...

1 今ご紹介いただきました、内閣府にあります、食品安全委員会という所

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

1 今ご紹介いただきました、内閣府にあります、食品安全委員会という所
今ご紹介いただきました、内閣府にあります、食品安全委員会という所から参りました日
野です。うちの組織はまだ出来て4年と数ヶ月しかたっていない、非常に新しい機関でまだ
ご存じない方も多いかと思いますのでその辺も含めましてお話させていただきます。
今日のお話はここに書いてあります、四つの事ですけども、最初にキャラクターが出てき
ますけどうちの委員長です。見上彪先生と言いまして、獣医の先生ですけども、少しでも皆
さんになじんでいただこうと思いまして、うちの職員が似顔絵を描きましてこうやってキャ
ラクターにしています。食品安全委員会は赤坂にあるんですけども、これはうちの委員会が
出しているホームページです。日本国内に限らず国際的な食品の関する安全性、事件、事故
について、おそらくありとあらゆる情報を日々更新しながら皆さんに情報提供していますの
で、ちょっと複雑ですけども。うちの基本的な精神は全ての情報を公開するという事に基づ
いて行っています。それがある意味、今までの省庁とかなり違った特徴となっておりますの
で、ぜひ一度ご覧になっていただければと思います。何をしている機関かと言いますと、ホ
ームページの我々のスピリッツが書いてありますけども、ここに書いてあるとおり、食品に
関するリスク評価を行う国の専門機関です。リスク評価、つまり安全評価を行っている機関
ですけども、我が国唯一の機関です。なぜ出来たのか。これは大事は事なんですけども、平
成 15 年7月に出来たんですけども、それまでにもさまざまな食を取り巻く事件、事故、様々
な誤解を与えるような事件もありました。
例えば、非常に大きな問題ですが、食生活の多様化が第二次世界大戦が終わってから急速
に起きてきました。端的に申し上げますと、例えば、天ぷらそばを食べると。よほどおいし
い地元のそば屋に行かないかぎり、立ち食いそば屋で食べるとどうなるか。そば粉はほとん
ど中国。エビは東南アジア。醤油の原料もオーストラリア、ブラジル、アメリカ、カナダと
いった所から大豆や小麦を買ってきている。下手をするとそばという名前だけが日本の伝統
食で、実は原材料はすべて輸入物かもしれないという状況だという事です。食料自給率が低
いという事もありますけども、世界中の食べ物を食べている国でもあるし、どんな海外の食
物でもお金さえ出せば手に入ってしまう。不思議な国でもあります。
そのような状況のもとに二番目の問題として、例えば遺伝子組換え食品。新しい技術でこ
こに書いてあります。除草剤の影響を受けない、あるいは害虫を防除する作物です。聞いた
事あると思いますけども、さまざまな遺伝子組換え作物が 10 年前に突然皆様の食卓にのぼ
ってきたように思えます。実は、技術自体は数 10 年前から開発されてきたんですが、突然
日本に入ってきたとなるとやはり消費者の不安が起きてしまう。
3番目の問題としまして、例えばそれまでも世界中のどこかにひそんでいたんですけども、
大腸菌などによる食中毒。10 数年前に堺の集団食中毒を起こした事もありますし、去年も
今年も O157 による食中毒は、国内に限らず世界中で起きています。
そして BSE ですね。牛海綿状脳症。それを食べてしまうと、ひょっとすると変異型のク
ロイツフェルトヤコブ病になってしまう、といった新しい感染症が皆さんの目の前に突然現
れた。そうするとやはり現実のリスクへの不安が大きくなってしまってしまうと。そのよう
な問題から、それまでは食品の安全性の確保というのは厚生労働省もしくは農林水産省が一
義的に行ってきたんですが、とてもそれだけでは我が国の食の安全性は確保できないという
1
事から新しい安全性の考え方が導入され始めました。それはこの後お話します。
委員会はいわゆる審議会と言われるひとつなんですけども、毎週木曜日に午後2時から行
われています。明日もやるんですけども、先程お話ししましたとおり、常に傍聴できるよう
になっております。別に予約も何も必要ありません。ただし東京まで来ていただかないと傍
聴できないという欠点はありますけども、定員もございませんので、こういったふうにここ
で委員会が、円卓でやっているんですが、後ろに傍聴席がだいたい 20 人~50 人分用意して
います。具体的に何をするかと言いますと、ここに書いてある農薬、添加物、食中毒を起こ
す微生物、ペットボトルのような食品の容器、牛肉 BSE ですね、あとは遺伝子組換え、メ
チル水銀などの汚染物質、その他特定保健栄養食品などの健康食品や動物用薬品、自然毒、
これはフグ毒ですけども、あとは化学物質。例えば最近ですと、トランス脂肪酸のような問
題もあります。要は食品の安全性に関するありとあらゆるものの評価をうちの委員会が責任
を持って行っているという事です。
どんな組織かというと、委員会というくらいで他の省庁とちょっと組織が違います。食品
安全委員会には7名の科学者がおりまして、委員長が獣医さんですけども、お医者さんが2
名とその他に薬剤師さんが1名、食品科学の先生が1名、調理学の先生が1名、マスメディ
アの方が1名という事で、合計7名の方が最終的な決定権を持った組織です。この7名の方
でさまざまな、危害要因と言いますけども、我々の健康に悪影響を及ぼすかもしれない物質
もしくは現象を危害要因と言いますけども、それはすべて7名で評価する事は不可能ですの
で、具体的な農薬や添加物などの個々の危害要因の安全性評価は専門調査会という、さらに
日本中の科学者を集めた集団で行っております。これは物質ごとにそれぞれ調査会が 14 あ
りまして、10 月に改善した所で現在 203 名、延べの数にしますと 240 名くらいの日本中の
科学者を集めて毎週のようにこの専門調査会をひらいて個々の物質の安全性評価をすすめ
ています。これを裏方で支えるようにして事務局がございまして、私はここにいるんですが、
総勢 100 名くらいの非常に小さい組織です。地域に分局もございませんで、東京にしかあ
りません。
次に、食の安全とリスクという新たな食品安全のための考え方を導入されています。これ
は国際的に話し合われて日本もそれに従ったという事で、先進国であればどの国も取り入れ
ている方法です。それがリスク分析というアプローチです。このリスク分析というあまりお
聞きになった事はないかもしれませんけども、大前提があります。それがここに書いてあり
ます、「どんな食品も完全に安全とは言えません」ということです。例えば昨年も小学校、
これは東京と長野だったと思いますけども、学校の菜園で栽培した非常に小さなジャガイモ、
未熟なジャガイモをそのまま皮をむかずに丸ごとゆでてしまって、多くの児童が食中毒をお
こしました。吐いたり熱が出たり、下痢をしたりという症状が出るんですけども、この原因
物質はソラニンという、アルカロイドという植物自身が作る、有名なのは芽に作るんですけ
ども、それ以外にも緑色した皮の下にもかなりの量を作っています。食べ過ぎると死ぬ場合
がありますけども、通常は芽の部分は調理前に包丁で削りとりますけども、緑の皮の部分は
あまり知られていないので、知らずにそのままゆでてしまって、おそらく食べてしまったの
だろうと。それ以外にもこれトマトです。これ皆さんが毎日食べているいわゆる大きくて赤
2
くて甘いトマトですけども、ここにも実際にこのソラニンと同じ仲間のトマチンというグリ
コアルカロイドが微量ですが含まれています。こちらの量とは比べものにならないほど少な
い量ですけども、ただしこの原種はアンデス、南米で山の中に行くと今でもこういった大き
さが1センチにも満たない非常に小さい実をつけたトマトがあるんですけども、こちらのト
マトを食べると一口食べると数時間舌がしびれて何も食べられないくらいの大量のトマチ
ンを含む。なぜ今のトマトはその量が少ないかというと、人間の知恵でいわゆる品種改良、
育種という事で大きくて赤くて甘いトマトを選んできましたけども、その過程でやはりトマ
チンの量が少ないものを選んできたんです。そのせいで今トマトは何もしないでも別に害は
出ません。まあ 1000 個くらい食べると、そんなに食べる人はいないと思いますけども、害
は出るかもしれませんけどね。それ以外にも例えば清涼飲料水の底にぷよぷよ沈んでいるタ
ピオカ澱粉というのがあると思うんですけども、あれはまったく無害ですが、原料のキャッ
サバという、アフリカの方、2億人くらいの主食になっている芋の仲間ですけども、その芋
を生の状態で食べるとどうなるかというと間違いなく全員死にます。なぜかというと大量の
青酸化合物がこの芋の中に含まれているからです。ではなぜ無害のタピオカ澱粉になるのか
というと、その加工の過程ですり下ろして水にさらして熱をかける事によって、その青酸化
合物を分解除去しているからです。ですから今さまざまな食品にも使われていますけども、
このタピオカ澱粉を食べても害は出ません。こういう風にどんな食品でもなんらかの、既存
の食品中にもさまざまな有害物質が含まれていまして、あるものは調理の時に除去し、ある
ものはすでに育種の課程で取り除かれている。もしくは加工の過程で取り除かれているので、
皆さんあまり気にはしませんが、この事は忘れないでいただきたいと思います。つまりどん
なに安全性を求めても、我々は、国はこの食品は絶対に安全ですとは、口が曲がっても言え
ないという事です。それを分かっていただきたいという事です。
もう一つリスクというと、この言葉は最近よく聞かれると思いますが、食品の分野に関わ
らず。一言で言ってしまいますと、ここに書いてありますけども、嫌なことがおこる可能性
と起きた時の被害の深刻さ。この二つの事をあわせて考えたものです。例えば、ついつい我々
この二つの事を考えなくてはならないのですが、こちら(被害の深刻さ)ばかり考えてしま
います。先程、BSE の話をしましたけども、BSE にかかってしまった牛。そしてその原因
物質と言われております、プリオンを大量に含んだ部位を食べてしまった。そうするとひょ
っとすると変異型クロイツフェルトヤコブ病になってしまうかもしれない。もし、もしが続
きますけども。仮にクロイツフェルトヤコブ病が発症すると間違いなく死にます。これは「も
し」ではなく。間違いなくです。そうすると皆さんここにばかり関心が行ってしまう。それ
では日本人におこる確率はどのくらいなのでしょう。売られている牛を食べてもそれはおそ
らくほとんどゼロです。日本で BSE が発生した時点で一人未満と言われていましたけども、
あきらかにリスクは下がっています。国内の感情としては今でも国内に BSE のリスクが非
常に高いと言われていますが、どんどん下がっている。そういった事を忘れてしまって、つ
いついここばかりにいってしまう。そうではなくてリスクというものはこちらも考え合わせ
ないとなかなか理解できませんという事です。
そのリスク分析の考え方ですけでも、今お話したように前提条件でどんな食品にもリスク
3
があります。そのもとで科学的にきちんと評価し妥当な管理をする。その事で食品の安全性
を確保していきましょうという考えです。ここには国だけではなく、生産者、事業者、小売
業者、そして消費者の皆様も役割があります。この妥当な管理とは何かというと、健康への
悪影響を未然に防ぐ。例えば食中毒を防ぐ。または許容できる程度に抑える。BSE もそう
ですけども、それ以外の添加物も農薬もそうです。リスクはある程度はあります、絶対無い
とは言えませんから。それをきちんと管理しながら食品として受け入れていきましょうとい
う事です。
そのリスク分析には三つの要素があります。リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケ
ーションです。今日はこのリスクコミュニケーションの場であるという事になります。
このリスク分析のスタート地点なんですが、リスク管理から始まります。リスク管理機関
というのは、国としては厚生労働省と農林水産省などですけども、自治体もリスク管理機関
の一つであります。何をしているかと言うとスタート地点ですけども、食品に関係する事件、
事故がどこかでおきていないか監視しています。もし何か起きていれば、何も考えずにすぐ
に行動とるべきくらいの緊急性があるのか、何か早急に対策をとる重要性があるのか、どこ
に目標をおくのか、誰も次の患者が出ないようにするのか、ある程度許容できるくらいに抑
えればいいのか。そういった事を判断します。判断した上で何らかの科学的評価が必要だと
考えられた場合はリスク評価機関、これが食品安全委員会の役割ですけども、科学的にリス
ク評価をして下さいという事で、委員会はその結果をリスク管理機関に返します。ここは後
でお話します。科学的に評価され、そのリスクの程度、レベルが分かります。そうするとリ
スク管理機関は、その管理をする方法をいろいろ選びます。1個ではなくて 10 個でも 20
個でもいいです。セットします。その中で1番必要な管理手段を上からいくつか選ぶんです。
1個の場合もあります。10 個選ぶ場合もあります。それを選ぶ際には科学的な判断基準を
すでにリスク評価で行っていますので、それ以外のファクタ。例えば費用、リスクを出来る
限りゼロに近づけようと思えば、予算がいっぱいかかります。あまりかけすぎると皆さんの
税金も上がりますし、国家はもたなくなりますので、どこかで手を打たなくてはいけない。
もう1個は技術的な可能性。分析出来ないものを分析しようとしても無理だという事。もう
1個は、これも重要な事ですけども、国民がどの程度不安に思っているか。そういった科学
以外のファクタを考慮して農薬の使用基準、添加物の使用基準や農薬動物薬の残留基準を決
めてその基準が守られているか、やはりリスク管理機関がモニタリングですね、監視をして
守られていなければ指導する。あまりにも使用基準が厳しすぎたのであればゆるめる。ゆる
すぎたのであれば厳しくする。そういった風に基準を変える事も含めて、評価結果を見直す
事も含めて、ここをぐるぐる回すのが基本的な流れです。
リスク評価は何をしているかというと、この話をしていると1時間くらいかかってしまう。
先程お話ししましたが、危害要因はいくつもある。ここには大まかに分けましていわゆる農
薬、添加物、化学的な物質による場合、微生物による食中毒のような生物学的な理由による
場合、あとは物理的要因、これはほとんどの場合異物混入です。金属片とか石とかですね。
これは除去すれば済む話ですので、委員会のテーマにほとんどあがってきません。どういっ
た要因かによってアプローチも違いますけども、評価する事はどのような影響が出るのか、
4
ヒトにとってですね。健康影響がどんなものが出るのか、その確率はどのくらいなのか。そ
の物質の量をいっぱい食べると悪い影響が増してしまうのか、これは相関性と言いますけど
も。リスクを受けやすい人がいるか、多くの場合は胎児です、妊婦さんと言った方がいいか
もしれません。胎児の場合は一回入ってしまうと出る所がありませんので、どんどん蓄積さ
れてしまいます。メチル水銀などもそうです。ですからこういったグループはハイリスクグ
ループと言います。そういったハイリスクグループがいるのであれば、そこの人達を焦点に
して食べるのをやめましょうとか、食べる量を充分に注意しましょうとかいうメッセージを
出すといったことも考慮して評価します。
もう1個大事なのは曝露評価ですけども、単純に言うとどのくらい危害要因を食べてしま
っているか。実際の分析に基づく調査です。それに基づいて設定する量をもう一回考慮する
という事もあります。
そしてもう 1 個大事な事が科学というのは万能ではありません。真理のように思われます
が、真理は小中高校の教科書に書いてある内容はおそらく揺るぎのない真理でしょうが、今、
現実社会で使われている科学というのは、ほとんどの場合分からない部分があります。分か
っている部分ももちろんありますが、分からない部分、不確実な部分、1と言っていますが
実は 0.9~1.1 という場合がほとんどです。そういった、どこまでが分かっていてどの程度
分かっていないのかといった事もあきらかにしましょうというのが、今のリスク評価の考え
方です。
今お話したようなリスク評価、リスク管理を国が行っています。それをサポートする形で
リスクコミュニケーション。これは何かと言いますと後でくわしくお話しますが、全ての課
程を全ての関係者、消費者の皆さんも含めて必要に応じた情報提供をしていく、皆さんの意
見を聞いてそれをリスク分析の活動に活かしていこうというのがリスクコミュニケーショ
ンの役割です。
うちの委員会の役割は三つあります。一つはリスク評価、一つはリスクコミュニケーショ
ン、これは食品分野のリスコミ活動の国としての調整機関として責任を持って行う役目があ
ります。そしてこはを起きて欲しくないものですが、例えば先程話した O157 の集団食中毒
は、明日おきてもおかしくないです。そういった時に厚生労働省、農林水産省、食品安全委
員会がばらばらに行動したのではまずいだろうという事で、そういう事態がおきた際にはう
ちの担当大臣が中心になって緊急対策本部を設置して政府が一体となってそういった緊急
事態に対応することが法律で決められています。その準備を常に行っており、訓練も行って
いる状態です。
リスク評価ですけども、ここに数が書いてあります。ここに書いてある数はほとんどのも
のはリスク管理機関、厚労省、農水省からこの案件についてリスク評価を行ってくださいと
いう要請があがってきます。それ以外にリスク管理機関の要請はないんですけども、委員会
の自らの判断でリスク評価を行った方がいいだろうと、これを自ら評価と呼んでますけども、
その案件、今の所三つしかないですけども、この自ら評価とリスクの要請があがってきた件
数で 873。こちらの 458 というのはこれまでにリスク管理機関にそのリスク評価結果を通知
した件数です。だいたい5割くらいですけども。多くのものが農薬、動物用薬品。これは昨
5
年5月から始まったポジティブリスト制度という、聞いた事があると思いますけども、すべ
ての農薬などを規制対象にしようという事で行ったために、今、大量な要請がうちに来てい
まして、5年間くらいで 800 くらいの農薬、動物用薬品を評価しなくてはいけないという
状況になっています。今日は関係ないので農薬のお話はしませんけども。
具体的にどういう評価の考え方でやっているのかについて、今日は添加物のお話ですので、
化学物質を例にとってお話します。まず、これは当たり前ですけども、危害要因は何か、物
質は何か。次に一番いい安全評価はヒトを使ってやる実験なんですが、それはやってはいけ
ない事です。どうするかというと実験動物のマウス、ラット、イヌ、ウサギ、時にはニワト
リのようなものを使いまして、そういった動物実験から有害作用を調べます。いろんなレベ
ルを食べさせてどこから害が出るか、どのくらいまでなら全く害が出ないかといった実験を
していきます。ここに書いてありますけども、最大無毒性量、まったくその量を食べさせて
もその動物に何らの影響が出ない量というのを探してきます。その無毒性量、その動物にと
っては何も影響が出ない量なんですが、それをそのままヒトに使う事は出来ませんので、安
全係数というもので割ってやります。通常、これは国際的にも 100 という数値が使われて
おります。100 分の1の量にしてやるという事です。その量を一日摂取許容量と言います。
これは何を示しているのかというと、我々ヒトが一生涯毎日摂取しても、一生涯ですよ、そ
の量を摂取しても有害作用を示さない量という事で設定される量です。これは Acceptable
Daily Intake と英語の頭文字をとって ADI という数字で表されます。この ADI を設定す
るのが、委員会の役割です。そしてもう1個大事なのがどのくらい摂取していいのかという
曝露評価をする。これはリスク管理が、たまに一部やっていますけども、こういった事をや
ってリスク評価に使います。
では実際にどうやって ADI を決めているのか。先程、無毒性量を動物実験で決めると言
いましたけども、1種類ではありません。この毒性試験の一覧に書いてあるように反復投与
毒性というのがあります。毎日一定量のその物質をずっと与えて、慢性というのはその動物
の一生涯、マウス、ラットですとだいたい2年近く生きますので、2年間ずっとこの物質を
毎日投与してどの程度なら影響が出ないかといった量を探す実験です。遺伝毒性というのは
だいたい微生物を使いますけども、我々の遺伝子、DNA を傷つけたりする作用がないかと
いった事を調べます。発がん性試験というのは慢性毒性試験と同じような試験で1年以上同
じ物質を食べさせてさまざまな臓器にがんをおこす率が高まらないかといった事を確認す
る実験です。繁殖毒性、催奇形性というのは妊娠中の動物にその物質を食べさせて繁殖能力
が落ちないか、例えば生まれる胎児の数が減らないか、生まれてきた胎児がちゃんと育つか、
そして奇形が生じていないかといった事をする実験です。
もう1個大事な事があります。皆さんよく添加物や農薬は体内に蓄積されるのではないか
と心配をもたれる方がいらっしゃいますけど、必ず体内動態試験を行います。これは実際に
農薬とか添加物をぽんと1回食べさせてどのくらいの時間で何パーセントのその物質もし
くは、体内ですからいろんな物質に変わります、代謝されます。その代謝物も含めて何パー
セントが排泄されるか、尿糞としてです。それを必ずやります。体内に蓄積性が認められる
物質は安全性評価が通りませんので、今使われている農薬、添加物は蓄積性のあるものはな
6
いと考えていただいて結構です。それ以外に薬理試験も行っております。
例えばこれはある物質の添加物の、先程お話しした、動態試験の場合です。添加物 A と
いうのを食べさせて二日以内にほとんど排泄されます。個体によって幅がありますので、こ
こに幅が書いてありますけども。この場合ですと胆汁と書いてあって何かというと、胆汁と
いうのは一回吸収されてですね、腸管からとか、体内をまわって排泄される時は胆汁から排
泄されますので、肝臓で分解されますから、胆汁も書いてありますけども、合計するとだい
たい 80 数パーセント。もっと長い期間も行っておりまして、たしか五日後に 99 パーセン
ト排泄されているというデータが出ています。
次に毒性試験の一つの例ですけども、この場合、亜慢性毒性試験、13 週間反復投与試験
ですけども、13 週間ですからだいたい3ヶ月くらいです。どうやって無毒性量を決めるか
と言いますと、この場合、混餌投与。字の通り餌に添加物を混ぜてラットに与えてみました。
その量を連続して変える事は出来ませんで、一定の間隔をおいてレベルをセットします。ど
んな変化が起きるか。この場合さまざまな酵素活性とか病理学的、組織学的検査、さまざま
な検査をしますけども、この場合ですと 1000 ミリグラム。この量というのは1キログラム
体重あたりの1日の量です。これを食べさせるとアルカリフォスファターゼという酵素活性
が、与えないラットに比べてあがったという事で、これは影響があったとなります。そうし
ますと 3000 ミリグラムでも他の影響が出ていますので、無毒性量はここ(300mg)になりま
す。こういった決め方をしています。これを例えばもっとやっていますけども、さまざまな
試験、先程お話ししたさまざまな毒性試験を複数の動物種を使って行いまして、1番小さい
無毒性量を示した値をその物質の無毒性量とします。ノアエル(NOAEL)と言いますけど
も、英語で全く負の影響を示さないレベルという事を NOAEL と言いますけども、動物を
使った毒性試験でなんら有害作用が認められなかった容量といえます。この NOAEL、例え
ば、この場合はネオテームという甘味料ですけども、96.5 ミリグラム/キログラム体重あ
たり/1日あたりの量なんですけども、それを NOAEL と設定します。先程の ADI は先程
お話ししたように安全係数で割ります。これはヒトと動物の種の差 10、ヒトの個人差を 10
という事で、100 という数字を決めています。なぜ 100 なのかというとこれまでの安全性評
価の経験に基づいた科学的な経験値といえます。それで 96.5 を 100 で割って 1.0 というの
がこのネオテームの ADI として決められます。
もう1回おさらいで簡単にお話しますと、添加物を含めまして医薬品、農薬などいわゆる
化学物質というのは、だいたいこのような S 字の曲線を書きます。何かというと横軸がそ
の物質の量です。例えばラットが食べる量、ヒトが食べる量で縦軸は生態に出る悪影響と考
えていただくと。まあ、いい影響もありますけども。あまりにも量が少ないとこういった化
学物質の場合、なんの影響も示さないという場合がほとんどです。一定量を超えますとなん
らかの影響が出ます。医薬品などはこの部位を使っています。科学的な影響。投与をやめれ
ばもとの状態に戻るという事です。私も今風邪を引いてのどが腫れていたので抗生物質を飲
んでいますが、たぶん飲むのをやめれば、体内からその物質は消えて何も作用はなくなって
しまう。しかし、その量を超えて摂取しすぎると、ものによって違いますけども中毒になり
最後は死に至るという事になります。
7
我々が安全性試験でやっているのはこの NOAEL、まったく悪影響が出ない、この立ち上
がりの部分を探してくるという事です。立ち上がりの部分が分かったらそれを 100 分の 1
にして、それを ADI として設定しています。これが委員会の仕事です。これをリスク管理
機関に返してやりますと、例えば添加物の場合ですと、厚生労働省は、この ADI を超えな
いようにさまざまな食品に対して設定している、添加物の使用基準というのがあります。そ
れを合計しても ADI を超えないように必ずセットされています。そして、さらに厚生労働
省は実際に売られている食品が、その添加物の使用基準が守られているのかどうかをモニタ
リング調査をします。実際の摂取量は、あとで少しスライドを出しますけども、ほとんどの
ものは ADI の1%未満です。
今、お話した実際の例はネオテームという物質ですけども、甘味料です。砂糖の 7000 倍
から 13000 倍という。そんなものはいらないという人もいるでしょうけども、実は糖尿病
の患者さんにはなくてはならないものです。これ以外にもアスパルテーム、サッカリンなど
のいろいろな人工甘味料がありますけども。健康な方は確かにいらないかもしれませんが、
砂糖を食べられない、でも甘い物を食べたいという人には必要なものとも言えます。
そういった甘味料の一種ですけども。実際に行われた安全性試験とは、ここに書いてあり
ますように、単回投与毒性というのは、1回どんと与えていわゆる反芻致死量、LD50 とい
う値を求める。100 匹与えると 50 匹のネズミが死んでしまうような量です。急に現れる毒
性ですが、これを調べるしかありません。これだけの試験をおこなって、それぞれ影響がど
の程度あるか調べ NOAEL を設定するとともに、繁殖に対する影響、催奇性がないか、発
ガン性がないかという事を全部調べます。それで先程話したようにこの NOAEL が採用さ
れます。これも今お話したのでおさらいですけども、こうやって実際に設定されているとい
う事です。
これは同じ物質の国による違いですけども、それぞれ評価している科学者が違いますので、
世界中独立しておこなっています、今は、そうしますと微妙に違ってしまう。これは仕方の
ない事だと思いますけども。でもそんなに大きくはずれていない。日本の場合は各国の中間
くらい。1番下のジェクファ(JECFA)というのは国連の機関で、こういった添加物のリ
スク評価を行っている機関ですけども、そこよりやや低いというところです。先程、佐仲さ
んからもお話がありましたが、既存添加物、平成7年まではいわゆる天然添加物、国がいわ
ゆるという言葉を付けると、そういう定義はないんだけども、世間ではそう言われていると
いう時に「いわゆる」という言葉をつけるんですけども、いわゆる天然添加物として使われ
ていた物の一つ。なぜ見直しをしたのかというと、天然だからと言って安全とは限らない。
同じ化学物質です。
平成7年に天然であろうと合成であろうと添加物として使用する場合は、すべて同じスタ
ンダードに従って規制しようという事になりまして、それ以降、天然物由来であろうと新し
く添加物として使用したいのであれば、指定を受けなければいけないことになりました。た
だしその時点で使われていた、いわゆる天然添加物は、既存添加物の名簿がありまして、そ
こに載っていれば使っていいですよとなっています。ただしそこに載っていたからと言って
ほったらかしにはしません。これはうちの仕事ではないですけども、今の所、厚生労働省が
8
やっていますけども。当時四百数十品目ありまして、原料、その物質から安全性は問題ない
だろうとか、理論的に安全性をほとんど検討しなくてもいいものを除去しまして、検討した
方がいいものを順番に安全性の試験を実施しています。
その中で、アカネ色素というものが、ハム、ソーセージやお菓子に使われていた色素なん
ですけども、ひっかかりまして、実際にさまざまな試験をすると遺伝毒性が認められたとい
う事で我々の DNA を傷つけて、それによって発ガン性もありますので、さっきの S 字の曲
線に従いません。どんなに下げてもリスクが存在してしまうかもしれない。または、否定出
来ないと言うことで、今の所、理論的には遺伝毒性があった場合、その物質は ADI を設定
出来ないという評価。つまり使っては駄目よとなる訳です。こういった事で既存添加物名簿
から削除されました。ただし、そんな危ない物質だったのかというと、食べさせられたラッ
ト、口の中や臓器も真っ赤になるくらい食べさせられましたので、通常使われている量の数
千倍から数万倍食べさせられてますので、実際にはほとんど問題ないかと思いますけども、
原則に従いまして削除されたという事です。
そしてもう1個。ちょっと評価の進め方が違う香料についてです。香料というのは、使い
すぎるという事がありません。使いすぎると皆さん食べられなくなります。猛烈な、1滴で
ケーキ1個がまかなえるくらいの香りを持っていますので、これは通常の他の添加物の安全
性とちょっと違った安全性評価のアプローチをとっています。
例えば、これはテトラメチルピラジンと言いまして、ナッツを焼いた時の良い香り、アー
モンドのような香りがするんですけども、考え方としましては、これは国際的に国連の機関
の、先程話した JECFA という機関が決めているんですけども、先程お話ししたこの亀の甲、
こういった構造です。例えばここに N が2個ついているとか、こういった構造的に相関が
あるものにクラス分けをしていけば、安全性というのは、これまでも科学的な情報から整理
されています。
あとは、反復投与毒性、これは日本では 90 日間の反復投与毒性の試験だけはやりなさい
と言われておりまして、それのデータと実際に使われている量のひらきですね、その量から
安全性評価をしています。もちろん遺伝毒性試験も義務づけられておりまして、仮に毒性が
あればおそらく認可はされないと思いますが、この場合は先程お話ししたような香料ですの
で、非常に使っている量が少ないという事もありますけども、そういったアプローチに従い
まして安全性に懸念がないと考えられるという事です。
こちらは ADI をあえて設定していません。設定するまでもないという事です。大量に使
いませんからそういったアプローチをとっています。ここは、先程佐仲さんがお話したので
省略しますけども、これはこういった意見交換会で聞かれる質問の典型例ですが、天然由来
の添加物は安全なんですかと。例えば、どこかのコンビニでは、うちは保存料、合成着色料
を使っていません。というような表示があるとします。では、そのような表示に意味はある
のか。実は、私も研究所出身の科学者ですので、科学的には意味はないという事です。なぜ
かというと、天然だから食経験があるから安全だと思われているようですけども、天然由来
の方が安全性が高いという科学的根拠はないという事です。先程の S 字のカーブを一言で
言ってしまいますと「全ての物質は毒であり薬であると。量が毒か薬かを区別する」。この
9
言葉はここに書いてあるパラケルススという 16 世紀のスイスの錬金術師、お医者さんなん
ですが、この言葉を残したというだけで今でも我々が使っている非常に有名な方なんです。
この一言に表されると思います。天然だから安全だというのは大きな誤解だという事です。
ここにマーケットバスケット方式と書いてありますけども、実際にさっき何度か出てきまし
たが、曝露評価の一つです。どんな事をやっているかというと、マーケットバスケットと言
うのは、一般に販売されている食品を購入しまして、全国 12 地域、食文化が違いますので
それぞれ 12 ブロックに分けまして、実際にスーパーマーケットで売られている食品を買い
上げて来まして、その中に含まれる添加物を分析しまして、国民健康栄養調査、日本人がそ
の食材を年間どのくらい食べているか、1日にどれくらい食べているか、調査されています。
そういった結果から平均的な摂取量を算出しています。その結果ですけども、毎年行われて
いまして自治体さんの協力も得ましておそらく山形県も協力していると思います。最近では
平成 10 年に大規模な調査が行われましたけども、添加物の摂取量というのはそれぞれ設定
された ADI よりかなり少なかった。ほとんどのものが1%未満。一番多かったものは天然
にも存在します硝酸塩です。硝酸塩の場合は 100%を超えていますけども、これはほとんど
天然由来という事で、先程も佐仲さんがおっしゃっていましたが、天然にも存在するものは
区別がつかないので、それが ADI に近かったからどうだという事と非常に難しいんですけ
ども、少なくとも天然に存在しないもので設定されている ADI についてはほとんどのもの
は1%未満という事です。多いものでも数%しかない。
先程お話があって、佐仲さんと同じなのでこれは省きますけども、こちらの方が古い調査
です。やはり同じようにガンの疫学の専門家だと普通のたべものです。この理由というのは
最初にお話したように、今我々が食べている食品の中にもさまざまな有害物質が含まれてい
ます。それ以外にもお聞きになった事があるかと思いますが、アクリルアミドとか、皆さん
が調理している間に出来てしまう有害物質もあります。そうなると実際には、普通の食べ物
に含まれている物質由来で、ガンになってしまう事が一番大きいですよという事です。です
から決して添加物がガンの原因ではないという事です。
ではどうやったら妥当な判断が出来るのかというと、今からお話することは「リスクとつ
きあう」という本に書いてある事です。書いた方は慶応大学の吉川肇子先生という方で、う
ちにリスク調査会の委員でもいらっしゃるんですけども、まだ本屋にもあると思います。有
斐閣書房という所から出ています。そのためには、皆さんがスーパーで妥当な買い物、食品
に限らずですけども、妥当な判断をして買い物をするためには、やはり努力が必要です。何
もしないでメディアの情報に流されていると、妥当な判断は出来ませんよという事が書いて
あります。どうすればいいか。科学的な知識を出来るだけ身につけましょう。どうしたらい
いかというと、新聞や雑誌を辞書なしで読めるようにする。次に、家族や友達と一つの話に
ついて会話が出来る。そして誰とでも議論が出来る。ここまで全員が出来れば社会的混乱は
何もなくなると言われているそうです。
例えば食品の安全性に関する情報をどこから集めてくるかといいますと、ほとんどの人が
メディアからです。ずばぬけています。そのメディアの情報、正確にそのまま読み取れるか
というと、なかなか難しい。では何に注意したらいいかというと事実と意見が必ず入ってい
10
る。例えばニュースですけども、何月何日に何が起きました。そこまでは事実ですが、それ
以降は必ず意見です。キャスターの。そして編集が生番組でない限り必ず入っています。そ
して有名人の言う事は信じてしまいます。今頃はおそらく出ていると思いますけども「奥さ
ん、これいいよ」と言うと商品棚から全部消えてしまう。それは果たして正しいのか。妥当
な判断かというと分からないという事になります。
今日もそうですけども、例えば、今日、私の話を聞いてそのまま信じてはいけませんとい
う事です。帰りに本屋に行って違う事を言っている人の本を買って、複数のソースからこれ
までの自分の知識、食経験といったことを基にして判断してください。それが妥当な判断を
する大事なコツです。それを守ればあまりいい加減な噂にはまどわされなくなりますよとい
う事が書いてあります。
最後にリスコミについてですけども、ここに書いてあります。リスク評価管理を行う際に
全ての関係者から意見を交換してリスク分析に生かしていくという事で、うちの委員会とし
ましては、時間がないので説明はさーっといっちゃいますけども、委員会の基本的な公開。
企業の機密情報でもない限りすべて公開の場となっていますし、意見交換会も行っています
し、全国各地に 470 名の食品安全モニターさん、今日もひょっとするといらっしゃるかも
しれませんが、各地域の情報を集めるとともに委員会の情報を提供して地域で役立たせてい
く事。それ以外に今日パンフレットが入っているかと思いますけども、ぜひ登録していただ
きたいのですが、E メールを使える方であれば毎週委員会の活動を自動配信するメールマガ
ジンのシステムを持っておりますし、食の安全に関する意見、情報提供なども受け付けます、
「食の安全ダイヤル」も設置しておりますし、今日も「食品安全」という季刊誌を2号分お
つけしていると思いますけども。この目的はうちが出している評価書は用語が非常に難しい
ですので、長いものですと 100 ページにも至るようなものがありますので、それをわかり
やすく A4、1~2枚に記事にしたものを提供しようという事で委員会の活動も含めまして
発行しております。年間4回ですけど。それ以外にも俳優さんにリスク評価の流れをストー
リーにして説明していただいた DVD も無料配布しております。残念ながら全部はけちゃっ
たんですけども。今年は食品添加物についても作る予定ですので、出来ましたらぜひホーム
ページから申し込んでいただければと、先着順ですけども無料で配布しております。それ以
外にもさまざまな活動をしております。大切な事はおそらく添加物、農薬という事に注意を
払うのはもちろん結構ですけども、大事な事は食中毒にならないこと。ここに五つのファク
タが書いてありますけども。そして食事のバランスをとる。これは栄養のバランスもそうで
すけども、添加物が入っているか入っていないか、それもバランスかもしれませんし、家庭
で作るか、外食に頼るか、そういったバランスも含めて、常にバランスを考慮して食生活を
送りましょう。そして先程話しましたように心配があったらニュースソースを増やしてみま
しょう。これは先程佐仲さんがおっしゃっていたので省きますけども、フードファディズム
には充分気をつけてください。
最後になりますけども、実際に食品がどうやって作られているか、例えば企業の工場見学
に申し込むといった事も一つの、どうやって作られているかを知る良い機会かと思います。
ちょっと時間をオーバーして申し訳ございません。これで私のお話を終わらせていただきま
11
す。どうもありがとうございました。
12
Fly UP