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物流と社会問題 - 東京海洋大学
苦■瀬■博■仁│ . *東 京商船大学 商船学部 東京都江東区越中島 2-1-6 cip E m a i l : k u s e @ i p c t 9 Suh Oa‐ ,物 流 動 (freight キー ワー ド : 物 流 ( p h y s i c a l d i s t r i b u t i o n )資 , ィクス ( l o g i s u c s ) , transport),社 会問題 ( s o d a l p r O b l e m )ロジステ 消費者行動 ( c o n s u m e r b e h a v i o r ) . 66 0 1997 SiCE ′ 98/37030】 JL Ollβ l. は じ覆X こ われわれが手 にす る食料品が,卸 売市場 や倉庫 か ら店舗 に配送 され るように,「物流」は日常生活 を送 るうえで不可 欠 であるが,従 来 あま り多 くの注意 を払われなかうた。 しか しなが ら,必 要 な時 に必 要な物資 を供給す るとい う 「ジャス ト・イ ン ・タイム ・システム」 が普及す るにつれ, トラックの交通量 は増加 し,過 剰包装 による環境 。廃棄物 的 な問題 となって い る物流問題 の現状 をさ ぐり, これ らに 対す る解決可能性 につ いて考 えてみる ことにす る。 図 1 2つ の物流 表 1 物流機能 の 内容 物流機能 輸送機能 保管機能 1` 2)。 「 物流」 には,2つ の悲劇 がある 第 1の 悲劇 は,用 語 としての物流 の意 味 の混 乱 であ り, 物的流通 と物資流動 の違 いに端 を発す る。 物的流通 の略語 としての物流」は,「商取引流通 前者 の 「 (商流)」 と共 に 「 流通」 を構成す るものであ り,商 品が需 要者 に届 けられ るまでの さまざまな活動 を示す。た とえば 受発注情報 (情報機能)を もとに,商 品の在庫状況 (保管機 エ 機能),包 装 能)を 調 べ,商 品 を組 み合 わせた り(流通カロ (包装機能)したのちに, トラックに積 み込み (荷役機能), 需要者 に届 ける (輸送機能)活動 である。すなわち,単 に輸 送機能だけでな く,保 管 ・流通加 工 ・包装 。荷役 ・情報機 能 が,物 流 (物的流通)に必要 となる。 一 方後者 の 「 物資流動 の略語 としての物流」は,「人 の交 物 の交通 」 であ り,商 品や製品 の移動現 通」 に対比す る 「 象 のみに着 目して い る (図 1,表 1)。 送 輸 集荷 ・配送 検品 。仕分け 。棚入れ,な ど 組立 ・切断 ・寸法合せ,な ど 値付 け ・ラベル貼 り 。詰合せ 包装機能 工業包装 商業包装 荷役機能 積 み込み 荷降 ろし 施設 内作業 輸送 ・保管用,品 質確保主体 販売用,マ ーケテ ィング主体 施設か ら交通機関ヘ 交通機関か ら施設ヘ 横持ち ・置 き換 え 。積 み替 え 情報機能 物流情報 商流情報 運行貨物追跡,入 出庫管理,な ど 受発注情報,金 融情報 Promo日on,場 所 :Placё )のうち,場 所的機能 に含 まれ る (図 2). た とえば新製品 の開発 は,生 産計画や価格政策 にはじま り,つ ぎに広告宣伝 と,流 通経路 (チャネル)や商圏 な どを 物流」 が考慮 され る。 この とき,物 流 か 検討 し,最 後 に 「 マー ングや ケテ ら ィ 経営 が省み られ ることは少ない。 また企業 にお いて 「 物流 は,生 産 と販売 に続 く第 二の収 益源」と叫んで も,「物流本部 長 は,生 産や販売 の本部長 よ りも地位 が低 い」 ことが 多 い。 物 の交通」 の議 人 の交通 」 に比 べ て 「 社会 にお いて も 「 論 は少 な く,手 も足 も日 も耳 もな い最大 のハ ンデ ィキャッ パ ーで ある 「 物 の移動」 に対 す る理 解 は希薄 である。 マ ーケテ イング ( 生産 計 画 : P r O d u c t , 価格 政 策 : P r i c e , 広告 宣 伝 : 図2 : 長時間,原 材料型 短時間,製 品型 加 工 作業 生産加 工 販促加 工 この結果 「 物流」 の概念 が,用 い る人や分野 によって異 なる ことが あ り,誤 解 を生 む ことも多 い。 第 2の 悲劇 は,企 業 と社会 での物流軽視 の風潮である。 企業経営 で重 要 な マー ケテ ィングにお いて,物 流 は 4P 鶉 容 長距離,線 的,1←一→1 短距離,面 的,1← → 多 流通加 工 2 。 物 流 問題 の 背 景 21「 物流」をめぐる2つの悲劇 内 類 分 蔵管 な物流が,効 率性 と利便性 を追求す るあまり,日 常 生活 の 社会問題」を引 き起 こしている。 環境悪化 を招 く」とい う 「 そ こで本稿 では,物 流 の内容 と変化 の背景 を考 え,社 会 {換 機 甦 興 貯保 問題 な どもあって,物 流 が注 目され るようになった。 すなわち物流 が需要者 と供給者 だけでな く第 二者 の居住 環境 に も大 きな影響 を与 え,皮 肉 に も 「日常生活 に不可欠 通2「 ー ロ ス ス イ ジ テ ク 騎 繁 量 [i曇 {易 コ 聴靴」 通 交 生 産計 画 価格政策 雷 構」暑 機 晟 機能― 屏 場 l流 _通 攣 通 機 能■ 霊 場 マー ケ テ ィ ング と物 流 計測 と制御 第 37巻 第 3号 1998年 3月 号 商品の高付加価値化 と物流 の社会問題 物 流 現象 ラ イフサイクル 短縮 流通加 工 増 加 商品 の高付加価値化 の例 の 包 装 過剰 な包 装 使い 捨 て の普 及 → 社 会 問題 公① ② ③ 民④⑤ 高付加 価 値 化 → 図3 [ [ ¨ ¨ 一 ¨ m ¨ 聰 嚇 表2 2.2 物流問題 の社会的背景 (1)商 品の高付加価値化 近年の流通 における最大 の変化 は,商 品 の高付加価値化 であった。すなわち,原 材料主体 の低付加価値商品 か ら, 手 の込 んだ高付加価値商 品へ の変化である。 これは 「 稲 。米 。ごはん 。おにぎ り 。弁当へ 」 とい うよ うに,ハー ドとしての原材 料 が,ソ フ トとしての技術 によっ て,よ り付加価値 の高 い商品へ と変化す る過 程 で もある。 食材 の米 や海苔の ような低付加価値商品 の多 くは長期保 管 が可能 だが,弁 当の ような高付加価値商品 は賞味期限 も ライフサイクル も短 くなる。 このため消費者 ニ ーズにあら エ と包 装 や,厳 密 な品 た商品の生産 と,て いねいな流通カロ 。 (図 3)。 となる 質管理 とひんぱんな配送が必要 (2)高 付加価値化 を必要 とす る消費者行動 商品 の高付加価値化 は,消費者行動 の変化が要因だった。 生活の 24時 間化,核 家族 ・ 単身家庭 の増加,女 性 の社会 進出な どによ り,高 コス トで高価格 であつて も,付 加価値 が高 く生活 に便利 な商品が必要 となって きて い る。 これに合わせて,生 産 され る商品 が よ り高品質 な ものヘ と変化 し,商 品 の品 目数 が増カロし,い わゆる軽薄短小化 が 進んだ。す なわち,手 作 りの料理か ら総菜 へ,洋 裁 か ら既 製服 の購入 へ とい う変化 は,生 産 の外部委託 である。 さらに ゴル フ ・ス キーの宅配便や トラ ンクルームの普及 は,物 流の外部委託 である。 (3)高 付加価値化 を可能 とした物流技術 商品の高付加価値化を可能 とした物流技術の革新には, 自動化技術 と計測制御技術, ① 輸送システム,② 機械化・ ③ 受発注情報システムがあり,物流の利便性や効率性を追 求したものであつた。 輸送 については,ユ ニ ッ トロー ド・システム (パレ ッ ト, コンテナな ど)や コール ドチ ェー ン ・システム (冷凍 ・冷 蔵保管技術)が,交 通 ネ ッ トワニ クの発達 とあいまって,発 地か ら着地 まで荷姿 を変 える ことな く,品 質 を保持 しなが ら輸送す る技術 が発達 した。 物流施設 内の作業 で は,荷 役 や仕分 け ・ピ ッキ ングな ど の機械化 。自動化技術 とこれ を支 える計測制御技術 が ,情 報通信 ネ ッ トワークの発達 と共 に,荷 役や作業時間 の短縮 と商品 の多様化 を可能 とした。 そして POS・ EOS・ VAN・ EDIな どの受発注情報 システ ム と,そ れ らの情 報 の物 流作 業 へ のす みやか な フ ィー ド 計測 と制御 第 37巻 第 3号 1998年 3月 号 バ ックが,物 流 の効率化 を促進 して きた。 3.物 流が引き起 こす社会問題 3.1 環境問題 としての物流問題 物流 の効 率性 と利便性 の追 求 と,高 付加価値 の商品 が普 及す るにつれ,物 流の社会問題 が顕 在化 して きた。商品の ライフサイクル の短 縮化 は,「多頻度小 口定時少量」に代表 され るひんぱんな輸配送 と,路 上駐停車の増加や積載率低 下 を招 き,環 境問題や物流 コス ト増 の原 因 となった。 た とえば都市間 を含 めた道路交通 における トラックの比 率 は,全 国 の交通量の 48.9%を 占めている。そして都市 に おける トラックの利用効率 は年 々低下 して,小 型 トラック の積載率 は 1970年 の 33.7%か ら 1990年 は 18.0%と なっ て い る。 この ように少量の貨物 を多 くの トラックで輸送す る要 因 には,小 日化 ・時間指定 。緊急配送 が あげ らて い る4 ) , 5 、 この結果,都 市 における自動車 (特に トラック)の交通量 が増加す る ことにな り,環 境 へ の影響 は年々深刻化 してい る。 た とえば輸送 トンあた りの C02の 排出量 は,鉄 道 (24 g)。内航海運 (35g)に比較 して, トラ ック (370g)が最 も多 い。また東京都 で は自動車の NOxの 排出量 の うち,62.5% 。(表 2). ` が貨物 自動車 となって い る。 3.2 都市問題 としての物流問題 近年の流通構造の変化 は,物 流施設 の機能更新 や郊外移 転 を促進 した。特 に都市郊外部 の幹線道路沿 いで住宅 と混 在す る物流施設 は, トラックによる騒音 ・振動 。排気 ガス と交通事故 の危険増加 によ り,居 住環境 を悪化 させた。 居住環境悪化 の原 因 は,自 動車 の騒 音 ・振動 ・排気 ガス が 第 1位 で,第 2位 が 自動車 の路上駐 車,以 下 家 が 建 て こんでいること,緑 や公 園が少 ない ことが続 いている。. この ような問題 は,物流施設 の立地規制 が緩 やかなため, 物流施設 を計画的 に集約 で きない ことが原因 として考 えら れ る。 しか も近年の 「 規制緩和」 の波 は安全規制や環境規 立地の自由 こそが規制緩和」 制 にさえも及 んでお り,仮 に「 に な どともなれば,容 易 解決方法 を見 いだせな くなる. 3.3 廃棄物問題 としての物流問題 高付加価値 の商品は,数 多 くの流通加 工 と包装 が繰 り返 され る点 に特徴 があ り,時 には過剰包装 や使 い捨 ての普及 :1鰈 をうなが し,結 果 として廃棄物問題 を引 き起 こした。 水筒 と自ら作 った にぎ りめ し」 で 出 か けた時代 か ら, 「 「コンビニ でペ ッ トボ トル とおにぎ り」の時代 になって,生 活 の利便性や豊 か さを得 るために,廃 棄物 の増加 や エ ネル ギーの過大消費 を黙認 して きた面がある。産 業廃棄物 の処 理や古紙 ・アル ミ缶 ・ペ ッ トボ トル な どの再利用 に十分 な で出 か けて配送 を依頼 して いた人が,商 品 を持 ち帰 るため に車 で 出 かけることも考 えられ る。交通量削減方策 として 共同配送 が提唱 されているが,配 送費無料の商品 を運ぶデ パ ー トの配送車 は,多 くの客の車 に替わ って商品 を共同配 送 して い ると解釈す ることもで きるのである。 このよ うに配送費有料化の影響 をただちに判断す ること 論議が少な く,環 境意識 も定着 して い るとはいい難 い。 「 川 に流せば下流 の国 が文句 を言 う西欧」と 「 何 で も水 に は難 しい。最近多 くなった 「 持 ち帰 り2,000円引 き」 とい う販売方法 は,商 慣行改善 の一 方法 か も知れない。 流せば済 む日本」 の違 い もあるのだろうか。 いずれにせ よ資源 としての回収や ゴ ミの軽量化 な ど,市 民 。自治体 ・企業が一体 となった対策 が望 まれて い る。 5。 技術革新 による社会 問題解決の 可能性 4.消 費者行動による社会問題解決 の 可能性 5.1 物流 システム技術 :社 会 のための技術 は ? 消費者行動 :消 費者 はわが ままか ? 物流問題 か ら消費者 を眺めた とき,「高付加価値商品の普 従来 の物流技術革新 が効率性 と利便性 の追求 にあった と すれば,近 年 の物流 の社会問題 によって必要 とされ る技術 4.1 革新 は,社 会全体 の利益追求 に 目標 があるべ きだろう。 た とえば流通加 工や包装 のニ ーズ を満た しなが らも,環 及 は生産の外部委託 であ り,主 婦 の手抜 きが原 因」 とい う た 「 消費者わ が まま論」 が あるが,こ れには限界がある。 た とえば,キ ャベ ツや ニ ンジンを買 い集 めてサ ラダを作 境や廃棄物問題 に対処す るような技術 や,将 来 の労働力不 足 をお ぎな う機械化 。自動化技術 とこれ を支 える計測制御 るよ りも,小 さなパ ック詰 めサラダを購入す るほうが,た とえ割高 であつて も単身者や核家族家庭 に とっては,材 料 も時間 もむだにな らない ことが ある。女性の社会進出 ・核 家族化 な どの社会変化 が,よ り便利 で高品質 の商品 を要求 してい るのであって, これ を 「 贅沢やわ が まま」 と決 めつ けた ところで,消 費者 に受 け入れ られ るものではない。. む しろ消費者行動 をある程度是認 しつつ,環 境汚染 や廃 棄物問題 に直接結 びつ くひんぱんな配送や過剰 な包装の排 除 と,こ れ らを要求す る消費者 の意 識変革 が課題 である (表 3)。 商慣行 :配 送費 は無料か ? 諸外国 では商品 の配送費 は有料 が一般的であるが,チ ッ プ とい う習慣がな い ことや蕎麦屋の出前が一般化 して い る 4.2 影響 もあってか,わ が 国 では配送費無料 が原則である。 し か し酒屋の ビールの配送費 が無料 な らば,毎 日少量ず つ配 この配送費無料 とは,商 品 を持 ち帰 る人 を含めて商品購 入者全員が,等 しく全体 の配送 費 を負担 してい ることにな るので,結 果 として公平 な負担 とはい えな い。 逆 に配送費 が有料 であれば,公 平 な商取引の実現 と商店 やデパ ー トの配送車両の減少が期 待 で きるものの,来 客車 さらに工場や流通セ ンターな どの民 間施設 だけでな く, 社会基盤 としての都市施設 も考慮すべ きである。家 では玄 関 と勝手 口が別 なように,ホ テル では客 の動線 と物 の動線 が異 なるように,都 市 の物流動線 を整備すれば,配 送時間 の短縮 や効 率的配送 が可能 にな り, トラックの交通量 も減 少 して社会問題 の解決 に寄与 で きるだ ろう. これ らの実現 には,物 流 を支 える技術 (物流 システム技 術,機 械化 ・自動化技術,計 測制御技術,情 報通信 シス テ ム技術 な ど)の 開発者 。設計者や,物 流の社会基盤である 都市計画 の技術者 が,社 会全体の利益 に も貢献 す るような 技術開発 を進 めて い くことが望 まれ る (図 4)。 5.2´情報 システム :代 替効果 は ? 情報 シス テムの発達 によ り, リー ドタイム (商品 の発注 か ら納品 までの時間であ り,受 発注時間 。生産時間 ・配送 時間 で構成 され る)が大 幅 に短縮 した。POSや EDIは 受発 ︲ 鉢 剛 鋼 嗣ネ 送 して もらうほうが,消 費者 に とっては新鮮 で保管 スペー ス も不要であるが,酒 屋の配送頻度 は高 くなる。 技術であった り,適 切 な在庫 管理 や配送計画 によって,む だな物流 を排除す る技術 (システム)も必要だろう。 両 が増加す ることも考 えられ る。 た とえばデパ ー トの配送費 が有料 になれば,従 来 は電車 表3 物流 の社会問題解決 の可能性 消 者 行 動― 費 l _層 喜 竺 膏 笞 要 暮 歌 磐 彗 俺 彗禦 │ 技 術 新 l稽 革 貸 サ )な 警 璽 民 を 鶏 貫 黒 傷 書 曇 化 、 ) 用 : 物 流活動 の増加 受発 注情 報 システム 受発 注対応 の システ ム 導 入 図5 物 流 情 報 シ ステ ム 物 流 活 動 の減 少 情報 システムの代替効果 と相乗効果 0 計測と制御 第 37巻 第 3号 1998年 3月 号 注時間 を,機 械化 。自動化技術 と計測制御技術 は生産 時間 を,配 送計画や経路選択 システムは配送時間 を短縮 し,物 意識 の改 革 に取 り組 む こ とが , い ま必 要 とされ て い るので 流の効率性 と利便性 を高 めて きた。 情報 システムの もう 1つ の効 果 に,代 替 。相乗 ・補完効 果 がある。受発注情報 システムは,物 流活動の活発化 によ る物流増加 (本 目乗効果)を引 き出す ものの,機 械化 。自動化 ( 1 9 9 7 年1 1 月1 7 日受付) あ ろ う。 参 考 文 献 苦瀬博仁 :ロ ジステ ィックスからみた生産 。流通の統合 と産業立 地,産業立地,3510,日 本立地 センター (1996) 苦瀬博仁 :ロ ジスティックスからみた生産 。流通の統合 と都市の 物流 システムの変化,経済 と労働 '97,東京都労働経済局 (1997) 林 :シ ステム時代の流通―ハー ドからソフ トヘー,中 公新書 270, 中央公論社 (1971) 建設省 :平成 6年 道路交通 センサス (1995) 苦瀬博仁 :第 2章 ,都 市内物流のシステムの現状 と課題,社 会基 盤 としての都市内物流 システム,土木学会 (1994) 東澤 聡 :21世 紀 に向けての物流政策,モ ビリティー,1992秋号 (1992) 東京都 :東京都 自動車公害防止計画 (1988) 苦瀬博仁 :都市生活か らみた端末物流,都市計画,198,日本都市 計画学会 (1996) 呉,ほ か :情 報 システムによる物流の代替 ・相乗 ・補完効果の分 析,日本都市計画学会論文集,27(1992) システムや配送 システムによってむだな物流や トラックの 交通量 を削減で きれば (代替効果),結 果 として社会問題 の 解決 に寄与 で きるであろう。 また物流活動量 には直接影響 がな くとも,円 滑な物流 を実現 (補完効果)する こと もで き るだろう0。 すなわち情報 シス テムによる物流 の相乗効果 を上回 る代 替効果 が望 まれてお り,こ の ことが社会問題 の解決 に も寄 与す ることになる (図 5)。 6 。 お わ りに 「 安全と水と,そ して配送サービスがタダ」で,「水に流 せば済む」国民性をもち, しかも 「 物流の地位の低い」わ が 国 において,物 流の社会問題 はどこまで解決可能 なので [著 者 あろうか。 残念なが ら,生 産者 も消費者 も,ま たその中間 で流通や 物流 に携わ る人々 も,さ らには行 政や研究者 も,本 格的 に 物流 の社会問題 に取 り組 んでいる人 は少ない。 そ して コ ップは上か ら見れば丸 く横 か ら見れ ば四角 い よ うに,物 流の社会問題 も角度 や立場 によってさまざまな見 え方がす る。さらにこれ らの解決策 は,「モ グラたた きゲー ム」 の ように,1つ の問題 を叩 けば別の問題 が 出 て くる。 だ とすれば,物 流 に直接携わ る生産 者 ・流通業者 ・消費 者 と共 に,生 産 ・流通技術 を通 じて社会 に関与す る技術者 が,自 らの立場 か ら物流 が引 き起 こす社会問題 に 目を向け, 苦 瀬 博 紹 介] 仁 君 1951年3月 1日生。73年早稲田大学理工学部 土木工学科卒業.81年同大学大学院博士課程修了 後,日 本国土開発 (株)技術研究所勤務 を経て,86 年東京商船大学助教授。94年 東京商船大学商船学 部教授,現 在 に至 る(工学博士)。92年世界交通学 会論文賞受賞。94年∼95年 フィリピン大学工学 部客員教授.物 流施設計画,流 通 システム,都 市 地域計画 な どの研究 に従事.日 本物流学会の理 事。日本計画行政学会の常任幹事.日 本都市計画学会, 土木学会, 日 本沿岸域学会な どの会員。著書 に 「ウォーターフロン 卜の計 画 ノー ト」 ,「土木工学ハ ン ドブック」 ,「マニラ 。エンジョイ ・トラブル」 な どがある。 その解決可能性 の検討 と社会全体 の利益 を考慮す るような (提供 :ジ ェ イテ ィエ ンジ エ ア リ ン グ (株)) 表紙の写真は,JTが 千葉県船橋市 に建設 した (施行 :ジ ェイティエンジエア リング)東 京流通基地の概観 を表わ してい ます。敷地面積 27,383m2,建 築面積 11,373m2の 3階 構造 の基地では,全国 25ヵ所 の JT工 場 と外国製たばこ用の保税倉庫か ら,1日 に大型 トラック 60台 分 の製品が入荷 されます。これ らは,基地内で都内 23区 を中心 とした首都圏の約 3万 店 の販売店向けに仕分 けられ ます。年間の取扱 い量は,全国販売量の約 1/5に相当す る600 億本となっています。この基地の中で特筆すべきものとしては,自動化,高速化を追求し た 自動 カー トンピ ッキ ング装置 です。 この装置 の開発 によ り,取 扱 い量の 9割 強 が,入 荷 か ら出荷 まで 自動で仕分 けられて い ます (くゎ しくは本特集の事例紹介 (1)を 参照 して く だ さい). 計測 と制御 第 37巻 第 3号 1998年 3月 号