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身近な素材を生かした 教材の製作と実験の工夫
平成19年度 中学校教職経験者10年研修講座 理科分科会(化学分野)資料 【講義と実習】 「身近な素材を生かした 教材の製作と実験の工夫」 平成19年7月26日(木) 11:45∼13:55 (休憩 12:00∼13:00) 岩手県立総合教育センター 科学産業教育室 化学研修室 1 はじめに 観察・実験は理科指導の命。教材と授業展開が理科指導の醍醐味。 ① ② ③ ④ ⑤ 2 興味・関心・学習意欲 百聞は一見に如かず 思考する場の設定 日常知(素朴概念)から科学知へ 探究的学習(仮説→検証) 教材の製作 教材は、生徒と教師の対話の材料。魅力ある教材が授業を創る。 ① ② ③ ④ ⑤ 3 一方向から双方向へ 授業への全員参加 身近な物に科学あり ものづくりの楽しさ 感動こそ変容の源 実験の工夫 成功して次につなげていく実験。失敗から新しいことを学ぶ実験。 ① ② ③ ④ ⑤ 成功→学習の見通しや目的意識 成功→検証実験。実験データからの考察 失敗→実験方法(条件制御など)の検討 失敗→実験技能の習得 失敗→自由試行からの学び 身近な素材を生かした教材の製作と実験の工夫 1 はじめに ∼2つの燃焼反応から∼ (1) ろうそくの燃焼 身のまわりには、さまざまな物質や素材がある。生徒にとって身近な物質や素材を用いて実 験を行えば、実験への興味・関心や学習意欲を高めることができる。 最も身近な素材といえるペットボトルとろうそくを用いて、二酸化炭素が空気より重いか、 軽いかを調べる教材を考えた。しかし、この教材で、二酸化炭素が空気より重いことを示すこ とができるであろうか。 [準備]2 l ペットボトル2本、粘着テープ(無色透明)、針金、 カッターナイフ、ラジオペンチ、ろうそく(小)3本、 トレー(または大型シャーレ)、ガスライター、 水、BTB溶液 [製作]① ペットボトル2本の底を切り取り、うち1本は胴体 だけ残して上部も切り捨てる。 ② ①のペットボトルのうち、胴体だけのものを下にし て2本をつなぎ、粘着テープで固定する。 ③ ②の中で、3本のろうそくを縦にともせるように、 針金で燭台をつくる。 [実験]① ② ③ トレーに水を入れ、BTB溶液を加えておく。 その中に、針金製の燭台をたてる。 燭台のろうそく3本に点火し、ペットボトルをかぶ せる。(かぶせるときふたをゆるめておき、かぶせた らすぐしっかりふたをする) ④ 3本のろうそくがどの順序で消えるかを観察する。 また、水面の高さ変化や色の変化にも注目する。 針金製の燭台 身近な物質や素材を用いることで、気軽に実験をすることができる。しかし、実際に実験を 進めていくと、期待した結果が得られず、戸惑うこともある。こんなとき、よく気をつけてみ てみると、興味深い理由が潜んでいることを発見することがある。常に、新しい教材を開発し たり、実験方法を工夫したりする心構えをもつことが大切である。 主な気体の密度(空気の密度を1としたときの値) 水素 アンモニア 窒素 空気 酸素 二酸化炭素 0.07 0.60 0.97 1.00 1.11 1.53 - 1 - (2) 水素の燃焼 水素による爆発事故をよく聞く。その危険性を生徒に教える必 要がある。どう危険なのか。よくできた教材がある。 [準備]ペットボトル(500mlまたは2 l)、ゴム栓(6号)、 ガラス管(φ6mm×約5cm)、カッターナイフ、 コルクボーラー、ゴムキャップ、スタンド、 実験用水素ボンベ、ガスライター [製作]① ② 2 l ペットボトルの底をカッターナイフで切り取る。 ペットボトルの口にあうゴム栓(6号)にコルクボー ラー(2番)で穴を開け、5cmくらいの先端を加熱処 理したガラス管を差し込む。 ③ これで世に言う「水素三徳実験器」の完成。 [実験]① ② 「水素三徳実験器」をスタンドに固定する。 ガラス管の先端にゴムキャップをしてから、実験用 水素ボンベからペットボトルに水素を入れる。このと きノズルを使ってできるだけペットボトルの上部に、 静かに水素を入れること。 ③ ゴムキャップをとり、すぐにガスライターでガラス 管の先端から出てくる水素に点火する。 ④ 何が起こるか。2∼3分、よく見て、よく聞く。 ガ ラス管(φ6mm) 約5cm ゴ ム栓(6号) 2lペ ットボトル (底を 切り取ったもの ) ※三徳とは(藤木源吾(1950)) ①水素が空気より軽いこと ②水素は自ら燃焼し、炎の色は淡いこと ③空気と混じった水素は爆発すること 「水素三徳実験器」 主な可燃性気体の爆発限界(爆発範囲ともいい、空気中の容積%で示される) 水素 メタン プロパン ブタン メタノール エタノール 4.0∼75 5.3∼14 2.2∼9.5 1.9∼8.5 7.3∼36 4.3∼19 - 2 - 2 有名なアンモニアの噴水実験 有名なアンモニアの噴水実験だが、ペットボトルではできない だろうか。減圧によってつぶれてしまうのでは?という予想もで きる。それはそれで面白いし、「百聞は一見に如かず」やってみ よう。 [準備]500mlペットボトル、ガラス管(φ6mm×35cm)、 ゴム栓、コルクボーラー、1000mlビーカー、水、 BTB溶液、駒込ピペット、希塩酸、ガラス棒2本、 スタンド、軍手、ゴム手袋、アンモニア [製作]① ペットボトルの口に合う大きさのゴム栓(6号)にコ ルクボーラーでガラス管を通す穴を開ける。水をつけ ると開けやすくなる。 ② ガラス管を35cm切り取り、先端は両端とも加熱処理 する。軍手を使用。火傷に注意。 ③ ガラス管が冷えてから、①のゴム栓に通す。ガラス 管が折れないように、根元を持ち少しずつ通す。水を つけると通しやすくなる。ゴム手袋などを巻くと滑り にくくなる。 ④ 管の長さをペットボトルにあわせて調整し、「噴水 管」とする。 [実験]① 500mlペットボトルにアンモニアを捕集し、しっかり とフタをしておく。 (あらかじめ捕集しておく。塩化アンモニウム3gと 水酸化カルシウム3gの混合物の加熱により十分な 量が得られる。) ② ビーカーに約800mlの水を入れ、緑色のBTB溶液 を約5ml加えかき混ぜる。溶液の色が黄色になるまで ガラス棒につけた希塩酸を1滴ずつ滴下する。 ③ ①のペットボトルを逆さまにしてフタをとり、すば やく「噴水管」を取り付ける。気体が漏れないように きつく栓をする。 ④ 逆さまのまま、ガラス管を②の溶液中に差し入れ、 水中でガラス管の先端を指でおさえて取り出す。 ⑤ 押さえている指をゆるめるとガラス管に入っている 水がペットボトル内に吸い込まれていくことを利用し て、外の空気は入れないように注意して、水をペット ボトルの中にいれる。 ⑥ ガラス管の先端を押さえたまま、再び②の溶液中に 倒立させ、そこで押さえている指を離す。 ⑦ そこで起こる現象を観察する。 ア ンモニ ア 35mm アンモニアの実験室的製法 2NH4 Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 加熱 2NH3 + 2H2 O 水(BTB 溶液入り) 噴水になるか? - 3 - 3 食塩の「火攻め」+「電気攻め」 物質を調べる方法はいろいろある。 「火攻め」…加熱してみる。燃えるか。融けるか。反応する か。気体を発生するか。 「水攻め」…水に溶かしてみる。溶けるか。反応するか。気 体を発生するか。水溶液は何性か。 「電気攻め」…電気を通してみる。電気を通すか。電気分解 されるか。 最も身近な固体である食塩を加熱しながら、電気を通してみる。 [準備]Fケーブル(1.6mm、2芯)、延長コード、電球、 スイッチ、電源プラグ、みのむしクリップ、ペンチ、 カッターナイフ、試験管(パイレックス)、食塩、 ハンドトーチ Fケーブルを試験管の長さに合わせ、18∼22cmの長 さにペンチで切る。 ② その一端の外被覆をカッターナイフで3cmほど剥ぎ 取る。内被膜の白と黒が逆向きになるように、直角に 曲げ、それぞれ1cmほど内被膜を剥ぎ取る。 ③ 他端の外被膜を8cmほど剥ぎ取る。さらに、黒と白 の内被膜を7cmほど剥ぎ取る。これで「簡易電極」の 完成。 ④ 電球、スイッチ、電源プラグを延長コードで配線し、 2つの端は、①の「簡易電極」に接続できるようにみ のむしクリップをつけておく。 約3cm [製作]① 外被 覆 内 被覆 試験管に約5gの食塩を入れる。 ①の試験管に「簡易電極」を差し込み、スイッチが OFFであることを確認してから、電球の回路に接続 する。 ③ 電源プラグを差し込み、スイッチをONにする。電 球の様子を確認する。感電に注意。 ④ ハンドトーチで試験管を加熱し、試験管中の食塩の 様子と電球の様子を観察する。 約8cm [実験]① ② 「簡易電極」 粒子とその結合からわけた物質の種類 物質をつくる粒子 粒子の結合 固体の性質 物質例 金属原子+金属原子 金属結合 固体でも電気を通す、展性・延性 鉄、銅 金属原子+非金属原子 イオン結合 水溶液や液体にすると電気を通す 食塩 共有結合→分子間力 やわらかい、融点が低い 砂糖 共有結合 非常に硬い、融点が非常に高い ダイヤモンド 非金属原子+非金属原子 - 4 - 4 確実・簡単カルメ焼き 教科書にも載っているカルメ焼き。簡単そうでなかなかうまく いかない。そちらこちら汚れて後始末も大変。確実で、簡単なカ ルメ焼きの実験方法はないだろうか? [準備]片手鍋、少し深めの皿(今回用いたのはφ14cmのもの)、 クッキングシート、割り箸2本、セロハンテープ、 温度計(200℃まで測れるもの)、マジック、白砂糖、 重曹、卵白、水、5ml駒込ピペット、メスシリンダー ポータブルガスコンロ [製作]① 球部が割り箸の先端より5mmほど上にくるように温 度計を割り箸の上にのせ、セロハンテープで固定する。 ② 105℃と125℃の所にマジックで印を付ける。これを 「温度計付き撹拌棒」と呼ぶ。 [実験]① 卵白5mlに重曹を少しずつ加えては箸でよくかき混 ぜる。硬さがシュークリーム状になるまでに約15gの 重曹を加える。さらに白砂糖2.5g加えてよく混ぜる。 これが「発泡剤」となる。(あらかじめ準備しておく) ② 皿をクッキングシートで覆う。 ③ 片手鍋を斜めに持ち、白砂糖50gを入れ、水20mlを 加える。(注:この分量は皿の大きさによる。少なすぎ ると失敗する。) ④ 「温度計付き撹拌棒」でかき混ぜながら、コンロを 中火にし、遠火で加熱する。 ⑤ 沸騰し始めると温度上昇が緩慢になるが、約105℃ 付近から沸騰液の泡切れが悪くなり温度変化が急にな るので温度が上がりすぎないよう注意する。 ⑥ 温度が125℃に達したら加熱をやめ、すぐに②の上 に静かに移す。 ⑦ 20∼30秒の間に泡立ちがおさまるのを待つ。その間 に「温度計付き撹拌棒」の先端に「発泡剤」を大豆く らいの大きさにつけておく。 ⑧ 泡立ちがおさまったら、⑦の撹拌棒で激しく数十回 かき回して「発泡剤」をまんべんなく混ぜ込む。この とき色は白色からうすいクリーム色に変わる。 ⑨ 気体の発生が起こり、粘りが出てきて、かき回して いる「撹拌棒」の跡がはっきり残るようになったタイ ミングで割り箸を抜く。 ⑩ ふくらむ様子を観察する。 「カルメ焼きレシピ」 ◆主材料 白砂糖50g 水20ml ◆発泡剤 卵白5ml 重曹15g 白砂糖2.5g ◆手順 重曹(炭酸水素ナトリウム)の熱分解 鍋に主材料 125℃まで加熱 2NaHCO3 → Na2CO3 + H 2O + CO2 CookingSheetへ 20秒ほど待つ 弱いアルカリ性 石灰水の白濁 塩化コバルト紙の変色 強いアルカリ性 発泡剤投入 激しくかき回す 箸を抜くタイミング - 5 -