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今月のPick Up!
今月のPick Up! 遠隔制御を支えるバイラテラル制御に新たな提案 ―大出力用途の力順送型と触覚を敏感に伝える ABC 型 ロボナブル編集部 福島原発事故の発生以来,遠隔地にいながら複雑な作業が行えるロボットシステムの開発に関心が集 まっている。こうした作業を可能にするコア技術の 1 つとして,「バイラテラル制御」が知られてい るが,最近になり,新たな制御方式が提案されている。本稿では,大出力用途と手術用途という対極 にある 2 方式を紹介する。 (編集部) バイラテラル制御とは,遠隔地にいるロボット (スレーブ)が受けた力を操作者(マスタ)に力提 スタに伝える。スレーブ側の反力がマスタによく 伝達されるが,マスタの機構の影響を受けるため, 示したり,操作者がマスタに入力した力と同様の このタイプも操作感が重い(図 2)。そして, 「力 力で,スレーブが環境側に力を及ぼしたりする, 帰還型」は力逆送型の欠点を補うべく考案された 双方向で力覚を伝える制御である。おもに「対称 タイプで,マスタとスレーブそれぞれに力センサ 型」 「力逆送型」「力帰還型」の 3 方式のバイラテ を配置し,マスタにも力サーボ系を構成する(図 ラル制御があるが,いずれも高い操作性を備え, 3) 。スレーブ側の反力がマスタによく伝達され かつ大出力を発揮する用途には適さない。これに るうえマスタの操作感が軽い。良好な特性を備え 向け,マンマシンシナジーエフェクタズの代表取 るが,損傷しやすい力センサを配置するため,ス 締役を務める立命館大学の金岡克弥チェアプロフ レーブのハードウエア構成をロバストにすること ェッサーは「力順送型バイラテラル制御」という ができない。 新たな方式を提案している。 大出力用途に適した力順送型 これらに対し,金岡チェアプロフェッサーが提 案する「力順送型」では,マスタに力センサを配 置し,その入力情報をスレーブ側に投射する構成 とする。スレーブには力センサを配置せず,マス 各方式の特徴を述べておくと, 「対称型」では タをスレーブとの変位誤差を修正するように駆動 マスタとスレーブ双方の変位誤差から,これを修 する(いわゆる「変位誤差サーボ」 )ことでスレー 正する方向に駆動力を発揮するように制御を行う。 ブ側のダイナミクス(=動力学)を伝える(図 4)。 スレーブ側が受けた力(反力)を伝えるための力 力逆送型と逆の構成となることから力順送型と名 センサが不要で,かつ比較的安定した系(=まと 付けた。 まりや仕組み)を構成することができる。ただし, 過酷条件にさらされるスレーブに力センサを配 システムの慣性力や摩擦力の影響を受けるため操 置しないため,スレーブのハードウエア構成をロ 作感が重い(図 1)。 バストにすることができる。ゆえに,後述する 「力逆送型」はスレーブを位置サーボで構成し, 「MMSE(Man⊖Machine Synergy Effecter,人間機 スレーブに配置した力センサで計測した反力をマ 58 械相乗効果器) 」のような大出力アクチュエータ 機 械 設 計