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流動部門での刺激的な2年間
流動研究部門を去るにあたり 2 流動部門での刺激的な2年間 千葉大学大学院自然科学研究科助教授 奥 平 幸 司 (前 分子スケールナノサイエンスセンター界面分子科学研究部門助教授) 2001年4月から2年間の流動部門の任期を終 できた刺激の多い日々となりました。流動部門は、 えて、2003年4月1日より千葉大学に帰任いた 大学で多くの時間が割かれる入試問題作成、試験監 しました。この2年間は、所長の茅幸二先生をはじ 督、授業などの負担がなく、研究者にとってすばら め多くの人々のご好意により、快適な研究活動を送 しい環境であることは確かです。さらに時間の問題 ることが出来ました。また宇理須恆雄先生をはじめ だけでなく、分子研には身近に大変すばらしい研究 極端紫外光科学研究系の方々には、特にお世話にな 者の方々がおり、最先端の研究がもつその雰囲気に りました。 触れることはそれだけでもとても貴重な体験でした。 こちらにもどり1ヶ月になり講義、学生実験も始 実際、毎日の様に行われる研究会、多くの人たちと まりました。2年間遠ざかっていた大学生活のリズ 有益なディスカッション、共同研究等、研究分野間 ムに慣れるに従い、改めて流動部門のこの2年間は、 の垣根の低さは大学では得られないものでしょう。 とても刺激的で、あっという間に夢の様に過ぎさっ このような環境の中で、放射光を用いた有機薄膜表 てしまいました。2年前流動部門に着任し、岡崎へ 面・界面の電子状態に関する研究を行うことができ の転入届を市役所に提出する際通った乙川の堤防の ました。自分として満足な結果を出せたとまではい 桜がとてもきれいでした。そう感じたのもつかの間、 えませんが(したいこと、やり残したことが多すぎ 次に同じ場所でほころびかけた桜を見たのは、岡崎 ます)、今後の自分の研究の上で重要な“芽”を見 からの転出届を提出しに行く時でした。 つけることが出来たのではないかと思います。 僕は分子研に13年前にIMSフェローとしてお 現在大学に戻り、日々“研究+その他の用務”に 世話になっております。その後も協力研究でUVSO 追われ苦闘しております。しかしながら分子研で受 RのBL8B2ユーザーとして年数回訪れる機会があ けた刺激を大切にしながら、学生が多いという大学 りました。その意味では分子研自体(外観)は僕に の特徴を有効に活用し、新たな研究に進んでいきた とって目新しいものではありません。ユーザーとし いと思っております。 て分子研に来る場合、時間的問題(UVSORのユー 最後に、流動部門に関して、一言。今後独法化の ザーの場合、1週間程度のマシンタイムの間朝9時 関連でその存続を含めて多くの議論がなされると思 ごろから夜8時ごろ(もちろんもっと遅くまでいる います。研究者の流動性の低さ、研究以外の業務に こともあります)までUVSOR実験ホールに閉じこ 費やす時間の増大等、これまで日本の大学の教官に もっていることが多く、外に出るのは食事とSR光 ついて指摘されてきた問題点を考えると、流動部門 入射時になってしまうことが多い)から、なかなか の存続とより良い方向への制度の変革は是非とも必 分子研の雰囲気に触れるにはいたりません。しかし 要だと思います。2年間本当にありがとうございま ながらこの2年間の分子研での生活は後述するよう した。 に、久しぶりにIMSフェロー時代に感じることが 44 分子研レターズ 48