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HP ProLiant サーバーの消費電力上限

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HP ProLiant サーバーの消費電力上限
技術概要、第2版
概要........................................................................................................................................................... 3
はじめに ..................................................................................................................................................... 3
サーバーの電力制御の基礎 ........................................................................................................................... 3
プロセッサーのP-state ................................................................................................................................ 4
クロック スロットリング ............................................................................................................................... 5
消費電力上限の機能の動作方法 .................................................................................................................... 6
上限以下での電力消費量の維持 ................................................................................................................ 6
サーバーの最小および最大電力消費量 ....................................................................................................... 6
動的消費電力上限と消費電力上限の相違点 ..................................................................................................... 7
電力の供給と動的消費電力上限 ................................................................................................................. 7
HP ProLiantサーバーにおける消費電力上限のサポート ................................................................................... 8
HP Insight Power Managerを使用した、サーバーのグループ 消費電力上限 .......................................................... 8
エンクロージャー動的消費電力上限 ................................................................................................................. 9
エンクロージャーの消費電力上限の要素 ...................................................................................................... 9
エンクロージャー動的消費電力上限の動作 ................................................................................................. 10
アクティブな電力再割り当て ...................................................................................................................... 11
混在するブレード環境でのエンクロージャー動的消費電力上限 ....................................................................... 11
サーバーのオプト アウト .......................................................................................................................... 11
サーバーの消費電力上限の設定 .................................................................................................................. 12
単一サーバーの消費電力上限の設定 ........................................................................................................ 12
サーバー グループの消費電力上限の設定 ................................................................................................. 14
HP BladeSystemエンクロージャーの消費電力の上限値の設定 ....................................................................... 15
エンクロージャー グループの消費電力の上限値の設定 ................................................................................ 16
データ センターのプロビジョニングにおける消費電力上限の使用 ....................................................................... 17
効果的な消費電力上限の選択 .................................................................................................................. 17
ピーク時電力消費量に対する消費電力上限 ................................................................................................ 19
平均電力消費量に対する消費電力上限 ..................................................................................................... 21
電力供給におけるエンクロージャーの動的消費電力上限の 使用 ....................................................................... 21
消費電力上限のその他の用途 ..................................................................................................................... 22
緊急時管理のための消費電力上限 ........................................................................................................... 22
時間帯による消費電力上限 ...................................................................................................................... 23
消費電力上限の注意点 ............................................................................................................................... 24
グループ内での消費電力上限の競合回避 .................................................................................................. 24
動的消費電力上限使用時のサーバー グループの電源投入 .......................................................................... 24
低いまたは達成不可能なサーバー消費電力上限の設定 ............................................................................... 24
ピーク時電力レポートと動的消費電力上限 .................................................................................................. 25
HP パワー レギュレーターと消費電力上限の併用 ....................................................................................... 25
消費電力上限とCPU使用率...................................................................................................................... 25
まとめ....................................................................................................................................................... 26
詳細情報 .............................................................................................................................................. 26
ご意見をお寄せください ............................................................................................................................... 26
概要
この文書では、従来の消費電力上限 (HP Power Capping)、および動的消費電力上限 (HP Dynamic Power
Capping)の機能による、HPの消費電力上限テクノロジーについて説明します。どちらもHP ProLiantサーバーの電
力管理機能で、オペレーティング システム (OS)とは独立して動作し、システム管理者がサーバーまたはサー
バー グループの電力消費量を管理できるようにします。ここでは、データ センターのプランニングおよびプロビ
ジョニングの戦略の一部として消費電力上限機能を使用する方法について概説します。また、消費電力上限機能
と、HP パワー レギュレーターなどの他の電力管理ツールとの関係についても説明します。この文書では、読者が
HP ProLiantサーバー、HP Integrated Lights-Out (iLO 2)管理プロセッサー、およびHP Systems Insight Manager
(SIM)のプラグインソフトウェアであるHP Insight Power Manager (IPM) に精通していることを前提としています。
はじめに
今日のハイパフォーマンス サーバーは、前世代と比べ効率の高いモデルです。1W当たりのサーバーの処理性
能は、着実に高くなってきています。ただし、サーバー当たりのワット数も増加し続けています。このような増加と、
現代のデータ センター内のサーバー数および密度の増加が相まって、施設の電力と冷却のリソースを計画およ
び管理することが極めて重要となってきています。消費電力上限 (HP Power Capping) および動的消費電力上
限 (HP Dynamic Power Capping) の機能は、これらの重要なタスクにおいてデータ センター管理者を支援する
ために設計されたHP ProLiantサーバーの電力管理ツールです。
消費電力上限 (HP Power Capping) と動的消費電力上限 (HP Dynamic Power Capping) の機能は、どちらも
システムのハードウェアおよびファームウェアに実装されているため、オペレーティング システムやアプリケーショ
ンには依存しません。消費電力上限の機能は、HP ProLiantサーバーに組み込まれた電力の監視および制御メカ
ニズムを使用して、特に管理者がサーバーまたはサーバー グループの電力消費量を制限(上限を設ける)できる
ように設計されています。これによって、管理者はデータ センターの冷却要件や電力供給など、サーバーの電力
消費量の影響を直接受けるデータ センターの要素を管理できるようになり、データ センターのプランニングの柔
軟性が向上します。また、消費電力上限の機能を使用して、管理者は主系のAC電源の停電などの緊急時にサー
バーの電力消費量を制御することもできます。
消費電力上限の機能は、所定の計算ワークロードを処理するためにサーバーが必要とする総エネルギー消費量
を削減するわけではないことを理解する必要があります。消費電力上限の機能は、任意の時点でサーバーが使用
可能な電力量を制限するだけです。これにより、管理者はデータ センターの電力リソースと冷却リソースを、より
効率的に割り当てることができます。一般に、特定の消費電力上限の機能でサーバーがタスクの実行時に通常使
用する電力量が制限される場合は、そのタスクの実行にかかる時間は長くなります。長い目で見ると、サーバーが
同じ計算ワークロードを実行するために消費する総エネルギーはほぼ同じになります。
サーバーの電力制御の基礎
プロセッサー関連のコンポーネントは、HP ProLiantサーバー内でもっとも電力消費量の高いコンポーネントの1つ
です。多くの一般的な構成では、プロセッサー関連のコンポーネントは、サーバーが消費する電力の3分の1を占
めています(図1)。また、他のサーバー コンポーネントの電力消費量を間接的に高めています。稼動中のプロ
セッサーは、必然的にメモリと周辺機器の両方のワークロードを増やし、増加したワークロードによって生成された
熱のために、ファンがより活発に動作するようになります。
すべてのHPの電力管理テクノロジーは、このプロセッサー主導モデルを採用し、プロセッサーの電力消費量を直
接制御しています。それによって、サーバー全体の電力消費量を間接的に制御しています。電力管理システムは、
2つの個別のメカニズムを使用してこの制御を実現します。それは、プロセッサーのP-stateの変更とクロック スロッ
トリングです。
3
図1. 典型的なサーバーの電力使用量
プロセッサーのP-state
プロセッサー パフォーマンス ステート(P-state)は、プロセッサーの電力消費量とパフォーマンスを調整するための
迅速で効果的なメカニズムを備えています。Intel®プロセッサーとAMD®プロセッサーはどちらもP-stateの使用をサ
ポートしており、プロセッサーのコア周波数と電圧を低減することで、プロセッサーの電力消費量を減らすことがで
きます。表1および2に、各種プロセッサーで使用可能ないくつかのP-stateを示します。
表1. Intel Xeon 5160プロセッサーのP-state
P-state
コア周波数
P0
3.0GHz
P1
2.66GHz
P2
2.33GHz
P3
2.0GHz
表2. AMD Opteron 2220プロセッサーのP-state
P-state
コア周波数
P0
2.8GHz
P1
2.6GHz
P2
2.4GHz
P3
2.2GHz
P4
2.0GHz
P5
1.8GHz
P6
1.0GHz
4
クロック スロットリング
クロック スロットリングは、プロセッサーの電力消費量を低減するための追加方式を提供します。プロセッサーの
モデルに応じて、システムBIOSは、プロセッサーがより低い周波数で稼働するように再プログラムするか、または、
プロセッサーの稼働期間と停止期間を調整することができます。どちらの方式も、最終的な結果は同じで、P-state
を使用してプロセッサー全体の電力消費量が対応可能なレベルを下回るようにします。図2のグラフは、P-stateとク
ロック スロットリングの設定を使用してサーバー電力を制御する場合の、消費電力と全体的なパフォーマンスの関
係を示しています。P-stateを使用すると、比較的わずかなパフォーマンスの低下で、電力消費量が大幅に削減され
ます。ただし、P-stateを使用して電力消費量を低下させることができるのは、ある一定の時点までです。その時点よ
りさらに消費量を削減するには、クロック スロットリングを使用する必要があります。
図2. 典型的なIntelベースのProLiantサーバーで3つのP-stateを使用した場合の電力とパフォーマンスの特性の比較
5
消費電力上限の機能の動作方法
上限以下での電力消費量の維持
管理者は消費電力上限の機能を使用して、個々のサーバーまたはサーバー グループの最大電力消費量レベル
を設定できます。HP ProLiantサーバーの電力管理システムは常にサーバーの電力使用を監視し、P-stateまたはク
ロック スロットリング、もしくは両方を使用してプロセッサーの電力使用を制限し、システム全体の電力消費量を制
御します。サーバーのピーク時の電力消費量が管理者によって設定された上限値を超えた場合は、必ず消費電
力上限の機能を制御するメカニズムが、サーバーのワークロードや環境の変化に関係なく、制御された方法で
サーバーの電力消費量を上限より下に低減します。
サーバーの電力消費量は多数の要因に応じて変化するため、実際は一定期間内で大幅に変化することがありま
す。サーバーにインストールされたオプションの数など、一部の要因はサーバーの電力消費量に予測可能で静的
な影響をもたらします。データ センターの温度、サブシステムのアクティビティ(CPU、メモリ、ディスク ドライブ、お
よびI/O)、実行される命令の組み合わせといったその他のファクタは、電力消費量に動的な影響をもたらします。
サーバーの総電力消費量が消費電力の上限値を超えないかぎり、サーバーのワークロードに影響はありません。
サーバーの最小および最大電力消費量
消費電力上限の設定時に使用する一連の指標を確立するため、各サーバーの電力管理システムは、そのサー
バーの最小電力消費量と最大電力消費量の両方を決定します。これらの2つの値は、アイドル モードおよびシミュ
レートされた最大負荷の下でサーバーの電力消費量を測定する一連のテストを実行することで、サーバーの電源
投入時自己診断(POST)の間に決定されます。最小および最大消費電力値は経験的に決定されるため、暗黙のう
ちに、サーバーの構成と現在の物理環境が考慮されています。HP Insight Power Manager (IPM) インターフェイ
スおよびiLOインターフェイスは両方の値を表示し、管理者が効果的な消費電力上限を設定するための重要な情
報を提供します。
サーバーの電力管理システムには、1つの追加メトリックとして、 サーバーで使用可能な最大電力があります。HP
ProLiant MLサーバーおよびHP ProLiant DLサーバーの場合、この値は、サーバーの電源装置が生成可能な最大
電力量となります。HP BladeSystemサーバーの場合は、エンクロージャーの電源アレイにより電力が供給されてい
るため、使用可能な最大電力量は、エンクロージャーのHP Onboard Administratorによってその特定のサーバー
ブレード用に予約されている電力量を示しています。この値は、iLOとHP Insight Power Managerの両方でレポー
トされます。iLOでは、MLサーバーおよびDLサーバーの場合は「パワー サプライ 最大電力(Power supply
maximum power)」、HP BladeSystemサーバーの場合は「初期パワーオン リクエスト値(Initial power-on request
value)」としてレポートされます。
これらの値はPOSTの間に最初に決定されますが、サーバーの最小および最大電力消費量の値はサーバーの稼
動中に多尐変化することがあります。通常動作時には、iLOと電力管理システムは、サーバーの5分間の平均電力
測定値とピーク時の電力測定値を継続してチェックします。iLOは、既定の最大値を超えるピーク値を測定した場合
には、最大電力消費量レベルを引き上げます。また、現在の最小値より低い平均電力値を読み取った場合は、最
小電力消費量を引き下げます。
6
動的消費電力上限と消費電力上限の相違点
動的消費電力上限 (HP Dynamic Power Capping)と消費電力上限 (HP Power Capping)は、どちらもサーバー
の電力消費量を、管理者によって設定された上限値以下に維持するという同じ目的を達成するために設計されて
います。ただし、動的消費電力上限は消費電力上限より迅速に電力消費量を監視し、サーバーの消費電力の上
限値を維持します。表3に、動的消費電力上限と消費電力上限のアーキテクチャー面と操作面の簡単な比較を示
します。両者の混同を避けるため、この文書の以降の部分では、消費電力上限を基本消費電力上限と呼びます。
表3. 動的消費電力上限と基本消費電力上限の比較
動的消費電力上限
(HP Dynamic Power Capping)
基本消費電力上限
(HP Power Capping)
消費電力上限機能の
実行元
電力管理マイクロ
コントローラー
iLOおよびシステムROM
BIOS
プロセッサー電力の
制御
プロセッサーのハードウェア レベルで
P-state/クロック スロットリングを制御
するためのプロセッサーへの直接
ハードウェア接続
プロセッサーのレジスタを
介したP-state/クロック スロット
リングのファームウェア制御
電力監視サイクル
1秒間に5回以上
5秒に1回
サーバーの電力消費量
を上限より下に戻すまで
の時間
0.5秒未満
10~30秒
対象用途
電力および冷却の供給の管理
冷却供給の管理
電力の供給と動的消費電力上限
基本消費電力上限は、サーバーの平均電力使用量を上限値以下に維持するという優れた役割を果たします。こ
れを使用して、過剰な熱生成を防ぐために十分タイムリーな方法でサーバーの電力消費量を制限することで、デー
タ センターの冷却要件を管理できます。ただし、表3に示した情報のとおり、基本消費電力上限は、電気回路のブ
レーカーを切断してしまう程のサーバー電力消費量の急増を制限する際に、十分な早さでは対応できません。
動的消費電力上限は、基本消費電力上限の25倍の速度で動作し、サーバーでワークロードが急増しても0.5秒未
満で消費電力の上限設定値以下に戻すことができるため、典型的なデータ センターの回路ブレーカーの切断を
招く可能性がある電力需要の急増を抑止できます。動的消費電力上限は、温度50℃および150%の過負荷で指
定された切断時間が3秒以上の回路ブレーカーの切断を確実に防ぐ目的で設計され検証されています。
この基本的な違い、つまり、サーバーの電力消費量をリアル タイムで消費電力上限以下に維持できる機能により、
動的消費電力上限は、データ センターの電力供給と冷却要件の両方のプランニングと管理において、効果的な
ツールとして使用できます。動的消費電力上限では、回路ブレーカーの切断を招く可能性がある電力消費量の予
期せぬ変化を防ぐことができるため、管理者は、サポートされているすべてのサーバーの最大定格電力を下回る
ように、PDUまたはラックに電力を供給できます。
7
HP ProLiantサーバーにおける消費電力上限のサポート
基本消費電力上限は、電力測定回路を備えたHP ProLiantサーバー上でサポートされます。
 HP ProLiant G5サーバーML350、ML370、DL360、DL365、DL380、およびDL385
 すべてのHP ProLiant c-Classサーバー ブレード
基本消費電力上限には、次のシステム ファームウェアも必要です。
 iLO 2バージョン1.30以上
 システムBIOS 2007.05.01以上
動的消費電力上限をサポートするには、一定レベルのHP ProLiantハードウェアが必要です。また、次のシステム
ファームウェアにアップグレードする必要があります。
 システムBIOS 2008.11.01以上
 iLO 2バージョン1.70以上
 HP Onboard Administratorファームウェア バージョン2.32以上(HP BladeSystemエンクロージャーの場合)
初期リリースでは、動的消費電力上限は、ごく一部のHP ProLiantサーバーと多数のHP ProLiant c-Classサーバー
ブレードでサポートされています。適切なBIOSとiLOファームウェアの要件を満たせば、多くのHP ProLiant G5サー
バーで動的消費電力上限をサポートできます。次の最新のサポート マトリクスを参照してください 。
http://h18004.www1.hp.com/products/servers/management/dynamic-power-capping/support.html
HP Insight Power Managerを使用した、サーバーのグループ 消費
電力上限
消費電力上限の機能のもっとも強力な使い方の1つが、サーバー グループ全体の電力使用の監視と制御です。
この機能は、HP Insight Power Managerを通じて使用できます。管理者は、HP SIMのシステム収集を含む、IPM
内で選択可能な任意のサーバー グループにグループ消費電力上限を適用できます。
グループ消費電力上限と連携して動作しているとき、IPMには、サーバー グループ全体の一括最小許容電力消
費量および一括最大電力消費量と、それらの一括定格電力が表示されます。これらの数値はそれぞれ、グループ
内の個々のサーバーの各値を単純に合計したものです。管理者は、IPMインターフェイスを使用して、グループ全
体の最小電力と定格電力の間に位置する消費電力上限をサーバー グループに適用できます。
グループ消費電力上限では、グループ内の各サーバーに個別の消費電力の上限値が割り当てられます。この個
別の消費電力の上限値は、個別の消費電力上限値の合計がグループの上限に等しくなるように、グループ消費
電力上限の比例割り当てとなります。これら個別の消費電力上限は、iLO 2インターフェイスまたはIPMインター
フェイスを通じてユーザーによって変更されるまで、サーバーに設定されたままになります。
図3に、それぞれ最小および最大電力消費量が個別に測定された4台のサーバーで構成されるグループを示しま
す。このグループの最大電力消費量合計は1375Wで、最小許容電力消費量合計は725Wです。管理者が消費
電力上限として1115Wをグループに適用した場合、この上限は、最小電力消費量合計と最大電力消費量合計の
間の60%のワット数に相当する電力消費量制限を表しています。このグループ消費電力上限を実装するために、
IPMは、サーバーの最小および最大電力消費量の間のワット数の60%に相当する消費電力上限を各サーバーに
適用します。図3の例では、消費電力上限はそれぞれ、320W、170W、305W、320Wになります。
8
図3. グループ内の個々のサーバーへのグループ消費電力上限の割り当て
HP ProLiant MLサーバーおよびDLサーバーの場合、グループ 消費電力上限の割り当ては、動的消費電力上限を
サポートするサーバーと基本消費電力上限をサポートするサーバーで、まったく同様に動作します。サーバー ブ
レードの場合は、より高度で新しい、エンクロージャー動的消費電力上限があります。
エンクロージャー動的消費電力上限
エンクロージャー動的消費電力上限は、HP BladeSystemエンクロージャーのために設計された、動的消費電力上
限の特殊な実装です。管理者は、サーバー レベルやブレード レベルで直接設定および管理するのではなく、エン
クロージャー レベルで消費電力上限を設定および管理できるため、ある意味ではより高度な電力管理機能と言え
ます。別の意味では、エンクロージャーの消費電力上限を設定すると、エンクロージャー内のサーバー ブレードの
消費電力上限が間接的に決まるため、エンクロージャー用のグループ消費電力上限のより強力な実装と見なすこ
とができます。HP Onboard Administrator(OA)は、これらの消費電力上限設定をアクティブに管理します。
エンクロージャーの消費電力上限の要素
エンクロージャー動的消費電力上限では、管理者は、エンクロージャー内のサーバー ブレードに対してだけでは
なく、HP BladeSystemエンクロージャー全体に対しても消費電力上限を設定します。エンクロージャーの総電力消
費量は、次のすべての構成要素によって使用される電力の合計です。
 サーバー ブレード
 エンクロージャーのI/O周辺機器(インターコネクトなど)
9
 エンクロージャーの冷却ファン
 エンクロージャーのHP Onboard Administrator
管理者は、エンクロージャーの消費電力の上限値を、エンクロージャーの消費電力の下限値と最大使用可能電力
の間の任意の値に設定できます。消費電力の下限値は、サーバー ブレードが最低P-stateモードで使用する電力
(通常は、サーバーのアイドル時電力と最大電力のほぼ中間値)の合計、エンクロージャー内のファンが消費する
最大電力、およびエンクロージャー内の他の要素からの電源投入時電力要求を合計して決定されます。この値は、
すべての動作条件の下で維持可能なエンクロージャーの最低限妥当な消費電力を表しています 。エンクロー
ジャーの最大使用可能電力は、エンクロージャーの電源から使用可能な総電力です。
エンクロージャー動的消費電力上限の動作
管理者がエンクロージャーの消費電力の上限値を設定した後、その上限を監視し維持するのは、エンクロージャー
のHP Onboard Administratorの役割となります。OAは、エンクロージャー内の管理対象以外の要素(ファン、ス
イッチなど)の電力消費量を制御することができないため、サーバー ブレードの電力消費量を監視および管理す
ることで、エンクロージャー全体の上限を維持します。これを実現するために、OAはエンクロージャー全体の電力
使用量、および管理対象サーバー ブレードによって使用される総電力を収集します。このデータから、OAは、ブ
レードの電力バジェットを作成します。この電力バジェットは、エンクロージャー全体の電力消費量をエンクロ ー
ジャーの上限より下に維持した状態で、各サーバー ブレードが消費できる電力量の合計を表しています。最終ス
テップとして、OAソフトウェアは、消費電力上限の合計がブレードの電力バジェットに一致するように、個々のサー
バーの消費電力上限をアクティブに調整します。このプロセスは、エンクロージャーの消費電力上限が確実に継続
して維持されるように、20秒ごとに繰り返されます。図4に示すように、エンクロージャー内の管理対象外の要素の
電力消費量が減ると、ブレードの電力バジェットと個々のサーバーの消費電力上限は増加します。
図4. エンクロージャーの動的消費電力上限における電力バジェット
10
アクティブな電力再割り当て
エンクロージャー動的消費電力上限のより重要な機能の1つが、時間の経過に伴うサーバー間での電力のアク
ティブな再割り当てです。IPMを使用したグループ 消費電力上限では、グループ消費電力上限が個別の上限とし
てサーバーに割り当てられ、その後そのまま設定が残ります。それとは異なり、エンクロージャー動的消費電力上
限では、各監視サイクルの後、個々のサーバー ブレードのワークロードに基づいて、サーバーの個別の消費電力
上限がアクティブに再割り当てされます。OAは、ブレードの電力バジェットを制限として、精巧な多層型アルゴリズ
ムを使用して、より負荷が高くより多くの電力を使用している個々のサーバーの消費電力上限を高くする一方、サ
イクルごとに使用電力が減尐しているサーバー ブレードの上限を低くします。したがって、OAは、全体の電力消
費量をエンクロージャーの消費電力上限より下に維持しながら、エンクロージャー内のサーバー ブレード間の電
力使用を最適化できます。サーバー ブレードの消費電力上限の制御を維持するために、エンクロージャー動的消
費電力上限では、個別のサーバー ブレードの消費電力上限に対する、iLOまたはIPMを使用した外部からの変更
が無効になります。
ほとんどの場合、OAはアイドル状態のサーバー ブレードが新たな作業を受け取ると、低い消費電力上限を迅速
に高くすることができます。このような場合、電力共有アルゴリズムはパフォーマンスにほとんど影響しません。た
だし、使用可能な電力に対して、高負荷のサーバー ブレードの数が多過ぎる場合は、OAはすべての高負荷の
サーバー ブレード間で使用可能な電力を公平に分散しようとします。
混在するブレード環境でのエンクロージャー動的消費電力上限
エンクロージャー動的消費電力上限は、基本消費電力上限またはより高速な動的消費電力上限をサポートするす
べてのサーバー ブレードで動作するように設計されています。また、これらのタイプのサーバー ブレードを使用し
て回路ブレーカーを保護することもできます。これを実現するため、エンクロージャー動的消費電力上限は、N+N
冗長電源が設定されているエンクロージャーの余剰な回路キャパシティに依存しています。基本消費電力上限を
備えるサーバー ブレードは、正常な回路ブレーカー保護に必要な3秒以内では上限より下に戻せませんが、エン
クロージャー電源の冗長側は、全体の電力消費量がエンクロージャーの上限を下回るまで、一時的な過多を吸収
できます。N+N冗長電源で障害が発生した場合、エンクロージャー動的消費電力上限は、ハードウェア ベースの
フェイルセーフ メカニズムによって無効になります。このメカニズムは、すべてのサーバー ブレード プロセッサー
を、回路ブレーカーの過負荷を防ぐために事前に決定された低い電力状態に即座に変更します。このハードウェア
による無効化は、電源の冗長性が復元されるまで続きます。
サーバーのオプト アウト
管理者は、結果的にエンクロージャー内の他のサーバー ブレードの消費電力上限が低くなる可能性があるとして
も、一部のサーバー ブレードに上限を設定しないでおきたい場合があります。通常、上限のないサーバーは、電
力消費量を無制限にする必要のある、ミッション クリティカルなアプリケーションや定常的に高負荷のアプリケー
ションを実行しています。上限を設定しないことによって、サーバーは高いスループットと低遅延の応答時間を維持
できます。エンクロージャー動的消費電力上限により、管理者は、最大でサーバー ブレードの4分の1までを、個
別に電力管理から「オプト アウト」(除外)し、それらをエンクロージャー内の管理対象外の要素にすることができま
す。再度、図4を見ると、これらのサーバーによって消費される電力は、HP Onboard Administratorによって引き
続き測定され追跡されますが、今度は、管理対象外の要素が使用する電力に含まれています。エンクロージャー
の消費電力上限は同じままのため、残りの管理対象サーバー ブレードのブレード電力バジェットが減尐します。
11
サーバーの消費電力上限の設定
管理者は、iLO 2またはHP Insight Power Manager(IPM)を使用して、サーバーの個別の消費電力上限を設定で
きます。また、管理者はIPMを使用して、HP ProLiant MLサーバーおよびDLサーバーのグループおよびエンクロー
ジャー グループの消費電力上限も設定できます。個々のエンクロージャーについては、管理者がHP Onboard
Administrator(OA)またはIPMを使用して消費電力上限を設定できます。消費電力上限は、動的消費電力上限を
サポートするサーバーと基本消費電力上限をサポートするサーバーとで、まったく同じ方法で設定されます。動的
消費電力上限をサポートするサーバーは、より高速な電力管理アーキテクチャーを使用して上限を適用するだけ
です。
単一サーバーの消費電力上限の設定
管理者はiLO 2またはIPMを通じて、個々のサーバーまたはサーバー ブレードの消費電力上限を設定できます。
iLO 2 の ブ ラ ウ ザ ー ベ ー ス の イ ン タ ー フ ェ イ ス で は 、 [ 電 力 管 理 ( Power Management ) ] タ ブ の [ 設 定
(Settings)]サブセクションの下に[消費電力上限値 設定(Power Capping Settings)]があります。iLO 2 [パワー
マネージャ設定(Power Management Settings)]画面にも、サーバーが動的消費電力上限をサポートしているかど
うかが表示されます。図5に、HP BladeSystemサーバーに消費電力上限を設定する様子を示します。
図5. iLO 2を使用した消費電力上限の設定
12
HP Insight Power Managerでは、図6に示すとおり、インターフェイスの[HPパワー管理アクション(HP Power
Management Actions)]セクションの下に消費電力上限があります。
図6. HP Insight Power Managerを使用した消費電力上限の設定
13
サーバー グループの消費電力上限の設定
HP Insight Power Mangerは、HP ProLiant MLサーバーおよびDLサーバーのグループに消費電力上限を設定する
ための唯一のツールです。管理者は、IPMインターフェイスを使用して、グループ全体の最小電力と定格電力の間
に位置する消費電力上限をサーバー グループに適用できます。その様子を図7に示します。
図7. HP Insight Power Managerでのグループ消費電力上限の設定
14
HP BladeSystemエンクロージャーの消費電力の上限値の設定
管 理 者 は 、 HP Onboard Administrator ま た は HP Insight Power Manager の ど ち ら か を 使 用 し て 、 HP
BladeSystemエンクロージャーの消費電力の上限値を、エンクロージャーの消費電力の下限値と最大使用可能電
力との間の任意の値に設定できます。図8に、HP Onboard Administratorの[ パワー マネジメント(Power
Management)]画面を示します。この画面で、エンクロージャー動的消費電力上限の設定を行います。
図8. HP Onboard Administratorでのエンクロージャーの動的消費電力上限の設定
15
エンクロージャー グループの消費電力の上限値の設定
管理者は、HP Insight Power Managerを使用して、エンクロージャーのグループに対してエンクロージャー動的消
費電力上限を同時に適用できます。図9に、IPMで1つのグループとして設定された6台のHP BladeSystem c-Class
エンクロージャーを示します。グループの最大使用可能電力は、39,460Wです。消費電力下限は21,417Wで、
現在の最大電力測定値を上回っています。これは、消費電力下限が、すべての動作条件の下で維持可能なグ
ループの最低限妥当な消費電力の下限値を表すように計算されているからです。消費電力の上限値として
25,000Wをグループに適用すると、IPMとOAは、HP ProLiant MLサーバーおよびDLサーバーにグループ消費電
力の上限値を適用する場合について前述した比例割り当てと同じ方式で、個別のエンクロージャーの動的消費電
力上限を作成し、6台のエンクロージャーそれぞれに適用します。各エンクロージャー内のOAは、この消費電力の
上限値を使用して、エンクロージャーのブレード電力バジェットを決定し、個々のサーバー ブレードの消費電力の
上限値を作成します。その後、個々のサーバー ブレードの電力需要に基づいて、それぞれの消費電力の上限値
を継続して監視し調整します。
図9. IPMでのエンクロージャー グループの消費電力上限の設定
16
データ センターのプロビジョニングにおける消費電力上限の使用
消費電力上限は、IT組織が、データ センターにおけるインフラストラクチャの規模およびコストを容易に管理できる
ようにするツールです。サーバーまたはサーバー グループの消費電力上限を設定することで、データ センターの
マネージャーは、ワークロードや環境の予期せぬ変化が原因でサーバーが指定した量以上に電力を消費すること
はないと安心することができます。
データ センターで基本消費電力上限を適切に使用することで、管理者は効果的なレベル、つまりすべてのサーバー
がフルパワーで稼動した場合に必要なレベルではなく、所定のアプリケーション負荷および消費電力上限の電力消費
量に必要となる冷却要件を満たすレベルで、冷却インフラストラクチャをプロビジョニングできるようになります。別の方
法として、基本消費電力上限を使用してサーバーの平均電力消費量を制限すると、既存の冷却インフラストラクチャで
より多くのサーバーを安全に動作させることができます。
動的消費電力上限は、さらにもう一歩進化しています。動的消費電力上限ではサーバーの電力消費量をリアルタ
イムで制御できるので、管理者は、冷却インフラストラクチャだけでなく電力供給のプランニングおよび管理におい
て、消費電力上限を使用できます。
効果的な消費電力上限の選択
効果的な消費電力上限を設定するには、アプリケーションのワークロードを実行しているサーバーまたはサーバー
グループの電力要件を満たす消費電力上限の最低値を決定する必要があります。このような消費電力上限を設
定した場合、サーバー アプリケーションのパフォーマンスに影響を与えずに、サーバーの電力割当と冷却コストを
低減することができます。
管理者は、HP Power Calculatorユーティリティーを使用して、特定のサーバー構成の最大入力電力を見積もることが
できます。この情報によって、データ センター管理者は、サーバーまたはサーバー グループをサポートするために必
要な最大の電力および冷却を決定できるため、この情報は消費電力上限を考慮する際の起点となります。さらに、IPM
とiLOのレポート機能が電力消費量に関する履歴情報を提供します。この情報を使用して、特定の電力節減または
キャパシティ プランニングの目標を達成するためのもっとも効果的な消費電力上限を選択できます。
図10に、2基のクアッドコアIntel Xeon X5460 3.16GHzプロセッサー、1つの72GBディスク ドライブ、および8GB
のシステム メモリで構成されたHP ProLiant DL380 G5サーバーの場合のHP Power Calculatorユーティリティー
の出力を示します。結果は、このサーバー構成での総システム入力電力の要件が423Wであることを示していま
す。これは、この特定のサーバー構成がすべての環境および負荷条件の下で使用すると予測される最大電力量
です。これは、管理者が、データ センター内でこのシステムをサポートするための最大電力および冷却要件を計
算する際に使用できる数値の1つです。このようなサーバー8台で構成されるグループを含むラックの場合、合計シ
ステム入力電力要件は3384Wになります。
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図10. 構成済みHP ProLiant DL380 G5サーバーの場合のHP Power Calculatorの結果
18
この例の続きとして、図11に、負荷が変動する標準的なアプリケーションを実行する8台のサーバー グループに
関するIPMのグループ電力消費量のグラフを示します。IPMは、各サーバーの電力管理システムから収集したデー
タを使用して、このグラフを生成します。電力管理システムは、1秒間に2回電力消費量を測定し、ピーク時電力消
費量と平均電力消費量の両方を記録します。ピーク時電力消費量の場合、グラフの各ポイントは、所定の5分間に
記録された0.5秒間の電力測定値のうち最高の値を表します。平均電力消費量は、同じ時間枠に記録されたすべ
ての0.5秒間の電力測定値の平均を示しています。
図11. 8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーからなるグループのグループ電力消費量グラフ
この特定のワークロードを実行するサーバー グループのピーク時の電力消費量は約3116Wで、平均電力消費
量は約1900Wです。グループのピーク時および平均の電力消費量の履歴がわかっていると、その情報を基に、
データ センター内でのさまざまな電力管理目的を満たす効果的な消費電力上限を設定するための方法を決定で
きます。
ピーク時電力消費量に対する消費電力上限
図11の電力消費量のグラフに示すとおり、このワークロードを実行する8台のサーバー グループのピーク時電力
消費量は、常に約3116Wです。このレベルで消費電力上限を設定しても、サーバーの全体的なパフォーマンスに
は影響はありませんが、サーバー グループの電力消費量が長時間にわたって3116Wを超えるようなことはなく
なります。基本消費電力上限の場合、サーバー グループの冷却要件は、HP Power Calculatorユーティリティー
がこの構成について示した最大電力3384Wではなく、消費される電力3116Wに照らし合わせて安全に予測され
ます。表4に、サーバー グループの電力消費量とキャパシティの節減に関する要約を示します。
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表4. 基本消費電力上限を使用してピーク時の電力消費量に上限を設けたときの8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの電力消費
量
説明
電力
8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの最大可能電力消費量
(HP Power Calculatorに基づく)
3384W
ピーク時に上限を設けたときの最大電力消費量
3116W
電力キャパシティの節減
268W
同じ冷却インフラストラクチャ内でプロビジョニング可能な
追加サーバー
0.7
8台すべてのサーバーが動的消費電力上限をサポートしている場合は、3116Wの消費電力上限を使用して電力
供給を管理することもできます。従来のガイドラインでは、これらの8台のサーバーには、それらをサポートするた
めに7760Wの供給電力が必要でした。表5に示すとおり、最初の8台のサーバーと同じ電力レベルですべての
サーバーに上限が設定されていることを前提とした場合、動的消費電力上限を適用すると、同じ回路でさらに11
台以上のサーバーに対応できます。
表5. 動的消費電力上限を使用してピーク時の電力消費量に上限を設けたときの8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの電力供給
量
説明
電力
8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの従来の入力電力供給量
(208V時の入力電力1217VAから20%差し引き)
7760W(970×8)
ピーク時に上限を設けたときの最大電力消費量
3116W
電力キャパシティの節減
4645W
ピーク時に上限を設けたときに動的消費電力上限を使用して
同じ7760W内でプロビジョニング可能な追加サーバー
11.9
サーバー グループの電力消費量のグラフに基づいてピークに上限を設ける場合は、実際にはグループ内のサー
バーの電力消費量の合計のピークに上限を設けてから、そのグループの上限を各サーバーの個別の消費電力上
限として配布するということを理解しておく必要があります。特に、個々のサーバーのワークロードがそれぞれ異な
る時間にピークとなる場合や、ワークロードがサーバーごとに大幅に異なる場合には、グループ内の1台以上の
サーバーに対して作成された個々の消費電力上限が、それぞれのピーク時電力消費量を下回る場合があります。
このことは、特にこれらのサーバーが動的消費電力上限をサポートしている場合、動的消費電力上限の高速な監
視によって一時的なピークの制限に及ぼす影響が大きくなるため、サーバーのパフォーマンスに悪影響を及ぼしま
す。動的消費電力上限を使用している管理者は、IPMを介して各サーバーのピーク時電力消費量を調べ、サー
バーに対して選択した消費電力上限が実際のピーク時電力消費量を大幅に制限していないことを確認することを
推奨します。
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平均電力消費量に対する消費電力上限
管理者は、グループの平均電力消費量レベルの上限を1900Wにすることで、供給容量をさらに増やすことができま
す。非常に均一なワークロードを実行する複数のサーバーで平均電力消費量に上限を設定してもサーバーの平均計
算スループット全体には大きな影響はありませんが、ワークロードのピーク時に遅延が長くなることがあります。
表6に示すケースでは、基本消費電力上限で平均に上限を設けると、この特定のアプリケーションにおけるサー
バーパフォーマンス全体への影響はごくわずかですが、特定の冷却インフラストラクチャ内でプロビジョニングでき
るサーバー数はほぼ2倍になります。
表6. 基本消費電力上限を使用して平均電力消費量に上限を設けたときの8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの電力消費
量
説明
電力
8台のHP ProLiant DL380 G5サーバーの最大電力消費量
(HP Power Calculatorに基づく)
3384W
平均に上限を設けたときの最大電力消費量
1900W
電力キャパシティの節減
1484W
同じ冷却インフラストラクチャ内でプロビジョニング可能な追加サーバー
6
動的消費電力上限は、上限を超える一時的な過剰ワークロードに与える影響がより大きいため、動的消費電力上
限をサポートするサーバー グループの場合、ピーク時の一時的なパフォーマンスが問題とならないアプリケーショ
ンでのみ、平均電力消費量に上限を設定する必要があります。
電力供給におけるエンクロージャーの動的消費電力上限の
使用
動的消費電力上限は、データ センターの回路ブレーカーを切断する可能性のある一時的なサーバー電力需要を
十分に防げる速さで、サーバー電力消費量を制御できます。管理者は、エンクロージャー動的消費電力上限を使
用して、エンクロージャーの消費電力上限を設定することで、エンクロージャーに必要な電力供給に本質的に上限
を設けることができます。
たとえば、16のサーバー ブレードがフルに構成されたHP BladeSystem c7000エンクロージャーについて考えて
みます。HPの2250Wのパワーサプライの仕様の合計どおりに電力を提供するには、通常、キャパシティ合計が
8640Wの30A、3相、208Vの回路を使用して、エンクロージャーに7836Wを供給する必要があります。ただし、
長期間に渡りエンクロージャーのピーク時電力消費量が4000W未満である場合は、両方のエンクロージャーの上
限が4000Wに設定されているかぎり、パフォーマンスを低下させることなく、同じ回路で2台のフル装備のエンク
ロージャーに電力を供給して動作させることができます。このことを、図12に示します。
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図12. エンクロージャーの動的消費電力上限による供給
動的消費電力上限とエンクロージャー動的消費電力上限を使用してデータ センターの電力供給を管理する方法につ
いては、ホワイト ペーパー『Dynamic Power Capping TCO and Best Practices』 (英語)で詳しく説明されています。こ
のホワイト ペーパーは、http://h71028.www7.hp.com/ERC/downloads/4AA2-3107ENW.pdfから入手可能で
す。
消費電力上限のその他の用途
基本消費電力上限と動的消費電力上限はどちらも、緊急時管理や、ピーク需要期間の自動電力制御を含め、
データ センター内の他のキャパシティで使用できます。
緊急時管理のための消費電力上限
不測の状況が生じた場合は、消費電力上限を使用して、サーバー電力消費量を効率的に管理できます。一般的
な例としては、データ センターの一部の冷却システムの障害があります。この状況では、管理者は、IPMと消費電
力上限を使用して、サーバー グループの消費電力上限を手動で引き下げることができます。これにより、冷却が
回復可能になるまで、影響を受ける領域のサーバー電力消費量と熱生成は迅速かつ効率的に引き下げられます。
このような状況下では、パフォーマンスに影響する可能性があっても、消費電力上限を大幅に低く設定した方が良
い場合があります。管理者はSIMを使用して、サーバー グループを集合として定義し格納できます。これにより、
管理者は緊急時にこれらのグループに対して消費電力上限を迅速に適用できます。
データ センターのすべてまたは一部で主系のAC電力が失われた場合も、消費電力上限を効果的に使用できま
す。管理者は即時に、サーバー グループに消費電力上限を適用して電力消費量を下げ、データ センターの無停
電電源装置(UPS)の電力流出を減らすことができます。これにより、一般にライドスルー時間と呼ばれる最大時間
枠が長くなり、データ センターは、電力障害の後、電力と冷却が現場の発電機によって回復されるまで、稼動し続
けることができます。
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時間帯による消費電力上限
管理者は、IPMのタスク スケジューリング機能を使用して、時間帯による消費電力上限実装を作成できます。時間
帯による消費電力上限では、サーバーまたはサーバー グループの消費電力上限を、事前に決定したパターン
(通常は1日サイクル)で上下させます。電気料金が最も高くなる時間帯にサーバー グループの消費電力上限を
下げると、サーバーが使用する平均電力が減尐し、必要な冷却も間接的に減るため、運用コストが低減します。
時間帯による消費電力上限のシナリオを作成するには、管理者はHP Insight Power Managerで個別のスケ
ジュールされたタスクを作成する必要があります。SIMインターフェイスで、トップレベルの[設定(Configure)]メ
ニューにある[Insight Power Managerの設定(Configure Insight Power Manager)]オプションを使用して、このス
ケジューリング機能にアクセスします。
タスクのスケジューリングは、新しい消費電力上限の定義(図13)、消費電力上限を適用するためのスケジュール
の作成(図14)などの複数のステップを経て実行されます。
図13. スケジュールされたタスクの一部としての消費電力上限の設定
図14. HP Systems Insight ManagerでのスケジュールされたHP Insight Power Managerタスクの定義
時間帯による消費電力上限 モデルを作成するには、実質2つ以上の個別のスケジュールされたタスクをHP
Insight Power Managerで作成する必要があります。最初のステップは、特定の時間帯に特定の消費電力上限を
適用するためのスケジュールされたタスクを作成することです。図13と14に、毎日午後2:00に適用される消費電
力上限を示します。時間帯による消費電力上限を完了するには、消費電力上限を削除するか上げるための2番目
のタスクを作成する必要があります。
23
消費電力上限の注意点
グループ内での消費電力上限の競合回避
IPMは、SIMコレクションを含め、定義済みのサーバー グループを対象に、消費電力上限を設定および管理する
ための強力なツールです。ただし、エンクロージャーの動的消費電力上限を除き、消費電力上限は最終的には
個々のサーバー レベルで設定される点を常に忘れないでください。IPMを通じて設定されたグループ消費電力上
限は、単に、個別の消費電力上限としてグループ内のすべてのサーバーに割り当てられます。
消費電力上限は、完全な非階層型でもあります。IPMを使用して設定された消費電力上限が、iLOインターフェイス
を使用して設定された消費電力上限より優先されることはありません。各サーバーは、それが設定された方式に
関係なく、受信した最新の消費電力上限に従うだけです。たとえば、2つの異なるSIMコレクションのメンバーである
サーバーについて考えてみます。グループ消費電力上限が2つのコレクションのそれぞれに適用される場合、両方
のコレクションに属するサーバーは、後から消費電力上限が適用されたコレクションを反映する個別の消費電力上
限を保持します。
同様に、iLOインターフェイスを使用して個々のサーバーに消費電力上限を設定する場合、HP Insight Power
Managerを介して設定された消費電力上限を持つグループに属していた場合でも、そのサーバーの以前の消費
電力上限は置き換えられます。HP Insight Managerはグループ消費電力上限を個別の消費電力上限の単なる合
計と見なすため、個々のサーバーの消費電力上限が変更されると、最終的には、HP Insight Power Managerでグ
ループ消費電力上限として表示される数値に反映されます。
IPMを使用してエンクロージャー グループに対してエンクロージャー動的消費電力上限を設定する場合も、同様の
状況が発生することがあります。グループ消費電力上限が個々のエンクロージャーに割り当てられた後は、HP
Onboard Administratorを介して単一のエンクロージャーに新しい上限を設定すれば、これらの個別のエンクロー
ジャー消費電力上限を上書きできます。
消費電力上限/キャパシティの全体的な管理戦略をプランニングし実装するときには、消費電力上限の設定時に
発生するこのような重複の可能性を考慮する必要があります。消費電力上限を設定する際に単一の一貫した方式
を選択することで、競合を回避できます。たとえば、システム管理者は、特に電力および冷却の管理に使用するた
めの、重複しない一連のSIMコレクションを定義できます。
動的消費電力上限使用時のサーバー グループの電源投入
動的消費電力上限は、リアル タイムでサーバーの電力消費量を安定した状態に制御する強力なツールです。た
だし、サーバーの起動時には電力消費量を制御しません。同じPDU上のサーバー グループが同時に電源投入さ
れる場合は、動的消費電力上限がオンラインになる前の起動中に時間枠があります。この間に、各サーバーは最
大電力消費量を決定し、ほぼ同時に最大電力の付近に達します。このピークが大き過ぎる場合は、問題が発生す
ることがあります。問題の発生を回避するため、これらのサーバー グループには時間をずらして手動で電源を投
入する必要があります。自動電源投入が実行される場合は、サーバーの[電源オンの遅延(Power On Delay)]を
有効にし、それを[最長120秒までのランダム(Random up to 120 seconds)]に設定することによって、時間差で
電源を投入することができます。これは、iLOインターフェイスまたはHP BladeSystemのエンクロージャーOAを使
用して実行できます。
低いまたは達成不可能なサーバー消費電力上限の設定
理論的に、消費電力上限は、特定のサーバーまたはサーバー グループの最小電力消費量を上回る任意の値に
設定できます。ただし、消費電力上限の値を最小電力消費量に近い値に設定するのは適切ではありません。消費
電力上限をこのレベルで、またはその付近で維持すると、サーバーの有意義な動作が妨げられます。さらに、サー
バーの最小電力消費量レベルは、データ センター温度の上昇に伴うファン アクティビティの増加、サーバーへの
ディスク ドライブのホットアドなど、多くの原因から、時間の経過とともに上昇することがあります。結果的に、消費
電力上限がサーバーの最小電力消費量を下回ってしまい、消費電力上限が達成不可能になることがあります。こ
のような潜在的な矛盾があるため、ベスト プラクティスは、サーバーまたはサーバー グループの最小消費電力と
最大消費電力との中間値以上の値を消費電力上限として使用することになります。消費電力上限がこれより小さ
い値に設定されると常に、iLOインターフェイスとIPMインターフェイスはどちらも警告を提供します。
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エンクロージャー動的消費電力上限は、エンクロージャー消費電力上限が、エンクロージャーおよびそのサーバー ブ
レード全体の最小消費電力に近過ぎる場合には、それを拒否することで、この問題を解決しています。
ピーク時電力レポートと動的消費電力上限
iLO 2とIPMはどちらも、ピーク時電力消費量を含め、HP ProLiantサーバーの電力測定値をレポートします。サー
バーの電力監視システムは、5分間に記録された0.5秒間の電力測定値のうち最大の値を、ピーク時電力消費量
として記録します。動的消費電力上限は基本消費電力上限よりかなり高速ですが、サーバーの電力消費量を上限
以下に戻すまでに最大0.5秒かかることがあります。そのため、レポートされたピーク時電力が、サーバーの消費
電力上限値より数ワット高い場合があります。それでも、動的消費電力上限ではかならず回路ブレーカーが切断さ
れるよりずっと前に電力消費量が上限以下に戻されるため、回路は保護されます。
HP パワー レギュレーターと消費電力上限の併用
消費電力上限とHP パワー レギュレーターは、同じ基本電力管理システムを使用して、サーバーの電力消費量を
管理および制御します。ただし、これらの2つの電力管理機能は、異なる目的を達成するように設計されています。
消費電力上限は、サーバーの最大電力消費量を厳密に制御します。それにより、管理者は、システム パフォーマ
ンスへの明確な影響なく、より広い電力範囲で、サーバーの最大電力消費量に制限を設け管理することができま
す。消費電力上限は、プロセッサーのP-stateとクロック スロットリングの両方を使用して、システム電力消費量を制
限できます。
パワー レギュレーターは、サーバー パフォーマンスへの影響なく、サーバーまたはサーバー グループの電力使
用を最適化することに重点が置かれています。推奨される構成では、パワー レギュレーターは、サーバーの現在
のワークロードに適合するもっとも電力効率の良いプロセッサーP-stateを動的に選択します。これを実行することで、
パワー レギュレーターは、システム パフォーマンスやスループットに影響を与えず、電力消費量を低減します。こ
の意味で、パワー レギュレーターは基本的に効率性を高めるためのツールです。
消費電力上限とHP パワー レギュレーターは、競合することなく、個々のサーバーまたはサーバー グループで同
時に使用できます。サーバーの電力消費量が消費電力上限の設定値を下回っているかぎり、パワー レギュレー
ターは、自身の設定とP-stateを使用してサーバーを自由に管理できます。電力消費量が既定の消費電力上限を超
えた場合のみ、消費電力上限がパワー レギュレーターより優先されます。
消費電力上限とCPU使用率
消費電力上限とパワー レギュレーターはどちらも、非常に基本的なレベルでシステムCPUを操作する必要があり
ます。そのため、消費電力上限は、オペレーティング システムレベルの監視ツールによってレポートされるCPU使
用率の数値に影響を及ぼすことがあります。比較的ワークロードが一定なサーバーに、電力制御メカニズムを動
作させるほど低い値の消費電力上限が割り当てられた場合、通常、監視ユーティリティーは、上限が設定されてい
ない場合より大きい値をCPU使用率としてレポートします。
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まとめ
消費電力上限 (HP Power Capping)と動的消費電力上限 (HP Dynamic Power Capping)は、HP ProLiantサーバーの
重要な電力管理機能です。消費電力上限を使用すると、システム管理者は、システム パフォーマンスに影響を及ぼさ
ずに、単一のサーバーまたはサーバー グループの電力消費量に制限を設けることができます。また、データ セン
ターの電力および冷却リソースを、サーバーの最大要件ではなく、適したレベルにプロビジョニングすることができます。
エンクロージャー動的消費電力上限は、消費電力上限の最新で非常に精巧な実装です。ワークロード要件に基づいて、
エンクロージャーの消費電力上限を個々のサーバー ブレード間でアクティブに再割り当てする機能を備えています。
詳細情報
詳細情報については、次の一覧にあるリソースを参照してください。
ソース
ハイパーリンク
HPパワー マネジメント ソフトウェ
ア (英語)
http://www.hp.com/go/powercapping
HP Insight Power Manager
http://www.hp.com/jp/ipm
HP Integrated Lights-Out
http://www.hp.com/jp/servers/ilo
HP Systems Insight
Manager(SIM)
http://www.hp.com/jp/hpsim
『Dynamic Power Capping
TCO and Best Practices』ホワイト
ペーパー (英語)
http://h71028.www7.hp.com/ERC/downloads/4AA2-3107ENW.pdf
Dynamic Power Cappingの
サポート マトリクス (英語)
http://h18004.www1.hp.com/products/servers/management/dynamicpower-capping/support.html
HP Power Calculatorのページ
(英語)
http://h30099.www3.hp.com/configurator/powercalcs.asp
HP ProLiant Energy Efficient
Solutions (英語)
www.hp.com/go/proliant-energy-efficient
HP ProLiantサーバー対応パワー
レギュレーターの技術概要
http://h50146.www5.hp.com/products/servers/proliant/whitepaper/wp046_06
0315/
パワー レギュレーター (英語)
http://h18013.www1.hp.com/products/servers/management/ilo/powe
r-regulator.html
ご意見をお寄せください
このホワイト ペーパーに関するコメントを、[email protected] (英語)にお送りください。
© 2009 Hewlett-Packard Development Company, L.P. 本書の内容は、将来予告なしに変更
される場合があります。HP製品およびサービスに対する保証については、当該製品および
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ものではありません。本書の内容につきましては万全を期しておりますが、本書中の技術的あ
るいは校正上の誤り、脱落に対して、責任を負いかねますのでご了承ください。
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Intelは、Intel Corporationまたはその子会社の米国および他の国における商標であり、ライセ
ンスの下で使用されます。
TC090303TB、2009年3月
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