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職員名簿・職員懲戒処分に関する文書の部分公開決定処分

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職員名簿・職員懲戒処分に関する文書の部分公開決定処分
(諮問第 81 号)
渋谷区職員名簿及び職員懲戒処分に関する文書の一部非公開決定に係る
異議申立てに対する個人情報の保護及び情報公開審査会の答申
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審査会の結論
渋谷区職員名簿を一部非公開とした決定は妥当である。
職員懲戒処分に関する文書を一部非公開とした決定のうち、懲戒分限審査
委員会委員の職名に係る部分は公開すべきである。
なお、職員名簿については、登載されている情報を可能な限り提供すべき
である旨を付言する。
2 異議申立て及び審査の経緯
1) 本件の異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成 26 年 10 月 28 日、
渋谷区情報公開条例(以下「条例」という。)8 条 1 項に基づき、条例の
実施機関である渋谷区長(以下「実施機関」または「区長」という。)に
対し、 (1)渋谷区職員名簿 (2)平成 21 年度から平成 25 年度の職員懲戒
処分に関する行政文書全てについて、公開請求を行った。
2) 実施機関は、同年 12 月 10 日付けで、(1)渋谷区職員名簿については管
理職職員部分のみを公開し、(2)平成 21 年度から平成 25 年度の職員懲
戒処分に関する行政文書全てについては、該当文書を①渋谷区職員懲戒
分限審査委員会への諮問に関する文書②渋谷区職員懲戒分限審査委員
会の審査の過程に関する文書③懲戒処分の決定に関する文書であると
特定し、①②に関しては全面非公開、③に関しては一部公開する決定を
行った。
非公開の理由は、(1)渋谷区職員名簿については個人情報(条例 6 条 2
号)に該当するため、(2)職員懲戒処分に関する行政文書については、
個人情報(条例 6 条 2 号)、服務及び事故監察における調査を不当に阻
害するおそれ(条例 6 条 6 号ウ)、公正かつ円滑な人事の確保に支障を
及ぼすおそれ(条例 6 条 6 号エ)である。
3) 申立人は、平成 27 年 2 月 6 日付けで、全面公開を求めて、区長に異議
申立てを行った。
4) 同年 4 月 2 日付けで、実施機関から理由説明書が提出された。
5) 同年 4 月 20 日付けで、申立人から意見書が提出された。
6) 平成 28 年 5 月 16 日、実施機関からの意見聴取が実施された。
7) 同年 6 月 9 日、申立人の口頭意見陳述が実施された。
3 申立人の主張
(1)職員名簿
国、都、他市区が一般職も含めて職員名簿を公開しているにもかかわらず
渋谷区がこれを非公開とするのは違法である。当該名簿は区議会議員全員に
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配布しているから、慣行として公にされている情報に該当する。当該情報を
公開した場合に発生する職員の権利利益侵害について、具体的危険性が明ら
かにされていない。
(2)職員懲戒処分に関する文書
懲戒分限審査委員会委員等の個人名も一律に全て非公開はあり得ないの
で、一部公開できるものは公開すべきである。
職員の印影は、公務員等の職務に関して押捺されたものであるから、公務
員等の職務に関する情報となり非公開情報とされないものであり、当該職員
の生活若しくは財産に不利益を及ぼさないから、公開すべきである。
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実施機関の主張
(1)職員名簿
条例 6 条 2 号(イ)は「公務員等の職務の遂行に係る情報」を「個人情報」
から除外して公開すべき情報としているが、本件文書は、直接、公務員の具
体的な職務遂行に係る情報とはいえない。
確かに、職員名簿を議会活動の一助として区議会議員に配布しているが、
特別職地方公務員としての区議会議員に、内部用に作成した「取扱注意文書」
として配布したものであり、これをもって慣行として公にされているとはい
えない。
他区の公開非公開の判断と渋谷区の判断は異なりうるのであり、他区にお
いて職員名簿を公開していることが、渋谷区においてもこれを公開するべき
根拠とはならない。
職員名簿の公開については、名簿業者への転売を含む個人情報の売買の危
険性、勧誘業者が利用する可能性に鑑み、公務への支障と職員の権利利益保
護の観点から慎重な対応が必要である。
(2)職員懲戒処分に関する文書
本件文書は、懲戒に係る事故に関する諸情報が密接に関係した一体の情報
を構成しているため、「非公開情報に係る部分を容易に区分して取り除くこ
と(条例 7 条)」は困難である。懲戒分限審査委員会委員の氏名等も含めて
非公開と判断した。
懲戒分限審査委員会委員に当たる役職名は渋谷区のホームページで閲覧
可能であり、今回公開した職員名簿の管理職部分と照らし合わせると委員の
氏名は分かるため、委員の氏名そのものを非公開としているわけではない。
5 審査会の判断
(1)職員名簿について
本件の対象文書である職員名簿は、渋谷区職員及び関連団体職員の氏名が
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所属毎に職層、職種とともに記載されたものである。実施機関は、このうち
渋谷区職員の管理職の情報のみを公開し、それ以外を非公開とした。その理
由として、実施機関は、当該情報が行政処分その他公権力の行使に係る情報
や職務としての会議への出席に関する情報のような、公務員の具体的な職務
遂行に直接的に関わる情報とはいえないことを挙げるので、まずこの点につ
いて検討する。
条例 3 条は、公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるように条例を
解釈し、運用する義務を実施機関に課す一方で、個人に関する情報がみだり
に公開されることがないように最大限の配慮を行うことを求めている。これ
を受けて、条例 6 条本文は公文書の原則公開を定める一方、個人情報への配
慮として、同条 2 号において、個人に関する情報の非公開を定めている。そ
の上で、同号(イ)において、当該個人が公務員である場合において、「当
該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報の内、当該公務
員の職、氏名及び当該職務遂行の内容に係る部分」を非公開としない個人情
報とした上で、「ただし、当該個人の権利利益を不当に害するおそれがある
場合を除く」と規定している。
以上のように、条例は、公務員等の個人に関する情報についてもこれを個
人情報に該当するとし、非公開の対象としている。これは公務員といえども
個人に関する情報をみだりに公にされない権利を有するからである。その上
で、当該情報が職務の遂行に関する情報(以下「職務遂行情報」という。)
である場合にのみ、職務遂行の内容並びに、当該職務の遂行に当たった公務
員等の職及び氏名に係る部分については、これを例外的に公開情報としてい
る。このような個人情報の例外的公開は、職務遂行の内容を明らかにし、職
務遂行者を特定することで責任の所在を明らかにすることが、たとえ特定の
公務員等が識別される結果となるとしても、行政の説明責任の観点から必要
であるとの趣旨に基づくものである。そして、条例は、情報が例外的に開示
対象となる職務遂行情報に該当する場合でも、当該個人の権利利益を不当に
害するおそれがある場合には、当該情報を非公開とすることを定めている。
このように、条例は公務員の個人情報保護を原則とする一方で、条例の原則
公開の趣旨及び行政の説明責任にも配慮し、その調整を職務遂行情報に該当
する情報であるか否かによって行っている。
上記の条例の趣旨に照らせば、職務遂行情報は、公権力の行使等の行為に
限定して解釈すべきではなく、公務員が行政庁又は補助機関等の行政機関と
して何らかの行政活動を担う際の情報であれば、これに該当すると解釈すべ
きである。他方で、職務遂行情報は、あくまでも行政の説明責任の観点から
個人情報が例外的に公開される場合であるから、こうした説明責任が要求さ
れる、ある程度の具体性を持った活動に関する情報を指すものと解釈できる。
本件職員名簿は、職員の氏名が所属毎に職層、職種とともに記載されている
にとどまるものであり、一定の職員が行政庁又は補助機関等の行政機関とし
て行政主体内に存在していること以上の具体的内容を有していない。したが
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って、本件名簿に記載された情報は、職務遂行情報に該当するとはいえない。
続いて、国、都、他市区が職員名簿を公開又は販売していること、当該名
簿が区議会議員全員に配布されたことを指摘し、本件名簿は慣行として公に
されている情報に該当する旨、申立人が主張するので、この点について検討
する。
条例 6 条 2 号(ア)は、「法令の規定により又は慣行として公にされ、又
は公にすることが予定されている情報」を、非公開としない個人情報として
規定している。当該規定はこれらの情報を、あえて非公開情報として保護す
る必要性に乏しいものと考えられることから、公開情報としたものである。
本件名簿は確かに全区議会議員に配布されているが、当該配布は区内部に
おいて特別職地方公務員としての区議会議員に対して行われたものであり、
このことにより、本件名簿記載の情報を非公開情報として保護する必要性が
失われたとはいえない。したがって、本件名簿が区議会議員に配布されたこ
とにより、本件名簿が慣行として公にされ、又は公にされることを予定され
ている情報に該当するとはいえない。
また、一部の国の行政機関及び地方公共団体には、職員名簿を全面公開又
は販売しているものがあるが、一部のみを公開しているものもあり、その範
囲は一様ではなく、それらを公開するという慣行が渋谷区において存在する
とも認められない。
なお、公開対象文書である職員名簿には渋谷区職員に加えて、渋谷区美術
振興財団等の外部団体の職員についての情報も収録されているが、これらの
情報はそもそも公務員等に関する情報にあたらないため、これらを非公開と
した判断も妥当である。
以上のように、職員名簿の管理職職員部分のみを公開した実施機関の決定
は、妥当である。
しかしながら、公務に携わる者に関する情報はできる限り明らかにして、
行政活動の透明性を高めることが望まれるところであり、条例上公開の対象
とならない情報であっても、情報の内容、そこに含まれる私事性、公務員個
人の権利利益に与える影響の程度等を考慮し、可能な限り公にすることが望
ましい。そして、一部の国の行政機関及び地方公共団体において、職員名簿
が全面的に公開されていること、これらの機関において当該情報が公開され
たことにより、公務員個人の権利利益が不当に害されたとは窺えないことか
らすると、渋谷区においても、職員名簿に登載されている情報を可能な限り
提供すべきである旨を付言する。
(2)職員懲戒処分に関する文書について
職員懲戒処分に関する文書のうち全面非公開とされた①渋谷区職員懲戒
分限審査委員会の諮問に関する文書②渋谷区職員懲戒分限審査委員会の審
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査の過程に関する文書について、申立人は懲戒分限審査委員会委員の氏名等、
公開できるものは精査し公開すべきである旨を主張している。
本件文書のうち、懲戒分限審査委員会委員の職名は、条例 6 条2号(イ)
に規定する「職務の遂行に係る情報」に該当する。当審査会において、当該
文書を見分(インカメラ審理)したところ、本件文書に記載された情報のう
ち、懲戒分限審査委員会委員の職名については、非公開情報と区分して公開
することができるものであった。したがって、②渋谷区職員懲戒分限審査委
員会の審査の過程に関する文書のうち、回議書の委員の職名については公開
すべきである。
他方で、その他の部分については、事故者の履歴、事故の内容、被害者及
び関係者の行動等が詳細に記載されており、一部を公開することで、関係個
人の情報が判明する可能性があり、条例7条にいう容易に区分公開をなしえ
ない場合に該当するといえる。
なお、懲戒処分に関する情報が個人情報に配慮した上で公にされることは、
人事に関する実施機関の説明責任を果たさせ、処分人事の公正を確保するた
めに必要である。しかしそれは、処分手続文書自体の公開によるのではなく、
一定の基準に基づき、特定の形式で処分人事情報を恒常的に公表する制度に
よることが望ましいと考える。この点は、諮問第 62 号答申においても述べ
たところである。
さらに、申立人は、職員懲戒処分に関する文書のうち、一部公開とされた
③懲戒処分の決定に関する文書について、職員の印影を公開すべきであるこ
とを主張する。この点について、当審査会は諮問第 77 号答申及び諮問第 80
号答申において既に、公開対象文書において私印が使用されていると窺える
ものがあり、この場合に職員の印影が公開されると実際に偽造等のおそれが
あり、条例 6 条 2 号(イ)ただし書きに規定する、当該職員の生活および財
産に不利益を及ぼすおそれが存在すると判断している。これらの事情は、本
件においても同じであるから、本件においても職員の印影を公開しないこと
は不当であるとはいえない。
以上により、当審査会は、本件の異議申立てについて表記のとおり結論す
るものである。
平成28年8月29日
渋谷区個人情報の保護及び情報公開審査会
石 川
健 治(会長)
伊 藤
ま ゆ
府 川
繭 子
藤ヶ崎
隆 久
松 村
雅 生
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