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カカ ンン ボボ ジジ アア 年年 末末 のの アア ンン ココ ーー ルル ・・ ワワ

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カカ ンン ボボ ジジ アア 年年 末末 のの アア ンン ココ ーー ルル ・・ ワワ
カ ンボ ジ ア 年末の アンコール ・ワット
十一時過ぎ にバンコックからアンコール・ワットのあるカンボジア のプノンペ ン
に 向 け タ イ 航 空 の B7 3 7 で 飛 ん だ 。 約 一 時 間 十 五 分 の フ ラ イ ト だ 。 水 平 飛 行 に 入
えつ
ると軽食が出た。三度目ともなると余裕がある。ここの機内食はなかなかだなどと悦
に入って いる 間に、機はバンコック の市街地を 飛び越えて 、果てしな く続く森林 の
上空に出ていた。
眼下には、真っ白な雲が点々と層
状に浮いている。その陰が、濃い緑
の絨毯の上に満々と水をたたえた
こ んぺ き
紺 碧の湖を創り出している。その間
をぬって茶褐色の細い道路が唐草
模様を描いている。雲、森林、道路
︱︱この三者 が作り出す自然の造
形に見入っていた。機内アナウンス
で現実の世界に戻されたら、もう婦
プノンペン空港の上空だった。軽々
と着陸する。国際空港とは名ばかり
の平屋の小さな建物だ。タラップを
降りると、ムッと三十度を超える暑
さ が襲 っ て き た 。
手荷物をゴロゴロと音を立てて 引っ張りながら滑走路を 歩いて建物に向かう。 歩
き な が ら 、 つ い 三 日前 は ワ シ ン ト ン の 街 角 で 震 え て い た こ と 思 い 出 し た 。 折 角 だ か
ら ク リ ス マ ス ま で ワ シ ン ト ン に 滞 在 し た ら と 言 う の を 振 り 切 り 、 そ ん な に 無理 し て
大 丈 夫 か と 心 配 そ う に 聞 く の も 無 視 し、 ワ シ ン ト ン か ら 戻 る や い な や 荷 物を 冬 物 か
ら 夏 物に替え 、また 成田 から飛 び立ってき た。
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ぬく
と もかくカンボジアの大きな自然の中に飛び込みたかった。自然の温 もりの中に
全身を投 げ出し、そのな かに浸 りた かった。
﹁ 今 が 一 番 良 い 季節 で す よ ﹂
石 澤 先 生 か ら の 誘惑 に は 勝て な か っ た 。 上 智 大 学 外 国 学 部 長 ︱ ︱ そ れ が 石 澤 良 昭 教
授 の肩書 だが、知る人ぞ知るアンコール・ワットの権威である。その著書を手にア
ン コ ー ル ・ ワ ッ ト に 来 て い た 若 い 人 た ち が 、 先 生を 見つ け 、 サ イ ン を 求 めて 列を 作
ま
る 様 子を目の当たりにしたこともある。その石 澤先生と二人で心ゆくま でアンコー
ルを散策する。そう思ったら、矢も盾もたまらなかった。
プ ノ ン ペ ン で 乗 り換 え て シ ュ ム リ アッ プ に 向 か う
カンボジアへの入国手続きは今回
は意外に簡単だった。でも、一歩、
じょう
ド ア の 外に 出 た ら騒 動 の はず で あ る 。
あん
案 の定 、出迎えやらタクシーの客引
きやらで、ごった返していた。僕の
と た ん
顔 を 見 た 途端 、 片 言 の 日 本 語 を 口 に
しながら、四、五人がワッと迫って
きた。手を左右に振りながら﹁ノ
ウ!﹂とか﹁駄目!﹂とか﹁いらな
い!﹂とかを連発し、後は申し訳な
いけど無視を 決め込んだ。
脇 目 も振 ら ず 国 際 線 の ドア を 出 て 、
左側にある国内線のカウンターに向
かう。ここで乗り換えてアンコー
ル・ワットのあるシュムリアップに
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行 く か ら だ 。 小 型 の タ ー ボ プ ロ ッ プ 機 、 フ ラ ン ス の エ ア ロ ス パ シ エ 社 の A T R7 2
で約四十五分のフライトが残っている。出発ま で2 時間以 上もある。まだ、チェ ッ
ク インのカウンターに人の姿も見え ない。カ ウンターの直ぐ横のレストランで待つ
さ かな
ことにした。地場のラーメンらしきものを肴 に、地ビール﹁アンコール﹂をチビチ
ビ やりな がら 、持ってきた本を 開いた。
乾季で観光には最適ということなのだろう。 シュムリア ップ行きのフライトは満
席 だっ た 。 半 年 ほ ど 前 、 日本 人 な ど の 観 光 客 が 亡 く な っ た 事 件 が あ っ て 、 客 足 が ば
ったり途絶えたと聞いて いたが、戻ってきていた。
大半は 日本 人。あとはすべてフラ ンス人ら しい男女のカ ップルであ る。日本人 の
カ ップル は老夫婦一組だけ。残りは、僕一人を 除き、女性グループ。 しかも、唯 一
の 日本人のカ ップルの旦 那は、終始、つまらな いという表情で、まったく口を開 か
お くめん
な い 。 フ ラ ン ス 人 の 老 夫 婦 た ち が臆 面 も な く 手 を 握 り あ い 、 な ん だ か ん だと キ スし
合っているのと対照的である。今の 日本の世相 が、ここに来ている日本人の姿に 凝
縮されて いるようだった。
そんな 一行、六十人あ まりを乗せ た古いター ボプロップ 機の機内は、とにもか く
に も狭い。荷 物を膝の上に載せて 座席で小さくなっている しかない。 広大なトレ サ
はさ
や
し
ップ 湖を上から眺めたいが、前 後左右を大柄なフランス人に挟 ま れ、そん な余裕は
へ きへき
ない。空調はほとんど効かない。外人特有の体臭に癖 壁し、限界だと思った時に、椰子
の林の中 に開 かれた 小さな空港 にスーウッと 着陸した。
タ ラ ッ プ を 降 り 、 ま た 手 荷 物 を ゴ ロ ゴ ロ と 引 い て 、 一 段 と 小 さ い 平 屋 の 建 物を 目
か げろう
指して 歩いた。滑 走路からの照り返しで息が詰まる。陽 炎が揺らい でいる。あ っと
にじ
いう 間に汗が滲 ん できた。プノンペンよりも暑い。 ワシントンほど寒くはなかった
け れど、 飛び立ってきた 成田も四度 ぐらいで、荷 物を減ら すために薄 着で家を出 て
き た の で 縮 み 上 が っ て い た 。 そ れ と は全 く の 別 世 界 だ っ た 。
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バ イ ヨ ンホテ ル でス ト レ ッチ ン グ に励 む
時間の 進み 方もゆっく りで、半分ぐらいのよ うな気がす る。平屋の建物の出口 の
と ころに頼ん でおいたガ イドが名札を持って立っていた。 日本人の男 で、しかも 一
ほ ほ え
人旅︱︱相手も僕に直ぐに気が付いた。ニッと微笑んだ。僕もニッと微笑み返した。
待って いた マイクロバ スに乗り込んでホテル に直行する。バスは冷 房が効いて い
て 煙 草 も 吸え た 。 よ う や く ホ ッ と し た 。 愛 想 の 良 い ガ イ ド で 、 懸 命 に 職 務を 果 た そ
し り め つ れ つ
う と す る 。 し か し 、 支 離 滅裂 な 英 語 で 、 ほ と ん ど 意 味 を な さ な い 。 ﹁ 説 明 は い い か
ら ﹂と 言 うと 、ちょっと 悲しそうに 顔を曇らせ た。そして 日本語が話 せると良い の
だけれど、日本語が話せれば稼ぎも良くなるのだけれど⋮⋮⋮そんなことを呟いた。
気の毒に思ったが、ともかく静かにして欲しかった。
じ ょ うや ど
ホテルは上智大学アンコール遺跡国際調査団の定 宿のバイヨンホテルだ。前にも
泊まったところで懐かしい。チェックインを済ませ、明日の九時に迎えに来るよ う
に 言って ガイドには帰ってもらった。日本語が出来なくて も構わない。滞在中はず
っと雇う から と言うと、 分かったら しく嬉しそうに﹁明日の朝九時ね!﹂と日本 語
お
で 繰 り 返 し 言 って 姿 を 消 した 。
す ん か
今 の 僕 に は 寸暇を 惜 し ん で 見 て 回 ろ う 、 観 光 し よ う な ど と い う 気 持 ち はま っ たく
しん
ない。石澤先生が留守なのを良いことに、ともかくのんびりすることにした。﹁﹃気﹄
めぐ
の 巡 り が 悪 く な っ て 体 が 芯 か ら 冷 え 切 っ て い ま す 。 ど こ か 暖 か い と こ ろ へ 行って 、
ゆっくりし、自然の空気を胸一杯に吸い込んで鋭気を養ってこなくちゃ駄目ですよ﹂
はり
こ んな こ とを鍼 の 先 生 に 言 わ れ 続 け て いた か ら だ 。
ホテルの前 をシュムリアップ川が 流れている。乾期に入って三ヶ月近く経ち、 底
にご
が 見え る くら い に水量 は 減 り 、 濁っ て い た 。 こ の 川 が 雨 期 に は増 水 し 氾 濫 す る 。 今
ひた
年 も ホ テ ル の ロ ビ ー ま で 水 に浸 っ た と い う け れ ど 、 そ れ が 嘘 の よ う で あ る 。
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や
し
川 の 両 側 は椰 子 や ネ ム ノ キ に 似 た 大 木
の 並 木 である 。 そ の木陰 の 白 いベン チ を
占拠する。他に観光客らしき人影はない。
真 紅 の ブーゲ ン ビ リア が 目 に しみる 。 こ
の ベ ンチ に腰 を 下 ろ すの は 約 一 年ぶ り だ。
そ の 時 は 賑 や か な 顔 ぶ れ で 、 友人 の 作 家
の 杉田 望 や寅 さん も 一 緒 だっ た 。
人 並 み にち ょ っ と セン チ メ ンタ ル な 気
とたん
分になった。途端に﹁駄目じゃない!﹂
し っ た
気を取り直し、﹁エイ﹂と声
という叱咤の声が頭の中に響く。 そう、
駄目だ!
を出し、﹁気﹂を養うのに良いという
た んで ん
﹁丹 田 呼 吸 ﹂ から 開 始 し た 。
へそ
﹁ 丹田﹂︱︱﹁臍 の下の下腹部にあたるところ。ここに力を 入れると健康と勇気
を 得ると いわ れる﹂︵広 辞苑︶、﹁東洋医学で,臍の下のあたりをいう。全身の 精
気の集ま る所とされる﹂︵大辞林︶。
木 立を 抜けてくる空気をいっぱい 吸い込み 、 陽 の 光を 体 全 身 で浴 び な がら 、 丹 田
呼 吸を ひ と し き り やっ た 。 続いて 、 こ の と こ ろ す っ か り 止 めて い た 自 律 神 経 訓 練 法
に挑戦した。たとえば、 気持ちを集 中し、意図的に手や足を熱くした り冷たくし た
りするヤツだ。
昔はそれが簡単にできた。しかし、今 はまる で駄目だった。手から 一種の﹁気 ﹂
の よ う な も の も 出 せ た 。 それ も相 当 に 強 か っ た 。 と こ ろ が 、 今 や っ て み る と 、 わ ず
かしか出てこない。自信 があっただけに、ビックリした。 やはり自律神経はズタ ズ
タ だし、 すっ かり気力も衰えて しま ったと いう ことな のだろう。
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その 事 実 に 落 ち 込 ん で しま っ た 。 す る と 、ま た 、 さ ら に 大 き な 声 が 聞こ え た 。
﹁頑張らなければ駄目じゃない!﹂
うなが
その声に 促 され、まるで夢遊病者のように﹁基本だよ!﹂と言われたストレッチン
グを始めた。手足、とくに足がすっかり固くなって、この暑さの中でも冷えたま ま
ふけ
で あ る 。 血 行 不 良 の 見 本 の よ う な も の だ。 シ ュ プ リ ア ッ プ で 、 い っ た い 何 や っ て る
つぶ
んだ︱︱ブツブツ呟 きながら、川辺のベンチの横で一人でストレッチングに耽った。
﹁や あ、よ く い らっ し ゃ いま し た ﹂
にじ
丹田呼吸法とストレッチング。その繰り返しを二時間近 くもやって いた。冷え き
しん
っ て い た 身 体の 芯 も な ご み 始 めて き た 。 う っ す ら と 汗 も滲 ん で き た 。 頃 合 い を 見 計
らっていたように﹁一度にやっては駄目でしょう﹂と、また指示が出た。そう、 無
理 して は 駄 目 だ 。 今 日 の と こ ろ は 、 こ の くら い で 良 い だ ろ う 。 そ う 言 い 聞 か せ て 、
ベンチに腰を下ろした。 一服することにした。
昔 は 、 こ の 当 た り で も シ ュ ム リ ア ッ プ 川 は 綺 麗 だった そ う だ。 下 流 に 農 業 用 水 の
せき
取水 のために堰 が 作られ、それで流れがよどみ、濁るようになってしまったのだと
いう。その濁った水の中 で、四∼五人の子供たちが水遊びをやっていた。下流の 椰
子の木陰を出たり入ったりしている。上流では、
つ
人がすれ違うのがやっとの細い吊り橋の上から
た
十人あまりの子供たちが釣り糸を 垂らしていた 。
時折、騒いでいる。何かが釣れているらしい。
の ど か
長閑なこときわまりない。
フィリピンのセブ島で過ごした夢のような数
日間のことを思い出した。薄緑色に輝く透明な
さんごし ょう
珊 瑚 礁。そこに小舟を出し、潮にまかせて漂い
ながら、時折、輝く海水に身体を浸す。裸で子
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供 た ち が 崖 か ら 飛 び 込ん だり して 遊 ん で い る 横 で 、 地 元 料 理 に 舌包 み を 打つ 。 術 後
の 保養と 気分転換を兼ねて 行った。 初めて味あ う 明るい 南国 の 風 物は最 高 だった 。
や
ただ、その中に身体を置く、それで十分だった。もう十年以上も前の想い出である。
一緒に行った人たち は、今はどうしているのだろうか︱︱。
はくちゅうむ
﹁ガラ ン、ガラン ﹂と いう突 然の 大きな 音で白昼夢 は中断された。小柄な 痩せ た
じ ょ う ろ
中 年 の カ ン ボ ジ ア 人 男 性 が 、 天 秤 の 両 側 に 大き な 如 雨露を 二 つ ぶ ら 下 げ て 水 を 汲み
じ ょ う ろ
に 来 た 。 前 を 横 切 り 、 石 段を 下 り 、 水 辺 に 立っ て 、 如 雨露に 水 を い っ ぱ い 汲 ん で 帰
っ て い っ た 。 少 し 先 の ベ ン チ で はカ ン ボ ジ ア の 若 者 が 携 帯 電話 で 話 を して い た 。 そ
し
う 言え ば 、 セ ブ 島 に 行 っ た こ ろ に は 携 帯 電話 な ん て な か っ た 。 そ れ を 見 て 、 現 実 に
や
引 き 戻 さ れ た 。 す で に 太 陽 は 傾 き 始 めて い た 。 椰 子の 葉 の 間 か ら 、 真 っ 赤 な 陽が 射
か わ も
し 込み、川 面 は ル ビ ー を ち り ば め た よ う だ っ た 。
振り返って ホテルに目 をやると玄 関先で調査 団の人たち と話をして いる石澤先 生
の姿があった。話が終わったらしいので、手を大きく上げて振った。気がつかない。
も
大声で﹁石澤先生!﹂と 叫んだ。気がついた。ニコッと笑 みを漏らし、 車をやり過
ご して か ら 、 道 路を 渡 っ て こ ち ら に 向 か っ て き た 。
﹁すっかりご無沙汰しております。来てし
まいました﹂
﹁やあ、本当によくいらっしゃいました。
空 港 に 寄っ た の です が 、 行き 違 い にな っ て
しまいま した ﹂
﹁申し訳ありません。気まぐれなもので、
ご 迷 惑を お か け して しま い ︱ ︱ ﹂
﹁ 今 回 は 、お 一人 で す か ﹂
﹁ええ、もう完全な一人旅です。米国 から
帰ってきたばかりで、ちょっと迷ったんで
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す が、来て し まいま した ﹂
﹁ 身 体、 大丈 夫です か ﹂
﹁ 暖かい ので 具合は 良さ そうです。 いい気候ですね﹂
一通り の挨拶が終わると、二人と もベンチに 座って話 し 込み始めて いた。ホテ ル
の女性が 紅茶を運んできた。絶妙のタイミング だ。﹁うち のところでアルバイト も
している子な んです ﹂と 先生が説 明 する。
そ して ﹁ こ れ か ら ど う しま し ょ う か ﹂ と 滞 在 時 の 予 定 を 聞 く の で 、 ﹁ と く に 考 え
ていません。ただ、暖かいところで、のんびりと遺跡の散策さえ出来れば十分です﹂
と 答え る と 、 ニ ッ コ と し て ﹁ じ ゃ あ 、 そ う し ま し ょ う ﹂ と い う こ と で 、 体 調 に 応 じ
て 適当に やる こと に なっ た。
ア ン コ ール ・ ワ ット の ブ ラブ ラ 歩 き
アンコール・ワットやアンコール・トム
などの遺跡群を見るのも二度目のことも
あって、気分的に落ち着いてゆっくりと遺
跡群を楽 しむ ことが 出来 た。ア ンコ ール・
ワットやバイヨンの壁画は、先生と話しな
がら、のんびり見て回ると、歴史の流れを
旅しているような気分になって厭きるこ
と がない。
午前中の散策が終わると、昼食をとりな
がらアンコール・ビールを飲む。これが実
に美味い。で、先生たちが手掛けているバ
ンテアイ・クデイの発掘調査やアンコー
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ル・ワッ トの 表参道の修復から始ま り、とりと めもなく話 は続く。その後はホテ ル
で小休止。午後三時ごろから、また出掛ける。六時ごろには夕食。またアンコール・
ビールを 飲みながら話し、九時ごろまでにはホテルに戻って休む。昼 食、夕食を ど
こで食べるかが大きな課 題。その繰り返しの贅沢な日々だった。
贅沢な日々を過ごしている
と、日々、新たな驚きがあった。
タ・プロームのガジュマラの巨
木と石の建物の攻めあいを眼
前にすると圧倒され、バンテア
イ・スレイの女神にはアンド
レ・マルローのように引き込ま
れそうになる。何の変哲もない
バンテアイ・クデイの参道を歩
いていてもウキウキとなる。プ
レ・ループの頂上から風に当た
りながら広大な平原を見てい
ると太古の世界に迷い込んだ
よ うな 気 分に な る。
あげだ した ら切りがな い。 一連の遺 跡を見た ら仕 上げは、やっぱり プノン・バ ケ
ン だろう。高さ約六〇メートルの自 然の丘の上の寺院だ。 ここからの眺望と夕日 は
最 高だろ う。
﹁ ち ょ っ と 大変 で す が 、 上ま で い き まし ょ う か ﹂ と 誘わ れ れ ば 、 断 る 理 由 な ど な
い 。人 影もま ばらな道を のん びりと 登った。普 段は身 軽に 登る先生も 、今回は僕 の
体 調を 気 遣 っ て ペ ー スを 落 と して く れて い る 。 それ で 何 と か 先 生 に 付 い て い く こ と
が できた 。
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ようやく頂 上にたどり 着いたとき には、僕た ち 二人の姿 しかなかっ た。アンコ ー
ル・ワットが森の海に浮かび上がって見えた。カバンからペットボトルを取り出し、
水を飲ん だ。真っ赤な大きな太陽が地平線に沈み始めた。存在は無限の宇宙の営 み
伴
友貴
の 一部にすぎないということを自然に思った。 体調もいつ の間にか見違えるほど 回
復 して い た 。
一九九八 年冬
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