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ペットボトル振動子の完全離散モデルと半離散モデル 概要

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ペットボトル振動子の完全離散モデルと半離散モデル 概要
ペットボトル振動子の完全離散モデルと半離散モデル
理工学部 数理情報学科
学籍番号
氏名
t070094
前田 大地
指導教員
池田 勉
概要
水の入ったペットボトルを逆さまにすると,水が流れ出るとともに空気が流入してくる.しかし,細い管を通した
ゴム栓をして逆さまにすれば,水の流出と空気の侵入が交互に起こる.これが,ペットボトル振動子のリズム運動と
呼ばれるものである.かなりおおざっぱではあるが次のような運動が起こっているように見える.
(1) ひたすら水が流れ出る
(2) 一瞬動きが止まる
(3) もっぱら空気が流入する
(4) 動きが一瞬止まった後,再び,ひたすら水が流れ出る
この研究では,ペットボトルのリズム運動は
ひたすら水が流れ出る状態【過程1】
と
もっぱら空気が流入する状態【過程2】
から構成されると考えて,数理モデルを構築し,数値シミュレーションを行い,実験結果と比較した.
本研究では 2 種類の数理モデルを提案した.第 1 の数理モデルは,
(過程1の最初の状態),(過程1の最後の状態) = (過程2の最初の状態),
(過程2の最後の状態) = (次の過程1の最初の状態)
のみを考えるものである.この意味から ”完全離散モデル” と呼ぶ. 第 2 の数理モデルでは,過程1は微分方程式
で記述されるが,過程2の取り扱いは完全離散モデルと同じであるため,これを”半離散モデル”と名付けた.
このような2種類の数理モデルを用いて, ペットボトル振動子について次のような研究を行った.
(A)ペットボトル1つの場合
・実験, 完全離散モデル, 半離散モデルの比較(1滴あたりの流出量の比較)
:完全離散モデルと半離散モデルにつ
いてはほぼ完全に一致する.実験では少しずつ流出量が増加した後に最後の方で若干減少するのに対して,2
種類数理モデルでは微妙な増加が続く,2種類の数理モデルにはわずかな違いはあるものの,ほぼ同じように
増加していくことから,2種類の数理モデルはほぼ完全に一致したと考えた.
(B)同一のペットボトル2つを結合した場合
・同期現象の発生を実験および半離散モデルで確認:実験でも半離散モデルでも,まず水面の高さが揃い,その
後,同時に流出を繰り返すという, リズム運動が観測された.
・実験と半離散モデルとの比較(2つのペットボトルからの1滴あたりの流出量の比較)
(C)大きさの異なる2つのペットボトルを結合した場合
・同期現象の発生を実験および半離散モデルで検討:半離散モデルでは次のようなことが観測される小さい方の
ペットボトルの水面を高くしておくと,しばらく後に小さい方の水面の方が低くなるが,その後もリズム運動
が形成されない.小さい方のペットボトルの水面を低くしておくと,水面差は縮まるものの,リズム運動は観
測されない.実験では,小さい方のペットボトルの水面を低くすると,大きいペットボトルの水がひたすら水
が流出し,終わると小さい方の流出する.小さい方のペットボトルの水面を高くすると,一度水面が揃うまで
リズム運動が無くひたすら水が流れ,高さが揃うと同期現象が見られる.その後大きい方がひたすら水が流れ
て,再度,同期現象が起こる場合も見られた.よって,半離散モデルは改善の必要があるようだ.
―2012年度卒業論文―
ペットボトル振動子の
完全離散モデルと半離散モデル
龍谷大学 理工学部 数理情報学科
t070094 前田 大地
指導教員 池田 勉
目次
1
2
3
はじめに
1
1.1
研究の動機
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.2
ペットボトル振動子と研究内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.3
同期現象とは . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
リズム運動の数値計算
3
2.1
完全離散モデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.2
半離散モデル ∼ペットボトル1個のとき∼ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.3
半離散モデル ∼ペットボトル2個のとき∼ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
ペットボトル振動子におけるリズム運動
8
3.1
ペットボトルが1個の場合
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.1.1
実験の内容と結果
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.2
3.3
4
8
3.1.2
完全離散モデル,半離散モデルの比較
3.1.3
完全離散モデル,半離散モデルの比較とまとめ
. . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
9
. . . . . . . . . . . . . . 10
同一のペットボトル2つを結合させた場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
3.2.1
実験の様子 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
3.2.2
半離散モデルの場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
大きさの異なる2つのペットボトルを結合させた場合 . . . . . . . . . . . . . . .
12
3.3.1
実験の内容と結果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
3.3.2
半離散モデルの場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
まとめ
16
はじめに
1
1.1
研究の動機
普段から目にするペットボトルに,リズム運動が起こっていることを知って興味が湧いた.
また,2つのペットボトルを結合させた時の動画を見て,ペットボトル内の水面の高さが異な
る場合でも,ある点を境に水が流れ出るタイミングが揃い,一度揃うと水が流れ出る量は揃っ
たままのリズム運動を繰り返す,同期現象を見て,ペットボトル内の水面の高さに差があって
も同期現象が起こるのか?という疑問を持ち,ペットボトル振動子の研究を始めた.
1.2
ペットボトル振動子と研究内容
ペットボトルの中に水を入れる.そのペットボトルを逆さまにすると,水が流れ出るととも
に空気が流入してくる.この時,リズム運動は起こらない.しかし,細い管を通したゴム栓を
して逆さまにすると,水が流出と空気の侵入が交互に起こるように見える.これが,ペットボ
トル振動子のリズム運動と呼ばれるものである ([1]).本研究では,ペットボトル内から水が流
れ出る時を ”過程1 ”,ペットボトル内に空気が流入するときを ”過程2 ”と置いた.おおま
かではあるが以下のような現象が起こっているとする.
図 1: ペットボトルのおおまかな流れ
本研究では,2つの過程より構成される2種類の数理モデル(完全離散モデル,半離散モデル)
を提案した ([2]).また,この2種類の数理モデルと実験の結果を比較することで,ペットボト
ル振動子のリズム運動がおこる条件を導いた.本研究では比較をするときに水の流出量に着目
し,比較を行った.
1
次の章では,2種類の数理モデルを数値計算をしていく.
1.3
同期現象とは
オランダの科学者ホイヘンスによって,初期値が異なってもリズムが揃っていく現象が発見
された.[3] には,≪机に置いた≫2つの自作の振り子時計を観察してこの現象を発見したと述
べられているが,指導教員の話では,≪壁に架けた≫2つの振り子時計だったという記述もあ
るようである.いずれにしても,ホイヘンスが振り子時計を観察して発見したことは確かのよ
うである.このような現象は現在,いたるところに存在する.バラバラに動かしたメトロノー
ム複数個が時間が過ぎると,同期していく.生物で言えば,蛍の光が同じタイミングで光る現
象も同期現象の一つである.さらに身近なもので言うと,人の脈拍もその1つである.心筋細
胞の1つ1つが同期する事で,脈拍が正常に動く.もちろん,本研究のテーマのペットボトル
振動子も同期現象の1つである.
2
リズム運動の数値計算
2
第 1 の数理モデルでも,第 2 の数理モデルでも,
(過程1の最初の時点)でのペットボトル内
の空気の圧力を pn [atm],体積を V n [cm3 ],水の高さを hn [cm] で表し,
(過程1の最後の時
点)=(過程2の最初の時点)でのペットボトル内の空気の圧力を p̄n [atm],体積を V̄ n [cm3 ],
水の高さを h̄n [cm] で表す(n = 0, 1, 2, · · · ).ペットボトルに水を入れ,流出口を閉じたまま
ペットボトルを逆さまにした時のペットボトル内の空気の圧力が p0 ,体積が V 0 ,水の高さが
h0 である.
最初に圧力に関する基本的な事項を確認しておこう.
ウィキペディア≪ http://ja.wikipedia.org/wiki/水柱メートル≫によれば, 1 [m] の水柱の圧
力は 9806.38 [Pa] であり,大気圧 p0 = 1 [atm] は 101325 [Pa] であるから,大気圧 p0 = 1
[atm] に相当する水柱の高さは 101325/9806.38 ∼
= 10.33 [m] = 1033 [cm] である ([4]) .以下で
h
は,a = 1033 [cm/atm] によって,水柱 h [cm] の圧力を気圧 [atm] に変換する.
a
2.1
完全離散モデル
完全離散モデルを説明しよう.
【最初の過程1】 p0 ,すなわち,水を入れたペットボトルを逆さまにした直後のペットボト
ル内の空気の圧力は大気圧 p0 である.したがって,ペットボトルの底面(=ペットボトルの飲
み口)の圧力
p0 +
h0
a
が大気圧 p0 より大きいためペットボトル内の水が流出すると考える.水の流出は,ペットボ
トルの底面の圧力が大気圧と等しくなったら,止まると考える.すると,この底面における圧
力のつり合い条件とボイルの法則およびペットボトルはへこまない(ペットボトル内の水の体
積と空気の体積の合計が一定)という仮定は
3

h̄0

0

p̄
+
= p0



a

(底面における圧力のつり合い)
(ボイルの法則)
p̄0 V̄ 0 = p0 V 0






S h̄0 + V̄ 0 = Sh0 + V 0
(ペットボトルはへこまない)
(1)
と表現される.ここに,S [cm2 ] はペットボトルの断面積の事である.(1) から,
(過程1の最後
の状態)= (過程2の最初の状態)p̄0 ,V̄ 0 ,h̄0 を定めることができる.
【最初の過程2】 気体定数を R,熱力学温度を T とする.
過程2においてどれくらいの量の空気が流入するかは分からない.そこで,水の流出量 S(h0 −
h̄0 ) に比例した量の空気が流入すると考える.比例定数 α は,一回当たりの水の流出量を実験
と比較することによって想定することにする.さらに,空気が流入しても水の高さは変化しな
いと仮定する.すると,過程1におけるペットボトル内の空気の物質量を m0 ,流入する空気
の物質量を m0a とすれば,
 0 0
p̄ V̄ = m0 RT





(過程1におけるペットボトル内の空気の状態方程式)





p0 αS(h0 − h̄0 ) = m0a RT (流入する空気の状態方程式)





h1 = h̄0 (空気が流入しても水の高さは不変)




 1 1
p V = (m0 + m0a )RT (混合後の空気の状態方程式)
(2)
が成り立つ.(2) から,
(過程2の最後の状態)= (次の過程1の最初の状態)p1 ,V 1 ,h1 を
つぎのようにして定めることができる.
 1
0
V 1 = V̄ 0

 h = h̄ ,

 p1 = 1 (p̄0 V̄ 0 + p0 αS(h0 − h̄0 )) = p̄0 + p0 αS (h0 − h̄0 )
V1
V1
なお,p1 ≥ p̄0 ,p̄0 +
(3)
h̄0
= p0 ,h1 = h̄0 から,
(次の過程1の最初の状態)では
a
p1 +
h1
≥ p0
a
であること,すなわち,ペットボトルの底面の圧力が大気圧よりも高い状態であることに留意
4
する必要がある.
【一般の過程1】 上記の考察によって,一般の過程1の始まりの状態)pn ,V n ,hn について,
pn +
hn
≥ p0
a
であること,すなわち,ペットボトルの底面の圧力が大気圧 p0 より大きいためペットボトル
内の水が流出する状態にあることが分かる.したがって,
(過程1の最後の状態)= (過程2の
最初の状態)p̄n ,V̄ n ,h̄n は次によって定めることができる.

h̄n

n

p̄
+
= p0
(底面における圧力のつり合い)



a

p̄n V̄ n = pn V n
(ボイルの法則)






S h̄n + V̄ n = Shn + V n
(ペットボトルはへこまない)
(4)
【一般の過程2】 最初の過程2と同様に,
(過程2の最後の状態)= (次の過程1の最初の状
態)pn+1 ,V n+1 ,hn+1 をつぎのようにして定めることができる.
 n+1
= h̄n ,
V n+1 = V̄ n

 h

 pn+1 =
2.2
1
pn αS
(p̄ V̄ + pn αS(h − h̄ )) = p̄ + n+1 (hn − h̄n )
n+1
V
V
n
n
n
n
(5)
n
半離散モデル ∼ペットボトル1個のとき∼
続いて,半離散モデルを説明しよう.
過程2の取り扱いは完全離散モデルと同じであり,過程1の取り扱いだけが異なる.
【過程1】 ペットボトルからの水の流出が止まるまでのプロセス,すなわち,pn ,V n ,hn
から p̄n ,V̄ n ,h̄n へのプロセスを次の微分方程式で表現する.
(
)
(
)

h
h
dh


= −γ p + − p0
p + ≥ p0 である限り
dt
a
a


p(0) = pn
(6)
ここに,γ は正の定数である.ペットボトル内の圧力 p は次の関係式によって h で表される.
pV = pn V n
Sh + V = Shn + V n
5
h
= p0 となった時の水の高さ h,ペットボトル内の空気の圧力 p を,それぞれ,h̄n ,p̄n
a
とし,
p+
S h̄n + V̄ n = Shn + V n
(7)
から,V̄ n を定める.
【過程2】完全離散モデルと同様に,
(過程2の最後の状態)= (次の過程1の最初の状態)
pn+1 ,V n+1 ,hn+1 はつぎのようにして定められる.
 n+1
= h̄n ,

 h

 pn+1 =
2.3
1
V n+1 = V̄ n
pn αS
(p̄ V̄ + pn αS(h − h̄ )) = p̄ + n+1 (hn − h̄n )
n+1
V
V
n
n
n
n
(8)
n
半離散モデル ∼ペットボトル2個のとき∼
さらに,半離散モデルの拡張版として,2 つのペットボトルの底の部分を結合させた振動子
に対する数理モデルを説明しよう.
(過程1の最初の時点)でのペットボトル内の空気の圧力を pn [atm],ペットボトル 1 内の
空気の体積を V1n [cm3 ],水の高さを hn1 [cm],ペットボトル 2 内の空気の体積を V2n [cm3 ],水
の高さを hn2 [cm] で表し,
(過程1の最後の時点)=(過程2の最初の時点)でのペットボトル
内の空気の圧力を p̄n [atm],ペットボトル 1 内の空気の体積を V̄1n [cm3 ],水の高さを h̄n1 [cm],
ペットボトル 2 内の空気の体積を V̄2n [cm3 ],水の高さを h̄n2 [cm] で表す(n = 0, 1, 2, · · · ).
【過程1】 ペットボトルからの水の流出が止まるまでのプロセス,すなわち,pn ,V1n ,hn1 ,
V2n ,hn2 から p̄n ,V̄1n ,h̄n1 ,V̄2n ,h̄n2 へのプロセスを次の微分方程式で表現する.
(
)
(
)

h1
dh2
h2
dh1


= −γ p +
− p0
 dt = −γ p + a − p0 ,

dt
a




)
(
h2
h1
≥ p0 かつ p +
≥ p0 である限り

p+


a
a





p(0) = pn
6
(9)
ペットボトル内の圧力 p は次の関係式によって h1 ,h2 で表される.
p(V1 + V2 ) = pn (V1n + V2n )
S1 h1 + V1 = S1 hn1 + V1n
S2 h2 + V2 = S2 hn2 + V2n
h1
= p0 または
a
h2
= p0 となった時の水の高さ h1 ,h2 ,ペットボトル内の空気の圧力 p を,それぞれ,h̄n1 ,
p+
a
h̄n2 ,p̄n とし,

 S1 h̄n1 + V̄1n = S1 hn1 + V1n
(10)
 S h̄n + V̄ n = S hn + V n
2 2
2 2
2
2
ここに,S1 ,S2 [cm2 ] は,それぞれ,ペットボトル 1,2 の断面積である.p +
から,V̄1n ,V̄2n を定める.
【過程2】 完全離散モデルと同様に,水の流出量 S1 (hn1 − h̄n1 ) + S2 (hn2 − h̄n2 ) に比例した量
の空気が流入すると考える(比例定数は α)と流入する空気の量は S1 α(hn1 − h̄n1 ) + S2 α(hn2 − h̄n2 )
と定めれる.さらに,空気が流入しても水の高さは変化しないと仮定する.すると,過程1に
おけるペットボトル内の空気の物質量を mn ,流入する空気の物質量を mna とすれば,

p̄n (V̄1n + V̄10 ) = mn RT






(過程1におけるペットボトル内の空気の状態方程式)





p0 α(S1 (hn1 − h̄n1 ) + S2 (hn2 − h̄n2 )) = m0a RT (流入する空気の状態方程式)





hn+1
= h̄n1 , hn+1
= h̄n2 (空気が流入しても水の高さは不変)
1
2





 n+1 n+1
p (V1 + V2n+1 ) = (mn + mna )RT (混合後の空気の状態方程式)
(11)
が成り立つ.(11) から,
(過程2の最後の状態)= (次の過程1の最初の状態)pn+1 ,V1n+1 ,
hn+1
,V2n+1 ,hn+1
をつぎのようにして定めることができる.
1
2
 n+1
h
= h̄n1 ,


 1
V1n+1 = V̄1n ,
hn+1
= h̄n2 ,
2
V2n+1 = V̄2n
p̄n (V̄1n + V̄10 ) + p0 α(S1 (hn1 − h̄n1 ) + S2 (hn2 − h̄n2 ))

n+1

p
=

V1n+1 + V2n+1
7
(12)
ペットボトル振動子におけるリズム運動
3
3.1
3.1.1
ペットボトルが1個の場合
実験の内容と結果
実験の内容
市販のペットボトル(最大容量 945[ml]) に内径 8[mm] の管を通したゴム栓をする.その
ペットボトルに水(実験では,400[ml])を入れ,スタンドを使って逆さまの状態で保てるよう
に固定した.本研究では,一回あたりの水の流出量での比較を行うため,プラスチックのコッ
プ(17.9[g])を使用し,2滴分(図1の流れの間に,ペットボトル内から流出した2回分の水)
を採取し,1回あたりの水の流出量を記録した(2で割ったため,一回当たりの流出量になっ
ている).実験は2回行った.
実験の結果
25
25
20
20
15
15
10
10
5
5
0
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0
図 2: 水の量が 200[ml] の場合
10
20
30
40
50
60
70
80
図 3: 水の量が 400[ml] の場合
だいたいではあるが,流出量は 8[ml]∼ 10[ml] を取っている.また時間ごとに徐々に,最初
は流出量が増え,途中から少しずつ減少している.
8
3.1.2
完全離散モデル,半離散モデルの比較
図 4: 1 つのペットボトル
ペットボトル(最大容量が 945 [ml])を使用し,2種類の数理モデル(完全離散モデル,半
離散モデル)の,ペットボトル内の水の量とペットボトルの大きさを変えた場合の比較を行っ
た.ただし,2種類の数理モデル(完全離散モデル,半離散モデル)のペットボトルの大きさ
と最初のペットボトル内の圧力,体積,水の高さは全く同じ条件である.
ペットボトル内の水の量を 200[ml], 400[ml], 600[ml], 800[ml] の場合での2種類の数理モ
デルの比較を行った結果を以下の図示した.
20
20
15
15
10
10
5
5
0
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0
図 5: 水の量が 200[ml] の場合
10
20
30
40
50
60
70
80
図 6: 水の量が 400[ml] の場合
22
20
20
18
16
15
14
12
10
10
8
5
6
4
0
2
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0
図 7: 水の量が 600[ml] の場合
10
20
30
40
50
60
70
80
図 8: 水の量が 800[ml] の場合
9
3.1.3
完全離散モデル,半離散モデルの比較とまとめ
完全離散モデルと半離散モデルについて,1滴あたりの水の流出量での比較をしたところ,
2種類の数理モデルの流出量はごくわずかの誤差が見られたが,増加の仕方も1滴の水の流出
量も,ほぼ一致した.
3.2
3.2.1
同一のペットボトル2つを結合させた場合
実験の様子
∼水の量が一緒の時∼
同一のペットボトルで水の量が等しい.つまり,ペットボトル内の水面の高さが等しい時,
最初の過程1最初の状態の流出から,同期現象が見られた.水の量(ペットボトル内の水面の
高さ)を変えても同様の現象が見られたため,同一のペットボトルは,同期現象が観測できた.
∼水の量が異なる時∼
同一のペットボトルでペットボトル内の水面の高さが異なると,水面が高いペットボトルが
低いペットボトルに水位が揃うようにひたすら水が流れでる.2つのペットボトルの水面が揃っ
てくるにつれて,流出のタイミングが揃っていき,ほぼ高さが揃ったと見れた時に,水の流出
のタイミングが揃い同期現象が観測された.一度観測されると,水が流れきるまでほぼ,同期
しながら水は流れていった.
3.2.2
半離散モデルの場合
同一の大きさのペットボトル2つを結合させた時の研究を行った.2種類の数理モデルにつ
いて,ペットボトル1個の比較ではほとんど差が見れなかったため,より詳しい状態の確認で
きる RungeKutta 法を用いた半離散モデルを採用した.ペットボトルの大きさは,1個の時に
使用したものを使った.
図 9: 同一のペットボトル,水面の高さが同じ
10
∼水の量が一緒の時∼
2つのペットボトル内の水の量を共に 300[ml],700[ml] に揃えて,2つのペットボトルから
1回ごとに流れ出る水の量を測定,比較した.
18
18
16
16
14
14
12
12
10
10
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
0
10
20
30
40
50
60
70
0
図 10: 水の量が 300[ml] の場合
10
20
30
40
50
60
70
図 11: 水の量が 700[ml] の場合
2つのペットボトルの最初の水の量を同じ量に揃えた場合,上の図2つ(図10,図11)
をみると,一本の線のように見える.よって,2つのペットボトルから流れ出る水の量は初め
の水の量に関係なく,最初から同期していることがわかる.
∼水の量が異なる時∼
次に,2つのペットボトル内の最初の水の量が異なる場合での,2つのペットボトルから流
れ出る水の量を比較した.
図 12: 同一のペットボトル,水面の高さ異なる
11
7
7
6
6
5
5
4
4
3
3
2
2
1
1
0
0
0
50
100
150
200
250
300
0
図 13: 水の量が 300ml,700ml の場合
50
100
150
200
250
300
図 14: 水の量が 600ml,700ml の場合
水面の高い方の水が流れ出る量は多くなり,徐々に流出量の差は縮まっていく.2つのペッ
トボトルの水の流出量が,一度同期をすると,その後は同期したままであった.
3.3
大きさの異なる2つのペットボトルを結合させた場合
ここでは,大きさが異なるペットボトル2つを結合させた時の研究を行った (ここでも,先
ほどと同じ理由で半離散モデルを採用した).
図 15: 異なるペットボトル
3.3.1
実験の内容と結果
実験の内容
実験では,ペットボトル2つ(最大容量が 945 [ml] と 535[ml])ともに内径 8[mm] の管を通
したゴム栓をした.そのペットボトルがスタンドを使って逆さまの状態で保てるように固定し
た.ここでは,ペットボトル1個の時の実験と違い,水面の高さが揃うまでの時間,
(同期した
場合は)同期した回数と水が垂れ流しになる時の高さを測る事にした.
12
実験の結果
∼小さい方のペットボトルの水面が低い時∼
まず,大きいペットボトルからひたすら水が流れている状態で水の流出が起こる.しかし,
小さいペットボトルからはちょろ,ちょろと流れる程度で,ほとんど水の流出が起こらない.そ
のまま,大きい方のペットボトルの水がなくなるまで水の流出が続く.次に,小さい方のペッ
トボトルからひたすら水が流れる.この時は,リズム運動は一度も起こらなかった.そのため,
以下の表では大きいペットボトルの水が流れ出た時の時間(小さいペットボトルの流出開始時
間とする)と小さなペットボトルの流れ出た時の時間を計測した.
実験
1 回目
2 回目
3 回目
大きいペットボトルの垂れ流し時間
8.31
8.43
8.36
小さいペットボトルの垂れ流し時間
10.83
10.38
10.34
平均
8.37
10.51
表 1: 2つのペットボトル内の水面の差が 10[cm] の場合
∼小さい方のペットボトルの水面が高い時∼
大きいペットボトルの水面に揃うように水が垂れ流し状態となり 2 つのペットボトルの水面
の高さが揃うと,同期現象が起こる.同期現象が起こってから数回,水滴(図1の流れの間に,
ペットボトル内から流出した水)が落ちた後,大きいペットボトルから水が垂れ流されるよう
に流出し,再び,同期現象が観測できた.
実験
1 回目
2 回目
3 回目
同期するまでの時間 [秒]
9.90
8.33
10.56
同期した回数 [回]
8
13
8
水が垂れ流しする高さ
3.4
3.2
3
平均
9.60
9.67
3.2
表 2: 2つのペットボトル内の水面の差が 5[cm] の場合
3.3.2
半離散モデルの場合
片方のペットボトルを最大容量 545[ml] で, もう一方を容量 945[ml] を使用した.まず,大
きい方のペットボトル内の水面を高くした時のシミュレーションを行った.
13
図 16: 異なるペットボトル
大きい方のペットボトルに 600[ml] の水を入れることで固定する.もう片方の小さい方のペッ
トボトルに水が 200[ml],400[ml],500[ml],600[ml] ペットボトル内に入っている場合の,ペッ
トボトル2つの水の流出量の比較を行った.
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
0
50
100
150
200
250
300
0
図 17: 水の量が 200[ml],700[ml] の場合
50
100
150
200
250
300
図 18: 水の量が 500[ml],700[ml] の場合
大きいペットボトルの水面が高い時,水の流出量は水面の高さの差は縮まるものの同期する
ことがなく,リズム運動が形成されなかった.
次に,小さい方のペットボトル内の水面を高い時の研究を行った.
図 19: 異なるペットボトル
14
小さい方を 500[ml] に固定する.もう片方のペットボトルを 200[ml],400[ml],500[ml],600[ml]
の水をペットボトル内に入っている場合の,ペットボトル2つの水の流出量の比較を行った.
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
0
50
100
150
200
250
300
0
図 20: 水の量が 200[ml],500[ml] の場合
50
100
150
200
250
300
図 21: 水の量が 400[ml],600[ml] の場合
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
0
50
100
150
200
250
300
0
図 22: 水の量が 500[ml],500[ml] の場合
50
100
150
200
250
300
図 23: 水の量が 600[ml],500[ml] の場合
小さい方のペットボトルの水面を高くすると,初めは小さいペットボトルが大きいペットボ
トルの高さに揃うように,水が流出していき,大きいペットボトルより,水位が低くなる.する
と,反対に大きいペットボトルの水の流出量が多くなるが,大きいペットボトルが小さいペッ
トボトル揃う事も,低くなる事もないまま水の流出が終わる.また,ここでは同期現象は見ら
れなかった.
15
4
まとめ
ペットボトル1個の時の実験,完全離散モデル,半離散モデルの比較
ペットボトル1個の時の実験,2種類の数理モデル(完全離散モデル・半離散モデル)を比
較した.実験では,流出量は一度,増加してから少しの減少が見られた.2種類の数理モデル
では,シミュレーションの結果から,ペットボトル内からの水の流出量に注目して,比較を行っ
たところ,2つの数理モデルは多少の誤差は見られたものの,ほぼ同じ様子が見られた.2種
類とも,徐々増加していくという結果が得られた.よって,完全離散モデルと半離散モデルは
ほぼ一致するとし.実験とは違いが見られた.
同一のペットボトル2つを結合させた場合
同じ大きさのペットボトル2つを結合させた時のペットボトル内の水の流出量に注目した.
ここでは,2種類の数理モデルに大きな誤差が見受けられなかったことから,半離散モデルを
採用し研究を行った. ペットボトル内の水面の高さ2つが等しい場合,水面の高さに限らず
2つのペットボトルの流出量は同期していた.よって,水面の高さが揃っている時はリズム運
動が観測された.
ペットボトル内の水面の高さが異なる場合は,水面の高い方が低い方に高さを合わせるよう
に水の流れ出た.流出量が1度,同期すると,その後の水の流出は同期をし続ける.よって,
ペットボトルの大きさが一緒で,水面の高さが異なる時でもリズム運動が見られた.
この時,実験,半離散モデル共に同じ結果が得られた.
大きさの異なるペットボトル2つを結合させた場合
同一のペットボトルと同様に水の流出量に注目した.ここでも,半離散モデルを採用した.
∼小さいペットボトルの水面が低い時∼
半離散モデルでは,水の流出量は大きいペットボトルが多く,徐々に流出量は縮まってはい
く.しかし,結局最後まで同期することがなく,同期現象は観測されなかった.
実験では,先に大きい方のペットボトルは中の水がリズム運動が起こってない状態のまま,
ひたすら水が流れてくる.大きい方のペットボトルが流出した.次に,ちょろちょろとしか出
16
てなかった小さいペットボトルからひたすら水が流れ出た.
よって,半離散モデルと実験ともに同期現象が起こらない点では同じだが,水の流れ出る方
法が大きく異なるため,改善の必要がある.
∼小さい方のペットボトルの水面が高い時∼
半離散モデルでは,最初は小さい方のペットボトルの水の流出量は多くなった.ひたすら水
が流れると,同期のないまま大きい方のペットボトルの水面が高くなる.その後大きい方のペッ
トボトルは小さい方のペットボトルに流出量の差は縮まるが同期することはなかった. 実験
では,最初は小さい方のペットボトルがひたすら水の流出をして,2つのペットボトルの水面
の高さが揃うと,同期現象が見られ,一度,大きい方のペットボトルがひたすら水の流出がお
こり再び同期現象を観測した.
完全離散モデルと半離散モデル
実験の結果と2つの数理モデルでは,異なる結果が多々見られた.その結果から,完全離散
モデルと半離散モデル共に改善する必要があるようだ.
17
謝辞
本研究を進めるにあたり,tex のインストールやプレゼンテーションに対するアドバイスを
頂いた龍谷大学理工学部数理情報学科専攻修士2回生の久保雄輝さんや,tex の書き方やサイ
ズの変更などアドバイスを頂いた龍谷大学理工学部数理情報学科専攻修士1回生の大田智史さ
ん本当に,お世話になりました.
参考文献
[1] 瀬戸山太一,”ペットボトル振動子のリズム運動・同期現象 ”,
龍谷大学理工学部数理情報学科 2011 年度卒業論文.
[2] http://www.chem.scphys.kyoto-u.ac.jp/nonnonWWW/b8/99f/nishikawara/kadai01.pdf
西川原 朋史,”ペットボトル振動子 ”,1999 年.
[3] http://synchro4.ee.uec.ac.jp/rhythm.html
電通大 先端分散システム研究室,”リズム現象,シンクロニゼーション ”
[4] http://ja.wikipedia.org/wiki/水柱メートル
Wikipedia,”水柱メートル ”
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