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避難所通信システムの開発

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避難所通信システムの開発
地域安全科学部門 災害情報通信分野
避難所通信システムの開発
間瀬 憲一
1.はじめに
大規模災害時,通信システムの障害,通信規制により,携帯電話等が利用困難になる場合が多い.安
否確認,被災状況の確認,緊急連絡も困難になる.そこで,避難所の避難者と外部との連絡を可能にす
る避難所通信システムを開発した.
2.前提条件
本システムを避難所通信システム(Shelter Communication System: SCS)と呼ぶ.SCSの設計に当
たり,以下の条件を設定する.
⑴ 非常用発電機の利用も含め,避難所における電源は復旧している.
⑵ 各避難所にはインターネット接続のための回線が1回線,提供される.
⑶ 避難所利用者は携帯電話,個人のパソコンなどの端末機器を持たず,それらを利用するスキルを
持たない人もいる.
⑷ 各避難所に端末一式(パソコン,スキャナー,プリンタ)が配備され,上記の1回線によりパソ
コン(避難所PCと呼ぶ)がインターネット接続される.
⑸ SCSの中核設備として,インターネットに接続されるコンピュータ(避難所サーバ)が配備され
る.避難所サーバは公的機関や通信事業者の協力により運営され,災害に備えて常設されている.
SCSではひとつの避難所当たり原則としてインターネットアクセスのための1回線を必要とするだけ
である.このため通信事業者が早期復旧できる有線/無線仮設通信回線数が限定される場合でもそれを
有効活用できる.この1回線を社会的認知のもとに優先回線扱いすることが望ましい.携帯電話サービ
スが機能している場合でも多くの被災者がそれぞれ携帯電話を利用すれば被災地に発着する通信トラ
ヒックが急増し,通信規制により接続が困難になる。 SCSによるサービス提供により避難所での携帯電
話の利用を抑制する効果も期待できる.
3.システムとサービスの概要
SCSを構成する避難所サーバ,各避難所に設置する避難所PCおよび関連のシステムを図1に示す.
サービスの概要を以下に記述する.
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図1 避難所通信システムと関連システムの概要
図2 メッセージ用紙のフォーマット
⑴ 避難所の利用者は一定様式の用紙(図2)にメッセージを手書きする.メッセージ送信者と受信
者の電話番号をメッセージ用紙の所定の位置に手書きする.これらの電話番号は利用者の利用者識
別子として利用され,固定電話,携帯電話いずれのものでもよく災害により不通であってもよい.
メッセージ本文は自由文記述欄に手書きする.
⑵ 集められた記入済みのメッセージ用紙は束ねられ,スキャナにより避難所PCに読み込まれる.
電話番号は光学的文字読み取り装置(OCR)によって数字認識される.メッセージ本文に対して
はOCRを用いず,それらは単にイメージデータとして扱われる.これは自由記述される手書き文
字の認識誤りの問題を避けるためである.
⑶ 避難所PCは読み込んだメッセージ用紙をひとつのファイル(メッセージファイル)にまとめ避
難所サーバにアップロードする.
⑷ 避難所サーバは各メッセージ用紙の宛先電話番号に対応する電子メールアドレスが未登録の場
合,その宛先に自動電話をかけ,SCSホームページへの利用者登録要請を行う.
⑸ 被災地外の利用者はSCSのホームページにアクセスして,利用者登録を行う.
⑹ 避難所サーバは宛先番号に対応する電子メールアドレスが登録されるとメッセージの閲覧アドレ
ス(URL)を電子メールで受信者へ通知する.
⑺ 受信者は閲覧アドレスにアクセスして,避難所からのメッセージを閲覧する.また,SCSホーム
ページより避難所から受信したメッセージへの返事を送ることができる.
⑻ 避難所サーバが受信した外部から避難所利用者へのメッセージは宛先避難所ごとに仕分けされ保
持される.
⑼ 避難所PCは当該避難所利用者へのメッセージを一定時間ごとにダウンロードする.これらの
メッセージはプリンタで印刷され受信者に配布される.
4.まとめ
避難所通信システムの技術は実用化段階にあり,東日本大震災に際しては,東松島市の縄文村歴史資
料館内において,試行サービスの提供を行い,今後の大規模導入への技術的,社会的課題を明らかにし
た.
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