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ロータリー式パーカッションドリルの地盤調査への適用
【104】 全地連「技術e-フォーラム2006」名古屋 ロータリー式パーカッションドリルの地盤調査への適用 (株) 興 和 ○斎藤慶一郎 鉱 研 工 業 (株) (有)エンドレスライン 生森 敏 馬場 信也 中野 義仁 竹内 久雄 柴田 東 真島 淑夫 1.はじめに 近年,トンネル先進ボーリングや土壌汚染調査などの 分野では,ボーリング作業の効率化を目的に,削孔能力 の高いロータリー式パーカッションドリル(以下,RPD と略記)を採用するケースが増えてきた1)。しかし,構造 物などの基礎地盤調査に適用した報告は,必ずしも多く はない。 筆者らは,地盤調査におけるボーリング作業の効率化 を目的に,地盤調査ボーリングへの RPD の適用について 研究を進めている。地盤調査のボーリングではコア採取 や標準貫入試験(以下,SPT と略記)が実施されるのが一 般的であるが,RPD にはコア採取と SPT の両方が実施で きる機構は備えていない。そこで,RPD でコア採取と油 図-1 PtoN サンプラーの構造 圧ハンマーの打撃を利用した動的貫入試験が実施できる における平均作業速度は,作業員の不慣れさが大きく影 サンプラー(以下,PtoN サンプラーと略記)を開発し,新 響して z=50~100m 間に比べて遅い結果であった。しか 潟市内の二つのサイトでそれぞれコアボーリングと動的 し,不慣れさが改善された z=50~100m 間の平均作業速 貫入試験を試みた。本報告は,この PtoN サンプラーに 度は約7~8m/日となり,スピンドル型ロータリー式ボー よるコアボーリングと動的貫入試験の結果について報告 リングマシンの粘性土・砂質土に対する標準的な削孔能 するものである。 率として示されている5.2~6.5m/日 3) 以上の結果が得ら 2.PtoN サンプラーの概要 れた。z=100以深では,地盤強度の増加に加えて SPT 時 PtoN サンプラーの構造を図-1に示す。PtoN サンプラ のロッドの入れ替え時間の影響が大きくなるため,深度 1) ーは,パーカッションワイヤーラインサンプラー を改 が増すにつれて平均作業速度は遅くなる結果であった。 良し,外径96mm のアウターロッド先端部に装着するコ (2) コア採取率 アチューブと JIS A 1219:2001で規定されている SPT 用サ コア採取は,z=132m 以浅を対象に実施した。z=60m 以 ンプラーを取り替えられる構造となっており,コアボー 浅では回転力のみでコアボーリングを行い,平均コア採 リングと RPD の油圧ハンマーの打撃による動的な貫入 取率は約43%であった。z=60~132m 間は回転力と打撃力 抵抗値:P 値の測定ができる。ここで,P 値は PtoN サン によるコアボーリングを行った結果,平均コア採取率は プラー先端に取り付けた SPT 用サンプラーを地盤に 約95%であった。z=60m 以深では,打撃を付加すること 30cm 貫入するのに要する打撃回数である。また,アウタ により掘削流体の循環・スライム排除が改善されコア採 ーロッドおよび先端ビットの内径は最小66mm であるこ ※ 深度(m m) 地層区分 地層区分 深度 2) とから,小口径固定ピストン式サンプラー による乱れ 00 の少ない土試料の採取や従来のφ66mm のボーリング孔 20 20 を利用して行われる各種原位置試験の実施も可能であ 40 40 3.作業効率とコア採取率 60 値が必要であったため,PtoN サンプラーによるコアボー リングと従来の SPT を実施している。 (1) 作業効率 図中の平均作業速度は,コアボーリングと SPT 作業の 深度10m 毎の平均値である。この調査では,初めて PtoN サンプラーを使用した。このため,z=50m より浅い区間 20 40 Aal2(m)-s 深度 z (m) RPD を適用した結果である。同調査では,コア採取と N As1-① As1-② As1(m) る。 図-2は,新潟市内の深度155m の調査ボーリングに コア採取率(%) N 平均作業速度 (m/日)0 コア採取率(%) 値 N値 N値 20 40 60 80 100 0 2 4 6 8 10 10 20 20 30 00 10 30 40 40 50 50 0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 100 0 60 Aal2(m)-c 80 80 Ac2 100 100 Aal3-s 120 120 Aal3-c 140 140 155 155 ノーコアボーリング Pg1 ■サンプリング ■サンプリング深度 ※平均作業速度:深度10m毎のボーリングとSPT作業の平均値 図-2 RPD による作業効率とコア採取率 全地連「技術e-フォーラム2006」名古屋 取率が高くなった。z=60m 以浅のコア採取率の低さは, と N 値の深度分布を図-3(b)に示した。換算 P 値は,パ 掘削方法の違いだけではなく,前記したように作業員の ターン1,2共に単に打撃回数をプロットした図-3(a)に 不慣れさも影響したものと考えている。また,採取した 比べ,より N 値の変化に近い傾向となり,P 値は Ep/Espt コアは,コア観察の結果,土質区分を行うのに十分な品 で補正することにより N 値に近い形で地盤の硬軟または 質であり,Eurocode7に規定されている「室内試験のため 締まり具合などの変化を評価できる可能性がある。 の土試料の品質クラス」により判断すると,サンプリン N 値 (回) 0 グカテゴリーB,C 相当に評価される結果であった4)。 4.動的貫入試験(P 値測定)結果 PtoN サンプラーによる P 値の測定は,新潟市内で表層 深度 z (m) から沖積砂層が厚く分布する場所で実施した。P 値の測 定パターンと測定条件,測定項目を表-1に示す。パター ン1,2の違いは,P 値測定時のアウターロッド回転の有 10 0 0 1 1 2 2 3 3 4 4 5 7 5 中6 砂 7 8 8 6 無であり,その他の条件は同じである。また,P 値の測 9 9 定は,簡易な測定方法として RPD のドリルヘッド頭部に 10 10 11 11 小型の加速度計を取り付け,打撃によって発生する加速 12 12 表-1 P 値測定パターン ターン1,2の P 値の 深度分布を示す。 パタ ーン1,2の P 値の深 度方向の変化は, z=6m 以浅の N 値の低 い領域では N 値の変 測 定 条 件 測定パターン 打撃油圧(MPa) 給 圧 (MPa) (押込み油圧) 打撃密度(bpm) 打撃エネルギー (J) (打撃1回当たり) ロッド回転油圧(MPa) ロッド回転数(rpm) 測定項目 パターン1 図-3 14.0 40 50 0 10 20 30 40 50 60 70 ● N値 ▲ パターン1 △ パターン2 140 280 420 560 700 P 値 (回) (b) N 値と換算 P 値の比較 N 値, P 値, 換算 P 値の深度分布 30 3.0 2200 500 - - 20 30 (a) N 値と P 値の比較 パターン2 総打撃エネルギー比 E p/E spt 図-3(a)に N 値とパ 10 ● N値 ▲ パターン1 △ パターン2 0 度の変化から測定した。 N 値, 換算P 値 (回) N 値 (回) 0 7.0 40 深度 z 30cm貫入に要する打撃回数 P 値 貫入時間 t 20 パターン1:平均値=9.63 15 10 5 パターン2:平均値=6.77 0 化にやや近い傾向である。しかし,それ以深の N 値の高 0 い領域では相関が悪い。パターン1の z=8,9m の P 値は, 孔底にスライムが残り,サンプラー内にスライムが詰ま ▲ パターン1 △ パターン2 25 図-4 10 20 30 N 値 (回) 40 50 総打撃エネルギー比と N 値の関係 5.おわりに 本稿の主要な結論は以下のように要約される。 った状態で貫入した。このため,大きな値が得られてい る。また,アウターロッドの回転を伴うパターン2は,パ 1) RPD と PtoN サンプラーを用いた深度155m の調査ボ ターン1に比べてロッドの周面摩擦による影響が軽減さ ーリングは,z=50~100m 間で従来のロータリー式ボ れることから,全体に P 値が小さい傾向である。今回の ーリングよりも作業効率が良かった。また,品質の良 試験で用いた RPD の打撃エネルギーは1分間で500J× いボーリングコアを高い採取率で採取することがで 2200bpm であり,これは SPT のドライブハンマーを高さ き,地盤調査におけるボーリング作業の効率化が期待 0.76m から1分間に約2323回自由落下させるエネルギー できる。 に相当し,P 値は N 値よりも非常に大きい打撃エネルギ 2) P 値は,Ep/Espt で補正することにより N 値に近い形 ーで得られている。このため,P 値は N 値=40~50でも で地盤の硬軟または締まり具合などの変化を評価で 貫入力が大きいために地盤強度の差による変化が現れ難 きる可能性がある。 いものと考えられる。 そこで,P 値を SPT の打撃エネルギーレベルに換算す る目的で,SPT 時の総打撃エネルギーEspt と P 値測定時 の総打撃エネルギーEp の関係について検討した。図-4 今後も種々の地盤でデータを蓄積し,RPD の地盤調 査への適用性,地盤情報としての P 値の適用性につい て取り組んで行きたいと考えている。 《引用・参考文献》 は,Ep/Espt を N 値に対してプロットしたものである。こ 1)遠藤哲哉:土壌汚染調査におけるパーカッション・ワ こ で , Espt= ド ラ イ ブ ハ ン マ ー 重 量 (623N) × 落 下 高 さ イヤーライン工法の経済的効果, 北海道立地質研究所 (0.76m)×30cm 貫入に要した打撃回数,Ep=1打撃当たり 第39回試錐研究会講演資料集, 2001. のエネルギー(500J)×30cm 貫入に要した打撃回数として 2)地盤工学会:地盤調査の方法と解説, 第5編 サンプリ いる。図-4より,パターン1,2の Ep/Espt は N 値の大き ング, 2004. さに依存する傾向はなく,パターン1 とパターン2の 3)全国地質調査業協会連合会:全国標準積算資料(土質調 Ep/Espt は,それぞれ6~15,4~10の範囲にあり,平均値 査・地質調査 平成15年度改訂歩掛版), 2003. はそれぞれ9.63,6.77である。この Ep/Espt の平均値を用 4)柴田ら:効率化を目指したロータリーパーカッション いて SPT 時の打撃エネルギーレベルに換算した換算 P 値 ドリルの地盤調査への適用, 土と基礎, Vol.54, No.4, 2006.