関数はもはや充分ではなく,量的に増やす必要があるが,
農村地域はより深刻な状態であり,地域によるインフラの格差が激しいことは C さん
の発言からも窺える。
3−2.自殺予防支援体系の問題
自殺予防体系の問題としては,調査協力者の発言から 2 つの問題が導き出された。ま
ず,1 つ目は,専門性の欠如である。現在の自殺予防法上,自殺予防センターでは児
童,青少年,中年,高齢者など様々なライフステージの自殺予防事業を統合して実施す
ることになっている。しかし,各々の年齢層別に自殺の原因とアプローチ方法が異なる
ため,自殺予防事業を統合して実施することには問題があると指摘している。C・F・G
さんは,今の自殺予防センターの自殺予防統合支援体系では高齢者の自殺を予防でき
ず,高齢者の自殺率は増え続けると予測している。現行の支援体系上では,E さんが語
ったように介入しやすく効果も表れやすい児童や青少年層を中心として自殺予防事業を
行い,高齢者が排除される可能性があることも指摘されている。また C さんは,高齢
者の場合,他の年齢層と自殺の特性が異なり,高齢者の自殺に関する専門知識をもって
専門機関が介入するべきであると強調している。従って,高齢者の自殺を専門的に扱う
ことのできる専門家と専門機関が必要であると言える。
2 つ目は,高齢者自殺予防事業の重複である。自殺予防センターが高齢者向けに行う
自殺予防事業というのは,主に自殺の可能性のある対象者を捜し出し,介入することで
ある。そのために,キャンペーンや自殺予防教育,スクリーニングなどを高齢者が集ま
るところである公園や社会福祉館を中心として行っている。しかし,F さんは社会福祉
館の場合,事業の一環として高齢者の自殺プログラムを行っているところが多く,対象
者の重複のために協力ができないと語っている。また G さんも,一つの地域に老人自
殺予防センターと自殺予防センターのような機関がある場合は,事業の内容や対象が重
なるため,お互いに協力しないと語っている。このような高齢者自殺予防事業の重複
は,保健と福祉という異なる伝達体系が同じ事業を行うことから発生しており,一つの
機関で 1 次・2 次高齢者自殺予防事業を共に行っているため,お互いに協力できない環
境になっている。高齢者自殺予防事業の重複の問題に対して F さんと G さんは,既存
の福祉館のインフラを用いて高齢者自殺予防事業を行うのが最も効果的であると主張し
ている。高齢者の自殺に関する研究(キム・ヒョンス,2000)によると,高齢者が自殺
を考えるようになる要因のうち,経済的問題が最も大きな要因であると述べている。こ
のような意味では,低所得層の地域に建てられた社会福祉館及び利用施設は,より自殺
の可能性が高い低所得の高齢者にとってアクセスが容易であるため,継続的な教育やモ
124
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
ニタリングなどの自殺予防事業を有効に行うことができると考えられる。ただし,F さ
んは,1 次自殺予防事業と 2 次自殺予防事業は異なるので,福祉中心の老人自殺予防セ
ンターと保健中心の自殺予防センターが役割を分担し,より専門的に高齢者自殺予防事
業を行っていく必要はあると語っている。
3−3.財政的支援
政府の財政的支援について,現場の調査協力者(C・D・E・G)は,予算が少ないた
め,一番困っているところであると指摘している。民間機関はもちろん,政府の委託機
関である自殺予防センターも十分な財政的支援が行われていないため,自殺予防事業を
行うのに限界があることを語っている。今の自殺予防機関の財政支援方式は,三つに分
けられている。一つ目は,中央政府と地方政府が半分ずつサポートする方式,二つ目
は,地方政府が全てサポートする方式である。これは,地方政府が自殺予防センターの
必要性を認識し,設立した場合である。三つ目は,民間が自らの財政で運営する方式で
ある。政府から支援を受けている自殺予防センターの E さんは,政府から支援を受け
ても自殺予防教育やスクリーニングのような事業を行うと,予算がなくなり,他の事業
をしようともできないと指摘している。一方,政府の支援を受けていない民間組織は自
ら財政を確保しないと,事業を続けられない。調査協力者の C さんと G さんの所属す
る両機関とも社会福祉共同募金や企業にプロポーザルを出して,2 年∼3 年のサポート
を受けながら運営している状況である。サポート期間が終われば,事業を終了するか,
他の支援機関を見つけなければならない。政府の支援がないため,事業を続けていく上
で,常に不安定な状態である。それでも止めず,継続していくべき大事な事業であると
G さんは語っている。実際に自殺予防のために,一年に投入される予算を見ると,あ
まりにも脆弱であることが分かる。2012 年の 1 年間で自殺予防のために投入された予
算は約 2 億 3 千万円(3)である。日本が 2012 年に約 236 億円を投入したのに比べるとわ
ずか 100 分の 1 に過ぎない。政府は自殺率の減少のために積極的に対応しているかのよ
うに見えるが,予算をみると,殆ど自殺予防には財政を投入していないことが窺える。
3−4.情報共有
自殺予防のために保健や福祉のみならず,地域社会にある民・官の協力と関連機関の
情報共有が必要とされているが,調査協力者の発言から関連機関との情報共有が全く行
われていないことが分かった。ハイリスク群の発見及び自殺未遂者に対する対処がより
迅速に行われるためには,関連機関などとの有機的な情報共有が最も重要である。しか
し,自殺予防センターと老人自殺予防センター,病院,警察など関連機関との連携がう
まく行われていないのが実情であると C・F・G さんは語っている。1 次・2 次自殺予
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
125
防機関である自殺予防センターと老人自殺予防センターの場合は,保健系と福祉系とい
う伝達体系が異なるが,同様に 1 次・2 次の予防事業していることで,両機関の間に競
争が起こっており,情報共有ができていない。とりわけ,3 次予防機関である医療機関
との情報共有は皆無である。F さんが指摘したように,自殺未遂者が病院から地域に戻
ってきたとき,個人のプライバシー保護という理由で,当事者の情報を地域の機関と共
有していないことが問題である。情報共有の問題は,医療・保健系と福祉系のみなら
ず,警察庁などの関連機関から自殺に関する情報を得ることさえ容易ではないと C さ
んと G さんは語っている。自殺は命に直接関わる問題であるため,個人のプライバシ
ーよりも自殺の試行を防ぐことを優先させる必要がある。自殺予防は一つの機関に限っ
て行われるものではなく,地域内の官・民がともに情報を共有し,協力することで,自
殺率を減少させることが可能となるため,何よりもまず,情報を共有しながら,関連機
関が協力できるシステムの構築が必要であると指摘されている。
3−5.高齢者自殺の原因に関する見解の相違
高齢者自殺の原因に関する見解には相違が見られた。医療機関に勤めている A さん
と B さんは高齢者の自殺をうつ病の発病によって生活意欲が低下し,それが自殺に繋
がると語っており,高齢者自殺の大きな原因としてうつ病を挙げている。そのような見
解のもと,医療機関や保健機関ではうつ病の治療のために薬物処方や精神科のカウンセ
リングのような医療的なアプローチを中心に行っている。しかし,福祉系の調査協力者
は,高齢者自殺の原因を高齢者が取り囲まれている社会・環境的な要因が複合的に作用
しているためであると把握し,その要因に合わせてアプローチすべきであると語ってい
る。A さんと B さんの発言に対して E さんは,実際,現場では経済的問題による自殺
相談が多いと語っている。また,F さんは,健康保険公団の資料によると,高齢者全体
の 20% を越える人口がうつ病の薬を服用するなどしてうつ病の治療を受けているにも
かかわらず,自殺率が減少しないのが現実であると語り,うつ病で多くの高齢者が自殺
するとは説明し難いところがあると主張している。また,1・2 次自殺予防機関で勤め
ている調査協力者(C・D・E・F・G)は,医療・保健系の調査協力者が述べているよ
うにうつ病を一つの自殺原因として認識している。しかし,うつ病以外の多様な原因を
見逃してはならないと語っている。
4.考
察
従来,自殺は極めて個人的な問題として見做されてきたが,近年の自殺人口急増に対
して,政府は自殺の深刻性を認識し,積極的な介入を始めた。国立ソウル病院が発表し
126
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
た『我が国の自殺の社会・経済的費用負担に関する研究報告書』によると,2004 年を
基準として自殺が原因で発生する年間の損失は約 3 兆 856 億ウォン程度にのぼり,自殺
が社会に与える負担は大きいと述べている。特に,今後の経済活動を支える年齢層であ
る青少年層から,引退時期である 60 歳前後の層は,経済活動人口に属しているため,
これらの年齢層の自殺は社会の注目を集めているが,高齢者の自殺は,相対的に注目さ
れていないのが現状である。政府は 2005 年から自殺予防対策を発表してきたが,高齢
者の自殺率の減少には貢献していない。
そこで,本研究においては高齢者の自殺予防事業を進めている機関の担当者を中心に
インタビュー調査を行い,現行の高齢者自殺予防事業の問題点を把握した。その結果,
高齢者自殺予防事業における変化が以下のように示唆された。
第一に,高齢者の自殺予防体系の整備である。現在の高齢者自殺予防体系をみると,
1 次予防と 2 次予防を一つの機関が担当し,3 次予防のみ医療機関が担当する形態であ
る。保健系である自殺予防センターと福祉系である老人自殺予防センターが実施してい
る事業が重なっており,効果的な連携も行われていない。1 次予防と 2 次予防を担当し
ている機関を整備し,事業が重ならないように二元化して 1 次と 2 次,3 次予防戦略が
段階的・有機的に行われるように,現在の体系を組み直す必要があると考えられる。地
域社会にインフラを有する老人自殺予防センターが自殺予防教育やモニタリング,スク
リーニングを通して自殺リスクのある高齢者を捜し出す 1 次予防を行い,専門家の相談
や治療を必要とするハイリスク群は,2 次予防として自殺予防センターが介入できる体
系を構築する必要がある。また,自殺未遂で病院に入院している患者が再び自殺を実行
しないよう,医療的な治療と持続的な事例管理を通して 3 次予防的介入をし,患者の症
状が緩和し,地域社会に復帰する際,一次予防事業を実施している機関と連携して持続
的に自殺予防が実現できるように体系を整備することで,高齢者の自殺を未然に防ぐこ
とが可能になる。このような自殺予防体系が段階的に整えば,他の機関との情報共有も
有機的に行われるものと考えられる。また,様々な機関が集まっている都市地域では,
高齢者自殺予防事業がある程度行われているが,高齢者の自殺率が相対的に高い農村地
域では,高齢者自殺予防事業を担当して行う機関がない。そのため,農村地域にある福
祉館及び利用施設が中心となって高齢者自殺予防事業を担当し,手が回らないところ
は,それぞれの町長や民生委員を中心にゲートキーパー教育を通して地域の高齢者をモ
ニタリングするシステムを整えなければならない。
第二に,高齢者の自殺予防専門機関の拡大と財政支援である。全世代を対象とした自
殺予防センターのみではなく,高齢者に関する専門知識をもってアプローチできる専門
家と専門機関が必要となる。自殺人口の 4 分の 1 が高齢者であり,その数は急激に増加
していることを鑑みると,専門機関による高齢者に対する積極的な対応が必要であると
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
127
考えられる。高齢者の場合,自殺念慮をもっていても,自殺予防センターに行くのを避
け,また,電話をかけて相談をしようともしない。そのため,地域にある社会福祉館や
老人福祉館などの利用施設を中心とした老人自殺予防センターのような専門機関を拡
大・運営することが必須の要件である。地域の高齢者と親密感があり,その情報をもつ
利用施設を中心として持続的にモニタリングとスクリーニングを行うことによって,事
前に自殺リスクをもつ高齢者を捜し出すことができ,高齢者の自殺率の減少に大きな役
割を果たせるだろう。しかし,現在運営されている老人自殺予防センターは政府の支援
が全くなく,センターとしての役割をあまり果たせていない。政府からの支援を受けて
いる機関は,自殺予防センターのような保健系に集中しており,その他の自殺予防機関
は,政府からの支援がない状態にある。1 次予防事業機関に老人自殺予防センターを含
め,1 次,2 次,3 次予防事業に政府の支援を分配することで,持続的かつ安定的に事
業が展開できるようにすることが望ましい。
第三に,高齢者の自殺の根本的な原因を把握することである。高齢者が自殺に至る原
因と過程を具体的に把握し,原因に合った対策を立てなければならない。多くの既存の
研究では,うつ病を自殺の主なリスク要因として提示しているが(Cheng, 1995 ; De
Leo, 1991 ; Henry et al., 2004)
,最近は,うつ病のそのものではなく,うつ病を発生さ
せる原因に関する様々な研究もなされている。したがって,高齢者自殺の原因をうつ病
のみで判断するのではなく,うつ病を引き起こす可能性がある潜在的要因を把握し,そ
の因果関係を明瞭にする必要がある。政府が発行している社会調査報告書(2012)をみ
ると,高齢者自殺の主な原因は経済的問題や健康的問題,孤独(家族との問題)である
との記載があるにもかかわらず,政府は医療・保険的な視点のもと,自殺予防にアプロ
ーチしている。しかし,このようなアプローチのみでは,自殺を誘発するうつ病を治す
ことはできるかもしれないが,根本的な原因が解決されない限りは,うつ病が再発する
可能性が高い。したがって,うつ病を誘発する原因を早急に特定し,医療・保健と福祉
が共に介入できる高齢者自殺予防モデルを構築することが必要である。高齢者が自殺に
至る正確な原因と過程を明確にし,それにしたがって自殺予防事業を行うことができれ
ば,今後,高齢者自殺率は下がるものと考えられる。
以上のように,高齢者自殺予防事業における問題に対して,3 つの視点から示唆を得
た。しかし,本研究においては,インタビューの対象と機関,地域を限定して行なった
ため,一般化するのには限界がある。したがって,以降の研究においては,より広範囲
に対象と機関,地域を選定し,調査して実証する必要があるが,それは次の課題とした
い。
韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
128
注
⑴
政府は,自殺の深刻性を認識し,国家的な責務と予防政策などの事項を規定することによって,生命
尊重文化を造成し,大事な命を守ろうとすることを趣旨として 2011 年 3 月 30 日に「自殺予防及び生
命尊重文化の造成のための法律」を制定し,2012 年 3 月 31 日から施行した。主な内容は,自殺予防
基本計画の策定と自殺予防センターの設置,自殺予防の日の制定などである。
⑵
自殺予防事業は,自殺予防戦略を基盤として行う。自殺予防戦略を分類する基準は,学者によって少
しずつ異なるが,一般的には,1 次的予防と 2 次的予防,3 次的予防に分類(D De Leo & Paolo Scocco
(2000)
)し,自殺予防事業を行っている。1 次的予防は,健康な人々を対象とした一般的な介入であ
る。2 次的予防は,自殺のハイリスク群を対象とした介入である。3 次的予防は,自殺未遂者の事後介
入である。
⑶
韓国の政府が 2012 年,自殺予防のために投入した予算は約 22 億 8 千ウォンである。現在の為替レー
ト(100 円=1000 ウォン)を参考にし,比較できるように円に換算した。
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韓国における高齢者自殺予防事業の問題と今後の在り方
Problems of Elderly Suicide Prevention Service
and the Prospects in Korea
Joonho Maeng
This article deals with Elderly Suicide Prevention Service in Korea. It aims at revealing
various problems regarding the service by interviewing with institution for suicide prevention. As
a consequence of the interview, the problems can be categorized into five concepts. Moreover,
those five categories are divided into two groups : structural and functional problems concerning
the service. The former, structural problems, includes poor infrastructure, problems in the support
system of suicide prevention and financial aid. The latter, functional problems, includes
information sharing and a difference of views on the causes of elderly suicide. As a conclusion,
the article claims that solving these structural and functional problems is crucial for the
improvement of Elderly Suicide Prevention Service in Korea.
Key words : Elderly, Suicide, Institution for suicide prevention, Interview, Korea
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