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(2)適地エリア内の検討
(2)適 地 エ リ ア 内 の 検 討 「 (1)適 地 エ リ ア の 選 定 」に お い て 、設 置 者 と し て 特 に 留 意 す べきアクセス及び災害時における被害想定等の2つの条件に より選定した甲府盆地北西部、甲府盆地東部の2つのエリアに ついて、次の土地利用に関する指定区域の状況及び動植物の生 息環境への影響について検討を行った。 ◇土地利用に関する指定区域の状況 ・土地利用状況(用途区域の指定状況) ・土地利用規制等の有無(農業振興地域整備計画に定める農 用地区域の指定状況) ・埋蔵文化財への影響の有無 ・レッドデータブックに示される「日本の地形」の有無 ◇動植物の生息環境への影響 ・鳥獣保護区の設定の有無 ・指定猟法禁止区域の設定の有無 また、併せて、甲府盆地北西部、甲府盆地東部の2つのエリ ア内において、用地取得が不要な「利用可能な県有地」につい て検討を行った。 ①甲府盆地北西部(甲府都市計画区域内)の検討 ◇甲府都市計画区域内は、図8に示すとおり、ほとんどの土 地に用途区域が指定されている。また、用途区域のほとん どが住居地域となっており、住家が密集している。 ◇用途区域のうち工業地域は、消防防災航空基地の設置が可 能と考えられるが、送電線などにより、安全な運航に支障 を来すおそれがある。 ◇ ま た 、用 途 区 域 が 設 定 さ れ て い な い 地 域 が 若 干 存 在 す る が 、 その多くは、甲斐市の農業振興地域整備計画により、農用 地区域が設定されており、消防防災航空基地の想定面積か らすると、甲斐市の土地利用計画に大きな影響を及ぼすお それがある。 -27- ◇以上から、甲府盆地北西部のうち甲府都市計画区域内にお いては、消防防災航空基地としての適地を見出すことは難 しい。 図8 甲府都市計画区域内の土地利用状況等 山林 甲斐 農業振興地域 鳥獣保護区 甲斐 農業振興地域 ②甲府盆地北西部(韮崎都市計画・峡西都市計画区域内)の検 討 ◇韮崎都市計画及び峡西都市計画区域内は、図9に示すとお り、用途区域が設定されている土地は少ないが、住家が密 集する地域以外は、甲斐市、韮崎市及び南アルプス市のそ れぞれの農業振興地域整備計画により農用地区域が設定さ -28- れており、消防防災航空基地の想定面積からすると、それ ぞれの市の農業振興地域整備計画に大きな影響を及ぼすお それがある。 ◇このため、農用地区域以外の区域が適当であることから、 エリアは極めて限定されるが、学校法人日本航空学園の所 有地を含め、数箇所の適地が考えられる。 図9 韮崎都市計画・峡西都市計画区域内の土地利用状況等 日本の地形 韮崎 農業振興地域 県有地 甲斐 農業振興地域 韮崎 農業振興地域 日本航空学園 鳥獣保護区 甲斐 農業振興地域 鳥獣保護区 日本の地形 南アルプス 農業振興地域 埋蔵文化財包蔵地 住宅密集地域 ◇ ま た 、こ の エ リ ア に は 、約 1 3 ヘ ク タ ー ル に 及 ぶ 県 有 地( 元 総合農業技術センター用地)が存在するが、中山間地域に 位置し、建物が建設されている敷地以外は傾斜地となって -29- いることから造成に相当の経費が想定されること、またア クセス道路の整備に相当の経費が想定されること、さらに は東西に集落が存在することから、適地とは考えにくい。 ③甲府盆地東部(峡東都市計画区域内)の検討 ◇峡東都市計画区域内は、図10に示すとおり、用途区域が 設定されている土地は少ないが、住家が密集する地域以外 は、山梨市、甲州市及び笛吹市のそれぞれの農業振興地域 整備計画により農用地区域が設定されており、消防防災航 空基地の想定面積からすると、それぞれの市の農業振興地 域整備計画に大きな影響を及ぼすおそれがある。 ◇このため、農用地区域以外の区域が適当であることから、 エ リ ア は 極 め て 限 定 さ れ る が 、数 箇 所 の 適 地 が 考 え ら れ る 。 本提言においては、具体的な適地と考えられる場所のうち、 現在消防防災ヘリポートとして運用している学校法人日本航 空学園敷地及び県有地以外の場所については、情報を公にする ことにより、県民の間に混乱を生じさせるおそれがあることか ら、記載を差し控えることとした。 -30- 図10 峡東都市計画区域内の土地利用状況等 鳥獣保護区 山梨 農業振興地域 埋蔵文化財包蔵地 住宅密集地域 甲州 農業振興地域 日本の地形 笛吹 農業振興地域 -31- 7 まとめ (1)本 県 の 現 状 と 課 題 現地視察を行うとともに、全国調査の結果を踏まえ、本県の 現状と課題を次のとおり整理した。 ◇本県の消防防災ヘリポートは、民間所有の非公共用ヘリポー トであり、消防防災ヘリコプターを有する40道府県及び 15政令指定都市の中で、最も不安定な運営形態である。 ◇ 本 県 で 大 規 模 災 害 が 発 生 し た 場 合 、岩 手 ・宮 城 内 陸 地 震 の 例 を踏まえると、本県消防防災ヘリコプターも含め、最大で 10機の活動が想定されるが、本県には、10機のヘリコプ ターの当面の活動に必要な燃料約45キロリットルが確保さ れておらず、また、確実に使用できる応援ヘリコプターの駐 機スペースも確保されていない。 ◇本県においては、切迫性が指摘される東海地震をはじめ、富 士山噴火等による大規模災害の発生が予想されており、岩 手・宮城内陸地震発生時に、備蓄燃料の枯渇により消防防災 ヘリコプターが運航できない事態が生じていることなどを踏 ま え る と 、一 日 も 早 い 消 防 防 災 航 空 基 地 の 整 備 が 求 め ら れ る 。 (2)消 防 防 災 航 空 基 地 に お い て 確 保 す べ き 施 設 本県は、空港や自衛隊航空基地がないなど、他県に比べ著し く不利な環境にあることを踏まえ、他県・政令指定都市の状況 を参考に、本県消防防災航空基地において確保すべき施設につ いて次のとおり整理した。 区 分 施設内容・規模 ヘリポートの種別 非公共用ヘリポート 敷地面積 50,000㎡程度 着陸帯(滑走路) 長 さ 2 5 m×幅 2 0 m エプロン 2スポット 建物面積 1,500㎡程度 -32- 区 分 施設内容・規模 格納庫 2機分 給油施設 地下タンク 4 0 K L ( 2 0 KL ×2 基 )、 別 に ド ラ ム 缶 で 5 K L を 備 蓄 航空灯火設備 飛行場灯台、誘導路灯、着陸区域照明灯 等 非常用発電設備 72時間対応 (3)消 防 防 災 航 空 基 地 の 要 件 先進県における適地選定時の留意事項等を踏まえ、消防防災 航空基地の要件(非公共用ヘリポートの適地選定にあたり勘案 すべき条件)について、次のとおり整理した。 ◇消防防災航空基地の要件の概要 ①運航条件(ヘリコプターの運航に係る条件) ②社会条件(ヘリポートの立地に係る条件) ③建設条件(用地取得に係る条件) ④自然環境条件(動植物の生息環境に係る条件) ⑤その他の条件(ヘリポートの安定的な運用に係る条件) ※本県においては、切迫性が指摘される東海地震をはじめ、 富士山噴火等による大規模災害の発生が予想されている ことから、上記の条件に加え、消防防災航空基地の整備時 期についても十分留意する必要がある。 ◇設置者が特に留意すべき事項 ①アクセス ②災害時における被害想定等 (4)消 防 防 災 航 空 基 地 機 能 の 強 化 ①適地エリアの選定 現段階で勘案できる条件のうち、設置者として特に留意す べき事項により、適地エリアとして、甲府盆地北西部及び甲 府盆地東部の2つのエリアを選定した。 ②適地エリア内における適地の検討 -33- 現段階で勘案できる条件のうち、 「土地利用に関する指定区 域の状況」と「動植物の生息環境への影響」を踏まえ、当該 エリア内の具体的な適地について検討した。 ◇甲府盆地北西部のうち、甲府都市計画区域内においては適 地を見出すことは困難であるが、韮崎都市計画及び峡西都 市計画区域内では、エリアは極めて限定されるものの、学 校法人日本航空学園敷地を含め数箇所の適地が考えられ る。 ◇甲府盆地東部(峡東都市計画区域内)においては、エリア は極めて限定されるものの、数箇所の適地が考えられる。 ◇具体的な適地の一つと考えられる学校法人日本航空学園敷 地及び未利用の県有地以外の場所については、県民の間に 混乱を生じさせるおそれがあることから、記載を差し控え ることとした。 (5)将 来 に わ た る 安 定 的 な 運 用 に つ い て の 意 見 今後、山梨県において、具体的な適地と考えられる場所につ いて、さらに詳細な検討を行い、候補地を決定していくに当た り、将来にわたって安定的な運用を可能とする「地域住民の理 解 ・ 協 力 」、「 安 全 表 面 に お け る 支 障 物 件 設 置 の 可 能 性 」 が 極 め て重要な要素であるため、これら について の意見を 付記する。 ①地域住民の理解・協力 ◇消防防災航空基地の整備に当たっては、用地取得から運航 に 至 る ま で 、地 域 住 民 の 理 解・協 力 が 必 要 不 可 欠 で あ る が 、 近年、住民生活に少なからず影響を及ぼす施設整備に対し 地域住民の理解・協力が得られないケースも多く見受けら れる。非公共用ヘリポートを整備した団体の例を踏まえる と、基礎調査及び基本計画策定に概ね1年の期間が、その 後住民の理解を得るまでに少なくとも3年以上の期間が必 要と考えられるため、基本計画の策定から整備完了(供用 開始)までには少なくとも6年以上の期間が想定される。 -34- ◇適地の1つと考えられる学校法人日本航空学園敷地につい ては、平成7年度から、地域住民の理解・協力を得て、消 防防災ヘリコプターを運用してきている。 ◇空港や自衛隊航空基地がないなど、他県に比べ著しく不利 な環境にある本県において、消防防災航空基地の早期整備 を優先する立場に立つのであれば、適地の1つと考えられ る学校法人日本航空学園敷地を活用することが適当と考え られる。 ②安全表面における支障物件設置の可能性 ◇非公共用ヘリポートは、法的に、ヘリコプターの安全空域 を確保するための強制力がないため、安全空域内に障害物 が構築された場合は、ヘリポートを運用することができな くなるおそれがある。 ◇このため、非公共用ヘリポートを整備している5政令指定 都市では、安全表面に支障物件が設置されないよう、海岸 または河川沿いの土地や、公的機関所有地の隣接地などに 整備することにより、安定的な運用を確保している。 ◇今回、適地として検討した場所のほとんどは、河川沿いの 土地であるが、学校法人日本航空学園敷地での整備を検討 するのであれば、近年、北側隣接地に大型のショッピング センターが建設されたことも踏まえ、将来にわたって安定 的な運用が図れるよう、現在地の強化、あるいは、より河 川に近い場所における整備など、安全表面を確保するため の方策について検討する必要があると考える。 -35-