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配布資料(PDFファイル) - 茨城大学工学部 都市システム工学科
地震で起きる液状化 2006/8/25(Friday) 茨城大学工学部都市システム工学科 防災・環境地盤工学研究室 1.液状化とは何でしょうか? 地震時、地盤から突然『砂』や『泥水』が噴出して地盤が陥没や沈下したりする現象を『液状化』とい 言います。その結果、地面の上に建設されていた構造物が倒壊したり、破損する被害が発生します。 地震発生 ①砂粒子が緩く堆積 している。 ②地下水が砂の隙間 を満たしている。 地震中 ④発生した水圧で砂 粒子が浮く。 ⑤泥水状になる。 地震後 ⑥地面の弱い部分か ら泥水が噴き出す。 ⑦地震停止後砂粒子 が沈降 して密にな る。それに伴って地 盤沈下が生じる。 上の図は、液状化が起きることによって地盤や建物に被害を与える様子を示したものです。 2.液状化によって生じるインフラの被害 非常に地震の多い日本ではこれまでた びたび液状化発生による被害に悩まされ てきました。特に私たちの生活を支えて いるインフラストラクチュア (Infra-structure, 道路や鉄道などの 社会基盤施設のこと)や建物構造物の倒 壊など大きな被害を生じてきました。こ のような液状化による地盤と構造物の災 害をできるだけ小さくする努力が必要で す。なぜなら、私たちの生活基盤のすべ ては地盤に支えられているからです。 落橋の被害 (1995 年兵庫県南部地震) 盛土の崩壊 (2004 年新潟県中越地震) 新幹線の脱線 (2004 年新潟中越地震) 1 アパートの倒壊 (1964 年新潟地震) マンホールの浮上 (1995 年兵庫県南部地震) 3.“エッキー君”による液状化の再現実験~マンホールは、こうして浮き上がる~ ペットボトルを用いて簡単な液状化の 実験を行います。ペットボトルに振動を 与えることは地震時の揺れを模擬してい ます。実験前は砂の上には何もありませ んが、指で振動を与えた後は砂の中に埋 めたマップピンが浮上していることが分 かります。これはマンホールなど地下に 埋設された構造物の浮上の様子を再現し ています。 4.液状化を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか? 前に説明しましたように、液状化発生によって地盤の変状・破壊、構造物の倒壊・破壊といった被害が 考えられます。この大きな原因として地盤内に発生する水圧が挙げられます。そこで、私たちの研究室で は、古タイヤを細かくしたタイヤチップスを用いたタイヤチップスドレーン工法という液状化対策を研究 しています。タイヤチップスは砂よりも透水性が高いため地震時に発生した過剰な間隙水圧を地盤内から 逃がす働きがあります。そのため、液状化発生に伴う地盤の変状を軽減させることが可能となるのです。 タイヤチップスドレーン敷設した 傾斜砂地盤の変状低減の様子 傾斜砂地盤の変状低減対応策 タイヤチップスドレーン 大きく変位して いる 緩衝材 40cm 20cm 10cm 大きく沈 下してい る 91cm 100cm (a)対策なし タイヤチップスドレーン 緩衝材 砂 20cm 大きな変位 なし 傾斜角 7.5° 模型実験の模式図 衝撃による振動を与えたときの砂地盤の様子 このような小さなスケールでの実験を更に 大きくして、実際の港湾構造物が地震のと きに壊れないようにするために、このよう な方法が有効かどうかを確かめるための大 掛かりな実験を国の研究機関と共同で実施 中です。これが実用化されますと、古タイ ヤという廃棄物がリサイクル材料として有 効に利用できることになり、環境への負荷 を減らすとともに、コスト(経費)の節約 に貢献できるようになります。 リサイクル材料を利用した耐震補強工法 液状化防止 クッション材 (ゴムチップ) ゴムチップドレーン 海面 構造物 ほとんど変 化していな い (b) 対策あり (17年1月18日NHKで放映された) 荷重軽減 大きく浮き 上がってい る 裏込め土 マウンド 海底地盤 タイヤチップスドレーン工法の港湾構造物への応用 2 5.液状化の危険な地域を示す電子地図~地理情報システム(GIS)~ 地理情報システム(GIS)って聞いたことがありますか。コンピューター上でいろいろなデータを加 えたり、重ねたり、加工したりして、いろいろな目的に使うことのできる電子地図のことを言います。G ISとは、Geographical Information System の略です。広い地域の環境問題、災害問題などどこからど のような対策を立てていったらよいかを示すことができるたいへん有用な道具です。 液状化問題のひとつの解決方法として、茨城大学工学部防災・環境研究室では、地下水位の上昇に伴っ て地震時に液状化しやすい地域がどのように変化するかを表示する研究を行なっています。 地理情報システム(GIS)の概要 GIS(Geographic Information System,地理情報システム) 異なる種類の空間的なデータを統合して管理及び解析するツール 実世界の実情を数値データで表現 意思決定のための直接的なデータの提供 地理情報システムの仕組み 茨城大学地盤工学研究室におけるにおける 地理情報システム 上の図は、GISの仕組みと茨城大学地盤工学研究室におけるにおける地理情報システムを紹介したも のです。また、下の図は、横浜市鶴見川沿岸を対象にして、地下の水位が上昇するに伴って液状化の危険 地域が変化する様子を示したものです。水位の上昇に伴って液状化の領域が広がっていることが視覚的に 理解できます。 地下水位 地下水位 0.5m 0.5m 上昇後 上昇後 鶴見川水系 鶴見川水系 液状化ハザードマップ 液状化ハザードマップ (1996:タイプⅡ地震動) (1996:タイプⅡ地震動) 地下水位 地下水位 1m 1m 上昇後 上昇後 鶴見川水系 鶴見川水系 液状化ハザードマップ 液状化ハザードマップ (1996:タイプⅡ地震動) (1996:タイプⅡ地震動) 地下水位 地下水位 1.1.5m 5m 上昇後 上昇後 鶴見川水系 鶴見川水系 液状化ハザードマップ 液状化ハザードマップ (1996:タイプⅡ地震動) (1996:タイプⅡ地震動) 地下水位 0.5m 上昇後 鶴見川水系 液状化ハザードマップ (1996:タイプⅡ地震動) (a) 地下水位が 0.5m上昇 (b) 地下水位が 1.0m上昇 (c) 地下水位が 1.5m 上昇 GISによる液状化危険度の表示(色の濃いところが危険性が高い) 4.僕たちと一緒に勉強しませんか? 防災・環境地盤工学研究室では、社会に役立つこんな研究をたくさん実施しています。僕たち(and/or 私たち)と一緒に研究をしてみませんか?一度、ぜひ、都市システム工学科のホームページ http://www.civil.ibaraki.ac.jp/を覗いてみてください。 (連絡先:茨城大学工学部都市システム工学科 安原一哉 TEL 0294-38-5166、 FAX 0294-38-5268 e-mail address [email protected]) 3