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極微細構造一括形成技術によるナノホール新素材の開発
基 礎 技 術 研究所では、急速に展開するマルチメディア時代を的確に 先導するために、 革新的な情報通信を可能とする先端技術の 研究開発とともに、学術の発展と変革を誘発する新しい知 見・概念の創出を目的として、新材料・新物質、通信用 LSI (Large Scale Integrated Circuit)技術、光通信デバイス技 術、コミュニケーション科学、情報科学など広範囲にわたる 研究開発を行っています。ここでは、各分野における研究の 概要とともに 1997 年度の主な成果を紹介します。 新材料・新物質では、情報通信やエレクトロニクスに変革 をもたらす新しい現象や材料の探索・機構解明と新物質の創 造を目的として、ナノエレクトロニクス、バイオエレクトロ ニクス、分子エレクトロニクス、超伝導材料、金属複合材料 などの研究を行っています。主な成果としては、①アルミニ ウム表面におけるアルミナ極微細径孔の高密度で規則的な配 列構造(ナノホールアレイ)の一括形成技術の開発、②紫外 領域で発振し、へき開によりレーザ素子を容易に作成できる 半導体レーザ用新材料の提案、 ③酵素反応を利用した超高感 度測定法の開発とシナプス活動に伴う神経伝達物質 (グルタ ミン酸)放出量変化のリアルタイム観測、④量子ドット分子 における、 マイクロ波光励起による単一電子トンネル電流の 制御の実現、⑤単電子トランジスタで構成した電子転送経路 切り替えデバイスおよび単電子トランジスタと MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを融合したメモリデ バイスの試作と基本動作の確認、⑥共鳴トンネルダイオード による 3 値量子化回路の試作と室温での 10GHz 動作の確認 などがあります。 通信用 LSI 技術では、情報通信の要素機能をカスタム LSI に集積化する技術の高度化を目的として、LSIに関する設計 基本技術、設計製造技術、製造装置技術、評価技術の研究開 発を行っています。主な成果としては、① 0.25 μm バルク CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ゲート アレイによるニューロチップの試作と、これを用いた 1 万 ニューロン規模のニューラルネットの高速動作の確認、② 100nm 級 LSI 作成のための、SOR(Synchrotron Orbital Radiation)光を用いた高精度露光装置の開発などがありま す。 光通信デバイス技術では、情報通信の光化の円滑な発展に 向けて、次世代光通信用光源などに用いる化合物半導体光素 子、平面導波路光集積回路、光ファイバ増幅器、および新機 能有機光材料などの研究を行っています。主な成果として は、①光からの電気信号取り出しに電子のみを利用する高 速・高出力フォトダイオード(単一走行キャリア・フォトダ イオード)の開発、②広い波長帯域(76nm)にわたり利得 が平たんで低雑音のエルビウム添加テルライトファイバ増幅 器の実現、③数 mm 角の InP 半導体チップ上での 64 波長ア レイ導波路格子分岐デバイスの実現、④アレイ導波路格子と スポットサイズ変換機能付き半導体光増幅素子によるゲート スイッチをハイブリッド集積した波長セレクタの実現、 ⑤光 パラメトリック増幅の利用により入射光の特定光位相成分の みを増幅する位相感応型光増幅中継器の実現などがありま す。 コミュニケーション科学では、21 世紀のマルチメディア 時代にふさわしいコミュニケーションのための革新的な情報 通信サービスの創出を目的として、情報セキュリティ、情報 処理基礎理論、並列処理、分散協調処理、知識ベースと推論・ 学習方式、機械翻訳などの研究を進めています。主な成果と しては、①遺伝的アルゴリズムを適用した、ジョブスケ ジューリング問題の高性能解法の開発、②笑いにおける、目 と口の動きの時間的な違いに着目した意味の解明などがあり ます。 情報科学では、 究極の情報処理機械である人間の脳の情報 処理機構の解明と、高い性能・知能を有する将来型計算機構 の実現を目的として、視覚・聴覚・言語の情報処理機構およ び論理・処理方式の研究、計算機科学基礎理論、理解の処理 過程、知的分散処理方式、マルチメディア処理方式などの研 究を行っています。主な成果としては、顔画像と音声により 人間と協調的に対話し、 計算機使用の快適性を高める音声対 話システムの実現などがあります。 Photo: X 線マスク描画機用 100kV 高加速電子銃 26 27 ○ ○ ○ が得られます。このアルミナは、アルミニウムの表面改質やフィ ○ ホールアレイ)の形状のアルミナ(アルミニウムの酸化物:Al2O3) ○ ○ アルミニウムを陽極酸化すると、高密度で微細径の孔(ナノ 励起光 ○ 極微細構造一括形成技術によるナノホール新素材の開発 ○ ○ ○ Al 0.11Ga 0.89N 高温成長GaN 低温成長GaN へき開面 GaAs ○ して、規則性が著しく高い Al2O3 ナノホールアレイを、一括して ○ ○ 研究所では東京都立大学の益田秀樹助教授らのグループと協力 レーザ発振 GaN ○ 用が限られていました。 Al0.34 Ga 0.66N ○ ルタなどに使われてきたものの、規則性や周期性に劣るため、応 ○ ○ ●素子構造 みを作るためのモールドを、強度の高いSiC基板を用いて電子ビー ○ ぼみが陽極酸化反応の開始点になることに着目したもので、 ①くぼ ○ これは、アルミニウム表面に微小なくぼみを形成すると、このく ○ ○ 形成する新技術を開発しました。 ○ ○ レ ー ザ 発 振 387 し き い 値 ○ て、この新素材の工業化技術を確立するとともに、将来の光部品 自 然 放 出 光 ○ ○ て種々の応用が期待されます。 研究所では東京都立大学と協力し ○ ○ 100以上にできるという従来にない構造を持つため、新素材とし ○ の深さは陽極酸化時間に比例し、アスペクト比(深さ/穴径)を ○ この Al2O3 ナノホールアレイは著しく平滑な側壁面をもち、そ ○ ○ ○ ナノホールアレイが高い規則性を持って形成されます。 光 出 力 (a .u .) ○ に応じた条件で陽極酸化する、という工程によって、種々の周期の ○ ミニウム表面にプレスしてくぼみを作る、 ③作製するアレイの周期 ○ ○ 温度34K ○ ム露光とドライエッチング技術で作製する、 ②このモールドをアル ○ 360 380 400 波長(nm) 発振スペクトル ○ ○ ○ (光エレクトロニクス研究所) ○ ○ や環境問題への応用の研究を展開する予定です。 ○ ○ 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 ○ ●ナノホールアレイの作製工程 ○ 励起光強度密度(MW/cm 2) ●光出力の励起光強度密度依存性 ○ ○ ○ 高強度 SiC基板( ) ○ ○ 極微細加工 紫外域半導体レーザ用の新材料 ○ ○ SiC基板 ○ 窪み ○ ○ ○ プレス のため、 マルチメディアサービスにおける高精細映像用の光記憶 システムを実現するには、現在 DVD* などに用いられている赤色 ○ ○ ○ ナノホール アルミナ 半導体レーザの波長(650nm)より短い、青から紫外領域の光で 発振する半導体レーザの開発が望まれています。近年、サファイ ア基板上に成長した六方晶 III 族窒化物半導体を用いた青紫レー ザが開発されていますが、これまでのようにへき開でレーザ素子 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 陽極酸化 折限界で決まるため、使用する光源の波長に依存しています。こ ○ アルミ 光記憶システムの記録密度は、 集光スポットの大きさが光の回 を作製できず、量産化が困難な問題がありました。 ○ 断面構造 ○ 1μm そこで、 へき開によるレーザ共振器の形成が容易なことに着目 ○ ○ 表面構造 ○ ● 100nm 周期ナノホールアレイの電子顕微鏡写真 し、GaAs基板上の立方晶III族窒化物のダブルヘテロ構造による レーザを提案しました。実際に有機金属気相成長法を用いて、立 方晶 AlGaN/GaN ダブルヘテロ構造の薄膜結晶を作製し、レーザ の実現可能性を確かめました。この結晶では、へき開でレーザ素 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 表面 10μm 子が容易に作製でき、窒素レーザによる光励起で 387nm での レーザ発振を達成しました。この波長は、DVD 並みの装置でス タジオレベルの映像記憶を可能にする条件を満足しています。こ の材料系の紫外域半導体レーザが実用化できれば、量産による安 価な供給が期待できます。 ○ ○ ○ ○ ○ パターン無し ○ ○ ○ ○ パターン有り ○ ○ ○ (入出力システム研究所) 28 * DVD: Digital Versatile Disc ○ 神経伝達物質の直接観察 ○ ○ 量子ドット分子 ショットキーゲート ○ 私たち人間は、膨大な情報を瞬時に解析し、つぎの行動を判 ○ 集束イオン注入領域 DL DR ○ ドレイン 80 nm ○ いったさまざまな感覚器官からの情報を、 この化学物質を通して ○ ○ て情報の授受を行っているのです。私たちは、色、形、においと ソース ○ 何億という神経細胞が、 神経伝達物質と呼ばれる化学物質を通し ○ とができます。このような機能は、すべて脳に集約されており、 ○ ○ 断・決定するだけでなく、さまざまな事柄を学習し、記憶するこ ○ 160 220 nm ○ の物質はシナプスと呼ばれる微小な通路から、 わずか数十∼数百 ○ マイクロ波周波数50GHz ○ nm の空間に放出され、情報として用いられる物質の量が極微量 ●量子ドット分子の模式図 ○ 挙動を調べる試みが、数多くされてきました。しかしながら、こ ○ ○ 認識しているといっても過言ではありません。 今までこの物質の ○ 誘導放出 トンネル ○ であるため、今までリアルタイムでの測定や、長時間にわたる測 吸収トンネル ○ 定は不可能でした。 ○ ドレイン電流 -40 -47.5 ○ ○ 自然放出 トンネル マイクロ波 非照射 ○ 行い、時間・空間分解能を約 10 分の 1 の秒・ミクロンレベルに、 ゲート電圧(任意単位) ○ ○ 制など、 脳におけるシナプス活動を解析するうえで極めて有効で ○ ことを目標に、研究を進めていく予定です。 マイクロ波光励起による単一電子トンネル制御 半導体量子ドットは、零次元量子閉じこめ効果によって離散的 な量子準位が形成され、原子と類似した性質をもつことから人工 原子とも呼ばれます。量子ドットを 2 個近接すると、静電的エネ ルギーによってイオン結合分子と類似した状態と、結合−反結合 分離によって共有結合分子と類似した状態が形成されます。これ ら量子ドットの原子・分子の電子状態は、弱く結合された電極を ○ ○ ○ (基礎研究所) ○ ○ あり、脳における情報処理の仕組み、記憶・学習機能を解明する ○ ○ ○ ることに、初めて成功しました。この成果は、長期増強や長期抑 ○ ○ プス活動に伴ったグルタミン酸放出量変化をリアルタイム測定す ○ プスのレベルでの測定にはさらに技術の向上が必要ですが、 シナ ○ 向上させることに成功しました。 ナノメータ領域である単一シナ ●マイクロ波光励起電流のゲート電圧依存性 ○ ○ ○ た。また、マイクロマシン技術により、この測定部分の微小化を ○ ○ り、ppb レベルの定量と濃度変化測定ができるようになりまし 1 pA ○ グルタミン酸濃度変化を電流変化として計測します。これによ マイクロ波 パワー -35 dBm ○ ○ 応する酵素を、炭素電極に修飾することにより、電気化学的に、 ○ は、 代表的な神経伝達物質であるグルタミン酸に対し特異的に反 ○ ○ の物質の高感度リアルタイム測定を可能にしました。 この方法で ○ 研究所では、酵素反応を利用した新しい測定技術を考案し、こ 流れる単一電子トンネル電流によって調べることができます。研 ○ 神経伝達物質検出用センサ ○ ○ ○ ○ ○ ●測定系概略図 を調べることにより、 量子ドット分子の結合状態を明らかにする とともに、 マイクロ波光励起による単一電子トンネル電流の制御 に成功しました。 はじめに AlGaAs/GaAs 変調ドープヘテロ構造に集束イオン ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 刺激用キャピラリ KCl 究所はデルフト工科大学と共同で、マイクロ波光励起スペクトル ○ 1 cm を形成しました。これによって、結合エネルギーの大きな量子 ドット分子を作製することができました。量子ドット分子の準位 の間隔に一致した光子エネルギーのマイクロ波(1 ∼ 50GHz)を ○ ○ ○ シリンジ ビーム注入を施し、それから構造上に分割型ショットキーゲート 照射すると、共鳴的にトンネル電流が流れる様子を観測しまし ○ ○ ○ ○ ○ pull て単一電子トンネルを制御するもので、ゲート電圧やドレイン電 圧によって誘導放出と吸収を制御することができます。さらに、 マイクロ波スペクトルにより、量子ドット共有結合分子の結合− 反結合状態を測定することにも成功しました。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ グルタミン酸放出 た。これは、マイクロ波光子 1 個の吸収あるいは誘導放出によっ 単一電子トンネルと単一光子(マイクロ波)生成を相互に制御で きる可能性と、マイクロ波によって量子ドット分子の量子状態を 60 s 念のデバイス創造が期待されます。 ○ ○ ●神経細胞からのグルタミン酸放出のリアルタイム測定 制御できる可能性があり、量子状態の制御を原理とする新しい概 ○ ○ ○ 0.2μM ○ KCl による 細胞刺激 このマイクロ波光励起による単一電子トンネルの制御技術は、 (基礎研究所) 29 ○ ○ CK クロック RTD CK OUT ○ 電力デバイスであり、 将来のマルチメディア社会を支えるキーデ ○ ○ 単電子デバイスは、電子1個を操ることが可能な究極の低消費 ○ 集積化を目指したシリコン単電子デバイスの開発 ○ ○ 出力 出力バッファ 入力信号 IN ○ トランジスタを効率的に、 かつ再現性良く作製する手法を開発し OUT IN ○ 造の熱酸化プロセスの特異性に注目し、 室温動作が可能な単電子 ○ バイスの一つと目されています。研究所では、シリコンの微細構 HEMT ○ 定電圧源 ○ た電子転送経路切り替えデバイス、および、単電子トランジスタ ○ ″2″ 入力信号(-V IN ) ○ ○ クロック ○ ばれます。一方、メモリデバイスでは、書き込み電極から微細 出力波形 ○ 御ゲートの信号に応じてどちらか一方の出力端子に電流として運 ○ ○ で連結された構造で、電子は入力端子から単電子島を通って、制 時間 ○ 子、3 本の制御ゲートからなり、入出力端子間を 3 個の単電子島 ″0″ ○ 電子転送経路切り替えデバイスは、入力端子と 2 本の出力端 ″1″ ○ れらの基本動作の確認に成功しました。 ○ ○ と MOS トランジスタとを融合したメモリデバイスを試作し、そ ●試作した 3 値量子化回路 ○ 行っています。このたび、単電子トランジスタ 3 個分を一体化し ○ ○ とともに、 より高度の機能を創出することを目指した研究開発を ○ ○ てきました。さらに、これを一歩進めて集積化の基礎固めをする ○ ○ 200 ps ●クロック周波数 10GHz における 3 値に量子化された出力波形 ○ 従来のデバイスの数千分の 1 から数十万分の 1 の電子数で動作 ○ 共鳴トンネルデバイスを用いた超高速回路 マルチメディア社会の進展に伴い、コンパクトなサイズで、大 容量の情報を超高速、 かつ小さな消費電力で伝送することのでき る、高性能のハードウェア、たとえば高性能ワイヤレス端末など 単電子島 入力端子 ドウェアの核となる技術は、高性能の電子デバイスです。電子デ バイスの高性能化は、従来、デバイスの平面寸法の微細化によっ てなされてきました。しかし、このような、デバイスの微細化は 次第に難しい段階に差しかかっています。この問題を打破するた めに、新しい概念の電子デバイスが求められていました。 研究所ではこのたび、量子効果という新しい概念にもとづくデ バイスである共鳴トンネルダイオード(RTD*1)を用いることに より、超高速の電子回路をコンパクトに実現できることを示しま した。RTDは量子効果である共鳴トンネル現象によって電流が流 れるため、超高速のスイッチング速度と、電流−電圧特性に負性 制御ゲート 微分特性が現れるという 2 つの特徴があります。この特徴を生か し、かつ既存デバイスである高電子移動度トランジスタ (HEMT*2)と組み合わせて用いることにより、たとえばアナログ 入力を 3 値に量子化して出力する回路を、非常に少ない素子数で 実現できることを示しました。実際にこの回路を試作し、室温に ○ おいて、クロック周波数 10GHz の超高速動作を実証しました。 この成果は、量子効果デバイスである共鳴トンネルデバイス が、 将来の超高速電子回路の実現に有効であることを示すもので す。この多値量子化回路は、超高速のアナログ−ディジタル変換 器の主要構成要素として考案されたものです。今後は、この成果 を基盤に、 将来の高性能ワイヤレス端末のキーデバイスとなる超 高速アナログ−ディジタル変換器の実現を目指し、研究開発を進 めていく予定です。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 微細 MOS トランジスタ 読み出し用単電子 トランジスタ ○ ○ ○ ●単電子トランジスタと MOS トランジスタを融合したメモリデバイス ○ ○ ○ ○ 出力端子 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 出力端子 1 ○ ○ ●単電子トランジスタ 3 個を一体化した単電子転送切り替えデバイス がますます求められるようになってきています。このようなハー ○ ○ ○ ○ ○ (基礎研究所) ○ し、極めて消費電力の少ない新原理のデバイスです。 ○ ○ ○ トランジスタで電子の有無を読み出すデバイスです。双方とも、 ○ ○ の DRAM の 1/1000 以下の容量)に数十個の電子を蓄え、単電子 ○ MOS トランジスタを介して接続された、小さなメモリ島(現状 100mV 0111221110 メモリ島 ○ 書き込み電極 30 RTD: Resonant Tunneling Diode *2 HEMT: High Electron Mobility Transistor ○ ○ ○ ○ (システムエレクトロニクス研究所) *1 マスク ウェハ ○ ○ アライメント光学系 縦型XYステージ ビームライン ウェハローダ ○ ○ ○ ○ なっていました。この問題を解決するために、ニューロンの出力 ○ ○ ○ ○ 速度のボトルネックを解消すると同時に、 演算の高速化も可能に ○ 省略法を使う新アーキテクチャでは、 メモリからのデータ転送量 とニューロンの演算量を 1/10 ∼ 1/100 に低減でき、データ転送 ○ ○ 算する「差分型ニューロン演算法」を考案しました。この 2 つの ○ ○ 逐次計算法」と、入力信号の連続性を利用して差分成分のみを計 ○ し、飽和したニューロンの計算を大幅に省略する「シナプス係数 ● X 線ステッパの構成図 ○ 値がその非線形特性によって同一レベルに飽和することを利用 ○ ○ ○ も、メモリから演算器へのデータ転送が高速化のボトルネックに ○ 従来のニューロチップでは、並列処理化で計算能力を高めて ○ ロチップによる高速化が望まれています。 ○ ○ 算を一般の計算機でリアルタイム処理することは難しく、 ニュー ○ ○ の取扱いと膨大な演算の高速処理がポイントです。 このような計 ○ ○ 構成されるニューラルネットの計算では、 大量の結合係数データ ○ 間と同様に学習によってパターン認識、制御、予測などが実現で きます。神経細胞をモデル化したニューロン回路を多数接続して ○ ○ 路網を集積化したもので、ニューロチップと呼ばれています。人 ○ ○ ニューラルネット用LSIは、生物の脳を手本にした人工神経回 ○ 大規模ニューラルネット用 LSI ○ 作し、外部 SRAM-LSI を実装した評価用ボードを用いて、1 メガ ○ ● SOR 光による 120nm パターン露光結果 ○ 100nm 級 LSI 露光用 X 線ステッパを開発 LSI の微細化は年々進展し、最小パターン寸法は 2005 年ごろ には 100nm、2010 年ごろには 70nm 程度が要求されるといわれ ています。現在は光(紫外線)を用いた露光装置(光露光装置) 150nm あたりで限界に達すると考えられ、次世代の露光技術が 必要となります。 研究所では、電子蓄積リングから発生する X 線(SOR*1 光)を した。非常に高い精度のパターン形成能力が要求されるので、試 料台を空気で浮かせた状態のまま移動させる完全非接触型縦型 XY ステージ、光ヘテロダイン干渉を利用した高精度位置計測技 術、さらにシリコンウェハを高い平面度で保持するピンチャッ ク、SOR 光源から X 線を効率良く導くための X 線ミラー光学系 などの要素技術を開発しました。これら要素技術を1つの装置に 統合するとともに、各要素の高度な連携動作を実現する制御ソフ トを開発することにより、露光装置としてまとめあげました。 この成果は、従来の光露光装置の限界を打破し、21 世紀初頭 の LSI 技術発展の土台構築に寄与しうるものです。今後は、電子 技術に関する国家プロジェクト ASET*2(NEDO 委託研究)との 共同研究を通じて、この技術が産業界の将来技術として寄与して いくように、さらなる高度化を進めていく予定です。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 用いて、100nm 級の LSI を高い精度で露光する装置を開発しま ○ ○ ○ (システムエレクトロニクス研究所) *1 SOR: Synchrotron Orbital Radiation *2 ASET: Association of Super Advanced Electronic Technologies ○ ● 0.25μm CMOS デバイス技術で試作したニューラルネット用 LSI により 250nm 程度の LSI パターン形成が行われていますが、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ GCPS: Giga Connection Per Second ○ * ○ (入出力システム研究所) ○ ク応用が、開拓されると期待されます。 ○ ○ 現によって、今後このチップによる新たなニューラルネットワー ○ ○ 理速度を確認しました。1万ニューロン規模のネットワークの実 ○ ○ シナプス(1万ニューロン相当)の大規模ネットで、10GCPS* の処 ○ を、最先端の 0.25μm バルク CMOS ゲートアレイ技術により試 ○ ○ この技術にもとづく学習機能搭載のディジタルニューロチップ ○ ○ ○ しました。 31 ○ ○ 50 信号利得(dB) ○ ○ ○ 研究所では、新しいアイデアにもとづいて、高速でしかも飛躍 20 10 10 利得平たん域:76nm (波長域:1532-1608nm) ○ 5 ○ -20 0 1520 1540 1560 1580 1600 1620 1640 波長(nm) ○ ○ ○ その結果、 より高い電流密度でも動作できます。InP/InGaAsエピ ○ ○ ○ ○ ○ を直接駆動する形式で、 一層高速な光信号処理が可能になるもの ○ ○ することにより、電気増幅を介さずに超高速電子回路や光変調器 ○ ○ 単一走行キャリア・フォトダイオードの高い出力レベルを利用 ○ イオードも開発され、より優れた量子効率が実現されています。 の使用帯域を決定するキー部品であり、 広い波長帯域にわたって 利得が平たんな特性をもつ光ファイバ増幅器の開発が求められて います。 研究所では、 光ファイバ増幅器の広帯域化に適する材料探索を 行い、エルビウム(Er3+)添加テルライトファイバを増幅媒体と (テルライトEDFA*2)が、 したEr3+添加テルライトファイバ増幅器 約80nmという非常に広い波長域にわたり光増幅が可能であると いうことを発見しました (従来の光ファイバ増幅器の増幅帯域は 約 30nm) 。さらに、この増幅器について利得の平たん化や雑音 ○ の低減などについて研究を進め、このたび、利得が平たんで広帯 域な増幅特性をもち、かつ低雑音のテルライトEDFAを実現しま した。 このテルライトEDFAの開発においては、①利得平たん化のた めの利得等化器の開発、②低雑音化に向け、高純度酸化テルル (TeO2)原料の合成およびこれを用いた低損失なEr3+ 添加テルラ イトファイバの開発(散乱損失∼0.05dB/m) 、カスケード増幅系 によるEr3+添加テルライトファイバ中の自然放出光の除去がポイ ントでした。この結果、この光増幅器は1532nm∼1608nmの広 い波長域(帯域 76nm)において、信号利得 22dB、雑音指数 7dB ○ ○ 14 ○ λ= 1.55μm FWHM = 790fs ○ ○ 12 ○ 1.9V であることを確認しました。また、この広帯域・利得平たん性を もつテルライト EDFA と、新規に開発した 1.45μm 帯利得平たん 型ツリウム(Tm3+)添加フッ化物ファイバ増幅器を並列接続する ことにより、利得平たん域 113nm(波長域 1443 ∼ 1484nm およ f 3dB = 115GHz,V bias = -4V ○ 6 ○ ○ 4 2.3ps ○ 0.65V f 3dB =152GHz,V bias=-1.5V ○ 2 び 1532nm ∼ 1608nm)をもつ光ファイバ増幅器も、併せて実現 ○ 3.1ps ○ 8 ○ ○ 10 以下の利得平たん増幅特性を達成し、WDM信号に対しても有効 ○ ○ 16 しました。 今後は、テルライト EDFAの最適化をさらに進め、増幅帯域の より一層の拡大と均一化、低雑音化などの特性改善を図っていき ます。また、この増幅器の優れた増幅特性をシステム実験におい ○ 電気光サンプリング信号強度(Arb.Unit) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (システムエレクトロニクス研究所、光エレクトロニクス研究所) ます。このようなシステムにおいて、光ファイバ増幅器は、WDM ○ ○ と期待されています。 大容量で高機能な光通信を目指し、全光波長分割多重 (WDM*1)ネットワークシステムの研究開発が活発に行われてい ○ モジュール化に有利な「導波路型」単一走行キャリア・フォトダ 広帯域テルライト光ファイバ増幅器を開発 ○ ○ 作速度で 1.5 倍、出力で 10 倍に相当するものです。面型に加え、 ○ 確認されましたが、これは、従来のフォトダイオードに比べ、動 ○ -3dB 帯域 152GHz、最大出力 3.5Vpp(25 Ω負荷条件)の特性が ○ タキシャル結晶を用いて製作された面型の素子において、 ○ ○ ドリフト速度を持つので、素子内部の電荷蓄積効果が軽減され、 ○ ○ 能となるものです。電流を担う電子はホールよりも約 10 倍高い ●利得平たん型テルライト光ファイバ増幅器の増幅特性 ○ 性光吸収層と空乏化したキャリア走行層に分離することにより可 ○ ド」と名付けられました。これは、素子の内部構造を、p 型の中 ○ ○ カニズムをもつことから、 「単一走行キャリア・フォトダイオー 30 -10 ○ 子とホールのうち、 電子のみを使って電気信号を取り出す動作メ 15 ○ を開発しました。このフォトダイオードは、光吸収で発生した電 ○ 的に高い飽和出力を得ることが可能な長波長帯フォトダイオード 本開発のテルライトEDFA (利得等化器付加) 0 ○ ○ ビット誤り率特性を向上させるうえでも重要です。 ○ ○ 幅器の負担を軽くするだけでなく、高速の信号を受信する際の ○ 飽和出力の増大が重要な課題となっていました。これは、電気増 ○ 信するフォトダイオードも重要なデバイスの一つであり、 最近は 雑音指数(dB) ○ 40 ○ れた性能をもつデバイスの開発が進められています。 光信号を受 20 利得等化器未使用時 ○ 将来の広帯域光ファイバ通信システムの実現に向けて、 より優 60 ○ 単一走行キャリア・フォトダイオード ○ (光エレクトロニクス研究所) ○ 0 10 20 30 40 時間(ps) ても検証する予定です。 ○ ○ 0 32 WDM: Wavelength Division Multiplexing *2 EDFA: Erbium-Doped Fiber Amplifier ○ ○ ○ ● InP/InGaAs 単一走行キャリア・フォトダイオードの光応答波形 (素子は面型、接合系 5μm、25 Ω負荷条件) *1 ○ ○ ○ まな波長の光を自由自在に利用できるフォトニックネットワーク ○ SOA ゲート 搭載 PLC ○ な半導体集積光デバイスを開発しました。 同軸ケーブル ○ ワークのコア技術となる波長分割多重通信(WDM)技術に必要 ○ ○ の研究が進められています。研究所では、フォトニックネット ○ のため、光技術をネットワークのすみずみまで浸透させ、さまざ ○ ○ 容量かつ高機能な通信ネットワークの構築が必要となります。 こ ○ ○ マルチメディア時代の膨大な通信需要に対応するためには、 大 AWG ○ 半導体アレイ導波路格子集積光デバイス ○ ○ す。 この機能を実現する光回路がアレイ導波路格子と呼ばれる光 SOA のスイッチング 動作で任意波長 を選択 ○ め、光を波長ごとに分波・合波する機能が重要な役割を果たしま ○ ○ ●作製した 8 チャネル高速波長セレクタモジュール ○ WDM 技術においては、波長多重された光信号を処理するた ○ 光入力 光出力 λ1 ○ 部品で、これまで石英導波路を利用したプレーナ光波回路 λ 1- λ 8 ○ AWG ○ ○ ○ は、最新の微細加工技術と結晶成長技術を駆使して、アレイ導波 ○ 路格子とフォトダイオードが集積されたレベル監視素子の実現に ○ ○ ○ どの能動素子を同じ基板に集積できる点にあります。研究所で ○ ○ この半導体のもう一つの特長は、 レーザやフォトダイオードな ○ な半導体チップ上に大規模な光回路を実現しています。 ○ いことにあり、この特長を生かしてわずか数mm角の非常に小さ ○ ○ 素子を実現しました。 この半導体の特長は石英に比べ屈折率が高 SS-SOAアレイ ● PLC ハイブリッド集積技術を用いた 8 チャネル高速光波長セレクタの構成例 ○ レイ導波路格子の作製を試み、64 波の異なる光を分岐できる光 λ8 AWG ○ 研究所では、新たに半導体インジウムりん(InP)を用いてア ○ ○ (PLC*)型のものが実用化されています。 ○ (光エレクトロニクス研究所) ○ ○ ンポーネントとして、重要な役割を果すことが期待されています。 ○ ○ こうした光集積デバイスは、 フォトニックネットワークのキーコ ○ PLC: Planar Lightwave Circuit りにテラ(1012)ビットあるいはペタ(1015)ビットレベルの大量 のデータが行き交うと予想されています。これに対応するには、光 波長分割多重(WDM)技術を用いたフォトニックネットワークに よる通信基盤の構築が必要となります。そのためにはWDM用の各 種光部品が必要不可欠であり、とりわけ、波長多重化された光信号 の波長ごとの処理ができる光部品の実現が、課題となります。 研究所では、 シリコン基板上の石英導波路で構成されるプレーナ 光波回路(PLC)上に半導体増幅素子をハイブリッド集積した、波 長セレクタを開発しました。 この波長セレクタは、光合分波機能をもつアレイ導波路格子 ○ ○ ○ ○ ○ ○ * マルチメディア時代の進展につれ、 情報通信網には単位時間当た ○ ○ 成功しました。 アレイ導波路格子とSS-SOAゲートスイッチをハイ ブリッド集積した波長セレクタ (A W G * 1 )2 個と、ゲートスイッチとしての半導体光増幅素子 (SOA*2)がハイブリッド集積された PLC から構成されます。1 本 のファイバから入力した複数波長からなるWDM光信号は、前段の AWGで波長ごとに分波されます。つぎに、各波長に対応したSOA の高速スイッチング動作により必要な波長の光信号が瞬時に選択さ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● 64 チャネル半導体アレイ導波路格子 ○ ○ 出力光 この光部品を作製するために、 両端にスポットサイズ変換機能が 付いた半導体光増幅素子(SS-SOA*3)を新たに開発し、レンズを ○ 用いることなく SS-SOA を PLC のシリコンテラス上にハイブリッ ド集積しています。さらに、このPLC を2個のAWGと直接接続す ることにより、波長セレクタとして一体化部品にしています。これ ○ らの構成により、光部品の小型化と高速動作が実現でき、さらに高 速信号ではとくに重要となる部品内部での光信号経路の等長化が図 られました。 この波長セレクタと他のWDM用光部品の組み合わせにより構成 される光通信システムは、 将来のフォトニックネットワーク構築に 重要な役割を果たすことが期待されています。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● 8 チャネル半導体レベル監視素子 ○ ○ ○ ︰ λ 64 ○ ○ λ1 λ2 λ3 AWG: Arrayed Waveguide Grating *2 SOA: Semiconductor Optical Amplifiers *3 SS-SOA: Spot Size-Semiconductor Optical Amplifiers ○ ○ ○ ○ (光エレクトロニクス研究所) *1 ○ ○ 集積されたフォトダイオード ○ ○ ○ ○ λ1 λ64 ファイバに出力されます。 ○ ○ 入力光 れ、選択された光信号は後段の AWG で再び合波されて 1 本の光 33 ○ M4 M5 ● JSS 問題 (MT20 × 5) の最適解 ○ 異なる原理の光パラメトリック増幅を利用することにより、 入射 ○ ○ (PSA*2)は、EDFA や半導体レーザ増幅器などのレーザ増幅とは ○ ○ する光波形劣化により制限されています。位相感応型光増幅器 M3 ○ EDFAが放出する光雑音および伝送路ファイバの分散などに起因 ○ の中継伝送路の再生中継間隔や伝送容量などの伝送性能は、 M2 ○ ○ ルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA*1)を利用しています。こ M1 ○ ○ 現在の長距離大容量光基幹中継伝送路は、 線形増幅器としてエ ○ ○ ○ 位相感応型光増幅中継器 ○ ○ 80 オペレータ番号 ○ し、より大容量で長距離の中継伝送路が構成できると期待されて ○ ○ して適用することにより、上記の中継伝送系の性能制限を緩和 ○ ○ が、理論的に予想されています。したがって、PSAを光中継器と 90 ○ は、超低雑音性と劣化した光波形を整形する機能を併せ持つこと 100 ○ 光の特定の光位相成分のみを増幅できます。このことから、PSA ○ 位相に同期したパラメトリック励起光源が必要であるため、 実験 ○ 的にPSA中継器を構成した例はありませんでした。このたび、安 60 50 40 30 20 ○ ところが PSA 中継器を実現するには、入射する信号の平均光 ○ ○ います。 70 ○ 10 40 60 80 100 120 140 160 180 ○ ○ 時間 (x5分) ●情報案内オペレータの準最適配置例 ○ ○ 中継伝送系設計法を確立します。 EDFA: Erbium-Doped Fiber Amplifier *2 PSA: Phase-Sensitive Amplifier ○ *3 PLL: Phase Lock Loop ○ *4 DSF: Dispersion Shifted Fiber ○ ○ 光周波数変調 ミキサ ○ 励起光 ます。問題の規模が大きくなると組合せ数が急速に増大するた め、計算機が現在のように速くなっても、列挙法にもとづく従来 の厳密解法では、良質の解を求めるのは困難でした。そこで最近 では、 自然淘汰と遺伝の仕組みを計算モデルにした遺伝的アルゴ リズム(GA*1)と呼ばれる近似的な最適化手法が注目されていま す。GA では必ずしも厳密な最適性は保証されませんが、大規模 な問題に対しても短時間で良質の解を求めることができます。 JSS問題は、さまざまな時間制約のなかで複数機械の効率的割当 てを求める問題です。研究所で開発した最新解法は、局所探索を ○ 組合せた多段階探索交叉とスケジュール反転を併用したもので、 ○ これまで良質の解が得られなかった難解なJSS問題に対して、非 常に良質の解を求めることが可能になりました。 この成果は、最近、NTTコミュニケーションウェア株式会社で ○ ○ 開発している情報案内オペレータの配置を支援するシステム (CAST*3)に適用されました。ここでは、多数のオペレータの勤 ○ 80 dBc/Hz ○ ○ -90 495 500 505 周波数(MHz) 励起光 - 入射信号光間ビート ○ ○ -60 務条件を満たしつつ、 各時刻において必要配置要員数との過不足 を最小とする解を高速に求めることが要求されました。GA にお ける突然変異の新方法の考案などにより、良質の解をパソコンを ○ 用いて数分で求めることが可能となりました。 ○ (コミュニケーション科学研究所) ○ 光出力 用いた高性能なスケジューリング解法の研究を進めてきました。 ○ RBW 10kHz 光出力 495 500 505 周波数(MHz) 励起光 - 入射信号光間ビート -30 ○ -90 ビートの電力密度 (dBm) ○ ○ ○ ○ ●光位相同期ループを用いた PSA 構成図 -60 ジョブショップスケジューリング(JSS*2)問題を対象に、GA を ○ 信号光 出力 ○ 光パラメトリック増幅回路 光サーキュレータ RBW 10kHz そこで研究所では、 スケジューリング問題の中でも最も難解な ○ ○ ○ ○ 1.5μm DSF 4.4km 信号光入力 ビートの電力密度 (dBm) リング問題が数多く発生し、 その効率的解法が強く求められてい ○ 光位相同期 回路 :光線路 :電気線路 -30 に再利用可能な複数資源を複数用途にうまく割当てるスケジュー ○ バランスド レシーバ構成 ○ (誤差信号) EDFA 社会や産業分野の複雑化に伴い、 時間や費用を最小にするよう ○ ○ ○ ○ ○ ○ *1 光位相同期 励起パルス光源 (半導体リングレーザ) 遺伝的アルゴリズムを用いた最適スケジューリング ○ (光ネットワークシステム研究所) ○ ○ ○ 得ています。今後はPSA中継時の伝送性能を明らかにして、PSA ○ ○ ファイバ(DSF*4)非線形サニャック干渉計を用いて、高利得を ○ またパラメトリック光増幅回路として、波長分散を最適化した ○ 相同期ループ回路(光PLL*3)により光位相同期を実現しました。 ○ ○ 付き半導体リングレーザを開発し、光注入同期技術、および光位 ○ ○ 験に成功しました。ここでは、励起光源として新たに外部共振器 ○ ○ リック増幅技術と組み合わせることにより、初めて PSA 中継実 20 ○ 定な光位相同期励起光源を開発し、 光ファイバを用いたパラメト (b)PLL 同期保持状態(位相感応増幅可能) ●光 PLL による光位相同期と同相信号増幅の実現 34 CAST: Communicator Allocation Support System ○ JSS: Job Shop Scheduling *3 ○ ○ ○ (a)PLL 引き込み前(位相感応増幅不能) GA: Genetic Algorithms *2 ○ 時間(500ps/div) 出力信号光アイパターン 時間(500ps/div) 出力信号光アイパターン *1 ○ ○ ○ 笑い(あざけり、さげすみ笑いなど)の 3 種に分類させ、集計し ●音声対話システム Noddy(うなずき君) ○ ○ たところ、つぎのような結果を得ました。 ○ の笑い(喜びの笑いなど) 、社交の笑い(作り笑いなど) 、不快の ○ ○ を用いて作成しました。つぎに、被験者にその動画を見せて、快 ○ ○ (笑い声のない微笑み)の動画を、コンピュータグラフィックス ○ た。目と口の動きの開始時点のみが異なる数種類の笑いの表情 ○ の動きの時間的な違いが表情の分類に及ぼす影響を計測しまし ○ ○ を進めました。笑いの表情の主要素とされる目と口に着目し、そ ○ ○ 笑顔の表情を見て、 その笑いの意味を読みとる心理解釈の研究 ○ ○ 笑いは社会的、心理的にもさまざまな意味で使われています。 ○ なコミュニケーションに欠かせない役割を担っています。 さらに、 ○ います。感情表出のなかでも笑いは、日常最も頻繁に現れ、円滑 ○ ○ 目指し、人間の感情伝達の観点から「笑い」を科学的に研究して ○ ○ 人と人とのコミュニケーションのメカニズムを解明することを ○ ○ ○ 笑いのメカニズムの解明 ○ ○ (1)口が目よりも先に動く場合:快の笑い ○ ○ (2)目と口がほぼ同時に動く場合:社交の笑い ○ ○ ました。 わかってうなずくコンピュータ 音声による対話は、 究極の人間−機械インタフェースとして有 望視されながら、 その実現のためには極めて高精度の音声認識技 術が必要であり、 まだまだ未来の技術であると考えられてきまし た。ところが、近年のコンピュータの計算速度の向上、およびそ れによって可能になった確率論的手法の導入によって、音声認識 の精度が飛躍的に向上し、夢が現実に一歩近づきました。 現在の音声認識の技術は、 ある条件下ではすでに人間並みの認 識精度を実現しています。にもかかわらず、音声認識を利用した 有効なサービスはなかなか開発できていません。本当に使える サービスを提供するためには、精度の向上に加え、総合的な「快 適性」を実現することが必要と考えられます。 研究所では、顔画像および音声によって人間と協調的に会話 し、円滑に対話を進めることのできる音声対話システム Noddy (うなずき君)を開発しました。このシステムは、話しかけると こちらを振り向いて、話を聞く状態であることを示します。あい ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (コミュニケーション科学研究所) ○ ○ ○ いに比べ、 腹部の反応が顔面表情よりも一層遅れることがわかり ○ ○ 動きの開始の時間差に注目したところ、作り笑いでは、自然な笑 ○ きを筋電図で測り、腹部の動きは胸囲式呼吸計で計測しました。 ○ にしました。顔面表情については、目と口の周辺部の表情筋の動 ○ ○ と、面白くないのにわざと起こした「作り笑い」の違いを明らか ○ ○ 解明も進めました。面白い(おかしい)ので起きた「自然な笑い」 ○ ○ 人が実際に感じた心の内容と表情との関係、 つまり心理反映の ○ ○ (3)目が口よりも先に動く場合:不快の笑い さつや「えー」 「あのー」などの冗長な音声のほとんどを聞き流 していますが、音声中に自分の役割(たとえば会議室予約)に関 ○ 係する情報を発見すると、即座にうなずき、 「はい」と相づちを 打つことで、その情報の受理を利用者に知らせます。逆に、うま く聞き取れなかったときは「えっ」と発話して、利用者の再発話 ○ ○ ○ ○ ○ 社交の笑い (目と口が同時に動く) ○ ○ ○ ●笑顔の動き(CG カラー) をうながします。これらの協調行動により、日常の人間同士の会 話と同じ感覚で、使い方を学ぶ必要なく、音声によるコンピュー タとのやりとりが可能になります。この技術によって、音声によ る人間−機械インタフェースの快適性を、大きく向上させること ○ ○ 快の笑い (口が目よりも先に動く) ○ 最終状態 (1.6秒後) ○ 初期状態 ○ ○ ○ ○ ○ 0.6秒後 ができます。 (基礎研究所) 35