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水圧破砕法による初期地圧の測定方法
JGS****-20** 水圧破砕法による初期地圧の測定方法 Method for initial stress measurement by hydraulic fracturing technique 適用範囲 1 この基準は,孔井を利用した水圧破砕法による初期地圧の測定方法について規定する。測定は,割れ目 の少ない岩盤を対象とする。 引用規格・基準 2 なし。 用語及び定義 3 この基準で用いる主な用語及び定義は,次による。 3.1 初期地圧 原位置岩盤応力のうち,坑道掘削などの人為的な擾乱による応力変化を受けていない岩盤応力のこと。 3.2 水圧破砕 試験区間に送水して加圧することにより,孔井壁面に新たなき裂を生成すること。 3.3 ブレークダウン 送水中に孔井壁面にき裂が生成して,試験区間の水圧が急減すること。 3.4 シャットイン 送水管の途中にあるバルブを閉じて送水を止めること。 3.5 コンプライアンス 試験区間への送水量を測定する流量計から試験区間までの部分の水圧を単位圧力上昇させるために必要 な送水量のこと。 3.6 送水レート 試験区間への送水量を示す用語で,単位には ml/min を用いる。 3.7 破砕圧 Pb 試験区間の孔井壁面にき裂が生成するときの水圧のこと。 3.8 き裂閉口圧 Ps シャットイン後に試験区間の水圧が下がり,き裂の先端が閉じ始めるときの水圧のこと。 -1- 3.9 き裂再開口圧 Pr き裂の全面が閉じた後に試験区間を再加圧して,き裂が孔井壁面で開き始めるときの水圧のこと。 測定用具 4 測定用具は,次による。 4.1 水圧破砕試験装置 水圧破砕試験装置は,水圧破砕用送水ポンプ,パッカー用送水ポンプ及びデータロガーからなる地上装 置と孔井内に挿入する水圧破砕用ゾンデ,及びゾンデと地上装置をつなぐ送水管で構成される。ゾンデの 昇降は,図 1 のワイヤラインあるいは図 2 のロッドで行う。水圧破砕用ゾンデと送水管は,き裂再開口圧 を正確に読み取れるように,コンプライアンスを小さくする必要がある。 パッカー用 高圧ホース 水圧破砕用 送水ポンプ ウインチ パッカー用 送水ポンプ 送水管 データロガー パッカー用 高圧ホース 孔井 孔井 圧力計、流量計 注水孔 試験区間 試験区間 パッカー 図 1-ワイヤラインを用いた水圧破砕試験の例 水圧破砕用ゾンデ 圧力計、流量計 注水孔 パッカー a) データロガー ロッド パッカー 水圧破砕用ゾンデ パッカー ケーブル 水圧破砕用 送水ポンプ 地上装置 送水管 水圧破砕用ゾンデ シーブ パッカー用 送水ポンプ 地上装置 アーマードケーブル 図 2-ロッドを用いた水圧破砕試験の例 水圧破砕用ゾンデは,2 つのパッカーと圧力計や流量計等の測定器で構成され,2 つのパッカーの間に注水孔がある。 注記 1 試験区間長は,孔径の 3~6 倍程度が望ましい。 注記 2 圧力計は,測定範囲が最大 30 MPa 以上で,最小分解能 0.01 MPa 以下のものが望ましい。 注記 3 流量計は,測定範囲が最大 100 ml/min 以上で,最小分解能 0.1 ml/min 以下のものが望ましい。 b) 水圧破砕用送水ポンプ 水圧破砕用送水ポンプは,想定される破砕圧より大きい圧力で試験区間を加 圧できるものとする。 注記 4 水圧破砕用送水ポンプは,30 MPa 以上の圧力で連続的に 100 ml/min 以上の吐出能力を有する ものが望ましい。 c) パッカー用送水ポンプ パッカー用送水ポンプは,想定される破砕圧より大きい圧力でパッカーを加圧 -2- できるものとする。 注記 5 パッカー用送水ポンプは,30 MPa 以上の圧力で加圧可能なものが望ましい。 d) データロガー e) 送水管 4.2 データロガーは,0.1 秒以下のインターバルで測定できるものとする。 送水管は,想定される破砕圧より大きい圧力に耐えられるものとする。 き裂型撮り装置 き裂型撮り装置は,孔井内に挿入するき裂型撮り用ゾンデと送水ポンプから構成される。き裂型撮り用 ゾンデは,パッカー,き裂型撮り用シート及び方位計や圧力計等の測定器で構成される。パッカーの長さ は,試験区間より長くする。ゾンデの昇降は,水圧破砕用ゾンデと同様に行う。 注記 6 方位計は,1°以下の分解能を有するものが望ましい。 測定方法 5 水圧破砕試験は,水圧破砕用ゾンデを孔井に挿入し測定対象位置にてパッカーの加圧により孔壁に密着 させた後,水圧破砕用送水ポンプを用いて破砕試験と再開口試験を行い,破砕圧,き裂閉口圧,き裂再開 口圧を計測する。水圧破砕用ゾンデを回収した後,き裂型撮り用ゾンデを孔井に挿入し測定対象位置にて パッカーの加圧により水圧破砕試験で生成されたき裂の型撮りを行う。具体的な方法は,次による。 5.1 a) 準備 地質状況の把握 測定位置周辺の地質状況は地圧測定の目的に応じて既往調査結果等を参考に十分把 握しておく。 b) 試験対象の孔井 注記 1 裸孔部の壁面がなめらかな円形の孔井を選定する。 孔井の口径は,76 mm~96 mm 程度が望ましい。 注記 2 孔井の掘進方向は,鉛直が望ましい。 c) 5.2 a) 試験区間の選定 明瞭な割れ目(節理,層理,断層等)による分離面が存在しない区間で試験を行う。 測定手順 水圧破砕用ゾンデの設置 水圧破砕用ゾンデを孔井の試験位置まで降ろし,パッカーを膨らませて孔 井壁面に密着させる。 注記 3 b) パッカーは試験区間からの漏水を生じさせないように十分な圧力で膨らませる。 破砕試験 試験区間に送水して試験区間の圧力を昇圧させ,ブレークダウンを確認した後にシャット インを行う。シャットイン後は,試験区間の圧力変化を測定した後,試験区間の圧力を解放する。 c) 注記 4 水圧破砕試験の測定記録例を附属書 A の図 A.1 に示す。 注記 5 送水レートは一定とすることが望ましい。 再開口試験 試験区間に送水して試験区間の圧力を昇圧させ,試験区間の圧力がほぼ定常となることを 確認した後にシャットインを行う。シャットイン後は,試験区間の圧力変化を測定した後,試験区間 の圧力を解放する。 注記 6 送水レートは一定とすることが望ましい。 注記 7 再開口試験は 3 回以上繰り返すことが望ましい。 d) 水圧破砕用ゾンデの回収 e) き裂型撮り試験 パッカーを収縮後,水圧破砕用ゾンデを孔井から回収する。 き裂型撮り用ゾンデを試験区間に設置し,パッカーを膨らませて型撮り用シートを孔 -3- 井壁面に圧着させ,破砕試験で生成させたき裂の型を撮る。き裂型撮り用ゾンデの回収後,き裂の型 のトレースを行い,孔井軸にほぼ平行なき裂が生成していることを確認する。 注記 8 5.3 パッカーは,き裂再開口圧の 2 倍以上の圧力で 10 分間以上加圧することが望ましい。 破砕圧,き裂閉口圧,き裂再開口圧,き裂方位の決定 a) 破砕圧 破砕試験の最大圧力を破砕圧とする。 b) き裂閉口圧 破砕試験及び再開口試験におけるシャットイン後の圧力-時間関係で,曲率が変化する 高圧側の圧力をき裂閉口圧とする。 注記 9 c) き裂閉口圧の決定方法の例を附属書 B の図 B.1 及び図 B.2 に示す。 き裂再開口圧 再開口試験における加圧時の圧力-積算流量関係で,曲率が変化する高圧側の圧力をき 裂再開口圧とする。 注記 10 き裂再開口圧の決定方法の例を附属書 C の図 C.1 に示す。 d) き裂方位 注記 11 6 型撮り記録からき裂の平均的な方位を直線で近似して,き裂方位を決定する。 き裂方位の決定方法の例を附属書 D の図 D.1 に示す。 計算 初期地圧の算定は,次による。ただし,応力は圧縮を正とする。 孔井軸に直交する面内での最大主応力を SH,最小主応力を Sh としたとき,それぞれの大きさは,観測さ れたき裂再開口圧 Pr 及びき裂閉口圧 Ps から次式で求められる。 S h = Ps (1) SH = 3Sh – 2Pr (2) 最大主応力の方位は,き裂型撮り試験により求められたき裂の平均的方位とする。 7 報告 次の事項を報告する。 a) 測定概要(孔井の方向と直径,測定深度) b) 送水圧,送水レート,パッカー圧の経時変化 c) 破砕圧,き裂再開口圧,き裂閉口圧の決定方法と結果 d) き裂の型撮り記録と方位の決定結果 e) 初期地圧の計算結果(主応力の大きさ,方向) f) この基準と部分的に異なる方法を用いた場合の内容 g) その他,特記すべき事項 -4- 附属書 A (参考) 測定記録の例 A.1 測定記録の例 図 A.1 に,水圧破砕試験の測定記録の例を示す。 18 180 破砕試験 再開口試験 16 160 試験区間の圧力 破砕圧 Pb 14 140 120 10 100 シャットイン シャットイン 8 き裂閉口圧Ps 圧力解放 4 Ps Ps き裂再開口圧 Pr 6 シャットイン シャットイン 80 Ps 60 Pr Pr 圧力解放 40 圧力解放 圧力解放 2 20 0 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 経過時間(s)(s) 経過時間 図 A.1-水圧破砕試験の測定記録の例 -5- 1600 1800 2000 送水流量 送水レート(ml/min) (ml/min) 試験区間の圧力 (MPa) (MPa) 試験区間の圧力 送水レート 12 附属書 B (参考) き裂閉口圧の決定方法の例 B.1 き裂閉口圧の決定方法(ISIP 法)の例 図 B.1 に,き裂閉口圧の決定方法(ISIP 法)の例を示す。 図 B.1-き裂閉口圧の決定方法(ISIP 法)の例 B.2 き裂閉口圧の決定方法(dt/dP-P 法)の例 図 B.2 に,き裂閉口圧の決定方法(dt/dP-P 法)の例を示す。 図 B.2-き裂閉口圧の決定方法(dt/dP-P 法)の例 -6- 附属書 C (参考) き裂再開口圧の決定方法の例 C.1 き裂再開口圧の決定方法の例 図 C.1 に,き裂再開口圧の決定方法の例を示す。 図 C.1-き裂再開口圧の決定方法の例 -7- 附属書 D (参考) き裂方位の決定方法の例 D.1 き裂方位の決定方法の例 図 D.1 に,き裂方位の決定方法の例を示す。 裏返し N S W E W S E (表) (裏) N き裂 展開 N15o E 180 o N15 o E 図 D.1 き裂方位の決定方法の例 -8- N15o E