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参考資料 - Nomura Research Institute

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参考資料 - Nomura Research Institute
金融市場パネル(Financial Markets Panel)
第17回会合
QE2後の米国の経済、金融市場とFRBの政策運営
2011年8月5日
株式会社野村総合研究所
金融ITイノベーション研究部
主席研究員
井上 哲也
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
1. QE2のレビューと金融市場の動向
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
3. 想定される論点
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
資料:FRB
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 FRBは、6月22日のFOMCで、昨年11月から実施してきた6000億ドルの米国債買入れを予定通り終了する
ことを決定した(ただし、保有する証券の償還金による国債買入れは継続)。その理由としては、今後は景気
回復のペースが速まり、雇用も徍々に回復していくと期待されることを挙げている。この間、インフレ率の上昇
は一時的に止まり、インフレ期待も安定している点も強調している。
(参考) FOMC声明文(6/22日会合分)
景気の展望
・…The unemployment rate remains elevated; however, the Committee expects the pace of recovery to pick up
over coming quarters and the unemployment rate to resume its gradual decline toward levels that the
Committee judges to be consistent with its dual mandate.
物価の展望
・…Inflation has moved up recently, but the Committee anticipates that inflation will subside to levels at or
below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity
price increases dissipate.
政策判断
・… The Committee will complete its purchases of $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of
this month and will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings.
・…The Committee continues to anticipate that economic conditions--including low rates of resource
utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low
levels for the federal funds rate for an extended period.
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2
資料:FRB, 日本銀行
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 QE2の枠組み(日銀との比較を含む)
項目
新規買入れ分
レート
利回り入札
年限等
買入れ債券の内訳
総額
(利付債、物価連動債とも)
・残存1年半~30年
<加重平均は5~6年となる
見込み>
(利付債)<全体に対するシェア>
6000億ドル
・残存1年半~2年半:5%
(8ヶ月間)
・残存2年半~4年:20%
・残存4年~5年半:20%
・残存5年半~7年:23%
・残存7年~10年:23%
・残存10年~17年:2%
・残存17年~30年:4%
(物価変動債):全体の3%
(SOMAの保有シェア35%の上限を一時的に超過す
ることも容認)
MBS、Agency債の 利回り入札
償還相当分
(利付債)
特に定められていない
<2~10年債が主体>
(物価連動債)
(SOMAの保有シェアが35%を超える銘柄や、SCレ
ポで希尐な銘柄等は対象から排除)
2500~3000億ド
ルの見込み
(8ヶ月間)
-1ヶ月の買入れ
目途を順次公表
(日銀)既存分
利回り入札
(利付債)
2, 4, 5, 6, 10, 20, 30の
各年限の債券
(変動利付債)
(物価連動債)
(利付債)
・残存1年未満:7.44兆円
・残存1年以上10年未満:12.00兆円
・残存10年以上30年未満:1.2兆円
(変動利付債):0.72兆円
(物価連動債):0.24兆円
21.6兆円
(年間)
(日銀)包括緩和
による分
利回り入札 残存1~2年の
(下限0.1%) 利付債
(特に示されていない)
1.5兆円
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3
資料:FRBNY
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 FRBは約8ヶ月を通じて概ね均等に国債を買い入れ、
総額は約7700億ドルに達した。買入れ国債の残存
期間は、2年台、4年台、6年台が中心となっていた。
毎月の買入れ額(百万ドル)
140,000
120,000
100,000
80,000
QE2による買入れ国債の構成比目途(FRBNYが事前に公表)
1.5
-2.5年
5%
2.5
-4年
20%
利付債
4
5.5
-5.5年 -7年
20%
23%
TIPS
7
10
17
1.5
-10年 -17年 -30年 -30年
23%
2%
4%
3%
60,000
40,000
20,000
0
(右)残存年限別構成<6月末:百万ドル・%>、(左)2010年11月~2011年6月に買い入れた利付国債の償還年別分布<百万ドル>
160,000
800,000
140,000
700,000
120,000
600,000
100,000
500,000
80,000
400,000
60,000
300,000
40,000
200,000
20,000
100,000
0
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0
44
4
資料:FRB
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 FRBのバランスシート
・ 国債の新規買入れに加え、MBSやAgency債の償還資金による国債買入れも進めてきたので、 FRBの資産構成
はMBS中心から国債中心へと明確にシフトしてきている。
FRBのバランスシート(8月4日時点・百万ドル)
1,800,000
3,500,000
milUSD
Treasury Note
Agency Notes
1,600,000
Agency MBS
TALF
FX Swap
Standing Facility
AIG
AMLF
PDCF
SPV (B.S. / AIG)
CPFF
TAF
Agency MBS
Agency Notes
Repo
Treasury Note
TB
Gold and Cash
Other Assets
milUSD
3,000,000
1,400,000
2,500,000
1,200,000
1,000,000
2,000,000
800,000
1,500,000
600,000
1,000,000
400,000
500,000
200,000
0
Sep-08 Jan-09 May-09 Sep-09 Jan-10 May-10 Sep-10 Jan-11 May-11
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0
Jan-07
Jul-07
Jan-08
Jul-08
Jan-09
Jul-09
Jan-10
Jul-10
Jan-11
Jul-11
5
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 FRBは、QE2が長期金利の低下を通じた景気刺激である点で、普通の金融政策であることを強調してきた。
FRBによる米国債購入
タームプレミアム抑制に
よる長期金利低下
ポートフォリオ・
リバランスによる
国内資産価格上昇
金利低下、資産効果、
ドル安による設備投資
や消貹の活発化
金利低下や対外投資の
活発化によるドル相場下落
Monetizationを通じた財政
規律への懸念を背景とする
直接的なドル安
総需要の回復やドル安による
デフレ懸念の払拭
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6
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 市場の評価は以下のようにmixedである。
金融市場への
効果
市場の評価
(参考)FRBのスタンス
・中長期金利の低下は限界的であった
-Bernanke議長がアイディアを公表した8月から実際に開始した
11月頃には金利が低下したが、その後は景況感やインフレ期待の
変化による変動の方が大きかった
・株式市場でも、年初頃までは材料視されたが、その後は業種別の
要因によって区々の動きとなった
・相応に中長期金利を低下させた
-Bernanke議長は、2011年7月の議会証言で、
10~30bpの低下効果があったと説明した
・(尐なくともFOMCは、株価やドル相場への影響
について当初から想定していた)
・しかし、商品価格の上昇は、新興国による需要
増加と供給側の過小投資によるものであり、QE2
との関係は希薄である
・緩和的なクレジット環境が維持され、低格付けを含む社債発行な
どが活発化した
・ドル相場と商品価格については、比較的永続的な効果を発揮した
-ただ、商品の中でも、原油や金など金融資産に近い財の価格上
昇が突出していた
実体経済への
波及効果
・株価の上昇は、net worthの増加を通じて個人消貹を下支えした
-ただし、広く均霑したわけではない
・株価を含む資産価格の上昇は資産効果を発揮
した
・クレジットが緩和しても、米国経済の問題のコアである住宅市場
は改善していない
・クレジット環境の緩和は企業活動を下支えして
きた
・ドル下落は多国籍企業の収益を増やしたが、商品価格上昇は多く
の企業の収益を圧迫した
もともと、ディスインフレのリスクを抑制することを企図して開始されたQE2について、
FRBがインフレとの因果関係を否定するという奇妙な構図になっている
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7
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:FRBNY
 国債買入れオペのパフォーマンス
・オペの主力であった中期債の応札倍率は比較的低位であり、その意味で”flow effect”は限定的であった。
9,000
9
9,000
9
9,000
9
8,000
8
8,000
8
8,000
8
7,000
7
7,000
7
7,000
7
6,000
6
6,000
6
6,000
6
5,000
5
5,000
5
5,000
5
4,000
4
4,000
4
4,000
4
3,000
3
3,000
3
3,000
3
2,000
2
2,000
2
2,000
2
1,000
1
1,000
1
1,000
1
0
0
0
0
0
0
11/16 12/16
1/19
2/18
Amount Purchased
3/17
4/13
5/12
6/14
11/4 11/30 12/15 1/13 2/9
Bid to Cover (RHS)
国債買入れオペの年限別の買入れ額と
応札倍率(百万ドル・倍)
上段:左から順に1~4年、4~7年、
7~10年
下段:左から順に10年~、TIPS
3/8
4/4 4/28 5/20 6/15
Amount Purchased
11/17
Bid to Cover (RHS)
1/3
1/28
2/25
Amount Purchased
3/23
5/2
5/23
6/20
Bid to Cover (RHS)
9,000
9
9,000
9
8,000
8
8,000
8
7,000
7
7,000
7
6,000
6
6,000
6
5,000
5
5,000
5
4,000
4
4,000
4
3,000
3
3,000
3
2,000
2
2,000
2
1,000
1
1,000
1
0
0
0
0
11/19 12/17
1/20
2/16
Amount Purchased
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
3/21
4/18
5/18
6/23
11/23
1/4
2/14
3/29
5/16
Bid to Cover (RHS)
Amount Purchased
Bid to Cover (RHS)
8
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 米国債市場
資料:Thomson Reuters
・ 昨年8月から10月には中期債までが下方シフトする一方、長期債の利回りは上昇した。その後は中期債を中
心に全域に亘って上昇した。ただ、こうした動きも2月中旪頃がピークで、4月初の金利上昇局面の後は利回
り低下傾向にある。足許では金利低下ペースが加速し、利回り水準はQE2の開始当時と同程度である。
・ イールドカーブもQE2実施前まで下方シフトした後は本年2月にかけて上昇した。もっとも、その後は再び下方
へシフトし、現在の位置はほぼ10月末に近い。BEIも本年4月以降に反落し、現在は2.3%を切る水準にある。
2.7
5
2.3
4.5
1.9
4
1.5
3.5
1.1
3
0.7
2.5
3
4.5
2.5
4
年限別利回り(%)
2
3.5
1.5
3
0.3
2
8/2
9/13 10/25 12/6
1/17
2/28
4/11
5/23
2Y Note
5Y Note
10Y Bond (RHS)
30Y Bond (RHS)
1
5Y-2Y
10Y-2Y
30Y-2Y(RHS)
0.5
7/4
2.5
8/2
9/13
10/25
12/6
1/17
2/28
4/11
5/23
7/4
2
2.7
1.5
2.5
4.5
4
3.5
3
Aug-10
Oct-10
Dec-10
Feb-10
May-10
Aug-10
(左)イールドカーブ<%>
(右)物価連動債利回り<%>
1
2.3
0.5
2.1
0
1.9
-0.5
1.7
2.5
2
1.5
1
-1
1.5
8/2
0.5
0
6M
1Y
2Y
3Y
5Y
7Y
10Y
30Y
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
9/13 10/25 12/6
1/17
Indexed Note(5Y)
BEI (10Y: RHS)
2/28
4/11
5/23
7/4
Indexed Bond (10Y)
9
資料:FRB, FDIC
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 銀行貸出 (1)
銀行貸出残高(前年比伸び率・%)
25
20
・ 銀行貸出には、改善の動きもみられるが、総じて見
15
れば引続き低調である。
10
-商工業貸出や消貹者ローンは改善を続けているが、 5
0
住宅や商業用丌動産向けの貸出の減尐傾向は変
-5
わっていない。
-10
・ 銀行の資産規模別にみると、中堅中小行で住宅お -15
よび商業丌動産を中心とする貸出減尐がむしろ加速 -20
-25
している。
Jan-07
Total
C&I
Residential Mortgage
CRE
Consumer
Oct-07
Jul-08
Apr-09
Jan-10
Oct-10
資産規模別の商業銀行の貸出増減額((左)総資産10億以上100億ドル未満、(右)総資産100億ドル以上(前期比・10億ドル))
25
400
20
C&I
Individual
RM
CRE
Other
300
15
10
200
5
0
100
-5
-10
0
-15
-20
-100
-25
-30
Mar-03
C&I
Sep-04
Individual
Mar-06
RM
Sep-07
CRE
Mar-09
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Other
Sep-10
-200
Mar-03
Sep-04
Mar-06
Sep-07
Mar-09
Sep-10
10
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 銀行貸出(2)
資料:FRB
(左)資金需要DIと(右)貸出スタンスDI(ともに主要金融機関貸出アンケート)
100
60
Large and medium-sized corporation
Small corporation
Resideantial mortgage
Creditcard loan
40
20
80
60
0
40
-20
20
-40
0
-60
-20
-80
Large and medium-sized corporation
Small corporation
Residential mortgage
Creditcard loan
-40
2007.1
2008.1
2009.1
2010.1
2011.1
・ この間、FRBによるサーベイ調査を見る限り、銀行側
は不信姿勢を緩和的に維持しているようにみえる。
-丌動産関連についても、住宅と商業用丌動産の双
方ともに、不信姿勢の緩和が窺われる。
・しかし、米国内では、市場関係者と当局の双方ともに、
中小企業を中心に貸出を受けられないことに対する
借り手の丌満が大きいとの指摘が目立つ。
-ただ、この点は先に見たような借り手の状況悪化
を反映している面もあり、一概に貸し渋りであるとは
言えない。
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2007.1
2008.1
2009.1
2010.1
2011.1
丌動産関連貸出のDI(主要金融機関アンケート)
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
2007.1
2008.1
2009.1
Tighten for RM
2010.1
Demand for RM
Tighten for CRE
Demand for CRE
2011.1
11
資料:FDIC
1. QE2のレビューと金融市場の動向
(参考) 中小企業向け貸出
・中小企業向けの貸出は、金融危機以降の減尐傾向に歯止めがかかっていない。
-FDICの定義に基づく中小企業向け貸出は、2008年以降、いずれの種類においても減尐ペースがむしろ
加速を続けており、残高も2005年当時の水準に戻っている。しかも、各々の種類の全体に占めるシェア
もこの間に低下しており、銀行貸出全体以上に減尐していることがわかる。
(左):種類別貸出の変化<前年比%>, (中央):種類別貸出の残高<百万ドル>, (右):種類別貸出のシェア<%>
12
60%
1,200,000
10
1,100,000
8
1,000,000
6
900,000
4
800,000
2
700,000
0
-2
C&I (<=1MM)
-4
NFNR(1<=1MM)
Agriculture and Farmland
(<=500K)
Total
-10
2004
Total
50%
45%
600,000
40%
500,000
35%
300,000
30%
200,000
25%
20%
0
2002
NFNR(1<=1MM)
100,000
-12
2000
C&I (<=1MM)
55%
400,000
-6
-8
C&I (<=1MM)
NFNR(1<=1MM)
Agriculture and Farmland (<=500K)
2006
2008
2010
2000
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2002
2004
2006
2008
2010
2000
2002
2004
2006
2008
2010
12
資料:FRB, SIFMA
1. QE2のレビューと金融市場の動向
社債の格付別スプレッド(対国債・5年)
3
 社債市場(1)
・ 長期金利の低下やクレジットスプレッドの圧縮を
背景に、社債の発行額は堅調に推移している。
-本年入り後も、低格付物の発行が高水準であ
るほか、投資適格債も1000億ドル近い発行額
を記録する月が多い。一方、地方債については、
地方財政の悪化を巡る投資家の丌安もあって、
本年入り後は低調となっている。
1
2.8
0.9
2.6
0.8
2.4
0.7
2.2
0.6
2
0.5
1.8
0.4
1.6
0.3
1.4
0.2
1.2
0.1
1
7/30
0
9/24
11/19
1/14
3/11
5/6
C r edit S pread (A)
C r edit S pread (BBB)
C r edit S pread (AAA) <RHS>
7/1
左:社債発行額(10億ドル)、右:地方債発行額(10億ドル)
60.0
160.0
High Yield
Investment Grade
Revenue
140.0
General Obligation
50.0
120.0
40.0
100.0
30.0
80.0
60.0
20.0
40.0
10.0
20.0
0.0
Jan-08
Oct-08
Jul-09
Apr-10
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Jan-11
0.0
Jan-08
Oct-08
Jul-09
Apr-10
Jan-11
13
資料:FRB, SIFMA
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 社債市場(2)
ABS発行額(10億ドル)
70
・ CPの発行は横ばい圏内ながら、社債発行の大幅な増加
により、資本市場からの資金調達は増勢を続けている。
Auto
Cards
Student Loans
Equipment
Home Equity
Other
60
50
-もっとも、先に見たように国内設備投資には慎重である
ため、企業は、銀行借入れの返済や配当、M&A等に資金
を充当しているとの指摘が聞かれる。
40
30
20
・ なお、ABSの発行は緩やかながら回復の動きがみられ始
め、総発行額が金融危機直後(2009年第4四半期)を小
幅ながら上回った。
10
0
08/I
08/III
09/I
09/III
10/I
10/III
11/I
左:社債発行残高(10億ドル)、右:CP発行残高(100万ドル)
10,000
2,000,000
9,000
1,800,000
Corporate Bond
8,000
ABS
1,400,000
6,000
1,200,000
5,000
1,000,000
4,000
800,000
3,000
600,000
2,000
400,000
1,000
200,000
0
08/I
08/III
09/I
09/III
Financial
Non-Financial
1,600,000
7,000
06 07 08 09 10
Asset-Backed
10/I
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
10/III
11/I
0
Jan-08
Oct-08
Jul-09
Apr-10
Jan-11
14
資料:FRB
1. QE2のレビューと金融市場の動向
(参考) マクロのde-leverage
・米国の金融資産の総規模も、急増した後で横ばいというパターンを辿っており、尐なくともマクロ的には
de-leverageが進捗している訳ではない。
-しかし、資産規模が頭打ちになった後は、引続き、国債の増加が目立っている。民間のクレジット需要が
総じて強い訳ではないのでクラウディング・アウトとは言えないが、これは、住宅貸出や企業債務が政府の
クレジットに置き換わりつつあることを示している。
米国金融資産の構成(残高(右)と前期比増減(左)・百万ドル)
60,000,000
6,000,000
5,000,000
50,000,000
4,000,000
3,000,000
40,000,000
2,000,000
30,000,000
1,000,000
0
20,000,000
-1,000,000
10,000,000
-2,000,000
-3,000,000
0
03/I
Treasury Notes
Agency MBS
Mortgages
04/III
06/I
07/III
Municipal Bonds
Consumer Credit
Other
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
09/I
10/III
Corporate Bonds
C&I Loans etc
06/I
07/I
Treasury Notes
Agency MBS
Mortgages
08/I
09/I
Municipal Bonds
Consumer Credit
Other
10/I
Corporate Bonds
C&I Loans etc
15
資料:Thomson Reuters
1. QE2のレビューと金融市場の動向
業種別株価(2010年7月末=100)
135
 株価の動向
・ 株価は、QE2のアイディアが示された
昨年8月後半から本年初まで上昇基
調を辿った。ただ、その後は業種別
にまちまちとなり、4月~6月に全体
として調整した後、足許で再び下落
が目立っている。
-相対的にはエネルギー関連が価格
高騰を映じてoutperformし、選択的
消貹財も健闘してきたが、ITや工業
は年初の水準付近にあるほか、足許
の下げも目立つ。この間、金融関連
は、大手行を中心とする住宅金融問
題や消貹者金融関連の規制強化な
どを背景にunderperformしている。
150
S&P 500
S&P Financial
S&P Industrial
S&P Cons. Disc.
130
125
S&P 500
S&P Technology
S&P Energy
S&P Material
145
140
135
120
130
125
115
120
110
115
105
110
105
100
100
95
95
90
90
8/3
・ なお、株価指数別のEPSには、上下
双方への大きな歪みはみられない。
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9/7 10/12 11/16 12/21 1/25
3/1
4/5
8/3
5/10 6/14 7/19
9/7 10/12 11/16 12/21 1/25
3/1
4/5
5/10 6/14 7/19
30
25
20
15
10
業種別EPS($)
5
0
-5
-10
-15
08/I
09/I
S&P 500
S&P Industrial
S&P Technology
S&P Material
10/I
11/I
S&P Financial
S&P Cons. Disc.
S&P Energy
16
資料:FRB, Thomson Reuters
1. QE2のレビューと金融市場の動向
 米ドル相場の動向
・ ドル相場は、QE2のアイディアが示された昨年8月後半から10月まで下落した。その後いったんは反発したが、
本年初から4月にかけて再び下落を続けた。4月から5月には欧州情勢の丌安定化等に伴う”flight to
quality”もあってが、その後は上下動を伴いつつ軟調になっている。
-通貨別には、いわゆる”commodity currency”に対する下落が大きかった一方、新興国通貨に対しては、程
度の差はあっても一貫して下落している。
左:ドルの名目実効レート、中央と右:ドルの対主要通貨レート(2010年7月末=100)
104
104
104
102
100
NEER
102
NEER-Major
100
NEER-OITP
98
102
100
96
98
98
94
96
96
92
94
90
92
88
94
92
86
90
88
7/30
84
9/10
10/22 12/3
1/14
2/25
4/8
5/20
7/1
82
7/30
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EUR
GBP
AUD
JPY
9/24
11/19
1/14
90
CAD
3/11
5/6
7/1
88
7/30
CNY
KRW
INR
BRL
9/24
11/19
1/14
3/11
5/6
7/1
17
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:IMF
 外貨準備の動向(1)
・ 新興国を中心とする外貨準備の増加は続いており、直近では約10兆ドルに達している(このうち新興国は
6.5兆ドルを占めている)。
・ 市場では、民間の長期投資家も含むグローバル投資家の間では、米ドル建て資産のウエイトを落とし、従来
よりも広範な資産への分散投資が底流的に進行しているとの見方が聞かれる。
(左) 世界の外貨準備残高(10億ドル)
(右) 通貨別シェア
<左は原データ、右は為替相場調整後>
7000
6000
Advanced
Total (RHS)
Emerging
72%
32%
72%
32%
70%
30%
70%
30%
14000 68%
28%
68%
28%
66%
26%
66%
26%
64%
24%
64%
24%
12000
10000 62%
5000
60%
4000
8000
6%
3000
6000
2000
4000
1000
2000
22%
USD
EUR (RHS)
2003
2005
2007
20%
2009
2011/I
USD
62%
60%
20%
2003
0
07/I 07/III 08/I 08/III 09/I 09/III 10/I 10/III 11/I
5%
5%
4%
4%
3%
3%
2007
2009
2011/I
2%
2%
1%
GBP
1%
JPY
JPY
0%
0%
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2005
6%
GBP
0
22%
EUR (RHS)
2003
2005
2007
2009
2011/I
2003
2005
2007
2009
2011/I
18
1. QE2のレビューと金融市場の動向
(参考) 米国債の保有動向
資料:FRB, FRBNY
(左)米国債保有額、(右)Agency債およびAgency-MBS保有額<百万ドル>)
9,000,000
12,000,000
8,000,000
10,000,000
7,000,000
6,000,000
8,000,000
5,000,000
6,000,000
4,000,000
3,000,000
4,000,000
2,000,000
2,000,000
1,000,000
0
0
2006/I
2007/I
2008/I
ROW
Pension(Private and Public)
Banks(incl. Savings and CU)
Government
Household and Others
2009/I
2010/I
Mutual Funds
Insurance
FRB
Non-financial
2006/I
2011/I
2008/I
ROW
Mutual Funds
Insurance
FRB
Non-financial
・ 米国債の保有(第1四半期まで)に目立った変化はない。
-第1四半期には家計等が1600億ドル以上減尐した一方、
FEDが約3200億ドル、海外部門が約700億ドル増加した。
・ この間、Agency債やAgency-MBS債の保有(第1四半期ま
で)にも目立った変化は見られない。
-ただし、FRBNYのcustody勘定の動きには、Agency債への
投資が引続き低調であることが反映されている。
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2007/I
2009/I
2010/I
2011/I
GSE
Pension(Private and Public)
Banks(incl. Savings and CU)
Government
Household and Others
(FRBNYのcustody勘定における保有額<百万ドル>)
3,000,000
2,500,000
Treasury Notes
Agency Notes
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
Jan-06
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-1119
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:WGC
 外貨準備の動向(2)
・ 世界の外貨準備が保有する金地金は、金価格の上昇もあって顕著に増加している。
-特に近年には、外貨準備自体の規模が増加している”Other Countries”(米欧以外の諸国)の保有額と
世界全体に占めるシェアが上昇している。
-それでも、新興国の場合は外貨準備に占める金のシェアはむしろ低下していた面もあるだけに、市場で
は一段の買い増しに期待する向きがみられる。
世界の政府・国際機関が保有する金
(左:百万ドル、右:金額シェア)
1,600,000
50%
1,400,000
45%
Euro Area + Switzerland
1,200,000
USA
1,000,000
IMF
40%
30%
800,000
25%
600,000
20%
26%
24%
22%
20%
18%
16%
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
Other
IMF
USA
Euro Area + Switzerland
35%
Other
外貨準備(金を含む)に占める
金のシェア<%>
15%
400,000
10%
200,000
5%
0
0%
00/I
02/I
04/I
06/I
08/I
10/I
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00/I
02/I
04/I
06/I
08/I
10/I
Global
Advanced
Emerging
00/I
02/I
04/I
06/I
08/I
10/I
20
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:Thomson Reuters
 商品価格の動向(1)
170
160
・ 商品価格は、昨年8月から本年の
4月にかけて、総じて一貫して上昇
基調を辿った。その後は、株価など
と同様に反落した後で総じて調整
局面に入っている。
-ここに挙げたエネルギーや金属以
外にも、農産物価格(綿花や小麦、
とうもろこしなど)も概ね同様のパ
ターンを辿った。
160
150
140
GSCI
140
130
・ 足許では、エネルギー関連の下落
が目立つ一方、金が再び上昇傾向
を示している。
140
Gasoline (RBOB: NYMEX)
130
Natural Gas (Henry Hub:
NYMEX) <RHS>
120
130
110
120
100
110
90
100
100
80
90
90
70
120
110
80
7/30 9/10 10/22 12/3 1/14 2/25
・ ただ、上昇度合いは区々である。
-天然ガスは横ばい圏内であった
(昨年7月末より低い)ほか、工業
用途では金との代替性の強いプラ
チナや産業需要に左右されやすい
銅は価格上昇率が抑制されている。
150
CRB
150
Crude Oil (WTI: NYMEX)
4/8
5/20
7/1
80
7/30 9/10 10/22 12/3 1/14 2/25
60
4/8
5/20
7/1
商品価格指数と主な商品価格の推移(2010年7月末=100)
160
150
280
Gold (COMEX)
260
Platinum (NYMEX)
240
140
130
120
160
Silver (COMEX)
150
Copper (COMEX) <RHS>
140
220
130
200
120
180
110
110
160
100
100
140
90
90
120
80
100
7/30 9/10 10/22 12/3 1/14 2/25
70
80
7/30 9/10 10/22 12/3 1/14 2/25
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4/8
5/20
7/1
4/8
5/20
7/1
21
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:NYMEX, COMEX, Thomson Reuters
 商品価格の動向(2)
・ 金のボラティリティは金融危機後に上昇しているが、金、原油とも価格変動幅にはトレンドはみられない。
一方、建玉や取引高は金融危機後に増加傾向を示しているほか、QE2の期間にはこうした傾向に拍車が
かかっている様子も窺われる。
60
45
30
High-Low Spread
50
40
25
Standard
Deviation (RHS)
40
20
30
15
20
10
10
5
0
0
1,000,000
35
High-Low Spread
(終値対比・%)
と標準偏差
(ともに週次)
<左は原油、
右は金>
60
25
50
20
40
15
30
10
20
5
10
0
0
1,600,000
700,000
1,400,000
600,000
1,200,000
500,000
1,000,000
400,000
800,000
300,000
Jun-07
600,000
Jun-08
Jun-09
Jun-10
Jun-11
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
700,000
Open Interest (RHS)
1,800,000
800,000
70
300,000
2,000,000
Trading Volume
80
Standard Deviation
(RHS)
30
Open Interest (RHS)
900,000
90
High-Low Spread
250,000
建玉と取引高
(ともに枚)
<左は原油、
右は金>
Trading Volume
600,000
200,000
500,000
150,000
400,000
100,000
300,000
50,000
Jun-07
200,000
Jun-08
Jun-09
Jun-10
Jun-11
22
1. QE2のレビューと金融市場の動向
資料:FRB
 商品価格の動向(3)
・ FRBは、商品価格が需要(新興国の経済成長と産業高度化等)と供給(過小な設備投資や地政学的要因
等)のファンダメンタル要因で上昇している点を強調、QE2との関係に関する疑念の払拭に努めている。
-ドル安や金融緩和の新興国への伝播による影響を認めつつも、部分的な影響に過ぎず、かつ新興国の政
策対応の問題との議論を展開している。
(参考) IMC(6/7日)におけるBernanke議長スピーチ(抜粋)
上昇の主因
・…the recent increase in commodity prices appears largely to be the result of the same factors that drove commodity prices
higher throughout much of the past decade: strong gains in global demand that have not been met with commensurate
increases in supply.
・…This impressive performance was led by the emerging and developing economies …the heavy emphasis on industrial
development…has led their growth to be particularly intensive in the use of commodities.
・…the supply of many commodities has lagged behind…In part, the slower increase in the supply of oil reflected disappointing
rates of production in countries that are not part of the Organization of the Petroleum Exporting Countries
(OPEC)…Production shortfalls have plagued many other commodities as well.
金融政策
との関係
・…the dollar's decline can explain, at most, only a small part of the rise in oil and other commodity prices; indeed, commodity
prices have risen dramatically when measured in terms of any of the world's major currencies, not just the dollar…even this
calculation overstates the role of monetary policy, as many factors other than monetary policy affect the value of the dollar.
・… if (low interest rates) were driving commodity prices materially and persistently higher, we should see corresponding
increases in commodity inventories…inventories of most commodities have not shown sizable increases over the past year as
prices rose…likely reflecting strong demand or weak supply that tends to put pressure on available stocks.
・…most of the recent rapid economic growth in emerging market economies appears to reflect a bounceback from the
previous recession and continuing increases in productive capacity…rather than being primarily the result of monetary
conditions in those countries…the authorities in those economies clearly have a range of fiscal, monetary, exchange rate, and
other tools that can be used to address any overheating that may occur.
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23
資料: IMF, OECD, FRB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 米国経済(概観)
・本年前半の期待はずれの動きを背景に、足許ではやや弱気
が見方が増えている。
-主要な国際機関も、設備投資が牽引していくもの
の、個人消貹の回復が遅延するとして、2012年に
かけての成長率見通しを若干ながら引き下げた。
-年前半の経済成長率は、潜在成長率を大きく下回
る動きになったことが明らかになっている。
GDP変動の要因分解(前期比年率%)
米国のGDP成長率見通し(前年比%)
2011年
2012年
2013年
IMF
2.5
2.7
---
(2011年6月)
<4月:2.8>
<4月:2.9>
OECD
2.6
3.1
---
FRB
2.7~2.9
3.3~3.7
3.5~4.2
(2011年6月)
<4月:
<4月:3.5
<4月:3.5
3.1~3.3>
~4.2>
~4.3>
(2011年5月)
8
6
需要項目別見通し(OECD・前年比%)
4
2
2011年
2012年
個人消貹
2.9
2.9
住宅投資
-1.9
3.3
設備投資
8.3
11.4
在庫投資
-0.1
0.0
政府消貹
-0.6
0.2
純輸出
0.1
-0.3
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
07/I
08/I
09/I
10/I
Private Consumption
Private Residential Investment
Private Non-residential Investment
Inventory
Govt Consumption
Net Export
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11/I
24
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 市場では、自律的回復のメカニズム自体は維持されているものの、本年前半の一時的要因が影響を不え
たことに加え、金融危機後に特有な要素が景気回復のペースを抑制する効果が現れたと理解されている。
・ 企業は、需給双方に関する一時的要因の
解消を確認ながら、pent-up demandを含
む設備投資を回復させると期待される
・ 住宅価格の下落が止まらず、雇用の改善
が著しく遅いので、消貹の拡大が維持され
るかどうかには丌安も残る
→結果として生ずる資産効果(株価経由)
や緩やかな賃金所得の回復は、消貹支
出の回復を助ける面がある
・ 銀行も、住宅関連の丌良債権の処理に
加えて、規制対応や収益性強化のため、
不信運営を慎重化せざるを得ない
・本年後半は、一時的要因が剥落する分は成長率が改善するものの、その幅に関する丌透明感が出てきた。
-立ち上がりは設備投資→消貹→住宅投資という順番が想定されているが、牽引力を期待しうるのが設備投
資程度という点では、景気回復が力強さを欠く展開になるとの見方がある。
-財政に関しては、欧州のような強力なfiscal dragが生ずる可能性は小さいものの、①政府消貹もGDPに対す
るマイナス寄不を続ける、②地方政府での公務員削減が雇用情勢の改善を妨げるとともに、中小企業の景況
や住宅価格にも影響を及ぼす、といった面で懸念材料とされている。
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25
資料:Department of Commerce, ISM
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 生産活動
・ ISMのPMI指数は、春先以降の鈍化傾向が明確化してきた。特に、6月の下げ止まりの後、7月の指数が再び
下落したことが失望感を強めている。ISMによれば、7月の製造業のPMI(50.9)は実質GDPの2.9%成長に相
当し、ほぼ潜在成長率付近のペースまで減速した。
-受注も年初から年央にかけて大きく減退した後、いったんは下げ止まりの兆しもみられたが、直近月に再び
軟化している。製造業の産業別には輸送機械、電気機械、IT、石油・石炭、化学製品などは改善を続けてい
る一方、衣料、縫製、家電など個人消貹関連の弱さが目立つ。
(左:ISM総合指数、中央:ISM受注指数、右:米国の企業在庫<月次変化:3ヶ月移動平均・百万ドル>)
70
15000
Manufacturing PMI
65
10000
Non-Manufacturing PMI
60
5000
55
0
55
50
-5000
50
45
70
65
60
45
-15000
35
40
30
35
25
30
20
Jan-07
-10000
40
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Jan-07
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Manufacturing Order -20000
Non-Manufacturing
Order
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Total
Retail
-25000
-30000
Jan-06
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
26
資料:BEA, FRB, ISM
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
設備稼働率指数<%>
85
 設備稼働率・企業収益
80
・ 設備稼働率は、本年初には長期平均の水準まで回復
しており、FRBが懸念していたslacknessの問題は資本
に関しては解消している。
75
70
65
・ 企業収益も、本年第1四半期には金融危機前のピーク
に匹敵する水準に達しているほか、そのソースも尐なく
ともマクロ的にはバランスのとれたものとなっている。
60
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
All Industries
Manufacturing
All Industries (Average since 2000)
Manufacuring (Average since 2000)
(左):米国企業の収益<SNAベース・10億ドル>、(右):非金融法人のCF<前期比・百万ドル>)
4,000,000
2000
1800
Financial
1600
Non-Manufacturing
1400
Manufacturing
1200
ROW
3,000,000
2,000,000
1,000,000
1000
0
800
600
-1,000,000
400
-2,000,000
200
-3,000,000
0
00/I
-200
01/I
03/I
05/I
07/I
09/I
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
11/I
03/I
Tangible Investments
Financial Assets
Discrepancy
06/I
09/I
Financial Liabilities
Inventory
27
資料:BLS
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
Non-Financial Businessの単位当たりコスト・収益
<4四半期MA・前年比・%>
 生産性
8
40
-金融危機後にUnit Profitが大きく改善した背後で、Unit
6
Labor CostとUnit Non Labor Costはともに大幅に減尐し 4
た。すなわち、企業がコスト削減とともに労働貹用の圧縮 2
を図ってきたことを示す。
0
-2
-ただ、賃金自体は減速しつつ上昇しているので、Unit
Labor Costの圧縮は労働生産性の向上で達成されている。-4
-この間、利益を分解しても、生産数量の増加による貢献は -6
-8
限界的に止まっている。
30
20
10
0
-10
Unit Labor Cost
-20
Unit Non Labor Cost
-30
Unit Profit (RHS)
01/I
02/I
03/I
04/I
05/I
06/I
07/I
-40
08/I
09/I
10/I
11/I
(左)Non-Financial BusinessのULCの分解、(右)Non-Financial Businessの利益の分解
<4四半期MA・前年比・%>
8
50
6
40
4
30
2
20
0
10
-2
0
-4
-10
Labor Productivity
Hourly Compensation
Unit Labor Cost
-6
-8
01/I
02/I
03/I
04/I
05/I
06/I
07/I
08/I
09/I
-20
Output
Unit Profit
Profit
-30
10/I
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
11/I
01/I
02/I
03/I
04/I
05/I
06/I
07/I
08/I
09/I
10/I
11/I
28
資料:BEA, NFIB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 設備投資
・ 米国企業は、マクロ的に見て高水準のキャッシュフローを享受しているのに対し、キャッシュフローとの対比で
みた設備投資の水準は本年第1四半期にかけて下落を続けている。
-また、中小企業による設備投資姿勢も、本年初にかけての改善姿勢が停滞してきている。
(左:非金融非農業法人のCFと投資<百万ドル・%>、右:中小企業の設備投資DI)
1,600,000
160
1,200,000
140
800,000
120
400,000
100
0
80
-400,000
60
00/I
03/I
06/I
09/I
Overseas Income(B)
Domestic CF(A)
Domestic Tangible Investment/(A)
(Domestic Tangible Income+FDI)/(A+B)
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
65
40
60
35
55
30
50
25
45
40
Jan-06
Capital Expenditure
20
Capital Expenditure
Plan(RHS)
Jan-07
Jan-08
15
Jan-09
Jan-10
Jan-11
29
資料:BEA, Thomson Reuters
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
(上段)企業収益と設備投資(前年比・%)、(下段)株価指数(S&P500)と社債スプレッド(BBB格)
 過去の局面との比較
・ より長い目で金融危機
後の動きをみても、企
業収益や設備投資は、
むしろ2000年以降の
平均的なパターンを
outperformしている。
-同時に、緩和的な金融
環境が維持される下で、
株価の上昇も早かった。
30
50
40
30
1991
20
2001
2009
10
20
0
10
0
-10
-10
-20
2001
-30
2009
-20
-30
-40
-40
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1
0
1
2
3
4
5
6
170
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1
7
0
1
2
3
4
5
6
7
7
160
・ ただ、本年第1四半期
の時点には、企業収益
や設備投資の伸び率に
は鈍化がみられたのも
事実である。
1991
1991
2001
2009
1991
6
150
2001
5
140
2009
130
4
120
110
3
100
2
90
1
80
70
0
-24 -20 -16 -12
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
-8
-3
1
5
9
13
17
21
-24 -20 -16 -12
-8
-3
1
5
9
13
17
21
30
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:BLS
 労働市場(概観)
・ 労働市場の改善は進捗せず、直近では失業率の改善の動きが止まっているほか、民間部門の雇用者数の増加
にも力強さがみられない。
-米国内では、①失業期間の長期化に伴うスキルの喪失、②医療保険改革等に伴う雇用者側のパート雇用指
向の強まり、③低下を続ける労働参加率の回復に伴う求職者の増加、といった要因が雇用や賃金所得の回復
ペースを中長期に亘って抑制することを懸念する向きが多い。
主な雇用指標の推移
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
Jan-07
2000
1000
0
-1000
-2000
-3000
-4000
-5000
-6000
-7000
-8000
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
68.0
22
67.5
21
67.0
20
66.5
19
66.0
18
65.5
17
65.0
18000
30.0
15000
25.0
12000
20.0
9000
15.0
16
6000
10.0
64.5
15
3000
5.0
64.0
14
0
0.0
Jan-07
Unemployment Rate(RHS: Inverse・%)
NFP(LHS・Cumulative・thousand)
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Labor Participation
Labor Participation (Average since 2000)
Share of Part Time Jobs (RHS)
Jan-07
Jan-08
Jan-09
27W and Over
5 to 14W
Median(Weeks: RHS)
Jan-10
Jan-11
15 to 26W
less than 5W
31
資料:BLS
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 産業別の雇用動向
・ 民間部門については、昨年後半以降に改善をみせた製造業、レジャー産業、教育・医療、専門的職業などの
分野がいずれも失速していることがわかる。
-なお、政府部門は、尐なくともこれまでは大きく足を引っ張る状況ではなかった。しかし、米国内では、特に地
方財政の悪化とこれに対する短期的な対応のために、地方政府職員の失業増加を懸念する見方がある。
(左:主要産業別雇用増減<前月比・千人>、右:政府部門の雇用増減<前月比・千人>
600
Construction
400
Manufacturing
200
Wholesale
Retail
0
Financial
-200
Leisure
-400
Professional Services
600
400
200
0
-200
-400
-600
-600
Information
-800
Education and Healthcare -800
Other
-1000
Jan-07
Oct-07
Jul-08
Apr-09
Jan-10
Oct-10
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Government
State and Local Govt.
Federal Govt.
Total Private
-1000
Jan-07
Oct-07
Jul-08
Apr-09
Jan-10
Oct-10
32
資料:BLS
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 企業規模別の雇用動向
・ 今回の局面では、景気が急速に悪化する中で中小企業の雇用が(大企業と並んで)顕著に減尐しただけ
でなく、景気回復局面でも雇用の改善がみられないことが特徴である。
-大企業の大幅な雇用削減には労働貹用の「変動貹化」が関わっているのに対し、中小企業の異例な雇
用削減と低迷については、地域経済の疲弊や資金調達環境の悪化との関係を指摘する向きがある。
(左)企業規模別のネット雇用増減、(中央)と(右)景気後退・回復局面での企業規模別の累計雇用増減<ともに四半期・千人>
1500
1250
1000
1000
500
750
0
500
-500
250
500
1-49 employees
0
50-249 employees
-500
250-999 employees
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
1
2
3
4
5
6
7
-1000
1000+ employees
-1500
0
-1000
1000+ employees
-2500
03/I
50-249
employees
-3000
250-999
employees
-1000
-3500
1000+
employees
-1250
-4000
-500
50-249 employees
-750
-3000
01/III
-2500
250-999 employees
1-49 employees
00/I
1-49
employees
-250
-1500
-2000
-2000
04/III
06/I
07/III
09/I
10/III
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
1
2
3
4
5
6
7
33
資料:NFIB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
(参考) 中小企業の景況感
・ISM指数が示唆するマクロの動向に比べて、総じて厳しい状況にある。
-売上げや販売価格の見通しが反落すると同時に、景況感DIが昨年末をピークに大きく低下している。これに
伴って、雇用や賃金の改善傾向も、昨年後半にしばらく上下動を繰り返した後、反落に転ずる動きとなって
いる。
(左):景況感と収益のDI, (中央):売上げ見通しと物価見通しのDI, (右):雇用と賃金のDI
20
0
40
40
10
35
15
-5
30
35
5
30
10
-10
5
-15
20
30
0
25
0
-20
10
25
-5
20
-5
-25
0
20
-10
15
-10
-30
-10
15
-15
10
-15
-35
-20
-40
10
-20
-25
-30
Jan-06
Business Condition
-45 -30
Earnings(RHS)
Jan-07
Jan-08
-20
-50 -40
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Sales Expectation
5
Price
Expectation(RHS)
Jan-06
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Jan-07
Jan-08
5
Employment
-25
0
Compensation(RHS)
0
Jan-09
Jan-10
Jan-11
-30
Jan-06
-5
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
34
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:BLS
4.0
 構造的失業
3.5
・ FRBが指摘してきた構造失業
率の上昇の傾向はみられるが、
現在の状況と「完全雇用」との
大きな差を考えると、部分的な
説明要因と見るべきであろう。
-もちろん、より長い目で見れ
ば、労働力人口に占める中高
年層のシェアが顕著に上昇し
ていることが、労働需給のミス
マッチを深刻化させる可能性
は存在する。
3.0
UV曲線
(2000年12月
~2011年6月
月次・%)
2.5
2.0
1.5
1.0
3.5
4.5
5.5
6.5
7.5
8.5
9.5
10.5
(左):年齢別の失業率<%>、(右):労働力人口の年齢別構成<%>
30
30
失業率
失業率(16-19才)
25
25
失業率(55才以上)
20
20
15
15
10
10
5
5
0
Jan-00
0
Jan-00
Jan-02
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Jan-04
Jan-06
Jan-08
Jan-10
Jan-02 Jan-04
16才~19才
25才~34才
45才~54才
Jan-06
Jan-08 Jan-10
20才~24才
35才~44才
55才以上
35
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:BEA, FRB
 家計の所得
・ 家計所得は賃金所得や自営業収入の緩やかな伸びに支えられている。もっとも、貯蓄率が再び5%前後で
推移する中で、第2四半期には消貹の回復も顕著に減速した。
-Net Worthの改善も丌動産価格の反落で小幅にとまったほか、第2四半期は株価低迷の影響が懸念される。
400
8
7
300
個人消費(前期比年率)
貯蓄率(右軸)
200
6
100
4
5
2
4
0
3
-2
2
-4
1
0
(左)源泉別の
個人所得
(10億ドル)
(右)消貹の伸び率
と貯蓄率
(%)
-100
-200
-300
-400
-500
-600
00/I
02/II
04/III
雇用者報酬+事業収入
移転所得(ネット)
06/IV
09/I
利子・配当受取り
-6
11/II
00/I
4.E+06
02/II
04/III
06/IV
09/I
6
0
11/II
20
88
15
86
10
84
5
82
0
80
-5
78
2.E+06
(左)源泉別の
NW増加額
(前期比兆ドル)
(右)NWの前年比
と対総資産比率
(%)
0.E+00
-2.E+06
-4.E+06
-10
Net Worth対総資産比率(右軸)
-15
-6.E+06
04/I
06/I
08/I
10/I
株式
Mut ual Funds
不動産
生保・年金
そ の他金融資産
実物投資等
NW増加額
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
76
Net Worth(前年比)
-20
74
72
00/I
02/II
04/III
06/IV
09/I
36
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:University of Michigan, BEA
 個人消貹
・ 雇用や所得の環境を考えると、これまでは個人消貹はむしろresilientであったとも言える。
-家計のコンフィデンスは、上下動を示しつつも概ね横ばい圏内で推移している。小売売上についても、供給要
因が作用しているとみられる自動車関連や住宅価格の低迷を映じた建材関連などの減尐は目立つが、年初
来は堅調な動きとなっている。
-もっとも、直近月には、ガソリン価格の上昇による実質購買力低下の影響に加えて、労働市場の改善が減速
したことが、消貹者センチメントの悪化を招いたとみられる。
(左):ミシガン大学消貹者信頼感指数、(中央と右):構成別の小売売上高<前年比%>
120
Current
110
20
30
15
20
Expected
100
10
Total
90
10
5
80
0
0
70
Total
-5
60
50
-10
40
-15
Jan-04
Jul-05
Jan-07
Jul-08
Jan-10
Jul-11
Jan-04
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-10
Total ex MV and Parts
Total ex Gas
-20
Nonstore
-30
Jul-05
Jan-07
Jul-08
Jan-10
Jan-04
Building Materials
MV and Parts
Electoronic App.
Clothing
Health Care
Jul-05
Jan-07
Jul-08
Jan-10
37
資料:BEA, FRB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 家計の債務(1)
・ 家計の債務返済負担は金利低下によって改善してきている。FOR(保険料や賃料を含むベース)で自家保有者
と借家人に分けると、前者はモーゲージ金利低下の恩恵を受けた一方、後者は2004年以来横ばい圏内で推
移してきたことがわかる。
・ 残高をみると、家計は住宅借入れの圧縮を緩やかに続けており、可処分所得対比でみた総負債は2005年付
近の水準まで低下した。もっとも、総負債残高自体は消貹者ローンの増加によって横ばいとなっている。
(左):Debt Service Ratio<%>、(中央)Financial Obligation Ratio<%>、(右):純資産と借入れ<10億ドル、%>
14.5%
35.0%
16000
160
14000
140
12000
120
10000
100
FOR (Home Owners: Mortgage)
8000
80
FOR (Renters)
6000
60
4000
40
2000
20
DSR
14.0%
30.0%
13.5%
25.0%
13.0%
20.0%
12.5%
FOR (Home Owners: Consumer Credit)
15.0%
12.0%
10.0%
11.5%
5.0%
11.0%
0
0.0%
00/I 01/III 03/I 04/III 06/I 07/III 09/I 10/III
0
00/I
00/I
01/III
03/I
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
04/III
06/I
07/III
09/I
10/III
01/III
03/I
04/III
06/I
07/III
09/I
10/III
消費者ローン
住宅借入れ
その他借入れ
総負債対可処分所得比率(右軸)
38
資料:BEA, FRB, FRBNY
1. QE2の終了と米国経済の現状
 家計の債務(2)
・ 消貹者ローンの残高(Home Equityを含む)は、昨年後半以降、概ね横ばいないし微増となっている。
-Revolving Creditに関しては、Student Loanが微増を続けている(学貹の上昇や奨学金の縮小によるとされ
る)のに加えて、自動車ローンの減尐が終了したことが作用していることが窺われる。
-この間、Non-Revolving Creditでは、Credit Card借入れの減尐は傾向としては続いているが、その減尐幅は
各期でまちまちである(例えば、昨年第4四半期には減尐しなかった)。
(右)消貹者ローンの残高前年比<12M移動平均・%>、(中央)消貹者ローンの種類別前期比<兆ドル>、(左)消貹者ローンの種類別残高<兆ドル>
0.20
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
HE Revolving
Student Loan
Auto Loan
Other
Credit Card
0.15
3.5
HE Revolving
Auto Loan
3.0
Credit Card
0.10
Student Loan
2.5
Other
Revolving Credit
Non-Revolving Credit
04/I
06/I
08/I
10/I
0.05
2.0
0.00
1.5
-0.05
1.0
-0.10
0.5
-0.15
0.0
00/I
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
01/III
03/I
04/III
06/I
07/III
09/I
10/III
00/I
01/III
03/I
04/III
06/I
07/III
09/I
10/III
39
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:BLS, BEA
(上段)失業率(%)と非農業雇用者数(累計・千人)、(下段)可処分所得と個人消貹(前年比・%)
 局面比較(個人)
・ より長い目で金融危機後の
個人部門を巡る動きをみる
と、企業部門に比べて回復
が遅れていることが明確に
確認される。
-特に労働市場の関連指標
は、2000年以降の景気回
復を著しくunderperformし
ている。
・ これまでの景気回復とは異
なり、個人消貹が牽引車に
なることは期待しにくい。
2
4000
1991
4
2000
2001
0
2009
6
-2000
8
10
1991
-4000
2001
-6000
2009
-8000
-10000
12
-24 -20 -16 -12 -8
-3
1
5
9
-24 -20 -16 -12
13 17 21
10
7
8
6
5
6
4
4
3
2
2
-8
-3
1
5
1991
9
13
17
4
5
21
2001
2009
1
0
0
-2
1991
-4
2009
2001
-1
-2
-3
-6
-4
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
2
3
4
5
6
7
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
1
2
3
6
40
7
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:Freddie Mac, MBA, Thomson Reuters
 住宅市場(1)
・ 長期金利の水準に拘わらず、住宅貸出の低迷が続いている。
-新規貸出に続き、借り換えでも、モーゲージ金利が低下することへの反応が鈍くなってきたことが伺われる。
-この間、米国債(30年債)とMBS(30年債)の利回りの逆転が定着し、若干ながら拡大している。
モーゲージ金利と住宅貸出
モーゲージ関連の金利と米国債金利(%)
7.0
4.0 8000
1400
%
1200
6.0
7000
4.5
4.5
6000
1000
5.0
4.0
%
5.0
5.0
5000
800
4.0
5.5 4000
600
3.0
5.5
3000
6.0
6.0
2.0
1.0
0.0
Jun-08
Mortgage (Freddie Mac 30Y)
MBS Fannie Mae 30Y
UST 10Y
UST 30Y
Feb-09
Oct-09
Jun-10
Feb-11
400
2000
6.5
200
0
Jun-08
7.0
Feb-09
Oct-09
Jun-10
Feb-11
Mortgage (Freddie Mac 30Y)
Application Index (MBA)
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6.5
1000
0
Jun-08
7.0
Feb-09
Oct-09
Jun-10
Mortgage (Freddie Mac
Feb-11
30Y)
Refinance Index (MBA)
41
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:S&P, CoreLogic
 住宅市場(2)
・ 全米レベルでみた場合、住宅価格は昨年央から再び下落に転じている。
-ただ、CoreLogicのデータによって丌良資産を除くベースでみると改善の動きが続いており、丌良資産処
理に伴う動きが足を引っ張っていることが示唆される。
-地方別には、バブルの後遺症に悩まされる州(カリフォルニア、フロリダ、アリゾナ、ネバダ)と、中長期的な
丌振に陥っている州(ジョージア、ミシガン、オハイオ、イリノイ)で価格の軟調な状況に改善がみられない。
Case-Shiller指数の推移(Composite 20)
20
Y-on-Y growth rate
Level (RHS)
15
10
220 20%
300
210 15%
200 10%
260
5
190
0
180
-5
170
5%
220
0%
180
-5%
-10%
140
-10
160 -15%
Y-on-Y growth rate
-15
150 -20%
-20
140 -25%
Y-on-Y Growth rate (excl
Distressed)
Jan-04
Jul-05
Jan-07
Jul-08
Jan-10
Case-Shiller指数の推移(Level)
(Negative Equity 貸出の多い州を抽出)
住宅価格指数の推移(CoreLogic)
Jan-04
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100
60
Jan-06
Jul-05
Jan-07
Jul-08
Jan-10
Jan-07
Jan-08
San Francisco
Phoenix
Atlanta
Chicago
Jan-09
Jan-10
Miami
Detroit
Cleveland
Las Vegas
Jan-11
42
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:NAR, CoreLogic, FDIC
 住宅市場(3)
・ 中古住宅販売は、減税措置の終了に伴う急減からいったんは回復したが、直近では再び軟化に転じており、
在庫も再び10ヶ月分に近づく動きとなっている。
・ この間、住宅販売に占める丌良資産比率は、CoreLogicのデータでみても3割を超えてきており、その意味
で丌良資産処理が続いていることが示唆される。米銀では、クレジットカード債権や商工業貸出の償却が進
み、丌良資産比率が顕著に改善してきたにも拘わらず、住宅貸出の比率は高止まったままであり、これらが
さらに住宅価格を圧迫するリスクが残る。
住宅販売に占める丌良資産比率
25%
3,000,000
6.0
2,000,000
4.0
1,000,000
2.0
0
0.0
Existing Home Sales
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Jan-11
Oct-10
Inventory as Month of Supply (RHS)
Jul-10
0%
Apr-10
Jan-11
Jan-10
Jul-10
5%
Oct-09
Jan-10
10%
Jul-09
Jul-09
15%
2007
2008
2009
2010
Jan-09
20%
Residential Mortgage (1-4 family)
Nonfarm Nonresidential Property
C&I
Credit Card
Mar-11
8.0
Sep-10
4,000,000
Mar-10
30%
Sep-09
10.0
Mar-09
5,000,000
Sep-08
35%
Mar-08
12.0
Sep-07
6,000,000
8%
7%
6%
5%
4%
3%
2%
1%
0%
Mar-07
40%
米国銀行の内容別丌良資産比率
Mar-06
14.0
Sep-06
中古住宅販売と業者在庫
7,000,000
43
資料:BEA, BLS, FDIC
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
(参考) 住宅問題が深刻である州の経済状況
・ 住宅問題の深刻さが窺われる州は、総じて失業率も全国平均対比で高く、財政支出の推移でみた財政状況
にも共通して困難な状況が推察される。
9
・ この結果、これらの州に所在する金融機関の丌良資産比率もカリ
フォルニアやイリノイを除いてunderperformしており、収益性も相
対的に低くなっている。
8
7
6
5
4
(左下)失業率<%>、(中央下)州政府支出<前年比%>、
(右上)銀行のNon-performing資産比率<%>、(右下)銀行のROA<%>
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
Jan-06
3
2
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
Jan-07
California
Michigan
Illinois
Jan-08
Jan-09
Florida
Georgia
Nevada
各州のウエイト
(2001年以降の平均)
Jan-10
Jan-11
Arizona
Ohio
Nationwide
1
0
2005
3
2006
2007
California
Michigan
Illinois
2008
2009
Florida
Georgia
Nevada
2010
2011
Arizona
Ohio
Nationwide
2
1
0
-1
2006
California
Michigan
Illinois
2008
Florida
Georgia
Nevada
2010
-2
-3
Arizona
-4
Ohio
Nationwide
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
California
Florida
Arizona
Michigan
Georgia
Ohio
Illinois
Nevada
GDP
13.29%
5.25%
1.77%
2.92%
2.88%
3.48%
4.57%
0.88%
労働力人口
11.79%
5.81%
1.94%
3.32%
3.06%
3.93%
4.33%
0.83%
銀行資産
6.02%
1.22%
0.36%
1.50%
2.27%
13.75%
3.77%
6.36%
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44
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 FRBによる経済見通し
資料:FRB
・2011~2012年について、4月時点に比べ、成長率の上限を0.4%程度下方に、失業率のレンジを0.2%
程度上方に修正した。
FRBによる経済見通し(2011年6月、<>内は同年4月)
・ ただし、これは主として本年前半の減速を
考慮したものであり、今後の景気回復ペー
スの改善というシナリオは維持している。
-日本発の供給制約や商品価格上昇によ
る実質購買力低下等の押し下げ要因が解
消することを期待している。
実質GDP(前年比)
失業率
コアPCE(前年比)
2011年
+2.7%~+2.9%
<+3.1~+3.3%>
8.6%~8.9%
<8.4%~8.7%>
+1.5%~+1.8%
<+1.3%~+1.6%>
2012年
+3.3%~+3.7%
<+3.5~+4.2%>
7.8%~8.2%
<7.6%~7.9%>
+1.4%~+2.0%
<+1.3%~+1.8%>
2013年
+3.5%~+4.2%
<+3.5%~+4.3%>
7.0%~7.5%
<6.8%~7.2%>
+1.4%~+2.0%
<+1.4%~+2.0%>
・特に本年後半については、implicitに高めの成長率見通しを維持している点に注意する必要がある。
-第1四半期の1.9%(年率)成長を前提に、見通しの中心である2.8%の成長を達成するためには、
①第2四半期も前期並み成長(2%)に止まった場合は年後半に平均4.999%(年率)、
②第2四半期に成長率が3%に改善した場合も年後半に平均3.987%(同)、 の成長が必要となる。
(参考) Bernanke議長の議会証言(7/13~14日・冒頭文・抜粋)
景気判断
・... the recent weaker-than-expected economic performance appears to have been the result of several factors that are likely to
be temporary… however, the apparent stabilization in the prices of oil and other commodities should ease the pressure on
household budgets, and vehicle manufacturers report that they are making significant progress in overcoming the parts
shortages and expect to increase production substantially this summer.
・FOMC participants continued to see the economic recovery strengthening over the medium term …Among the headwinds
facing the economy are the slow growth in consumer spending, even after accounting for the effects of higher food and energy
prices; the continuing depressed condition of the housing sector; still-limited access to credit for some households and small
businesses; and fiscal tightening at all levels of government.
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45
April
June
6.0-6.1
6.2-6.3
6.4-6.5
6.6-6.7
6.8-6.9
7.0-7.1
7.2-7.3
7.4-7.5
7.6-7.7
7.8-7.9
8.0-8.1
8.2-8.3
8.4-8.5
8.6-8.7
8.8-8.9
9.0-9.1
9.2-9.3
9.4-9.5
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
January
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
June
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January
8
April
7
6
5
5.0-5.1
4.8-4.9
4.6-4.7
4.4-4.5
0
4.2-4.3
1
4.0-4.1
2
3.8-3.9
2
3.6-3.7
3
3.4-3.5
4
3.2-3.3
3
3.0-3.1
4
2.8-2.9
6
2.6-2.7
June
4
2.4-2.5
5
2.2-2.3
8
2.0-2.1
5.0-5.1
4.8-4.9
4.6-4.7
4.4-4.5
4.2-4.3
0
4.0-4.1
April
3.8-3.9
6
3.6-3.7
April
3.4-3.5
January
3.2-3.3
7
3.0-3.1
January
2.8-2.9
2
2.6-2.7
5
2.4-2.5
June
2.2-2.3
12
2.0-2.1
5.0-5.1
4.8-4.9
4.6-4.7
4.4-4.5
4.2-4.3
4.0-4.1
3.8-3.9
3.6-3.7
3.4-3.5
3.2-3.3
3.0-3.1
2.8-2.9
8
2.6-2.7
10
2.4-2.5
2.2-2.3
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:FRB
GDP成長率(%) (左から2011年~2013年)
6
January
April
June
1
0
失業率(%)(左から2011年~2013年)
9
January
April
June
4
3
2
1
0
46
資料: FRB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 FRBによる物価見通し
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
・ 物価は、2011年は商品価格上昇の効果を反映させたものの、それ以降は4月見通しと大きく変わらない。
-昨年時点でBernanke議長が懸念していたディスインフレはみられないほか、住居貹を除くベースでみると、む
しろインフレが進行していた。
PCE core(%)(左から2011年~2013年)
6
12
January
10
January
January
5
April
April
April
8
June
4
June
6
3
4
2
2
1
0
0
6
June
8
5
6
4
<参考>PCEとCPIの
動き(前年比%)
3
2
2
1
0
PCE
0
-1
-2
Jan-07
4
PCE Core
CPI
CPI Core
CPI less Shelter
-2
PCE Market-based
-4
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Copyright(C) 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
47
資料:BLS, 厚生労働省
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
(参考) 米国の賃金動向
・米国の主要産業別賃金は、労働市場を低迷もあって、上昇率の鈍化傾向が続いている
-逆に言えば、この間のインフレ率上昇に拘わらず、賃金を通じた「二次的効果」が生じていないことを意味する。
この点は、インフレ期待が安定していることや企業の販売価格見通しが抑制された点と整合的である。
-ただ、米国の賃金は上昇率が鈍化しているのであって、日本のように実際に下落してきた訳ではない。この点
では、デフレリスクにはなお距離がある。
米国の主要産業別賃金(前年比:3ヶ月MA・%)
6
日本の主要産業別賃金
(前年比・12ヶ月MA・%)
ISM価格指数
6
100
Total Industry
Manufacturing
Construction
Private Service
5
90
4
80
2
70
4
60
0
50
3
-2
40
2
30
1
20
10
Non-Manufacturing
Price
Jan-02
Jan-04
Jan-06
Jan-08
Jan-10
Jan-07
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All industry
Manufacturing
Construction
Healthcare
-6
0
0
Jan-00
-4
Manufacturing Price
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
-8
Jan-02
Jan-04
Jan-06
Jan-08
Jan-10
48
資料:FRB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 米国の金融環境
・ 実質政策金利は、再び金融危機当時の水準まで低下している。また、マネーサプライの伸びが回復すると同
時に、金融機関によるde-leverageも一巡しつつある。
・ 社債のクレジットスプレッドは高止まりしているように見えるが、過去に比べて5年国債の金利水準が低位に
ある面も強い。また、ドル相場が下落を続けるとともに前年比でみた株価は上昇している。
8
20
Real GDP
6
Nominal Policy Rate
15
Real Policy Rate
4
10
(左)実質GDPと
政策金利<%>
(右)マネーサプライと
金融負債<前年比・%>
2
0
5
0
Financial Liability (NFB)
-2
-5
-4
-10
-6
-15
Financial Liability (FB)
Money Supply (M2)
00/I
02/I
04/I
06/I
08/I
00/I
10/I
8
6
(左)5年国債金利と
社債スプレッド
<%、%ポイント>
(右)株価上昇率と
実効為替レート変化率
<前年比・%>
4
2
0
UST 5Y (Nominal)
-2
08/I
10/I
-20
30
-15
20
-10
10
-5
0
0
-10
5
-20
CB Spraed (AAA)
-40
Jan-04
06/I
40
-30
Jan-02
04/I
-25
UST 5Y (Real)
10
S&P 500 (% change)
15
NEER (% change) <RHS>
CB Spread (BBB)
-4
Jan-00
02/I
50
Jan-06
Jan-08
Jan-10
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-50
Jan-00
20
REER (% Change) <RHS>
25
Jan-02
Jan-04
Jan-06
Jan-08
Jan-10
49
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:FRB
 仮に、本年後半の景気回復が加速しなくても、追加的な金融緩和へのハードルは昨年夏に比べて高い。
否定的な考え方
肯定的な考え方
ディスインフレ
のリスク
・昨年に比べて、ディスインフレ(ないしデフレ)のリスクは
大きく減退している
-こうしたリスクが減退した以上、尐なくともdual
mandateの片方との関係で無理する必要はない
・雇用面ではディスインフレのリスクが残る?
-労働市場の需給改善には相当な時間を要する
-ディスインフレ(ないしデフレ)は、家計の実質債務負担を
増やして、debt-deflationを起こす
-政府の実質債務負担を増加させる点も問題である
インフレの
リスク
・QE2が商品価格の上昇に寄不するのであれば、逆効果
となる面もある
-実質購買力を削ぐことで、個人消貹を抑制しうる
-総需要が弱い中では、商品価格の上昇はむしろ企業
収益の圧迫要因となりうる
・労働市場や総需要の状況を考えると、インフレのリスクは
極めて小さい
-賃金上昇率が低下し、潜在成長率を下回る成長率の下
ではインフレが生ずるとは思えない
・それでも、追加緩和が必要となった場合の選択肢としては、以下のようなものが挙げられている
 QE3:新規資金による国債買入れの再開
 時間軸政策:ゼロ金利政策の維持について、景気見通しのとの関係で期間を設けるか、dual
mandateとの関係で目標を設定する
 長期金利に対する目標設定
 信用緩和:MBS等のリスク資産の買い入れ
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50
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 「時間軸政策」の再検討
・ Bernanke議長は、日本の例も含めて度々言及してきたほか、米国の市場関係者の間では、そもそもQE2よ
りも「時間軸政策」が良かったとの意見が存在する。
-実際、昨年11月や本年6月のFOMCの議事要旨からみて、FOMC内でも「時間軸政策」が選択肢として議論
されていることが推察される。
・ 米国の現状を踏まえつつ「時間軸政策」を巡るpros/consを整理すると以下の通りであって、追加的な緩和
効果が乏しい点などを考慮すると難しい面が多い。
-ただ、有効な政策手段が乏しい中では大切な選択肢であることは事実である。
Pros
Cons
・ monetizationに対する懸念を強く刺激することなく、長期金利 ・ 市場は金融緩和を織り込んでいるため、「時間軸政策」の導
の低下ないし上昇抑制が達成される
入による追加的な緩和効果を発揮することが難しい
-強力なコミットメントは、dual mandateとの関係で設定が難
・ 政策変更を巡る思惑に伴う丌要なボラティリティを回避するこ
しい
とが期待される
-景気回復へのconfidenceが高まれば、金融緩和の期待継続 ・ 「時間軸政策」のメカニズム上、長めの金利に対する影響力
を発揮しにくい
期間が短期化することで、「時間軸政策」の効果が減衰し、自
-重要な政策課題である住宅問題への効果が限定されるこ
然に長期金利が上昇していく(いわゆる「自動解除装置」)
とを意味する
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51
資料:FRB
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
 QE3や時間軸政策以外の選択肢
否定的な考え方
肯定的な考え方
長期金利に
対する目標
の設定
・実際には目標を達成することが難しく、結果的に泥沼に
落ち込むリスクが高い
-また、米国の財政赤字の削減が進まない場合には、
monetizationへの道を拓くリスクが高い
-因みに、QE2実施前(昨年10月15日)のFOMC(ビデ
オ会議)の議事要旨でも、丌適切に大量な証券買入れに
追い込まれるリスクが指摘されている。
・Bernanke議長は、かつて、選択肢の一つであると指摘
-FRBが本当に巨額の国債買入れを実施すれば、長期金
利のコントロールは可能という考え方
-長期金利を抑制できれば、住宅価格の下支えも含めて、
金融緩和効果を強力に浸透させうる
信用緩和
・議会は、Bear SternsやAIGに対するケースを踏まえ、
FRBによる信用緩和の実施に極めて強く否定的である
-実際、Dodd-Frank法案の中で、FRBによるLLRには多
くの規制が課されている
-FRBは、2010年2月には早々に信用緩和を完了せざ
るを得なかった
・住宅貸出の金利感応度が低下しているため、前回の
MBS買い入れのような効果は期待できない
・住宅市場の問題解決が重要な政策課題であれば、この
点に直接対応することは有用であるはず
-前回のMBS買入れは、モーゲージ金利の低下を通じた
効果を発揮した
-銀行が実際には貸出に慎重であることを考えると、
credit channelのバイパスは有効であるはず
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52
2. 米国の景気動向とFRBの政策判断
資料:FRB
(参考) FOMC議事要旨(6/21-22日会合分・抜粋)
追加緩和に
ついて
・…members agreed that it was appropriate to maintain the Committee's current policy stance and accumulate
further information regarding the outlook for growth and inflation before deciding on the next policy step.
・…a few members noted that, depending on how economic conditions evolve, the Committee might have to
consider providing additional monetary policy stimulus, especially if economic growth remained too slow to
meaningfully reduce the unemployment rate in the medium run…a few members viewed the increase in inflation
risks as suggesting that economic conditions might well evolve in a way that would warrant the Committee taking
steps to begin removing policy accommodation sooner than currently anticipated.
(参考) Bernanke議長議会証言(7/13-14日・冒頭説明・抜粋)
QE2の効果
・…boosted the prices of such securities and caused longer-term Treasury yields to be lower than they would have
been otherwise…induced private investors to acquire other assets that serve as substitutes for Treasury securities
in the financial marketplace, such as corporate bonds and mortgage-backed securities.
・…the second round of asset purchases probably lowered longer-term interest rates approximately 10 to 30 basis
points…
a reduction in longer-term interest rates…would be roughly equivalent…to a 40 to 120 basis point reduction in the
federal funds rate.
追加緩和の
オプション
・…One option would be to provide more explicit guidance about the period over which the federal funds rate and
the balance sheet would remain at their current levels.
・Another approach would be to initiate more securities purchases or to increase the average maturity of our
holdings.
・could also reduce the 25 basis point rate of interest it pays to banks on their reserves,
・…our experience with these policies remains relatively limited, and employing them would entail potential risks
and costs. However, prudent planning requires that we evaluate the efficacy of these and other potential
alternatives for deploying additional stimulus if conditions warrant.
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53
3. 想定される論点
 こうした状況を踏まえると、今回の会合で取り上げる論点として以下のようなものが考えられる。
QE2のレビュー
・FRBによる国債買入れは市場のどのような領域にどのような影響をもたらしたか
-こうした影響は当時の局面に固有なものか、それともある程度一般的に期待しうるか
・(市場への影響を含めて)どのような波及メカニズムによって実体経済に影響をもたらしたか
-それらはFRBが想定していたものと同様か、違うとすればどの部分か
・FRBによる国債買入れによる副作用としてどのようなものがあるか
-資産価格の歪みなど金融システム面の問題はあるか
-商品価格との関係をどう理解すれば良いか
追加緩和の
あり方
・追加緩和に踏み切る場合に満たすべき条件は何か
-景気、物価、金融システムの各々の面での条件は何か
-追加緩和に伴うリスクとしてどのようなものを想定すべきか
・追加緩和のための政策手段をどう考えるか
-Bernanke議長が提示したり、市場が想定したりしている各政策手段のpro/conはどのようになるか
-政策手段の選択に際して最も重視すべき要素は何か
日本への影響
・QE2の実施は、日本の景気や市場にどのような影響をもたらしたか
・米国が追加緩和を行う場合の日本の景気や市場への影響をどうみておけば良いか
-特に、円相場への影響や政策対応についてどう考えれば良いか
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54
(「金融市場パネル」の資料:ホームページの掲載場所)
・ 日本語版: http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/kinyu_keizai.html
・ 英語版: http://www.nri.co.jp/english/opinion/index.html
2011年8月5日
株式会社野村総合研究所
金融ITイノベーション研究部
主席研究員
井上 哲也
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
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金融市場パネル(Financial Markets Panel)
第17回会合 追加資料
為替市場と日銀の追加緩和
2011年8月5日
株式会社野村総合研究所
金融ITイノベーション研究部
主席研究員
井上 哲也
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
資料:日本銀行
1. 日銀による追加緩和
 日銀は、今回の金融政策決定会合を1日開催に短縮し、8月4日に資産買い入れ基金の10兆円増額からな
る追加緩和策を決定した。その理由として、国内の景気回復メカニズムは維持されているが、海外情勢の丌
安定化とこれに伴う「為替・金融資本市場」の変動が経済活動にマイナスの影響を不える可能性を挙げてい
る。この間、物価安定の実現にはなお時間を要すると指摘している。
(参考) 声明文(8/4日)
景気の展望
・…東日本大震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている...生産活動が回復していくにつれ、
輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していく
・…見通しを巡る丌確実性は高く、このところ、景気の下振れリスクにより留意すべき情勢となっている。
・…米国においては…財政健全化を巡る懸念は払拭されておらず、最近では景気の先行きに関する見方も慎重化して
いる…欧州周縁国のソブリン・リスク問題は、全体としてみれば、依然として緊張した状態が続いている…新興国・資
源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお丌透明感が高い。
・…海外情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナ
スの影響を不える可能性がある。
物価の展望
・…当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現
までにはなお時間を要するとみられる。
政策判断
・…景気・物価情勢を検討したうえで、金融緩和を一段と強化し…震災からの立ち直り局面から物価安定のもとでの
持続的成長経路への移行を、より確かなものとすることが必要と判断した。
(参考) 総裁談話(8/4日)
為替介入
・日本銀行は、為替市場における財務省の行動が、為替相場の安定的な形成に寄不することを強く期待している。
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1
資料:日本銀行
1. 日銀による追加緩和
 資産買入れの概要(赤字が3月の増額分、青字が今回の増額分)
資産
長期国債
方法
レート
適格条件
残存期間
上限金額
実績
(7月末)
オペ先から買入れ
利回り入札 (下 ---
限 0.1%)
1~2年
1.5兆円
→2.0兆円
→4.0兆円
13051億円
国庨短期証券 オペ先から買入れ
利回り入札 (下 ---
限 0.1%)
---
2.0兆円
→3.0兆円
→4.5兆円
25043億円
CPおよび
ABCP
オペ先から買入れ
利回り入札 (下 ・CP: a-2格以上
限 0.1%)
・ABCP: a-1格
・発行体1先当たり1000億円以
下
---
0.5兆円
→2.0兆円
→2.1兆円
15803億円
社債等
オペ先から買入れ
利回り入札 (下 ・BBB格以上 (丌動産投資法人
限 0.1%)
が発行する社債はAA格以上)
1~2 年
0.5兆円
→2.0兆円
→2.9兆円
7981億円
ETF
ETFの買入れを行う信
託を設定
---
(分散化のためのガイドラインを導 ---
入)
0.45兆円
→0.90兆円
→1.40兆円
3406億円
J-REIT
J-REITの買入れを行う ---
信託を設定
(分散化のためのガイドラインを導 ---
入)
0.05兆円
→0.1兆円
→0.11兆円
227億円
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2
2
1. 日銀による追加緩和
資料:日本銀行
 日銀によるオペ運営
・ 日々の調節手段としては、共通担保オペ(入札方式)
を活用している。 ただ、震災直後には、現先オペによ
る資金供給を一時的に復活させた。
短期オペの種類別残高(億円)
300000
250000
・ 包括緩和の枠組みの一環としてのより長い期間の資
金供給は共通担保オペ(固定金利)を用いている。最
初に3ヶ月物として導入された後、昨年9月からは6ヶ
月物も加わっている。
200000
150000
100000
50000
0
Jan-09
Jul-09
国債買現先
Jan-10
CP買現先
Jul-10
Jan-11
Jul-11
・ 短期のオペについては札割れが常態化しているほか、
資金供給量として主力である共通担保オペ(固定金
利:3ヶ月物)の応札倍率についても、震災後の丌安
定性が解消される中で一段と低下している。
共通担保オペ(金利入札)
政策措置として導入されてきたオペの種類別残高(億円)
350000
共通担保オペ<固定金利・3ヶ月>の応札倍率(倍)
25000
9
8
300000
20000
250000
7
15000
200000
150000
10000
100000
6
5
4
5000
50000
3
0
Jan-09
Jul-09
Jan-10
Jul-10
Jan-11
企業支援特別オペ
ドル資金オペ
共通担保オペ(固定金利)
買入れ(右軸)
社債買入れ(右軸)
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0
Jul-11
2
1
12/10 3/23
5/18
7/8
8/30 10/21 12/13
2/2
3/28
5/23
7/13
3
1. 日銀による追加緩和
資料:日本銀行
 超過準備とバランスシート
・ 日銀による資金供給は震災後に大幅に増加し、3月下旬には約42兆円に達した。その後は予備的な資金
需要の減退などによって漸減傾向を辿り、6月中旬には26兆円程度まで低下していた。7月にかけての積み
期間では30兆円前後で推移した。
-約30兆円という水準は、金融危機が深刻化した2008年秋の4倍近い水準であるほか、前回の「量的緩
和」の中で2003年末にほぼ匹敵する水準になっていた。これは主として共通担保オペ(固定金利)によるも
のである。
当座預金と準備預金(億円)
資産の構成(億円)
REIT
2,000,000
450,000
億円
当座預金
400,000
ETF
超過準備
社債
CP
350,000
1,500,000
ABS
金銭信託
300,000
その他貸付
250,000
外国為替
1,000,000
企業金融支援特別オペ
200,000
共通担保オペ
レポ
150,000
手形
500,000
100,000
長期国債
TB
50,000
金および現金
0
10/1
11/5
12/10
1/14
2/18
3/25
4/29
6/3
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7/8
0
2004年1月
その他
2005年7月
2007年1月
2008年7月
2010年1月
2011年7月
4
2 . 為替市場と為替介入
資料:Thomson Reuters
 為替市場(1)
・ 今回の円高は5月以降徐々に進行してきた点が特徴であり、ボラティリティも、ユーロ円には上下動があったが、
直近までは比較的安定していた。また、頻繁に観測される円相場と株価の逆相関や、円相場とVIX指数の純相
関も従来ほどには明確でなかった。
(上左)ドル円とユーロ円
(上右)同implied volatility
(下左)ドル円と日経225指数
(下右)ドル円とVIX指数
86
126
85
124
84
122
83
120
82
118
81
116
80
114
79
112
USD/JPY
EUR/JPY
78
77
110
RHS
108
76
3/1
86
106
3/22
4/12
5/3
5/24
6/14
7/5
20
USD/JPY
EUR/JPY
18
16
14
12
10
8
6
3/1
11000
24
85
10500
22
84
10000
83
9500
82
9000
81
8500
80
8000
79
7500
78
77
Nikkei225(RHS
3/1 3/22 4/12 5/3
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5/24 6/14
7/5
4/12
5/3
5/24
6/14
7/5
7/26
7/26
32
30
USD/JPY
20
VIX
18
28
RHS
26
16
24
14
22
12
20
7000
10
18
6500
8
16
6000
6
USD/JPY
76
3/22
7/26
14
3/1
3/22
4/12
5/3
5/24
6/14
7/5
7/26
5
2 . 為替市場と為替介入
資料:Thomson Reuters
 為替市場(2)
・ ドル円と2年国債の金利差は、引き続き強い相関を示している。この間、ドイツ国債の利回りの急低下は、欧州
情勢の丌安定化に強い影響を受けている。一方、Liborでみた金利差については、ドル円、ユーロ円ともに相関
関係が引き続き明確ではない。
100
140
1
135
USD/JPY
95
0.8
90
0.4
80
0.2
0
Apr-10
Jul-10
Oct-10
Jan-11
Apr-11
(下左)ドル円と3ヶ月Libor
Jul-11
100
0.4
USD/JPY
95
USDLibor3MJPYLibor3M (RHS)
90
0.2
0.1
80
0
-0.1
Apr-10
Jul-10
Oct-10
Jan-11
Apr-11
Jul-11
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(上左)ユーロ円と2年国債
0.3 (下左)ユーロ円と3ヶ月Libor
85
75
Jan-10
(上左)ドル円と2年国債
1.4
BUNDS2Y-JGB2Y
(RHS)
125
0.6
85
1.6
EUR/JPY
130
UST2Y-JGB2Y (RHS)
75
Jan-10
1.8
1.2
120
1
115
0.8
110
0.6
105
0.4
100
Jan-10
0.2
Apr-10
140
135
130
Jul-10
Oct-10
Jan-11
Apr-11
Jul-11
1.6
EUR/JPY
1.4
Euribor3MJPYLibor3M (RHS)
1.2
125
1
120
0.8
115
0.6
110
0.4
105
0.2
100
Jan-10 Apr-10
0
Jul-10
Oct-10
Jan-11
Apr-11
Jul-11
6
2 . 為替市場と為替介入
資料:日銀、財務省、BOE
 実効レートと為替介入
(左)円の実効レート(実質と名目)、(右):円の実質実効レートと為替介入額、(右下)主要通貨の名目実効レート<2007年1月=100>
70
160
80
150
NEER
70000
為替介入額
米ドル円
60000
REER
140
90
50000
130
100
120
40000
110
110
30000
100
120
90
20000
130
80
10000
140
70
60
Jan-91
Jan-95
Jan-99
Jan-03
Jan-07
Jan-11
150
1991
0
1996
2001
2006
160
・ 円の実効レートは昨年夏以降に上昇した後、強
含みで推移していた。今回の為替介入時の実
質実効レートは、昨年秋の介入時や2003年の
大量介入時とほぼ同水準であったとみられる。
ーなお、金融危機が顕在化した2007年からの
対比で名目実効レートを見ると、スイスフランが
円に急速にcatch upしていることがわかる。
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150
JPY
USD
140
EUR
130
CHF
120
GBP
110
100
90
80
70
Jan-07
Oct-07
Jul-08
Apr-09
Jan-10
Oct-10
Jul-11
7
2 . 為替市場と為替介入
資料:財務省
(参考) 為替介入に関する声明
G7財務相・中央銀行総裁会議声明(2011年3月18日・抜粋)
In response to recent movements in the exchange rate of the yen associated with the tragic events in Japan, and at
the request of the Japanese authorities, the authorities of the United States, the United Kingdom, Canada, and the
European Central Bank will join with Japan, on March 18, 2011, in concerted intervention in exchange markets. As we
have long stated, excess volatility and disorderly movements in exchange rates have adverse implications for economic
and financial stability. We will monitor exchange markets closely and will cooperate as appropriate.
<参考> G7財務相・中央銀行総裁会議声明(2008年10月27日)
We reaffirm our shared interest in a strong and stable international financial system. We are concerned about the recent
excessive volatility in the exchange rate of the yen and its possible adverse implications for economic and financial
stability. We continue to monitor markets closely, and cooperate as appropriate.
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8
(「金融市場パネル」の資料:ホームページの掲載場所)
・ 日本語版: http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/kinyu_keizai.html
・ 英語版: http://www.nri.co.jp/english/opinion/index.html
2011年8月5日
株式会社野村総合研究所
金融ITイノベーション研究部
主席研究員
井上 哲也
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
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