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会計発生高の質に対する資本市場の評価 野間幹晴(横浜市立大学)

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会計発生高の質に対する資本市場の評価 野間幹晴(横浜市立大学)
会計発生高の質に対する資本市場の評価
野間幹晴(横浜市立大学)
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本研究の目的
本研究では会計利益の質と資本コストの関連について実証分析を行う。Easley and
O’Hara[2004]は、情報の質が資本コストに影響を与えるという多資産合理的期待モデルを導
き出した。従来、資産価格モデルでは、情報の質はリターンに影響を与える要因としてと
りあげられることはなかった。例えば、Fama and French[1992]では市場リスク以外の要因が
リターンに影響を与える可能性が示されたものの、リターンに影響を与えるファクターと
して情報の質は考慮されていない。これに対して、Easley and O’Hara[2004]では情報の質が
リターンに影響を与えるファクターであることを示すモデルが提示された。このモデルよ
り、企業は質の高い情報を投資家に提供することで、投資家が要求するリターンすなわち
資本コストを低下させることできることが示唆される。
こ う し た Easley and O’Hara[2004] の モ デ ル を 受 け て 、 Francis, LaFond, Olsson and
Schipper[2005]は情報の質として会計発生高の質を議論の遡上に載せ、会計発生高の質と資
本コストの関連について実証分析を行った。検証の結果、会計発生高の質が低い企業は資
本コストが高くなることが明らかにされた。本研究では Francis et al. [2005]をベースにして
日本企業のデータを用いて実証分析を行い、会計発生高の質が資本コストに影響を与えて
いるかどうかを検証する。
会計発生高の質と資本コストの関連を検証する本研究は、(1)資産価格モデルに関するリ
サーチ、(2)財務報告が資本市場に与える影響に関するリサーチ、(3)会計発生高アノマリー
に関するリサーチの 3 つの分野で貢献すると考えられる。
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リサーチデザイン
1 つは Jones[1991]
本研究では会計発生高の質として、
大きく 2 つのタイプの変数を用いる。
を嚆矢として会計研究で用いられるようになった裁量的会計発生高に関する変数である。
いま 1 つは Dechow and Dichev[2002]で定義された、会計発生高がキャッシュ・フローへの
実現値への写像となる程度に関する変数である。
具体的には、会計発生高の質を示す変数として以下の 8 変数を用いる。
AQ1:Kasznik[1999]の CFO 修正 Jones モデルによって推定した裁量的会計発生高の絶対値。
AQ2:Teoh, Welch and Wong[1998]のモデルによって推定した裁量的短期会計発生高の絶対
値。
AQ3: Kothari, Leone and Wasley[2005]にしたがって、業績を対応させることで修正した
1
AQ1 の絶対値。
AQ4:Kothari, Leone and Wasley[2005]にしたがって、
業績を対応させることで修正した AQ2
の絶対値。
AQ5:Dechow and Dichev[2002]のモデルをクロスセクションで推定した残差の絶対値。
AQ6:Dechow and Dichev[2002]のモデルをクロスセクションで推定した残差の標準偏差。
なお、標準偏差は過去 5 年間のデータから算出。
AQ7:Dechow and Dichev[2002]のモデルを企業ごとに時系列で推定した残差の標準偏差。
なお、時系列の推定は 8 年間で行う。
AQ8:AQ1 から AQ7 について因子分析を行うことによって得られた共通因子。
また会計発生高の質が資本コストに与える影響を検証するにあたっては、次のようなモ
デルを用いる。
Rj,m − RF,m = αj + βj (RM,m − RF,m) + λj AQfactor(k)m + εj ,m
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実証結果とインプリケーション
※実証結果の詳細とインプリケーションについては、当日報告させていただきます。
参考文献
Dechow, P. M. and I. D. Dichev, “The Quality of Accruals and Earnings: The Role of Accrual
Estimatino Errors,” The Accounting Review, Vol.77, Supplement 2002, pp.35-59.
Easley, D. and M. O’Hara, “Information and the Cost of Capital,” Journal of Finance, forthcoming,
2004.
Francis, J, R. Lafond, P. Olsson and K. Schipper, “The Market Pricing of Accruals Quality,” Journal
of Accounting and Economics, forthcoming, Vol.39 No.2, March 2005.
Kasznik, R, “On the Association between Voluntary Disclosure and Earnings Management,” Journal
of Accounting Research, Vol.37 No.1, Spring 1999, pp.57-81.
Kothari, S. P., A. J. Leone and C. E. Wasley, “Performance Matched Discrerionary Accrual
Measures,” Journal of Accounting and Economics, forthcoming, Vol.39 No.1, 2005.
Teoh, S. H., I. Welch and T. J. Wong, “Earnings Management and the Long-Run Market
Performance of Initial Public Offerings,” Journal of Finance, Vol.53 No.6, December 1998,
pp.1935-1974.
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