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規格や技術の玉石研究所

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規格や技術の玉石研究所
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最 新 型 振 動 パ イ ル ハ ン マ の 紹 介
────────────────────────────────────────────────────
《
1 . 概要
》
バイブロハンマ各シリーズは、鋼矢板・ハット形鋼矢板・H 形鋼杭・鋼管杭・鋼管矢板・H
形鋼矢板・連結鋼管矢板・コンクリート矢板等の既製杭の打込み・引抜き施工のために、高周
波型から低周波型まで多様な機種・規格の構成により各種地盤条件に対応できる。
原動機は油圧モータと電動モータの2種があり、バイブロハンマの用途目的に応じて使い分
けられる。
最近では油圧モータを駆動源とする油圧式バイブロハンマの普及率が向上し全稼動台数の過
半を占め,油圧式・電動式ともに、起動・停止時のクレーンおよび地盤との共振を解消して運転
中も偏心モーメントを任意に変換して、振幅、振動加速度、起振力等の振動エネルギーを可変
できるタイプが主流となっている。
《
(1)
2 . ゼロ起動
ゼロ 起動・
起動 ・ ゼロ停止型
ゼロ 停止型バイブロハンマ
停止型 バイブロハンマ
》
技術の概要
最新の技術であるゼロ起動・ゼロ停止機構を採用して起動・停止時の共振振動の発生を解消
し、併せて運転中の振幅調整をも可能にした振動式杭打抜き機械をゼロバイブロハンマシリー
ズと総称する。
このシリーズは打込み引抜き対象となる杭や矢板の規格、および現場周囲の環境への配慮の
度合い等から次のように分類される。都市土木に用いる油圧式可変超高周波型(振動数0~
60Hz)、操作性と整備性に優れる電動式可変モーメント型(振動数 16.3~20Hz)、鋼管杭・鋼管
矢板の打ち込みを主目的とする電動式低周波型(振動数 11.7~13.3Hz)である。これら3機種の
1
共通点は、発振方式が遠心力を利用する「振り子式」にあり、バイブロハンマの起振機内で半円
状の偏心重錘を高速で回転させて、左右方向の振動を打ち消し、上下方向の振動力だけを発生
させることを原理とする。従来この方式では、起動・停止時にクレーンブームや地盤と共振し
て発生する振動・騒音等の2次公害が欠点とされていたが、ゼロ起動・ゼロ停止機構を装備す
ることでこれらの問題を解消した。
起動時
一軸上で固定偏心体と可変
偏心体(振り子)が180
度相対して回転を開始(ゼ
ロ起動)。
所定の振動数に達するまで
機械本体は全く振動しませ
ん。
運転時
(最大能力)
地盤との共振域を超えた振動数に達したところで、
自動的に可動偏心体を変換させ、振動振幅を発生さ
せます。運転中でもダイヤル操作で、偏心体を任意
に可変し、振動エネルギーをゼロから最大まで自由
自在に調整できます。
図 1.1-1
(2)
運転時
(自在変化)
停止時
起動時と同じく可変偏心体
(振り子)を180度相対
させ、振幅をゼロにして停
止させる(ゼロ停止)。
地盤やブームに共振するこ
となく、すみやかに停止で
きます。
ゼロ起動・ゼロ停止の原理
油圧式可変超高周波型 SR シリーズ
SR シリーズは国土交通省独立行政法人土木研究所の超高周波振動理論に基づくバイブロハ
ンマにゼロ起動・ゼロ停止機構を装備し、起動・停止時の共振現象を解消した振り子式超高周
波杭打抜き機である。これにより従来型の超高周波杭打抜き機を上回る能力と大幅な機械騒音
の低減を実現した。また本機は、30 型、45 型の2機種から構成され、ともに油圧駆動の特性を
活かし振動周波数を0~60 Hz の範囲で任意に可変できる。現在 45 型の上位機種である 65
型を開発中である。
2
①
原理と構造
(a) 本機は油圧駆動源(エンジン式パワーユニット)より送られた圧油により、振幅ゼロ(偏心体が左右
対象の状態)で起動し、偏心体の回転数が設定値になった時、偏心体の形状を半円状に可変させる。これ
により自動的に設定振幅と設定振動数が確保される。
(b)
停止時は振幅が自動的にゼロ(偏心体が瞬時に左右対称の形状に変化)になり、バイブロハンマ
が停止となる。
(c)
運転中に偏心モーメントの大きさを任意に可変し、振幅の大きさを調整することができる。
(d)
圧油の流量調整により、偏心体の振動数を最大 60Hz まで任意に可変できる。
図 1.1-2
図 1.1-3
SR-45 による鋼矢板施工状況
SR-45 によるハット形鋼矢板打設
②
特長
(a)
普通・広幅鋼矢板や H 形鋼杭をはじめ、専用チャックにより鋼管杭・鋼管矢板、ハット形鋼矢板、
H 形鋼矢板・連結鋼管矢板、コンクリート矢板の施工も可能である。
(b)
発生振幅を運転中にゼロから最大まで無段階の調整が可能である。
(c)
起動と停止時に自動的にゼロ振幅となり共振振動が発生しない。
(d)
振動数を任意に設定できるので、杭や矢板の規格と地盤条件に適した低振動施工が可能である。
(e)
遠心力発振機構(振り子式)の特性により、振動数上昇による振幅減少がなく、引抜き作業にも有
効である。
(f)
積層カウンターウェイトと超高周波微振動の相乗効果により、岩盤や玉石混じり砂礫層において
は同等程度の起振力を持つ電動バイブロハンマよりも大きな打込み力を示す。
(g)
ベースマシンへの振動影響が無いため、ラフテレーンクレーンでの施工が可能である。
(h)
駆動源であるエンジン式油圧ユニットには第二次排出ガス規制対応エンジンを搭載している。
3
(i)
油圧ユニットには各種モニタが配置されており、機械トラブルの防止および早期発見に有効であ
る。
③ 使用の現状
本機は都市部を中心に、これまでバイブロハンマが使用困難であった近接施工、夜間施工等
をはじめ長尺の矢板や杭の打込みにも用いられバイブロハンマの施工領域を大幅に拡大し建
設コスト縮減に貢献している。
(3)
電動式可変モーメント型 VR シリーズ
①
原理と構造
(a)
ZERO VR シリーズは最も経済性と効率性に優れる電動式普通型バイブロハンマに新機構の偏心体
を採用し、起振機外部取付け型ハイドロメカ方式の偏心モーメント変換装置を装備し起動・停止時に共振
振動を発生しないゼロ起動・ゼロ停止型バイブロハンマである。
(b)
圧油によるモーメント変換装置は運転中にも任意に偏心モーメントの大きさを変換することがで
きる。
図 1.1-4
ZERO-80VR による鋼矢板打設
図 1.1-5
②
ZERO-120VR
図 1.1-6
ZERO-160VR
特長
(a) 普通・広幅鋼矢板や H 形鋼杭から専用チャック装着により鋼管杭・鋼管矢板、ハット形鋼矢板、コ
ンクリート矢板の打ち込み、引抜き施工に適用できる。
(b)
ゼロ起動・ゼロ停止機構の採用により、これまでバイブロハンマの欠点とされていた起動・停止
4
時の共振振動が解消された。
(c)
自在可変モーメント式のため、運転中の振幅調整が可能となり長尺鋼矢板のような比較的たわみ
やすい材料でも適切な打ち込みエネルギーを与えることができるため、たわみの発生を最小限に抑え継手
部の嵌合抵抗を低減して効率的な施工が可能である。
(d)
打ち止め時の天端合わせが容易かつ確実にできる。
(e)
モーメント変換装置が本体外側に配置されておりメンテナンスが容易である。
(f)
キャブタイヤの本体取付け部は、特殊緩衝方式を採用し断線の少ない構造となっている。
(4)
電動式可変モーメント型 MR シリーズ
① 原理と構造
(a)
低周波型の大型バイブロハンマで ZERO VR シリーズと同様に操作ユニットから起振機本体のモー
メント変換装置に送られた圧油により偏心体の形状を変化させる。
起動時はゼロ振幅で起動し、地盤との共振域を超えた振動数に達した時点で自動的に偏心体を変化させ
振動振幅を発生させる。
(b)
停止時は自動的にゼロ振幅となり、バイブロハンマが停止する。運転中の偏心モーメント変換も
任意に行える。
(c)
機械式に連動させて同調運転すると、総出力 480kW の大能力の打ち込み力が確保される。
②
特長
(a) 鋼管杭・鋼管矢板の打ち込み・引抜きおよび連結鋼管矢板等の大質量鋼杭の打ち込み専用機であ
る。
(b)
起動・停止時の共振振動が解消され、地盤やベースマシンとの共振・共鳴が大幅に低減された。
(c)
緩衝装置一体型で打設中の騒音を大幅に低減できる。
(d)
高周波域の振動数採用により、運転中の振動・騒音対策に貢献。施工中の振幅調整により長尺の
鋼管杭・鋼管矢板施工においても容易な芯出しと打込み精度の調整が可能である。
(e)
起動・停止時の過負荷が解消され、省エネルギー施工ができる。
(f)
2台を機械的に連動させることにより大口径・長尺杭の施工が可能である。
5
③
使用の現状
自在可変偏心モーメント機構の採用により、これまで不可能であった都市部の工事に採用さ
れ始め、電動バイブロハンマの新しい標準機として各方面から注目を集めている。
図 1.1-7
(5)
(a)
ZERO-320MR
図 1.1-8
ZERO-200MR
図 1.1-9
ZERO-200MR 2 台連動
油圧ショベル装着式 SR-04P 型および HR-07 型
ゼロ起動・ゼロ停止機構の採用により、起動・停止時の共振振動が解消され、民家に近接した施
工条件に最適な機械である。
(b)
40Hz の高い振動数の採用と振動振幅を任意に可変することで、無振動に近い施工が可能である。
(c)
SR-04P 型は宅盤用コンクリート杭の打ち込み
に使用され、高周波振動パーカッションとオーガ併用により宅盤用基礎杭を良質な支持層に打設可能であ
る。
(d)
HR-07 型は LHV-07 と同等の杭打ち能力を持つ機械である。
図 1.1-10
HR-07
図 1.1-11
LHV-04
6
図 1.1-12
SR-04P
《
3.
従来技術による
従来技術 によるバイブロハンマ
による バイブロハンマ
(1)
油圧ショベル装着式 LHV シリーズ
①
概要
》
油圧ショベル装着式は、ベースマシンに油圧ショベルを利用し、動力源にはショベルの油圧
力を用いてクレーンや発動発電機を必要としない小型・軽量・高能力のバイブロハンマであり、
主として軽量鋼矢板や比較的軽量の鋼矢板、H 形鋼杭の打ち込み引抜きに用いる。
025~09 型までの4規格から構成され、各規格とも 0.25~0.9m3 級油圧ショベルのアーム先端
にエクステンションを介して取り付けられ、ブーム・アームの押圧力を併せた打ち込み能力は
非常に高く、機動性と経済性に優れる。
近年は、油圧ユニットをエクステンション内に格納して軽量化と配管工事を簡素化し、油圧
ショベルの小型化に対応したものが普及している。
(2)
油圧クレーン装着式 THV シリーズ
THV 型はラフテレーンクレーンや油圧式クローラクレーンの油圧を動力とする油圧バイブロ
ハンマである。THV-35 と 45 の2機種からなり、25t 吊級以上のクレーンに装着する。
LHV シリーズと同様に発電機が不要であり、施工性に優れ、かつ狭隘な現場内でも使用が可
能である。
また、良好な機動性と共に油圧駆動の特性を活かして振動周波数を任意に調整できることか
ら振動対策機としても効果を発揮する。
7
(3)
電動式普通型 FM・CM シリーズ
振動周波数が 16.0~19.2Hz 程度のものを普通型バイブロハンマに分類される。普通型バイブ
ロハンマは、簡便な機械構成と経済性・能力に優れたバイブロハンマとして汎用的に使用され
ているが、現在は受注生産機種となっている。
FM 型は電動機の定格出力が 45kW から 60kW(220V・60Hz)の2機種からなり偏心モーメントが
固定式である。CM 型は 90kW から 120kW(440V・60Hz)の2機種で偏心モーメントが手動による可
変式である。
4機種から構成される電動式普通型は、杭や矢板と地盤条件の変化に広く対応できる。
現在は、ゼロ起動・ゼロ停止機構による可変モーメント機構を装備した ZERO-VR が普通型バイ
ブロハンマの主流となっている。
(4)
電動式低周波型
振動周波数が 9.3~11.3Hz 程度のものを低周波型バイブロハンマとして分類する。
低周波型バイブロハンマは大きな偏心モーメントを有し、大振幅・大起振力を発生する大型
機で大径・長尺の鋼管杭や鋼管矢板のような大質量鋼杭の打ち込み・引抜き施工に適している。
また、機械式に連動させて同調運転すると、より一層の大能力の打ち込み力が確保され、総
出力 480kW、総質量 50t におよぶ巨大なものも実用に供せられている。
《
(1)
4.
バイブロハンマの
バイブロハンマ の 応用施工法
》
プレハブ鋼矢板セル工法
直線鋼矢板をあらかじめ円形のセル体に組立て、5~6枚を1台のバイブロハンマが受け持
ち 60~120kW 級バイブロハンマ数十台で一度に打込む施工法である。
8
(2)
根入れ式鋼板セル工法
現場製作ヤードで製作された円筒形鋼板を打込む工法で、150kW 級バイブロハンマを必要に
応じて数台から数十台まで機械的に同調運転させ超大径のセルを海底に根入れさせる。
図 1.1-13
(3)
①
バイブロハンマ VM2-25000A×6 台連動により鋼板セルを打設
起重機船 1,400 t吊
油圧バイブロハンマ CHV 工法
概要
CHV 工法はクローラ式専用ベースマシンに桁下施工用油圧バイブロハンマを装着し、空頭制
限のある狭隘地での作業条件のもとで自由度の高い杭打ち作業を行う施工法である。
CHV200 と 300 の2機種からなり、センターホール型チャッキング方式を採用し、杭を任意の
位置でチャッキングが可能である。また、ベースマシンである油圧ショベルの最大ダンプ高さ
やバイブロハンマ本体の高さに制約なく適用杭長を設定でき、桁下や架線下の制限高さ内で最
長の杭打設が可能である。現在、油圧ショベル 1.9 m3クラスに装着可能な CHV-400 を開発中で
ある。
②
特長
(a)
ほぼ作業有効高さに等しい長さの杭の施工が可能である。
(b)
油圧ショベル装着により、機動性とに優れ狭隘地での施工性に優れる。
(c)
圧入機では施工が困難な H 形鋼杭も容易に施工できる。
(d)
高周波微振動の採用により低振動施工が可能な低公害型建設機械で、特に CHV-200Ⅲ型は超低騒
音型機械の認定を受けている。
(e)
エクステンションを介すことでベースマシンのアーム押し込み力を確実に伝達でき、高打ち込み
9
力を発揮する。
(f)
旋回装置により±90 度の旋回が可能であり、継手部の嵌合を容易に行うことができる。
図 1.1-14
(4)
CHV-300 による桁下での H 形鋼杭打設
斜杭打ち込み施工法
バイブロハンマの持つ施工性と経済性を斜杭施工にも取り入れ、バイブロハンマの振動を緩
衝する特殊装置と本体潤滑技術の改良により 20 度を超える斜杭の施工が可能となった。
(5)
地盤改良工法
陸上・海上の軟弱地盤改良のためのサンドコンパクション工法やサンドドレーン工法での先
閉じケーシングの打ち込み、引抜きにバイブロハンマが利用されている。
図 1.1-15
地盤改良工法
専用バイブロハンマ
図 1.1-16
ZERO-320MR(240kW)によるリーダ装着型
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斜杭打設状況
(6)
ウォータージェットカッタ併用工法
バイブロハンマにウォータージェットカッタを併用させる複合工法である。
岩盤・砂礫地盤を含む硬質地盤に既製杭を打込む工法であり、低振動・低騒音施工が可能で
あり、優れた経済性と施工性が評価され汎用的にもちいられている。
図 1.1-17
ウォータージェットカッタ
CJ-330E(243kW)複数台連動、噴射テスト
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