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“非雪国”の温室 単棟施設 連棟施設 暖房機 なし 暖房機 あり 屋 根 上 の

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“非雪国”の温室 単棟施設 連棟施設 暖房機 なし 暖房機 あり 屋 根 上 の
■2014年2月の大雪で温室が被害を受けました。何か対策はありますか?
●お答えします。
農地基盤工学研究領域 農業施設工学担当 森山英樹
1. 積雪荷重を緩和しましょう
温室の形式と暖房機の有無によって、“非雪国”の温室の雪害対策は異なります。
単棟施設が被災する原因は、雪の滑落を阻害する障害物です。フィルムの上からばたつ
き防止用ネットが展張されていると雪が滑り落ちにくくなります。 園芸用施設安全構造基
準では屋根勾配ごとに積雪荷重の低減係数を定めています。積雪荷重低減の対象となる被
覆材はガラス、硬質プラスチックフィルムの他、室内で栽培中の温室にたるみ無く展張さ
れた軟質プラスチックフィルムですが、いずれも被覆材表面で雪が滑ることが前提となっ
ています(図 1)。
連棟施設については、谷に残留する積雪荷
“非雪国”の温室
重が構造上の最大の課題で、滑雪以上に融雪
が重要です。融雪は積雪後に実施しても効果
は限定的です。融雪する場合は、降雪初期か
連棟施設
単棟施設
ら暖房機をフル稼働させます。その時、移動
式カーテンは全て開放して、屋根面に熱を加
暖房機 暖房機
暖房機 暖房機
えることに集中します(図 1)。暖房機が設
なし
あり
あり
なし
置されていない場合は巻き上げ換気による
開口部を使い、積雪を室内に落下させること
●●●● 事 ●● 当 ●●● 事
も検討すべきでしょう。
前
日
前
一谷ブ接
移降
一ブ屋
対
の
対
部部レ合
部レ根
動雪
残雪がある場合は温室に作用する荷重条
被のー部 策 式開 対 被ー上 策
件が変化するため、隣棟間隔の重要性が増し
覆一スの
カ始 策 覆スの
の
お
ます。2 月 8 日~9 日の雪が隣接棟との間に
ーと
材時 補
材 滑
設
よ
貯
強
雪
テと
の
の
残ったまま 14 日の降雪を迎えた 2 連棟パイ
ンも
除水置
除び阻
プハウスでは、間口から見た屋根上積雪が左
開に
去能
去中害
柱
放
暖
右で異なりました。このハウスには雪の荷重
力
要
に因
房
の
を支える中柱が棟に設置されていました。ま
よ除
機
向
る去
た、両側の軒を結ぶようにワイヤも設置され
作
上
補
動
ていました。これらの部材は垂直方向の荷重
強
には効果的です。ところが、屋根上の積雪荷
重がアンバランスな状態では、水平方向の力
図 1 雪害対策フロー
が加わるため、補強効果を大きく失ってしま
います。同様に、強風や降雨による積雪荷重の偏在化についても注意が必要で す。
2. 斜材を大切にしましょう
桁行方向の筋交が取り付けられていない鉄骨補強パイプハウスで、柱が転倒する被害が
相次ぎました(図 2)。筋交が外されているのは、室内でトラクタを使った作業をするため
等です。斜材がない架構(柱と梁)に対して柱を転倒させる方向に力が加わわると、過大
な曲げモーメントが柱梁接合部および柱基礎接合部に作用します。筋交がない構造は、積
雪荷重のみならず風圧力に対してもきわめて脆弱となります。やむを得ず筋交を外してし
まった場合は、少なくとも大雪や強風の前に原状復帰しましょう。柱の傾斜角 によって変
換される積雪荷重 F の水平方向成分は(1-cos)F で、が小さければ限りなくに近い値にな
ります。つまり必要最小限の筋交で骨組を補強することが可能ということです。一見か細
い筋交ですが、温室構造にとってたいへん重要なパーツです。
梁
梁
力
力
柱
柱
基礎
図2
基礎
柱と梁に設置される筋交
3. 接合部を補強しましょう
多くの鉄骨補強パイプハウスで、柱と基礎をつなぐ角形鋼管が折れ曲がる被害が多発し
ました(写真 1)。この場合は、筋交の増加の他に柱基礎接合部の強度増加を検討します。
例えば現状では中空となっている接合用角形鋼管の内部にコンクリートを充填 することで
接合部の曲げ剛性を増加することができます(図 3)。柱基礎接合用角形鋼管内でコンクリ
ートが固まると、曲げ耐力を理論上 25 %増加することができると考えられます。
部材の腐食(錆び)が進んでいても被災しやすくなります。2014 年 2 月の大雪では、鉄
骨補強パイプハウスや、それ以上に大きな強度を有しているはずの 鉄骨ハウスでも柱のベ
ースプレートが腐食によって破断している 事例がありました。他にも鉄骨ハウスの基礎と
柱を連結するアンカーボルトが腐食して引きちぎられていたり、アングルハウスの柱が曲
がったりする被害がありました。いずれも錆止め剤の塗布など日常のメンテナンスで被害
を軽減することが重要です。
コンクリート
柱
柱基礎接
合用角鋼
柱基礎接合用
角形鋼管
転倒した柱
コンクリート基礎
基
礎
コンクリート
基礎
写真 1
柱基礎接合部の被災(右は接合用イ
メージ):接合用角型鋼管(45×45
mm)が折れ曲がり柱(50×50
mm)はほぼ水平になるまで転倒し
ていました
図 3
ボルト穴保持用
の木もしくは塩
ビ管
コンクリート不要
箇所を塞ぐため
の木片
柱基礎接合用角形鋼管内
へのコンクリート充填
4. 骨組の変形を防ぎましょう
パイプハウスの主な被災パターンはアー
チパイプの変形です。屋根上の積雪が偏っ
た場合も被災しにくくなるパイプハウスの
補強を図 4 に示します。軒と反対側の屋根
(棟高の 63~70 %の位置)を連結するなま
し鉄線(ホームセンターで市販されている
直径 3.2mm の番線)を X 型に組み合わせま
す。地盤条件や荷重条件によって異なりま
すが、条件が整えば最大で 3 倍程度の強度
増加が見込めます(Moriyama et al., 2008)。
アーチパイプ
ブレース
軒
棟高の
63-70%
G.L.
図4
ブレースによるパイプハウスの補強
(Moriyama et al., 2008)
5. 基礎の強さを維持しましょう
盛土地盤に建設された温室は、基礎が沈下する場合があります。地盤が温室と積雪荷重
を支えるための十分な力をもっていないため です。また、連棟施設の谷部でとけた雪解け
水がフィルム留め具の箇所から室内に流入すると、地盤がぬかるみます。土は内部の空気
が追い出されて土粒子の隙間が水で満たされると、基礎を支える能力が低下します。フィ
ルムを留めるスプリングを二重にしたり、谷に新たにフィルムを張っておくなどして、 な
るべく水を室内に流入させないようにすることが重要です。
6. 融 雪 が 大 事 で す
繰 り 返 し に な り ま す が 、“非 雪 国 ”で 滅 多 に 降 ら な い 大 雪 に 備 え て 温 室 を 補 強 す る こ
とはコスト面で困難が伴います。定期的に更新されるアメダスデータ等を活用して、
的 確 な タ イ ミ ン グ で 融 雪 し 、 温 室 の 被 害 を 少 な く し ま し ょ う ( 図 5) 。 作 業 の 際 は 、
安全第一、人命第一でお願いします。
雪を極力
積もらせない
移動式カーテンを開放する
暖房機を作動させる
図5
降雪開始とともに暖房機を作動させます:移動式カーテンは全
て開放します
引用文献
・Moriyama et al. (2008): Reinforcement for pipe-framed greenhouse under snow load and design
optimization considering steel mass, J. SASJ, 38(4), 263-274.
・森山ら(2014):平成 26 年豪雪により被災した温室の実態調査、農業施設、45(3)、108120.
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