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成熟社会における持続可能な居住地形成に関する調査研究 (中間報告)
平成19年度都市センター研究報告 成熟社会における持続可能な居住地形成に関する調査研究 (中間報告) 名古屋都市センター 調査課 泉 善弘 (名城大学 海道清信教授との共同研究) 1.背景・目的 成熟社会に向けたまちづくりに関する長期計画のあ り方が議論される中、都市における環境制約など本市 でも顕在化する種々の都市問題解決に向け、生活空間 としての持続可能な都市像を明確にし誘導していくこ とは重要な課題である。成熟社会における問題点とし ては、①CO2 排出量の大幅削減ニーズなど都市におけ る環境制約の顕在化、②自動車依存型ライフスタイル の定着による弊害、③道路・住宅等のなど社会基盤の 老朽化と維持管理費の増大、④住宅等の都市ストック と住民ニーズのミスマッチ等があげられ、こうした問 題の発生は都市構造や居住地環境との関わりが大きい。 そこで、本研究は、成熟社会における「サスティナ ブルシティ(持続可能な都市) 」に向けた都市空間モデ ルとして提唱されている「コンパクトシティ(集約的 で高質な都市空間) 」の考え方に基づき、本市における 持続可能な居住地形成のあり方について検討を行うも のである。 特に既成市街域と新市街域など地域の立地特性に応 じた 「住まい方」 の見直しがより強く求められる中で、 公共交通の利便性など地域特性に応じた「住まい方」 や「住み替え」のあり方に着目し、住宅ストックと居 住ニーズのミスマッチの解消や自動車依存型都市構造 の変革、既成市街域等における生活圏域の再生など、 次世代に残すべき望ましい居住地としての都市空間を 形成していくための誘導方策等について、市民意識の 実態などを踏まえて調査研究を行うものである。 (2)研究体制 当センターと名城大学の海道清信教授との共同研究 として2年間取り組むものである。なお、共同研究を 進めるに際しては、定期的な研究会として、岐阜工業 高等専門学校の鶴田佳子教授や名古屋大学大学院の村 山顕人准教授を始め市役所関係部署の職員等と意見交 換を行う。 2.研究内容と進め方 (1)研究内容 平成 19 年度から 20 年度までの間において、都市空 間モデルの考え方や本市の居住環境の現状等を踏まえ、 本市データによる地区類型や、市民意向調査等による 地域毎の住まい方のシナリオ検討を行い、誘導すべき 市街地像や住宅に関する施策の検討を行う。 3.住宅政策の動向 (1)成熟社会における住宅政策 平成 17 年 9 月、 国土交通省社会資本整備審議会から 超高齢化・人口減少社会における住宅政策として、 「新 たな住宅政策に対応した制度的枠組み」 が答申された。 基本理念として「良質な性能、住環境及び居住サー ビスを備えた住宅ストックの形成」 「多様なニーズの適 時適切な実現」 「住宅の資産価値の評価・活用」 「住宅 困窮者の安定した居住の確保」の4つが示され、行政・ 企業・住民の役割分担の明確化と協力が必要とされて いる。 答申の中では、基本目標の一つである「多様な居住 ニーズを適時適切に実現できる市場の環境整備」に対 する施策の方向性として、 「ライフステージやライフス タイルに応じた居住地選択の自由度の拡大に向けた施 策の充実」 「ファミリー向け賃貸住宅等の供給促進」 「中 古住宅が円滑に流通し得る環境整備」が明記されるな ど、居住ニーズと住宅ストックのミスマッチの解消に 対して、住宅の中古市場・賃貸市場の整備を背景とし た「住み替え」の必要性が示されている。 作業内容 (H19∼H20) 概念整理 地区類型 地域別の シナリオ等 ◇都市空間モデル・施策に関する国内外の文献・事例収集 ◇本市の居住と居住地に関する現状把握・課題の整理 ◇地区類型化の指標検討、データによる地区類型化 ◇現地調査による代表地区の実態把握 ◇居住地選択に関する意識構造(シナリオ)の仮説立て ◇住民意識調査の実施・データ分析 ◇類型地区別の居住地選択シナリオの比較検討 ◇目指すべき市街地像・住宅政策の提案 ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ (2)海外における都市空間計画事例 欧米各都市では以下のような持続可能な都市空間計 画事例がある。 総合的な都市開発計画によるコ ミュンヘン ンパクトシティ建設 ◎ 2-1 ストックホルム 鉄道駅周辺の拠点形成 ポートランド TOD(公共交通指向型開発) ロンドン 徒歩圏(ペドシェド)による市 街地構成の提案 マンチェスター 新規住宅開発の誘導基準 生産年齢(15∼64歳)負担比率の推移 年齢別人口数の推移 (人/世帯) 5.0 (万人・万世帯) 4.8 4.5 250 人 /世帯 人口 人/世帯 4.0 3.0 2.0 221.5 200 1 世 帯 当 た り 人 員 数 万人 2.3 150 人/世帯 100 世帯数 93.6 1.0 万世帯 Ⅰ戦前期 Ⅲ成長期 Ⅱ急成長期 2005年 2000年 1995年 1990年 1985年 1980年 1975年 1970年 1965年 1960年 1955年 1950年 1945年 1940年 1935年 1930年 1925年 0 1920年 0.0 Ⅳ安定期 図1 人口・世帯数・世帯規模の推移 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0∼14歳 125 65歳以上 75 Z 50 25 0 0.2 対年少者 負担率 対高齢者 負担率 0.1 2005年 2000年 1995年 1990年 1980年 2005年 2000年 1995年 1990年 1985年 1980年 DID人口密度(人/ha) 図3 人口構成の変化 120 1965年 1960年 100 1970年 1975年 1980年 1990年 2005年 2000年 1985年 1995年 80 60 120 160 200 240 280 DID面積(k㎡) 図4 DID 面積と DID 人口密度の推移 (2)交通基盤整備からみた市街地の拡大と地域格差 持続可能な居住地形成に向けた適切な住み替え等の 施策実施の必要性は、都市の住まい方や生活スタイル が持続可能であるかどうかに左右される。また、都市 の生活スタイルは、生活空間としての市街地の状況が 前提であり、市街地と密接にかかわる交通基盤の整備 状況や提供される交通サービスの質とも大きく関って いる。ここでは、交通基盤整備の変遷から見た市街地 の特徴について概観する。 表 1 及び図 5∼図 7 に市街地の変遷の概要を示す。 本市の交通基盤は、地下鉄等の専用軌道や基幹バス 等のバス網の拡充により形成された公共交通ネットワ ークとともに、2環・都市高速を始めとした道路網の 整備により、ストックとしての交通基盤はかなり充実 してきたといえる。一方で市街地の状況をみると、 「Ⅱ 急成長期」 「Ⅲ成長期」に比べ現在では、自動車保有の 急増とともに、公共交通網の弱い地域にも市街地が形 成され、同一市域内でありながら提供される交通サー ビスの地域差が拡大し、市域全体としても公共交通と 比べ自動車の利用率を高める要因になっている。 単独以外 1世代 1989 Ⅰ 戦前期 Ⅱ 急成長期 Ⅲ 成長期 2005年 2000年 1995年 3世代家族 1990年 0.3 表1 本市の市街地拡大の変遷の概況 単独世帯 1985年 生産年齢 負担率 0.4 0.0 時代区分 1980年 負担比率 15∼64歳 100 (非生産年齢人数/生産年齢人数) 人口(万人) 150 2世代家族 1970年 世帯数(万世帯) 50 0.5 175 1985年 4.本市における居住地拡大と地域格差 今後の持続可能な居住地のあり方の検討に先立ち、 現在の都市や市街地の形成過程を把握しておくことは 不可欠である。そこで、市街地形成に関する基礎指標 に関する推移について以下に整理した。 (1)人口・世帯数の増加と DID の拡大 市街地形成の変遷把握に先立ち、まず人口及び世帯 数の経年変化を図 1 に示す。本市の人口は、戦後の市 域拡大などにより急増した 1965 年以降は増加傾向が 鈍化し、一方で世帯数は戦後一貫して増加し、その結 果、世帯規模は戦前の半分程度にまで縮小した。 図 2 で 1970 年以降の世帯数内訳の推移をみると、 特 に単独世帯の増加が著しく、また図 3 で年齢構成の経 年変化をみると、高齢化の進展と少子化傾向の鈍化に より、生産年齢人口に対する高齢者・年少者層人口の 比率が 1995 年以降拡大しつつあるといえる。 次に 1960 年以降の DID の経年変化をみると、図 4 のとおり DID 面積の拡大とともに DID 人口密度は低下 するが、1985 年以降はその変化の傾向は縮小している。 こうした人口・世帯・DID の推移から本市の市制以 降の市街地形成に関する時代区分を「Ⅰ戦前期(∼ 1945) 」 「Ⅱ急成長期(1945∼1965) 」 「Ⅲ成長期(1965 ∼1985) 」 「Ⅳ安定期(1985∼20005) 」に整理した。各 時代では、形成された市街地の状況だけでなく生活ス タイルや住まい方も異なっているものと推察される。 Ⅳ 安定期 図2 世帯内訳の推移 2-2 市域面積 (k ㎡) 人口 (万人) 13 16 DID 自家用車 世帯規模 人口密度 登録 (人/世帯) (人/ha) (台/人) 機関利用比率(%) 公共交通:自動車 関連 内々 1920 33 43 1938 161 123 4.5 1960 250 159 111 4.2 0.04 1970 326 204 97 3.5 0.10 44:56 41:59 1980 326 209 80 3.1 0.33 41:59 36:64 1990 326 215 79 2.7 0.44 39:61 34:66 2000 326 217 77 2.4 0.48 37:63 32:68 2005 326 222 79 2.3 0.47 4.8 (3)世帯数・住宅戸数の推移と地域格差 「Ⅱ急成長期(1945 年) 」以降増加している世帯数 に対し、市内の住宅戸数はさらに増加傾向が進み、世 帯数に対する住宅戸数の比率は、 「Ⅲ安定期(1970 年) 」 以降は 1.0 を上回る供給超過の状況が続いている。ま た居住世帯なしの住宅戸数も増加している。 図 8 において、行政区ベースの地域区分で「Ⅲ安定 期(1975 年) 」以降の住宅密度の推移をみると、 「都心 域(中) 」と「新市街域(守山・緑・名東・天白) 」と で増加が顕著であり、逆に「既成市街域」では、相対 的に低い伸び率となっている。また、居住世帯なしの 戸数密度の推移をみると、 「都心域」が、増加率、密度 ともに最も高く、 「既成市街域」 「新市街域」は同程度 の増加率となっている。 図 9 では、住宅戸数密度に対する空き家住宅密度の 関係について、行政区単位のデータを「Ⅲ安定期(1980 年) 」と「Ⅳ安定期(2000 年) 」とで比較する。行政区 での大小はあるものの、全ての行政区で住宅密度及び 空き家密度は増加し、住宅密度が増える程、空き家密 度も増加する傾向にあり、2 時点の比較では都心や既 成市街域で特に顕著であった。今後は、新市街域も含 めて増加する空き家への対応が課題であり、その発生 要因等さらに分析を進める必要がある。 図5 交通基盤整備と市街地形成(1960 年:S35) 【供用区間】 鉄道 ・地下鉄 路面電車 高速道路 【標高】 住宅戸数密度(空き家) 住宅戸数密度(住宅総数) DIDエリア 8 都心域 (中) 40 戸数密度(戸/ha) 戸数密度(戸/ha) 50 30 既成市街域 20 新市街域 (守山・ 名東・天白) 10 高速道路 【標高】 1975 1995 1990 1985 1980 1975 2000 【2000年】 10.0 空き家戸数密度(戸/ha) 基幹バス ・GWB 新市街域 (守山・名東・天白) 図8 地域別・住宅戸数密度の推移 空き家戸数密度(戸/ha) 鉄道 ・地下鉄 2 【1980年】 10.0 【供用区間】 既成市街域 4 0 0 図6 交通基盤整備と市街地形成(1970 年:S45) 都心域 (中) 6 2000 DIDエリア 1995 【標高】 1990 路面電車 1985 鉄道 ・地下鉄 1980 【供用区間】 8.0 東 6.0 4.0 y = 0.13x - 0.36 中村 千種 瑞穂 中 北 昭和 熱田 2.0 0.0 東 8.0 中 千種 中村 熱田 6.0 昭和 瑞穂 北 4.0 y = 0.18x - 1.6 2.0 0.0 0 20 40 住宅戸数密度(戸/ha) 60 0 20 40 住宅戸数密度(戸/ha) 図9 行政区別住宅密度と空き家密度の変化 DIDエリア 図7 交通基盤整備と市街地形成(2005 年:H17) 5.地域別の生活スタイルの特性 都市内の住まい方は生活スタイルそのものであり、 日常的な行動パターンとの関係が深い。都市内の生活 スタイル(日常的な行動パターン)は、同じ名古屋市 内でも地域毎に異なると考えられる。 ここでは、名古屋市内の居住者を対象に、行動パタ 2-3 60 ーンの地域特性の把握分析を通じて、本市の現状の生 活スタイル、つまり住まい方の課題を明らかにする。 なお、行動パターンの分析は、H13 年度に実施した 第 4 回中京都市圏パーソントリップ調査(以下「PT 調査」という。 )データの中で、特に居住地との関連性 が強い「出勤目的」及び「自由目的」に着目して行う。 (1)地域区分 上記の行動パターン分析を行うための地域区分とし ては、図 10 のとおり《都心》 《既成市街域》 《新市街域》 の3区分とした。 また各地域のエリア設定においては、 3地域の相異をできるだけ明確にするとともに抽出調 査であるPT調査の精度を考慮し、行政区単位ではな く、PT調査の基本ゾーン(中学校区に相当)をベー スにエリア設定した。エリアの境界設定の考え方を表 2に示す。 また《既成市街域》と《新市街域》との比較では、 「人口密度」 「世帯規模」 「世帯当たり延べ面積」につ いて《既成市街域》の方が相対的に大きく、逆に「一 人当たり居住面積」 「民営借家率」について、 《新市街 域》の方が相対的に高い結果となった。 図 12 には、 住宅の建て方に関する3地域比較を示す。 前述の7指標と同様に、 「戸建住宅」 「低層共同住宅(1 ∼5F) 」等において《都心》と《既成市街域》 《新市街 域》との相違が顕著である。 《既成市街域》と《新市街 域》との比較では、 「戸建住宅」については、2地域の 差は大きくないが、 「共同住宅」については、 《既成市 街域》では「低層共同住宅(1∼5F) 」比率が相対的に 高く、逆に《新市街域》では「中高層共同住宅(6F∼) 」 の比率が相対的に高い結果となった。なお「中高層共 同住宅(6F∼) 」の比率は《都心》ではさらに高くなる。 民営借家 世帯率 持家 世帯率 既成市街域 都心 既成市街域 新市街域 人口密度 1.50 1.25 1.00 0.75 0.50 人口密度 民営借家 世帯率 世帯密度 世帯当たり 延べ面積 世帯密度 1.00 0.90 世帯規模 持家 世帯率 1人当たり 延べ面積 新市街域 1.10 世帯規模 1人当たり 延べ面積 世帯当たり 延べ面積 図 11 3地域の比較(人口・世帯・居住面積 等) 【新市街域】 ②共1∼2F 9% 図 10 地域区分 境界 都心域 既成市街域 【 既成市街域】 【新市街域】 ①戸建 34% 表2 エリア設定の考え方 考え方 ・JR 東海道線・中央線と新出来町線で囲 まれたエリア(官庁街を含む) ・市制当時の市域 ②共1∼2F 【新市街域】 ③共3∼5F 10% 23% 【都心】 【都心】 ①戸建③共3∼5F 【 既成市街域】 ①戸建 37% 18% 【 既成市街域】 13% ③共3∼5F 【都心】 【都心】 ⑤共11F∼④共6∼10F 30% 29% 34% 【 既成市街域】 【 既成市街域】 ⑤共11F∼ 4% 【新市街域】 ⑤共11F∼ ・人口密度の高い S35・S45DID を参考 ・河川(庄内川・矢田川、天白川) ・西南部は地下鉄線沿線(※) 12% ④共6∼10F 16% 【新市街域】 ④共6∼10F 17% ②共同住宅1∼2F ③共同住宅3∼5F ④共同住宅6∼10F ⑤共同住宅11F∼ ⑥長屋建 ⑦その他 ①一戸建 図 12 3地域の比較(住宅の建て方) (※)既成市街域は、鉄軌道の利便性が確保できるエリアとし、 PT調査 (H13) 時点で未開通のあおなみ線沿線以遠については、 地下鉄沿線を除き、既成市街域の範囲から除外した。 (2)地域別の居住特性比較 行動分析の前提として、前述3地域の居住に関する 基礎指標(人口、世帯、住居規模など)について H17 国勢調査データをもとに比較分析した。 図 11 は7つの 指標について全市域平均に対する 3 地域の比率を示す。 7指標のうち「世帯密度」 「民営借家世帯率」 「世帯 当たり延べ面積」等により、本市の居住地は《都心》 と《既成市街域》 《新市街域》の2地域に大別できる。 2-4 (3)地域区分別のライフスタイル特性 市内居住者(全年齢)トリップに関する交通機関の 利用比率( 「公共交通及び自動車利用の合計」に対する 「公共交通」又は「自動車」の比率。 )について、出勤 目的及び自由目的に対して、居住地を前述 3 地域に区 分して再集計し、その結果を図 13、図 14 に示す。な お図中の円の大きさは、単位面積当たりの交通密度を 示す。 3地域別いずれも、 一般的な交通特性と同様に、 自由目的の方が出勤目的よりも自動車の利用比率が高 い。また、どちらの交通目的でも、居住地が都心から 100% 49% 8 人 ト リッ フ ゚/ h a 44% 10 人 トリ ッフ ゚ / ha 50% 34% 6 人ト リ ッフ ゚ / ha 25% 100% 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 地域別の公共交通比率 (全年齢:自由目的) 円の大きさ:密度(人トリップ/ha) 75% 31% 50% 28% 6 人ト リッ プ/ h a 7 人ト リッ プ/ ha 25% 新 市 街域( 1 台 ) 35% 都心 (0 台 ) 新 市街 域( 3 台) 都 心 (1 台) 6% 48% 41% 47% 既 成市 街域( 1 台 ) 都心 (2 台) 10% 45% 1台 2台 3台 4台以上 0台 既 成 市街 域(2 台 ) 新市 街 域( 2台 ) 16% 24% 図 15 地域別自動車保有台数内訳 (4)年代別・地域別のライフスタイル特性 前述の3地域別の交通機関利用比率をさらに、3つ の年代で区分し集計したものを図 16、図 17 に示す。 年代区分しても、全年齢と同様の傾向だが、年代Ⅲ (60 歳以上)では、出勤目的より自由目的の方が交通 密度が多く、また公共交通利用比率は、既成市街域以 遠の出勤目的を除き、他の年代より高くなっている。 さらに、前述の都心から新市街域に向けた交通機関利 用比率の変化(公共交通利用の低下と自動車利用の増 加)の幅は、年代Ⅲが最も大きく、このことは年代Ⅲ の交通機関利用(生活スタイル)が他の年代よりも立 地条件に左右されやすく、逆に都心または既成市域に 居住することで公共交通の利用比率が高まり、運輸面 での環境負荷低減にも貢献できるものと考えられる。 18% 地域別の自動車比率 (全年齢:出勤目的) 円の大きさ:密度(人トリップ/ha) 66% 56% 75% 12 人ト リッ プ/ h a 13 人ト リッ プ/ h a 50% 機関利用(公共交通+自動車) に対する『自動車』の比率 100% 年齢別・地域別の自動車比率 (出勤目的) 円の大きさ: 密度( 人トリップ/h a) 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 図 13 3地域の公共交通利用の比較(出勤目的) 機関利用(公共交通+自動車) に対する『自動車』の比率 既成 市街 域( 0 台) 4 人ト リッ プ/ h a 0% 100% 75% 82% 69% 72% 13 人ト リッ プ/ h a 17 人ト リッ プ/ ha 17 人ト リッ プ/ h a 25% 年代Ⅲ(60歳∼) 75% 50% 年代Ⅱ 70% 0.6 人トリッ プ/ h a 25% 年代Ⅰ 52% 年代Ⅱ 61% 年代Ⅲ 69% 年代Ⅱ 51% 年代Ⅲ 57% 年代Ⅰ 63% 年代Ⅲ 44% 年代Ⅰ 53% 都心 既成市域 新市域 【居住地】 年齢別・地域別の公共交通比率 (出勤目的) 円の大きさ:密度(人トリッ プ/ ha) 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 年代Ⅰ(20∼39歳) 年代Ⅱ(40∼59歳) 1 .0 人トリッ プ/ h a 1.3 人ト リッ プ/ ha 8 人ト リッ プ/ h a 地域別の自動車利用比率 (全年齢:自由目的) 円の大きさ:密度(人トリップ/ha) 50% 100% 0% 51% 25% 0% 機関利用(公共交通+自動車) に対する『自動車』の比率 21% 地域別の公共交通比率 (全年齢:出勤目的) 円の大きさ:密度(人トリップ/ha) 75% 0% 新 市街 域( 0 台) 機関利用(公共交通+自動車) に対する 『公共交通』の比率 機関利用(公共交通+自動車) に対する『公共交通』の比率 機関利用(公共交通+自動車) に対 する『公共交通』の比率 既成市街域・新市街域と離れるにつれて、公共交通利 用比率が低下し自動車利用比率は上昇する。この傾向 は特に、既成市街域と新市街域との比較で変化の幅が 大きい。このことは、新市街域が相対的に自動車依存 が高い生活スタイルとなっていることを示す。 また、図 15 からも、都心、既成市街域、新市街域の 順で世帯当たりの自動車保有台数が多く、郊外ほど自 動車依存が高い要因となっているといえる。 100% 年代Ⅱ(40∼59歳) 年代Ⅲ 56% 75% 年代Ⅰ(20∼39歳) 年代Ⅱ 49% 年代Ⅰ 48% 0.7 人トリッ プ/ h a 年代Ⅲ(60歳∼) 年代Ⅰ 47% 年代Ⅲ 43% 年代Ⅱ 39% 年代Ⅰ 37% 年代Ⅲ 31% 年代Ⅱ 30% 50% 25% 1.0 人トリッ プ/ h a 0.4 人ト リッ プ/ h a 0% 0% 都心 既成市域 新市域 【居住地】 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 図 14 3地域の自動車利用の比較(自由) 図 16 3地域の年代別交通機関利用の比較(出勤目的) 2-5 都心 既成市街域 北西部 東部 非常に不満 1.25 年齢別・地域別の自動車比率 (自由目的) 円の大きさ: 密度(人ト リップ/ ha) 1.00 年代Ⅰ(20∼39歳) 年代Ⅱ(40∼59歳) 機関利用(公共交通+自動車) に対する 『自動車』 の比率 100% 0.75 年代Ⅲ(60歳∼) 0.50 満足 75% 多少不満 居住地の変化 3 .4 人トリッ プ/ h a 3 .6 人トリッ プ/ h a 1.20 50% 年代Ⅰ 89% 年代Ⅱ 87% 25% 都心 既成市街域 北西部 東部 4.3 人トリッ フ ゚/ h a 年代Ⅰ 83% 年代Ⅱ 74% 年代Ⅲ 54% 年代Ⅱ 81% 1.00 まあ満足 年代Ⅲ 66% 年代Ⅰ 80% 年代Ⅲ 55% 0.80 0% 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 変化なし 機関利用(公共交通+自動車) に対する 『公共交通』 の比率 年齢別・地域別の公共交通比率 (自由目的) 円の大きさ:密度(人トリップ/ha) 100% 図 19 地域別の居住地満足度と居住変化 年代Ⅰ(20∼39歳) 年代Ⅱ(40∼59歳) 7.地域の類型化と代表的学区の抽出 (1)類型化の趣旨 これまで特徴的な3地域(4地域)での平均値比較 でも居住に関する地域差が見られたが、各地域内でも 駅の近接性等などによる地域差が生じており、住み替 え施策の内容や必要性の程度が異なると考えられる。 そこで地域別の施策検討を行うため、学区単位で入 手可能な居住に関連する指標をもとに地域分析を行い、 代表的な地区に対して市民意向調査等を行う。 年代Ⅲ(60歳∼) 75% 年代Ⅲ 46% 年代Ⅲ 45% 年代Ⅱ 26% 年代Ⅰ 20% 年代Ⅰ 17% 年代Ⅱ 19% 年代Ⅲ 34% 年代Ⅱ 13% 50% 3.1 人トリッ プ/ h a 住居のみ変化 3.5 人トリッ フ ゚/ h a 年代Ⅰ 11% 1.7 人トリッ フ ゚/ h a 25% 0% 都心 既成市街域 新市街域 【居住地】 (2)類型化手法と地区類型 2つの判断指標( 「人口・住宅特性」 「交通特性」 )を 設定し、主成分分析・クラスター分析により類型化を 行った結果、市内学区を表3のとおり分類した。この うち10学区以上が該当する8タイプに含まれる学区 を対象にアンケートを実施していく予定。 図 17 3地域の年代別交通機関利用の比較(自由目的) 6.本市の住み替え等の地域差の概況 市内の居住地の満足度や住み替え実態等を地域差に ついて、住宅需要実態需要調査(H15)をもとに全市平 均との比で比較したものを図 19 に示す。 居住地に対する満足度は、 《都心》 《北西部》の順で 低く、不満の程度は《北西部》が最も高い。 《既成市街 域》 《東部》は概ね満足している結果が示されている。 居住地の変化(転入)は《東部》で最も高く、住居 のみ変化(建替え等)は《北西部》で最も低く《既成 市街域》で僅かに高めであった。また、 《北西部》 《既 成市街域》では「変化なし」の比率も高かった。 表3 居住タイプ別学区数 単身者 小規模住宅 インナーシティ型 郊外 住宅地 ゆとり 成熟住宅地 都心 就業地 製造業就業、 停滞 製造業中心、 人口増 計 6 34 1 1 ― 1 5 48 4 16 ― 1 4 ― 1 26 4 28 35 10 1 6 25 109 1 9 4 1 ― 5 32 52 インナーシティ型 都心型 ・広域中心 一般的郊外 居住地 職住混在 (近接) 伝統的 旧市街地 計 ― ― ― 5 ― 4 15 24 15 87 40 18 5 16 78 259 8.市民意向調査の実施と課題 20 年度に実施する意識調査は、市内の地域別の住み 替え施策の検討に向け、居住地環境の現状とともに、 世帯属性・住み替え履歴・住まい方の意識等との相関 分析を行うとともに、仮設の住み替え施策に関する評 価や実現性等について分析することを目的とする。 調査方法としては、 前述の学区対象の紙面調査の他、 任意の属性に対するメールアンケートを予定している。 文献等 ・平成17年度国勢調査 ・第4回中京都市圏パーソントリップ調査(地区交通指標) ・平成15年住宅需要実態調査 図 18 住宅需要調査での地域区分 2-6