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山ふる解説員通信 - 山のふるさと村
都立奥多摩湖畔公園 山ふる解説員通信 No.58 2007 年 10 月 C E S 虫の声 木々の色づき 秋の装い 暑い夏が終わり、残暑も過ぎ、もうすっかり秋 を感じる季節になりました。この夏の山のふるさ と村は近年で一番猛暑の多い年となり、沢沿いで 元気に遊ぶ子どもたちの姿をよく見かけました。 私たち解説員にとっては新しい試みなどを通し、 得ることの多い夏となりました。 夏の繁忙期が過ぎて約 1 ヶ月が経ちましたが、 遅ればせながら夏期の活動と、秋期の活動の達成 目標をご報告します。ご覧下さい。 MENU P1-3 1. 秋の活動への取り組み P4-9 2. 夏の活動報告 P10 3. はっぴーレンジャーの体験記 P12 4. 木部ちゃんのエバーグレース通信 P13 5. 大人のためのハーヘーホー P14 6. インタープリターの視点 1. 秋の活動への取り組み 秋の活動の重点取り組み事項 秋季は、紅葉の最盛期を迎える 11 月を中心に、例年最も来園者数が多くなる時期です。また、 家族やグループ、子ども団体でのキャンプ・園内利用を目的とした来園者が多かった夏期に 比べ、がらりと来園者層・ ニーズが変わります。大人のグループや中高年のドライブの途中 など観光が目的の立ち寄り型の利用者を中心に、ハイキングなど比較的明確な目的をもった 利用者も多くなります。また、園内の自然の様子は、暑さが残る 9 月上旬から初霜を迎える 11 月下旬まで、紅葉などの景観の移り変わりや、渡り・冬ごもりの準備など生き物達の季節 的な動きが面白い素材となります。 上記に加え、ひきつづき 11 月までは園内くき沢橋の工事が行われているため、立ち寄り 型の来園者の減少や、園内・館内での滞留時間の長期化という来園者の利用形態の変化が予 想されます。 そこで、ビジターセンターでは夏に引き続き、来園者数に対するプログ ラム参加者の割 合をできるだけ上げることを第一の目標に、利用者の園内での時間の使い方に合わせたプロ グラムで活動のねらいを伝えていきたいと思います。特に、利用者を引きつける要素の強い 素材と、利用者の興味や関心をうまくつなぎ、館内及び野外での展示や情報提供からプログ ラム参加につなげ、自然公園施設としてのメッセージを伝えていけるような工夫をしていき たいと思います. −1− 山ふる解説員通 No.58 1.秋の活動への取り組み 秋期の展示 秋期は、紅葉見物やハイキングなどを目的に 多くの来訪者が訪れるため、ビジターセンター の利用を促すきっかけとなり、来訪者層の中心 である大人が気軽に参加できる展示を企画し ています。まずは、ビジターセンター前駐車 場にある3本の紅葉する木(紅葉のイロハモミ ジ・黄葉のイタヤカエデ・褐葉のケヤキ)の色 づき具合から、どの木が一番最初に紅葉のピー クを迎えるかを予想する展示『山ふるの紅葉 ダービー』が10月から登場予定です。紅葉を 一時の景色としてだけでなく、動きのあるもの として継続して観察する視点を得られることを ねらいにしています。紅葉にも様々な色合いや 動きがあることに関心を持ってもらう仕掛けと して、野外にスケッチコーナーを設置して、来 訪者に展示への参加を促します。スケッチした ワークシートはビジターセンター館内に掲示し ていくことで、紅葉の色づき具合の変化が来訪 者の作品によって分かります。来訪者の作業を 記録に残すことで完成する展示のため、記録を 追う楽しみから再来訪に繋がることにも期待し ています。ぜひ、秋の展示に参加しにいらして 下さい。 セルフガイドの更新 現在園内に設置されている2種類のセルフガ イドは設置から10年近く立っており、内容な どに現在の環境や利用状況と若干の相違が出て きています。また設置されている番号標識も老 朽化が激しくなってきています。セルフガイド は現在、(特に大人数の)団体対応に成果を上 げており、それらの利用状況にあわせてのリ ニューアルの必要性が年々増大しています。現 在のものをベースにリニューアルの大枠の案は できているので、この秋にねらいとストーリー を具体的にしてもう一度素材調査をし、来年度 の繁忙期までにセルフガイドのリニューアルを していきたいと思います。また、園内野外指道 標の見直しにあわせて、野外解説板や新しい形 の番号標識の設置も検討していきたいと思いま す。 レンタルボックス 夏休み期間が終わり、レンタルボックスも夏 から秋へと換わる時期となりました。今秋は新 規レンタルボックスを開発し、定番レンタル ボックスも更新することにより、昨年度の 10 月~ 12 月の貸出し数 22 回を上回ることを目標 としています。 昨年、少数ではありますが、利用者アンケー トの中や来訪者(女性)の声に、水彩絵の具の セットを希望する意見がありました。重ねて、 世間で大人のための塗り絵に人気が出たことか ら、紅葉を楽しみに来る中高年女性をターゲッ トにし、「絵画」をテーマとしたレンタルボッ クスを開発していきたいと思います。そして、 定番の「のんびりセット」ですが、10 月以降は 気温が下がるためか、昨年度も 7 ~ 9 月の 23 −2− 回に比べて 10 ~ 12 月は 3 回と利用数が減って います。そこで、ブランケットの入った「ぬく ぬくセット(冬期限定)」とセットで利用でき るようにすることで、利用数の増加を図ります。 山ふる解説員通 No.58 1.秋の活動への取り組み 園内野外指導標 山のふるさと村は、今年で開園から 17 年が 経ち、利用形態に合わせ、これまでさまざまな 園内施設の改修を重ねてきました。また、2007 年春に奥多摩湖いこいの路が開通したことで、 利用者の導線が変化しました。山のふるさと村 の利用者は奥多摩周遊道路からの立ち寄り型利 用者も多く、園内にクラフトセンターやキャン プ場、ビジターセンターが併設された東京都の 複合施設であることを知らずに入ってくる来園 者も見られます。ビジターセンターでも、この ような利用状況や利用者アンケートからの要望 などを報告し、相談しながら標識設置に協力し ていく予定です。 キャンパーズプログラム 「効果的な広報活動の検討」 現在のところ、宿泊者のキャンパーズプログ ラム参加率は約 15%程度です。年々上昇傾向に ありますが、さらに高めることが可能だと考え ています。 参加率が上昇しない要因の 1 つに、宿泊者に キャンパーズプログラムの存在が知られていな いことがあると考えられます。これまでにも、 解説員が直接宿泊者に案内を行うロビイング や、全宿泊者への案内チラシの配布、案内板の 設置といった広報活動を行ってきましたが、さ らに効果的な広報活動を検討することで、参加 率の上昇を図りたいと思います。 秋期は、これまでに行ってきた広報活動の見 直しを行い、これを改善していきつつも、新た な取り組みも模索するという形で参加率の上昇 を図っていきたいと思います。 「団体利用の手引き」の更新 現在、問合せ段階で団体に配布している資料 「団体利用の手引き」(2002 年度山のふるさと村 ビジターセンター報告書より抜粋)は必要な情 報が網羅されているため、団体対応増加に向け、 十分な効果を発揮してきました。今秋は HP の リニューアルに伴い、この団体利用の手引きを 今まで以上にわかりやすく、見やすく更新して いきたいと思っています。 具体的な更新内容としては「配布資料のデー タ化」「有料プログラムの情報追加」「全体に文 章を減らし、ビジュアルを工夫。読み手が理解 しやすい情報提供の仕方をする(バージョン アップ)」の 3 点が挙げられます。配布資料のデー タ化で HP から全てのデータをダウンロードす ることが可能になりますし、情報提供の仕方を 工夫することで、全体的に団体指導者とのやり とりがスムーズになると思います。また、下見 以前の段階で団体指導者が活動場所を探してい る場合、詳しい情報を入手できる状況を作って おくことは新規団体の対応増加につながると考 えています。 −3− 受け取り手にとって使いやすく、わかりやす い情報提供を意識し、今年度以上に多くの団体 の方に山のふるさと村を利用していただけるよ う更新作業を進めていきたいと思います。 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 2. 夏の活動報告 夏の重点取り組み事項のふりかえり 今年の夏は老朽化したくき沢橋の架け替えという状況から予想した通り、来園者数が極端 に減少しました。それにともない、ビジターセンターでの対応人数も激減しました。園内全 体を見ると、宿泊者及びクラフトセンターの対応数はほぼ例年通りとのことでした。これに より、減少した主な来園者層は日帰りの立ち寄り型来園者であり、夏期のビジターセンター の利用者もやはり日帰りの立ち寄り利用者が多くを占めていたといえそうです。下記のよう に宿泊者対象のキャンパーズプログラムが例年並みの対応数を上げることができた事からも このことが言えるでしょう。さらに、夏休み期間に関してみてみると、梅雨明けを迎える 8 月上旬までは雨天が多かったこと、8 月になると例年を大きく上回る猛暑(例年 8 月に最高 気温が 30℃をこえる日数は十数日だが、今年は 23 日あり例年の倍)という天候不順も特に 野外で実施するプログラムの対応数に少なからず影響をあたえていたといえるかもしれませ ん。 一方で、行事及び団体の対応は例年並みか例年を上回る対応数をあげることができていま す。上記のキャンパーズプログラムに併せて宿泊者やクラフトセンターの対応数などを見て も同様であり、このことから、目的をもって園内及びビジターセンターに来所する利用者は 年々増えているといえるでしょう。 今後及び来年度は、立ち寄り型の来園者にいかに働きかけるかが、夏の対応者数全体をあ げていく鍵になりそうです。 夏期の解説業務報告 くき沢橋の架け替え工事の影響で来訪者が減 少しても、自然体験プログラムの実施回数と参 加者数は減少させないことを目標に掲げまし た。工夫として、参加への促しを積極的に行う ことはもちろん、今まで以上に、来訪者に合わ せたイレギュラーなプログラム実施を行うよう にしました。ガイドウォークでは、事前申込み がなかった場合、時間をずらしたり興味を持っ た来訪者の都合に合わせた長さにしたりと工夫 したため、参加者総数を増加させることができ 2007 年度 ました。キャンパーズプログラムでは、宿泊者 数の増加に伴い実施回数を増加させることがで きました。 入園者数と来館者数は例年に比べ約 1/5 に減 少してしまいました。しかし、来館者数に対す る解説総数の割合は、昨年度までが約 0.3 ~ 0.5 割なのに対し、今年度は約 1.7 割まで対応する ことができました。この割合は、来館者が大幅 に減少した中で大きな成果と言えるのではない でしょうか。 2006 年度 2005 年度 2004 年度 (人) (人) (人) (人) 入園者 17447 52206 52853 53144 入館者 6656 44153 46148 46519 8003 展示解説 スライドショー ガイドウォーク ちびっこあーと ミニストーク Jr.Ranger 特別活動 ミニスライドショー セルフガイド キャンパーズプログラム 解説総数 19233 17401 12945 (回) (人) (回) (人) (回) (人) (回) (人) 32 72 36 59 8 4 9 99 319 318 828 248 326 9 17 339 1156 11244 71 80 44 87 23 4 14 91 471 822 425 560 23 31 480 1212 30 49 23 37 7 6 54 384 337 273 534 7 375 560 46 68 41 41 27 73 536 540 392 392 27 196 753 414 23257 206 19871 296 15781 −4− 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 団体対応 質の高いプログラムを提供しながら「実施回 数の増加」を目指して取り組んでいる団体対応 ですが、夏期の実施結果で特質すべきは有料プ ログラムの実施回数・参加人数です。ともに過 去最高数になったことです。2002 年度より受 益者負担型のプログラムを実施してきました が、2007 年度は実施回数・参加人数とも、飛 躍的に伸びた 2004 年度を上回り、過去最高数 の結果となりました。同時に無料で対応してい るプログラムは、過去最も少ない実施回数・参 加人数となりました。これらの結果から参加者 は「有料でプログラムを受けることに対して抵 抗感が少なくなってきた」「有料でも質の高い 無料プログラム 有料プログラム 自然体験をしたい」との意向が強くなってきた ことが伺えます。 秋期はこのような団体に、より充実した情報 を提供できるよう、団体に配布する資料を更新・ 追加作成する予定です。 ※更新する資料について詳細は P3「団体の利 用手引き」更新作業をご覧下さい。 プログラム ガイドウォーク 合計 ナイトプログラム 実施回数 参加者数 実施回数 参加者数 実施回数 参加者数 (回) (人) (回) (人) (回) (人) 2007 年度 8 288 54 902 62 1190 2006 年度 18 535 23 818 41 1353 2005 年度 11 335 23 691 34 1026 2004 年度 34 670 31 809 65 1479 2003 年度 22 647 14 491 36 1138 2002 年度 8 312 24 406 24 718 おはようウォーク キャンプ講習 スライドショー セルフガイド 団体名 青梅市立第 1 中学校 NAFA 子育て環境支援センター 千歳小学校学童クラブ父母会 東武トラベル 西東京子どもエコクラブ 岩渕子ども会 NAFA 子育て環境支援センター NAFA 子育て環境支援センター ガールスカウト東京第 193 団 ガールスカウト東京第 168 団ジュニア ガールスカウト東京第 168 団ブラウニー ガールスカウト東京第 168 団シニア 音羽スイミングクラブ 奥多摩消防少年団 奈良輪小学校 根形小学校 すいかどんぐり NAFA 子育て環境支援センター ガールスカウト東京第 193 団 ガールスカウト東京第 168 団 NPO 法人和泉自由学校 日本橋消防少年団 ガールスカウト東京都第 68 団 京橋消防少年団 社旗福祉法人雲柱社ライオンクラブ キリスト者共同体 すいかどんぐり ガールスカウト東京第 51 団 瑞穂町教育委員会 NAFA 子育て環境支援センター クリスチャンインターナショナルみつばさ教会 平岡小学校 西浦和放課後児童クラブ父母会 ガールスカウト東京都第 68 団 山内フェニックス NPO 法人山仲間アルプ 青梅市上町子供会 金子さん率いる子どもキャンプ 合計 参加者数 実施回数 (人) (回) 17 28 84 24 12 55 37 37 24 12 15 12 40 19 85 75 28 37 23 19 17 20 12 22 35 20 28 9 19 37 26 63 70 14 46 28 30 11 1 1 5 1 1 4 1 1 1 1 1 1 2 1 8 4 2 1 2 1 1 2 1 1 2 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1190 62 実施日 7/4 7/13 7/14 7/21 7/22 7/23 7/24 7/25 7/28 8/3 8/3 8/3 8/22 8/24 7/1 7/5 7/21 7/24 7/28 8/2 8/3 8/4 8/6 8/11 8/17 8/23 7/22 7/28 8/24 7/24 7/25 7/4 8/5 8/6 8/18 8/25 8/25 8/28 キャンパーズプログラム 今年度の夏期は、園内くき沢橋の工事の影響に より、例年と比較して、大幅な対応数の減少が予 想されました。そこで、 今年度の夏期のキャンパー ズプログラムは、参加者数の維持及び増加をねら いとした「ロビイングの徹底」を行いました。ま た、その効果を計るために、ロビイングによって 増加した人数のカウントを行いました。 表に示した結果から、今年度のキャンパーズプ ログラムは盛況であったことがわかります。対応 数が非常に多かった昨年度よりも、さらに多くの 方に参加して頂くことができました。特におはよ うウォークの参加者数は過去最高という結果でし おはようウォーク 実施月 7月 8月 ナイトプログラム た。また、カウントの結果、総参加者数 793 名中、 166 名の方がロビイングをきっかけとして参加し たことがわかりました。 今年度の夏期の取り組みによって、参加者数 の増加を達成することができました。また、ロ ビイングがどの程度の効果を上げているのかを、 具体的な数字から知ることができました。 以上のことから、ロビイングが効果的である ことがわかりました。今後も積極的に行うとと もに、その効果も継続的に計っていきたいと思 います。 参加者合計 (宿泊者総数に対する 実施回数 参加者数 実施回数 参加者数 (回) (人) (回) (人) (人) 対応者数の割合) 8 59 8 59 118 3.70% 25 250 34 425 675 10.60% 2007 年度合計 33 309 42 484 793 8.3% ( ※ ) 2006 年度合計 32 232 48 545 777 16% ( ※ ) 2005 年度合計 19 129 35 431 560 13.30% 2004 年度合計 25 223 48 530 753 15% −5− ロビイングで 申込んだ人数 (総参加者数に対する割合) 38 (32.0%) 128 (19.0%) ※ 2007 年度の宿泊者総数が 2006 年度の約 2 倍であるため。 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 サマーガイド 2007 今年度のサマーガイドは、「山のふるさと村 の魅力や活用法をアピールする」、「配布協力先 の新規開拓」を目標として作成に取り組みまし た。 園内各施設の活用法をカラーページで紹介 し、スタッフの写真など入れたことから、親し みやすさを感じたというコメントを多く受け、 サマーガイド片手にハイキングへ訪れた方や、 昔の集落跡を見に来たという方にもお会いする ことができました。 読者アンケートでは、携帯しやすいサイズや カラーページ、文字数を少なくして特集記事を 視覚的に表現した部分などが受け入れやすく、 読み進めるのに適していたと評価が高かった反 面、紙面のサイズを小さくしたことで、ビジター センターから発信する自然や環境活動に対する メッセージを毎回期待している方には物足りな さを感じさせてしまったのではという印象を受 けました。自然公園施設としてのメッセージと、 公園利用者の求める情報をそれぞれバランスよ く、効果的に伝える工夫を今後も検討していき たいと思います。 配布協力先については、奥多摩に観光で訪れ た方が立ち寄る場所はどこかと検討をし直し、 駅前の商店街から食事処など、奥多摩町内での 配布先を例年よりも 15 箇所増やしました。配 布協力先に直接依頼しに出掛けたことから、町 内の方にも山のふるさと村への理解を深めても らう機会になり、「観光に訪れた方にオススメ しておくよ」と応援をいただくことも。印刷部 数を 1000 部増やしたことで、周辺地域への新 聞折り込みを 3 年ぶりに実施することができま した。 展示 「おすすめネイチャートレイル~遊歩どう?」 ネイチャートレイルの紹介をメイン展示の テーマとした理由は、2007 年 4 月 28 日に「奥 多摩湖いこいの路」が開通したことによります (いこいの路開通の報告は No.57 に掲載)。新し い散策路を紹介するとともに、園内の散策道と その楽しみ方について紹介することで、来訪者 への自然体験のきっかけになることをねらって 作成しました。内容は、来訪者がニーズに合っ たトレイルを選べることをねらい、大きな園内 地図にトレイルを表し、各トレイルの距離や見 られる自然、消費カロリーなどを載せ、配布用 セルフガイドを設置しました。また、散策計画 を立てられるように最寄りのバス停の時刻表も 掲示しました。 この展示を掲示したことで実際に散策者が増え たのかはわかりませんが、展示を使って歩くト レイルを話し合う姿をよく目にすることが出来 ました。トレイルを何度も利用しているリピー ターの多くは、「THE 風景ハンター(写真と同 じ風景を探しに行く)」「おすすめ図書の紹介」 を中心に楽しんでいました。散策の新しい視点 となったようです。以上のことから、今後初来 訪者のニーズとリピーターのニーズをきちんと 捉えて更新していくことが、重要であるとわか りました。来訪者の増える紅葉期に合わせて内 容を更新し、更にニーズにあった展示にしてい きたいと思います。 ←台の展示の様子 ↓ ←全体の様子と見学する来館者。 −6− 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 シーズナルレンジャー活動 今年の夏も例年に引き続き、6 月に実施され た第 36 回インタープリタートレーニングセミ ナー修了生を中心として、のべ 100 人日を越 えるシーズナルレンジャー活動(研修生による 解説補助活動)が実施されました。今年はな かなかプログラムが成立せずに苦労したのです が、 その反面館内での展示解説活動などが充実 して実施できたようです。また、岐阜県立森林 文化アカデミーの学生のインターンシップも 2 名受け入れ、1 名は園内で展示をテーマにした 卒業研究をするなどの外部組織への協力もあり ました。また、上記以外に夏休み期間中 6 回実 施された主催行事や団体対応でも多数のシーズ ナルレンジャーの協力を得て、成果を上げるこ とができました。活動にあたった皆さん、どう もありがとうございました。 ジュニアレンジャー活動 夏期のジュニアレンジャー活動は、意識向上 を目的とした「ジュニアレンジャーキャンプ 2007」を実施しました。私たちは、ジュニアレ ンジャーが周囲の人々に対して、自然とのつき あい方を発信できるようになってほしいと考え ています。今回のキャンプも、そのための活動 という位置づけで実施しました。(キャンプの 様子は P9 の報告をご覧ください。) キャンプ中には、周辺の地理の理解を目的と した登山等、通常のジュニアレンジャー活動で はできない活動に取り組むことができました。 秋期には日帰りで参加することができるプロ グラムを企画・実施し、ジュニアレンジャー活 動の充実を図っていきたいと思います。 夏期の登録者数については、22 名となりまし た。くき沢橋の補修工事の影響によって、来訪 者数が大きく減少しているにも関わらず、登録 者数に大きな減少がみられなかった点は、評価 に値する点だと思われます。 い る こ と か ら、『 複 合施設としての東京 8 月はじめに、これまでのビジターセンター 都自然公園施設「山 ホームページに他の園内施設情報を加え、ホー のふるさと村」』が ムページを一新しました。特に、これまで電話 効果的にアピールで 問合せが多かった、キャンプ場利用方法やクラ きた成果として受け フトセンターで作成できる作品や利用料金につ 止めています。夏の いてのページを充実させました。また、園内の 繁忙期が一段落し、秋の紅葉シーズンに向けて 雰囲気を閲覧した誰もが直感的に分かるよう、 閲覧数が増えてくる時期になります。今後、さ らに団体対応に関するページやダウンロード 写真や図を多用しています。 8 月には昨年度と比較し、一日あたりの閲覧 ページなどを充実させながら、ブログによる情 数が 2.5 倍強の数字を記録しました。ホームペー 報提供と共に、いつでも新しく利用しやすい ジを見て電話問合せする方も確実に増えて ホームページ作りを進めていきます。 ホームページリニューアル くき沢橋工事に伴う野外案内板の設置 2007 年 7 月からの工事に伴い、来園者が園内の ビジターセンター、クラフトセンター、レストラ ンの 3 施設を利用する際には、設置された迂回路 を歩いて通行していただいています。そのため、 自家用車で来園する方の多くが駐車場 A に駐車す ることになりました。駐車場 A には公衆トイレが 設置されているため、奥多摩周遊道路の利用者の 立ち寄りも多くあります。 これまでの館内聞き取りアンケートから、山の ふるさと村の立ち寄り型利用者の多くが、レスト ランとトイレ以外の園内施設を把握していない状 況にあることも確認されています。そこで、立ち −7− 寄り型の利用者が園内施設に興味を持つよう、ト イレ洗面台の前に案内板を設置しました。設置し たものの、ビジターセンターからの距離が遠いこ とやスタッフが駐車場 A のトイレを利用しないこ とから、メンテナンスや情報更新の頻度が少なく、 設置したものが活かされているとはいえない状況 です。今後、秋の紅葉シーズンに向け、いっそう 立ち寄り型の利用者が増加します。湖畔の紅葉の 風景写真や園内施設の具体的な利用について掲示 していくことで、立ち寄り型利用者が園内施設に 興味を持ち、利用増加につながる工夫を行ってい きたいと考えています。 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 主催行事の報告 ●「子どもサマーキャンプ・やませみ」 2007 年 7 月 23 日(火)〜 25 日・2 泊 3 日 対象:小学校 3・4 年生 参加者:24 名 担当:田畑・秋元 24 人の参加者と5名のスタッフでキャンプ場で のテント生活を体験しました。天候不順 (雨天) のため、予定していた内容を一部変更しましたが、 行事のテー マを「水と水源林」としてプログラ ムを実施しました。ハイライトとなるサイグチ沢 源流へのハイキングをこなし、最終日は沢の水を 汲んできて調理をするなど、奥多摩の水とキャン プを通しての生活との接点を体験を通じて参加者 に感じてもらうことができたようです。スタッフ 間の役割分担を明確にしたことで、ある程度ス ムーズな進行ができ、当日のみ関わるシーズナル レンジャーも役割とこなす仕事がはっきりしてい て関わりやすかったという成果が残せた反面、雨 天時の急なスケジュール変更に対応するプログラ ム及び食事メニューに難があったという課題が残 りました。 雨天時は気温も低く、どうしてもテント内や室 内で活動する機会が増えるため、通常(天気の良 い場合)のプログラムでもワークシートなどを あらかじめ準備しておけば、とっさに雨が降って きた時もそれらを活用 してのプログラムが展 開できそうです。 ●「ちびっこチャレンジキャンプ」 2007 年 7 月 26 日(土)〜 28 日・2 泊 3 日 対象:小学校 1・2 年生 参加者:23 名 担 当:杉本・小川 「ちびっこフィニッシュキャンプ」 2007 年 8 月 26 日(日)〜 28 日・2 泊 3 日 対象:小学校 1・2 年生 参加者:24 名 担 当:杉本・中村 1・2 年生を対象としたキャンプは夏期の実施 を 2003 年度より年 1 回を 2 回に増やして実施 しています。例年好評を得、今年も定員を大幅 に超える申込を頂きました。 「子ども達が自然の中で感性を発揮し、自然 を楽しむことが自らできるようになる」「興味 あるものを自然の中から見つけ出すことができ るようになる」 「新しい友達と協力して生活す ることができる」ことを目標として実施。 最近は兄弟のいないお子さんが参加される ケースが多く、一人っ子のお子さんは子ども同 士で遊ぶことや自ら遊びを考え出すことが苦 手などの傾向が見られます。そこで今回はなる べく自由時間を増やしたスケジュールにし、自 由時間はリーダーが何か提案したり、指示をし ないようにして、様子を伺いました。はじめは どの子も「新しい友達と遊び道具もないのにど うやって遊ぶの?」とばかりに戸惑っている様 子がみられました。しかし、時間が経つと昆虫 探しや落ちた枝での秘密基地作り、鬼ごっこに −8− 葉っぱでアクセサリー作りと飽きもせず熱中し だしました。安全を確保しながら大人が介入せ ず、子ども達同士で自由に自然に向かう時間を つくることで、自ら考え、遊びを創り出し、自 然から学ぶ力を存分に発揮できたようです。 今後も「子どもの本来持っている感性や能力 を引き出す」ためのリーダーの関わりを意識し たキャンプ作りをしていきたいと思います。 山ふる解説員通 No.58 2.夏の活動報告 ●「ぷちサバイバルキャンプ」 2007 年 8 月 12 日(日)〜 14 日・2 泊 3 日 対象:小学校 5・6 年 参加者:7 名 担 当:中村・秋元 で眠った経験は子どもたちに強い印象を与えて ぷちサバイバルキャンプでは対象を小学 5. いました。直前のキャンセルなどもあり、参加 6 年生限定で募集しました。対象を高学年に絞 者 7 名と少な人数での実施でしたが、その分子 ることで、より年齢に適した活動を実施するこ ど も 達 同 士、 とができました。「少ない道具で不便な生活を スタッフと子 楽しめるようになること」をねらいとして実施 どもの繋がり したプログラムは、マッチを使わない火おこし、 は強く、充実 竹を切り出し食器作り、川でつかみどりした魚 した時間を過 をさばき串焼きにして食べる、焚き火で焼いた ごす事ができ ました。 石を使って調理をするなど内容は盛り沢山。 なかでも満天の星空の下、数えるほどに流れ ているペルセウス座流星群を眺め、テント無し ●「子どもサマーキャンプ・かわせみ」 2007 年 8 月 16 日(木)〜 18 日・2 泊 3 日 対象:小学校 3・4 年生 参加者:22 名 担 当:小川・杉本 初めての試みとして朝食前に湖畔へ行き、2 日 このキャンプでは、「水を大切にするように 間のふりかえりをしました。子ども達は湖畔で なる」「自主的・積極的な行動をできるように 過ごすことで 2 日間の体験を頭と心に落とし込 なる」ことを大きなねらいとし、それらを達成 むことができました。最後に家族へ書いた手紙 するために次のような活動をしました。1 日目 に水に関する絵が多くあったため、ふりかえり はキャンプ仲間との関係づくりです。工夫とし 方法の効果を感じ て行動班を設け、随所で子ども主体で人数確認 ました。全体的に をし、スタッフに報告するようにしました。そ 達成度の高いキャ の効果として、子ども同士の親しみが強くなり、 ンプではありまし 友達の名前を早くから呼び合い、全体の行動が たが、今後発展す スムーズになりました。2 日目は水源の水を体 るために水に関す 感しました。湖沿いを歩いて湧き水を汲みに行 る体験活動の種類 き、沢でずぶ濡れになって遊び、汲んだ湧き水 を増やしていきた を使って夕飯のご飯を炊きました。3 日目は、 いと思います。 ●「ちょっと長めの子ども冒険キャンプ」 2007 年 8 月 21 日(火)〜 25 日・4 泊 5 日 対象:小学校 4 年生~中学校 3 年生 参加者:16 名 担当:菅原・秋元 小学 3 年生〜中学生までを対象に 4 泊 5 日 で実施しました。今年度は、自然の中で過ごす ための具体的な方法を身に付けることをねらい として、山のふるさと村をベースに、園内を流 れるサイグチ沢の源流である三頭山などでも活 動を行いました。 参加者の年齢差が最大で 6 学年あるため、参 加者の中に自然体験度に差があり、全ての参加 者に対して十分にねらいが達成できるのか心配 されましたが、経験豊富な年長の参加者が、年 少の参加者に自然の楽しみ方を教えてあげるな ど、自然体験の度合いが高い子どもにとっては、 普段のジュニアレンジャー活動で培った経験が 発揮される場所になったようでした。また、ジュ −9− ニアレンジャー同士の交流も盛んに行われ、終 了後にも続いているようです。 行事参加によって年齢の離れた子ども達が交 流し、その後のネットワーク形成のきっかけに なるということは、子ども達にとっても非常に 大 大切な経験だと 思います。 今後も、自然 体 験 と 共 に、 こういった要素 も意識して取り 組んでいきたい と思います。 山ふる解説員通 No.58 3. はっぴーレンジャーの体験記 vol. 8 from Banff 「はっぴー」こと会田祥子さんは、2006 年 4 月 23 日よりカナダのアルバータ州バンフ国立公園 のサポートNPO、Friends of Banff National Park のスタッフとしてフルタイムで働いています。 カナダでの体験記としては第5回となる今回は、環境教育部門でのこの夏の活動の紹介です。 カナダのバンフからこんにちは、日本はまだ それでも多くの観光客にとっては、かけがえ 残暑厳しい最中でしょうか。私、はっぴーは、 のないたった一度の思い出深い夏。 先日雪の降る中、ピッケルを持ってダウンジャ どんなに今年の夏が、私たちローカルにとって ケットを着こんでクライミングをしていまし 「最悪」のものであろうと、彼ら観光客にとっ た。本当に地球は多様な顔を持っていますね・・。 て素晴らしい体験であるようお手伝いをするこ 今回は、前回からの続きで、2007年夏の、 とは、インタープリターの使命です。さぁ、頭 フレンズオブバンフの環境教育部門での活動を をひねらねば!! 報告することにしましょう。 まず私たちにとって大打撃だったのが、フェ ンスです。観光客が気ままに通りの反対側と行 き来できなくなってしまったため、私たちのお 店に足を運ぶ人が極端に減ってしまったので す。なぜなら、バンフ通りの主なお土産やさ そんなわけで、前途多難なスタートを切った んは私たちと反対側に集中しているものですか 今年の夏のフレンズオブバンフ。夏のバンフ通 ら・・。うーむ、町は気を使って、色々と橋を りの工事は、私たちが思った以上の影響を及ぼ 渡したり回り道をつくってはくれるのですが、 しました。バンフ通りといえば、夏の観光ピー やはり遠回りをしてわざわざ通りを渡ったりす クシーズンには、車と歩行者で大賑わいの、日 るよりも、道の反対側に留まる人のほうが多い 本でいう銀座や新宿のスクランブル交差点のよ のが人情というもの。お店での売り上げを主な うなもの ( !? )。その天下の大通りが、今夏 活動資金にあてている、非営利団体の私たち。 は全て封鎖され、車の通行が一切できなくなり これは困った! ました。たとえ車が走っていても、歩行者天国 さながらに、通りのどこでも自由に観光客が渡 り、行きかうのがバンフの風物詩なのですが、 それも今年はできません。フェンスで囲われて しまった狭い歩道を、すし詰めの観光客が押し そこで今年は、パークプレゼンテーション 合いへし合い、大渋滞です。常に工事の大音響 (詳しくは過去の記事をご参照ください)をバー が街中に響き渡り、埃と騒音の日々。観光名所 ジョンアップ!大型のテントを購入し、フレン の一つ、美しきバンフ通りは、ブルトーザーと ズオブバンフのロゴの大きなバナーも発注し、 フェンスと、埃にまみれた風景と化していまし 去年よりも格段に目立つ外観で、観光客を引き た。 込みました。場所はお店のすぐ横。これが効果 抜群だったのか、バンフ通りの、人通りの閉ざ された側に位置していたにも関わらず、週末は 3時間での応対人数が100人を越えることも しょっちゅうでした。私たちインタープリター にとっては、騒音と埃との戦いでもあったので すが・・、ごほごほ(笑)。 こうしてテントを広げて野生動物のお話をし ていると、観光客にとって私たちインタープリ ターは、公園の顔であり、町の代表者です。バ −10− 山ふる解説員通 No.58 ンフ通りのひどい有様に、がっかりして、抗議 をふっかけてくる人々もしばしばいました。で も町に留まっていると見失ってしまいがちです が、バンフの醍醐味は、町の外、大自然の中に あります。たとえ町が騒音と埃にまみれていよ うと、一歩町を出て、トレイルを自分で歩けば、 そこにはずっと変わらない野生動物と山々がお りなす世界が広がっています。そんな当たり前 のことに気づいてもらうことも、私たちの仕事。 時には町から見える美しい山々を指し示すだけ でも、人々の顔がほころびます。「目の前にあ る、変わらない美しさ」。それを紹介することが、 今年の私たちの役割だったとも言えるかもしれ ません。 つづく! ●はっぴー=会田祥子 第 19 回 ITS 受講。山のふるさと村ビジターセ ンターでシーズナルレンジャー活動後、渡米。 ハワイイボルケーノ国立公園でボランティア インタープリターとして活躍後、昨年4月よ り拠点をカナダバンフ国立公園に移す。 −11− 山ふる解説員通 No.58 4. 木部ちゃんのエバーグレーズ通信 其の1 海外で活躍するインタープリターのコラムが楽しめるこのコラムのコーナーで、新連載がはじまります。 「木部ちゃん」こと木部直美さんは、この 7 月から 1 年間アメリカ合衆国のフロリダ州にあるエバーグレー ズ国立公園でボランティアインタープリターとして活動することになりました。連載 1 回目となるは、ボラ ンティアになるまでの経緯や公園での主な活動内容を紹介します。 はじめまして、木部直美と申します。私は今、 アメリカ合衆国のフロリダ州にあるエバーグ レーズ国立公園でボランティアとして活動して います。ここでは、エバーグレーズの自然やア メリカの国立公園での仕事、公園のインタープ リテーションについて、私の経験を通じてお伝 えしたいと思っています。 私がこの公園のボランティアになった経緯を はしょってお話しますと、アメリカ国立公園局 のホームページからインターナショナル・ボラ ンティアに応募し、運良く受け入れてくれる公 園が見つかり、今ここにいるというわけです。 ボランティアですからお給料はありませんが、 住むところが提供され食費をまかなう程度のお 手当てが出ます。それにインターン(研修生) としてたくさんのことを経験し、学ぶことがで きます。私の活動期間は、来年の 6 月末までの ちょうど 1 年間の予定です。 エバーグレーズ国立公園は、フロリダ半島の 南端にあり、四国の三分の一くらいの大きさで す(610,900ha)。エバーグレーズ国立公園の自 然環境を一言で表すとしたら、広大な湿原とい うのがふさわしいと思います。ただし湿原と いっても、淡水、汽水そして海水という異なる 塩分濃度の水とわずかな標高の違い等が、多様 な自然環境を作り出しています。そこでは湿性 の草原だけでなく、ジャングルのような緑の濃 い樹林やパラパラと生える松の林、海岸に近い 場所ではマングローブ林と、色々な植生が見ら れます。当然ながら見られる動物も多様です。 有名なところでは、アリゲーターやクロコダイ ルといったワニの仲間、フロリダ・パンサーや ボブキャットなどの大型のネコ類、アライグマ やたくさんの水鳥もエバーグレーズの住人で す。ここで私は主に 2 つの分野で活動していま す。ひとつは公園の火災管理部門の人達と一緒 に活動すること、もうひとつは公園のインター プリテーションについて実践的に学ぶことで す。今回は、現在私が主に関わっている火災管 理部門の仕事についてご紹介します。 エバーグレーズでの火災管理の歴史は古く、 1947 年の公園設立当初から自然発火や人為的な 火災を抑制する措置が取られていたそうです。 しかし、自然火災を抑制したことによって、当 初、自然植生として成立していた松林の遷移が 進み、結果的に固有種を多く含む松林の生物相 が失われる危険があることが研究で明らかにな りました。そこで、1958 年、アメリカの国立公 園で初めて、火災を単純に抑制するのでなく、 生態学的な知見やモニタリングを基礎として積 極的に用いる火災管理が始まりました。手探り で始まった新しい火災管理は、モニタリングに よって火災が自然環境に及ぼす影響が明らかに なるにつれて、その管理方法に改良が加えられ てきています。私はこの火災管理のモニタリン グをお手伝いしています。具体的には植生の調 査です。火災前は燃料となる生物の量を把握し、 火災直後は火災の被害程度の把握、その後は年 毎の追跡調査となります。また、生物季節(開花、 結実など)の把握や昆虫調査もしています。 火災直後の松林 は、高木層の松の木 に緑が残っているの を除くと、黒と茶色 の世界です。一見死 に絶えたこの樹林 は、約 2 週間後には 低木や草本の萌芽が 始まり、徐々に緑を取り戻していきます。開放 的になった林床では草本の花も咲き始めます。 個人的には、カエルやトカゲがどうやって火災 を生き延びるのかが心配でしたが、林内にたく さんある石灰岩が溶けてできた小さな池に逃げ 込むらしいです。歴史的に頻繁な火災を経験し てきたこの地域の生きものたちは、火災を生き 延び、さらにその恩恵にあずかることもできる ようです。 次回は、公園のインタープリテーションにつ いて書きたいと思います。ではまた! −12− ●木部ちゃん=木部直美 国土交通省の職員として宮城県にある「国 営公園みちのく杜の湖畔公園」に長年勤務 し、その間イベントやプログラム実施など でも活躍。退社後活動拠点を探し、今年の 7 月からアメリカで活動を始める。 5.気まぐれナバ の「18 禁 !?」オトナのためのハーヘーホー① 山ふる解説員通 No.58 「群れとおチ○チ○は使いよう!?」 第二の故郷タスマニア島を離れ、日本に帰国してはや半年。身辺の大きな変化のついでに、こ のコーナーもマイナーチェンジしちゃいました。新連載のトピックは、ズバリ「生きもの下ネタ」。 生きものについて語るとき、「オスとメス」について触れずにいるのは、物語の本筋に触れないの と同じようなこと。生殖にこそ、生きものの全てが集約されると言っても過言ではありません。 そこは、驚きの事実と巧みな戦略、そして時には表現を戸惑うほど激しい行動が隠された「ハーヘー ホー」のパラダイスです。 「オトナのためのハーヘーホー」の連載第一回目は、野生の宝庫アフリカで野生動物の撮影をし ていた時のビックリ体験談です。 ンチンをブラつかせていたメスが、別のメスの 股間に鼻先をグッと突っ込み、なんと!お互い アフリカのサバンナで狩りが一番上手な動物 の偽おチンチンを舐め合ってるではありません をご存知ですか?ライオン?ヒョウ?それとも か~っ!「え~っ!!ちょっと待った~っ!」 チーター ? いやいや実はブチハイエナなんです。 とさすがの私もかなり興奮、いや、動揺。でも 「え?ハイエナって横取りした獲物や残飯をあ 隣で見ていたハイエナ研究者(女性)は表情ひ さるだけじゃないの?」というアナタは大間違 とつ崩さず「あれが挨拶です」と一言。。。そ、 い。振り子のように前後に身体を揺らす独特の そうなんです、メスの偽おチンチンは、仲間同 省エネ走法のおかげで、持久力ではハイエナの 士の挨拶の道具なんです。20 頭前後もいる仲間 右に出る肉食獣はいないそうです。そんな肉食 をうまく統率し、名ハンターの座についていら 獣が一頭ではなく群れになって追いかけてくる れるのも、こうした日頃の「おチンチンコミュ わけですから、狙われた獲物もたまったもん ニケーション」があるおかげだとか。名ハンター じゃありません。実際はライオンがハイエナの の決め手は、おチンチンに支えられたチーム 仕留めた獲物を横取りすることの方が圧倒的に ワークだったんですね。 多いとか。イメージとは違う意外な事実、人も フムフム 動物も見かけによりませんね。 白いウンコがサバンナを支える ハ~ サバンナの名ハンターは誰? ヘ~ 驚き!メスにもブーラブラ? ブチハイエナは 20 頭前後の「クラン」と呼 ばれる群れで暮らしています。しかも群れのボ スはメス、圧倒的なメス中心の社会です。しか し実際によ~く観察しているとアレレ???メ スであるはずのボスの股の間にはなにやら黒い 影がブ~ラブラ!!目をこすってもう一度。で もやっぱりありますブ~ラブラ。そう、実はボ スに限らずハイエナのメスにはみんな、オス そっくりの偽おチンチンがあるのです。研究者 いわく、これはメスの性器の一部が肥大してい るものだとか。このメスの偽おチンチン、普段 からぶらつかせているわけではなく、必要な 時にだけ使うんだそうです。で、必要な時っ て???想像してみてください。 下ネタついでにもうひとつ。サバンナでは、 時折白いウンチを見かけます。実はこれ、ハイ エナのウンチです。サバンナで動物の骨を大量 に噛み砕くことが出来るのはハイエナだけ。ラ イオンなんかよりもずっと強い顎と歯でバリバ リと噛み砕かれた骨は、白いウンチとなり土に 還りやすい状態になるのです。白いウンチは、 ハイエナがサバンナの大地へ渡した栄養循環の バトンだったんですね。そしてその草を食べて 育ったガゼルがまたハイエナの餌となる。。。。 アフリカはそんな命のつながりが目の前でグル グルと展開していくのが見える、とてつもない 場所であることを痛感した撮影期間でした。 放送できませ~ん!! ホ~ ハイエナのとんでもない挨拶行動 メスの偽おチンチンへの感動覚めやらぬ間 に、更にショッキングなことが!先ほど偽おチ −13− ●ナバ=萩原裕作 第 2 回 ITS 受講。その後山のふるさと村 ビジターセンターで働き、数々の伝説を残 したインタープリター。オーストラリアで のネイチャーガイドを経て、現在は、岐阜 県立森林文化アカデミー講師として活躍中。 山ふる解説員通 No.58 6.インタープリターの視点 No.46 2007 年 9 月 AIJ 小林 毅 展示インタープリテーションの方法 直接的なインタープリテーションを実施する場所(ケース)は大きく分けて四つある。キーワー ドは「現場」「実物」 ・「展示」 ・「その他」だ。「現場」では、あるべき場所にある解説素材を前に しての IP で、実物からの直接的なインパクト(現場力)が大きい。「実物」と表現したのは、環 境と材料との関係がない IP で、野外という場合もあるし(造成された公園)、室内という場合も ある。「展示」は展示を前に IP するケースで、ほとんどは室内で行われる。「その他」は、教室・ 講堂などで、講義や講演を行う場合である。現場力もないし素材もない場合は、参加者の想像さ せたり頭の中に経験を作ったりすることを、板書やトークで作りだしていかなければならない。 ただし、素材を持ち込めば一番目のケースになるし、スライド上映などを行う場合は、「展示」の IP に近くなる。 今回は、上記の 3 番目のケースの、どうやったら上手な展示解説(室内解説)ができるか、と いうことについて私なりの考えをまとめてみた。まず、展示とはどのようなものか、ということ を以下に示し、さらに、「展示の特性 (IP に関連する部分 );左記」と「展示解説の方法;右記」 についてまとめた。 【展示とはどのようなもの】 ●展示は、野外 IP の時に使うフリップや紙芝居を集めたようなもの、といってよいかもしれない。 ●現場では見えないものを見せてくれる。 ●み続けなければ理解できないことを凝縮してみせてくれる。 ●コンパクトに要点がまとめてある(無駄がない→効果的な理解を促す?)。 【展示の特徴】 【展示解説の方法】 ①展示はつかみができない。 ①展示に引きつける工夫をする。 ②展示は参加者に合わせた IP が ②参加者(年齢層・経験)に合わせたアレンジをする。 できない。 ③展示は参加者の反応に対応で きない。 ④展示は参加者主体の体験型の 動きを促進するのが苦手。 ⑤展示は参加者に経験をつくれ ない。 ⑥展示は、その後への影響力が小 さい/不明。 ②展示と参加者を関連づける(参加者の関心・興味) 。 ③参加者の反応を受けとめたり、そこから発展させる。 ③ターゲットに合わせた表現をする。 ④ミニアクティビティを入れる/つかみ・うながし・うけ とめ(ファシリテーション的)関わりをする。 ⑤ピンとくる(残る)情報など。 ⑤展示に表現されていない+αの情報を用いる。 ⑥展示と野外(実物)を関連づける。 ⑥後につなげる(野外と、実際のことと、生活と、 ) 。 ⑥解説することで、展示(伝えたいこと)の理解が深まる ように。 ⑦展示は、どこが面白いか、教え てくれない/全部読むのは面 倒・大変。 ⑦展示の中のイラスト・写真・実物・模型等を効果的に使 う/展示をみるポイントを説明(全部を説明しない)。 ⑦展示に書いてあることを説明するより書いていないこと を解説する。 ⑦展示を読むよりスピーディーかつ深い理解ができるよう になることをめざす。 発行:東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村ビジターセンター 〒 198-0225 東京都西多摩郡奥多摩町川野 1740 TEL:0428-86-2551 FAX:0428-86-2316 E-mail:[email protected] URL:http://www.yamafuru.com 企画・編集:自然教育研究センター 2007 年 10 月発行 −14− <編集後記> 伝えたいこと、報告したいことを文章にし、さら に山ふるの現場を知らない方がわかるように書くと いうのは難しいですね・・・今回の原稿書きや編集 作業で、また 1 つ賢くなったと感じる秋の夜。 (小川)