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地域食品の試作と評価

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地域食品の試作と評価
平成18年度農林水産省補助事業
「農水産物機能性活用推進事業」報告書①
地域食品の試作と評価
(地域農水産物の機能性成分に着目した商品開発とその評価)
平成19年3月
財団法人 食品産業センター
まえがき
近年、健康志向の高まりにより、国産原料を使用した付加価値のある食品へのニーズが
高まっており、地域の農水産物と地域の食品企業を活用し、地域農水産物の機能性に着目
した食品を開発・育成する取り組みが求められています。
(財)食品産業センターでは昨年度に引き続き平成18年度においても農林水産省の補
助事業として、「農水産物機能性活用推進事業」を実施し、地域農水産物の機能性に着目し
た食品の試作品開発・試食評価、主な機能性成分について食品科学的見地からの概要検討
を行いました。本報告書においては、そのうち試作に係わる部分を取りまとめております
が、「オリゴ糖及びアミノ酸の機能性とその利用及び機能性食品市場の最近の動向につい
て」を併せてご覧頂ければ全容がよりご理解いただけると考えております。
機能性に着目した食品を地域の食品企業が市場化することを支援する一助として、本報
告書が関係者の参考になれば幸いです。
当事業の推進に当たって、ご指導いただいた本検討委員会の委員の方々、及び試作に当
たってご協力頂いた方々に厚くお礼を申し上げます。
平成19年3月
財団法人
食品産業センター
目
次
1.事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(1)事業の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(2)事業の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
(3)検討委員会の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
2.商品の試作・評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
(1)商品の試作・評価・機能性成分分析 (地域名)・・・・・・・・
5
①低カロリーこんにゃくスプレッド (群馬県)・・・・・・・・
9
②メグスリノキ葉茶 (埼玉県)・・・・・・・・・・・・・・・
17
③中島菜せんべい (石川県)・・・・・・・・・・・・・・・・
25
④ツナキャンディー (静岡県)・・・・・・・・・・・・・・・
33
⑤てん茶の茎入り焼き菓子 (京都府)・・・・・・・・・・・・
41
⑥有色米ドリンク酢 (岡山県)・・・・・・・・・・・・・・・
49
⑦青のり入りスープ (高知県)・・・・・・・・・・・・・・・
57
⑧青のり入り珍味 (高知県)・・・・・・・・・・・・・・・・
65
(2)試作品評価のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
71
3.まとめ
―農水産物機能性活用のための技術的課題―・・・・・・・・ 72
資料編
資料編①
試食モニターコメント集約・・・・・・・・・・・・・・・・
75
資料編②
意見交換会概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103
(別冊)
「オリゴ糖及びアミノ酸の機能性とその利用及び機能性食品市場の最近の動向について」
オリゴ糖の概要
(社)菓子・食品新素材技術センター
常任理事
特別研究員
宮崎
勝昭
主任研究員
石川
祐子
CMPジャパン(株) 「食品と開発」編集長
宮川
早苗
アミノ酸(ペプチド)の概要
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
食品機能研究領域
食品総合研究所
機能性成分解析ユニット
機能性食品市場の最近の動向について
(本事業は農林水産省補助事業である食料産業クラスター推進事業のうち農水産物機能
性活用推進事業として実施した。)
1.事業の概要
(1)事業の目的
人口減少と高齢化が進む我が国の食料消費は、既に飽和状態にあることから、今後の食
品産業と農水産業の進展にとって機能性に着目した商品の開発・販売が極めて重要と考え
られるが、これに対応できるのは概して技術力・資本力に勝る大手食品企業であり、また、
これら企業は大量販売を基本としていることから、原料手当を海外に依存することが多く
なっている。
一方、我が国の中小食品企業は、伝統的に地域の農水産業と深く結びついてきたが、概
して技術力・資本力において劣ることが多く、地域農水産物が地場市場を喪失する傾向に
ある。
このため、地域農水産物の有する機能性に着目した食品を地域の食品企業が市場化する
ことを支援し、食品開発状況の調査・分析、機能性成分についての検討を行うとともに試
作品の開発・試食評価を行うことにより、地域の食品企業の振興と地域農水産業の進展を
図ることを目的とする。
(2)事業の内容
学識経験者、試験研究機関、食品企業及び消費者団体等の分野を代表する委員により構
成される検討委員会を設置し、以下により検討を行った。
(ⅰ)機能性成分の活用方法等の検討
①
地域農水産物に含まれる機能性成分の活用方法、食品加工に利用する上での留
意点等を整理し、今後の地域農水産物を使った機能性食品の市場化への参考とす
るため、検討委員会委員により「オリゴ糖及びアミノ酸の機能性とその利用及び
機能性食品市場の最近の動向について」として「オリゴ糖の概要」、
「アミノ酸(ペ
プチド)の概要」、及び「機能性食品市場の最近の動向について」の取りまとめを
行った。
また、加工による機能性成分含有量の変化を確認するため、加工直前の原料形態
時及び試作品形態時のそれぞれでの機能性成分含有量を測定した。
(ⅱ)機能性成分を活用した商品の試作・評価
①
食品関係試験研究機関・大学・企業に対し今後の機能性に着目した商品開発の
振興方策を検討するため実施した昨年度第2回のアンケート調査(平成18年2
月)において、今後機会があれば試作協力先となることを希望する、とした組織
を対象に、応募内容を審査のうえ対象案件を決定した。
②
試作の進行状況を確認し、必要に応じて技術的支援を実施した。
③
試作品について、一般パネラーを加えて試食検討・評価を行った。
1
*注)
本報告書では、試作協力先からの報告・試食モニターによる記載事項・意見交換会で
の出席者発言等については、極力そのままの状態を伝える内容としている。
また、今回の事業では、試食品について「試作品」という位置づけから、その評価に
関し、包装・表示に関しては評価の対象外としており、内容についての詳細な検討も行
っていない。
このため、本報告書においては、用語等の定義・既存法令による規定等からは一部適
当でない表現が含まれているが、本事業の趣旨・試作者の意向等をふまえ、あえてそれ
らの整合を図っていない事に留意されたい。
2
<事業実施のフローチャート>
第1回検討委員会
7月下旬:試作依頼先決定
試作協力者報告①
(試作構想)
第2回検討委員会
試作進行状況確認・支援
試作協力者報告②
(試作品内容・分析結果)
11月末~12月初:
試食検討会・意見交換会
試食検討会結果集約・送付
試作協力者報告③
(試食検討会結果を受けて)
3月下旬:報告取りまとめ
3
(3)検討委員会の構成
<検討委員>
座長 小林 昭一
岩手大学 特任教授
鎌田 克幸
日本菓子専門学校 事業局長 石川 祐子
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
食品機能研究領域 機能性成分解析ユニット 主任研究員
廣瀬 理恵子
東京都立食品技術センター 主任研究員 関根 啓子
東京都消費者月間実行委員会 事務局長
山田 雄司
山崎製パン(株) 中央研究所
宮崎 勝昭
(社)菓子・食品新素材技術センター 常任理事 特別研究員
宮川 早苗
CMPジャパン(株)
所長
「食品と開発」編集長
<事務局>
門間 裕
(財)食品産業センター 企画調査部長
神保 肇
(財)食品産業センター 企画調査部 次長
鷺 仁子
(財)食品産業センター 企画調査部 主任
2.商品の試作・評価
(1)食品の試作・評価及び機能性成分分析
昨年度実施した第2回アンケート調査(平成18年2月)で、機会があれば18年度試
作希望とした組織について委員会において、農水産物・地域・試作品形態等のバランスも
考慮し7組織を試作協力組織とし、8品目の試作を行うことを決定した。(試作品一覧は表
①参照)
完成した試作品については、今後の改善につなげるため試食検討会及び意見交換会の集
約結果を試作協力者にフィードバックした。
試食検討会は、11月27日~12月1日にかけて3ヶ所で実施し、委員会で検討した
モニター項目に沿って、各試作品について意見を収集した。
試食に当たっては、各試作品を試作協力先の指定した方法で試食を行いモニター用紙に
記入し、順番に8品目の試食を行った。
試食モニターは合計63名で、大きく「専門的な知見を有している」
「業務上食味試験を
行っている」「一定のモニター経験を持っている」「ほとんど経験を持っていない」の4群
に分けられる。(各モニター群の性別・年齢別分布は表②、試食検討会の結果については、
数値集計は表③、各モニターのコメントは資料編①、モニター用紙は表④参照)
)
なお、今回の試食評価にあたっては、各モニターの感覚を基準としたため、表③につい
ては、絶対値としての数字ではなく、試作品毎のあるいは評価項目毎の相対値としての比
較に用いたものである点に留意されたい。
意見交換会については、12月1日に開催し、検討委員会委員・試作関係者相互に試作
品に関して更に検討が必要と思われる点等について意見交換を行った。
(概要は資料編②参
照)
また、機能性成分の分析については、試作協力先が自組織内もしくは外部に依頼して加
工直前の原料形態時及び試作品形態時のそれぞれでの含有量を測定することとした。
分析にあたっては公定法を用い、公定法のないもの及び公定法では分析が困難と思われ
るものについては、一般的に妥当と思われる方法を用いることとした。
なお、統計的有意性までは求められなかったことから、分析数値の信頼度の点には留意
が必要である。
<表①>
試作品一覧
組織名
試作品
着目した機能性成分
試作品概要
連携組織
有限会社ホウトク
低カロリー
こんにゃくスプレッド
グルコマンナン(水溶 群馬県産のこんにゃく芋を利用した低カロリーの
群馬県農業技術センター
性食物繊維)
スプレッド。
社団法人埼玉県茶業協会
メグスリノキ葉茶
ゲラニイン
北陸製菓株式会社
中島菜せんべい
GABA(血圧上昇抑制
埼玉県秩父地域のメグスリノキの葉を利用した
ティーバッグのお茶。
埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所
(株)龍勢のまちよしだ
石川県七尾市産の中島菜を利用したせんべい。 石川県農業総合研究センター
効果)
西部太平洋(水揚げ地:静岡県)のキハダマグロ
の血合肉を利用したグミキャンディー。
焼津水産化学工業株式会社
ツナキャンディー
京都府立茶業研究所
てん茶の茎入り焼き菓子 テアニン
京都府産のてん茶の茎の部分を利用したクッ
キー。
株式会社三宅商店
有色米ドリンク酢
アントシアニン
岡山県苫田郡鏡野町産の有色米(黒米)の玄米
を利用した酢酸含有ドリンク。
岡山県工業技術センター
試作品はそのまま飲めるように希釈したドリンク
と好みで濃さを調整する原液の2種類。
青のり入りスープ
高知県四万十川産の青のりを利用したフリーズ
高知県工業技術センター・協和FD食品工業㈱
たんぱく質(ペプチド) ドライのスープ。
青のり入り珍味
たんぱく質(ペプチド)
ペプチド類
特定非営利活動法人 京・流れ橋食彩の会
有限会社四万十食品
高知県四万十川産の青のりを利用したシイラの
高知県工業技術センター・エビス食品
ジャーキー風珍味。
<表②>
試食モニター分類
男
29歳以下
30歳~39歳
40歳~49歳
50歳~59歳
60歳以上 合計
0
3
6
6
4
19
合計
女
5
11
15
10
3
44
専門的な知見を有している 業務上食味試験を行っている 一定のモニター経験を持っている ほとんど経験を持っていない
計
男
5
14
21
16
7
63
女
0
0
0
1
2
3
計
0
0
2
2
0
4
男
0
0
2
3
2
7
女
0
0
0
0
1
1
4
3
2
1
1
11
計
男
4
3
2
1
2
12
女
0
1
0
0
0
1
<表③>
試食検討会モニター結果集約
(評価は1から4の4段階で行い、最も高評価のものを4として回答。)
地域
静岡
群馬
埼玉
石川
試作品名
低カロリー
こんにゃく
スプレッド
メグスリノキ
葉茶
中島菜
せんべい
計
0
4
9
5
2
20
0
5
9
5
2
21
女
0
2
6
5
1
14
計
1
4
2
2
0
9
岡山
京都
ツナ
キャンディー
男
てん茶の
茎入り
焼き菓子
1
6
8
7
1
23
岡山
有色米
有色米
ドリンク酢A ドリンク酢B
(ドリンク)
(原液)
高知
高知
青のり入り
スープ
青のり入り
珍味
平均
2.9
2.9
2.6
2.6
3.0
3.4
3.3
2.9
2.6
3.1
2.6
2.2
2.6
2.2
2.4
3.1
2.8
2.7
2.8
食味
後味
2.9
2.6
3.1
2.7
3.1
2.3
2.1
3.1
2.5
2.7
くせ
2.8
2.4
3.1
2.6
3.1
2.4
2.3
3.2
2.5
2.7
食感(口当たり)*
2.5
2.7
3.5
3.1
3.1
2.3
2.1
3.2
2.6
2.8
香り
2.9
2.3
2.9
2.7
3.1
2.3
2.2
3.0
2.4
2.6
食べやすさ(飲みやすさ)*
2.8
2.8
3.3
3.1
3.2
2.2
1.9
3.4
2.3
2.8
目新しさ・独創性
2.8
色彩
3.1
3.2
3.4
2.8
3.3
2.7
3.1
3.1
2.6
3.0
素材が生かされているか
2.8
3.0
3.1
2.6
3.3
2.8
2.9
2.6
2.3
2.8
地場の名産になり得るか
2.5
2.7
3.4
2.6
3.2
2.4
2.5
2.8
2.3
2.7
値頃感・市場性
2.2
2.4
3.1
2.1
2.5
2.6
2.5
2.9
1.9
2.5
この機能性要素に関心があるか
2.8
2.1
3.0
2.6
2.8
2.7
2.7
2.3
1.9
2.5
開発ターゲットと合っているか
2.9
36.0
2.9
34.3
2.9
41.2
2.6
35.7
3.0
39.4
2.7
32.2
2.8
31.9
2.9
38.0
2.9
31.7
35.6
合計
*「食感」・「食べやすさ」については、飲料(メグスリノキ葉茶、有色米ドリンク酢A・B、青のり入りスープ)では、
それぞれ「口当たり」・「飲みやすさ」という設問で評価。
2.8
<表④>
「農水産物機能性活用推進事業」試食検討会モニター用紙
年齢
29 歳 以 下 ・ 30 歳 ~ 39 歳 ・ 40 歳 ~ 49 歳 ・ 50 歳 ~ 59 歳 ・ 60 歳 以 上
性別
男・女
試食品
評価高
←
1
2
3
目新しさ
・
独創性
食味
後味
→
評価低
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
くせ
食感
香り
食べやすさ
色彩
素材が生か
されている
か
地場の名産
になり得る
か
値頃感
・
市場性
この機能性
要素に関心
があるか
開発ター
ゲットと
合っている
か
4・3・2・1
(4段階の評価とし最高評価を4、最低評価を1としてご記入下さい)
好ましかった点
改善してほしい点
その他
<試食品について>
利用した農水産物
開発ターゲット
想定される小売価格帯
狙い・訴求ポイント
利用部分
産地
機能性成分
こんにゃく芋
低カロリーこんにゃくスプレッド
<①低カロリーこんにゃくスプレッド>
試作協力先:有限会社ホウトク
1.試作品について
容量又は重量
200g
納入数
10個
利用した地域農水産物名
こんにゃく芋
利用部分
球茎
利用した地域農水産物の産地
群馬県
収穫時期
11~12月
試作にあたっての着眼点
地域特産物の利用、低カロリー
着目した機能性成分
グルコマンナン(水溶性食物繊維)
商品区分・形態
試食にあたっての留意点
調理食品・スプレッド
・低カロリースプレッドとしての商品化の可能性
・パン以外の利用についても、利用場面、利用方法についての意見があれば伺いたい。
想定される小売価格帯
商品化に当たって
苦労した点
試作品の特徴
常温
保存方法
1瓶(200g) 400~500円
・砂糖を極力使わず、低カロリー糖を使用したことによる物性変化。
・食品として不自然でないこと。
・こんにゃくマンナンは、血中コレステロール低下作用など水溶性食物繊維として
高い機能性が期待できます。
・砂糖を使用していない低カロリースプレッドです。
タ-ゲットとして想定しているのは肥満を気にしながらも、甘い物が食べたい方
例えば①カロリー摂取を制限する必要がある糖尿病や肥満症の方②美容に関心の高い女性
連携した組織
群馬県農業技術センター
試作品作成組織
群馬県農業技術センター
試作にあたっての
スケジュール概要
その他特記事項
原料及び副原料の選定(8月) → 試作(9~11月) ・ 保存安定性確認(11月)
→ 試作品完成(11月)
・商品化にはさらに保存性の再確認が必要である。
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
割合(%)
原材料名
割合(%)
リンゴ果汁
原材料名
42
こんにゃく精粉
1.2
還元水飴
21
ペクチン
-
リンゴシロップ煮
18
クエン酸
-
エリスリトール
16
3.試作品製造工程
果汁
リンゴ果汁
↓
溶解
← 還元水飴
↓
膨潤
← こんにゃく精粉
↓
加糖
↓
← エリスリトール
← リンゴシロップ煮
殺菌
↓
製品
低カロリーこんにゃくスプレッド
4.試食品評価
*低カロリーこんにゃくスプレッド
(意見交換会)
<試作協力者説明>
今回は群馬県農業技術センターと協力して低カロリーこんにゃくスプレッドを開発した。
何故こういったものを開発しようと思ったかというと、背景には群馬県の中心的な畑作
物であるこんにゃくの消費が食生活の変化とともにどんどん低下していることに加えて中
国からの輸入品に押され、このまま年月を重ねるとほとんど無くなってしまうのではない
かという危惧がある。そのような中、新しい消費形態を作り出すために一般的に食べてい
ただけるものを作らなければならないということで、こんにゃくの低カロリーに注目して
このようなスプレッドを作ろうということになった。
一般にこんにゃくは、食感等から食べにくいものになりがちだが、群馬県農業技術セン
ターが開発した糖による限定膨潤技術を利用して、よりおいしくなおかつ低カロリーで多
くの方々に食べていただけるものを、という考えのもと試作した。
まだ最終的な段階には到っていないが、今回の試作品に食感など更にバリエーションを
持たせていろいろな用途の食べ物に活用できるようにすることで、群馬県の主要な畑作物
であるこんにゃくの栽培を維持していけると考えている。
引き続き群馬県農業技術センターから説明する。
こんにゃくのマンナンは水溶性の食物繊維であり、その機能性は、他の食物繊維より分
子量が非常に大きいということから、少量でも効果的であるということが知られている。
今回はその点を生かしてスプレッドにし、更に低カロリーにすることで糖尿病の方や肥満
症の方にも食べて頂ける食品に仕上げた。
<質疑>(委:委員・群:群馬県試作協力者)
(委)低カロリーこんにゃくスプレッドでどんな問題があるかを考える。こんにゃくは大
変コストが高い。これを安くできればいいが、こんにゃく芋になるには3年くらい
かかるはず。この期間も問題となる。そういう中で、中国あたりから安い製品が入
ってくるとなかなか太刀打ちできない。だから、こんにゃく芋の場合はものとして
は大変良いけれども、コスト面をどういう風に解決できるのか、ということになる。
コスト面の問題をクリアしていくには、どんなものが外から入ってきてもそれを打
ち砕くような技術が必要になる。その技術をどうするか、ということで群馬県農業
技術センターが限定膨潤法というのを開発された。限定膨潤法で、例えば中国から
来る安い製品を防衛できるようなものができるかどうか、ということがポイントに
なる。
最後に話をしたいと思うが、いくつかのファクターがあって、ひとつずつクリアす
ると話がスッキリする。この課題ではこんなところが問題かなと思う。
(委)群馬県のスプレッド、リンゴ果汁のものを試食したが、他にみかんとかブドウとか
といったものも同じように可能か。
(群)可能だと思う。
(委)商品化に近いのではないかと思っているので、売る時には選択の余地がある方が良
いのではないかと思った。
(群)全くその通りで、バリエーションは考えている。
色々なものを作った中で、ゆずの味のものなどは美味しいがそれだとゆずの評価に
なってしまいそうなので、今回はいちばんスタンダードでなじみがあるという意味
であえてリンゴの味にした。
(委)耐熱性はどうか。今回スプレッドという形だが、パンなどの関連商品で考えるとト
ッピングなどの使い方があるかと思うが。
(群)ある程度はあると思うが、作り方によって固くなったり柔らかくなったりする。そ
のあたりはこれからの検討課題かと思う。調整の余地はあると思う。
(委)今日のままだとパンに塗るときにごろごろして全然広がらない。あれだとちょっと
まずいと思うが、もっとペースト状に柔らかくできるのか。
(群)可能だと思う。
(委)薄くのばしてみたが、結構塗れた。最初にすくった時はねとーっとした感じがあっ
たが、スプレッドということなので、どのくらいのびるかやってみたが、かなり薄
くまでのびた。
後は、何かサクサクするものが入っていると思ったのはリンゴということか。
(委)ジャムとの競争なので、ジャムとここが違うというのが出せれば良いと思うが。
(群)現時点で一般的なジャムの半分以下のカロリーになっているので、今後その点の消
費者への提供の仕方が課題だと思っている。
(委)その辺が物語になる。
(委)独特の粘りなのかもしれないが、ちょっと口の中で残るようなべたつきを感じたが、
改善できるか。
(群)あれがこんにゃくマンナンの物性が悪いところで、こんにゃくが他の食品への応用
のききにくい性質。それを克服するための技術が今回の限定膨潤だが、更に今後の
詰めで改善できればと思っている。
(委)ジャムを食べ慣れているせいか、気になった。
(群)試食にあたってもお願いしたが、利用の場面・利用方法のアイデアについてご指導
いただければありがたい。
(委)よく検討されているので、スプレッドだけでなく色々な用途はあると思う。加工用
原料としては、先ほど申し上げた耐熱性は全てにかかわってくるので、保存性の再
検討が必要である。このままでは使いにくい組成になっているので、加工用に適し
た形にできれば用途が広がるのではないか。
(委)ものを売る場合、販路の開拓が必要である。開発したものをどうやって売ろうかと
いうこと。ものによってかなり違い、どこにニーズがあるかによっても持って行く
所が違う。従って、スプレッドの場合は、どこに持って行くのかというと、一番最
初は地元からだと思う。たとえば、まず道の駅で宣伝して、口コミで広がって、次
は興味のある中小の企業。まずは足下から、順々にやると、どこかで注目されると
思う。注目されなければ、それで終了となってしまう。物語があれば続いて行く。
(委)私たちの工場は全国にあるが、地産地消主義ということで、地域の特徴の有る素材
を使った商品を、それぞれの工場でやっているが、そういった例を見ると、ある程
度認知度が高く健康機能等があるのであれば、エビデンスがあっても無くても地元
ではかなり受け入れられるという状況がある。群馬県産のこんにゃくといえば、認
知度は高いと思うので、まず地元での拡大を図るというのが良いのではないか。地
元の企業などに関心があると思う。
(群)少しでも早く先ほど指摘の点の改善を進めたい。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
香りがよい(リンゴの香り)、食べやすい・美味しい、甘さがちょうどよい、
色がよい、後味がよい
・改善して欲しい点:
粘度が高く塗りにくい、価格が高い、口の中に粘り気が残る
・その他:
スプレッド以外の用法としてヨーグルト・アイスクリームなどにのせる、
200gは適量、200gは多い(お試しサイズが欲しい)
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
1・自分たちが予想していた感想結果でした。
2・客観的に評価を頂けた事は大変参考になり感謝申し上げます。
<今後更に改善が必要と考える事項>
1・粘度のバリエーションをいくつか試作してみる事。
2・色、味、香りのベストマッチの開発。
3・機能性の分析
<その他特記事項>
この度機会を頂きました事、心より感謝申し上げます。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
こんにゃく芋
分析した機能性成分
水溶性食物繊維(マンナン)
分析機関
日本食品分析センター
分析法
プロスキー変法
含有量(%)
9.78
分析経過
・芋凍結乾燥(前処理)は群馬県農業技術センターで
実施した。
凍結乾燥品の分析値から、こんにゃく芋の含有量を
算出した。
(2)試作品形態時
地域農水産物名
こんにゃく芋
分析した機能性成分
水溶性食物繊維(マンナン)
分析機関
日本食品分析センター
分析法
プロスキー変法
含有量(%)
1.12
分析経過
・水溶性食物繊維のうち、こんにゃく原料由来部分を
算出した。
メグスリノキ
メグスリノキ葉茶
<②メグスリノキ葉茶>
試作協力先:社団法人埼玉県茶業協会
1.試作品について
容量又は重量
2g入りティーバッグ
納入数
40袋
利用した地域農水産物名
メグスリノキ
利用部分
葉
利用した地域農水産物の産地
埼玉県秩父地域
収穫時期
9月中旬
試作にあたっての着眼点
メグスリノキの未利用部位の葉を活用し、中山間地域の特産品開発を行う。
着目した機能性成分
ゲラニイン
お茶(ティーバッグ)
商品区分・形態
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
ティーバッグ1袋あたり2杯分(約250ml)の熱湯を使用し、2分間程度浸出させる。
想定される小売価格帯
500円(ティーバック10袋入り)
・鍋等で煮出さずに手軽に飲用でき、機能性成分が浸出しやすいようにする加工技術。
商品化に当たって
・機能性成分を維持しながら、飲みやすくする仕上げ技術。
苦労した点
・原材料の調達。
試作品の特徴
・団揉を行うことで緑茶と同じように、急須で手軽に煎れることができる。
・焙煎を加え青臭みを消すことにより、飲みやすくなっている。
連携した組織
埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所・(株)龍勢のまちよしだ
試作品作成組織
埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所
試作にあたっての
スケジュール概要
メグスリノキの葉収穫(9月)→メグスリノキ葉茶試作(9月~10月)
→個別包装(11月)→試作品完成(11月)
その他特記事項
開発に当たって想定した購買層 想定した主な販売ルート
・秩父地域に散策に訪れるハイカー。 ・道の駅、JA等の農産物直売所。
・ドライブ等で道の駅に立ちよる主に中高年層。 ・インターネットによる通販。
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
メグスリノキ(葉)
100
原材料名
3.試作品製造工程
原料受入・調整
枝と葉を分ける。
↓
萎凋
桃の香りのような萎凋香が感じられるまで、日陰に一晩静置する。
↓
粉砕
粉砕機で細かく砕く。
↓
団揉
布に包み、揉捻機で30分間揉む。
↓
乾燥
透気乾燥機(60℃、60分間)で乾燥する。
↓
焙煎
フライパン(表面温度240℃程度)で60秒間焙煎する。
↓
計量・包装
2gずつティーバッグに入れる。
割合(%)
4.試食品評価
*メグスリノキ葉茶
(意見交換会)
<試作協力者説明>
今回開発したのはメグスリノキの葉のお茶である。
メグスリノキは、ご存知の通り目に良いということで樹皮等の材がよく使われており、
埼玉県の山間部の直売所では材をチップ状にしたものが売られている。一方葉については
あまり利用されておらず、葉をそのまま売っているケースもあるが、乾かしてそのまま飲
まれる方がいるかどうかというくらいで、あまり表に出てきていなかった。メグスリノキ
の材を利用するときには同時に葉が収穫されるため、これを利用できないかということで、
試作者が茶の試験場ということもあり茶の製品化を検討した。
メグスリノキの葉は、単純に乾かして飲めば茶になるが、青臭くて飲み続けることが出
来ない。そこで、味を何とかしようということで緑茶を作る技術である団揉を取り入れ、
火入れ乾燥という工程を経て仕上げている。試飲していただいた商品は2gずつティーバ
ッグに入れて急須で簡単に抽出できる形態にした。そのへんが苦労した点でありPRのポ
イントである。
機能性成分のゲラニインについては、抗菌性作用があるということで目を洗ったりする
のに使われていたようだが、最近ガンに効くのではないかということで、一部で話題にな
ってきているものである。
今後、この機能性についての評価がどのように出るのか我々にはわからない部分がある
が、評価に合わせてこのような商品がもっと受け入れられれば良いと思う。
今後、製品化に際し一番問題になるのは、収穫作業である。標高約700~800mの
山間地に自生しているので、これを効率よく収穫するという課題への対応を考えていかな
ければならない。空いている土地を使って栽培するといったことも含めて考えていく必要
がある。
<質疑>(委:委員・埼:埼玉県試作協力者)
(委)メグスリノキ葉茶、これは普通は木材の部分を使っているということだが、機能性
成分はこの木材の部分というのに局在しているということか。そうすると、葉の部
分にどのくらいあるか、というのが問題になるが、葉っぱには健康に係わる機能性
成分はあまり無いのか?
(埼)メグスリノキの材の部分に含まれている物質と葉の方のゲラニインは違う。材に含
まれているロドデンドロールが肝機能を活性化するといわれているが、葉の方には
含まれていないとされている。
(委)機能性成分が材と葉で違うということか。
(委)材の方にあるものについては以前調べたが、ゲラニインについては詳しくない。抗
菌作用があって、目を洗うのに使用されるというような話だったが、飲んだときに
ガンに効くであろうというところを狙いとしているのか。
(埼)もともと飲んだらよいという話は、埼玉県のがんセンターの方から結構良いものが
あるという話があって、それでは飲めるような形に作ってみたらどうかというのが
発想にあった。その後、ガンの抑制についての研究は緑茶の抗ガン機能にシフトし
たためやられていないが、最初のアイデアとしていただいた。
(委)生臭みの除去というのは共通の問題。生臭みの除去はどうやったらできるか、そう
いう技術があれば全て解決ということになる。
目を洗うというのは、植物、私は昔アオキの葉で抽出したエキスが目に非常に良い
というので、昔の人というか高齢者の方がよくやっていた。こういうものは他にあ
るのか。
(埼)あまり詳しくはないが、お茶などで体を拭くことで床ずれ防止に良いなど、飲むも
のが使われることがあるという。
(委)植物の成分というのは、多かれ少なかれそういう防御反応に使われる。昔は一番近
くの植物を取ってそれを使っていた。
目を洗うということになると薄いアルカリ水。これとの組み合わせは考えられるの
か。
(埼)pHとの関係で機能性成分が失われるかどうかというのは過去、分析した時にはあ
まり影響がなかったと記憶している。それより生臭みを取るために加熱することで
失われる方が影響が大きいと考えられる。
(委)生臭みという問題だが、これは生臭みの成分によるがアンモニア基がある。それを
抑えるのにどうするか。普通に考えると酸である。だから、酸を使えれば抑えられ
る。それとともに含まれるポリフェノール系のものが生臭みを抑制するというのは
ある。
(委)手に付いた生臭みをお茶で洗うと取れるというのはある。
(委)酸の話は、薄いレモン水で手を洗う。手で食事をするときに経験があると思うが、
手を洗うボウルが用意してあって、レモンやレモン水が入っているものがある。こ
のような色々な情報がここでは応用でき、解決できる。それを解決できれば生臭み
の問題よりも、もっと機能性の部分をやった方がよい。
たとえばゲラニインではなくて、ゲラニイン関連成分。今お茶で非常に注目されて
いるメチル基を付加したポリフェノール系。メチル基が付いているかいないかでか
なり違いが出てくる。私の最近の経験ではメチル基がつくと普通機能性が高くなる。
全部が全部そうではないだろうが、一般的にはそう言える。
(委)メチル基が付くことによって吸収されやすくなる。
試作品形態時の含有率というのは、ティーバッグの状態かそれとも煮出した状態
か?
(埼)ティーバッグの状態である。
(委)お茶の方はどのくらいか。
(埼)お茶の方は、抽出2分間で50%程度が浸出する目安。火入れの程度を強くすれば
変わってくる。
(委)メグスリノキというネーミングが、なかなか面白い。もし私が考えるとしたら、メ
グスリノキとビタミンを組み合わせた食品の開発。組み合わせ食品が面白くなると
思う。このメグスリノキの葉のお茶を飲ませていただいたが、もう少し力強さがあ
るといいなという感じがした。そこを補うために組み合わせが面白いと思う。
これについては、最後にもう一度組み合わせについてお話ししたい。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
飲みやすい・思ったより飲みやすい、ティーバッグという手軽さがよい、
色がよい、後味がよい
・改善して欲しい点:
価格が高い(やや高い)、香りが悪い(青臭い)、後味が悪い(苦み)、
ゲラニインの機能性情報が必要
・その他:
ゲラニインの認知度が低いのではないか
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
飲みやすいという意見を多くいただき、目標の一つであった味の点では自信を持つこと
ができました。
一方で、機能性成分のゲラニインについては、ほとんど認知されていないこともよくわ
かりました。販売するに当たりネーミングや機能性のPRに工夫を凝らす必要があると実
感させられました。また、価格については、「やや高い」という意見が多くあり、値頃感の
ある量目、価格設定等、検討する必要があると感じました。
<今後更に改善が必要と考える事項>
・香り、渋味、苦味、青臭み等の改善策の一つとして、乾燥したハーブ(レモンバーム、
カモミール)とのブレンドを検討したいと考えています。
・メグスリノキ丸ごとの機能性を活かすため、葉に枝や樹皮を加えたものも検討する必要
があると思われました。
・商品化にあたっては、ネーミング、パッケージに加えてメグスリノキそのもののPRや
情報提供及び、商品としての利用の目安等、情報発信も合わせて行う必要があると感じま
した。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
メグスリノキ(葉)
分析した機能性成分
ゲラニイン
分析機関
埼玉県農林総合研究センター
分析法
HPLC法
含有量(%)
11.1%(乾物当たり) 分析経過
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
メグスリノキ(葉)
分析した機能性成分
ゲラニイン
分析機関
埼玉県農林総合研究センター
分析法
HPLC法
含有量(%)
7.88%(乾物当たり)
分析経過
特記事項無し
中島菜
中島菜せんべい
<③中島菜せんべい>
試作協力先:北陸製菓株式会社
1.試作品について
容量又は重量
3枚入り(試食品のみの形態)
納入数
80袋
利用した地域農水産物名
中島菜
利用部分
葉、茎
利用した地域農水産物の産地
石川県七尾市
収穫時期
12月~3月
試作にあたっての着眼点
石川県固有の農産物で機能性もある中島菜を菓子にすることにより通年販売できる。
着目した機能性成分
GABA(血圧上昇抑制効果)
商品区分・形態
せんべい(焼菓子)・個包装袋入り
常温
保存方法
試食にあたっての留意点 開封しそのまま食べる。
想定される小売価格帯
525円(税込み) 形態は15枚箱入り(個包装品)
商品化に当たって
中島菜チップ保存の為、乾燥するとコストアップになるので塩水に浸漬しましたが、その塩分の調整。
苦労した点 適正な膨化を得る条件が非常に狭いこと。
100gのせんべいを作るのに約30gの中島菜のみじん切りを使用し、ワサビ茶漬け風の味付けをしました。えび
せんべいの範疇になりますので、ウルチや小麦せんべいより一層素材の風味がします。
購買層としては50歳以上のシルバー層を想定しています。
試作品の特徴
連携した組織
石川県農業総合研究センター
試作品作成組織
北陸製菓株式会社
試作にあたっての
スケジュール概要
8月~11月初旬 試作検討 11月中旬 試作品完成 、包装・分析 その他特記事項
中島菜についてはJAの協力により、通常栽培時期以外の原料供給が可能となりました。
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
割合(%)
澱粉
48.8
みりん
1.0
中島菜チップ(塩水浸け)
14.6
白ごま
1.0
えび
9.8
鰹エキス
醤油
8.3
酵母エキス
玄米
4.9
膨張剤(ミョウバン)
植物油
4.9
香料
トレハロース
2.4
クチナシ色素
デキストリン
2.2
香辛料
3.試作品製造工程
<中島菜チップ製造>
洗浄⇒カット⇒塩水漬け込み⇒冷蔵保管
<せんべい製造>
計量⇒混合⇒一次焼成⇒乾燥⇒2次焼成⇒味付け⇒乾燥⇒選別⇒包装⇒金属検知
4.試食品評価
*中島菜せんべい
(意見交換会)
<試作協力者説明>
私どもが作ったのは中島菜のせんべいである。
中島菜は、石川県の能登半島にある七尾市中島町を中心に採れるからし菜の一種で、今
回の試作品は、せんべいの中でもえびせんべいの部類に入る澱粉を使用したせんべい。今
回使用した澱粉自体がほとんど無味なので、素材の風味が生かせるのではないかと思って
いる。味付けとしては、ワサビ茶漬け風の味付けをしている。
市町村合併前の旧中島町役場からは乾燥した中島菜を頂いてお菓子を作っていたことが
あったが、合併後は原料供給ではなく中島菜を使ったお菓子を作りたいという話をもらっ
ている。たくさん使いたいが、少量のものを乾燥するとコストが高くなってしまい菓子に
は不向きなので、保存するために塩水を利用してチップを塩水に漬けて保存するという形
をとっている。ただどうしても塩分が葉に付いてくるので、この点でお菓子自体の塩分を
コントロールする為に少し苦労した。
また、このえびせんべい自体は二回焼成を行っているが、膨化する条件が非常に狭く、
試作でうまくいっても二回目に再現性がないという問題があり、事務局を通じて座長から
ご紹介いただいた岩手大学の三浦先生からもアドバイスをいただきながら試作を行った。
塩水で保存したが、何回か行う中で1回エラーが出た。塩水の上部の方で白い変質がみ
られた。何かもっと低単価で保存する方法があれば教えていただきたい。
<質疑>(委:委員・石:石川県試作協力者)
(委)次に中島菜、大変美味しかった。これはわさび風味だが、茶色のものは何か。
(石)煎った玄米。
(委)中島菜とはいえ、いろいろなものを組み合わせて作っている。そしてえびせんべい
型にしたというわけ。そうすると、とりあえずはえびせんべいとのコスト競争と地
域ブランドとしての良さをどれだけ出せるのかということになるかと思うが、コス
トについては話があったようにかなり大変だと思う。
(石)今、中島の地域ではフリーズドライの粉末と熱風乾燥をやっている。フリーズドラ
イの粉末は、市販されてはいるがお菓子に使える値段にはなっていない。
(委)もう一つの問題点が食塩のコントロールと言っていたが、これは食塩をもう少し減
らすことは難しいのか。
(石)現状は色の変化への対応もあって高めになっている。100gの水に15gの食塩
を使っている。
(委)しょっぱかった。血圧上昇抑制効果といいながらせんべい自体はしょっぱいので、
もう少しどうにかならないのかと思った。
(委)これは、石川県農業総合研究センターが考えると面白いと思うが、pHはどのくら
いか。
(石)測ったことはない。
(委)普通pHでかなり違う。こんなに多く塩を使う必要は無いのではないかと思う。多
分、石川県農業総合研究センターが知っていると思うので聞いてみるといいと思う。
もう一つ問題として表面の薄膜と言っていたが、これは産膜酵母ではないか。
(石)石川県農業総合研究センターで検討しているが、まだ特定されていない。
(委)保存の時に出てくるのか。
(石)5℃の冷蔵庫で保存しているが、その状態で出る。
(委)塩濃度はかなり低くなっている感じか。
(石)菜っ葉が入るので、それからも水分が出るので低くなっていると思う。
(委)産膜酵母であれば、そんなに気にする必要はない。
(委)漬物などにできる膜のこと。たくあんなどでも出る。
保存するには塩濃度が高くなくてはいけないが、使う寸前に脱塩できないのか。
(石)脱塩は行っている。
(委)それでもあの程度は残ってしまうということか。
(石)表面にタレをつけているので、そちらの塩分もある。全て中島菜の塩分ではない。
(委)膨化を気にしているが、えびせんべいというのはある程度の固さはあった方が良い
のではないか。
(石)そうではあるが、現在この中島菜せんべいを含めて地元の素材を使ったせんべいに
ついては工程を増やして少し従来のえびせんべいと食感の違うものを求めている。
一般のえびせんべいは、回転焼きというやり方で生地を作って、それをかきもちの
ように乾燥させた後ガスで焼くという。このえびせんべいの回転焼きでは、はんぺ
んに近いようなものを作って膨化する力を残しておいて、乾燥した時にぐっと膨ら
んで従来のえびせんべいと違う食感を出したいということがある。
(委)新しいタイプのえびせんべいということか。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
美味しい、色がよい、香りがよい、ピリッとくる辛さがよい、
パリパリした食感がよい
・改善して欲しい点:
塩味がきつすぎる・辛い、ワサビ味が強過ぎて中島菜の特徴が感じられない、
*包装は中身が見えた方がよい、中身に対し個装が大きすぎる
(*注:試食のための包装ではあるが、商品化に向けての意見として記載した)
・その他
中島菜の認知度を上げる取り組みが必要、ターゲットはもっと幅広く考えてよい
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
たくさんの意見を聞くことが出来ました。ありがとうございます。予想していたよりも
良い評価をいただいたのでうれしく思います。
(食感・食味の面)塩分、ワサビ味が強いと
いう意見が多く見られましたので、味の改良をしていきたいと思います。
<今後更に改善が必要と考える事項>
中島菜チップを保存の為に塩水で浸漬しているので塩分の調整が難しく、試食結果でも
塩味が強いという意見が多くありました。今回アドバイスされましたpH調整による中島
菜の保存方法を検討したいと考えます。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
中島菜
分析した機能性成分
GABA(γ-アミノ酪酸)
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析法
液体クロマトグラフィー
(フタルアルデヒド蛍光検出法)
含有量(%)
0.0167%
分析経過
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
中島菜
分析した機能性成分
GABA(γ-アミノ酪酸)
分析機関
石川県農業総合研究センター
分析法
液体クロマトグラフィー
(フタルアルデヒド蛍光検出法)
含有量(%)
0.000800%
分析経過
特記事項無し
キハダマグロ
ツナキャンディー
<④ツナキャンディー>
試作協力先:焼津水産化学工業株式会社
1.試作品について
容量又は重量
3粒/袋 (1粒個包装は4g)
納入数
80袋
利用した地域農水産物名
キハダマグロ
利用部分
血合肉
利用した地域農水産物の産地
西部太平洋(水揚げ地:静岡県)
収穫時期
年中
試作にあたっての着眼点
魚由来風味、特に香りの除去、マスキング
着目した機能性成分
ペプチド類
グミキャンディー
商品区分・形態
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
特に無し
想定される小売価格帯
21粒入り/袋 : 700円
商品化に当たって
苦労した点
①素材調製に必要な酵素をスクリーニングすることで、機能性を持ち且つ風味の良好なマグロ血合肉由来ペプチ
ドを調製することができた。魚臭を活性炭脱臭するとともに、グミ加工時にはマスキング目的で香料を選択してい
る。
②グミの製造工程では高濃度下で100℃近い高温処理がされる為、加工時におけるペプチド類の加熱分解やメイ
ラード反応などを抑える配合を検討した。
試作品の特徴
開発ターゲット:美容を心がけている中高年女性
①美容を心がける女性向けの抗酸化食品として、毎日でも食べることができ、習慣化できる手軽さ(形態)、量、味
覚を目指して開発を行なった。
②マグロ血合肉を加工処理して作られた抗酸化性を持つペプチドを4%含んでいる。
連携した組織
特になし
試作品作成組織
富士高フーヅ工業株式会社
試作にあたっての
スケジュール概要
2006年
8~10月:機能性ペプチドの調製方法、分析方法および機能性の検討
9~11月:機能性ペプチドの安全性評価試験
9~11月:機能性ペプチドを含有するグミキャンディーの試作検討
その他特記事項
特になし
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
割合(%)
②部
①部
水飴(Brix75%)
57.5
梅エキス
1%未満
砂糖
26.7
梅フレーバー
1%未満
ゼラチン
7.35
着色料
1%未満
ツナペプチド
5.2
クエン酸
1.8
粉末オブラート
1%未満
1%未満
光沢剤
1%未満
乳化剤
③部
3.試作品製造工程
【ツナペプチド製造工程】
マグロ血合肉に加水し、80℃加熱処理 ⇒ 酵素分解(50℃、数時間) ⇒ 加熱酵素失活 ⇒ 活性炭粉末添加、攪拌
⇒ ろ過 ⇒ スプレー乾燥 ⇒ 整粒
【ツナキャンディー(グミ)製造工程】
①部の原料に加水、混合して加熱溶解 ⇒ 加熱濃縮 ⇒ ②部を混合 ⇒ 鋳型に充填 ⇒ 放置(冷却) ⇒ 型抜き ⇒③部をコーティング ⇒ 金属探知 ⇒ 検査 ⇒ 個包装
4.試食品評価
*ツナキャンディー
(意見交換会)
<試作協力者説明>
静岡県には焼津港や清水港といった大きな港があり、皆さんご存知の通りマグロがたく
さん水揚げされ、マグロを使った缶詰の製造もかなり盛んに行われている。一方で昨今マ
グロの漁獲量減などの背景があって、マグロの価格が高騰している。
マグロの加工においては、マグロを解体して缶詰加工などに利用するが、血合肉の部分
が副産物として大量に排出されるという状況にあり、現状は主な用途としてペットフード
向けに使われている。この血合肉を原料として付加価値を持った食品素材を開発し、また
それが有効活用されることが期待されている。
血合肉は、繊維状のタンパク質が多く、また魚特有の血なまぐささというか風味があり、
なかなか一般の食品には使いにくいという特徴がある。そこで、この血合肉の食味を改善
できたらということから挑戦して、血合肉をプロテアーゼで酵素処理し、まずペプチドに
加工した。酵素処理するに際して何種類かスクリーニングをかけたが、遊離アミノ酸の生
成が少なくて、食味が悪くならないといった酵素を選定することにした。更に水溶性のタ
ンパク(ペプチド)に加工し活性炭処理することによって生臭みの軽減を図った。
また、酵素処理で苦み成分が出てきてしまうが、活性炭処理したことで苦み成分を低減
することもできた。これをスプレー乾燥し、ツナペプチドとして食品素材という形に加工
した。
このツナペプチドについて、まず機能性だが、ESRを使った測定で抗酸化性があるこ
とが確認されており、ヒドロキシラジカルなどの活性酸素に対して消去能があることが見
出されている。また、このツナペプチドの粉末の中には、抗酸化性があることが知られて
いるアンセリンが約3%含まれている。
食品素材としての安全性の確認として、ラットを使った急性経口毒性試験と細菌を使っ
た復帰突然変異試験を行っている。
この素材を使った商品開発だが、抗酸化性があるということに注目し、美容を心がけて
いる中高年女性をターゲットとした商品を作りたいと考えた。また、できれば毎日食べて
いただきたいと思い、形態・摂取・味覚について検討し、1粒約4gの梅味のグミキャン
ディーの試作を試みた。
1粒ずつの個包装という形態を考えたのは、携帯性があって、食べる場所や時間を気に
しないで食べられるということを考えた。味覚については、女性に好まれやすい味、また
血合肉由来の血なまぐささの残存という課題に対して、これをマスキング出来るというこ
とで梅の風味を使った。グミの形に加工するにあたり、ペプチドとゲル化剤がどうしても
反応してしまい、製造工程中で焦げてしまうとか、ゲルが固まらないといった問題がしば
しばあったが、原料の選定や配合量を調整することによって今回の試作品であるツナペプ
チドを5%配合したグミ、ツナキャンディーというものを作ることができた。
ツナキャンディー中のペプチドの残存量も測定しており、配合した量のペプチドがほぼ
そのまま残存している事を確認している。
現在、出来上がったツナキャンディーについて保存試験を行っている。
<質疑>(委:委員・静:静岡県試作協力者)
(委)ツナキャンディーの話では、臭いのことが大変気になるということで臭いをとるた
めに大変ご苦労されたわけだが、臭いがとれればいろいろなものに使えるというこ
と。そうすると別にペプチドにしなくても良い。この臭いというのはどうしてもと
れないものなのか。だからこそペプチドまでしているのか。
(静)乾燥するとだいぶ良くなるがかなり残ってしまうということと、加工された後の食
品の保存中に戻り臭が出てくるという点があり、今回はこのような形にした。
(委)大量に血合肉は取れるのか。
(静)トン単位で取れる。マグロの重量で7%位が血合肉。
(委)それでもかなりの量。
この中には鉄分なんかは含んでいないのか。
(静)鉄分はほとんど含まれていない。
(委)私が女性であれば鉄分が欲しいと思ってしまう。それを何とか考えた方が面白いの
ではないかと思ったが。
(委)血合肉が普通の食として敬遠される大きな理由は何か。色の問題か。
(静)メリットは繊維質のタンパクが多いことだが、逆に食感の部分がデメリットではな
いか。
(委)血合肉の物性を変えて、あの色をきれいにしてしまっては。
(静)最初は赤いきれいな色をしているが、缶詰に加工する前に蒸煮しているので褐色に
変わってしまう。
(委)タンパク変性とともに色が変わってしまうということ。最終的にこれをやった理由
は、いろいろやっても大変だったからということか。
マスキングで梅エキスを使ったということだが、色々な味を検討されたのか。
(静)いくつか味を検討したが、カツオ梅のイメージもあって水産物に対して梅というの
がうまく合うのではないかと考えた。
(委)静岡なので、私なら柑橘類を考えてみたいが、そんなことを言わなくてもいろいろ
考えられていると思う。
もう一つ感じたのが効果の点だが、試験しているのは抗酸化性のみか。
(静)抗酸化性のみ。
(委)動物試験を行っているが、次の段階はヒト試験か。
(静)そこまで出来れば良いと思うが。
(委)最近厳しくなっていて、エビデンスが無いとすぐにダメになる。
甘いグミ味だが、ツナとしての特徴を出さなくてもいいのかと思った。ツナも美味
しいので、ツナの美味しさとグミの味だけでも良いと思うので是非考えてみて欲し
い。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
血合肉・ツナを感じさせない食べやすさ、粒の大きさが適当、手軽に食べられる
・改善して欲しい点:
価格が高い、後味に生臭さが残る、中高年ターゲットにしては食感が固い、
*ツナキャンディーという名称は変えた方がよい
(*注:試作品としての仮称ではあるが、商品化に向けての意見として記載した)
・その他
ターゲットは若い女性でもよいのでは、鉄分も入っているとなおよい
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
血合肉ペプチドに由来する魚臭のマスキングが課題でしたが、試食結果にて一部の方よ
り、生臭さが残存しているとの評価をいただきました。試作品は保存経過日数を経る毎に
生臭さが増す傾向があり、更に味、香り共に改善が必要と感じました。またサプリメント
としてグミキャンディーの形態を提案したのに対し、手軽さ、食べやすさ、大きさなどに
良い評価を多くいただいた。ツナとグミキャンディーという意外性からか、その組み合わ
せへの評価は2分されるが、サプリメントとして有効な形態である感触が持てました。
<今後更に改善が必要と考える事項>
ターゲットを女性とした点で、更に鉄分をプラスするというご提案をいただきました。
食品素材ツナペプチド中には、鉄分が1%含まれているので、配合量から推測するとグミ
1粒中に鉄分が2mg含まれることになり、2、3粒の摂取で栄養機能食品の摂取目安量
を十分得られる。ペプチド素材という視点からのみ開発を行なっていたが、鉄分補給とい
うプラス機能のアイデアは是非取り入れたい。その他、商品名のネーミングに関する厳し
いご意見を多くいただき、ご指摘の点を踏まえて再検討いたします。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
キハダマグロ
地域農水産物名
分析した機能性成分
ペプチド
分析した機能性成分
アンセリン
分析機関
焼津水産化学工業株式会社
分析機関
焼津水産化学工業株式会社
分析法
HPLC法
分析法
HPLC法
含有量(%)
83.1%
含有量(%)
3.25%
分析経過
分析経過
含有量にはアンセリンも含む
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
キハダマグロ
分析した機能性成分
ペプチド
分析した機能性成分
アンセリン
分析機関
焼津水産化学工業株式会社
分析機関
焼津水産化学工業株式会社
分析法
HPLC法
分析法
HPLC法
含有量(%)
4.21%
含有量(%)
0.182%
分析経過
分析経過
含有量にはアンセリンも含む
特記事項無し
てん茶(茎)
てん茶の茎入り焼き菓子
<⑤てん茶の茎入り焼き菓子>
試作協力先:京都府立茶業研究所
1.試作品について
容量又は重量
4枚入り(約40g)
納入数
80食
利用した地域農水産物名
てん茶
利用部分
茎
利用した地域農水産物の産地
京都府
収穫時期
5月中下旬
試作にあたっての着眼点
茶に含まれる機能性成分の有効利用
着目した機能性成分
テアニン
商品区分・形態
菓子
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
特になし
想定される小売価格帯
210円/袋(4枚入り)
茎の粉砕及び篩い分け
商品化に当たって
苦労した点 生地の成型
試作品の特徴
①てん茶(抹茶の原料)の茎には、リラックス効果をもたらすといわれる茶特有のアミノ酸・テアニンが豊富に含
まれている。通常は焙じ茶原料として利用されており、焙じ工程によりテアニンが分解し、テアニンの機能性が利
用できていない。本試作品は、テアニンが残存し、なおかつ茶の香味を生かした食品となっている。
②連携組織である京・流れ橋食彩の会は、時代劇の撮影等で有名な「流れ橋」の直近にあり、京都府有数の高
級てん茶産地である八幡市(やわたし)に所在する。本試作品は京料理で有名な「八幡巻」と「流れ橋」のたもと
にできる渦をイメージして成型したものである。地元の特産品を用いた「地産地消」に意欲的で、本試作品の販
売を目指している。
③本試作品の対象とする購買者は、高齢者から子供までお茶とお茶の機能性成分に興味をもつ消費者層であ
る。
連携した組織
特定非営利活動法人 京・流れ橋食彩の会
試作品作成組織
京都府立茶業研究所
試作にあたっての
スケジュール概要
8月:試料の粉砕、9~11月:添加量、成型イメージの検討、11月:完成
その他特記事項
特になし
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
割合(%)
薄力粉
46.6
卵
8.7
無塩バター
23.3
てん茶の茎(粉砕物)
3.9
グラニュー糖
17.5
3.試作品製造工程
①てん茶の茎を通風乾燥機で120℃30分火入れ乾燥する。
②茎を試料粉砕機で粉砕し、355μm以下の粉末を篩分ける。
③室温でやわらかくした無塩バターを白っぽくなるまで、練り混ぜ、さらに、グラニュー糖を加えて混ぜる。
④薄力粉と茎の粉砕物を混ぜて篩にかける。
⑤③の生地に卵を加えて混ぜ、よく混ざったら④の粉を加えてへらでさっくりと混ぜる。
⑥生地をまとめてラップに包み、冷蔵庫に30分くらいねかせる。
⑦生地を成型し、170℃で20分間焼成する。
4.試食品評価
*てん茶の茎入り焼き菓子(試作品仮称:京・流れ橋クッキー)
(意見交換会)
<試作協力者説明>
今回着目したのは、お茶の成分であるテアニン。テアニンは、皆様ご存知のようにお茶
にしか含まれていないアミノ酸で、緑茶の旨味の本体と言われている。
テアニンは、味への関与だけではなく脳に関する機能性やリラックス効果への関与が注
目されており、工業的に生産されたテアニンがサプリメントとして販売されているが、今
回は天然のテアニンを使っているということを一番のPRポイントにしたいと思っている。
次に、てん茶製造の特徴についてご説明したい。てん茶製造の工程を示すサンプルを持
参したのでご覧いただきたい。
てん茶製造においては、生葉重量の約12%の乾燥物が得られるが、同時に約5%程度
の茎の乾燥物も得られる。葉の部分は選別・切断された後、臼で挽かれ抹茶になるが、茎
の部分はそのままでは用いることができず、焙じられて焙じ茶の原料になっている。
実は葉の部分よりも茎の部分の方がアミノ酸(テアニン)が相当含まれている。これが
焙じ茶になってしまっているということは、焙じ工程の中でテアニンが分解しているとい
うことで、成分的にもったいないので、茎をこのまま利用したいと思い食品に利用するこ
とを考えた。
試作にあたっては、てん茶の茎には煎茶や玉露のように揉み込むという工程がないので
青臭い香味があるため、通風乾燥機で120℃30分間茎の火入れ処理を行った。この条
件で処理することで青臭い香味を除去でき、適度な火入れ香味が発揚した。また、テアニ
ン含量については、ほとんど減少しなかった。
今回は、火入れ処理を行った茎を試料粉砕機で粉砕し、粉末として試作品に利用した。
試作品は、試作実績のある焼き菓子(クッキー)とした。
お茶は、アイスクリームやバターなどの乳製品と相性がいいので、青臭い香味を除去す
るためにバター類を使ったクッキーとした。クッキーは焼成工程を経ても生地の温度は1
10℃前後にしか上がらないので、テアニンが分解されず、テアニンの機能性成分が生か
される試作品になったと思う。
最後に連携組織について若干説明したい。
京都府内に八幡市というところがあり、そこの食品加工グループである特定非営利活動
法人「京・流れ橋食彩の会」と連携した。八幡市は、時代劇の撮影などで有名な「流れ橋」
がある所。京都府有数の高級てん茶の産地でもある。また、「八幡巻」という有名な京料理
があるが、八幡市がその発祥の地といわれている。試作品は、この「八幡巻」と「流れ橋」
の渦をイメージして成型したものである。
「京・流れ橋食彩の会」は、地元の特産品を用いた地産地消に意欲的で、この試作品の
販売を目指しており、既に試験的な販売を実施したところである。
<質疑>(委:委員)
(委)次にてん茶の茎入りクッキー。これは「京・流れ橋クッキー」という名称が面白く、
物語があるということで押してみると面白い。名前だけでなくデザインと組み合わ
せが面白かった。デザインというのも大変重要なファクターだと思っている。これ
については、最後にまとめてお話ししたい。
要はテアニンの機能性を組み込んだデザインを考えられないか、ということ。
ただ、テアニンについての先ほどのご説明のような機能性に関するエビデンスはま
だ出ていないはず。具体的にどこの部分でどういう風に健康に良いかがまだ出てい
ないかと思う。私が知っている範囲では、エビデンスは無いと思うので、そのエビ
デンスが無いものについては、皆さん各々気をつけて対応願いたい。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
お茶の味が生きている、見た目が可愛い・緑の渦巻きが可愛い、お茶の香りがよい、
甘過ぎなくてよい、苦みがほどよい、固めの食感がよい
・改善して欲しい点:
価格が少し高い、少し固い、パサついている、甘さが物足りない、
後味が悪い(苦み・粉っぽさ)、お茶の香りが足りない
・その他
土産物としてもよいのでは
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
お茶の風味があっておいしい、渦巻き状のデザインがかわいい、甘みが抑えられて食べ
やすいとの感想が多くありました。
一方、もっと緑色を出せないか、少し堅い、価格が少し高いという意見もありました。
総合的には、お茶らしさを感じる商品であるとの高い評価をいただきました。
多くの方々から丁寧にアンケートに答えていただき、今後の商品開発に大変参考となり
ました。このような機会を与えていただき感謝しています。
<今後更に改善が必要と考える事項>
食感がやや堅いという意見が多く、もう少しサクサクしたような口当たりの生地を考え
る必要があると思われました。
また、価格が高いとの意見もありましたが、今後の工夫により半額程度の設定が可能と
思われました。
さらに、従来の抹茶入りの菓子との違いを明確にするため、付加価値(パッケージ、デ
ザイン、機能性などの情報)をどのようにつけるか、再考する必要があると思われました。
<その他特記事項>
当研究所ではてん茶の茎の機能性成分を抽出した旨味調味料並びに、これを利用した漬
け物を試作研究しており、次年度も本事業の活用を希望します。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
てん茶(茎)
分析した機能性成分
テアニン
分析機関
京都府立茶業研究所
分析法
OPA-HPLC法
含有量(%)
3.13%
分析経過
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
てん茶(茎)
分析した機能性成分
テアニン
分析機関
京都府立茶業研究所
分析法
OPA-HPLC法
含有量(%)
0.137%
分析経過
特記事項無し
有色米(黒米)
B(原液)
有色米ドリンク酢
A(ドリンク)
<⑥有色米ドリンク酢>
試作協力先:株式会社三宅商店
1.試作品について
容量又は重量
150ml
納入数
80本
利用した地域農水産物名
有色米(黒米)
利用部分
玄米
利用した地域農水産物の産地
岡山県苫田郡鏡野町
収穫時期
10月
試作にあたっての着眼点
機能性(抗酸化作用)を有する、色素(アントシアニン)の機能性と色調に注目しました。
着目した機能性成分
アントシアニン
商品区分・形態
飲料(酢酸含有ドリンク)
常温(開栓後は要冷蔵)
保存方法
試食にあたっての留意点
特になし
想定される小売価格帯
1ビン200円以内(原液タイプは500円)
商品化に当たって
苦労した点
原料価格が高価。
機能性成分含量の変動。
嗜好性。
色調の維持。
試作品の特徴
米酢でありながら、ワイン風、バルサミコ酢様の香りを有し、香り、味、共に特有な刺激(酢酸)が少なく、抵抗感な
く飲用ができる。
アントシアニン系色素の赤紫色の色調が維持できている。
ターゲットは、健康が気になり、肥満が気になり始めた30、40代を想定しています。
連携した組織
岡山県工業技術センター
試作品作成組織
(株)三宅商店
試作にあたっての
スケジュール概要
原料調達 9月
アルコール発酵 9月
酢酸発酵 9月~10月
調製、容器充填 11月
試作品完成 11月
その他特記事項
特になし
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
有色米米酢
20
原材料名
はちみつ
3
酒
水
77
種酢
20
トレハロース
1%未満
水
40
有色米(黒米)
31
麹
7
水
61
乳酸
1%未満
割合(%)
(有色米米酢)
40
(原料酒)
3.試作品製造工程
◎有色米米酢製造工程
①原料(有色米:黒米) → 洗浄・浸漬 → 蒸し → 仕込み
→ 発酵(アルコール発酵)→ ろ過 → 酒(原料)
↑
米麹+水+酵母+乳酸
②酒(原料)+水+種酢 → 酢酸発酵 → ろ過 → 有色米米酢
※酢酸発酵開始時 アルコール濃度6%、酢酸濃度1.2%
◎ドリンク酢製造工程
有色米米酢+水+はちみつ+トレハロース → 混合 → 充填 → 殺菌 4.試食品評価
*有色米ドリンク酢
(意見交換会)
<試作協力者説明>
私どもは以前からお酢を作っているが、最近の酢のブームの中で何か特徴のあるものを
作りたいということから、地元で一部の農家が力を入れている有色米(黒米)を素材とし
て利用したいと考え岡山県工業技術センターにお知恵をお借りして今回開発した。
引き続き岡山県工業技術センターから説明する。
今回の試作品を作る母体になったのは、平成14年度に岡山県で立ち上げた、食品関連
企業・研究者・行政が一体となり、生理活性物質を含む機能性食品等の事業化、商品化を
推進するバイオアクティブ岡山という産学官連携組織である。
試作品は岡山県の黒米を使ったドリンク酢である。岡山県の黒米生産量は全国で10位
前後であり、色調の良いものだと通常1kg1000円といった値段で取引されている。
しかし、黒米は一つの穂でも登熟の違いがあり、約3割のいわゆるクズ米といったものが
出てくる。それをうまく活用したいということで、平成14年度からドリンク酢に取り組
んでいた。三宅商店も以前試作したものがあったが、非常に酢酸の香り・味・刺激が強い
ということで、そのまま飲んでみると抵抗が強かった。
今回試作したのが本日試飲していただいたドリンクタイプで、香りなどをできるだけ穏
やかな感じにしたいということで試作したものである。
基本的な商品設計のポイントは、開発の過程でも出てきた点だが、食酢には肥満抑制効
果があるという動物実験やヒト試験の結果もあったので、健康なかでも肥満を気にし始め
た中高年の方々にもっと刺激の少ないものをストレートで飲んでいただきたいという点で
ある。
<質疑>(委:委員・岡:岡山県試作協力者)
(委)次に有色米ドリンク酢。これは先ほどの発表ではかなり香りを抑えたものにしたと
いう風にお伺いしたが、試飲してまだ強烈だと思った。出来れば、もう少し酸味を
マイルドに出来ないか。要するに酢酸臭の問題である。
糖質など、それをカバーするものを加えると面白い。
もう一つは、一部中和するということか。全部中和すると酢酸ナトリウムになって
しまうので。例えば重曹を少し検討したらどうだろう。
(岡)あえて、試作品には添加しない方向にもっていった。
(委)今、普通に市販されているドリンクでかなり上等なものと比べて遜色なかったと思
う。当然色々なものと飲み比べられたと思う。
(岡)実は清澄化したタイプも試作した。清澄化するのが良いのかどうかで議論があり、
モニターしていただくということがあったので、あえて清澄にしないものを作って
みた。
(委)そもそも、飲みやすくすることにかなりウエイトを置いてリンゴ酢などと混ぜたり
して売っているものもあるが、そういったものではなくきちんとした黒酢ドリンク
として売っているものと比べたら全く遜色無い。色もきれいだし味も穀物の味があ
る。お酢を飲むわけだから、それ相当の覚悟が必要なんだと思う。継続的に飲む時
には量を減らせば良いのだと思った。
ただ、150mlはちょっと飲みきれないかなというのがあって、100ml位に
して欲しい。それで採算ベースに乗るかはわからないが。
希釈してあるものについては、全く問題なかった。
ただ、原液の方はかなり難しい。美味しく飲めなかった。
(委)明確な目標があってクイッと飲んでしまうか、それとも飲みやすくして量を考える
か、それは飲む側の選択だと思う。
(岡)その辺が、最終商品としての大きな課題となる。
(委)色々工夫しているのはわかる。子供がこういうものに関心があっていろいろ買って
くるので、そのたびに飲んでみるが、なかなか一生懸命飲むというのは大変なもの
だと思う。そういう意味では、色々なものと比べても遜色無い。黒米という点にア
ピール性があれば、それはそれでまたいいのでは。
(委)今迄の開発経過を見ていくと色についてずっとやってこられている。今回黒米とい
うことで出された。以前から申し上げている「組み合わせを考える」と面白い。ど
こと組み合わせればいいか考えればよいが、多分今まで開発されているものはみん
な同じ系列のものなので、これらの組み合わせは出来にくいと思う。だから、突飛
なものを考えないといけない。pHを変えるのであれば実に単純で、対象物が酸な
ので、アルカリ性の基があればいい。だから、食品素材を考えるならアミノ酸を考
えればよい。酸を完全に消さなくてもいいから、アミノ基で対応すればよい。アミ
ノ酸の中でも美味しいものがいいと思う。グリシンは甘い、アラニンも美味しい。
グリシンかアラニンでどうだろうか。
これは、あくまでも私が今ちょっと考えたことで、どうなるかはわからないが、試
してみてはどうだろう。
(委)色を生かすという意味で今回透明の容器を使っていると思うが、光などの影響は無
いのか。
(岡)現在、貯蔵試験も含め継続的な試験を実施している。ドリンクにはポリフェノール
の安定性に効果があるという糖を入れているが、これも継続して検討している。
(委)先ほどの pH の話だが、アントシアニンは pH によって色が変化するはず。
(岡)酸性では、鮮やかな赤紫色だが、中性から色調が変わってくる。
(委)そんなところも気をつけるともっと面白いものになるかも知れない。
(岡)機能性をうたうとなると、薬事法との関係が出てくる。大企業であれば予算を使っ
てものになりそうだとなると相当なデータを取ってやると思うが、地方の私どもの
ような規模では、なかなか予算を取りながらデータを揃えるのは難しい。
たまたま試験場や県の機関など公的なところが関心を持ってくれれば対応してもら
えるが、一般的にはなかなか対応が難しい。特徴のある商品、体によい商品を作り
たいが、なかなかそれがデータの形で取りにくいという悩みがある。
(委)学術的なデータと実用的なデータとは全然違うと思う。実用化できるものとは、皆
さんの話で総合すると、美味しくて、機能性があって、物語がある。機能性という
ところで引っかかるわけだが、機能性を明確にいわないで、「こういう何々の美味し
い成分が含まれている」だけで良いのではないか。たとえば、「四万十ののりが含ま
れている」でも良いと思う。そうすれば、成分など言わなくても良い。
成分の機能性については、学術的にエビデンスを明らかにすべきものであるが、食
品に含まれる成分を直ちに学術的エビデンスを要する機能性と結びつけて消費者に
訴求したり表記・記載したりするのではなく、ある機能性に富む成分を含む特徴的
な原材料に着目した食品として開発することでよいのではないか。
それに、学術的なデータは、いろいろなものをごちゃごちゃに考えることは出来ず、
一つ一つの成分についてしか言えない。一つの成分ではダメでも他のものと組み合
わせたらいいかもしれない。例えばベータカロテン、危ないと言っていて、他のも
のを組み合わせると良いかもしれないと言われている。組み合わせると無限に近い
データが必要になるので、エビデンスについては、簡単に結論が得られるものでは
ない。
(委)何か試作品などがあって、それが何に効くのかということを調べるのであれば、食
品機能性研究センターが食品総合研究所内に出来たので、基本的には来ていただく
ことにはなるが、一週間でも二週間でもかまわないので分析をして、そのデータは
全て自分のものとして持ち帰る、ということも可能になっているので、問い合わせ
てみていただきたい。
(試食検討会)
<主な意見>
ドリンク酢A(ドリンク)
・好ましかった点:
色がきれい、飲みやすい
・改善して欲しい点:
味が薄い・中途半端な味、酸味がきつい、色が美味しそうでない、
濁り・沈殿物が気になる、甘さが欲しい、150mlは多すぎる
ドリンク酢B(原液)
・好ましかった点:
色がきれい、好みにあわせて調整できる、
・改善して欲しい点:
酢の臭い・味がきつすぎる、価格が高い、濁り・沈殿物が気になる
・その他:
ドリンクではなく色をいかしてドレッシングなど調味料に用いたほうがよい
*A・Bの比較では20:32でBが良いとの結果
(モニター群による差が大きい結果となった)
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
地方中小メーカーが食味調査を実施する事は非常に困難です。今回の試食検討会により
経験、性別、年齢など幅広いモニターの貴重な意見を聴くことができ大変参考になりまし
た。
ドリンク酢という特殊な形態のため、今までの酢の飲用経験の有無等により、評価が分
かれるという事も改めて確認できました。さらに、清澄度に関しての指摘が予想した以上
に少なく、商品設計を進めるにあたり、貴重なアドバイスとなりました。
原液はドリンクタイプに調製したものに比べ、色調や料理など他用途への利用や好みに
応じた濃度に調製、味付け可能などの理由から評価され、今後の商品設計の上で良いアド
バイスをいただきました。
<今後更に改善が必要と考える事項>
酢酸が有する特有の味、香りから、食味、口当たり、飲みやすさなどの改善が必要と考
えます。特に、甘味、旨味を改善するために、アミノ酸も含めた糖質等の検討をしたいと
考えています。
原液は色調が評価されていましたので、販売容器や具体的な用途も含めて検討する予定
です。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
有色米(黒米)
分析した機能性成分
アントシアニン
分析機関
岡山県工業技術センター
分析法
HPLC
含有量(%)
0.0126%
分析経過
特記事項無し
(2)試作品形態時
地域農水産物名
有色米(黒米)
分析した機能性成分
アントシアニン
分析機関
岡山県工業技術センター
分析法
HPLC
含有量(%)
0.000188%
分析経過
特記事項無し
青のり
青のり入りスープ
<⑦青のり入りスープ>
試作協力先:有限会社四万十食品
1.試作品について
容量又は重量
7.5g
納入数
80個
利用した地域農水産物名
四万十川 青のり
利用部分
藻草全体
利用した地域農水産物の産地
高知県
収穫時期
11~3月末
試作にあたっての着眼点
すじ青のりにはたんぱく質が30%前後含まれており、血圧を下げる効果が有り。
着目した機能性成分
たんぱく質(ペプチド)
青のりの入った、フリーズドライのスープ
商品区分・形態
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
入れるお湯の量を守って沸騰したお湯をいれ、召し上がってください。
想定される小売価格帯
1個 120円
商品化に当たって
ペプチドを入れると、FDにする時に発泡しやすく、商品が少し大きくなりやすくなる。
苦労した点
スープに四万十川の青のりを使用して青のり風味が特徴。
販路は、土産店、量販店が対象になり、年齢層は30歳以上がターゲットになると思います。
カップスープにすればコンビニ、弁当屋(お持ち帰り)の対応商品にもなり、年齢層も若くなると考えています。
試作品の特徴
連携した組織
高知県工業技術センター・協和FD食品工業㈱
試作品作成組織
協和FD食品工業㈱
試作にあたっての
スケジュール概要
試作品検討(8月)→第1回試作品評価検討(9月)→第2回試作品評価検討(10月)
→試作品製造(11月)
その他特記事項
最終調整で、ペプチド3%の添加で、機能性を調査中。
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
割合(%)
鶏卵
23.3
調味料(アミノ酸等)
2.8
ペプチド(青のり由来)
16.0
ごま油
2.3
ねぎ
13.3
かまぼこ
0.7
濃縮がらスープ
12.9
香辛料
0.6
醸造調味料
7.7
野菜エキス
0.5
ポークチキンオイル
6.6
青のり
0.5
醤油
6.5
増粘多糖類
0.1
澱粉
3.3
酸化防止剤(ビタミンE)
0.1
食塩
2.8
3.試作品製造工程
1、加水・加熱
7、真空凍結乾燥
2、調整卵混合・加熱
8、検品
3、調味料、副原料混合・加熱
9、梱包
4、具材混合
10、箱詰め
5、充填
11、出荷
6、予備凍結
4.試食品評価
*青のり入りスープ
(意見交換会)
<試作協力者説明>
今回の試作に当たっては、四万十川で採れる青のりのタンパク質を分解してペプチドを
取り出し、それを添加した食品づくりを考えてみた。
二種類あるが、一つめは青のり入りスープ。
とろみの無いスープととろみのあるスープの二種類の開発を進めていたが、とろみのあ
るスープはペプチドを加えることによりフリーズドライにする段階でどうしても発泡して
しまい形状が整わないということが起こり、試食品はとろみの無いスープで作り上げてい
る。
とろみの無いスープだと青のりが沈殿してしまうので、いずれはとろみのあるスープと
して作り上げていきたいと思っている。
機能性の面では、ペプチドには血管を収縮させるアンジオテンシンという酵素を分解す
る働きがあり、そういった点を考えて商品作りを行ってきた。その結果、アンジオテンシ
ンⅠ変換酵素阻害率は68.4%と非常に阻害率が高く、市場に出ている商品と比べても
特保に認定されているドリンクなどに負けない位の阻害効果があると考えている。
<質疑>(委:委員・高:高知県試作協力者)
(委)青のりのスープだが、試食をして、いろいろなものを組み合わせて美味しくしてい
ると思う。そして、青のりの含有量がかなり・・・・・
(高)少ない、というか沈んでしまうので少なく見える。それを浮かすのにとろみを付け
ようと考えたが。
(委)原料としての青のりは0.5%か。
(高)あまり入れてしまうと値段が高くなってしまうので、青のりを生かすのにとろみの
あるスープの開発を進めていたが、どうしてもペプチドを加えるとフリーズドライ
の段階で発泡して形状が整わなくなる。それで断念してとろみのないスープにした。
現在、フリーズドライの製品でとろみの付いた商品は無く、OEM 企業としても開発
を進めて行きたい商品なので、引き続き研究を進めていかなければならない。
(委)その状態で風味はあるのか。
(高)ある。
基本的に言えば、試飲されたときに少し濁っていたと思うが、あれはすましスープ
が基本で提案をしたが、どうしても濁ってしまう。澄んだ上湯(シャンタン)というス
ープを使ったが、製造段階で濁ってしまった。だから面白くなくなってしまうとい
うことなので、研究を続けていかなければならないと思う。
(委)0.5%というのは、かなり少ない含有量かなと思って、風味を出すのならもう少
し加えた方がいいと思ったが。
(高)たくさんというと、本当に緑々になって、単価も120円が150円といった値段
になってしまうので、売場で競争できない単価になってしまう可能性が出てくると
思う。
(委)私が興味があったのは、あのスープの状態でかなり塩味を強く感じたが。
(高)160mlの湯を入れてちょうどの状態に仕上げているが。
(委)私が塩味を強く感じたということなので、他の方はどうだろう。
(委)こってりスープという雰囲気だった。青のりのスープというと、さっぱり系のスー
プをイメージするのに。まずいというわけではないが、何かこってりスープに青の
りが入っているスープだな、という感じがした。
(高)どうしても見て濁っているので豚骨のような感じがするかもしれない。
(委)豚骨とチキンと全部入って、とってもこってりしたスープに青のりが混ざっていて、
カニかまの赤も利いているし、どちらかというと若者向きのスープになっている。
ターゲットは30代以降になっていたと思うが、どちらかというと若い人向きだと
思う。味もそれなりに濃かった。あれはあれでありかなとも思うが、青のりスープ
のイメージはもう少しさっぱり系で、青のりがもっと入っているのがいい。でもそ
うすると高くなる。価格も抑えて、ある程度競争できるというものと、高級で特別
なものが別にあってもよいのでは。
(高)青さのりという扁平のりがあるが、今の段階ではそれも少し加えて食感も出して、
それからも風味が出るので、併用するということも考えている。それでのりの風味
を出していくという方法。
(委)青のりを添加する時に、もっと大きな状態で添加することは出来ないのか。すごく
細かいが。
(高)そうなると、異物の処理が難しくなってくる。大きければ大きいほど青のりに付い
ている異物を取るのが難しい。石の上に生えているので、それを漁業者が洗って天
日干しをしていくが、どうしても細かい砂系が気になるので、短く切っている。
(委)たくさん入っている割には存在感が無いのが残念だったが。
(高)スープの香りの方が強く、意外と香りがない。どちらかというと水に入れた時には
先ほど言った青さのりの方が香りが強い。青のりの香りは水に負けてしまうという
ことがある。
(委)その辺をどうやってクリアするかだが、四万十という物語があるので、これは生か
せる。四万十という名称がつけばそれだけでもイメージがよい。
(高)やはり美味しくなくてはいけないので。
(委)ちょっと冗談っぽく言ったが、最後にまとめのところで申し上げたいと思う。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
具がたくさん入っている、具材の色彩がカラフル、飲みやすく美味しい、
フリーズドライで使い勝手がよい、
・改善して欲しい点:
塩味がきつい、青のりの風味が不足、青のりが少ない、
・その他:
味噌汁・雑炊・お茶漬けなども考えては
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
スープは全体的にいい評価を頂いていると思うが、改善点もたくさん記入して頂いて、
大変参考になりました。今後の商品造りに生かして行きたいと考えます。
<今後更に改善が必要と考える事項>
全体的に青のりの風味が少ないとか、少々塩味が強い、透明感のあるスープに、のりを
多くしたほうが良い、和風のスープでは?と言うような、ご意見を頂き、私どもと考えが
一緒で安心致しました。以上の改善点に注意をし、協和FD食品工業㈱との商品開発を進
めていくつもりで御座います。合わせて、青のりはこれ以上に入れると、小売価格が高く
なるためとろみスープで対応し浮遊している状態を造り、青のり風味を生かすために薄口
にし、透明スープ(ペプチドを添加しないで、発泡を押さえ機能性を調査)にし試作をし
模索するつもりです。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
四万十川 青のり
分析した機能性成分 生理活性ペプチド(アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性)
分析機関
高知県工業技術センター
分析法
合成基質を用いた酵素活性測定法
分析結果
アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害率 87.0%
分析経過
スジアオノリのサーモリシン加水分解物について活性測定
(2)試作品形態時
地域農水産物名
四万十川 青のり
分析した機能性成分 生理活性ペプチド(アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性)
分析機関
高知県工業技術センター
分析法
合成基質を用いた酵素活性測定法
分析結果
アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害率 68.4%
分析経過
スジアオノリのサーモリシン加水分解物を添加したスープ
青のり
青のり入り珍味
<⑧青のり入り珍味>
試作協力先:有限会社四万十食品
1.試作品について
容量又は重量
20g
納入数
80個
利用した地域農水産物名
四万十川 青のり
利用部分
藻草全体
利用した地域農水産物の産地
高知県
収穫時期
11~3月末
試作にあたっての着眼点
すじ青のりにはたんぱく質が30%前後含まれており、血圧を下げる効果が有り。
着目した機能性成分
たんぱく質(ペプチド)
青のりの入った珍味の製造
商品区分・形態
常温
保存方法
試食にあたっての留意点
袋を開けそのまま食べて下さい。
想定される小売価格帯
500円(20g)
商品化に当たって
シイラは鮮度が落ちると、だんだんと匂いが強くなってくるため、匂いを消すのが難しい。薄く切って日干しする
苦労した点 のに、より薄くするのが好ましいが薄く日干しするのが難しい。
シイラを薄く切って、ジャーキー風に造った。
土産店、酒の販売店などの対象商品として考えています。
試作品の特徴
連携した組織
高知県工業技術センター・エビス食品
試作品作成組織
エビス食品
試作にあたっての
スケジュール概要
試作品検討(8月)→第1回試作品評価検討(9月)→第2回試作品評価検討(10月)
→試作品製造(11月)
その他特記事項
小回りがきく工場なので、何度か調整し11月18日に商品が届きました。
機能性の調査を進めます。
2.使用原材料及び割合(1%未満のものについては原材料名のみ)
原材料名
割合(%)
原材料名
割合(%)
シイラ
75.0
青のり
1.5
味噌
11.5
ガラムマサラ
0.7
MU
2.2
酵母
0.6
ペプチド(青のり由来)
2.0
クミン
0.6
チリメンエキス
1.8
ナツメグ
0.5
三温糖
1.8
粗挽きコショウ
1.8
3.試作品製造工程
1、シイラ切込み
6、乾燥
2、調味料合わせ
7、袋詰め
3、シイラ漬け込み
8、金属検出器
4、エビラに並べる
9、箱詰め
5、四万十のり・粗挽きコショウ振り掛け
10、出荷
*漬け込みの為、調味液に若干のずれが有ります。
4.試食品評価
*青のり入り珍味
(意見交換会)
<試作協力者説明>
もう一つの珍味の方は、当初いわしを検討したが外来のものが多く、高知産でシイラと
いう細長い魚があり、これを利用することにした。シイラ自体がペプチドを含んでおり、
機能性の面でも有利ということになる。
ただし、シイラは日が経つにつれてアンモニア臭が出てくるので、それを消すのに非常
に苦労した。まだ少し残っているが、今の段階ではここまでという状態。
機能性の面では、ペプチドには血管を収縮させるアンジオテンシンという酵素を分解す
る働きがあり、スープと同様にそういった点を考えて商品作りを行ってきた。その結果、
アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害率は96.6%と非常に阻害率が高く、市場に出ている
商品と比べても特保に認定されているドリンクなどに負けない位の阻害効果があると考え
ている。
<質疑>(委:委員・高:高知県試作協力者)
(委)もう一つの珍味だが、大変美味しくビールのつまみにいいと思ったが、シイラから
作られたわけだ。
(高)高知県の東部はシイラを食べるが、西部では食べない。そのため、西部では漁協に
入った時点で海に捨ててしまうか、一部は冷凍して東の方に売っている。今回のも
のは購入して製造しているのでコストが高くなっているが、西の方で集めれば1/
10位の値段で買えるのではないかとも思っている。
(委)かつお節などと比較すると、問題外に安くできるわけだ。
(高)そういうことになる。
(委)私が気にしたのは、かつお節の血圧抑制効果アミノ酸と競争になると思ったが、そ
れはほとんど問題にならない?
(高)どうだろうか。ただ、効果はかなり高く、高知県工業技術センターではシイラにも
ペプチドが含まれているので、乾物にしたためペプチドの効果が高くなったという
見方だった。液状では2%しか添加していないので、スープより低くなると思って
いたが、それが高くなったのはシイラに含まれているペプチドの成分がプラスされ
ているということだった。
(委)かつお節の強敵になるのかなと思った。
(高)シイラは古くなるとアンモニア臭が出るので、それを抑えることを研究しなければ
ならない。その点の修正にはもう少し時間がかかるのではないかと思う。
(委)アンモニア臭はあまり気にならなかった。
(高)少し味噌風味をつけているので、そのせいかもしれない。
(委)のりが片面にしか付いていなかったが、両面に付けて欲しい。
(高)高くなってしまう。正直、もっと減らそうと思ったくらい。
(委)まだ工夫すると、かなり面白いものが出来そう。シイラの状況を知らなかったので、
何で使うのかと心配していた。シイラがそういう状態なら、いいものが出来ると思
う。
(高)東京ではあまり食べない魚だと思う。
(試食検討会)
<主な意見>
・好ましかった点:
酒の肴・珍味としてはよい、美味しい、青のりの色がきれい
・改善して欲しい点:
価格が高い、食べにくい(固い・サイズが大きすぎ)
、青のりの風味を感じない、
・その他
青のりよりシイラが主役のよう(シイラの評価になってしまう)
5.試作協力者コメント(試食検討会結果・意見交換会内容をうけて)
<試食結果に対する感想>
大変厳しい評価を頂いたと痛感いたしております。副材料のシイラが課題かと思います
が、高知県西部の漁業関係者の中では、シイラの利用法が無くせっかく獲っても買い手が
見つからないような商品で、なんとか商品化したいと考えております。
<今後更に改善が必要と考える事項>
シイラの匂いを消し、柔らかい商品に仕上げていけば、青のりの風味がして面白い商品
に変わっていくと確信しております。小売価格の調整では、高知県西部の漁協より買付け
し、薄切りにカットしてくれる一次加工業者(弊社では一次加工が出来ない為)を探し出
し、液状漬けより弊社工場で加工を行う(冷風乾燥機により乾燥する)予定で今後調整し
てまいりたいと考えます。
6.機能性成分含有量分析結果
(1)加工直前の原料形態時
地域農水産物名
四万十川 青のり
分析した機能性成分 生理活性ペプチド(アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性)
分析機関
高知県工業技術センター
分析法
合成基質を用いた酵素活性測定法
分析結果
アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害率 87.0%
分析経過
スジアオノリのサーモリシン加水分解物について活性測定
(2)試作品形態時
地域農水産物名
四万十川 青のり
分析した機能性成分 生理活性ペプチド(アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性)
分析機関
高知県工業技術センター
分析法
合成基質を用いた酵素活性測定法
分析結果
アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害率 96.6%
分析経過
スジアオノリのサーモリシン加水分解物を添加した珍味について測定
(2)試作品評価のまとめ
試作品については、昨年同様それぞれ特色のある食品であった。今年度の試作品に用い
られた農水産物は、これまで付加価値の高い部分が利用されたあと十分活用されていなか
った部分を利用したものと、特色のある地域の農水産物を利用したもの、その両面をもつ
ものとに分けられる。この中には、これまで十分活用されていなかった部分の方が機能性
成分の面ではすぐれているものが含まれている。また、新たな技術の開発や従来からある
技術の応用など技術的な検討によって試作品の段階に到ったものが多い点にも留意してお
く必要がある。
地域の農水産物の機能性に着目した食品の開発にあたっては、このような観点で素材を
選択することが、商品化された時に差別性やコストといった面から有利に働くことが期待
される。
個々の試作品についてのモニターの評価結果は、「辛さ」を好ましいとする意見と辛すぎ
るという意見があるように、消費者の嗜好が多種多様化する中、モニターの嗜好によりば
らつく部分もみられた。その中でも一定の傾向値はとらえられており、試作協力者のコメ
ントからも今後の商品化に向けての参考になったことがうかがえる。
また、モニターのコメントの中で低カロリーこんにゃくスプレッドのカロリーを気にす
るものがいくつか見られたが、その後の意見交換会の中で一般的なジャムの半分以下のカ
ロリーとなっているという説明があったように、試作品のアピールポイントを消費者の視
点から考えて行くことも商品化に向けては重要な点となる。
この他にも有色米ドリンク酢の原液タイプに対しての色を生かして調味料等に活用する
ことを提案するコメントやツナキャンディーに対する鉄分を加えることを提案するコメン
ト、またいくつかの試作品に対するターゲット層についてのコメント、使用した農水産物・
着目した機能性成分が十分認知されていないことを示すコメントなどは、機能性成分に着
目した食品の開発においても、開発者の思い入れだけでなく消費者に手にとってもらうた
めの柔軟な発想が必要であることを示している。
今回の結果では、昨年同様どの試作品についても商品化に向けていくつかの課題が残さ
れていることが明らかになった。商品化に向けては、より機能性を訴求することが早道と
思われるものと、食品としての完成度を高めることが早道と思われるものがあるが、それ
ぞれの試作協力者が、今回の結果をうけて、あるいは試作品の検討と並行して残された課
題の解決に取り組んでいることも報告されており、今後の商品化が期待される。
3.まとめ
-農水産物機能性活用のための技術的課題-
座長
小林
昭一
農水産物機能性活用推進事業については、本年度は開始2年目となり、今回は、農水産
物の機能性活用を推進するためには、ニーズの把握が必須であるということで、宮川早苗
委員には「機能性食品市場の最近の動向について」をお願いした。この中で、高齢化率、
生活習慣病、医療費の増大―一次予防意識の高まりなどで機能性食品の開発と利用が活発
化してきたことを知ることができる。この機能性食品の開発をするには、原料農水産物に
含まれる機能性成分を特定し、どのようなニーズに適合するかを知る必要がある。効果が
ある成分が見出された場合、その含有量も知り、各人に適合する摂り方をすればよいこと
になる。
農水産原料中に含まれるか、または該当原料から生産され、健康(生理)機能にかかわ
る成分としては、3大栄養素の他にビタミン、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールなど
があり、この中、特に直接的に健康機能にかかわる部分が多いと思われるポリフェノール
については石川祐子委員、ビタミンについては廣瀬理恵子委員、これら成分に着目した商
品開発については山田雄司委員に、すでに前年度まとめて頂いた。今年度は、この他の成
分として、特定保健用食品品目数の約6割を占める糖質(食物繊維-これを糖質に含めな
い専門家が多い-、オリゴ糖、糖アルコール)の中、現段階でまとめることができるオリ
ゴ糖については宮崎勝昭委員、今後ますますの利用が期待されているアミノ酸系(ペプチ
ドを含めて)については石川祐子委員にまとめて頂いた。
現段階では、これら成分の機能は、試験管内、動物実験レベルで検証されたものが多い。
最終的な評価は、ヒト臨床試験-血液検査による検証を経て、厳正な疫学調査により、公
正、公明に公表されて、一般消費者によってなされるべきものであろう。所謂、試験管レ
ベルでの一次スクリーニングで、極めて明快・科学的にA=Bのような結果が得、さらに
B=Cのような結果を合わせて、故にA=Cとなるといった結論を得て、機能性成分の有
用性を一般消費者に説明する例が多い。すなわち、A成分がB腫瘍細胞の増殖を阻害する、
B腫瘍細胞の増殖でCなるがんが発生する。故にA成分はCがん発生を予防できる、と結
論できるが、これは成り立つであろうか。前者は試験管内、後者は生体内での結果であり、
両者間での作用条件の差異は極めて大きい。したがって、機能の表現は、「A成分は試験管
レベル(レベルⅠ)で何某の予防効果が期待される」程度になるのであろうが、これでは
インパクトがないので、研究者、学者は色々工夫して大きな成果としておられるのであろ
う。本質的には各生体は別個の存在であり、確実な方程式は成り立たない。どのような食
品成分でも機能性があり、機能性の種類と強さが各生体の状態で異なる、と理解した方が
よいかも知れない。主たる機能は何某で、量と他の成分との組み合わせ、生体の状態で異
なるから、適量を適切に摂取するように、と理解して頂けるように説明した方がよいであ
ろう。「何某の成分を含む何某の食品は、美味しく、何某の文化から生まれたものです。楽
72
しんで食べて下さい」といったところが農水産物の機能性活用の本位であろうか。
情報の発信の際には、特にブームの時には、十分な調査・知識が必要である。情報・知
識が十分でない消費者に誤った情報を発信したり、「真実」であっても、消費者に誤った判
断をさせるような情報には注意したい。さらに発信に際しての「エビデンス」の質も考え
なければならない。エビデンスを得るための新しいマーカーの開発が進められているので、
この進展についても注目したい。
これらのことを考えながら、売れる製品を作るための技術開発も重要である。技術開発
の仕方は各人各様であるが、大別して①明確な目的に沿った調査項目、知識・情報の集積・
解析とその応用、②閃き、といったところであろうか。①、②の共通事項として「情熱」
がある。実用化の際に降りかかる障害を乗り越える強い情熱があれば成功の確率が高くな
る。全体として、地域の農水産物の開発の場合、一種類だけを利用したものでは不十分。
組み合わせを工夫することが必要である。特に、新規開発である場合、微妙な差ではなく
ダイナミックな差が必要。これに加えて、
①原料品質が超越している。
②地域特異性がある。
③地域の技術が優れている。
④アイデアがある。特許権を獲得する。などの要件もある。
特許権の有効期間は 20 年であるので、①~③での開発が望ましいが、④は手っ取り早い
ので、④を得て、①~③の組み合わせを考え、その成長を待てばよい。
特許の基本はニーズであり、ニーズから発想した特許でなければ売れるものにはならな
い。これまでの特許で大きなものは何か、特許の質:売れる特許と売れない特許について
考えたい。売れる特許をつくるために考える上で、現在ではどんなニーズがあるか。食品
の開発でのキーワードの一つとして健康関連がある。関連した研究開発、行政、開発支援
情報も考え合わせて行く。
食品を取り巻く環境として、健康志向食材開発、農水省、厚労省の施策などがある。老
化防止用食品素材(このような素材はあり得ないが)の開発とその利用、行政の対応とし
て、特に「保健機能食品」制度、個別許可型の「特定保健用食品」と規格基準型の「栄養
機能食品」の2つを合わせた制度施行があり、現在の食品市場の状況は極めて敏感な反応
をしている。また、機能性-健康関連では医学とのつながりも深く、一部重なり合うので、
医薬分野の動きにも注目していきたい。病害ウイルス、細菌の特効薬成分で食品成分の一
部であるもの;薬品・食品共通の健康機能成分;抗肥満、抗酸化、抗アレルギー、抗腫瘍
などに効果を示す食品由来のものが見出されれば大きな製品になる可能性がある。製薬業
界の 2010 年問題として、大手主力薬品の特許切れへの対応が急がれているが、食品分野で
どのように補助・関与することができるか、アイデアが求められる。
良い特許とは、誰もが気が付かなかったことで、誰でもできる方法で利用価値の高い物
を作る方法とその素材である。特許の種類には大別して物質特許(ジョーカー特許)-ど
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のような製品にしても権利を主張できる-、基本技術特許(エース特許)-本技術を使用
しなければ目的の製品ができない-がある。この他、製造ラインをそのまま使うか、ごく
一部を改良、ラインの付け加えだけでよい、という要件もあり、行政、研究など各種情報
提供者との協同も実用化を推進する力になる。
さらに、食品製造・農水産物加工の際の実用化基本原則は以下に示すようなものである。
①農水産原料の大量入手が可能である。
②農水産原料が経済的に有利(安価)である。
③農水産原料が貯蔵性に優れている。周年生産できる。
④原料が加工しやすい。
⑤製品の利用価値が原料よりも高い。ニーズがある。高品質など。
⑥環境を汚染しない。
⑦情熱があり、周囲の理解が得られている。
この原則、特に①から⑥に外れた食品製造、農水産加工をすると、市場参入が困難で、
営業担当が⑦を前面にして努力することが求められる。
これに加えて、消費者の購買意欲高揚の方策が必要である。
①消費者の注目を集める宣伝-TV、新聞、雑誌など-著名人、オピニオンリーダーの支
持、援助、行政のお墨付き。しかし、説明できない現象を調べて成果にした疑似科学に気
を付けなければいけない。
②ラベリング(類似物をひとくくりに示す言葉)-ネーミングとデザインが美しければ
購買意欲は高まり、必要度が大きければ大きいほど-本能的な欲望に近いほど購買引力は
強くなる。
これまでの大発明から学び、次世代の大発明に向けた開発も考えたい。
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