...

HILIC カラムを用いた N-結合型グリカンの高速分析

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

HILIC カラムを用いた N-結合型グリカンの高速分析
HILIC カラムを用いた
N-結合型グリカンの高速分析
アプリケーションノート
生物医薬品・バイオシミラー
著者
はじめに
James Martosella, Oscar Potter,
組み換えモノクローナル抗体 (mAb) 治療薬は、治療用タンパク質のなかでも最大のグ
ループとなっています。この種の治療薬の効能は、mAb のグリコシル化パターンが適切
Danny Mancheno, and Jia Liu
かどうかに大きく左右されます。また、これまでに認可されている治療用 mAb は、す
Agilent Technologies, Inc.
べて免疫グロブリン G (IgG) です [1]。ヒト IgG には、各重鎖に 1 つの N-結合型グリコシ
ル化部位があります [2]。N-結合型グリコシル化はきわめて重要かつ複雑な翻訳後修飾
で、糖タンパク質薬剤の開発や処理、製造のあらゆる段階において、管理やモニタリン
グ、および解析が求められます [3]。治療用タンパク質の安全性、効能、血中半減期な
どの特性は、グリコシル化パターンの違いによる影響を受けます。そのため、グリカン
パターンの分析は、治療用糖タンパク質、とりわけ mAb の特性分析におけるきわめて
重要な要素となります。
グリカン分析については、さまざまな手法が適用されています。しかし、大部分のメ
ソッドは、酵素による mAb からのグリカンタンパク質遊離と、その後の 2-アミノベン
ズアミド (2-AB) などの標識試薬を用いた誘導体化をベースにしています [4]。グリカン
には発色団がないため、2-AB (中性) タグで標識化すれば、蛍光検出が可能になります。
標識化されたグリカンは親水性がきわめて高い構造で、分離テクニックとしては親水性
相互作用クロマトグラフィー (HILIC) が適しています。HILIC と蛍光検出を用いた分離は、
グリカン分析に適した堅牢なメソッドです。また、HILIC/LC とマススペクトロメトリー
を組み合わせれば、重要な質量情報や構造情報が得られます。
結果と考察
このアプリケーションノートでは、ハイスループットグリコシル
化分析に AdvanceBio グリカンマッピングカラムを導入していま
高速分離
す。AdvanceBio グリカンマッピングカラムは、新しい HILIC ア
ミドケミストリを備えたサブ-2 µm HPLC カラムです。このカラ
1.8 µm 粒子の AdvanceBio グリカンマッピング HILIC カラムを使
えば、10 分未満の超高速グリカン分析が実現します (図 2 および
表 1)。表 2 に、ピーク番号と IgG の主要グリカン構造を示して
ムおよびメソッドを用いれば、グリカンの高分離能を得ると同時
に、現在提供されている HPLC カラム技術よりも溶出時間を
40 % 短縮することができます。AdvanceBio グリカンマッピング
カラムの有効性を示すために、2-AB 標識ヒト IgG N-結合型グリ
います。
カンサンプルを分析しました。
9
4
15 16 17
14
7.382
7.819
7.991
3
6.167
3.923
2
13
10 11 12
6.480
2.992
0.2
8
1.965
2.093
1
2.840
0.345
0.363
3
5.214
2-AB
0.6 labelling
reagent
0.4
3.460
3.770
5 7
5.680
0.8
高速分離の評価にも同じ条件を使用しましたが、グラジエント
6
4.411
Agilent AdvanceBio グリカンマッピング、
2.1 × 150 mm、1.8 µm (p/n 859700-913)
グリカンライブラリ :Agilent 2-AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカン、
200 pmol (p/n 5190-6996)
溶離液 :
A) 100 mM NH4 ギ酸、pH 4.5
B) ACN
注入量 :
70:30 ACN: 水中で 2 µL
4.636
1
カラム :
3.304
条件、超高分離能
4
3.624
LU
2.476
2
材料とメソッド
0
0
は異なるものを使用しました。
1
5
6
7
8
9
分
図 2. 条件
ワークフローを図 1 に示しています。
グラジエント:
時間 (分)
0
12
12.15
12.5
12.9
13.05
15
%B
75
60
40
40
75
75
75
流量 (mL/min)
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
1.0
1.0
図 2. Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラムを使えば、2-
AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカンの 10 分未満での高速分離が
可能です。
図 1. Agilent AdvanceBio グリカンマッピング HILIC カラムと蛍
光検出を用いた 2-AB-標識ヒト IgG グリカン分析の全体のワーク
フローソリューション
表 1. 2-AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカンの高速分離で得られた分離性能結果
カラム
平均
RT (分)
RS 2,1
RS 3,2
RS 4,3
RS 6,5
平均
Bp (bar)、 ピーク
PW (分) 20 % B
キャパシティ
グリカンマッピングカラム
3.93
1.63
1.70
3.05
2.09
0.059
2
298
135
表 2. ピーク番号と IgG の主要グリカン構造
ピーク
グリカン
G0
10
G2FB
フルクトース
2
G0F
11
G1FS1
マンノース
3
G0FB
12
A1
4
G1F
13
A1F
5
G1F’
14
A1FB
6
G1FB
15
A2
7
G1FB
Man6
16
A2F
8
G2
17
A2FB
9
G2F
ピーク
グリカン
1
構造
構造
ガラクトース
N-アセチルグルコサミン
N-アセチルノイラミン酸
超高分離能分離
1.8 µm 粒子の AdvanceBio グリカンマッピング HILIC カラムでは、
高速分離の代わりに、わずかに長いランタイムでの超高分離能
分離を行うことも可能です (図 3 および表 3)。この分離では、2-
AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカンがきわめて良好に分離され、
きわめて高い感度が得られます。
9.612
2
4
図 3. 条件
11.669
12.348
LU
カラム温度 :
6
7
0
2.5
5.0
7.5
10.0
12.5
10 11
19.721
14 15
12
15.0
17.5
検出 :
17
19.023
8
16
13
14.369
15.423
16.242
17.077
17.580
10.535
1
8.474
0.2
0.677
0.718
0.913
0.4
3
12.986
標識試薬
0.6
12.018
12.665
5
0.8 2-AB
19.986
1.0
グラジエント :
9
13.964
1.2
20.0
使用機器 :
55 °C
時間 (分)
0
25
26
27
30
%B
流量 (mL/min)
80
0.5
60
0.5
0
0.5
80
0.5
80
0.5
蛍光、励起 260 nm、発光 430 nm
Agilent 1290 Infinity LC システムおよび
Agilent 1260 Infinity 蛍光検出器
分
図 3. Agilent 1.8 µm AdvanceBio グリカンマッピング HILIC カラムを用いた超高分離能分離における 2-AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカ
ンの分離
表 3. 2-AB 標識ヒト IgG N-結合型グリカンの高分離能分離結果
カラム
平均
RT (分)
グリカンマッピングカラム 12.7
平均
RS 2,1
RS 3,2
RS 4,3
RS 6,5
PW (分)
Bp (bar)、 ピーク
20 % B
キャパシティ
2.60
2.90
5.43
2.81
0.0741
298
3
221
性能比較
AdvanceBio グリカンマッピングカラムでは、2.1 × 150 mm 構成
の他社製カラムに比べて、同じクロマトグラフィー条件で優れた
分離能と狭帯域が得られます。また、ピークキャパシティも向上
17.005
0.6
0.4
0.2
2.5
5.0
7.5
10.0
12.5
15.0
2.5
5.0
7.5
10.0
12.5
15.0
B
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
17.5
20.0
22.5
分
20.0
22.5
分
17.076
0
LU
9.612
10.535
11.169
11.668
12.017
12.348
12.984
13.390
13.966
14.373
0
23.661
0.8
18.926
19.550
18.567
1.0
20.587
A
LU
1.2
18.240
16.006
し、分離時間は 40 % 短くなります (図 4 および表 4)。
17.5
図 4. Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラム (B) では、同じ寸法および同じ分離
条件の他社製カラムに比べて、優れた分離能、狭いピーク幅、高いピークキャパシティ
が得られ、分離時間が 40 % 短くなります。
表 4.スピード面の利点を示す Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラムと他社製カラムとの比較
カラム
平均
RT (分)
平均
RS 2,1
RS 3,2
RS 4,3
RS 6,5
PW (分)
Bp (bar)、 ピーク
20 % B
キャパシティ
他社製グリカンカラム (A)
20.2
1.77
1.94
3.39
2.10
0.1085
349
214
Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラム (B)
12.7
2.60
2.90
5.43
2.81
0.0741
298
221
4
別の比較では、両方のカラムに超高速分離を適用しました。使
用した条件 (5 % B によりグラジエントオフセットを調整) はどち
らのカラムも同じです。AdvanceBioグリカンマッピングカラムで
は、2.1 × 150 mm 構成の他社製カラムに比べて、優れた分離能、
狭帯域、高いピークキャパシティが得られました (図 5 および表
5)。
グラジエント A
% B mL/min
時間
2.916
0
1
2
3
6
7
4
5
6
70
47.5
30
30
70
70
70
1.0
1.0
0.50
0.50
0.50
1.0
1.0
オフセット
+min
5% B
9
8
グラジエント B
時間
% B mL/min
0
18
18.15
18.5
18.9
19.05
22.50
6.167
3.460
3.624
3.923
2.093
0
2.840
0.6
0.2
6.422
5
0.8
0.4
4.792
3.879
4
4.411
1.0
5.011
3
4.636
2
B
0
18
18.15
18.5
18.9
19.05
22.50
3.304
1
0
LU
4.060
4.311
2.510
3.290
3.746
A
2.476
LU
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
7
75
52.5
40
40
75
75
75
8
1.0
0.5
0.50
0.50
0.50
1.0
1.0
9
分
図 5. 超高速分離の比較: 同じ分離時間を用いる場合、AdvanceBio グリカンマッピングカラム (B)
では、同じ構成の他社製カラムに比べて優れた分離能、狭帯域、高いピークキャパシティが得
られます。
表 5. 分離能における利点を示す Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラムと他社製カラムとの比較
カラム
平均
RT (分)
平均
RS 2,1
RS 3,2
RS 4,3
RS 6,5
PW (分)
Bp (bar)、 ピーク
20 % B
キャパシティ
他社製グリカンカラム (A)
4.32
1.02
1.39
1.92
1.59
0.078
375
101
Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラム (B) 3.93
1.63
1.70
3.05
2.09
0.059
298
135
5
化学的安定性
AdvanceBio グリカンマッピングカラムでは、高温条件での優れ
た寿命安定性も示されています。図 6 は、60 °C で 5000 回注入
したあとの安定した分離性能を示しています。この比較では、繰り
返し注入後にもピーク形状、保持力、感度が維持されています。
結論
HILIC ベースの Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラムを
使えば、他の HPLC カラムよりも優れた分離能および効率でグリ
カンを分離することができます。溶出時間も 40 % 短縮されます。
また、5000 回以上の注入後にも優れた化学的安定性が保たれます。
LU
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
寿命テスト後
0.5
謝辞
この研究は、第 41 回高性能液相分離および関連技術に関する国
際シンポジウム (HPLC 2014) のポスターセッションで発表された
ものです(2014 年 5 月 11–15 日、ニューオーリンズ)。
参考文献
寿命テスト前
0
0
5
10
図 6. Agilent AdvanceBio グリカンマッピングカラムの寿命テス
ト前後のグリカン分離結果の重ね表示 (HILIC QC 条件 : 10:90 100
mM pH 4.4 ギ酸アンモニウム : ACN、0.2 mL/min、4 分、60 °C、
シトシン)
1. R. Jefferis, Biotechnol.Prog. 21, 11 (2005).
2. J. N. Arnold, L. Royle, R. A. Dwek, P. M. Rudd, R. B. Sim,
Adv.Exp.Med.Biol. 564, 27 (2005).
3. R. Abès, J. L. Teillaud, Pharmaceut. 3, 146 (2010).
4. L. R. Ruhaak, G. Zauner, C. Huhn, C. Bruggink, A. M. Deelder,
M. Wuhrer, Anal.Bioanal.Chem. 397, 3457 (2009).
詳細
これらのデータは一般的な結果を示したものです。アジレントの
製品とサービスの詳細については、アジレントの Web サイト
(www.agilent.com/chem/jp) をご覧ください。
www.agilent.com/chem/jp
アジレントは、本文書に誤りが発見された場合、また、本文書の使用により付随的
または間接的に生じる損害について一切免責とさせていただきます。
本資料に記載の情報、説明、製品仕様等は予告なしに変更されることがあります。
アジレント・テクノロジー株式会社
© Agilent Technologies, Inc., 2014
Printed in Japan
June 30, 2014
5991-4886JAJP
Fly UP