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個人が, 一定の行動空間の中で, 物的人的環境と相互作用しつつ, 自己の

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個人が, 一定の行動空間の中で, 物的人的環境と相互作用しつつ, 自己の
中国短大紀要第:11号(1980)
座席行動の研究(II)
教室内の座席行動と性格特性
北川歳昭
問
題
個人が,一定の行動空間の中で,物的人的環境と相互作用しつつ,自己の意志で着席位置を
選択し決定する心理的行動的過程を「座席行動(seating behavior)」と呼ぶ。座席行動は,空
間行動(spatial behavior)ないしプロクセミックスに含まれるが,その行動空間が椅子(座
席)の存在によって限定性をもっていること,すなわち,椅子の数・配置間隔・向きなどによ
って空間位置の選択の自由度が制約されていることが座席行動の特徴であるといえる。
授業時の着席位置を任意に選択できる大学の教室はまさに典型的な座席行動空間である。教
室内の座席位置が学生の心理を知る上での重要な手掛りになることを,注意深い教師ならば経
験的によく知っているものである。しかし,教室での座席行動についての規定要因や一般的法
則の解明をめざした実証的な研究は少ない。
平尾ら(1964)は,講堂での授業における医学部学生の座席位置を2ヵ月間追跡し,全体の
座席分布に対する各学生の位置や移動の特徴から,座席行動の個体差の類型化を試みた。さら
に,少数例ではあるが,この類型と学業成績,個人的事情やパーソナリティー,その後の分裂
病発病との問に関連性のあることを指摘している。
また,同じ研究文脈の中で,深沢ら(1965)は,講堂での音楽療法に参加した精神病患者の
座席位置を1年間追跡し,座席行動の類型と症状との対応,看護学生や医学生との比較による
分裂病患者の座席行動の特徴を見出した。
ソマー(1972,pp 185−197)は,座席行動と討論への参加に関連性があることをいくつかの
資料を示して主張している。すなわち,①セミナー室での□字形テーブルに対する座席位置と
発言回数では,教師に対面して座っている学生の方が横の席に座っている学生より自発的発言
回数が多い,②伝統的な並列座席配置(straight−row arrangements)の教室では,前列の学生
は後方の学生より参加状態がよく,討論の多さと教師への近さとの間には直線的な相関がある,
③教室を中央部と側面部に分けた場合,中央の学生は側面の学生よりも参加状態がよい,④最
前列は敬遠され気味である,などである。
以上は,渋谷(1975)による空間行動研究法の分類でいうならば現場調査研究に相当するが,
座席行動に関した実験室的研究は多くなされてきた。
Cook(1970)は,学生と一般人に対し,いろいろな社会的事態の場合,2人の人物が長方形
または円形の机に対してどのような位置に座るかを推測させ,2人の社会的関係や事態によっ
て座席位置を変えることを見出した。ソマー(1972,pp 104−109)も同様の実験を大学生と児
童に試み,2人の座席位置の推測には被験者の年令差や性差が関るとしている。中園(1970)
は,看護学生を対象にpaper−pencil test法によって,選択する座席の位置と向きが対人関係の
種類によって異なること,被験者の性格類型(Y−G性格検査使用)と選択する座席位置と関
一32一
りをもっていることを見出している。
さて,前報告(北川,1978)で考察したように,教室内での座席行動の場合,教師一人対学
生集団という場面ではあるが,各学生の座席位置を,その学生が教師との問におく対人距離(in
ter−personal distance)ないしspacingの行動的表現,とみなすこともできる。
一方,対人距離や個人空間(personal space)が,その個人のパーソナリティー要因に規定
されていることを示唆した研究はいくつかある(Evans&Howard,1973;渋谷,1975)。
ソマー(1972,pp 51−53)によると,①内向的な学生は外向的な学生よりも距離を大きくお
いて対話しまうとし,②緊張を強いられる教示をうけた学生は教師から遠くに座ろうとし,内
向的で不安をもった者もより遠くに座ろうとする,また,③分裂病患者は一般に自分と他人と
の距離をより大きくとる,という。
田中(1973)は,内向群が外向群よりも,個人空間のすべての方向で大きな対人距離をとり,
その差は特に正面方向で大きいことを見出している。
座席行動の規定要因を探索する上でも,教室の座席位置が教師との対人距離に還元できるか
否かを検証する意味でも,座席行動と性格特性との関係を吟味することは意義が大きいと考え
られる。
そこで,本稿では,教室内での学生の座席行動が座席位置に対する好悪感情と一致している
ことを確めるとともに,Y−G性格検査を用いて性格特性との関連について吟味した調査の結
果を報告する。
方
法
〔1〕調査の対象と時期
短大保育科1年生3クラス188名(全員女子)に対して,矢田部・ギルフォード性格検査を
1978年7・9月に,「座席行動調査」を同年12月に実施した。そのうち,資料が完全であった161
名について集計と分析を行なった。
〔2〕座席行動調査
クラス単位(講義形式)の授業の時の座席位置について質問した。質問項目は,①「あなた
の座席位置はよく動く方ですか」(7段階の自己評定をさせた),②「あなたがいつも座ってい
る座席(どちらかといえば座る回数の多い座席)はどこですか」(通常位置),③「教室にまだ
だれも座っていないとしたら,あなたはどこに座りたいですか」(希望位置),④「一番座りた
くない席はどこですか」(忌避位置),⑤「クラスで一番仲の良い友人がいつも座ってレ・る座席
はどこですか」(友人位置),などであった。②∼⑤の質問に対しては,図1のように教室の座
席位置を7×7の49区画に分け,その中から各1区画のみを座席区画番号で答えさせた。(なお,
以後は,「前後区画列」を前後列(front−rear row),「左右区画列」を左右列(right−left col−
umn)と略称する。)
〔3〕教室の状況
学生の使用する教室のほとんどは教卓に向って左側が南で,入口は左側の前後にあった。教
室の定員(座席数)は70∼100名であり,座席の配置は全て並列配置で教卓と対面していた。座
席の決定は学生の任意であった。
一33一
囲
各前後区
画列の計
左右区画列
前
後
区
画
列
各左右区
画列の計
17
16
[5
14
13
12
@ (2)
@ ①
@ (1)
@ (1>
@ (2)
@ (2)
27
26
25
24
23
22
@
@
@
@
@
@
(1)
(9)
(11)
(6)
(1①
ll
(0)
(9)
21
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@
2・
(2)
37
36
35
34
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32
31
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@
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@
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@
47
46
45
44
43
42
41
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@ (5
@
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57
56
55
54
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64
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@
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@
77
76
75
74
73
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@
@
・7 ・6 ・5
㈲
㈱
㈹
(8)
(5)
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(7)
(1)
(3)
(3)
(1)
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(1)
・3
・4
⑳
(5)
(6)
52
51
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3・
働
(2)
4・
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7・
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弓
⑳
1・
(11)
(2)
国
当量 座席区画番号(11∼77)による座席位置の表示および各区画への通常位置選択者数
結
果
〔1〕相関係数と有意性検定について
座席行動各指標相互の相関係数を表1,座席行動指標とY−G検査による因子得点・系統値
との間の相関係数を表2に示す。
前後性(f)とは,座席位置が前寄りか後寄りかを表す指標で,最前列を1。0,最後列を7.0
に重みづけしている。前後両端性(fs)とは,その座席が前後方向の中間からどの程度離れて
いるかを表し,各個人の前後性から前後性の全体平均値を引いた値の絶対値である。左右性(r)
とは,左寄りか右寄りかを表し,左端列’を7.0,右端列を1.0に重みづけている。左右両端性(rs)
とは,左右方向での中間からの距離を表し,各個人の左右性から左右性の全体平均値を引いた
値の絶対値である。移動性(Sh)については,「よく動く」を7.0,「きまっていて動かない」を
1.0に重みづけしている。
相関係数の有意性の検定はt値変換によった(肥田野ら,1961)。全般的に相関係数値は低い
が,自由度が大きいため(df=159),「無相関とはいえない」という意味での有意性は得るこ
とができた。
〔2〕座席行動指標について
(1)通常位置
通常位置(U)の選択分布(図1,図2・U)は,前報告(北川,1978)と同じく,教室の
四隅が少なく,前寄り中央部に最:も多くなっている。この分布図で注目したいのは,その分布
に3つのピークがあることである。左右方向への投影図(図3)をみると,左右の中央にV字
形の落ち込みのある二峰形の分布になっていることがわかる。
一34一
表1 座席行動指標相互の相関表
座席移動性
@ (Sh>
通常位置
@(Uf)
位
@(Ufs)
置
左
.14d掌)
唯
黶D166
右
.029
.051
.059
一.044
.051
左右両端性(Urs)
.085
.029
一.126
一.018
前 後 性(Pf)
零零零
D481
.70げ**
一.004
一.039
一,022
@(Urs)
一.044
左 右 性(Ur)
前後両端性(Pfs)
左右両端性
性
@(Ur)
.146率)
S19
前 後 性(Uf)
常
前後両端性
宰ホ*
前後両端性(Ufs)
希望位置
通
前 後 性
.57げ事宰
.127
一.126
一.018
.17ぎ
..009
.000
.59δ纏
左 右 性(Pr)
.036
一.048
左右両端性(Prs)
.070
.074
前 後 性(Af)
∴25デ宰*
一.34f宰*
.100
.019
一.O19
前後両端性(Afs)
一.19♂
一ユ9ず
.044
.073
一.061
左 右 性(Ar)
一.103
.035
.019
.034
一.085
_.24δ*
.1ガ
一.057
.083
一。064
(卓〕一.144
忌避位置
左右両端性(Ars)
友人位置
ω一.142
孝‡‡
D340
前 後 性(Ff)
前後両端性(Ffs)
左 右 性(Fr)
左右両端性(Frs)
〔寧)
.82才**
一35げ料
D143
,69ざ**
.000
一.118
.098
一.046
一.022
一.017
.041
通常と忌避の距離(D−UA)
一.16♂
通常と友人の距離(D−UF)
零
黶D159
.28ゴ零
㈲一.151
.004
一17ぎ
.097
.77f*傘
一.070
.44δ宰ホ
一.097
22ず宰
.026
.112
率零*
D407
一.041
.111
.049
一.053
.22♂寧
一.045
〔*)p〈.1 *p〈.05 **pく.01
一.28‘躰
一.059
一.34δ**
通常と希望の距離(D−UP)
‡零寧
D555
一.062
宰**p<.001
② 希望位置
希望位置(P)の分布(図2・P)は,通常位置の分布に類似しており,左右方向では二峰形
を示すが(図3),通常位置より前寄り左右中央寄りに若干集中する傾向がある。
個々の学生についてみると,通常位麗と希望位置とは一致度が高く,完全一致の者が32,9%,
一区画以内の差の者は70.2%であり,両者の相関係数は非常に高い(表1)。学生は自分の希望
どおりの席に通常座っている,と考えてよいだろう。
また,表1より,通常,左右の中央に座っている者は前列を希望し,左右の端に座っている
囲
囲
國
ロ…・一・…
國…2・5一・・9%
圏・一5・・一…%
翻…・・5一…%
■…1・.・%以上
(u)
(P)
(A)
図2 通常位置(U),希望位置(P),忌避位置(A)の選択分布
一35一
50
40
選
者は後列を希望している傾向がみられることに
注目しておきたい([Urs×Pf]:.178)。
A
(3) 忌避i位置
30
択
10
忌避位置(A)は,特徴的な分布を・しており
A
率20
(図2・A,図3),最:前列,最:後列,左端列,右
u
呂
P
%
o
・7 ・6
左←
端列および左右中央列の5列による6交点に分
り5
・4
・3
布が集中している。
・2 ・1
→右
通常位置と忌避位置の問にはかなりはっきり
図3 左右列に投影した通常位置(U),希望位置(P),
した負の相関がみられる(表1)、,前列に座って
忌避位置(A)の選択率
いる者は後列を避け,後列者は前列を避ける。
左右端踏篭は左右中央を避け,左右中央に座っている者は左右端列を避ける傾向が強い。
他に,後列者ほど左右中央を避け([Uf×Ars]:一.240),前後中央列者は左右中央を避ける
([Ufs×Arsコ:.177)などの傾向もみられる。
(4)友人位置
クラスで一番仲の良い友人の位置(F)は本人の通常位置にきわめて近く,両者は高い相関
を示す(表1)。通常位置と友人位置が同一区画の者は9.3%にすぎないが,両者の差が一区画
以内の者は90.7%にのぼり,さらに,一区画以内の差で同一前後列である者は85.1%である。
すなわち,通常位置と友人位置とは前後方向での一致度が特に高く,仲の良い友人とは隣りに
並んで座っていることがわかる。
(5)通常位置と希望位置・忌避位置との差
各個人における通常位置と希望位置の差(D・UP)と通常位置と忌避位置の差(D−UA)を
指標にしてみる(表1)。通常位置と希望.位置が一致しているのは前列で,後列ほど差が大きく
なる([Uf×D−UP]∴283)。また,通常位置と忌避位置の差が大きいものは前列で後列ほど
差が小さい傾向がわずかにある([Uf×D−UA]:一.151)。
(6)座席移動性
座席の移動性(Sh)については,前列ほど小さく後列ほど大きい([Uf×Sh]:.419)。 ま
た,最前列と最後列が小さい傾向もみられる([Ufs×Sh]:一。166)。通常位量と友人位置の
差が大きい者ほど移動性が小さい傾向もややみられる([D−UF×Sh]:一.159)。
〔3〕座席行動指標と性格特性の関連について
(1)性格因子得点
座席行動指標と各因子得点(粗点)との間の相関係数を表2に,前後列・左右列に投影した
各因子得点平均値を図4および図5に示す。
各因子について,次のような関係が見出された。
D因子(抑うつ性)…前列者ほど低く,高列者ほど高い(P〈,01)。左右中央聖者は低く,左
右端列者ほど高い傾向がある(p〈.1)。D得点の高い者ほど移動性が大きい(p〈.01)。
C因子(回帰性傾向)…前列者ほど低く,後列者ほど高い(p〈.05)。
1因子(劣等感の強さ)…後列者ほどやや高い傾向がある (p〈.1)。1得点の高い者ほど移動
性が大きい傾向がある(P〈.1)。
N因子(神経質)…前列者ほど低く,後列者ほど高い(P<.05)。
0因子(主観性)…前列者ほど低く,後列者ほど高い(p<.05)。
Co因子(非協調性)…最前列者が特に低く,後列者ほどやや高い傾向がある(p〈.ユ)。また,
左右中央列者は低く,左右端列者ほど高い(p〈.01)。
一36一
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→後
0
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・5
・4
・2
・3
左一
・1
→右
図4 前後列・左右列に投影した性格因子得点(1)
Ag因子(愛想の悪いこと,攻撃性)…前列者ほど低く,後列者ほど高い(p〈.05)。
G因子(一般的活動性)…左右両端がやや低い傾向がある(ただし,p>11)。
R因子(のんきさ,衝動性)…後列者ほど高いが(pぐ1),前後端列者ほどやや高い傾向も
みられる(ただし,p>.1)。
T因子(思考的外向)…前列者ほどやや高く,後列者ほど低い傾向がある(ただし,p>.1)。
左右方向では,両端と中央列に位置する者が高いW字形の曲線を描いている。
A因子(支配性)…前後両端者がやや高い傾向があるが(ただし,P>.1),左右方向では右肖
者ほどやや高い傾向がある(ただし,p>.1)。
S因子(社会的外向)…前後両端者が高く,前後中央列ほど低い(pく.05)。左右中央漁者が
高く,左右端列者ほど低い(P〈.05)。
16.0
S
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左←
→右
図5 前後列・奉右列に投影した性格因子得点②
(2)座席位置と不安定性・積極性
性格因子得点について,D, C,1, N,0, Coの6因子を高次の「不安定性」, Ag, G, R,
一38一
T,A, Sの6因子を高次の「積極性」としてまとめ(辻岡,1974),その平均値を各列毎に
算出する(図6)。
図6より,次のことが結論される。①不安定性と座席の前後はほぼ直線的な関係にあり,前
列者ほど安定的,後列者ほど不安定的である。②不安定性と座席の左右はひ字形またはV字形
の関係にあり,左右中央三者は安定的で,左右端軟綱が不安定的で,左右最端列に位置する者
は再びやや安定的である。③積極性と座席の前後は,最後列を除けば,U字形関係をなし,前
後の中間には消極的な者が位置するが,前後の端に近い位置には積極的な者が多い。④積極性
と座席の左右はなだらかな逆U字形の曲線をなし,左右中央適者が積極的であり,左右端列者
ほど消極的である。
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図6 前後列・左右列に投影した不安定性(D,C,1, N,0, Co)
と積極性(Ag, G, R, T, A, S)の平均値
(3)座席位置とY−Gプロフィールによる系統値
図7は,前後列・左右列に投影した各系統値である。表2より各系統値と座席行動指標の間
に有意な相引が得られたものを列挙する。
①A系統値:前列者は小さく,後列者ほど大きい(p<.05)。
②B系統値:前列者は小さく,後列者ほど大きい(P〈.05)。
③C系統値:前列者ほど大きく,後列者ほど小さい(p〈.001)。
④D系統値1前列者ほど大きく,後列者ほど小さい傾向がある(P〈.1)。
⑤E系統値:左右中央の者は小さく,左右両端ほど大きい(p〈.05)。
また,C系統値の高い者ほど移動性がやや小さい傾向がある(p〈.1)。
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∠一’6’5’4『3.2一岩
図7 前後列・左右列に投影したY−Gプロフィール系統値
一39一
’8
窪
(4)座席位置とY−Gプロフィール
①前後方向
図8は,第2,4,6前後列の平均プロフィールである。前列から後列になるにつれ,右下
り型から右寄り型へ移行する傾向がある。この変化は,主に,情緒不安定因子(D,C,1, N)
と不適応因子(0,Co)の得点が後列ほど大きいことによる変化である。
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第2前後列(㏄),第4前後列(②一②),第6前後列(●一●)のプロフィール
図8
図9は,最前列と最後列のプロフィールである。両者の座席位置は極端に離れてはいるが,
情緒的安定性についてはほとんど差がなく,外向性を示す因子(R,T, A, S)に差がある。
ただし,最前列は9名,最後列は2名の資料である。
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図9 第1前後列(⊂〉≒○)と第7前後列(●一●)のプロフィール
②左右方向
図10は,左端列,左右中央列,右端列のプロフィールである。両端列はよく類似して平均型
であるのに対し,中央列は右下り型的である。
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第1左右列(○一〇),第4左右列(㊧一㊧),第7左右列(●一●)のプロフィール
(5)性格類型典型者の座席位置
性格類型が典型又は準型と判定された学生の座席位置を前後方向,左右方向で集計する(表
3)Q
前後方向では,D型(安定積極型)は前寄りに分布し, B型(不安定積極型)は前後中央よ
りやや後寄りに分布し,C型(安定消極型)とE型(不安定消極型)は最前列を避けながら前
寄りに位置している。
左右方向では,D型が中央列に多い分布をなすのに対し, B型の分布は中央列と左右端列を
避けた分布を示し,E型もB型と同様の分布を示すが, C型は左端に偏っている。
表3 性格類型典型・準典型者の座席位置(前後列,左右列に投影した人数)
不 安 定
チ 極 型
最前列
1・
↑2●
安
定
チ 極 型
(E.E型)
(C,C型)
0
0
平 均 型
(A,A’型)
0
不 安 定「
安
マ 極 型
マ 極 型
定
(B.B’型)
(D,D’型)
2 (33.3)
4 (66.7)
計
6人 (100%)
3 (ll.1>
3 (1L1)
3 (11,1)
3 (11,1)
15 (55,6)
27
(100%)
1
(3.8)
1
(3.8)
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4 (15、4)
14 (53,8〕
26
(100%)
4・
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(9.5>
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(100%〉
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(100%)
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0
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(100%)
最後列7・
0
0
0
0
0
0
左端列
3
o
1 (ユ2,5)
4
3・
(23.1)
・7
o
・6
2 (13.3)
2 (13.3)
1
(6.7)
4 (26,7)
6 (40,0>
15
(100%)
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0
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(20.0)
6 (30.0)
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(100%)
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0
2 (16.7)
1 (8.3)
9 (75.0)
12 .(100%)
・3
2
0
0
5 (22.7)
15 (682>
22
(37.5)
(50,0)
8人 (100%)
9
右端列
計
(9,1)
(40.o)
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0
3 (18,8)
7 (43,8)
6
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0
0
2 (33.3)
2 (33.3)
2 (33.3>
12 (12,1)
26 (26,3)
50 (50.5)
6
(6,1)
5
(5,1>
一41
(37.5)
(100%)
16
(100%)
6
(100%)
99人 (100%)
考
察
〔1〕通常位置の分布特徴
今回の調査で,左右方向に二峰形の分布が得られた。このような分布形は,平尾ら(1964),
深沢ら(1965)と共通している。
前回の調査(北川,1978)では二峰形分布が得られなかったので,今回,座席区画を5×5
から7×7へときめ細かくしたことによって表出してきた分布特徴と考えられる。その左右中
央にある分布の落ち込みは,左右中央通が忌避位置として集中的に選択されていることと表裏
の関係にある。
では,なぜ左右中央列が忌避されるのだろうか。物理的理由としては,左右中央列からは黒
板が教師の陰になって見えにくいことがあるが,心理的理由としては,教師と正面位置になる
ため,教師からの刺激が強すぎる(例えば,eye−contactの機会が多すぎる)ことが考えられ
る。後者の理由の間接的な証拠としては,左右中央癖者には,教師からの強い刺激にも耐える
ことのできると考えられる安定積極的なD型的性格が多いことがあげられよう。
左右中央列忌避の傾向は,四隅忌避の傾向とともに,教室における座席分布の一般的特徴と
考えてよいのではないだろうか。
座席分布は,必ずしも左右相称形になっていない。他にも同様の左右非相称がみられた。①
忌避位置として左端列の方が右端列よりも多く選択された。②左端列者の方が右端列者よりも
移動性が大きい。③不安定性因子(D,C, N,0, Co)の得点は,左端列者の方が右端列者よ
りも高い。④積極性因子では,G, R因子の得点が右端列者より左端列者の方が高く,Ag, A
因子は逆に左端導者よりも右端列者の方が高い得点を示す。⑤性格類型典型者の座席位置では,
C型,E型の者が左下に偏る。これらの現象の一般性や原因は今のところ分らないが,座席行
動の左右非相称性として注目しておきたい。
〔2〕座席位置に対する好悪感情
教室の座席位置に対して学生は明確な好悪感情をもっている。その好悪感情には個人差があ
るとしても,各々の好悪感情に比較的忠実に従って着席位置を選択・決定しているといえよう。
このことは,学生の心理が座席行動に素直に表現されているという主張をさらに強める証拠で
ある。
座席位置の決定には,座席位置への好悪感情,すなわち,「正の指向性(あの席に座りたい)」
とともに「負の指向性(あの席には座りたくない)」が働いていることが分ったが,負の指向性
については,これまでの座席行動研究では言及されていない。忌避位置に個人差が明瞭に表れ
ることから,座席行動の規定因としての負の指向性の重要さを指摘しておきたい。
希望位置と忌避位置の問の関係をみると(表4),正負の指向性には一定の対応関係のあるこ
とがわかる。特に,前列希望者ほど左右端列を忌避し,後列希望者ほど左右中央列を忌避する
こと([Pf×Arc]:一.300)は,通常位置と希望位置の問,性格特性と座席位置の問にみら
れた関係と共通している。これらの関係は,座席位置のもつ情緒的な意味の共通部分の広がり
が,前後列又は左右列のような一次元上から,前列と左右中央列,後列と左右端列のような二
次元上に及びうることを示唆している。
〔3〕友人位置について
仲の良い友人とは横に並んで授業をうける。親和的で心理的に接近し合う者同志が空間的に
も近くに位置することは容易に理解できるが,教室の座席では,なぜ前後に位置せずに左右に
並ぶのであろうか。
一42一
表4 希望位置と忌避位置の相関表
希
前 後 性
@(Pf)
望
位
前後両端性
@(Pfs)
置
左 右 性
@(Pr)
左右両端性
@(Prs)
前 後 性(Af)
一.406騨’
一.010
一.023
一.130〔寧)
前後両端性(Afs)
一.321日傘
.022
一.003
一.199電
左 右 性(Ar)
一.033
一.002
一.028
一.035
左右両端性(Ars>
一.300鱒寧
.050
一.050
一.294喀弊
1*〕P〈.1
o
*P〈.05
***pく.001
渋谷(1978)に従って考察してみよう。個人空間は,個体の身体をその中心とした4つの層
から構成され,前方に広く,両側方から後方にかけて密になる卵型をしている。もし,2人が
並んで座っているとすれば,個人空聞の軸の方向は互いに平行になり,2人は空間的に接近し
ていても,両者の個人空間は比較的外側の層が重なっているにすぎないことになる。そのため,
通常,両者は互いの心理的交渉に気を煩わすことなく授業に集中することもできるが,また一
方,両者は体(顔)の向きを少し変えるだけで,「親密空間」(渋谷,1978)を重ね,きわめて
親密な交渉をすることも可能なのである。
このように,横に隣り合う座り方は,親しい者同志(親しくなる可能性のある者同志)が,
空間的移動や体の向きを大きく変えることなく,親密な交渉と没交渉とをコントロールするの
に非常に都合がよいことになる。
Cook(1970)によれば,2人目隣り合う位置を選択するのは,協同作業場面であり,また,
社会的関係では,ボーイ(ガール)フレンドと一緒に座る場合であるという。ソマー(1972)
も,同様に,隣り合う位置は協力活動の時に選択され,その理由は,物の受け渡しが容易であ
るから,としている。教室における授業場面も,協同作業場面と共通性があると考えられる。
「さらに,ソマーによれば,女子は男子よりも隣…り合う席を選ぶことが多いという。Evans(19
73)も,これまでのpersonal space研究を概観して, personal spaceには性差があり,対人
距離の大きさは,男女,女女,男男の順に大きくなる,とまとめている。教室の座席行動にも
性差があるのかもしれない。
〔4〕座席行動と性格特性について
相関係数は必ずしも高くないが,座席移動性および通常位置と性格特性の間に有意な相関関
係を見出したと結論できるであろう。
前列ほど,また,左右中央列ほど安定積極的な学生が位置している,という調査結果は,座
席位置を教師への対人距離に還元できるという主張を支持する。前列の学生ほど,同一前後列
ならば左右中央列の学生ほど教師との対人距離が近いといえるからである。
しかし,上の主張は全面的に支持されたわけではない。積極性の6因子については,座席の
前後と因子得点の関係は直線的とはいえないからである(図6)。特にS因子(社会的外向)は,
前列者とともに後列者も得点が高いU字形の曲線を描いている(R,T, A因子も同様の傾向
を示す,図5)。
議論をS因子に代表させて進めると,教室の前半の学生については,座席の前後と外向性と
は確かに直線的関係(前列ほど外向的)にあり,これまでの向性と対人距離についての研究結
果を支持する。しかし,教室の後半については,その関係は逆転しており(後列ほど外向的),
いままでの知見と矛盾する。
一43一
70∼100名定貝の比較的大きな教室で,しかも空席がある場合,教室の後半部は教師からの
距離が3∼4m以上あり,ホール(1970)の「公衆距離」に相当する。教師との距離が公衆距
離ほど大きい後列の学生にとって,教師は個人的な心理的交渉の対象となりにくい,あるいは,
教師との問に公衆距離を保とうとする後列の学生は個人的交渉の対象として教師を選んでいな
い,といえるのではないだろうか。
すなわち,教室の前半部の学生にとって外向的態度を向ける対象は教師であるかもしれない
が,後半部の学生にとってその対象は教師ではなく友人なのではないだろうか。外向性の高い
学生は,その外向性を教師に向ける場合は,できるだけ前列に位置して,教師との対人距離を
小さく保とうとするが,外向性を友人に向ける場合は,できるだけ後列に座って教師からの刺
激を少なくし,友人との友情を確認し合うのではないだろうか。
今回の調査では,外向性が情緒安定性と結びついた時に教師との対人距離を小さくするが,
情緒不安定性と結びついた時には教師との距離をむしろ大きくとる,という結論を得た。この
ように,ある性格因子が座席位置と直線的な関係になるか否かは,その性格因子と他の性格因
子や他の要因,例えば,教室の広さ,学生灘,教師の魅力,学生の授業への興味や学習意欲な
どとの相対的な関係に依存しているのではないかと考えられる。
要
約
教室内の座席行動と性格との関係を調べるため,短大生に座席行動調査とY一一G性格検査を
実施した。得られた結果は次のとおりである。
1.通常位置,希望位置の分布に,左右中央列の落ち込みがある。
2.通常位置は,座席位置への好悪感情に従って選択されている。
3.友人位置と通常位置は,前後方向での一致度が高い。
4.前列ほど,前後端列ほど座席の移動性が小さい。
5.座席位置と性格特性の関係
①座席の前後方向では,不安定性と直線的関係にあり,前列ほど安定的であり後列ほど不
安定的である。積極性とはU字形的関係で,前寄りほど,また,後寄りほど積極的であり.
前後の中央は消極的である。
②座席の左右方向では,不安定性とひ字形的関係にあり,左右中央列が安定的,左右最端
列がやや安定的である。積極性とは逆U字形の関係で,左右中央列ほど積極的で,左右端
列ほど消極的である。
6.性格類型典型者の座席位置をみると,D型(安定積極型)は,前寄り,左右中央寄りに
分布し,B型(不安定積極型)は,その分布がD型よりやや後寄りで,左右中央列と左右
最早列を避けて位置する傾向があり,C型(安定消極型)とE型(不安定消極型)は,
最前列・左右中央列を避けて耳寄りに位置する傾向がある。
付
記
本研究の統計処理には岡山理科大学情報処理センターの大型計算機を使用させていただいた。
使用を許可して下さった塚本幸雄センター所長,いろいろと便宜をはかって下さった永谷雄生
業務課長はじめ職員の皆様にお礼申し上げます。また,プログラム作成でアドバイスをいただ
いた小林清美さんに感謝します。
一44一
引 用 文 献
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一45一
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