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取引先倒産とその事前兆候 (その2)

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取引先倒産とその事前兆候 (その2)
取引先倒産とその事前兆候
(その2)
■ ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候
TOSHO.Co.,Ltd
(C) 2016 TOSHO Co.,Ltd.
1
ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候
TOSHO.Co.,Ltd
(C) 2016 TOSHO Co.,Ltd.
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(1/7)
以下に、危ない会社に見られる様々な兆候のなかから、倒産予知に役立つ代表的なシグナルをいくつか挙
げて、ご説明いたします。
業績不振・低迷(減収・低収益)
今も昔も倒産原因のNo.1は「販売不振」です。製品・サービスのミスマッチや競争激化によりシェアを奪われる等など
によって、売上が低下する、また毎期減収傾向に歯止めがかからないなどの状況に注意します。また、赤字ではないものの
、毎期利益率が非常に低い場合も、特に固定費が高い業種の場合には少しの売上低下やコストの増加・突発的な損失に耐え
られません。なお、毎期ごく小額の黒字を出しているような会社の場合、対外的な信用を取り繕うために経理的な操作によ
って何とか黒字を計上している可能性が高いので注意を要します。
なお、業種的にそもそもリスクが高いというものもあるので、その会社が属している業界が成長産業か成熟産業かなどは常
にウォッチしておく必要があります。
※ 構造不況業種:
例えば最近では、印刷・出版関連 、外食産業、繊維産業、教育産業、 運送関連等々、IT化、グローバル化、人口減、
少子高齢化など様々な要因によって構造的に厳しかったり、為替相場や資源価格など外的要因に左右されやすい業界。
※ ミズモノ業種:
玩具、ゲーム、興業関連など当りハズレに一喜一憂する業界。また、資材費・人件費の見込み違いが大きなリスクにな
りやすい土建業なども典型的なミズモノ業種。パチンコ関連等の業種も、法律改正や規制等に左右されやすい。
※ キワモノ業種:
季節性の強い商品を扱う業種の場合、財務体力や資金調達力に注意。
売上高に関しては増えていれば安全とは必ずしも言えません。営業力の強化や価格・品質面での優位性などで売上増加傾向
ならば良いのですが、増収にも関わらず減益傾向などの場合には、廉価販売などで無理なシェア獲得に走っているなども考
えられます。また、急な売上の拡大は、必ず資金繰りに影響しますので、売り払いの回転期間(回収期間と支払期間)など
のバランスが適正かを見る必要があります。景気拡大期には、倒産が増えるという逆説的な現象も過去に発生しています。
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(2/7)
赤字・累損内包
赤字で即倒産というわけではなく、資金
が回っている限り(現金資産がある、資
金調達余力がある等で)は大丈夫ですが
、赤字が続けばいずれ限界が来ます。最
近の倒産要因で目立つものも、過去の長
い不況のなかで、赤字を積み重ねてつい
に倒産するというものです。
赤字と言っても、粗利益の赤、営業損失
、経常損失、純損失とそれぞれ意味は違
っています。営業赤字が続いているとい
うことは本業自体が問題であり、最も懸
念すべき事です。また、営業利益が黒字
でも、経常損失が常に赤字ということは
、利益で金利負担などを賄えない体質で
あることからやはり問題です。逆に当期
純損失でも、たまたま突発的な損失が発
生しただけで、営業段階や経常段階では
毎期黒字であるなら、大きな問題ではな
い場合もあります。赤字だからダメとい
うだけでなく、なぜ赤字かということを
考えることが大切です。
損益計算書のイメージ
複数期の推移を見る。
減少だけでなく、
急増にも注意
売上高
売上原価
売上総利益
減益、赤字に注意。
営業赤字が何期も続く
と事業継続は難しい
営業利益が出ていても
経常利益が少ない場合は
金利負担などに着目する
ここだけで判断せず、
営業~経常段階までの
流れ、特別損益の中身
を確認
販売費及び
一般管理費
営業利益
商品・製品・サービス提供など本業で得た収益。企業の営業規模を
見る一つの目安となる。
商品仕入あるいは製品製造にかかった費用(売上に対応した費用)。
粗利。業界によって異なるが、一般論としてメーカーや小売では20
~30%程度、卸で10%~20%程度が望ましい。ここが赤字というの
は原価割れで商売をしているということ。
販売費:販売活動にかかる費用。一般管理費:会社運営にかかる費
用。人件費、家賃、広告費、交通費、光熱費など様々。減価償却費
は実際にはキャッシュアウトしていない費用であることに留意。
本業のもうけ。かつては5%~程度のイメージだが、近年は経常利
益より低い会社が多く逆転現象が見られる。
営業外収益
主なものは受取利息や配当金。その他は雑収入など。
営業外費用
主なものは支払利息。その他は雑損失など。
経常利益
企業の総合的な実力を現すものとして日本では伝統的に重視する人
が多い。一般論としては3%~5%程度は欲しい。
特別利益
遊休資産の売却など臨時的・例外的に発生した利益のこと。
特別損失
大口の不良債権発生など臨時的・例外的に発生した損失のこと。
税引前当期純利益
法人税等
当期利益
法人税等を払う前の利益。
法人税、住民税、事業税の法人3税。
純利益。最終利益とも言う。純資産を増やす源泉。1~3%は欲しい
純損失は直接自己資本をマイナスする原因となりますので、毎期赤字を積み重ねれば、最終的には債務超過へ転落します。
当たり前ですが、赤字から脱却できない会社は危ない会社ということになります。
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(3/7)
債務超過
債務超過とは、自己資本がマイナス、つまり、全ての資産を清算しても、借入等の負債を返すことができない状態です。債
務超過になると、金融機関の正常債権から不良債権に格下げされ、新たな貸付けは原則しないのが通常です。金融機関や取
引先の理解を得ながら、再建策に見通しが立たなければ倒産してしまいます。
なお、貸借対照表を見る限り
は自己資本がプラスでも、資
産に含み損が多い場合は、実
質的には債務超過となってい
ることがあるため、過少自己
資本の会社も要注意と言えま
す。
貸借対照表のイメージ
流動資産に不良在庫など
資産性のないものが計上
されていないか?
前渡金、仮払金などの
いわゆる雑勘定に注意
借方:運用の方法
貸方:調達の方法
正味運転資本はプラスか?
(流動負債を流動資産で
賄えているか?)
当座資産
流動負債
その他の財務不健全
在庫が多すぎる(不良在庫の
懸念)、設備投資が過大であ
る(固定資産回転率が悪い)
等、経営を圧迫する様々な要
因がバランスシートには現れ
ます。月商に対して借入が大
きすぎる(借入過大)、流動
負債に対して流動資産が少な
い、固定資産に対して自己資
本が過少など、財務の不均衡
に注意を払います。
流動資産
固定負債
運用成果が長期に及ぶ設備
等の固定資産は返済義務のない
自己資本か、比較的安定した
固定負債で調達されるべき
当座資産(現預金・売掛金・
受取手形・有価証券など
換金性の高いもの)に絞って
流動負債と比較してみる
固定資産
純資産
繰延資産
なお、危ない会社の決算書に粉飾はつきものです。決算書が入手できたとしても、盲目的にその数字を鵜呑みにすることは
危険です。従って、その他の定性的な要因と照らし合わせて、分析・判断することが重要です。
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(4/7)
不良債権発生
不良債権とは、焦げ付いた債権、またはその恐れがある債権のことですが、焦付き(=貸倒れ)が発生すると、企業の業績
や資金繰りに重大な影響を及ぼすため、その会社の取引先に、危ない会社があるかないか(取引先の信用度の優劣)もチェ
ックポイントです。
焦付きの大きさによっては、連鎖倒産してしまう恐れがあるため、その会社の大口取引先が倒産した、焦げ付いたらしいと
いう情報があった場合は警戒が必要です。小口の焦付きでも、頻繁に焦付きが発生しているような会社は、管理体制の甘い
会社ということで信用不安になりやすいものです。
※ 焦付きの怖さ
コスト
98万
売上
100万
左図のような利益率が2%のビジネスにおいて売上100万円が回収不能となったとすると、その損失
を取り戻すには100万円の利益が必要で、100万円÷2%=5000万円の売上が必要ということになり
ます。
貸倒れ損失の穴埋めに、
98万
100万
×50
の営業努力が必要!!
利益2万
対行信用低下(取引銀行との関係)
企業は一時的に赤字になることや、新規事業における急な資金需要、突発的な損失発生があったとしても、金融機関との良
好な関係があり信用を維持していれば、借入などで資金不足を補填することができます。しかし、担保余力がなかったり、
銀行との関係が悪かったりすると急な変化に対応できません。そうなると、高利金融に手を出したり、融通手形に手を染め
たりと泥沼にはまる危険性が高まります。
規模に対して取引銀行が多すぎる(多行取引)、メインバンクと呼べる銀行がない、最近メインバンクが撤退して取引銀行
が変わったなどは、注意しなければいけません。
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(5/7)
資金繰りに関する様々な兆候
資金繰り悪化に関する兆候がある場合、倒産に直結する情報だけに、最も危ない兆候と言えます。「支払い遅延」「支払い
サイト延長要請」「手形ジャンプ要請」「給与遅配」「税金滞納」などのウワサがある場合は、要注意です。ネット上にも
、そのような話が流布することがあります(但し、ガセネタや“為にする情報”もあり)。「税金滞納」などがあると、不
動産登記簿に差押登記が記録される等で事実が表面化します。
また、高金利のノンバンクから借入れがあ
ることや、そのような市中金融筋でも融資
や手形の割引きが断られたというような噂
が一部に流れることもあります。なお、そ
のような事態が伺われる兆候が、不動産登
記や債権譲渡登記・動産譲渡登記などに現
れることもあり、登記簿を調べることは重
要です。
ネガティブな担保設定状況(主に登記簿に現れる異変)
日本における伝統的な物的担保の主流は、不動産の(根)抵当権です。通常取引金融機関から借入をする場合は、金融機関が
抵当権や根抵当権を設定するのは普通ですので、それほど信用上のインパクトはありません。しかし、仕入先など一般の企
業が抵当権をつける場合は、取引拡大等に伴って抵当権を設定することはありますが、一応注意を要します。もしかすると
、取引先の信用悪化の状況を知って、債権を保全・回収するために抵当権を設定したとも考えられます。これはケースバイ
ケースです。しかし、抵当権者に正体不明の債権者や見知らぬ個人の名前が出てきた場合は、高利金融業者等の可能性もあ
り、信用状況の悪化を強く疑うべきでしょう。
債権や動産についての譲渡登記については、昨今、金融機関によるABL(動産・売掛金担保融資)など流動資産を担保に
した融資形態も増えつつあり必ずしも危ない兆候とは言えませんが、不動産担保が主流であったわが国では、やはり債権譲
渡登記や動産譲渡登記が見られる場合は、債権者による保全・回収目的と捉えられることが多く、信用不安を惹起しやすい
ことは事実であり、注意が必要です。
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(6/7)
経営者/経営体制に関する兆候
中小企業の場合、「経営者=企業」と言っても過言でなく、会社の信用にとって経営者の能力は非常に重要です。業種・業
態・ビジネス基盤に問題のなかった会社が、経営者の「放漫経営」が要因で倒産することは未だに多いのです。社長が本業
以外の活動や、地元の名誉職に夢中になっているなど経営に集中していない場合は、要注意です。
最近は、社長の高齢化や後継者の不在が大きな問題となっています。ワンマン社長が高齢の場合、後継者がいるか、育って
いるかは非常に重要なポイントです。また、かつては経営者の年齢が高いほうが一般的には経験豊富で信用度が高いと言わ
れていましたが、環境がめまぐるしく変わる昨今では、必ずしもそうとは言えないので注意が必要です。
なお、同族会社の相続争い、役員間の対立、有力幹部の退職などで、倒産に至るケースもあり、会社組織が一枚岩であるか
どうかは大事な観点です。スタッフの会社に対する愚痴や批判が多い、離職率が高い、元気がない、などは一つの兆候と言
えます。外部から来た役員にもどのような経緯で就任しているか注意する必要があります(銀行、コンサルタント、等)。
※ 経営陣・幹部の危ない兆候チェックポイント:
□ 社長が兼務する肩書きが多すぎる(公職など)
□ 極端なワンマンぶり(周りはイエスマン)
□ 社長の公私混同
□ 業歴は長いが後継者がいない
□ 業歴・規模のわりに幹部が多すぎる
□ 経営者が不健康(やつれ、表情に精気がない)
□ 社長が不在がちである(特に朝夕)
□ 役員・幹部が相次ぎ退社
□ 社長が本業以外の投資に夢中
□ 管理職や役員どうしの仲が悪い
□ 経理担当責任者が不在がち(資金繰りに奔走?)
□ 最近、経理責任者が退社した
□ 意思決定が遅い(小規模なのにプロセスが複雑)
□ 管理職が働かない
□ 社長が係数面に弱い。経理に疎い
□ 従業員をあからさまにけなす
□ 方針に一貫性がない。朝令暮改
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ヒト・モノ・カネを巡る危ない兆候(7/7)
取引先不評・撤退
ある会社の仕入先、つまりはその会社にとっては債権者であり、特に主力仕入先はその会社の信用状況の変化に敏感です。
仕入先がその会社に対して新たな担保設定をするなど保全に入ったり、販売量を減らしたり、販売自体から撤退したりとい
う動きがあれば、その会社の信用状況は相当に厳しくなっていると言えます。
逆にある会社の大口の顧客がその会社からの仕入れを中止したり、その大口顧客の業績不振などにより仕入れを減らすとい
うような事態になると、販売量が急減することで固定費を賄うことができず、一気に業容が悪化することになります。仕入
先や販売先の構成や変化は、重要な信用変化の兆候と言えます。
不正/コンプライアンス違反
近時、内部統制、コンプライアンスに対する社会的な目の厳しさは日に日に増しています。そういった中で、企業の組織ぐ
るみの不正やコンプライアンス違反が露見した際の信用に与えるダメージは、かつて以上に重大になってきています。
古くて新しい問題ですが、そういったなかでも「粉飾決算」「架空取引」「循環取引」「融通手形」などは無くならず、上
場企業においてもそれが露見することで一気に信用不安に陥るケースがあります。また、違法な営業によって「行政処分」
を受けることや、反社会的勢力との関わりを指摘されて、信用が一気に失墜する事例も多くなっています。そのようなこと
がないか、ニュース等を常にチェックする必要があります。
トラブル・訴訟・突発事故
なんらかのトラブルにより訴訟に発展し、敗訴すると賠償など直接の損失が発生します。さらに、訴訟の過程で様々な事情
が明らかになり、風評被害や信用低下を招きます。
また、工場等での突発事故が商品供給や契約履行に大きな支障をきたす場合は、信用不安に繋がります。特に最近は自然災
害が多発しており、その被害から供給不能に陥るケースがあります。
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以上は、危ない会社の兆候とも言うべき代表的なシグナルについて解説したものですが、これらの兆候を
キャッチするアンテナ、気付きに対する感度とも呼ぶべきセンサーが大事です。そのうえで、つかんだ兆
候としての情報を放置することなく、裏づけのための確認調査のうえ、適切な方針決定及び措置を実行に
移すことが何よりも大事です。
(了)
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