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Title アドレナリン類似の化学構造を有する血管拡張剤投与後 における尿
Title Author(s) Citation Issue Date URL アドレナリン類似の化学構造を有する血管拡張剤投与後 における尿中カテコールアミンの変動について 山本, 孝昭 日本外科宝函 (1968), 37(4): 567-570 1968-07-01 http://hdl.handle.net/2433/207469 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 5 6 7 アドレナリン類似の化学構造を有する血管拡張 剤投 与後における尿中カテコールアミンの変動につ いて 山 京都大学医学部外科教室:f 42講座(指導・木村忠司教授) 4 召 日 ( i ! ; ( f i ,'・ ; , 受 付 . 昭和4 3 年 5) ] 6[ 1 ) Changeo fC a t e c h o l a m i n eL e v e li nU r i n eA f t e rt h e A d m i n i s t r a t i o no ft h eV a s o d i l a t i n gAgentsw i t h t h eC h e m i c a lFormulaer e l a t e dt oA d r e n a l i n e b y TAKAAKI YAMAMOTO F r o mt h e2 n dS u g i c a lD i v i s i o n ,Ky ot oU n i v e r s 』 t Y ,M e d i c a l公 h o o l ( D ir e c t o r;P r o f .D r .C H U J lK t M U R A) I ti sa l r e a d yr e p o r t e dt h a tt h e r ea r ei n c r e a s eo fu r i n a r yc a t e c h o l a m i n ea f t e ra d m i n i s t r a t i o no fv a r i o u sa g e n t so rc a t e c h o l a m i n ei t s e l f . We measured t h ec a t e c h o l a m i n eq u a n t i t yi nu r i n eo fp a t i e n t ss u f t 七 e r i n gfromp e r i p h e r a l v a s c u l a rd i s e a s e sa f t e ra d m i n i s t r a t i o no ft h ev a s o d i l a t i n g乱g e n t sw i t ht h ec h e m i c a lf o r m u l a e r e l a t e dt oa d r e n a l i n e , and knew i n c r ea si n go fu r i n a r yc a t e c h o l a m i n eo ft h e m , and gave somel i t e r a r yc o n s i d e r a t i o n st ot h i sr e s u l t . I 絡 I I I 実験方法 Eコ dは他の薬剤投与後におけ D政ひ V投与前数日を対照とし午前 6[時より翌日 午 る尿中カテコールアミンの排池についての研究は数多 前 H時迄の 2 4時間尿を採尿し,試験当日は D 6 0 m g 或は くなされているか,我々は最近カテコールア ミン移転ζ l アドレナリン( A )I ζ 類似の化学構造を有し,しかも V l S m gを朝昼夕食後の 3固に分割投与し,対照と悶絞 2 4時間尿を採尿し,その 2 4 時間尿につき, C主の測定 その薬理作用は末梢血管を拡張し人とは相反する作 を行なった. カテコールアミン自身, 用を有するズファフラン( D)及ひ’ベリーナ (V)な る薬剤をビユルゲル氏病その他の末梢血管障害患者 i r : 服用せしめて,その後の尿中に多量のカテコールアミ ン( CA)の排池を見たので乙乙 1 r :報告する . I I 尿 水 CAの 測 定 法 E u l a r& F l o < l i n g 氏後光測定法を若干改良した杉作 ・由良氏改良法を採用した.(表 l .2) IV 測 定 結 果 Dl i '与後においては Aは著 f l f : H ζ 増加し,平均約2 0 ) / 24Hの増加を示し, ; " j,\は平均約 1 2 0 ) / 2 4 Hの増加与を示 している. しかし, Aは全例において増加しているのに対し, NAは 5例中 2例が平均値で 1 0 ∼3 0 m gの減少を示し ている. [|本外科宝函第37巻 第 4号 ' t i 1 5 表 1 尿中カテコールアミン測定法 出6.0→ i ~富有| 白石函面| 緩衝液 分間加水分解 s I1 :ooml |尿 苔冨有|→凶3.5緩衝液 1 +ZnS04 I~ I l~~~LI 3分間 | ←赤血塩→ | 4分間 1 ← 印TA+アルミナ I l~ M~I INaOH で pHS.5とし携祥吸引 | アスコルビン酸+ NaOH 漏過 _I . o ・・ -つ !!_!t___J'!J~_I _ _ l |通法一 山~_I 直三| アルミナ(吸着〉| ← HzO洗浄 ;5NHzS04 lOml 溶出 J ζ 出 Oとし 20ml! NaHC03で P ー H.O→ 5ml 0. 橋和;·1~~1i 111~1 稀釈 y/ml → NA. A各2 稀釈溶出液 i 標準液 .~I 試料 試料 γ/24H増加し, 9 . V投与後においては Aは平均約 7 しかも Dと同儀会例において増加しているが, N Aは 2 表 2 S 1 S 料 試 N V I l I l I 誌験管番号 [ I ! 又 .5 3 .0 .5 6 .0 3 .0 は6 .5 6 |凶 3 IN酢 酸緩衝液 1 似 .4cc i + 0.5%硫 酸亜鉛0 ー |4分 i 分 3 0.25%赤血塩 0.1α 酸化 ー + −分 4 増減まちまちで変化がないと考えた方が良い様である 0 0 04 4 0 0 03 3 0 0 02 2 0 0 I0 I 2 3→D 4H r2 。投 児﹂出幻 内 ︷, 一 ︶町略 ト d r 与 ︷ I3 n 目 H a p a u ゴ nAU , v a i a AU rLU r 山 AUO A n A 〆 ’ AN ・口→ D 4→ D 門 φiυ 点幽守 3 図 1 Duvadilan投与後における尿中カテコールア Eンの変動 310 A NA − 分 3 巳 アドレナリン類似の化学構造を有する血管拡張剤役与後lζ 於ける尿 I~~ カテコールアミ ンの変動lζ 就いて 569 ~o 0 0 4 0 0 0 3 3 0 0 0 2 2 0 0 0 1 1 1 1 61V 5fV 41v QU VI AH u n ’lUV u a H 4 2 / ' 7s+lVV 6 →V A NA • A出~ ( adrenaline) 口NA (noradrenalne) 8田g投与 a1 n i r V ve a投与後における尿中 n i r e 図2 V レアミンの変動 カテコー ノ OHCH2 71V 61V 51v a斗 Verina n a l i d Duva OH CH2 CH2 CH, ゅQ-~H・ふ-NH-~H-CいO 叫 HO-Q -〕H-NH山ぺ:,-<;·肌 T ~H OH CH, CH, e叫 n 一 1CH-CH2-NH-CH コ と 時 CH, OH OHCH, ~ I 1 1 I ,υ ・ H C L − HCL H O - Q 時 CH-NH− 昨 日 ー CH ・ 町 ::o-r:'::~r: 。 。 。 併と〉ムム NH-C~- CH2-0 0 " } Q : : | | HO 仙 HO C ・CH, H. : r・ , HO CH N ’ H-CH, C ・ CH, H C 。 CH2 CH, CH, HCL (DL) 図 2 HCL (VL) ・H HO N N CH, H n i Adrenolut ~- H Noradrenolutm [|本外科宝函第37 巻 第 4号 570 V 考 影響があると考えると,当然血圧降下を来すであろう 察 から,血圧恒常反射の活動から NAの排池増加が考え 以上の如く, D 及び V 投与後 lζA 及び NA の尿 ~1=1 へ られねばならない.しかるに上述の結果においては A の排池が増加したわけであるが,その機序については の噌加が主体であり, Dの場合は NAが多少増加して 判然としない. いるが Vにおいては然々 NAの増加は認められない. しかも A及び NAの噌加という結果をそのまま受け すなわち①この増加が A又は NAその物である場 合と, 乙の点納得がいかないし,またインシュリンの場合と Aの排池増加ではよく似た数値が得られているが,イ 入れてよいかという疑問も起とって来る. J,然々異なった新物質を測定している場合と があるわけである.そこで先づ①の場合について考 えてみると, a ;D或は Vの分解産物より A或は NA が生成せられた. b ;箔抗的作用にもとづく. c ;D 及び Vが Ad( ! ま NAの排池をうながす. d ;その他が 考えられる. aについて考えると, D及び Vは AJ えひ NAにその 化学構造が類似しているためその分解過れにおいて, A或は NAが宝成せられたとすると,その化学構造か 乙役立ちうる.すな らその約半分が λ或は NAの生成l 略から A或は NAが約 30田1 g ,v わち 1日量にして 060 l S m gからはそれぞれ約 9昭生成可能であるから,上述 の如き A及び NAの増加があっても考えられぬ事はな ンシュリン 4単位静注においですら発汗や心俸冗進等 の副作用が現われており,高単位の衝撃療法において は昏睡にまで至っているのに, D或は Vの投与後には 然々副作用らしきものが見られなかった.それにもか かわらず Aの排泊地加はかなり大量で, 4単位静注と 前単位衝撃療法の中間にあり, ζ の様なととを考える と搭抗物質としての排池増加の説明にはいささか不明 な点が残される. cの場合についていえば,類似化学構造を有する物 質の血中混入が NaとKの関係の様に Aの血中濃度の 上昇と同じ様な結果を惹起し尿中への A排池を容易に したか,または更に排池を促進したのではないかと考 えられる. dについては骨リウムヰl ] ' [ j,炭酸ガス中 i / j,カリウ ム塩, ヒスヲミンて干による尿 1 1 1排他地加が認められて しまだ S c h m i t e r l o w ( l 9 5 1 ) の知見によれば, 5∼15 いるが中毒症状の然々現われていないことから ~1,Jj と mgの NAc a r b o x y l i ca c i dをウサギζ l注射して尿中の は考えられず,またカリウム塩やヒスタミンの織に髄 質細胞に対する直接作用があるかどうかは然身分らな ; , : aが非常にましたという.しかし,現在の知見 N. . ¥ からすれば Aは Nλ より生成せられる乙とになってお り,乙れが動かせない •JJ実とすれば,今の助介, NA より Aの増加が主体である点うなずけないし,また' " I 成する好材料が血 1 + q c :増えたからといって, ζ の様に かなり大量の排池僧加があるほど A或は Nλ を生成す ることは生体にとって不都合の様ζ l!以われる.すなわ ち何か副作用が起乙りそうなものであるが乙の実験に 関する限り副作用を認めなかった. 次 lζbについて考えてみると,インシュリン静注の 'ン箔抗物質として,低 1 ( 1 1糖 H 、 ? に Aが分 |作,インシュ ) 泌せられることは諸家によって認められており,由良 によれ~ i ' .,精神病患 f rζ l インシュリン l単位紛注によ いので何ともいえない. そこでゅの場合について考えてみると, D或は V は体内において P h e n o l核lζOHJ 占が入ればカテコール 核が形成せられる.側鎖においても何等かの変化が起 こりうるわけだが,便宜上一応側鎖ζ lは変化がないも のと考えて考察を進めると, V及び Dは夫々図 3の如 l排消せられることとなり,我今の く2つの形で尿中ζ 行なっている測定法によって生ずる後光物質は夫々図 3の様なものとなると考えられる. 乙れ等を便宜上 DL及び VLと名付けると, ζ れ等の構造式はアドレ ノルチン及びノルアドレノルチンに類似し,しかも前 者ζ l共に近い.両 r i −は従ってアドレノルチンζ l近い後 光スペクトルが i ' . Iられると紅1 像され,よって測定値が ており,インシュリン衝撃療法においては,インシュ Aを主とした増加という結果をもたらしでも当然とい わざるを得ない.従って②の場合もあり得る' Hを念 頭ζ l置きながら, ① cの場合がもっともな所と考え リン 100∼2GO単位注射により,その後の尿中ζ l平均約 る . り,その後の尿中ζ l平均約七/6hの Aの国量を証明し : m ;/ I : !hのAの増量を証明している. 自験例でもイン シュリン~ t 削I r .静注後1 2時間尿ζ l約 HyのAの僧量を 見てし る . j D及び Vは共ζ l末梢血管を拡張するという点で A又 は Nλl 乙拍抗的である.従ってこの血竹拡振が血圧に VI 結 語 A i ζ 類似の化学構造を有する血管拡張剤を末梢血管 l投与し,その尿中ζ l多量の CAの排池を見 障害患者ζ たので乙乙 ζ l報告し,若干の考察を加えた.